JP5653341B2 - スクラロース抽出効率に対する炭水化物濃度の影響 - Google Patents

スクラロース抽出効率に対する炭水化物濃度の影響 Download PDF

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Description

本発明は、スクラロース及びその調製方法に関する。特に、本発明は有機溶媒によるスクラロース含有水性供給流の抽出に関する。
[関連出願の相互参照]
本願は、2008年4月3日付けで出願された米国仮特許出願第61/042,103号明細書(その全体が参照により本明細書中に援用される)の優先権の利益を主張するものである。
多くの食品用途及び飲料用途で使用することができる高甘味度甘味料であるスクラロース(4,1’,6’−トリクロロ−4,1’,6’−トリデオキシガラクトスクロース)は、以下の分子構造を有するガラクトスクロースである:
Figure 0005653341
スクラロース
スクラロースは、スクロースから、4位、1’位、及び6’位にあるヒドロキシルをクロロ基へと変換することによって製造される。この方法では、4位での立体化学的配置が反転する。
スクロースからスクラロースを製造する一方法では、スクロースをまず、スクロース−6−アセテート又はスクロース−6−ベンゾエート等のスクロース−6−エステルへと変換する。スクロース−6−エステルを、塩素化剤及び第三級アミドとの反応によって塩素化し、得られた反応混合物を加熱し、その後アルカリ水溶液でクエンチする。得られた4,1’,6’−トリクロロ−4,1’,6’−トリデオキシガラクトスクロースエステル(スクラロース−6−エステル)をスクラロースへと変換し、これを続いて精製及び単離する。
この方法は、典型的にはスクラロースに加えて、様々な量の他の塩素化糖化合物を含有する生成物をもたらす。これらの不純物を除去する際には、スクラロースの損失を最小限に抑えなくてはならず、精製及び単離のプロセスは大規模で実行するのに経済的でなくてはならない。スクラロースの精製は進歩を遂げてきたが、スクラロースから不純物を除去し、スクラロースを高純度で生成させ、精製プロセスにおける収率損失を最小限に抑え、且つ大規模で実行するのに経済的な方法が引き続き必要とされている。
一態様では、本発明は、スクラロース及び/又はスクラロース−6−エステルを含有する水性供給流からスクラロース及び/又はスクラロース−6−エステルを抽出する方法である。実施の形態では、該方法は、
a)スクラロースを含む水性供給流を第1の有機溶媒で抽出すると共に、第1の有機抽出物及び第1の水性抽出物を生成させる工程であって、有機溶媒が水と非混和性であり、スクラロースの一部が第1の有機抽出物中に移る、工程、
b)必要に応じて、第1の有機抽出物を水性溶媒で抽出し、第2の有機抽出物及び第2の水性抽出物を生成させる工程であって、スクラロースが優先的に第2の水性抽出物中に移り、第2の水性抽出物が工程a)へ再循環する、工程、
c)第1の水性抽出物を濃縮し、濃縮水性供給流を形成する工程、並びに
d)濃縮水性供給流を第2の有機溶媒で抽出すると共に、第3の有機抽出物及び第3の水性抽出物を生成させる工程であって、第2の有機溶媒が水と非混和性であり、スクラロースが優先的に第3の有機抽出物中に移る、工程
を含む。
別の実施の形態では、該方法は、
a)スクラロース−6−エステル、及びスクラロースとそれらとの混合物から成る群から選択される炭水化物を含む水性供給流を準備する工程、
b)水性供給流を濃縮し、濃縮水性供給流を形成する工程、並びに
c)濃縮水性供給流を有機溶媒で抽出すると共に、有機抽出物及び水性抽出物を生成させる工程であって、有機溶媒が水と非混和性であり、炭水化物が優先的に有機抽出物中に移る、工程
を含む。
本発明の一態様では、有機溶媒は酢酸エチルである。本発明の一態様では、水性供給流は約4wt%〜約8wt%の全炭水化物を含む。本発明の一態様では、濃縮水性供給流は少なくとも10wt%の全炭水化物を含む。本発明の一態様では、濃縮水性供給流は約13wt%〜約25wt%の全炭水化物を含む。本発明の一態様では、水性供給流はスクラロースを含む。本発明の他の態様では、有機抽出物と水性抽出物との間のスクラロースの分配係数は、少なくとも約1.0、少なくとも1.1、又は約1.1〜約1.6である。
水性スクラロース含有供給流を調製する一方法を示す流れ図である。 一定のスクラロース収率での、第1の水性抽出物におけるスクラロースの純度に対する、有機溶媒(「溶媒」)と水性スクラロース含有供給流(「供給流」)との比率の影響を示す図である。 本発明の方法を示す流れ図である。 複数の抽出工程を有する本発明の方法を示す流れ図である。 有機溶媒と水との間のスクラロースの分配係数Kに対する、スクラロース濃度の影響を示すプロット図である。 スクラロースの収率に対する、抽出EXT2における有機溶媒とスクラロース含有供給流との比率の影響を示すプロット図である。
文脈上他に指定のない限り、明細書及び特許請求の範囲において、有機溶媒、第1の有機溶媒、第2の有機溶媒、テトラクロロ糖類(tetrachloro saccharide)、トリクロロ糖類、ジクロロ糖類、塩、スクラロース−6−エステル、炭水化物といった用語、及び類似の用語は、かかる物質の混合物も含む。糖類という用語は単糖類、二糖類、及び多糖類を含む。溶媒とは別の物質を溶解する液体を意味する。水性溶媒は、水が主要な(存在する溶媒の50容量%超)又は唯一の溶媒である溶媒である。有機溶媒と水との間の炭水化物の分配係数Kは、等容量の有機溶媒及び水が用いられる場合、有機相中の炭水化物の濃度を水相中の炭水化物の濃度で割った値である。2つの溶媒がいかなる割合であっても均一の相を形成しない場合、それらは非混和性である。結晶化は、溶液を溶存成分に関して飽和又は過飽和の状態にし、この成分の結晶形成を達成するプロセスを含む。結晶形成の開始は自発的であっても、又は種結晶の添加を必要とするものであってもよい。結晶化とは、固体状又は液状物質が溶媒中に溶解して、溶液を生じ、これが次に飽和又は過飽和の状態にされ、結晶が得られる状況を表すものでもある。また、結晶化という用語には、結晶を1つ又は複数の溶媒で洗浄し、結晶を乾燥させ、そのようにして得られた最終生成物を採取する補助的なプロセスが含まれる。他に規定のない限り、全ての百分率は重量百分率であり、全ての温度は摂氏温度(セルシウス度)であり、全ての溶媒比は容量対容量である。
