JP5648158B2 - 電気防食用流電陽極 - Google Patents
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Description
この電気防食用流電陽極を金属構造物に取り付ける方法としては、熔接が一般的に用いられているが、磁気吸引力により取り付ける方法も提案されている。
しかし、この特許文献1に記載されている磁気吸着装置では、該磁気吸着装置に使用されるリング状の永久磁石が市販されていないため、新たにそれを製造しなければならず、余りにも高価になり過ぎて、熔接などの固定手段を採用するのが現実的であった。
「金属構造物の電気防食用流電陽極において、前記金属構造物に防食電流を通電するための陽極本体と、該陽極本体を前記金属構造物に固定するための固定手段とした磁極分散型磁気吸着装置とを備えた電気防食用流電陽極であり、前記磁極分散型磁気吸着装置が、吸着面に一方の磁極をもち、該吸着面に背向する背向面に他方の磁極をもつ板状乃至角柱状の永久磁石と、前記永久磁石を所定の間隔を置いて隣り合う磁極が互いに異極となるように複数個配列して凹部に収容した軟磁性材料からなるトレー状の凹形ヨークと、前記永久磁石の間隔を所定に保つために前記凹形ヨークの凹部に固着した軟磁性材料からなる中仕切りヨークとを備えたことを特徴とする電気防食用流電陽極。」
凹形ヨーク2に収容された四個の永久磁石1は、中仕切りヨーク3により、隣り合う永久磁石と互いに該ヨーク3の幅の間隔が保持される。
また、図1に示すように、凹形ヨーク2に収容された四個の永久磁石1は、隣り合う永久磁石の磁極が互いに異極となるように配列されている。これは異極どうしを近づけると二者間に互いに引き寄せる吸引力が作用するため、永久磁石1を凹形ヨーク2に収容することが容易になるからである。
一方、中仕切りヨーク3は、永久磁石1の吸着面11より突出しないように、その厚みが永久磁石1の高さより低く形成されている。
また、図2に示すように、凹形ヨーク2には、底部(バックヨーク部)23の中央部に、該底部を貫通するボルト孔22が形成されており、一方、中仕切りヨーク3には、十字形状の交差部に、該交差部を貫通するボルト孔32が形成されている。そして、ボルト31を、中仕切りヨーク3のボルト孔32に挿通し、次いで凹形ヨーク2の表面側から背面側までボルト孔22に挿通し、座金33を介してナット34を螺合させることにより、凹形ヨーク2の凹部21内に中仕切りヨーク3が固着されている。
中仕切りヨーク3の形成材料も、軟磁性材料であれば特に制限されるものではなく、凹形ヨーク2の形成材料と同様のものが挙げられる。
永久磁石の配列個数及び配列形態は、特に制限されるものではないが、海洋や河川などに設置される金属構造物に電気防食用流電陽極を取り付け固定するために使用する場合には、一般には、永久磁石として、市販の永久磁石、例えば3〜60mm×3〜60mm×厚み(高さ)1〜50mmの大きさで、残留磁束密度10kg以上、保磁力10kOe以上、最大エネルギー積30〜55MGOe程度のネオジウム系磁石を用いる場合、縦2〜33個×横2〜33個で計4〜1089個程度を配列するとよい。
また、永久磁石の形状も板状に限定されるものではなく、1〜100mm×1〜200mm×厚み(高さ)1〜50mmの板状乃至角柱状のものを用いることができる。
また、凹形ヨーク2の形状も吸着方向から平面視して矩形に限定されるものではなく、円形や多角形などのものを用いることもできる。
また、中仕切りヨーク3の固着手段も、前記の図1及び図2に示す実施形態におけるボルトとナットに限定されるものではなく、例えば、中仕切りヨーク3を凹形ヨーク2と一体的に形成してもよい。
