JP5650975B2 - 接着性改良樹脂及びシート - Google Patents
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Description
特許文献5、6、7、8には、シランカップリング剤や架橋剤を配合したEVAやポリオレフィン等の樹脂に電子線を照射してなる太陽光発電装置の封止材が記載されているが、上記過酸化物架橋の欠点を代替するための電子線架橋であったり、電子線による架橋度の制御による成形加工性の調整がその主目的である。また用いられているカップリング剤はビニル基、メタクリロキシ基、エポキシ基を有するシランカップリング剤である。
特許文献9、10には、封止材の接着性向上、劣化抑制を目的とし、エチレン系樹脂に対し、不飽和カルボン酸誘導体やエポキシ化合物を共重合し、あるいはこれらで変性し、さらにシランカップリング剤をコーティングする方法が記載されている。しかし、オレフィン系樹脂にこれらカルボン酸誘導体やエポキシ化合物等の極性モノマーを共重合したり、変成することは技術的難易度が高く、他の物性を犠牲にする可能性が高い。
ポリオレフィン系樹脂に無機材料、例えばガラスとの接着性を付与する方法、特にアミノ基を含有するカップリング剤を添加または塗布した後にエネルギー線を照射する方法に関しての記述はない。
このようなシランカップリング剤は信越化学工業株式会社やダウコーニング社、エボニック社から入手することができる。
カップリング剤の使用量に特に制限はないが、樹脂に混練等で添加する場合、一般的には樹脂に対し0.05質量%〜10質量%の範囲で用いられる。塗布する場合、一般的に0.1g/m2〜20g/m2の範囲で用いられる。
本加速電圧は、シ−トの厚さ等により適切に制御する。
本発明において、電子線処理による樹脂表面近傍の樹脂とカップリング剤間の相互作用強化による接着性付与を目的とする場合には、電子線の加速電圧は低い方が好ましく、好ましくは10keV〜250keV、さらに好ましくは10keV〜150keVである。本発明においては少なくともシ−ト中心部または電子線照射面の反対面は実質的に架橋されず、熱可塑性であることが、特に後述する太陽光発電装置用封止樹脂シ−トのためには好ましい。また、ここで言う相互作用強化とは、例えば表面近傍の樹脂やカップリング剤間のグラフト、架橋、化学反応、分子鎖の絡み合い等、接着性強化に繋がる化学的あるいは物理的相互作用の強化を示す。エネルギー線の照射は、シ−トへのカップリング剤を添加する場合、塗布する場合共に同様に行われるが、樹脂方面近傍のみの相互作用強化が目的である場合、カップリング剤の利用効率の高さという観点からは、カップリング剤の塗布が好ましい。
本発明の樹脂シートを太陽光発電装置(太陽電池)の各種封止用部材、特に封止用シートとして用いる場合、信頼性確保の点から特にガラスとの接着性が重要である。浮動ローラー法剥離試験による90°剥離試験において、25N/25mm以上の剥離強度(接着強度)を示すことが好ましい。
本発明の樹脂シートを太陽光発電装置(太陽電池)の封止材として用いる場合、光エネルギーを無害な熱エネルギーに変換する紫外線吸収剤と光酸化で生成するラジカルを捕捉するヒンダードアミン系光安定剤から構成される耐光剤を配合する。紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系、トリアジン系、ベンゾフェノン系、ベンゾエート系、蓚酸アニリド系、あるいはマロン酸エステル系が例示できる。紫外線吸収剤とヒンダードアミン系光安定剤の質量比は1:100〜100:1の範囲で、紫外線吸収剤とヒンダードアミン系光安定剤の質量の合計量を耐光剤質量とし、その使用量は、樹脂質量100質量部に対し、0.05〜5質量部の範囲である。以上のような耐光剤は、例えば株式会社ADEKAよりアデカスタブLAシリーズとして、あるいは住化ケムテックス社よりスミソーブシリーズとして、入手することが出来る。
本発明の樹脂あるいはそのシートには従来塩ビや他の樹脂に用いられる公知の任意の可塑剤を配合することが出来る。好ましく用いられる可塑剤はオイルまたは含酸素または含窒素系可塑剤であり、好ましくは、パラフィン系オイル、ナフテン系オイル、エステル系可塑剤、エポキシ系可塑剤、エ−テル系可塑剤、またはアミド系可塑剤から選ばれる可塑剤である。