スクロースからスクラロースを調製する方法は以下の工程を含む。まず、スクロースの6位のヒドロキシルを、酢酸エステル又は安息香酸エステル等のエステル基によってブロックする。次いで、得られたスクロース−6−エステルの4位、1’位、及び6’位のヒドロキシルをクロロ基へと変換し、4位での立体化学的配置を反転させる。4位での立体化学的配置の反転を伴う、エステルの4位、1’位、及び6’位のヒドロキシルのクロロ基への変換は、Walkupの米国特許第4,980,463号明細書、Jaiの米国特許出願公開第2006/0205936号明細書、及びFryの米国特許出願公開第2007/0100139号明細書(それらの開示全体が参照により本明細書中に援用される)に開示されている。次いで、得られたスクラロース−6−エステルの6位のエステル基を除去し、得られた生成物であるスクラロースを精製及び単離する。この方法又はその個々の工程のいずれも、バッチプロセス又は連続プロセスのいずれであってもよい。
スクラロース含有供給流の調製
図1を参照すると、スクラロース−6−エステルのスクラロースへの変換に続いて、スクラロースを含む水性供給流(10)が生成される。水性供給流10は典型的には、水が主要な又は唯一の溶媒である流において合計で約6wt%〜50wt%、例えば約6wt%〜12wt%、約12wt%〜18wt%、約18wt%〜25wt%、又は約25wt%〜約50wt%の炭水化物を含む。存在する炭水化物のうち、典型的には50%〜80%がスクラロースである。他の炭水化物は主に、分子上の塩素原子の数に基づく3つのカテゴリーのうち1つに分類される:テトラクロロ糖類不純物(テトラクロロ糖類)、ジクロロ糖類不純物(ジクロロ糖類)、及びトリクロロ糖類不純物(トリクロロ糖類)。塩素化の位置及び程度は、得られる糖類の極性に強い影響を与える。概して、テトラクロロ糖類不純物はスクラロースよりも極性が低く、ジクロロ糖類不純物はスクラロースよりも極性が高い。概して、高極性の不純物は、高極性の溶媒においてスクラロースよりも溶解性が高く、低極性の不純物は、低極性の溶媒においてスクラロースよりも溶解性が高い。
水性供給流10中に存在し得る他の物質は、無機塩、例えば塩化ナトリウム等のアルカリ金属塩化物、アルカリ土類金属塩化物、及び塩化アンモニウム等;並びに有機塩、主に酢酸ナトリウム等のアルカリ金属酢酸塩;ジメチルアミン塩酸塩;及びギ酸ナトリウム等のアルカリ金属ギ酸塩を含む。少量、典型的には5000ppm未満の塩素化工程において使用される極性非プロトン性溶媒、典型的にはN,N−ジメチルホルムアミドも供給流中に存在し得る。
水性供給流10、及び必要に応じて第2の水性抽出物12(下記で論考される)を合わせて複合水性流を生成させ、これを第1の有機溶媒の流(14)で抽出して、第1の有機抽出物(16)及び第1の水性抽出物(18)を生成させる。この抽出工程は工程EXT1と称される。低極性の化合物が優先的に第1の有機抽出物16へと抽出されるため、この抽出によっては、スクラロースの一部が複合水性流から除去されるのに加えて、テトラクロロ糖類を含む低極性の化合物が複合水性流から除去される。「スクラロースの一部」とは、実施形態に応じて、50%未満の場合も、又は50%超の場合もある量を意味する。この抽出は、水性供給流中のスクラロースの50%超、55%超、60%超、又は65%超、及びテトラクロロ糖類不純物の95%が第1の有機抽出物16へと抽出される条件下で実行することができる。代替的な実施形態では、抽出は、国際公開第03/076453号パンフレットに開示されるように、すなわち水性供給流10中のテトラクロロスクロース化合物の大部分(すなわち50%超)が第1の有機抽出物16へと抽出され、スクラロースの大部分(すなわち50%超)が第1の水性抽出物18中に保持されるように実行することができる。
溶媒の選択は、有機溶媒及び水性供給流中でのスクラロースと主要不純物との相対溶解度、並びに可燃性、プロセス内での再循環の容易さ、環境問題、毒性、及びコストといった他の因子によって決まる。必要に応じて、有機溶媒を抽出工程において使用する前に意図的に水で飽和させることができる。有機溶媒の混合物を使用してもよい。第1の有機溶媒としての使用が考えられる溶媒は、水と非混和性であり、スクラロース等のハロゲン化スクロース誘導体が容易に溶解する溶媒を含む。水、水溶液等の第1の溶媒に部分的に溶解する溶媒、又はハロゲン化スクロース誘導体が容易に溶解するが、第2の溶媒が第1の溶媒と適切な比率かつ適切な条件下で混合された場合に依然として分離相を形成する他の溶媒も含まれる。典型的な第1の有機溶媒としては、酢酸メチル、酢酸エチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルイソアミルケトン、塩化メチレン、クロロホルム、ジエチルエーテル、メチルt−ブチルエーテル、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、イソオクタン、1,1,1−トリクロロエタン、n−ドデカン、ホワイトスピリット、テレビン、シクロヘキサン、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸アミル、四塩化炭素、キシレン、トルエン、ベンゼン、トリクロロエチレン、2−ブトキシエタノールアセテート(ブチルセロソルブ(登録商標)アセテート)、二塩化エチレン、ブタノール、モルホリン、及びそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。第1の有機溶媒は、好ましくは酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸n−プロピル、酢酸n−ブチル、酢酸アミル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルイソアミルケトン、塩化メチレン、クロロホルム、又はn−ブタノールを単一溶媒として、又はこれらの溶媒、若しくは第1のリストの他の溶媒との混合溶媒として含む。第1の溶媒は、より好ましくは酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸n−プロピル、酢酸n−ブチル、メチルイソブチルケトン、又はn−ブタノールを単一溶媒として、又はこれらの溶媒、若しくは第1若しくは第2のリストの他の溶媒との混合溶媒として含む。酢酸エチルが最も好ましい溶媒である。ジエチルエーテル、メチルt−ブチルエーテル、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、イソオクタン、1,1,1−トリクロロエタン、n−ドデカン、ホワイトスピリット、テレビン、シクロヘキサン、四塩化炭素、キシレン、トルエン、ベンゼン、トリクロロエチレン、2−ブトキシエタノールアセテート(ブチルセロソルブ(登録商標)アセテート)、二塩化エチレン、及びモルホリンは一般に単一溶媒としては好ましくはないが、記載したような混合溶媒中で使用することができる。
