JP5652792B2 - メソポーラスシリカの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明はメソポーラスシリカの製造方法、詳細にはタンパク質等の吸着分離や、ドラッグデリバリーシステム等に有用なメソポーラスシリカの製造方法に関する。
近年、多孔質シリカの研究が進められている。特に細孔径2〜50nmの細孔を有する多孔質シリカはメソポーラスシリカと呼ばれ、タンパク質等の吸着分離や、ドラッグデリバリーシステム(DDS)の用途への利用が検討されている。これらの用途では比表面積が大きいメソポーラスシリカが望ましいとされている。
一般に多孔質シリカは界面活性剤を水性溶媒中に分散させたミセル分散液を利用して製造される。界面活性剤は親水性部と疎水性部とを有しており、水性溶媒中で、親水性部を外側に、疎水性部を内側に配向した直径が均等な(すなわち、粒径が揃った)球状のミセルを形成し、均一に分散する。後述する種々のシリカ前駆体をミセル分散液と混合し、溶媒を除去すると、シリカ前駆体中に界面活性剤が均一に分散した有機−無機複合体が形成され、さらに焼成によって界面活性剤が除去されるとともにシリカが生成され、メソポーラスシリカが得られる。
例えば、珪酸ナトリウムを酸性溶媒で処理して得られたシリカ前駆体を、長鎖アルキルアンモニウムのハロゲン化物等のカチオン系界面活性剤と混合させることで、細孔径2〜5nmのメソポーラスシリカの粉体が得られることが知られている(特許文献1参照)。
また、アルコキシシランの加水分解反応から得られたシリカ前駆体を、2つのエチレンオキサイド重合体ブロックの間にプロピレンオキサイド重合体ブロックを有する非イオン性トリブロック共重合体と混合させることで、細孔径5〜26nmのメソポーラスシリカが得られることが知られている(特許文献2参照)。
また、スチレン重合体ブロックとエチレンオキサイド重合体ブロックのブロック共重合体を用いて、細孔径30nm程度の比表面積が高いメソポーラスシリカを得る方法が知られている(非特許文献1参照)。さらに、細孔径10nm程度の球状の細孔を有するメソポーラスシリカからなる薄膜の製造が報告されている(非特許文献2参照)。
特開平8−259220号公報 特表2003−531083号公報
ジャーナル オブ アメリカン ケミカル ソサエティ(J. of Am. Chem. Soc. ), 1690頁(2007年). アドバンスド ファンクショナル マテリアルズ(Adv. Funct. Mater. ), 47頁(2003年).
特許文献1に記載の細孔径2〜5nmのメソポーラスシリカは、細孔径が比較的小さいため、用途が限定される。また、特許文献2に記載の方法でメソポーラスシリカを得るには、シリカ前駆体と非イオン性トリブロック共重合体との溶液に、有機膨張剤を添加し、反応溶液を高温(100〜140℃)にて長時間(11〜72時間)、加熱する必要がある。また、非特許文献1に記載の方法では、比表面積を高めるためには、作製したメソポーラスシリカを、さらに高温(100℃)の水中で長時間(72時間)加熱する必要がある。また、非特許文献2に記載の方法で得られるメソポーラスシリカからなる薄膜は比表面積が小さい。
したがって、本発明の目的は、タンパク質等の吸着分離や、DDSの用途に好適な比表面積が大きいメソポーラスシリカを低温、短時間で製造できる工業的に有利な製造方法を提供することにある。
上記の目的を達成するため、本発明は、
アルコキシシランを酸性水溶液中に溶解させて、シリカ前駆体水溶液を調製する第1工程;
芳香族ビニル化合物に由来する構造単位を含み、スルホン酸基を有する親水性重合体ブロック(S)、及び不飽和炭化水素化合物に由来する構造単位を含有する非晶性重合体からなる疎水性重合体ブロック(T)を構成成分とするブロック共重合体(Z)を、有機溶媒に溶解させてブロック共重合体溶液を調製する第2工程;
前記シリカ前駆体水溶液とブロック共重合体溶液とを混合する第3工程;
前記第3工程で得られた混合液から、有機溶媒と水とを除去して固形分を得る第4工程;および
前記第4工程で得られた固形分を焼成する第5工程;を含むメソポーラスシリカの製造方法を提供する。
本発明によれば、タンパク質等の吸着分離や、DDSの用途に好適なメソポーラスシリカを低温、短時間で製造できるので、工業的に有利となる。
実施例1、2、4で得られたメソポーラスシリカの焼成後のGI−SAXSによるX線回折パターンである。 実施例1〜6で得られたメソポーラスシリカの走査型電子顕微鏡写真であり、図Aが実施例1、図Bが実施例2、図Cが実施例3、図Dが実施例4、図Eが実施例5、図Fが実施例6である。 実施例2、5で得られたメソポーラスシリカの透過型電子顕微鏡写真であり、図Aが実施例2、図Bが実施例5である。 実施例1〜6で得られたメソポーラスシリカの窒素吸着等温線であり、図(A)中、Aが実施例1、Bが実施例2、Cが実施例3であり、図(B)中、Dが実施例4、Eが実施例5、Fが実施例6である。 実施例1〜6で得られたメソポーラスシリカの細孔分布曲線であり、図中、Aが実施例1、Bが実施例2、Cが実施例3、Dが実施例4、Eが実施例5、Fが実施例6である。
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳しく説明する。
本発明のメソポーラスシリカの製造方法は、
第1工程:アルコキシシランを酸性水溶液中に溶解させて、シリカ前駆体水溶液を調製する工程;
第2工程:芳香族ビニル化合物に由来する構造単位を含み、スルホン酸基を有する親水性重合体ブロック(S)、及び不飽和炭化水素化合物に由来する構造単位を含有する非晶性重合体からなる疎水性重合体ブロック(T)を構成成分とするブロック共重合体(Z)を、有機溶媒に溶解させてブロック共重合体溶液を調製する工程;
第3工程:シリカ前駆体水溶液とブロック共重合体溶液とを混合する工程;
第4工程:第3工程で得られた混合液から、有機溶媒と水とを除去して固形分を得る工程;および
