ところが、特許文献1に記載のルアーはあくまでも漁師が使う延縄漁業用であるため、釣り糸(6)に留め金(9)を介して取り付け固定された円錐形状の錘(8)によって、そのルアー(1)を海中へ沈降させなければならない。そのルアーを海面から浮上しない使用状態に保つための錘(8)が必須不可欠である。
ルアー(1)の空洞部(1a)へ通し込まれた釣り糸(6)の錘(8)と釣り針(7)との相互間に、スポンジなどの匂い含浸部材(10)を内蔵設置して、これに含浸させた生餌の匂い付き海水を、操業中海中へ少しづつ発散させることにより、集魚作用する趣旨からも、ルアーを海中へ沈降させる必要がある。
また、特許文献1に記載のルアーは柔軟性を有する合成樹脂から成るソフトルアーであるとしても、その本体(ボディ)は魚形状の頭部から尾鰭部までの全体として連続一体に成形されたものであり、しかもその表面(外周面)に生魚と同じ状態の着色が施されている。
その結果、その着色を捕獲したい対象魚の種類に応じて、ユーザーである漁師が変更することは不可能であり、希望の着色が施された各種ルアーの新品を買い求めるほかなく、未だ利便性と釣り果に劣る。
特許文献2に記載のソフトルアーも、そのルアー本体(2)が軟質樹脂から一体成形されており、これの内部に空洞なく設置された摂餌体(3)の摂餌成分を、そのルアー本体(2)からの露出部分を経て水中へ流出させることによって、集魚作用するようになっている。その意味でも、このソフトルアーは湖でのバス釣り用として、やはり特許文献1に記載のルアーと変らず、水中での沈降状態に使用されるものである。
また、摂餌体(3)にルアー本体(2)と異なる色彩を付与すると共に、これを外部から目視できるようにするため、ルアー本体(2)を透明又は半透明に形成することも記載されているが、その摂餌体(3)の摂餌成分や色彩を捕獲したい対象魚の種類に応じて、ユーザーの釣り人が変更することはやはり不可能である。
次に、特許文献3に記載されているルアーのボディ(1)は中空であるとしても、金属やプラスチック又は紙から成る反射板(3)のみならず、ライン(釣り糸)を繋ぐためのラインアイ(5)と、釣り針(フック)を取り付けるためのフックハンガー(6)又はヒートン(7)も、そのボディハーフ(半割り体)(2)(2)同士の接合部に設置されている意味から、硬質のプラスチック製品であると考えられ、水中での沈降状態に使用されるものである。
しかも、ルアーボディ(1)自体の表面処理によって付与された色彩や模様と、光を受けて反射する反射板(3)との相乗作用によって、集魚効果を得るようになっているが、そのルアーボディ(1)自体や反射板(3)の表面処理は未だ人工的であるにとどまり、対象魚の餌となる生魚(ベイトフィッシュ)のリアルな外観状態や活動などを印象づけることができないため、釣り果の向上に寄与しない。
それにもまして、上記色彩や模様はルアーボディ(1)自体の表面に塗装されていると共に、ホログラム処理やレーザー処理、メッキ処理などの各種表面処理を施された反射板(3)は、ボディハーフ(2)(2)同士の接合部に沿って介挿固定されているため、ユーザーの釣り人としてはルアーボディ(1)や反射板(3)を、その捕獲したい対象魚にふさわしく表面処理されたそれらと交換することができず、特許文献1、2に記載のルアーと同じく、対象魚の種類毎に異なるルアーの新品を買い求めるほかはない。
更に、特許文献4に記載されているルアーの基体(1)は、魚形状を呈するとしても、金属やプラスチック、ゴム、木材などから製作されており、釣り糸(リーダー)(2)を結び付けるためのフック(3)や、釣り針(5a)(5b)の取付金具(6a)(6b)が固定されている点で、特許文献1、2に記載のような軟質樹脂を素材とするソフトルアーではなく、やはり水中での沈降状態に使用されるものである。
しかも、その魚類の色調及び模様を模した加飾層(7)は、上記基体(1)の固形状態にある立体的な表面へ、インクジェット方式によって直接印刷されている。
そのため、その加飾層(7)によりたとえ対象魚の餌となる生魚(ベイトフィッシュ)に酷似した外観状態を得られるとしても、ユーザーの釣り人としてはその対象魚の種類毎に異なるルアーの新品を買い求めなければならない。その加飾層(7)を捕獲したい対象魚の種類に応じて、ユーザーの釣り人が変更することはできないからである。
要するに、従来ではユーザーである釣り人が、捕獲対象魚の餌となる生魚(ベイトフィツシュ)の輪郭形状、模様又は/及び色彩などの異なる多種類のルアーを組み立てることは不可能であって、その異なるルアーの新品を買い求めるほかないので、経費の負担が重くなり、大変不便でもある。
本発明はこのような諸問題の改良を目的としており、その目的を達成するために、請求項1では透明又は半透明の柔軟な熱可塑性樹脂から捕獲対象魚の餌となる生魚の輪郭形状に成形された左右対称な一対のボディハーフセグメントと、
その各ボディハーフセグメントとほぼ相似な魚形をなす柔軟な熱可塑性樹脂フィルムの表面に、上記生魚の外観状態と同一又は類似する画像が着色塗装やカラー印刷、さし絵描き、その他の表面処理により施された左右一対の転写シートとを備え、
両ボディハーフセグメントの裏面へ対応する上記転写シートを、その画像がボディハーフセグメントの表側から透視できる関係状態として、各々無色の有機溶剤により接着した上、
両ボディハーフセグメントにおける魚形の約3分の2以上を占める前頭側だけを、無色の有機溶剤により縁取り状態に接着して、空洞を有する断面ほぼ楕円形のルアーボディに組み立てる一方、
同じく両ボディハーフセグメントにおける魚形の残る約3分の1以下を占める後尾側を、接着しない開放状態として、
予じめ先端部に釣り針が付属一体化された釣り糸を、上記ルアーボディの開放状態にある後尾側から前頭側の空洞を通じて、口部の前方へ導出配線することにより、そのルアーボディを釣り糸に沿って前後方向へ移動できるように設定したことを特徴とする。
また、請求項2では高強度な熱可塑性樹脂から両ボディハーフセグメントにおける魚形の口部に介挿フィットし得る側面視のほぼ先細り台形で、且つ断面ほぼ楕円形に成形された口部補強芯筒を、
上記両ボディハーフセグメントにおける魚形の口部だけに介挿セットして、その両ボディハーフセグメント同士を無色の有機溶剤により縁取り状態に接着したことを特徴とする。