抽出は第1の液体抽出装置(20)内で実行されるが、第1の液体抽出装置は、当該技術分野で既知の任意のタイプの液体−液体抽出装置、例えば従来のミキサーセトラー又は従来のミキサーセトラーの一式、Oldshue−Rushtonマルチプルミキサー塔(multiple-mixer column)、多孔板塔、ランダム充填塔、パルス充填塔、構造化(SMVP)充填塔(packing column)、非対称回転円盤抽出装置(ARD)、KARR(登録商標)塔、Kuhni抽出装置、Treybel抽出装置、Scheibel塔、回転円盤接触装置(RDC)塔、又はPodbielniak遠心抽出装置若しくはRobatel遠心抽出装置等の遠心抽出装置であり得る。5つ以上の抽出理論段を有する抽出装置を使用することができる。必要に応じて水で飽和させてもよい第1の有機溶媒14、例えば酢酸エチルは、抽出装置20の頂部への総供給量に応じて抽出装置20の底部に供給される。
第1の水性抽出物18は、スクラロースとともに、スクラロースよりも極性が高いか、又はスクラロースとほぼ同じ極性を有する幾らかの不純物、主に塩及び糖類不純物を含む。第1の水性抽出物18は、下記に記載されるさらなる精製工程に対して供給流として使用される。
第1の有機抽出物16を第2の液体抽出装置(22)へと送り、低極性の不純物の大部分を有機抽出物中に残したままで第1の有機抽出物16からスクラロースを回収することができる。この抽出工程は工程EXT1Bと称される。方法がさらなる精製工程を含む場合、所望であれば、これらのさらなる精製工程から1つ又は複数の他の再循環流を第2の液体抽出装置22へ再循環させることができる。第2の液体抽出装置22は、当該技術分野で既知の任意のタイプの液体−液体抽出装置であってもよく、その例は上記に挙げている。5つ以上の抽出理論段を有する抽出装置を使用することができる。第1の有機抽出物16は液体抽出装置22の底部へと供給される。必要に応じて、第1の液体抽出装置20において使用されるものと同じ有機溶媒で飽和されていてもよい水の流(24)、例えば酢酸エチルで飽和された水を、抽出装置22の頂部へ供給する。第1の有機抽出物16に対する水の質量比は典型的には約0.8〜約0.9である。この2つの相の間の界面は、第2の液体抽出装置22の底部に維持され、ここで水相である第2の水性抽出物12が回収される。第2の水性抽出物12は、第1の液体抽出装置20へ再循環させてもよい。第1の有機相中に存在するスクラロースの85%、90%、92%、又は95%超が工程EXT1Bによって第2の水相へと抽出される。
有機抽出物である第2の有機抽出物26は、抽出装置22の頂部から流出する。第2の有機抽出物26は、テトラクロロ糖類等の低極性の不純物を含有する。これはプロセスから除かれ、有機溶媒が再利用のために回収される。
本発明の一態様では、第1の抽出工程(EXT1)における複合水性供給流に対する第1の有機溶媒14の質量比は、約0.4〜約0.9である。好ましくは、工程EXT1における水性供給流10に対する第1の有機溶媒14の質量比は、約0.6〜約0.9である。図2は、一定のスクラロース収率で算出された、第1の抽出工程(EXT1)における複合水性供給流に対する第1の有機溶媒14の比率の関数としての、第1の有機抽出物16中のスクラロースの量(左手の軸)及び第1の水性抽出物18中のスクラロースの純度(右手の軸)を示す。これらの値は、第1の抽出工程においてスクラロース含有水性供給流を有機溶媒で抽出し、得られた有機抽出物を第2の抽出工程において水で逆抽出し、得られた第2の水性抽出物を第1の抽出工程へ再循環させるという上記の方法に関するものである。
図2から分かるように、第1の抽出工程における複合水性供給流に対する有機溶媒14の質量比は約0.4以上であり、スクラロースの約50%以上が第1の有機抽出物16へと抽出される。質量比が0.5以上である場合、スクラロースの約60%超が第1の有機抽出物16へと抽出される。質量比が0.6以上である場合、スクラロースの約65%超が第1の有機抽出物16へと抽出される。驚くべきことに、第1の抽出工程において、使用される複合水性供給流に対する有機溶媒の比率がより高い場合であっても、スクラロースの全収率がほとんど又は全く減少せずに第1の水性抽出物18中の不純物レベルが有意に低下する。
スクラロース含有供給流の精製
図3を参照すると、供給流30は濃縮器(32)へと供給される。濃縮器32はバッチ運転又は連続運転のいずれに合わせて設計してもよい。濃縮器32は、当該技術分野で既知の任意のタイプの蒸発器、例えば流下膜式蒸発器、薄膜蒸発器、ワイプトフィルム(wiped film)蒸発器、強制循環蒸発器、バルク蒸発器、Robert蒸発器、Herbert蒸発器、キャドルタイプ(Caddle-type)蒸発器、又はOskar蒸発器であり得る。スクラロース含有水性供給流30は、例えばスクラロース−6−エステルのスクラロースへの加水分解によって生成されるスクラロース含有水性供給流10であり得る。代替的には、供給流は不純物の一部を除去するように処理されていてもよい。例えば、第1の水性抽出物18等の低極性の不純物を除去するように処理された水性供給流を、この方法に対する供給流として使用することができる。図4は、スクラロース含有水性供給流が第1の水性抽出物18である方法を示す。他のスクラロース含有水性供給流を本発明の方法において使用してもよい。スクラロースの精製及び単離のために多工程プロセスを使用する場合、方法の後半の他の工程からのスクラロース含有水性供給流を濃縮器32に供給することもできる。