第5工程:第4工程で得られた固形分を焼成する工程;を少なくとも含む。
[第1工程]
アルコキシシランを酸性水溶液中に溶解させることによって、アルコキシシランが有するアルコキシル基(−OR)は酸性水溶液中で加水分解を受け水酸基(−OH)に変換され、さらに脱水縮合して高分子量化して、シリカ前駆体となると推定される。
アルコキシシランとしては、例えば下記一般式(1)で示されるものを用いることができる。
(式中、Rはアルキル基を表し、Yは水素原子、ハロゲン原子、水酸基又は炭化水素基を表し、nは1以上4以下の整数を表す。)
上記一般式(1)におけるRが表すアルキル基に特に制限はなく、直鎖状でも分岐鎖状でもよい。炭素数1〜5のアルキル基が好ましく、メチル基またはエチル基がより好ましい。また、Yが表す炭化水素基としては、例えば、メチル基等の炭素数1〜10のアルキル基;アリル基等の炭素数2〜10のアルケニル基;フェニル基、アルキル置換フェニル基等のアリール基;ベンジル基などのアラルキル基が挙げられる。また、Yが表すハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子および臭素原子が好ましい。
nが2〜4である場合、n個の(OR)は同一または異なっていてもよいが、同一であることが好ましい。nは3または4が好ましい。また、(4−n)が2以上である場合、複数個のYは同一または異なっていてもよい。
上記一般式(1)で表されるアルコキシシランのなかでも、結晶性の良好なメソポーラスシリカを得ることができることから、テトラメチルオルソシリケート(TMOS)(別称:テトラメトキシシラン)、テトラエチルオルソシリケート(TEOS)(別称:テトラエトキシシラン)、およびトリエトキシメチルシランが好ましい。
アルコキシシランは1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
第1工程において用いる酸性水溶液としては、塩酸、硝酸、ホウ酸、臭素酸、フッ素酸、硫酸、リン酸等の無機酸の水溶液が挙げられ、これらは1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。酸性水溶液のpHは、アルコキシシランの加水分解反応を円滑に進める観点から、3以下であることが好ましく、2以下であることがより好ましい。また、前記加水分解反応を阻害しない範囲でアルコール等の有機物を含んでもよい。
第1工程は攪拌下にアルコキシシランを酸性水溶液へ溶解させるのが好ましく、溶解させる際の温度は、0〜80℃の範囲とすることが好ましく、5〜50℃の範囲とすることがより好ましく、10〜30℃の範囲とすることがさらに好ましい。また、アルコキシシランが酸性水溶液に溶解するのに要する調製時間は通常1〜90分の範囲である。また、第1工程は、大気雰囲気下で行うことが好ましい。
[第2工程]
第2工程において、芳香族ビニル化合物に由来する構造単位を含有するスルホン酸基を有する親水性重合体ブロック(S)(以下、「芳香族ビニル化合物に由来する構造単位を含有するスルホン酸基を有する親水性重合体ブロック(S)」を単に「親水性重合体ブロック(S)」と称する)、及び不飽和炭化水素化合物に由来する構造単位を含有する非晶性重合体からなる疎水性重合体ブロック(T)(以下、「不飽和炭化水素化合物に由来する構造単位を含有する非晶性重合体である疎水性重合体ブロック(T)」を単に「疎水性重合体ブロック(T)」と称する)を構成成分とするブロック共重合体(Z)を、有機溶媒に溶解させてブロック共重合体溶液を調製する。当該ブロック共重合体溶液において、ブロック共重合体(Z)は、親水性重合体ブロック(S)を外側に、疎水性重合体ブロック(T)を内側に配向した均等な直径のミセルを形成して均一に分散していると考えている。
第2工程において、ブロック共重合体(Z)を溶解させる有機溶媒としては、安定なミセルを形成する観点から、メタノール、エタノール、n−プロパノール、2−プロパノール、2−メチル−1−プロパノールなどのアルコール;テトラヒドロフラン(THF)などのエーテル;アセトン、シクロヘキサノン等のケトン等の極性有機溶媒が好ましい。また、これらの極性有機溶媒はそれぞれ単独で用いても2種以上組み合わせて用いてもよい。また、ブロック共重合体(Z)の溶解性を向上させる目的でトルエンなどの非極性有機溶媒を極性有機溶媒と混合して用いてもよい。上記した有機溶媒のなかでもシリカ前駆体水溶液との混和性の高さから、THF、THFとエタノールの混合溶媒、THFとn−プロパノールの混合溶媒、シクロヘキサノン、シクロヘキサノンとエタノールの混合溶媒、トルエンと2−プロパノールの混合溶媒、トルエンと2−メチル−1−プロパノールの混合溶媒等が好ましい。
第2工程は、大気雰囲気下で行われることが好ましい。ブロック共重合体(Z)に前記有機溶媒を添加し、通常30分〜3時間撹拌することで、ブロック共重合体溶液を調製できる。調製温度は、ブロック共重合体(Z)が分解しない範囲であれば特に限定はなく、ブロック共重合体(Z)の溶解速度を高める観点から、25〜100℃の範囲が好ましく、40〜70℃の範囲がより好ましい。
調製するブロック共重合体溶液の固形分濃度は、0.5〜30質量%とすることが好ましく、1〜20質量%とすることがより好ましい。0.5質量%よりも低いと生産性が悪くなる傾向があり、30質量%よりも高いと得られるブロック共重合体溶液の粘度が上昇して取り扱いが困難になる場合がある。調製するブロック共重合体溶液の粘度は、例えば20Pa・s以下とすることが好ましく、10Pa・s以下とすることがより好ましい。ブロック共重合体溶液の粘度が20Pa・sを超えると取り扱いが困難になる傾向がある。
以下、ブロック共重合体(Z)について説明する。
<親水性重合体ブロック(S)>