適当な老化防止剤としては、例えばヒンダードフェノール系酸化防止剤、リン系熱安定剤、ラクトン系熱安定剤、ビタミンE系熱安定剤、イオウ系熱安定剤等が挙げられる。その使用量は、樹脂組成物100質量部に対して3量部以下である。
本発明の樹脂からなるシ−トを太陽光発電装置の封止材用シ−トとして用いる場合、その厚みに特に制限はないが、一般に30μm〜1mm、好ましくは100μm〜0.5mmである。本発明の樹脂シ−トを製造するには、インフレーション成形、押し出し成形、Tダイ成形、カレンダ−成形、ロ−ル成形などの公知の成形法を採用することができる。
本発明の樹脂シートからなる封止材は、封止工程の簡略化と太陽光発電装置のリサイクル性を考慮すると架橋処理をおこなうのはカップリング剤と樹脂シ−トの結合を強化するためのシート表面近傍のみが好ましい。この場合、シ−トの大部分を占める中心部分やガラスとの接着面の反対面は実質的な架橋をせずに熱可塑性であることが封止材として用いる上で好ましい。しかしシ−ト自身へのより高度な耐熱性を要求される場合や封止後にはこれ以上の架橋処理を行うことも可能である。架橋処理は、一般には本熱可塑性封止材に架橋材、架橋助剤を添加し、架橋温度以下の条件でフィルム、シートを成形し、太陽電池セルの封止後に所定の架橋条件にて架橋を行う。本発明の熱可塑性封止材の熱可塑性は封止工程で溶融、流動により太陽電池セルを封止する工程で重要である。その後の架橋条件は、用いられる架橋材、架橋助剤により任意に決定される。本熱可塑性封止材に使用可能な架橋材、架橋助剤は、通常ポリオレフィン系樹脂、特にエチレン系樹脂に用いられるものであり公知である。このような架橋処理を行った本発明の封止材はリサイクル性という使用のメリットは無くなるが、高い水蒸気バリア性(低い水蒸気透過率)、高い体積抵抗率、及び酢酸等の腐食性物質を遊離しない点は、太陽電池の信頼性向上の面から有利である。
本発明の樹脂あるいはその樹脂からなるシートには、他に、本発明の目的を損なわない範囲内で必要に応じて、通常の樹脂に用いられる添加剤、例えば、熱安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、充填剤、着色剤、滑剤、防曇剤、発泡剤、難燃剤、難燃助剤等を添加しても良い。
実施例、比較例に用いた原料樹脂は以下の通りである。
LLDPE(直鎖低密度ポリエチレン)
・ダウケミカル社製AFFINITY PL1880 密度0.902g/cm3
・ダウケミカル社製ENGAGE 8100 密度0.870g/cm3
JIS K−6251に準拠し、得られたフィルムを2号1/2号型テストピース形状にカットし、島津製作所AGS−100D型引張試験機を用い、引張速度500mm/minにて初期引張弾性率、破断点伸び、破断強度を測定した。
以下の信越化学工業社製シランカップリング剤を用いた。
3−アミノプロピルトリエトキシシラン(KBE−903)
N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン(KBM−602)
3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(KBM−403)
3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(KMB−503)
ビニルトリメトキシシラン(KBM−1003)
さらに、以下のエボニック社製シランカップリング剤を用いた。
ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)アミン
ブラベンダ−プラスチコ−ダ−(ブラベンダ−社製PL2000型)を使用し、樹脂と添加物の合計約45gを180℃、100rpm、5分間混練し樹脂組成物を作製した。
サンプルシートは加熱プレス法(温度180℃、時間3分間、圧力50kg/cm2)により成形した厚さ0.4mmのシ−トを用いた。
シランカップリング剤、酢酸をシクロヘキサン溶液に溶解し、カップリング剤2質量%、酢酸2質量%の溶液を調整した。バーコーターを用い、45ミクロン厚さでシクロヘキサン溶液をシ−ト上に塗布
した。その後、一昼夜自然乾燥させた。
岩崎電気EB装置TYPE:CB250/15/180Lを用い、加速電圧125kVで所定の照射線量(kGy)の照射を1回実施した。加速電圧125kVでの電子線進入深さは実質的に樹脂表面から0.1〜0.2mmである。塗布法によるシ−トの場合、塗布面に照射を実施した。
幅25mm、長さ60mmのガラス板の表面をアセトンで洗浄し、よく乾燥させた。