濃縮器32は、スクラロース含有水性供給流30中に存在するスクラロースの濃度を含む炭水化物濃度、及び存在する場合には塩を増大させる。濃縮器32は典型的には、スクラロース含有水性供給流30中の炭水化物濃度を約1.1倍〜約4倍、又は約1.15倍〜約2.5倍、又は約1.2倍〜約2.0倍に増大させる。濃縮器32に流入するスクラロース含有水性供給流30は、約10wt%未満、9wt%未満、又は8wt%未満の全炭水化物、例えば約3wt%〜約9wt%若しくは約10wt%、約4wt%〜約8wt%、約5wt%〜約7wt%、又は約6wt%〜約7wt%の全炭水化物を有し得る。スクラロース含有水性供給流30は、最大で18wt%の無機塩、主に塩化ナトリウム等のアルカリ金属塩化物、及び/又は塩化アンモニウム、並びに有機塩、主に酢酸ナトリウム等のアルカリ金属酢酸塩を含有し得る。濃縮器32から出る濃縮スクラロース含有水性供給流36は、少なくとも約10wt%、少なくとも約12wt%、又は少なくとも約13wt%の全炭水化物、例えば約10wt%、約12wt%、約15wt%、若しくは約18wt%〜約25wt%;約10wt%、約12wt%、約15wt%、若しくは約18wt%〜約20wt%;約10wt%、約12wt%、若しくは約15wt%〜約18wt%;約13wt%〜約17wt%;約14wt%〜約16wt%;又は約15wt%〜約16wt%の全炭水化物を有し得る。典型的には、スクラロースは、濃縮スクラロース含有水性供給流36中に存在する炭水化物の約60%〜80%を含む。
濃縮水性流34は第3の液体抽出装置36へと供給される。この抽出工程は工程EXT2と称される。この抽出工程では、スクラロースが第2の有機溶媒の流(42)へと抽出され、第3の有機抽出物(38)を形成する。高極性の不純物の大部分及び存在する塩の大部分が、第3の水性抽出物(40)中にとどまる。第3の水性抽出物40は第3の液体抽出装置36の底部から流出し、プロセスから除かれる。代替的には、第3の水性抽出物40がプロセスから除かれる前に、酢酸エチル等の有機溶媒で逆抽出してもよい。この第3の水性抽出物40の逆抽出による再循環流は、抽出装置36への溶媒供給流(流42)と合わせてもよく、又は方法が濃縮工程の前にさらなる抽出工程(extractions steps)を含む場合、再循環流は、例えば第2の液体抽出装置22へと供給することができる。
驚くべきことに、有機溶媒と水との間のスクラロースの分配係数Kは、等容量の有機溶媒と水とが使用される場合、炭水化物濃度に依存する。図5に示すように、等容量の酢酸エチルと水とが使用される場合、Kは水相中のスクラロースの初期濃度が約5wt%である場合の0.4から、水相中のスクラロースの初期濃度が約15wt%である場合は約1.1に、水相中のスクラロースの初期濃度が約16wt%である場合は約1.2に増大する。図6に示すように、水に対する有機溶媒の比率が1であるとき、K値が約0.4から約1.1まで増大する場合は抽出効率は約40%から約90%まで増大し、K値が約0.4から約1.2まで増大する場合は抽出効率は約40%から90%超まで増大する。したがって、スクラロースが有機溶媒へと抽出される前に、スクラロース含有水性供給流18を有機溶媒で抽出する前に濃縮するのが有利である。好ましくは、抽出は、有機抽出物と水性抽出物との間のスクラロースの分配係数が少なくとも約1.0、より好ましくは少なくとも約1.1、又は少なくとも約1.2である条件下で実行することができる。分配係数は典型的には、約1.0〜約1.6、約1.1〜約1.6、約1.2〜約1.6、又は約1.25〜1.6の範囲内である。
代替的には、濃縮器32への供給流は、スクラロース−6−アセテート又はスクラロース−6−ベンゾエート等のスクラロース−6−エステルを、スクラロースに加えて又はその代わりに、上記したスクラロースの濃度と同じ濃度で含んでいてもよい。濃縮器32は、典型的にはスクラロース含有水性供給流30中の炭水化物濃度を、約1.1倍〜約4倍、又は約1.15倍〜約2.5倍、又は約1.2倍〜約2.0倍に増大させる。上記で述べたようなスクラロース−6−エステルを含む供給流の濃縮も、エステルの有機溶媒への抽出効率を増大させる。有機溶媒(酢酸エチル等)と水との間のスクラロース−6−エステル(スクラロース−6−アセテート等)の分配係数は、等容量の有機溶媒と水とを使用した場合、同じ条件下で測定したスクラロースの対応する値よりも大きい。
抽出工程(EXT2)は、バッチ又は連続のいずれであってもよい。第3の液体抽出装置36は、当該技術分野で既知の任意のタイプの液体−液体抽出装置であってもよく、その例は上記に挙げている。濃縮水性流34は第3の液体抽出装置36の頂部へと供給され、第2の有機溶媒の流42は抽出装置36の底部へと供給される。水性供給流34に対する第2の有機溶媒42の比率(容量対容量)は、約1.5〜約4.0、例えば、約1.5〜約2.0、又は約2.0〜約2.5、又は約2.5〜約4.0の範囲内である。しかしながら、第3の液体抽出装置36の抽出理論段数を増加させた場合、第2の有機溶媒42の容量、及び結果として水性供給流34に対する第2の有機溶媒42の比率は低下し得る。
第1の有機溶媒として使用される有機溶媒のいずれも、第2の有機溶媒として使用することができる。しかしながら、この抽出工程の結果として、スクラロースが水性抽出物から有機抽出物へと移るため、スクラロースを有機溶媒から結晶化させるのであれば、スクラロースに対する結晶化溶媒として使用することができる第2の有機溶媒を使用するのが都合が良い。第1の有機溶媒及び第2の有機溶媒が同じ有機溶媒であるのも都合が良い。好ましい第2の有機溶媒は酢酸エチルである。
本発明の方法は、上記の水性スクラロース含有プロセス流から非極性物質を除去する方法と合わせてもよい。この方法では、第2の水性抽出物18は濃縮器32へと供給される。複合方法を図4に示す。スクラロース及び/又はスクラロース−6−エステルを含む供給流をこの複合方法によって精製することができる。
スクロース−6−エステルの調製
スクロースの6−ヒドロキシルの選択的保護は、有機スズ系アシル化促進剤の存在下、無水極性非プロトン性溶媒中で、スクロース−6−エステルを生成させるのに十分な温度及び期間で、スクロースと無水酢酸又は安息香酸無水物等のカルボン酸無水物とを反応させることによって実行することができる。6−エステル基は6位のヒドロキシルを塩素化反応から保護する。したがって、塩素化反応条件に安定であり、得られたスクラロースに影響を与えない条件下で除去されることができる任意のエステル基が使用され得る。スクロース−6−アセテートを調製する場合、有機スズ系アシル化促進剤として、例えば1,3−ジアセトキシ−1,1,3,3−テトラブチルジスタンノキサン、及びカルボン酸無水物として無水酢酸を使用することができる。スクロース−6−エステルの調製は、例えばO' Brienの米国特許第4,783,526号明細書、Naviaの米国特許第4,950,746号明細書、Simpsonの米国特許第4,889,928号明細書、Neiditchの米国特許第5,023,329号明細書、Walkupの米国特許第5,089,608号明細書、Vernonの米国特許第5,034,551号明細書、Sankeyの米国特許第5,470,969号明細書、Kahnの米国特許第5,440,026号明細書、Clarkの米国特許第6,939,962号明細書、及びLiの米国特許出願公開第2007/0227897号明細書(それらの開示全体が参照により本明細書中に援用される)に開示されている。