ブロック共重合体(Z)の構成成分である親水性重合体ブロック(S)は、芳香族ビニル化合物に由来する構造単位を含みスルホン酸基を有していない重合体ブロック(S)(以下「芳香族ビニル化合物に由来する構造単位を含みスルホン酸基を有していない重合体ブロック(S)」を単に「重合体ブロック(S)」と称する)の芳香環にスルホン酸基を導入することで得られる。かかる芳香族ビニル化合物が有する芳香環は炭素環式芳香環であるのが好ましく、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、ピレン環等が挙げられる。
前記重合体ブロック(S)を形成できる単量体としては、例えばスチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、4−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、2,5−ジメチルスチレン、3,5−ジメチルスチレン、2−メトキシスチレン、3−メトキシスチレン、4−メトキシスチレン、ビニルビフェニル、ビニルターフェニル、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、4−フェノキシスチレン等の芳香族ビニル化合物が挙げられる。
また、上記の芳香族ビニル化合物の、芳香環のα位の炭素(α−炭素)は、4級炭素であってもよい。α−炭素が4級炭素である場合に、α−炭素に結合している置換基としては、炭素数1〜4のアルキル基(メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、もしくはtert−ブチル基)、炭素数1〜4のハロゲン化アルキル基(クロロメチル基、2−クロロエチル基、3−クロロエチル基等)、フェニル基を挙げることができる。該置換基を有する芳香族ビニル化合物としては、α−メチルスチレン、α−メチル−4−メチルスチレン、α−メチル−4−エチルスチレン、1,1−ジフェニルエチレンが好ましい。
重合体ブロックSの芳香環にスルホン酸基を導入する観点から、上記の芳香族ビニル化合物の芳香環上にはスルホン酸基を導入する反応を阻害する官能基がないことが望ましい。例えば、スチレンの芳香環上の水素(特に4位の水素)がアルキル基(特に炭素数3以上のアルキル基)等で置換されているとスルホン酸基の導入が困難な場合があるので、該芳香環は他の官能基で置換されていないか、アリール基等の、それ自体がスルホン酸基を導入可能な置換基で置換されていることが好ましく、スルホン酸基の導入容易性、スルホン酸基の高密度化等の観点から、スチレン、α−メチルスチレン、4−メチルスチレン、4−エチルスチレン、ビニルビフェニルがより好ましい。
重合体ブロック(S)は、本発明の効果を損なわない範囲内で芳香族ビニル化合物以外の1種以上の他の単量体由来の構造単位を含んでいてもよい。かかる他の単量体としては、例えば、炭素数4〜8の共役ジエン(1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、イソプレン、1,3−ヘキサジエン、2,4−ヘキサジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−エチル−1,3−ブタジエン、1,3−ヘプタジエン等)、炭素数2〜8のアルケン(エチレン、プロピレン、1−ブテン、2−ブテン、イソブテン、1−ペンテン、2−ペンテン、1−ヘキセン、2−ヘキセン、1−ヘプテン、2−ヘプテン、1−オクテン、2−オクテン等)、(メタ)アクリル酸エステル((メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル等)、ビニルエステル(酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル等)、ビニルエーテル(メチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル等)等が挙げられる。芳香族ビニル化合物と、上記他の単量体との共重合形態はランダム共重合であることが望ましい。これら他の単量体は、重合体ブロック(S)を形成できる単量体の10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましい。
重合体ブロック(S)1つあたりの数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定された標準ポリスチレン換算の数平均分子量として、1,000〜50,000の範囲が好ましく、3,000〜40,000の範囲がより好ましく、5,000〜25,000の範囲がさらに好ましい。上記数平均分子量が、1,000未満または50,000を超えると、ブロック共重合体(Z)から誘導されるブロック共重合体(Z)のミセルの形成が困難となる場合がある。
細孔径のバラつきが小さいメソポーラスシリカを再現よく得るためには、重合体ブロック(S)へのスルホン酸基の導入量が重要である。本発明のメソポーラスシリカの製造において、ブロック共重合体(Z)の単位質量あたりのスルホン酸基の当量数(以下「イオン交換容量」と称する)は0.10meq/g以上であることが好ましく、0.30meq/g以上であることがより好ましく、0.75meq/g以上であることが特に好ましい。イオン交換容量の上限については、イオン交換容量が大きくなりすぎると親水/疎水性のバランスが崩れることで、再現よくメソポーラスシリカが得られなくなることから、5.00meq/g以下であることが好ましく、2.5meq/g以下であることがより好ましく、1.1meq/g以下であることがさらに好ましい。スルホン化されたブロック共重合体(Z)のイオン交換容量は、酸価滴定法を用いて算出することができる。
<疎水性重合体ブロック(T)>
ブロック共重合体(Z)の構成成分である疎水性重合体ブロック(T)は不飽和炭化水素化合物に由来する構造単位を含有する非晶性の重合体ブロックである。ここで「非晶性」とは、ブロック共重合体(Z)の動的粘弾性を測定して、結晶性オレフィン重合体由来の貯蔵弾性率の変化がないことによって確認できる。