請求項3ではルアーボディに組み立てられるボディハーフセグメントを向かい合う断面ほぼ半楕円形に成形すると共に、
その魚形の口部から背ビレ部の後端位置付近までの間を、背中面に沿い連続的に縁取る背中側接合面とする一方、
同じく魚形の口部から尻ヒレ部の中間位置付近までの間を、腹面に沿い連続的に縁取る腹側接合面として、
上記ボディハーフセグメントの背中側接合面同士並びに腹側接合面同士を、無色の有機溶剤によって合掌状態又は凹凸嵌合状態に接着したことを特徴とする。
請求項4ではルアーボディのボディハーフセグメント同士が縁取り状態に接着される前頭側での平均肉厚を厚く、接着されず開放状態に残る後尾側での平均肉厚を薄く相違変化させたことを特徴とする。
請求項5では釣り糸の先端部にかしめ付け固定された接続リングと、釣り針の根元部に形成された取付リングとを、可撓な連結紐によって360度の相対的な回転自在に連結すると共に、
その連結紐の作用長さを調整することにより、釣り針の鋭利な先端側だけがルアーボディの開放した後尾側から外方へ、部分的に張り出す関係状態に位置決めセットできるように定めたことを特徴とする。
更に、請求項6では転写シートを画像が施された熱可塑性樹脂フィルムの基材シートと、その基材シートの表面へ無色の有機溶剤によって、上記画像のマスキング状態に接着された透明な熱可塑性樹脂フィルムの離型シートとから成る転写シールとして、
その離型シートの剥ぎ取り露出した上記溶剤層により、上記転写シールの基材シートをボディハーフセグメントの裏面へ接着するように定めたことを特徴とする。
請求項1の上記構成では、魚形ルアーのルアーボディが左右一対のボディハーフセグメントから、有機溶剤による接着として組み立てられていると共に、画像を施された転写シートが各ボディハーフセグメントの裏面(内面)へ、やはり有機溶剤によって接着されているため、ルアーのユーザーである釣り人が上記ルアーボディの人為強制的な分解と、転写シートの剥離とを行うことにより、その転写シートを捕獲対象魚の種類毎に異なる画像のそれと貼り替えたルアーボディとして、何回でも便利良く組み立てることができるのであり、捕獲対象魚の種類毎に異なるルアーの新品を買い求める必要がなくなる。
特に、上記転写シートの画像は柔軟な熱可塑性樹脂フィルムの表面へ、着色塗装やカラー印刷などの処理により施されているため、従来のようなルアーボディの立体的な表面へ直かに着色塗装したり、印刷したりするものに比して、その画像を制約なく高精度に施すことができ、捕獲対象魚の餌となる生魚(ベイトフィッシュ)を撮影したカラー写真も使えるため、上記転写シートの貼り替え可能であることとも相俟って、その捕獲対象魚の索餌本能を大いに刺激し、優れた集魚効果を得られるのである。
また、転写シートの画像は透明又は半透明のルアーボディによって、表側(外側)から被覆されているため、不慮に汚損したり、剥離したりするおそれがなく、その画像は表側(外側)から透視されるも、ルアーボディの表側(外側)凸曲面に各方向から当る光の反射により、言わばウロコがキラキラと輝く生魚の活動を印象づけることができ、上記集魚効果の向上に役立つ。
更に、上記ルアーボディの開放状態にある後尾側から口部の前方に向かってのみ、釣り針付きの釣り糸が導出配線されており、その釣り糸に沿ってルアーボディが前後方向へ移動できるようになっているため、その釣り針に捕獲対象魚が喰い付いて引っ張られると、ルアーボディは釣り針から分離される方向へ移動することとなり、その結果捕獲対象魚には大きな違和感や抵抗感を与えず、又ルアーには大きな損傷を与えず、その耐用性の向上に役立つ。
殊更、請求項2の構成を採用するならば、上記ルアーボディは柔軟な熱可塑性樹脂から成り、その魚形の約3分の2以上を占める前頭側だけが、有機溶剤によって接着されているにとどまり、残る約3分の1以下を占める後尾側が、接着されない開放状態のままにあるとしても、そのルアーボディの口部に別個な口部補強芯筒が介挿セットされた組立状態となっているため、捕獲対象魚に抵抗感や違和感を与えない柔軟性を維持しつつも、その捕獲対象魚の喰い付き時口部に集中する引張応力を分散させることができ、耐久強度に富むルアーを得られるのである。
請求項3の構成を採用するならば、上記ルアーボディを向かい合う断面ほぼ半楕円形の両ボディハーフセグメントから、その魚形の背中側接合面同士並びに腹側接合面同士の連続的な縁取り状態として、安定良く正確に接着することができ、その組立作業を誰でも容易に行える効果がある。
請求項4の構成を採用するならば、柔軟な熱可塑性樹脂から成るルアーボディであるも、その前頭側を魚形の口部補強芯筒と相俟って、捕獲対象魚により破壊されない強度に組み立てる一方、残余の開放状態にある後尾側を、その尾ビレ部から左右方向へ容易に振れ動き開閉させて、生魚(ベイトフィッシュ)のリアルな動きを印象づける効果がある。
また、請求項5の構成を採用するならば、釣り糸に付属している釣り針をルアーボディとの位置関係上、その鋭利な先端側から外方へ部分的に張り出し露呈する長さを、連結紐の長短調整によって、常時適当な一定にセットすることができるほか、捕獲対象魚が釣り針に喰い付いた時には、その釣り針と釣り糸との自由な回転作用により、その捕獲対象魚に抵抗感を与えない効果もある。
更に、請求項6の構成を採用するならば、転写シール又はタック紙となっている転写シートの離型シートを剥ぎ取るだけで、その転写シートの画像が施されている基材シートを、ルアーボディの各ボディハーフセグメントへ確実にすばやく貼り付け転写することができ、特別に有機溶剤を用意する必要がない点で、著しく便利である。
以下、図面に基いて本発明の好適な実施形態を詳述すると、図1〜19はマグロ(捕獲対象魚)のトローリング漁にふさわしい魚形ルアー(A)の組立状態とその構成部材(分解状態)を示しており、(10L)(10R)はその中空のルアーボディ(10)を形作ることになる左右対称な一対のボディハーフセグメント(ボディ半割り体)であって、透明又は半透明の柔軟な熱可塑性樹脂から図9〜14のように、上記マグロの餌となるイワシ(生魚)(ベイトフィッシュ)の輪郭形状(流線形)を備えた向かい合う断面ほぼ半楕円形に射出成形されている。