スクラロース−6−エステル含有供給流の調製
スクロース−6−エステルをスクラロース−6−エステルへと変換するために、スクロース−6−エステルの4位、1’位、及び6’位のヒドロキシルをクロロ基へと変換し、4位での立体化学的配置を反転させる。4位での立体化学的配置の反転を伴う、このエステルの4位、1’位、及び6’位のヒドロキシルのクロロ基への変換は、Walkupの米国特許第4,980,463号明細書、Jaiの米国特許出願公開第2006/0205936号明細書、及びFryの米国特許出願公開第2007/0100139号明細書(それらの開示全体が参照により本明細書中に援用される)に開示されている。
塩素化プロセスは以下の工程を含む。スクロース−6−エステル、第三級アミド、及び少なくとも7モル当量の塩素化剤を含む反応混合物を調製する。例えば、一プロセスでは、スクロース−6−エステルは、約20wt%〜約40wt%のスクロース−6−エステルを含む供給流中に添加することができる。反応混合物中の全炭水化物に対する第三級アミドの重量比は、約5:1〜約12:1であり得る。代替的には、予め形成したクロロホルムイミニウム塩、例えば(クロロメチレン)ジメチルアンモニウムクロリド(アーノルド試薬)を使用することができる。(クロロメチレン)ジメチルアンモニウムクロリドは、例えばホスゲンとN,N−ジメチルホルムアミドとの反応によって調製することができる。典型的には、スクロース−6−エステルに対する(クロロメチレン)ジメチルアンモニウム塩のモル比は約7:1〜約11:1である。
続いて、スクロース−6−エステルの2位、3位、4位、1’位、3’位、4’位、及び6’位のヒドロキシル基を、O−アルキルホルムイミニウム基へと変換する。得られた反応混合物を、残存するヒドロキシル基がO−アルキルホルムイミニウム基として残るスクラロース−6−エステルの誘導体を含有する生成物を生成させるのに十分な温度(単数又は複数)及び期間(単数又は複数)で加熱する。例えば、Walkupの米国特許第4,980,463号明細書(その開示が参照により本明細書中に援用される)及びFryの米国特許出願公開第2007/0100139号明細書(その開示が参照により本明細書中に援用される)は、かかるプロセスを開示している。
クロロホルムイミニウム塩又はビルスマイヤー試薬の形成は塩素化反応に必須ではないため、塩素化剤とは、クロロホルムイミニウム塩若しくはビルスマイヤー試薬を形成するために使用することができるか、又はスクロース−6−エステルのヒドロキシル基をクロロ基へと変換することができる任意の化合物を指す。第三級アミドと反応して、クロロホルムイミニウム塩を形成することができる幾つかの塩素化剤としては、例えばホスゲン、オキシ塩化リン、五塩化リン、塩化チオニル、塩化スルフリル、塩化オキサリル、クロロギ酸トリクロロメチル(「ジホスゲン」)、炭酸ビス(トリクロロメチル)(「トリホスゲン」)、及びメタンスルホニルクロリドが挙げられる。使用することができる第三級アミドとしては、例えばN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N−ホルミルピペリジン、N−ホルミルモルホリン、及びN,N−ジエチルホルムアミドが挙げられる。N,N−ジメチルホルムアミドを第三級アミドとして使用する場合、反応溶媒としても使用することができる。最大で反応媒体の液体相の約80容量%以上の共溶媒を使用することができる。有用な共溶媒は、共に化学的に不活性であり、反応が一塩素化(monochlorination)段階で本質的に均一となることを可能とする十分な溶媒力をもたらす溶媒、例えばトルエン、o−キシレン、1,1,2−トリクロロエタン、1,2−ジエトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテルである。
反応混合物のクエンチによって、2位、3位、3’位、及び4’位のヒドロキシル基が元に戻り、スクラロース−6−エステルが形成される。反応混合物は、反応において使用される塩素化剤の量に対して約0.5モル当量〜約2.0モル当量、典型的には約1.0モル当量〜約1.5モル当量のアルカリを添加することによってクエンチすることができる。反応をクエンチするために、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物の水溶液、水酸化カルシウム等のアルカリ土類金属水酸化物の水性スラリー、又は含水水酸化アンモニウムを使用することができる。例えば、約5wt%〜約35wt%、典型的には約8wt%〜約20wt%、好ましくは約10wt%〜約12wt%を含有する水酸化ナトリウム水溶液等のアルカリ金属水酸化物の水溶液を使用することができる。
下記に記載されるように、二重流(dual stream)プロセス又は循環プロセスによって反応混合物にアルカリを添加することでクエンチを実行することができる。いずれの場合も、アルカリの添加の間、pH及び温度を制御する。クエンチは典型的には、約8.5〜約10.5のpH及び約0℃〜約60℃の温度で実行される。好ましくは、pHはクエンチ反応の間、約10.5を上回ってはならない。
二重流プロセスにおいては、クエンチは、反応容器にアルカリ水溶液をゆっくりと添加すると同時に、塩素化反応材料をゆっくりと添加することによって実行される。塩素化反応混合物及びアルカリ水溶液は、所望の量の塩素化反応混合物が添加されるまで同時にゆっくりと添加される。さらなるアルカリ水溶液を所望のpHに達するまで添加する。次いで、反応の残りの期間中、温度及びpHを所望のレベルに維持する。このプロセスはバッチプロセスであっても、又は連続プロセスであってもよい。