疎水性重合体ブロック(T)を形成できる単量体は、重合性の炭素−炭素二重結合を有する不飽和炭化水素化合物であれば特に限定されないが、鎖式不飽和炭化水素化合物が好ましく、例えば、炭素数2〜8のオレフィン(エチレン、プロピレン、1−ブテン、2−ブテン、イソブテン、1−ペンテン、2−ペンテン、1−ヘキセン、2−ヘキセン、1−ヘプテン、2−ヘプテン、1−オクテン、2−オクテン等)、炭素数4〜8の共役ジエン化合物(1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、イソプレン、1,3−ヘキサジエン、2,4−ヘキサジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−エチル−1,3−ブタジエン、1,3−ヘプタジエン等)等が挙げられる。上記単量体が重合性の炭素−炭素二重結合を複数有する場合にはそのいずれが重合に用いられてもよく、例えば、共役ジエン化合物の場合には1,2−結合であっても1,4−結合であっても、これらが混ざっていてもよい。
疎水性重合体ブロック(T)を形成できる上記単量体は1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。2種以上を併用する場合は、疎水性重合体ブロック(T)を構成する構造単位の配列はランダムであることが好ましい。
また、疎水性重合体ブロック(T)は、上記単量体以外に、本発明の効果を損わない範囲内で他の単量体由来の構造単位を含有してもよい。かかる他の単量体としては、例えばスチレン、ビニルナフタレン等の芳香族ビニル化合物、塩化ビニル等のハロゲン含有ビニル化合物、ビニルエステル(酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル等)、ビニルエーテル(メチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル等)等が挙げられる。この場合、疎水性重合体ブロック(T)を形成する構造単位の配列はランダムであることが好ましい。上記した他の単量体由来の構造単位は、疎水性重合体ブロック(T)の5質量%以下であることが好ましい。
重合体ブロック(T)1つあたりの数平均分子量は、小さすぎるとミセルの安定性が低下する傾向となり、大きすぎると細孔径が拡張されタンパク質やドラッグの吸着量が逆に低下する傾向となる。このためゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定された標準ポリスチレン換算の数平均分子量として、3,000〜150,000の範囲が好ましく、20,000〜100,000の範囲がより好ましく、30,000〜75,000の範囲がさらに好ましい。
<ブロック共重合体(Z)>
ブロック共重合体(Z)は、親水性重合体ブロック(S)と疎水性重合体ブロック(T)とを、それぞれ1個以上有している。親水性重合体ブロック(S)を複数個有する場合、それらの構造(構成する単量体の種類、重合度、スルホン酸基の種類や導入割合等)は、互いに同じであってもよく、異なっていてもよい。また、疎水性重合体ブロック(T)を複数個有する場合、それらの構造(構成する単量体の種類、重合度等)は、互いに同じであってもよく、異なっていてもよい。
当該ブロック共重合体(Z)における、親水性重合体ブロック(S)と疎水性重合体ブロック(T)の配列の例として、S−T型ジブロック共重合体(S、Tはそれぞれ、親水性重合体ブロック(S)、疎水性重合体ブロック(T)を表す)、S−T−S型トリブロック共重合体、T−S−T型トリブロック共重合体、S−T−S型トリブロック共重合体あるいはT−S−T型トリブロック共重合体とS−T型ジブロック共重合体との混合物等が挙げられる。本発明のメソポーラスシリカにおいては、これらのブロック共重合体は、それぞれ単独で用いても2種以上組み合わせて用いてもよい。
本発明のメソポーラスシリカを形成する前記ブロック共重合体(Z)においては、親水性重合体ブロック(S)の合計量と、疎水性重合体ブロック(T)の合計量の割合は、質量比で10:90〜50:50であるのが好ましく、細孔径のバラつきが小さいメソポーラスシリカを再現よく得る観点から20:80〜40:60であるのがより好ましい。
<ブロック共重合体(Z)の製造>
本発明のメソポーラスシリカを形成するブロック共重合体(Z)は、重合体ブロック(S)と疎水性重合体ブロック(T)とからなるブロック共重合体(Z)を製造した後、重合体ブロック(S)にスルホン酸基を導入する方法を用いることができる。
ブロック共重合体(Z)の製造方法は、構成する単量体の種類、分子量等によって、ラジカル重合法、アニオン重合法、カチオン重合法、配位重合法等から適宜選択されるが、工業的な容易さから、ラジカル重合法、アニオン重合法あるいはカチオン重合法が好ましく選択される。特に、分子量、分子量分布等の観点からいわゆるリビング重合法が好ましく、具体的にはリビングラジカル重合法、リビングアニオン重合法、およびリビングカチオン重合法が好ましい。
重合体ブロック(S)と疎水性重合体ブロック(T)とからなるブロック共重合体(Z)の製造方法の具体例として、重合体ブロック(S)がスチレン、α−メチルスチレン、t−ブチルスチレン等の芳香族ビニル化合物から形成され、疎水性重合体ブロック(T)が共役ジエン又はイソブテンから形成されてなるブロック共重合体(Z)の製造方法について述べる。この場合、工業的容易さ、分子量、分子量分布、重合体ブロック(S)、疎水性重合体ブロック(T)との結合の容易さ等からリビングアニオン重合法またはリビングカチオン重合法で製造するのが好ましく、次のような具体的な合成例が示される。
ブロック共重合体(Z)をリビングアニオン重合によって製造するにあたっては、
(1)シクロヘキサン等の非極性溶媒中でアニオン重合開始剤の存在下、20〜100℃の温度条件下で、芳香族ビニル化合物、共役ジエン、芳香族ビニル化合物を逐次重合させS−T−S型ブロック共重合体(Z)を得る方法;