シ−トを幅25mm、長さ60mmにカットし、気泡が入らないようにガラス板上に密着させた。その後、加熱オーブン内で0.03MPaの荷重をかけ、160℃、15分間圧着させた。
島津製作所AGS−100D型引張試験機を用い、浮動ローラー法にて90°剥離条件下、引張速度100mm/minにて測定した。
LLDPE(AFFINITY PL1880)に対し、株式会社ADEKA製耐候剤LA−52、LA−36各0.2質量部、酸化防止剤としてチバ・ジャパン社製イルガノックス1076を0.1質量部添加し、上記のようにブラベンダーを用いて混練を行った。得られた樹脂混練物を上記加熱プレス法にて0.4mm厚さのシ−トを作製した。
シクロヘキサンに対し、シランカップリング剤:3−アミノプロピルトリエトキシシランを2質量%、酢酸2質量%の濃度で溶解し、塗布用の溶液を調整した。樹脂シ−トに、バーコーターを用い上記シクロヘキサン溶液を開口厚さ45ミクロンで塗布した。その後ドラフト中で一昼夜乾燥した。この様にして得られたシ−トのカップリング剤塗布面に対し、加速電圧125kVで50kGyの電子線照射を1回行った。照射から3日後、上記にしたがってガラスとの圧着をおこなった。翌日、接着強度測定を行ったところ、接着強度が高くシ−トの材料破壊となった。材破に至る際に測定された接着強度は35N/25mm以上であった。
実施例1と同様に、但し、シ−トの樹脂、シランカップリング剤、電子線照射条件を変えて試験を行った。試験条件及び結果を表2に示す。
<実施例6、7>
実施例1と同様に、ただしシランカップリング剤にエボニック社製ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)アミンを用いた。また、シクロヘキサンに対し、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)アミンを1質量%の濃度で、ただし酢酸は用いずに溶解し、塗布用の溶液を調整し、他は同様に実施した。
<ゲル分測定>
ASTM D−2765−84に従い、以下のようにして求めた。すなわち、精秤した1.0gの樹脂シ−ト(カップリング剤塗布済み、電子線照射済み)を、2mm四方に裁断し100メッシュのステンレス製網袋に包み、精秤した。これを沸騰キシレン中で約5時間抽出したのちに網袋を回収し、真空中90℃で10時間以上乾燥した。十分に冷却後、網袋を精秤し、以下の式により、ポリマー中のゲル量を算出した。
ゲル量=網袋に残留したポリマーの質量/はじめのポリマー質量×100
実施例1〜7で得られた樹脂シ−ト(カップリング剤塗布済み、電子線照射済み)のゲル分はいずれも10質量%以下であった。
実施例と同様に、ただしシ−トに電子線を照射せずにガラスとの接着試験を行った。
実施例と同様に、ただし本発明の範囲外のカップリング剤、すなわち官能基としてアミノ基を含まないカップリング剤を使用し、電子線を照射した後にガラスとの接着試験を行った。
実施例と同様に、ただしカップリング剤を使用せず、電子線を照射した後にガラスとの接着試験を行った。
実施例と同様に、ただしカップリング剤も電子線も用いずにガラスとの接着試験を行った。
Claims (7)
- エチレンとαオレフィンの共重合体であるポリオレフィン系樹脂にアミノ基を有するカップリング剤を添加または塗布し、さらにエネルギー線を照射することを特徴とする、無機材料との接着性を有するポリオレフィン系樹脂またはそのシート。
- エネルギー線が電子線であることを特徴とする請求項1記載の樹脂またはそのシート。
- 無機材料がガラス板であることを特徴とする請求項1又は2記載の樹脂またはそのシート。
- ポリオレフィン系樹脂からなるシ−トにカップリング剤を塗布し、さらにエネルギー線を照射することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項記載のシート。
- エネルギー線が電子線であり、その加速電圧が10〜150keVの範囲であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項記載のシート。
- 請求項1〜5のいずれか一項記載の樹脂またはそのシートを用いた封止材。
- 請求項6記載の封止材を構成要素として含む太陽光発電装置。
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