循環プロセスにおいては、クエンチは塩素化反応混合物を容器から循環ループを通して循環させることによって実行される。塩素化反応混合物及びアルカリ水溶液を、この循環ループ内にゆっくりと添加する。所望のpHに達するまで十分なアルカリ水溶液を添加する。次いで、反応の残りの期間中、温度及びpHを所望のレベルに維持する。このプロセスはバッチプロセスであっても、又は連続プロセスであってもよい。
クエンチに続いて、酸水溶液、例えば塩酸水溶液を添加することによって反応混合物を中和することができる。得られた混合物は、主要な溶媒が水である水性溶媒中に、スクラロース−6−エステル、塩素化炭水化物不純物を含む他の炭水化物、未反応の第三級アミド、及び塩を含むものである。
このスクラロース−6−エステル含有供給流を、スクラロースをスクラロース−6−エステル段階で精製するプロセスにおいて使用することができる。本発明の一態様では、スクラロース−6−エステル含有供給流は上記のように濃縮し、有機溶媒を用いて抽出する。抽出の後、必要に応じて、得られたスクラロース−6−エステル含有有機抽出物をさらに精製することができる。スクラロース−6−エステルをスクラロースまで脱アシル化し、スクラロースを結晶化する。スクラロース−6−エステルはスクラロースよりも極性が低いため、有機溶媒と水との間のスクラロース−6−エステルの分配係数は、有機溶媒と水との間のスクラロースの分配係数よりもはるかに高い。結果として、スクラロース−6−エステルは水溶液中にとどまるのではなく、有機溶媒中に効率的に抽出されることとなる。代替的には、スクラロース−6−エステル含有水性供給流を、スクラロース−6−エステルが精製の前にスクラロースへと変換される、下記に記載されるプロセスにおいて使用することができる。
スクラロース−6−エステルのスクラロースへの変換
スクラロース−6−エステル含有水性供給流は、典型的にはスクラロース及びスクラロース−6−エステルの両方を含む。スクラロース−6−エステルを加水分解する方法は、例えばCataniの米国特許第5,977,349号明細書、同第6,943,248号明細書、同第6,998,480号明細書、及び同第7,049,435号明細書、Vernonの米国特許第6,890,581号明細書、El Kabbaniの米国特許第6,809,198号明細書、及び同第6,646,121号明細書、Naviaの米国特許第5,298,611号明細書及び同第5,498,709号明細書、及び米国特許出願公開第2004/0030124号明細書、Liesenの米国特許出願公開第2006/0188629号明細書、Fryの米国特許出願公開第2006/0276639号明細書、El Kabbaniの米国特許出願公開第2007/0015916号明細書、Deshpandeの米国特許出願公開第2007/0160732号明細書、並びにRatnamの米国特許出願公開第2007/0270583号明細書(それらの開示全体が参照により本明細書中に援用される)に開示されている。
例えば、(a)スクラロース−6−エステルは、保護基の除去を達成するのに十分な温度及び期間で、反応混合物のpHを約11±1へ上昇させることによってスクラロースへと加水分解することができ、(b)第三級アミドを例えば水蒸気ストリッピングによって除去する。工程(a)又は工程(b)のいずれを最初に実行してもよい。代替的には、スクラロース−6−エステルのスクラロースへの変換は、ナトリウムメトキシドを含有するメタノール中で実行することができる。スクラロース−6−エステルがスクラロース−6−アセテートである場合、スクラロース及び酸のメチルエステル、例えば酢酸メチルを形成するエステル交換反応が起こる。酸のメチルエステルは、蒸留によって除去することができ、得られたスクラロース含有生成物を水に溶解させることができる。
本発明の方法はスクラロースの調製に有用である。スクラロースは、多くの食品用途及び飲料用途、並びに他の用途で使用することができる高甘味度甘味料である。かかる用途としては、例えば飲料、複合甘味料(combination sweeteners)、消費者製品、甘味料製品、錠剤コア(tablet cores)(Luberの米国特許第6,277,409号明細書)、医薬組成物(Luberの米国特許第6,258,381号明細書、Rocheの米国特許第5,817,340号明細書、及びMcNallyの米国特許第5,593,696号明細書)、速吸収性液体組成物(Gelotteの米国特許第6,211,246号明細書)、安定な発泡組成物(Gowan, Jr.の米国特許第6,090,401号明細書)、デンタルフロス(Ochsの米国特許第6,080,481号明細書)、速崩壊性医薬品剤形(Gowan, Jr.の米国特許第5,876,759号明細書)、薬用飲料(Shahの米国特許第5,674,522号明細書)、医薬水性懸濁液(Ratnarajの米国特許第5,658,919号明細書、Gowan, Jr.の米国特許第5,621,005号明細書及び同第5,374,659号明細書、並びにBlaseの米国特許第5,409,907号明細書及び同第5,272,137号明細書)、フルーツスプレッド(Antenucciの米国特許第5,397,588号明細書、及びSharpの米国特許第5,270,071号明細書)、液体濃縮組成物(Antenucciの米国特許第5,384,311号明細書)、及び安定化ソルビン酸溶液(Merciadezの米国特許第5,354,902号明細書)が挙げられる。許容甘味度(acceptable sweetness)の決定は、当業者に良く知られた当該技術分野で既知の様々な標準「味覚テスト」プロトコル、例えばMerkelの米国特許第号6,998,144明細書及びShamilの米国特許第6,265,012号明細書において言及されるプロトコル等によって達成することができる。
本発明の有利な特性は、本発明を説明するが、限定するものではない以下の実施例を参照することにより認めることができる。
実施例1
本実施例は、第1の抽出プロセス(EXT1)、第1の有機抽出物(16)の逆抽出(EXT1B)、及び第1の抽出プロセスへの第2の水性抽出物(12)の再循環の両方を含む数学的モデルを用いて行った。このモデルで使用した計算値は、実際のパイロットプラントデータにフィッティングした理論方程式から導いたものであった。図1はモデル化したプロセスの流れ図を示す。