(2)シクロヘキサン等の非極性溶媒中でアニオン重合開始剤の存在下、20〜100℃の温度条件下で芳香族ビニル化合物、共役ジエンを逐次重合させた後、安息香酸フェニル等のカップリング剤を添加してS−T−S型ブロック共重合体(Z)を得る方法;
(3)シクロヘキサン等の非極性溶媒中でアニオン重合開始剤として有機リチウム化合物の存在下、0.1〜10質量%濃度の極性化合物の存在下、−30〜30℃の温度にて、5〜50質量%濃度の芳香族ビニル化合物を重合させ、得られるリビングポリマーに共役ジエンを重合させた後、安息香酸フェニル等のカップリング剤を添加して、S−T−S型ブロック共重合体(Z)を得る方法;
(4)シクロヘキサン等の非極性溶媒中でアニオン重合開始剤の存在下、20〜100℃の温度条件下で、t−ブチルスチレン、スチレン、共役ジエンを所望の順番で各1回以上逐次添加し、3種類以上の重合体ブロックからなるブロック共重合体(Z)を得る方法;
等が採用される。
ブロック共重合体(Z)をリビングカチオン重合によって製造するにあたっては、
(5)ハロゲン化炭化水素および炭化水素の混合溶媒中、−78℃で、2官能性ハロゲン化開始剤を用いて、ルイス酸存在下、イソブテンをカチオン重合させた後、スチレン等の芳香族ビニル化合物を重合させて、S−T−S型ブロック共重合体(Z)を得る方法(Macromol.Chem.,Macromol.Symp.32,119(1990).)等が採用される。
疎水性重合体ブロック(T)を形成する単量体である不飽和炭化水素化合物が炭素−炭素二重結合(不飽和結合)を複数有する場合、通常、重合したのちに、不飽和結合が残存している。この場合、残存する不飽和結合の一部または全部を、公知の水素添加反応によって飽和結合に変換してもよい。炭素−炭素二重結合の水素添加率は、一般に用いられている方法、例えば、1H−NMR測定によって算出することができる。炭素−炭素二重結合の水素添加率は、50モル%以上が好ましく、80モル%以上がより好ましい。
ブロック共重合体(Z)の数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定された標準ポリスチレン換算の数平均分子量として、通常5,000〜200,000が好ましく、30,000〜150,000がより好ましく、50,000〜100,000がさらに好ましい。ブロック共重合体(Z)の数平均分子量が5000よりも小さいと、これから得られるブロック共重合体(Z)を有機溶媒に溶解させてなるブロック共重合体溶液において、ミセルの安定性が低下する傾向となり、150,000より大きいと、得られるメソポーラスシリカの細孔径が拡張されタンパク質やドラッグの吸着量が低下する傾向となる。
<ブロック共重合体(Z)の製造>
次に、ブロック共重合体(Z)にスルホン酸基を導入してブロック共重合体(Z)を製造する方法について述べる。スルホン酸基の導入(スルホン化)は、公知の方法で行える。例えば、ブロック共重合体(Z)の溶液や懸濁液を調製したのち、後述するスルホン化剤を添加し混合する方法や、ブロック共重合体(Z)に直接ガス状のスルホン化剤を添加する方法が挙げられる。
スルホン化剤としては、硫酸;硫酸と脂肪族酸無水物との混合物系;クロロスルホン酸;クロロスルホン酸と塩化トリメチルシリルとの混合物系;三酸化硫黄;三酸化硫黄とトリエチルホスフェートとの混合物系;2,4,6−トリメチルベンゼンスルホン酸に代表される芳香族有機スルホン酸等が例示される。また、使用する有機溶媒としては、塩化メチレン等のハロゲン化炭化水素、ヘキサン等の直鎖脂肪族炭化水素、シクロヘキサン等の環状脂肪族炭化水素等が例示でき、必要に応じて複数の組み合わせから、適宜選択して使用してもよい。
[第3工程]
前記第1工程で得られたシリカ前駆体水溶液と、第2工程で得られたブロック共重合体溶液とを混合する。混合方法に制限はなく、シリカ前駆体水溶液中にブロック共重合体溶液を供給する方法、ブロック共重合体溶液中にシリカ前駆体水溶液を供給する方法、シリカ前駆体水溶液とブロック共重合体溶液とを同時に容器内に供給する方法のいずれであってもよい。なお、混合に際しては、公知の攪拌装置を用いて、攪拌しながら行うことが好ましい。
シリカ前駆体水溶液とブロック共重合体溶液の量比は、得られるメソポーラスシリカの細孔径のバラつきを低下させる観点から、ブロック共重合体(Z)とアルコキシシランの質量比が0.01:1〜25:1となる割合であることが好ましく、0.05:1〜9:1の割合であることがより好ましい。
第3工程は、大気雰囲気下で行われることが好ましい。第3工程で用いるシリカ前駆体水溶液は、得られるメソポーラスシリカの結晶性を高める観点から、第1工程で調製後、1時間以内に第3工程に供することが好ましく、30分以内に第3工程に供することがより好ましい。混合する際の温度は0〜80℃の範囲が好ましく、5〜50℃の範囲がより好ましく、10〜30℃の範囲がさらに好ましい。また、結晶性の高いメソポーラスシリカが得られることから、混合時間は1〜300分の範囲とすることが好ましく、30〜90分の範囲とすることがより好ましい。
[第4工程]
前記第3工程で得られた混合液から有機溶媒と水とを除去して固形分を得る。得られるメソポーラスシリカの結晶性を高める観点から、第3工程で調製後、1時間以内に第4工程に供することが好ましく、30分以内に第4工程に供することがより好ましい。
第4工程は、大気雰囲気下で行うことが好ましい。第4工程の温度は20〜80℃の範囲が好ましい。第4工程に要する時間は10分〜6時間の範囲が好ましく、より好ましくは30分〜3時間である。市販の赤外線水分計を用いて前記固形分を100℃に保持した際、質量減少率が1分間あたり0.1%以下になるまで有機溶媒と水とを除去することが好ましい。
[第5工程]
前記第4工程で得られた固形分を焼成して、ブロック共重合体(Z)を除去し、細孔径2〜50nmの多数の細孔が周期的に形成されたメソポーラスシリカが得られる。
焼成は、300〜1000℃、好ましくは400〜700℃で加熱する。加熱時間は30分〜12時間の範囲が好ましい。