その熱可塑性樹脂としてはポリスチレンやアクリル樹脂、ポリビニルアセタール、酢酸ビニル樹脂、AS樹脂、ABS樹脂、ポリプロピレンなどの採用を考えることができるが、特に水分を吸収せず、耐候性に富むものが好ましく、アクリル樹脂が最も好ましい。ポリ塩化ビニル樹脂は水分を吸収して白濁化し、死んだ魚の外観状態を印象づけることになるため、本発明の魚形ルアー(A)には好ましくない。
(11b)は各ボディハーフセグメント(10L)(10R)における魚形(イワシ)の口部(12)から背ビレ部(13)の後端位置付近までの間を、背中面に沿って連続的に縁取るフラットな背中側接合面、(11s)は同じく各ボディハーフセグメント(10L)(10R)における魚形(イワシ)の口部(12)から尻ヒレ部(14)の中間位置付近までの間を、腹面に沿って連続的に縁取るフラットな腹側接合面であり、その背中側接合面(11b)と腹側接合面(11s)に各々塗布されるケトン類(好ましくはアセトン)やその他の無色な有機溶剤を介して、そのボディハーフセグメント(10L)(10R)の背中側接合面(11b)同士並びに腹側接合面(11s)同士が接着されることになる。その際、背中側接合面(11b)と連続する背ビレ部(13)の全体同士や腹側接合面(11s)と連続する尻ヒレ部(14)のほぼ前半分同士も、その有機溶剤の塗布によって一緒に接着される。
つまり、上記ボディハーフセグメント(10L)(10R)における背ビレ部(13)の後端位置付近と尻ヒレ部(14)の中間位置付近とを結ぶ仮想直線(Z−Z)よりも前頭側が、その背ビレ部(13)の全体並びに尻ヒレ部(14)の約前半分も含む縁取り状態の接着によって、空洞(H)を有する断面ほぼ楕円形のルアーボディ(10)に組み立てられるのである。その背中側接合面(11b)と腹側接合面(11s)に対する有機溶剤の塗布状態を、図9〜12のドットによって示す。
上記熱可塑性樹脂は有機溶剤に対する可溶性を有し、その溶剤による接着であるため、これが揮散した固化後でも、両ボディハーフセグメント(10L)(10R)を指先での人為強制的に剥離・分解することができ、延いては後述の転写シートを、その画像の異なるそれと貼り替えることができるようになっている。
他方、上記ボディハーフセグメント(10L)(10R)における背ビレ部(13)の後端位置付近と尻ヒレ部(14)の中間位置付近とを結ぶ仮想直線(Z−Z)よりも後尾側は、接着されず、開放状態にある。これによって、ルアーボディ(10)の尾ビレ部(15)が図3のように左右方向へ自由に振れ動く如く、開閉できるようになっている。
図示実施形態のマグロを捕獲対象魚とするイワシの魚形ルアー(A)について、その大きさの目安となるMサイズの一例を挙げると、そのルアーボディ(10)の口部(12)から尾ビレ部(15)までの全体長さ(L)は約225mm、そのルアーボディ(10)を断面ほぼ楕円形に組み立てている最も太い部位における長軸の長さ(Y)は約46mm、同じく短軸の長さ(X)は約20.5mmである。
また、上記ルアーボディ(10)を縁取る状態に延在するフラットな背中側接合面(11b)並びに腹側接合面(11s)の幅(接着代)(W1)はほぼ同じ約5mm〜6mm、同じく背中側接合面(11b)と腹側接合面(11s)との口部(12)を縁取る位置における幅(接着代)(W2)は、最も広い約10mm〜13mmである。
しかも、ルアーボディ(10)のボディハーフセグメント(10L)(10R)同士が縁取り状態に接着される上記仮想直線(Z−Z)よりも前頭側での平均肉厚は、例えば約3mm〜5mmの寸法として厚く成形されている。これに比して、接着されず開放状態に残存している上記仮想直線(Z−Z)よりも後尾側での平均肉厚は、例えば約0.5mm〜2.0mmの寸法として、その尾ビレ部(15)へ行く程徐々に薄く扁平化されており、これによってイワシの生魚を思わせる柔軟性(捕獲対象魚のマグロが喰い付く食感)と、その尾ビレ部(15)の滑らかな振れ動きとを発揮・促進させることができるようになっている。
(16)は上記ボディハーフセグメント(10L)(10R)における魚形の口部(12)を縁取るフラットな背中側接合面(11b)と腹側接合面(11s)から陥没する釣り糸挿通凹溝であり、その背中側接合面(11b)同士並びに腹側接合面(11s)同士が接着された組立状態において、図4〜6のようなルアーボディ(10)の空洞(H)と連通する釣り糸挿通孔(17)を形作ることになる。
(18)は断面ほぼ半楕円形をなす上記ボディハーフセグメント(10L)(10R)の表側(外側)凸曲面へ隆起状態に賦形されたエラ蓋部、(13a)(14a)(15a)は上記背ビレ部(13)と尻ヒレ部(14)並びに尾ビレ部(15)の表面(外面)に各々賦形された凹凸条であり、これに当る光を各方向へ反射させて、そのルアーボディ(10)を生魚(イワシ)のようにキラキラと輝かすことができるようになっている。
更に、(19)は同じくボディハーフセグメント(10L)(10R)の表側(外側)凸曲面に賦形された円形の目受入れ凹段面であり、ここに生魚(イワシ)の目を表わす転写シール(S1)が、嵌め込み状態に接着されることとなる。
その転写シール(S1)としては、例えば図15、16のようなホログラム処理や金属蒸着処理などが施された柔軟な反射シート(20)の表面に、生魚(イワシ)の目(21)となる着色塗装やカラー印刷などと、その透明な熱可塑性樹脂の円錐カバー(22)によるマスキングとを行う一方、同じく反射シート(20)の裏面に離型シート(23)を予じめ接着させた所謂タック紙として用意しておき、その離型シート(23)を剥ぎ取り露出させた接着剤層(24)により、上記ルアーボディ(10)の目受け入れ凹段面(19)へ貼り付けることができるように定めることが好ましい。
上記ボディハーフセグメント(10L)(10R)同士の接着面積を増す必要がある場合には、例えば図20〜23の変形実施形態に示すような言わば腹ビレ部(25)となる張り出し片を、そのボディハーフセグメント(10L)(10R)の腹面に沿って縁取り延在する上記腹側接合面(11s)から、下方へ連続一体に張り出して、その接合面(11s)の幅(接着代)(W1)を部分的に広く設定すれば良い。