図2は、第1の抽出における複合水性供給流に対する第1の有機溶媒14の質量比を変化させた複数回のモデル実行による結果を示す。逆抽出における分離段数は、等しい全抽出収率が維持されるように調整した。第1の抽出工程中に第1の有機抽出物16へと抽出されたスクラロースの量を左手の軸に示す。プロセスにより生成されたスクラロースの純度を右手の軸に示す。
図2から分かるように、第1の抽出工程における複合水性供給流に対する有機溶媒14の質量比が約0.4以上である場合、スクラロースの約50%以上が第1の有機抽出物16へと抽出される。質量比が0.6以上である場合、スクラロースの約65%超が第1の有機抽出物16へと抽出される。驚くべきことに、第1の抽出工程において、使用される複合水性供給流に対する有機溶媒の比率をより高くしても、全スクラロース収率がほとんど又は全く減少することなく第1の水性抽出物18中の不純物のレベルが有意に低下した。同様に図2から分かるように、生成物の純度は、90%近くのスクラロースが第1の有機抽出物16へと抽出される75%付近で横ばいになり始める。
実施例2
本実施例は、有機相と水相との間のスクラロースの分配係数に対するスクラロース濃度の影響を示す。スクラロース水溶液を様々な炭水化物濃度で調製した。次いで、等容量の酢酸エチルを各溶液に添加し、二相を十分に混合した。二相を分離した後、各々の相中の炭水化物濃度を求めた。酢酸エチル相中のスクラロース濃度を、水相中のスクラロース濃度で割ることによってK値を算出した。図3は、分配係数Kに対する炭水化物濃度の影響を示す。K値が大きいほど、スクラロースが酢酸エチル相中へとより容易に抽出される。
実施例3
本実施例では、スクラロース収率に対する濃度の影響を測定する。2つの異なるスクラロース含有水性供給流に対する有機溶媒の比率(約3.7:1及び約3.0:1(容量対容量))を使用した。有機溶媒は酢酸エチルであった。結果を表1に示す。表1において、「溶媒:供給流」はスクラロース含有水性供給流に対する有機溶媒の比率(容量対容量)である。「炭水化物」はスクラロース含有水性供給流中の炭水化物のwt%である。「塩」はスクラロース含有水性供給流中の塩のwt%である。「収率」は抽出の有機相から回収されるスクラロースの百分率である。この試験には多段階接触装置を使用したため、K値をこのデータから直接決定し、実施例2において求めた値と比較することはできなかった。
Figure 0005653341
これらの実験により、スクラロース含有水性供給流をさらに濃縮した場合に抽出効率が劇的に増大することが示される。これらの抽出効率をスクラロースの精製プロセスの数学的モデルに挿入した。同じ供給流に対する溶媒の比率及び抽出段数を用いた場合、EXT2抽出効率が97.5%から99.5%まで増大すると、スクラロースの全収率が5.5%超向上した。
本発明の開示は以下の特許請求の範囲を含む。以上本発明を説明したが、ここで以下の特許請求の範囲及びその均等物について特許請求する。

Claims (54)

  1. a)スクラロースを含む水性供給流を第1の有機溶媒で抽出すると共に、第1の有機抽出物及び第1の水性抽出物を生成させる工程であって、前記有機溶媒が水と非混和性であり、前記スクラロースの一部が前記第1の有機抽出物中に移る、工程、
    b)必要に応じて、前記第1の有機抽出物を水性溶媒で抽出し、第2の有機抽出物及び第2の水性抽出物を生成させる工程であって、前記スクラロースが優先的に前記第2の水性抽出物中に移り、該第2の水性抽出物が工程a)へ再循環する工程、
    c)前記第1の水性抽出物を濃縮し、濃縮水性供給流を形成する工程であって、前記濃縮水性供給流が、15wt%〜25wt%の全炭水化物を含む、工程、並びに
    d)前記濃縮水性供給流を第2の有機溶媒で抽出すると共に、第3の有機抽出物及び第3の水性抽出物を生成させる工程であって、前記第2の有機溶媒が水と非混和性であり、且つ酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸n−プロピル、酢酸n−ブチル、メチルイソブチルケトン、n−ブタノール、及びそれらの混合物から成る群から選択され、前記スクラロースが優先的に前記第3の有機抽出物中に移る、工程
    を含む、方法。
  2. 工程b)を実行する、請求項1に記載の方法。
  3. 前記第1の有機溶媒及び前記第2の有機溶媒が同じ有機溶媒である、請求項1に記載の方法。
  4. 前記第1の有機溶媒が、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸n−プロピル、酢酸n−ブチル、酢酸アミル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルイソアミルケトン、塩化メチレン、クロロホルム、n−ブタノール、及びそれらの混合物から成る群から選択される溶媒を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
  5. 前記第1の有機溶媒が、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸n−プロピル、酢酸n−ブチル、メチルイソブチルケトン、n−ブタノール、及びそれらの混合物から成る群から選択される溶媒を含む、請求項4に記載の方法。
  6. 前記第1の有機溶媒が、酢酸エチルを含む、請求項5に記載の方法。
  7. 前記第2の有機溶媒が、酢酸エチルを含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
  8. 工程c)において、前記水性供給流の炭水化物濃度が1.1倍〜4倍に増加する、請求項1に記載の方法。
  9. 工程c)において、前記水性供給流の炭水化物濃度が1.15倍〜2.5倍に増加する、請求項に記載の方法。
  10. 工程c)において、前記水性供給流の炭水化物濃度が1.2倍〜2.0倍に増加する、請求項に記載の方法。
  11. 工程d)において、前記有機抽出物と前記水性抽出物との間のスクラロースの分配係数
    が、少なくとも1.0である、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
  12. 工程d)において、前記有機抽出物と前記水性抽出物との間のスクラロースの分配係数が、少なくとも1.1である、請求項11に記載の方法。
  13. 工程d)において、前記有機抽出物と前記水性抽出物との間のスクラロースの分配係数が、1.1〜1.6である、請求項12に記載の方法。