タンパク質等の吸着分離やDDSで用いられるメソポーラスシリカの細孔径は、2〜50nmの範囲であり、5〜30nmの範囲であることが好ましい。ここで細孔径とは、図5に示す細孔分布曲線における最大ピークを示す細孔径を指す。細孔分布曲線は、測定対象のメソポーラスシリカを液体窒素温度(−196℃)に冷却して窒素ガスによって徐々に加圧し、定容量法により窒素ガスの平衡圧力に対する窒素ガスの吸着量をプロットして得られる図4に示すような吸着等温線の吸着曲線から、BJH法により算出される。BJH法とは、他の細孔と連結していない円筒形の細孔をモデルとして計算したもので、窒素ガスの毛管凝縮と多分子層吸着から細孔分布を求める方法である。その詳細は、「島津評論」(第48巻、第1号、第35〜44頁、1991年発行)に記載されている。
本発明の製造方法により得られるメソポーラスシリカのX線回折パターンを測定したとき、そのX線回折パターンにおいて1nm以上のd値に相当する回折角度に1本以上のピークを有することが好ましい。X線回折ピークはそのピーク角度に相当するd値の周期構造が試料中にあることを意味する。したがって、1nm以上のd値に相当する回折角度に1本以上のピークがあることは、細孔が1nm以上の間隔で規則的に配列していることを意味する。
以上説明したように、本発明におけるスルホン酸基を有する親水性重合体ブロック(S)及び疎水性重合体ブロック(T)を構成成分とするブロック共重合体(Z)においては、親水性重合体ブロック(S)と疎水性重合体ブロック(T)の親水、疎水性の差が極端に大きいため、安定したミセルを形成することが可能になる。また、親水性重合体ブロック(S)が嵩高い芳香族ビニル化合物に由来する構造単位で構成されているため、焼成後に細孔同士を連結する細孔として機能すると考えている。この結果、細孔同士が連結した細孔径の大きいメソポーラスシリカを低温、短時間で製造できるので、工業的に有利な製造プロセスである。
以下に、本発明について更に詳細に説明する。なお、本発明はここに説明する実施例に限定されるものではない。まず、用いた測定方法、条件を示す。
1.GPCによるブロック共重合体(Z)の数平均分子量の測定;
GPCシステム :東ソー株式会社製HLC-8220GPC
カラム :TSKgel Super Multipore HZ-M
TSK guard Column Super MP-M
TSK gel G3000H
RI検出器 :HLC-8220GPC
カラムオーブン温度:40℃
溶離液 :テトラヒドロフラン
標準サンプル:標準ポリスチレンの較正曲線を用いて、換算した
2.H−NMRによるブロック共重合体(Z)の水素添加率およびブロック共重合体(Z)のスルホン化率の測定;
NMRシステム :日本電子製JNM-ECX400
溶媒 :重水素化クロロホルム
基準ピーク :テトラメチルシラン
3.貯蔵弾性率の測定
ブロック共重合体(Z)の20質量%トルエン/イソプロピルアルコール(質量比5/5)溶液を調製し、離型処理済PETフィルム[三菱樹脂(株)製、MRV(商品名)]上に約350μmの厚みでコートし、熱風乾燥機にて、100℃で4分間乾燥後、25℃で離型処理済PETフィルムから剥離させて、厚さ30μmの膜を得た。得られた膜を、広域動的粘弾性測定装置(レオロジ社製「DVE−V4FTレオスペクトラー」)を使用して、引張りモード(周波数:11Hz)で、昇温速度を3℃/分、−80℃から250℃まで昇温して、貯蔵弾性率(E’)、損失弾性率(E’’)及び損失正接(tanδ)を測定した。結晶化オレフィン重合体に由来する80〜100℃における貯蔵弾性率の変化がないことに基づき、疎水性重合体ブロック(T)の非晶性を判断した。この結果、下記実施例、比較例で得られたすべてのブロック共重合体(Z)について、疎水性重合体ブロック(T)は非晶性であった。
4.メソポーラスシリカの細孔径および比表面積の測定
日本ベル株式会社製、自動比表面積/細孔分布測定装置、商品名「BELSORP-miniII」」を使用し、液体窒素を用いて多点法でBET比表面積を測定し、パラメータCが正になる範囲で値を導出した。細孔分布は、前記のBJH 法を採用し、ピークトップを細孔径とした。前処理は100℃で24時間行った。
[合成例1:ポリα−メチルスチレンと水添ポリブタジエンとからなるブロック共重合体(Z−1)の合成]
撹拌装置付き耐圧容器を十分に窒素置換を行った後、充分に脱水したα−メチルスチレン、シクロヘキサン、n−ヘキサンおよびテトラヒドロフランを、各々172g、258.1g、28.8gおよび5.9g投入した。続いてsec−ブチルリチウム(1.3M、シクロヘキサン溶液)17.5mlを添加し、−10℃で5時間重合した。5時間重合後のポリα−メチルスチレンの数平均分子量をGPCにより測定したところ、ポリスチレン換算で6,400であった。次いで、1,3−ブタジエン27gを添加し、30分間撹拌後、シクロヘキサン1,703gを加えた。ポリ1,3−ブタジエンブロック(b1)の数平均分子量は3640であった。次に1,3−ブタジエンを303g加え、温度を60℃まで上昇させながら2時間重合をした。さらに、耐圧容器中の重合溶液に、α,α′−ジクロロ−p−キシレン(0.3M、トルエン溶液)27.0mlを加え、60℃で1時間撹拌し、カップリング反応を行い、ポリ( α−メチルスチレン)−ポリブタジエン−ポリ(α−メチルスチレン)型共重合体(以下mSEBmSと略記する)を合成した。得られたmSEBmSの数平均分子量は74000であり、H−NMR測定から求めた1、2−結合量は43.9% 、α−メチルスチレン単位の含有量は28質量%であった。また、ポリブタジエンブロック中には、α−メチルスチレンが実質的に共重合されていないことが、H−NMRスペクトル測定による組成分析により判明した。