また、図1〜8では上記ボディハーフセグメント(10L)(10R)の背中側接合面(11b)同士並びに腹側接合面(11s)同士を、その背ビレ部(13)の全体や尻ヒレ部(14)の約前半分も含むフラットな合掌状態に接着して、空洞(H)を有する断面ほぼ楕円形のルアーボディ(10)に組み立てているが、その熱可塑性樹脂の溶剤による言わば2次的な接着状態として、その溶剤の揮散・固化後でも人為強制的に剥ぎ取り・分解することができるならば、図20〜23に併せて示す如く、そのボディハーフセグメント(10L)(10R)における左右何れか一方の接合面(11b)(11s)から凸条(26)を縁取り状態に突設し、残る他方の接合面(11b)(11s)からその凸条(26)の受け入れ凹条(27)を対応的に陥没させて、その凸条(26)と凹条(27)との嵌合により、位置ズレしない安定な接着状態を保てるように構成しても良い。
(28)はボディハーフセグメント(10L)(10R)の背中側接合面(11b)同士並びに腹側接合面(11s)同士を接着して、空洞(H)を有する断面ほぼ楕円形のルアーボディ(10)に組み立てる際、その魚形の口部(12)からエラ蓋部(18)までの前頭側へ介挿セットされることにより、そのルアーボディ(10)の口部(12)付近を保形・補強する芯筒であって、ルアー(A)を海中へ沈降させる金属の重錘(ウエイト)ではない。そのため、ポリカーボネートやポリアセタール、FRP、その他の好ましくは透明又は半透明な硬質の熱可塑性樹脂から、図4、5、8や図17のような側面視の先細り台形状で、且つ断面ほぼ楕円形に射出成形されている。その熱可塑性樹脂としては強靱性や耐候性などに優れる点で、ポリカーボネートを採用することが好ましい。
しかも、その口部補強芯筒(28)の長手中心線(前後中心線)上には上記ルアーボディ(10)の釣り糸挿通孔(17)と対応合致することになる釣り糸挿通孔(29)と、これよりも径大な円形のリベット受け止め口(30)とが、その前後位置関係のもとに貫通形成されている。その口部補強芯筒(28)のリベット受け止め口(30)には、後述する釣り糸の先端部(後端部)を接続リングとしてかしめ付け固定したリベットが、係止されることになり、延いては後述の釣り針(フック)がルアーボディ(10)の口部(12)から前方へ抜け出さぬようになっている。
更に、(31L)(31R)は上記ルアーボディ(10)のボディハーフセグメント(10L)(10R)とほぼ同じ大きさ並びにほぼ相似な輪郭形状(イワシの魚形)を有する左右一対の転写シートであり、その各個はそのボディハーフセグメント(10L)(10R)に追従・変形できる柔軟なポリオレフィンやナイロン、ビニロン、その他の熱可塑性樹脂フィルムを基材シート(31)として、その表面(片面)に生魚(イワシ)の外観状態(模様又は/及び色彩)と同一又は類似する画像(32)が、着色塗装やカラー印刷、さし絵(イラスト)描き、その他の表面処理により施されたものである。その基材シート(31)としては柔軟性や耐候性などに優れる点で、ポリオレフィンフィルムを採用することが好ましい。
例えば、生魚(イワシ)を撮影したカラー写真をスキャナーで読み取り、上記熱可塑性樹脂フィルムの基材シート(31)へプリントすれば、その生魚(イワシ)と同一のリアルな外観状態を得られ、また同じく基材シート(31)への着色塗装やさし絵(イラスト)描きなどによって、経験上マグロの好みであると知得している背中面が青く、腹面が赤い生魚(イワシ)と類似した外観状態を、人工的に創作することができる。
これらの各種表面処理はルアーボディ(10)のボディハーフセグメント(10L)(10R)へ接着する前に、その基材シート(31)の表面へ実行されるものであるため、その作業上の制約を一切受けることなく、しかも希望の高精度な外観状態を得られることになる。尚、上記基材シート(31)の裏面(片面)には白色のコーティングを施しておくことが好ましい。
そして、上記ボディハーフセグメント(10L)(10R)の縁取り状態にある背中側接合面(11b)と腹側接合面(11s)を除き、その断面ほぼ半楕円形をなしている裏側(内側)凹曲面の全体と尾ビレ部(15)のフラット面へ、図11〜14のように、その裏面(内側)から上記転写シート(31L)(31R)をケトン類(好ましくはアセトン)やその他の無色な有機溶剤によって、その画像(32)がルアーボディ(10)の表側(外側)から透視できる転写状態に接着するのである。
その画像(32)を施された転写シート(31L)(31R)は、表側(外側)から透明又は半透明のルアーボディ(10)によって被覆されることとなるため、そのルアーボディ(10)が断面ほぼ楕円形をなすこととも相俟って、その表側(外側)凸曲面に当る光を各方向へ反射させて、生魚(イワシ)のウロコが輝く動きを印象づけることができ、しかも画像(32)が表側(外側)から汚損するおそれはない。
その場合、転写シート(31L)(31R)の画像(32)が施されている基材シート(31)の表面(片面)を、上記ボディハーフセグメント(10L)(10R)の裏側(内側)から有機溶剤の塗布によって、直かに接着させてもさしつかえないが、図18、19の変形実施形態に示す如く、上記基材シート(31)の表面(片面)へ塗布した無色な有機溶剤層(33)を介して、透明な熱可塑性樹脂フィルムの離型シート(34)をその画像(32)のマスキング状態に予じめ接着させた所謂タック紙又は転写シール(S2)として用意しておき、使用時にその離型シート(34)を剥ぎ取り露出させた上記溶剤層(33)により、上記転写シート(31L)(31R)の基材シート(31)をやはり図11〜14のように、ボディハーフセグメント(10L)(10R)の裏側(内側)から接着して、その基材シート(31)の画像(32)をルアーボディ(10)の表側(外側)から透視できるように定めることが好ましい。
何れにしても、上記転写シート(31L)(31R)における画像(32)の施された基材シート(31)は、柔軟なルアーボディ(10)に追従して変形し得る柔軟な熱可塑性樹脂フィルムから成るため、その柔軟性がない紙やフィルムなどと異なって、上記ルアーボディ(10)の空洞(H)を形作っている断面ほぼ楕円形の裏側(内側)凹曲面に対しても、皺寄りや亀裂などを発生することなく、全面的な密着状態に美しく貼り付けることができ、不慮に剥離するおそれはない。