  14. 前記水性供給流が、10wt%未満の全炭水化物を含む、請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法。
  15. 前記水性供給流が、9wt%未満の全炭水化物を含む、請求項14に記載の方法。
  16. 前記水性供給流が、8wt%未満の全炭水化物を含む、請求項15に記載の方法。
  17. 前記水性供給流が、3wt%〜10wt%の全炭水化物を含む、請求項1〜16のいずれか一項に記載の方法。
  18. 前記水性供給流が、3wt%〜9wt%の全炭水化物を含む、請求項17に記載の方法。
  19. 前記水性供給流が、4wt%〜8wt%の全炭水化物を含む、請求項18に記載の方法。
  20. 前記水性供給流が、5wt%〜7wt%の全炭水化物を含む、請求項19に記載の方法。
  21. 前記水性供給流が、6wt%〜7wt%の全炭水化物を含む、請求項20に記載の方法。
  22. 前記濃縮水性供給流が、18wt%〜25wt%の全炭水化物を含む、請求項1〜21のいずれか一項に記載の方法。
  23. 前記濃縮水性供給流が、15wt%〜20wt%の全炭水化物を含む、請求項1〜21のいずれか一項に記載の方法。
  24. 前記濃縮水性供給流が、18wt%〜20wt%の全炭水化物を含む、請求項23に記載の方法。
  25. 前記濃縮水性供給流が、15wt%〜18wt%の全炭水化物を含む、請求項1〜21のいずれか一項に記載の方法。
  26. 前記濃縮水性供給流が、15wt%〜16wt%の全炭水化物を含む、請求項1〜21のいずれか一項に記載の方法。
  27. 工程a)において、前記水性供給流に対する前記第1の有機溶媒の質量比が、0.4〜0.9である、請求項1〜26のいずれか一項に記載の方法。
  28. 工程a)において、前記水性供給流に対する前記第1の有機溶媒の質量比が、0.5〜0.9である、請求項27に記載の方法。
  29. 工程a)において、前記水性供給流に対する前記第1の有機溶媒の質量比が、0.6〜0.9である、請求項28に記載の方法。
  30. 前記塩素化不純物がテトラクロロ糖類を含み、工程a)において、前記水性供給流中の前記スクラロースの50%超及び前記テトラクロロ糖類の少なくとも95%が前記第1の有機抽出物中に移り、工程b)において、前記第1の有機抽出物中の前記スクラロースの90%超が前記第2の水性抽出物中に移り、前記テトラクロロ糖類が前記第2の有機抽出物中に優先的に保持される、請求項1〜29のいずれか一項に記載の方法。
  31. 工程a)において、前記水性供給流中の前記スクラロースの55%超が前記第1の有機抽出物中に移る、請求項1〜30のいずれか一項に記載の方法。
  32. 工程a)において、前記水性供給流中の前記スクラロースの60%超が前記第1の有機抽出物中に移る、請求項31に記載の方法。
  33. 工程a)において、前記水性供給流中の前記スクラロースの65%超が前記第1の有機抽出物中に移る、請求項32に記載の方法。
  34. 前記スクラロースを精製及び単離する工程(単数又は複数)をさらに含む、請求項1〜33のいずれか一項に記載の方法。
  35. a)スクラロース−6−エステル、及びスクラロースとそれらとの混合物から成る群から選択される炭水化物を含む水性供給流を準備する工程、
    b)前記水性供給流を濃縮し、濃縮水性供給流を形成する工程であって、前記濃縮水性供給流が、15wt%〜25wt%の全炭水化物を含む、工程、並びに
    c)前記濃縮水性供給流を有機溶媒で抽出すると共に、有機抽出物及び水性抽出物を生成させる工程であって、前記有機溶媒が水と非混和性であり、且つ酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸n−プロピル、酢酸n−ブチル、メチルイソブチルケトン、n−ブタノール、及びそれらの混合物から成る群から選択され、前記スクラロース−6−エステルが優先的に前記有機抽出物中に移る、工程
    を含む、方法。
  36. 工程b)において、前記水性供給流の炭水化物濃度が1.1倍〜4倍に増加する、請求項35に記載の方法。
  37. 工程b)において、前記水性供給流の炭水化物濃度が1.15倍〜2.5倍に増加する、請求項36に記載の方法。
  38. 工程b)において、前記水性供給流の炭水化物濃度が1.2倍〜2.0倍に増加する、請求項37に記載の方法。
  39. 前記炭水化物がスクラロース−6−アセテートである、請求項3538のいずれか一項に記載の方法。
  40. 前記水性供給流が、10wt%未満の全炭水化物を含む、請求項3539のいずれか一項に記載の方法。
  41. 前記水性供給流が、9wt%未満の全炭水化物を含む、請求項40に記載の方法。
  42. 前記水性供給流が、8wt%未満の全炭水化物を含む、請求項41に記載の方法。
  43. 前記水性供給流が、3wt%〜10wt%の全炭水化物を含む、請求項3542のいずれか一項に記載の方法。
  44. 前記水性供給流が、3wt%〜9wt%の全炭水化物を含む、請求項43に記載の方法。
  45. 前記水性供給流が、4wt%〜8wt%の全炭水化物を含む、請求項44に記載の方法。
  46. 前記水性供給流が、5wt%〜7wt%の全炭水化物を含む、請求項45に記載の方法。
  47. 前記水性供給流が、6wt%〜7wt%の全炭水化物を含む、請求項46に記載の方法。
  48. 前記濃縮水性供給流が、18wt%〜25wt%の全炭水化物を含む、請求項35〜47のいずれか一項に記載の方法。
  49. 前記濃縮水性供給流が、15wt%〜20wt%の全炭水化物を含む、請求項35〜47のいずれか一項に記載の方法。
  50. 前記濃縮水性供給流が、18wt%〜20wt%の全炭水化物を含む、請求項49に記載の方法。
  51. 前記濃縮水性供給流が、15wt%〜18wt%の全炭水化物を含む、請求項35〜47のいずれか一項に記載の方法。
  52. 前記濃縮水性供給流が、15wt%〜16wt%の全炭水化物を含む、請求項35〜47のいずれか一項に記載の方法。
  53. 前記有機溶媒が、酢酸エチルを含む、請求項35〜52のいずれか一項に記載の方法。
  54. 前記スクラロース−6−エステルをスクラロースへと脱アシル化する工程、並びに前記スクラロースを精製及び単離する工程をさらに含む、請求項3553のいずれか一項に記載の方法。
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