合成したmSEBmSのシクロヘキサン溶液を調製し、十分に窒素置換を行った耐圧容器に仕込んだ後、Ni/Al系のZiegler系水素添加触媒を用いて、水素雰囲気下において8 0 ℃ で5時間水素添加反応を行い、ポリα−メチルスチレン−b−水添ポリブタジエン−b−ポリα−メチルスチレン型トリブロック共重合体(以下、ブロック共重合体(Z−1)と称する)を得た。得られたブロック共重合体(Z−1)の水素添加率をH−NMRスペクトル測定により算出したところ、99.6%であった。
[合成例2:ブロック共重合体(Z−1)の合成]
合成例1で得られたブロック共重合体(Z−1)100gを、攪拌機付きのガラス製反応容器中にて1時間真空乾燥し、ついで窒素置換した後、塩化メチレン1000mlを加え、35℃にて2時間攪拌して溶解させた。溶解後、塩化メチレン41.8ml中、0℃ にて無水酢酸21.0mlと硫酸9.34mlとを反応させて得られた硫酸化試薬を、20分かけて徐々に滴下した。35℃にて0.5時間攪拌後、2Lの蒸留水の中に攪拌しながら重合体溶液を注ぎ、重合体を凝固析出させた。析出した固形分を90℃の蒸留水で30分間洗浄し、ついでろ過した。この洗浄及びろ過の操作を洗浄水のpHに変化がなくなるまで繰り返し、最後にろ取した重合体を真空乾燥してスルホン化物を得た(以下、ブロック共重合体(Z−1)と称する)。得られたブロック共重合体(Z−1)のα−メチルスチレン単位のベンゼン環のスルホン化率はH−NMR分析から27mol%、酸価滴定によって求めたイオン交換容量は0.8meq/gであった。
[合成例3:ブロック共重合体(Z−2)の合成]
合成例2の反応温度を25℃に、反応時間を3時間に変更した以外は、合成例2と同様に行った。得られたスルホン化物(以下、ブロック共重合体(Z−2)と称する)のα−メチルスチレン単位のベンゼン環のスルホン化率はH−NMR分析から36mol%、酸価滴定によって求めたイオン交換容量は0.88meq/gであった。
[合成例4:ブロック共重合体(Z−3)の合成]
合成例3の反応時間を7時間に変更した以外は、合成例3と同様に行った。得られたスルホン化物(以下、ブロック共重合体(Z−3)と称する)のα−メチルスチレン単位のベンゼン環のスルホン化率はH−NMR分析から50mol%、酸価滴定によって求めたイオン交換容量は1.06meq/gであった。
[合成例5:スチレン重合体ブロックとエチレンオキサイド重合体ブロックのブロック共重合体(以下、ブロック共重合体(Q)と称する)の合成]
モノメトキシポリエチレンオキサイド(Acros社製PEG5000)20gをTHF60mlに溶解させた。これにピリジン40mlを添加し、均一な溶液を得た。この溶液を氷浴で冷却し、2−ブロモイソブチリルブロマイド(Acros社製)13mmolを30分かけて滴下した後、更に30℃で12時間撹拌した。室温に冷却後、冷却したジメチルエーテル200mlを溶液に添加して、沈殿物として白色のPEO−Brを得た。PEO−Brは冷却したジメチルエーテルで洗浄し、真空乾燥した。次に、PEO−Br3g、CuBr0.08g、N,N,N’、N’−ペンタメチルジエチレントリアミン(Acros社製)0.10g、スチレン(和光純薬工業製)15gをアンプル管に入れて、脱酸素処理を行った後、110℃、3時間かけて重合反応を実施した。得られたゲル状の生成物をTHF50mlに溶解させ、アルミナカラムに通すことでCu錯体を除去した。これに石油エーテル200mlを添加して再沈殿処理を行うことで、ブロック共重合体(Q)を得た。得られたブロック共重合体(Q)の数平均分子量は36100であった。
<メソポーラスシリカの合成>
0.1M塩酸水溶液0.15gをテトラエトキシシラン0.5g(Aldrich製)に添加して、大気雰囲気下、25℃にて、5分間、マグネティックスターラーを用いて撹拌することでシリカ前駆体水溶液を調製した。次に、合成例4で合成したブロック共重合体(Z−3)0.0556gにTHF2.5mlを添加し、大気雰囲気下において25℃、1時間、マグネティックスターラーを用いて攪拌することでブロック共重合体溶液を調製した。ついで、先に調製したシリカ前駆体水溶液を添加し、1時間攪拌した。得られた混合液を大気雰囲気下で25℃、1時間乾燥することで固形分を得、電気炉(光洋サーモシステム製 KBF442N1)に移して、大気雰囲気下にて1℃/minの昇温速度で600℃まで昇温し、4時間保持した後、電源を切り室温まで冷却することでメソポーラスシリカを得た。
実施例1のブロック共重合体(Z−3)の添加量を0.125gに変更した以外は、実施例1と同様に行い、メソポーラスシリカを得た。
実施例1のブロック共重合体(Z−3)の添加量を0.2143gに変更した以外は、実施例1と同様に行い、メソポーラスシリカを得た。
実施例1のブロック共重合体(Z−3)の添加量を0.3333gに変更した以外は、実施例1と同様に行い、メソポーラスシリカを得た。
実施例1のブロック共重合体(Z−3)の添加量を0.5gに変更した以外は、実施例1と同様に行い、メソポーラスシリカを得た。
実施例1のブロック共重合体(Z−3)の添加量を0.75gに変更した以外は、実施例1と同様に行い、メソポーラスシリカを得た。
合成例2で合成したブロック共重合体(Z−1)を0.125g添加した以外は、実施例1と同様に行い、メソポーラスシリカを得た。
合成例2で合成したブロック共重合体(Z−1)を0.2143g添加した以外は、実施例1と同様に行い、メソポーラスシリカを得た。
合成例2で合成したブロック共重合体(Z−1)を0.3333g添加した以外は、実施例1と同様に行い、メソポーラスシリカを得た。
合成例3で合成したブロック共重合体(Z−2)を0.125g添加した以外は、実施例1と同様に行い、メソポーラスシリカを得た。
合成例3で合成したブロック共重合体(Z−2)を0.2143g添加した以外は、実施例1と同様に行い、メソポーラスシリカを得た。
合成例3で合成したブロック共重合体(Z−2)を0.3333g添加した以外は、実施例1と同様に行い、メソポーラスシリカを得た。
比較例1