但し、転写シート(31L)(31R)の基材シート(31)も熱可塑性樹脂フィルムから成り、上記熱可塑性樹脂から成るルアーボディ(10)のボディハーフセグメント(10L)(10R)へ、やはり無色な有機溶剤により言わば2次接着状態に接着されるようになっているため、その溶剤の揮散・固化後に、上記転写シート(31L)(31R)を指先での人為強制的に剥ぎ取って、その異なる画像(32)が施された別個なそれと貼り替えることも可能である。
上記ルアーボディ(10)の空洞(H)を形作るボディハーフセグメント(10L)(10R)の裏側(内側)凹曲面と尾ビレ部(15)のフラット面へ、図11〜14のように転写シート(31L)(31R)を貼り付けた後、そのボディハーフセグメント(10L)(10R)における魚形(イワシ)の口部(12)付近へ、上記口部補強芯筒(28)をフィットする状態に介挿セットし、そのボディハーフセグメント(10L)(10R)の背中側接合面(11b)同士並びに腹側接合面(11s)同士を各々有機溶剤の塗布により合掌状態に接着して、図1〜8や図20、21のような内部が空洞(H)となる断面ほぼ楕円形のルアーボディ(10)に組み立てるのである。
その場合、上記断面ほぼ半楕円形をなすボディハーフセグメント(10L)(10R)の裏側(内側)凹曲面と尾ビレ部(15)のフラット面へ転写シート(31L)(31R)を貼り付ける前に、例えば光を反射して輝く金箔や銀箔、アルミ箔、金紙、銀紙、白紙などの細かいカット片から成るラメ(図示省略)の適当な数量を散布して、その後に上記転写シート(31L)(31R)を有機溶剤により貼り付けても良い。
その転写シート(31L)(31R)とボディハーフセグメント(10L)(10R)との表裏(内外)相互間に上記ラメが介在したとしても、使用に耐える接着状態を依然維持することができ、その散布状態のラメも協働するため、捕獲対象魚(マグロ)の集魚効果がますます向上する。
また、上記ボディハーフセグメント(10L)(10R)の表側(外側)凸曲面から陥没している目受け入れ凹段面(19)へ、生魚(イワシ)の目(21)を表わす小さな円形の転写シール(S1)を嵌め込み状態に接着する。このような目(21)を表出する転写シール(S1)の接着は、ルアーボディ(10)の組み立て後に行っても勿論良い。
更に、上記ルアーボディ(10)の口部(12)を補強する芯筒(28)と、これを挟み付ける(包囲する)ことになる両ボディハーフセグメント(10L)(10R)との接触面には、必らずしも有機溶剤の塗布を要さない。その口部補強芯筒(28)に対しては、柔軟なボディハーフセグメント(10L)(10R)が馴染み良く密着するため、確固な拘束状態に保たれる。
その結果、その高強度の変形しない口部補強芯筒(28)を、上記ルアーボディ(10)に組み立てる際の位置決めガイドとして、これに両ボディハーフセグメント(10L)(10R)の前頭側を先ず安定良く挟み付け乍ら接着し、次いで後尾側に向かって両ボディハーフセグメント(10L)(10R)を縁取り進行する如く接着し続けることにより、誰でも瞬時に正しくルアーボディ(10)への組み立て作業を行えるのである。
しかも、両ボディハーフセグメント(10L)(10R)とその口部補強芯筒(28)は何れも透明又は半透明であるため、上記ルアーボディ(10)への組み立て時にその口部(12)の釣り糸挿通孔(17)(29)同士を一目瞭然に合致連通させることもでき、利便性の向上に役立つ。但し、上記口部補強芯筒(28)は追って転写シート(31L)(31R)により被覆され、ルアーボディ(10)の表側(外側)から透視できなくなる結果、それ自身不透明であってもさしつかえない。
尚、上記タック紙又は転写シール(S2)として用意する転写シート(31L)(31R)の基材シート(31)を、図24、25のような左右一対の転写シート(31L)(31R)が共有する大きな定形の台紙とし、その画像(32)のマスキング状態に接着される透明の離型シート(34)も、その基材シート(31)と同じ大きさ・形状として、その離型シート(34)又は/及び基材シート(31)に上記ボディハーフセグメント(10L)(10R)と対応する魚形の縁取りカット線(C)を付与しておくことにより、そのカット線(C)から転写シート(31L)(31R)を抜き取って、ボディハーフセグメント(10L)(10R)へ転写し得る状態に作成準備する。
そして、このような左右一対の転写シート(31L)(31R)と1セットになる上記ボディハーフセグメント(10L)(10R)の左右対称な一対や目(21)を表わす少なくとも2個の転写シール(S1)、口部補強芯筒(28)、ボディハーフセグメント(10L)(10R)に対する転写シート(31L)(31R)の接着とそのボディハーフセグメント(10L)(10R)同士の接着に用いる有機溶剤などの本発明に係る魚形ルアー(A)を構成する部材や、ルアーボディ(10)への組み立て法や注意点などを記載した説明書を、適当な包装袋に一括収納したキットとして販売することができる。また、上記画像(32)が施された左右一対の転写シート(31L)(31R)だけを、本発明に係る魚形ルアー(A)の言わば交換部品として別に販売しても良い。そうすれば、ユーザーの釣り人に上記ルアー(A)のDIY用品として組立作業する楽しさやその転写シート(31L)(31R)を貼り替える楽しさを与えることも可能となる。
図1〜8や図20、21は上記ルアー(A)の組立状態を示しており、そのルアーボディ(10)における背ビレ部(13)の後端位置付近と尻ヒレ部(14)の中間位置付近とを結ぶ仮想直線(Z−Z)よりも前頭側は、ルアーボディ(10)における全体長さ(L)の約3分の2以上、好ましくは約5分の3を占有して、上記有機溶剤により縁取り状態に接着された断面ほぼ楕円形の空洞(H)を形成しているが、その仮想直線(Z−Z)よりも後尾側に約3分の1以下、好ましくは約5分の2だけ残る占有部位は接着されておらず、開放状態にある。
そのため、上記ルアーボディ(10)の開放状態にある後尾側から空洞(H)の内部へ、予じめ先端部(後端部)に釣り針(フック)(35)が結束されている釣り糸(36)を挿入して、その魚形の口部(12)を補強している芯筒(28)の釣り糸挿通孔(29)と、その口部(12)の釣り糸挿通孔(17)から、前頭側へ導出配線することができる。その結果、ルアー(A)は使用中釣り糸(36)に沿って前後方向へ移動し、その先端部(後端部)に付属している釣り針(35)が、ルアー(A)から引き離されることになる所謂針落ち状態を達成し得るのである。
その場合、釣り糸(36)の先端部(後端部)は図26のような折り返し状態にかしめ付け固定された接続リング(37)として、釣り針(35)の根元部(前端部)に形成された取付リング(38)と高強力なポリエチレン繊維の可撓な紐(好ましくは商品名「ダイニーマ」)(39)を介して連結されており、その連結紐(39)の作用長さ(D)を調整することによって、釣り針(35)をルアーボディ(10)における上記腹側接合面(11s)の後端部(開放エッジ)(11s−E)へ後尾側から係止させて、その鋭利な先端側だけが外方(下方)へ部分的に張り出し露呈する長さを、常時適当な一定に位置決めセットすることができる。
上記ルアーボディ(10)の全体長さ(L)に占める前頭側と後尾側との比率について言及すると、万一その縁取り状態に接着される上記仮想直線(Z−Z)よりも前頭側の占有範囲が約3分の2以下(例えば約2分の1)であり、残余の接着されない後尾側の占有範囲が約3分の1以上(例えば約2分の1)であると、ルアーボディ(10)としての組立強度が低下すると共に、そのルアーボディ(10)の内部に上記連結紐(39)の設置スペースが無くなり、釣り針(35)の効果的な上記位置決め調整を行えず、その釣り針(35)と釣り糸(36)との自由な回転作用も制限されて、延いてはマグロに与える抵抗が大きくなり、好ましくない。
そのため、上記縁取り状態に接着される前頭側での平均肉厚を厚く、開放状態のままに残る後尾側での平均肉厚を薄く相違変化させたこととも相俟って、図示実施形態のように前頭側の占有範囲を約5分の3とし、後尾側の占有範囲を約5分の2とする比率が最も好ましい。
(40)は上記釣り糸(36)の接続リング(37)を折り返し状態にかしめ付け固定したリベットであり、これは上記ルアー(A)を釣り糸(36)から吊り下げたり、或いは釣り糸(36)を前方から引っ張ったりすると、上記口部補強芯筒(28)のリベット受け止め口(30)へ係止することになって、その係止位置から釣り針(35)の根元部(前端部)を結束している位置までの距離が一定に決まるため、その距離を上記連結紐(39)における作用長さ(D)の調整によって、ルアー(A)から釣り針(35)の先端側が外方へ部分的に張り出し露呈する位置関係を、予じめ最適に調整セットすることができるわけである。しかも、その位置決め調整状態にセットされた釣り針(35)とルアー(A)は、釣り糸(36)に対して360度の自由自在に相対回転し得る。
本発明の魚形ルアー(A)は大型回遊魚の代表であるマグロのトローリング漁にふさわしい擬似餌として、図示の実施形態に基き説明した上記構成を備えているため、漁師が使う漁船のみに限らず、プレジャーボート(クルーザー)を利用した所謂スポーツフィッシングとしての特異なトローリングに供することができ、一般的な釣り人でも余暇を楽しみながら優れた釣り果を得られるのである。
図27〜31は本発明の使用状態を示しており、その魚形(イワシの輪郭形状)ルアー(A)を用いて、捕獲対象魚であるマグロのトローリング漁を行うに当っては、上記ルアーボディ(10)の開放状態にある後尾側から内部の空洞(H)と、その口部(12)の補強芯筒(28)とを通じて、前方へ導出配線した釣り針(フック)(35)付き釣り糸(36)を、後述する適当な長さの枝糸(ブランチライン)(BL)として、その前端部(根元部)へ取り付けたスナップ開閉式の係止金具(41)により、幹糸(メインライン)(ML)の途中へ着脱自在に接続できるように準備しておく。
その幹糸(メインライン)(ML)と垂れ糸(タグライン)(TL)並びに補助制御糸(アクションライン)(CL)としては上記した高強力なポリエチレン繊維の可撓な紐(商品名「ダイニーマ」)を採用し、枝糸(ブランチライン)(BL)としてはナイロン糸を採用することが好ましい。
他方、プレジャーボート(クルーザー)などの船体(B)におけるコックピットデッキやフライングデッキ、その他の適当な高さ位置へ、例えば最長約12mまで伸ばすことができるテレスコピック式(振り出し式の5本継ぎ)の繊維強化樹脂(FRP)から成る高弾力性の立て竿(スティック)(42)を、例えば約7.35mの背丈(3本継ぎ)として取り付け固定すると共に、釣り人(M1)の手元になる船体(B)の適当な位置へ、巻取リール(43)が付属する釣り竿(ボートロッド)(44)の受け金具(45)を取り付け固定しておく。
そして、捕獲後の最終的には垂れ下がることとなる比較的短い一定長さ(例えば約8m)の垂れ糸(タグライン)(TL)と、これよりもはるかに長い適当な長さ(例えば約100m)の上記幹糸(メインライン)(ML)とを、上記立て竿(スティック)(42)の上端部(竿先部)から海の沖方向(後方)へ繰り出して、その幹糸(メインライン)(ML)の先端部(後端部)へ抵抗板(46)を取り付ける。
更に、その幹糸(メインライン)(ML)の途中へ複数(図示実施形態では合計4個)の枝糸係止リング(47)を、適当な前後相互間隔(例えば約10m)おきに造形して、その各枝糸係止リング(47)へ図28の拡大図に示す如く、上記枝糸(ブランチライン)(BL)のスナップ開閉式係止金具(41)を着脱自在に係止させることにより、その魚形ルアー(A)を上記幹糸(メインライン)(ML)から吊り下がる接続状態に保つ。
その場合、図27の全体図から確認できるように、幹糸(メインライン)(ML)から魚形ルアー(A)を吊り下げる枝糸(ブランチライン)(BL)の作用長さは、上記立て竿(スティック)(42)の上端部(竿先部)から沖方向(後方)へ延長された幹糸(メインライン)(ML)の言わば後下がり傾斜角度に応じて、例えば約3.5m〜6.5m、約3m〜5m、約2.5m〜4.0m並びに約2.0m〜2.5mというような順次段階的に短かく相違変化させることにより、その複数(図示の実施形態では合計4個)のルアー(A)を悉く海面(L−L)と平均的に同じ高さか、又はその海面(L−L)よりも若干浮上する高さに位置決め調整セットし、海中へ沈降しない状態に保つのである。