2つのエチレンオキサイド重合体ブロックの間にプロピレンオキサイド重合体ブロックを有する非イオン性トリブロック共重合体4g(BASF製 P123銘柄;分子量5900)に水30mlを添加して、大気雰囲気下、25℃にて、1時間、マグネティックスターラーを用いて撹拌することでブロック共重合体溶液を調製、ついで、2M 塩酸120gを添加し、35℃に昇温し、5分間撹拌した。ついで、テトラエトキシシラン8.5gを添加して、35℃にて、20時間、マグネティックスターラーを用いて撹拌した。得られた混合液を、テフロン(登録商標)コートした耐圧容器に移し入れ、80℃にて、12時間加熱したところ、沈殿物として固形分を得た。かかる固形分をろ過により、回収し、さらに水50mlでリンスしたのち、大気雰囲気下、25℃にて、12時間乾燥した。これを電気炉(光洋サーモシステム製 KBF442N1)に移して、大気雰囲気下にて1℃/minの昇温速度で600℃まで昇温し、4時間保持した後、電源を切り室温まで冷却することでメソポーラスシリカを得た。
比較例2
2M 塩酸60g、2つのエチレンオキサイド重合体ブロックの間にプロピレンオキサイド重合体ブロックを有する非イオン性トリブロック共重合体1.01g(BASF製F127銘柄;分子量12600)、KCl1.42g、1、3、5−トリメチルベンゼン2.16gを混合し、大気雰囲気下、15℃にて、24時間、マグネティックスターラーを用いて撹拌した。ついで、テトラエトキシシラン3.96gを加え、24時間撹拌した。得られた混合液を、テフロン(登録商標)コートした耐圧容器に移し入れ、100℃にて、72時間加熱したところ、沈殿物として固形分を得た。かかる固形分をろ過により、回収し、さらに水50mlでリンスした。この固形分を、大気雰囲気下、25℃にて、12時間乾燥したのち、電気炉(光洋サーモシステム製 KBF442N1)に移して、大気雰囲気下にて1℃/minの昇温速度で600℃まで昇温し、4時間保持した後、電源を切り室温まで冷却することでメソポーラスシリカを得た。
比較例3
0.1M塩酸0.3gをテトラエトキシシラン1g(Aldrich製)に添加して、大気雰囲気下において25℃、5分間、マグネティックスターラーを用いて撹拌することでシリカ前駆体水溶液を調製した。次に、合成例5で合成したブロック共重合体(Q)0.1gにTHF2.5mlを添加し、大気雰囲気下において25℃、1時間、マグネティックスターラーを用いて攪拌することでブロック共重合体溶液を調製した。前記ブロック共重合体溶液に前記シリカ前駆体水溶液を添加した後、大気雰囲気下、25℃にて、1時間、マグネティックスターラーを用いて攪拌した。得られた混合液を大気雰囲気下、25℃にて1時間乾燥することで固形分を得たのち、電気炉(光洋サーモシステム製 KBF442N1)に移して、大気雰囲気下にて1℃/minの昇温速度で600℃まで昇温し、4時間保持した後、電源を切り室温まで冷却することでメソポーラスシリカを得た。
実施例1、2、4で得られたメソポーラスシリカの焼成後のGI−SAXSによるX線回折パターンを図1に示す。また、実施例1〜6で得られたメソポーラスシリカの走査型電子顕微鏡写真を図2に、実施例2、5で得られたメソポーラスシリカの透過型電子顕微鏡写真を図3に示す。図1、2、3より実施例で得られたメソポーラスシリカは、球状の細孔形状であることが解った。
実施例1〜6で得られたメソポーラスシリカの窒素吸着等温線を図4に示す。この窒素吸着等温線のヒステリシスからメソポーラスシリカが得られたと考えている。図5には図4の窒素吸着等温線からBJH法を用いて算出した細孔分布曲線を示す。
表1に実施例及び比較例で得られたメソポーラスシリカの細孔径、比表面積、細孔容積のデータを記載した。比表面積は図4の吸着等温線の吸着曲線からBET法を用いて算出した。また、細孔容積は図4の吸着等温線の吸着曲線からt法を用いて算出した。比較例1の細孔径は4.7nmであり、タンパク質やドラッグ等の巨大な分子サイズの吸着に好適な細孔径ではない。比較例2において有機膨張剤を添加し、水熱処理を施すことで細孔径は26nmに拡張され、比表面積、細孔容積共に大きく、巨大分子の吸着に好適なメソポーラスシリカとなる。一方で、比較例3においては、XRD回折、走査型電子顕微鏡写真から31nm近くの球状の細孔が観測されたが、窒素ガスの吸着量が少なく、比表面積も低い値であった。このためタンパク質やドラッグ等の巨大な分子サイズの吸着は期待できない。比較例3以外のメソポーラスシリカは白色であるのに対し、比較例3のメソポーラスシリカは灰色であり、孤立した細孔にブロック共重合体由来の残渣が封じ込められている可能性が示唆され、比表面積が低い一因と推測される。本実施例においては有機膨張剤の添加や、水熱処理を施すことなく16.9〜27.1nmの細孔径が得られ、比表面積、細孔容積共に大きいメソポーラスシリカが得られた。

Claims (3)

  1. アルコキシシランを酸性水溶液中に溶解させて、シリカ前駆体水溶液を調製する第1工程;
    芳香族ビニル化合物に由来する構造単位を含み、スルホン酸基を有する親水性重合体ブロック(S)、及び不飽和炭化水素化合物に由来する構造単位を含有する非晶性重合体からなる疎水性重合体ブロック(T)を構成成分とするブロック共重合体(Z)を、有機溶媒に溶解させてブロック共重合体溶液を調製する第2工程;
    前記シリカ前駆体水溶液とブロック共重合体溶液とを混合する第3工程;
    前記第3工程で得られた混合液から、有機溶媒と水とを除去して固形分を得る第4工程;および
    前記第4工程で得られた固形分を焼成する第5工程;を含むことを特徴とする、メソポーラスシリカの製造方法。
  2. ブロック共重合体(Z)の単位質量あたりのスルホン酸基の当量数が0.10meq/g以上、5.00meq/g以下である、請求項1記載の製造方法。
  3. 第3工程で得られた混合液中のブロック共重合体(Z)とアルコキシシランとの質量比が0.01:1〜25:1である、請求項1または2記載の製造方法。
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