上記抵抗板(46)は繊維強化樹脂(FRP)やポリプロピレンなどから、図29のような前後方向へ一定長さ(例えば約1,000mm)だけ延在する胴体(46a)と、左右方向へ一定長さ(例えば約300mm)だけ横架する翼板(46b)の複数とが直交する形態に組み立てられており、その重量(例えば約10Kg)も含む引張抵抗力によって、上記垂れ糸(タグライン)(TL)と幹糸(メインライン)(ML)とを立て竿(スティック)(42)からの一直線状に緊張させるだけでなく、その翼板(46b)によって海水を激しくはね上げる積極的な動きと音が、マグロの餌となる生魚(イワシ)の群れを感得させ、集魚作用を果すものであり、海中を曳かれる潜行板ではない。
但し、幹糸(メインライン)(ML)の根元部(前端部)は上記釣り竿(ボードロッド)(44)に付属している巻取リール(43)への巻き付け状態にあって、これから繰り出されるようになっており、その幹糸(メインライン)(ML)の途中に造形されたブレーカー係止リング(48)と、上記垂れ糸(タグライン)(TL)の先端部(後端部)に結束されたスナップフック金具(49)とが、図30に抽出して示すような好ましくは生分解性樹脂の組紐から成るブレーカー(50)を介して、切り離すことができる状態に連結されている。
上記幹糸(メインライン)(ML)が枝糸(ブランチライン)(BL)のルアー(A)に喰い付いたマグロの動きにより、その先端部(後端部)から強い引っ張り力を受けた時には、その途中に介在しているブレーカー(50)が切断されて、それまでの垂れ糸(タグライン)(TL)と連結していた配線系統から、釣り竿(ボードロッド)(44)の巻取リール(43)に巻き取られる配線系統へ、自づと変更されるようになっているのである。
更に、(CL)は上記垂れ糸(タグライン)(TL)の先端部(後端部)付近へ着脱自在に接続される補助制御糸(アクションライン)であり、その垂れ糸(タグライン)(TL)から船体(B)へ垂れ下がる補助制御糸(アクションライン)(CL)の下端部を、その船体(B)に同乗した釣り人(M1)の言わば補助者(M2)が、引っ張ったり、放したり操作することによって、上記魚形ルアー(A)を人為的に昇降させる協力も行えるようになっている。(51)はその補助制御糸(アクションライン)(CL)の上端部に結束されたスナップ開閉式の係止金具を示しており、上記枝糸(ブランチライン)(BL)の係止金具(41)と同じものである。
尚、上記幹糸(メインライン)(ML)の巻取リール(43)を付属している釣り竿(ボードロッド)(44)は図31のように、その船体(B)に固定設置された受け金具(45)へ、抜き差し自在に差し込みセットされるようになっている。
(52)はその釣り竿(ボードロッド)(44)に設置された複数の幹糸(メインライン)ガイド金具であり、これによって上記枝糸係止リング(47)やブレーカー係止リング(48)を有する幹糸(メインライン)(ML)が、円滑に支障なく挿通されるようになっている。
先に目安として例示した長さなどの数値から明白なように、上記トローリング漁の操業範囲は広大であるため、その操業中であることを他船に知らせる目印の旗(53)を、上記垂れ糸(タグライン)(TL)に取り付けて安全性を確保することが望ましい。
上記のような立て竿(スティック)(42)から順次垂れ糸(タグライン)(TL)とブレーカー(50)、幹糸(メインライン)(ML)並びに抵抗板(46)が一直線状になった準備完了後、レジヤーボート(クルーザー)などの船体(B)を適当な速度(例えば約5ノット〜8ノット)で走らせ、その抵抗板(46)を曳行すると、波の抵抗を受けて、幹糸(メインライン)(ML)に張力差が生じ、これを弾力性がある立て竿(スティック)(42)の反発力により緩和し、その幹糸(メインライン)(ML)の弛緩を解消して、すばやく緊張させることになる。
また、船体(B)の走行中にはバウンドやローリング、ピッチングなどが発生し、上記立て竿(スティック)(42)の上端部が前後方向や左右方向へ振れ動くため、延いては上記幹糸(メインライン)(ML)から複数の枝糸(ブランチライン)(BL)を介して並列状態に吊り下がっているルアー(A)が、波も受けて、海面(L−L)を叩いたり、ジャンピング(海面から出没又は昇降)したり、或いは海面(L−L)上をトビウオの如く飛んだりすることを繰り返すことになり、これらの複雑且つ不規則(アットランダム)な動きと、これに伴ない発生する音並びに輝きが、捕獲対象魚であるマグロの索餌本能を大いに刺激する。併せて、抵抗板(46)の曳行中に発生する海水の激しいはね上げと、その動きに伴なう音も、同じくマグロの索餌本能に強くアピールし、有効な集魚効果を得られることになる。
更に、上記ルアー(A)自身の中空ボディ(10)は透明又は半透明の柔軟な熱可塑性樹脂から成り、生魚(イワシ)の外観状態と同一又は類似する画像(32)を備えた転写シート(31L)(31R)が、ルアーボディ(10)の裏側(内側)凹曲面に有機溶剤を介して接着されているため、そのルアーボディ(10)の表側(外側)凸曲面に各方向から当る光の輝きも、上記マグロにリアルな生魚(イワシ)の動きを印象づけることとなり、集魚効果の向上に役立つ。
その場合、垂れ糸(タグライン)(TL)から船体(B)へ垂れ下がる補助制御糸(アクションライン)(CL)を、釣り人(M1)の補助者(M2)やその他の同乗者が、引っ張ったり、放したり操作して、上記ルアー(A)を積極的に昇降させる如く、その動きを人為的に制御することもできる。
そして、上記ルアー(A)は幹糸(メインライン)(ML)から枝糸(ブランチライン)(BL)を介して、海面(L−L)と平均的に同じ高さか又は海面(L−L)から若干浮上する高さに吊り下げられているため、大型の回遊魚であるマグロは上記集魚作用を受けて、海面(表面)(L−L)へ集まり、海中(下方)から飛び出してルアー(A)の就中後尾側へ喰い付くことになる。そのルアー(A)の全体がマグロに呑み込まれることもある。
その時には、上記弾力性に富む立て竿(スティック)(42)がその上端部(竿先部)から急速に弓の如く弯曲変形すると共に、その負荷に応じた復元変形も行うため、上記マグロに強いショックを与えるおそれはなく、その弾性変形に伴って生成される時間差が、上記マグロの所謂口離れや口切れなどを防止することになる。
併せて、ルアー(A)のボディ(10)が柔軟な熱可塑性樹脂から成り、その内部に空洞(H)を有するほか、特にマグロの喰い付きやすいルアーボディ(10)の後尾側が、前頭側からの徐々に薄肉・扁平化されているため、マグロに生魚(イワシ)との違和感を与えるおそれがなく、口離れの防止に寄与するのであり、しかもそのルアーボディ(10)の後部側には釣り針(フック)(35)が存在するため、上記立て竿(スティック)(42)の復元反撥力とも相俟って、その釣り針(35)に対するマグロの確実な口掛かり状態を得られるのである。
上記ルアー(A)が幹糸(メインライン)(ML)から枝糸(ブランチライン)(BL)を介して吊り下がる状態のもとでは、図26、28に示す如く、そのルアー(A)における口部補強芯筒(28)のリベット受け止め口(30)と、釣り糸(枝糸)(36)の接続リング(37)にかしめ付け固定されているリベット(40)とが係止しており、ルアー(A)の開放状態にある後尾側から釣り針(フック)(35)の鋭利な先端側が部分的に外方へ張り出す位置決めセット状態にあるため、ルアー(A)へマグロが喰い付き、そのルアー(A)を海中へ引き込もうとする瞬間には、そのルアー(A)の口部(12)に最大の負荷(引張応力)が集中作用することになるが、その口部(12)は内側から高強度な熱可塑性樹脂の補強芯筒(28)によって補強されている結果、破壊されてしまうおそれはない。
そして、上記ルアー(A)の釣り針(35)に口掛かりしたマグロは、その釣り糸(枝糸)(36)を引っ張ることになるため、ルアー(A)の後尾側がマグロに喰い切られて残る前頭側や、喰い切られることなく全体的に残るルアー(A)は、釣り針(35)と引き離される如く、釣り糸(枝糸)(36)に沿って幹糸(メインライン)(ML)が存在する前方へ移動することとなり、マグロに対するルアー(A)の抵抗感やルアー(A)自身の損傷などを可及的に減少させることができる。
更に、上記ルアー(A)に喰い付いたマグロの強い引っ張り力を受けると、幹糸(メインライン)(ML)の途中を立て竿(スティック)(42)に連結しているブレーカー(50)が切断され、その立て竿(スティック)(42)の上端部から垂れ糸(タグライン)(TL)が垂れ下がる一方、幹糸(メインライン)(ML)は釣り竿(ボードロッド)(44)の巻取リール(43)と連続する配線系統へ変更されるため、釣り人(M1)がその幹糸(メインライン)(ML)の巻取リール(43)を回転操作して、マグロを船体(B)へ引き寄せ、ギヤフなどを用いて船体(B)の内部へ取り込むのである。その際、マグロが喰い付いていないルアー(A)の釣り糸(枝糸)(36)については、その係止金具(41)を上記幹糸(メインライン)(ML)から取りはずせば良い。
冒頭の特許文献1に記載されている延縄漁では、ルアー(擬似餌)を錘によって海中へ沈めており、また従来のトローリング漁では漁船から左右方向へ横竿を張り出して、これから吊り下げたルアーを潜行板により海中へ沈めた状態のもとで曳行している。そのため、その何れの漁法においても、ルアーの動きが単調であって、複雑且つ不規則に変化せず、その動きに伴なう音や輝きなども起生し難い結果、捕獲対象魚の集魚作用と延いては釣り果に劣るのである。
これに比して、本発明の魚形ルアー(A)を用いた上記トローリング漁の場合、海面(表層)を回遊魚の言わば漁場として、そのルアー(A)が弾力性のある立て竿(スティック)(42)や抵抗板(46)の働きによって、海面(L−L)を叩いたり、トビウオの如く飛んだり、小魚の逃げ惑ったりする複雑且つ不規則な動きを繰り返し、その動きに伴なう音や輝きなども発生するため、捕獲対象魚(マグロ)の索餌本能を大いに刺激することができ、有効な集魚作用と延いては優れた釣り果を得られるのである。
捕獲対象魚の餌になる生魚(ベイトフィッシュ)は、その対象魚の種類や生息地、釣りを行う季節・天候・場所などの諸条件によって異なり、同じ種類の対象魚であっても、個体毎の学習効果や生息地などの如何では、その餌になる生魚が異なることもある。
そのため、釣り人としても釣り果を最も期待できるルアーが、どのような輪郭形状、模様又は/及び色彩を備えたものであるか選定するに当り、上記諸条件での反復的な実験・調査や比較・検討などを行う必要がある。
この点、本発明の上記魚形ルアー(A)ではそのルアーボディ(10)のボディハーフセグメント(10L)(10R)を着脱自在に組み立てることができ、そのボディハーフセグメント(10L)(10R)の裏面(内面)へ転写シート(31L)(31R)を、その画像(32)が異なるものと貼り替えることができるようになっているため、ユーザーである釣り人としては、従来のように各種ルアーの新品を一々買い求める必要なく、その転写シート(31L)(31R)の貼り替えを行うだけで、上記画像(32)が異なる多種類のルアー(A)を、言わば手作りできるのである。
そして、その画像(32)が異なる多種類のルアー(A)を、船体(B)へ持込み、例えば図27のような幹糸(メインライン)(ML)から吊り下がる複数のルアー(A)につき、その転写シート(31L)(31R)の画像(32)が悉く異なるそれを、言わば組み合わせ使用することにより、どのような模様又は/及び色彩の画像(32)を備えたルアー(A)が、最も高い釣り果を得られるか否か、言わば比較実験して、その優劣やその他の必要なデータを集めるようなことも行えるのである。また、ルアー(A)自身が破損したり、更にその転写シート(31L)(31R)が剥離したりした場合にも、新らたなルアー(A)の組立を何時・何処でも容易に行えるのであり、利便性にも優れる。
尚、図示の実施形態ではマグロを捕獲対象魚として、ルアー(A)をその餌であるイワシの魚形に作成しているが、捕獲対象魚の餌となる比較的小さな生魚(ベイトフィッシュ)である限り、サバやその他の輪郭形状に作成してもさしつかえない。捕獲対象魚の餌となり得ても、その魚形でないイカやタコなどは本発明に含まれない。