また、取付部2Bの両先端部に取り付けられた係止部3Bは、その両端部及び中央部の計3箇所にボルト孔が設けられた断面L字状の長尺状の鋼製本体31Bと、該本体31Bの両端部のボルト孔それぞれに取り付けられたボルト及びナット32Bとから構成されている。係止部3Bの中央部に設けられたボルト孔は、係止部3Bを取付部2Bの先端部に取り付けるためのボルト孔である。
即ち、磁極分散型磁気吸着装置Aは、永久磁石1の吸着面11が金属構造物10の表面に対面するように、取付部2Bの先端部に取り付けられており、係止部3Bは、取付部2Bの先端部の金属構造物側の反対面に取り付けられている。
また、係止部3Bは、本体31Bの両端部のボルト孔それぞれに取り付けられたボルト及びナット32Bのボルト部分が、それぞれ、金属構造物10に当接するように、取付部2Bの両先端部に取り付けられている。
磁極分散型磁気吸着装置A及び係止部3Bを取付部2Bの先端部に取り付けるための前記ボルト31の長さは、その先端が、磁気吸着装置Aにおける永久磁石1の吸着面11より突出しない長さである。
また、本実施形態の電気防食用流電陽極Bは、係止部3Bの本体31Bの両端部のボルト孔それぞれに取り付けられたボルト及びナット32Bのボルト部分が、それぞれ、金属構造物10に当接するように、係止部3Bが取付部2Bの両先端部に取り付けられているため、電気防食用流電陽極Bの長手方向に対して垂直方向(=金属構造物10の幅方向)の振れを防止することができる。
下記の永久磁石1を4個、凹形ヨーク2及び中仕切りヨーク3を用いて、図1及び図2に示す実施形態の磁極分散型磁気吸着装置Aを作製した。
永久磁石1:市販のネオジウム系磁石(七星通(株)製の38mm×30mm×厚み(高さ)12.7mmの大きさで、残留磁束密度12.8〜13.2kg、保磁力11.5kOe以上、最大エネルギー積40〜43MGOeのネオジウム系磁石)
凹形ヨーク2:95mm×79mm×高さ18mmの大きさの鋼製のヨーク。凹部21の大きさは86mm×70mm×深さ13.5mm。
中仕切りヨーク3:鋼製のヨーク。幅10mm、厚み3.2mm。
下記の永久磁石1を6個、凹形ヨーク2及び中仕切りヨーク3を用いて、図3に示す実施形態の磁極分散型磁気吸着装置A’を作製した。
永久磁石1:市販のネオジウム系磁石(七星通(株)製の38mm×30mm×厚み(高さ)12.7mmの大きさで、残留磁束密度12.8〜13.2kg、保磁力11.5kOe以上、最大エネルギー積40〜43MGOeのネオジウム系磁石)
凹形ヨーク2:143mm×79mm×高さ18mmの大きさの鋼製のヨーク。凹部21の大きさは134mm×70mm×深さ13.5mm。
中仕切りヨーク3:鋼製のヨーク。幅10mm、厚み3.2mm。
実施例1及び2で作製した本発明の電気防食用流電陽極に係る磁極分散型磁気吸着装置A及びA’について、下記の方法により耐荷重試験を行い、磁気吸引力を測定した。その結果を表1に示す。
〔耐荷重試験の方法1〕
鋼板(400mm×2000mm×t20mm)を直立に支持し、この鋼板に、磁極分散型磁気吸着装A及びA’を吸着させた。なお、磁気吸着装置A及びA’におけるボルト31は長尺のボルトに代え、底部(バックヨーク部)23からボルトを延出させて錘を吊り下げられるようにした。そしてこのボルトにかける荷重は、70kgから10kgずつ順に増やしていき、磁気吸着装置A及びA’が下方向へ10mm程度ずれた時点まで試験を続けた。この試験結果から、電気防食用流電陽極の質量が重いものであっても、磁極分散型磁気吸着装置の大きさを変えれば、堅固に固定することができることがわかった。
上記実施例1の磁極分散型磁気吸着装置Aを4個、陽極本体1B、陽極本体1Bの長手方向の両端側面からそれぞれ延設された取付部2B及び該取付部2Bそれぞれの先端部の金属構造物側の面に取り付けられた一枚の鋼板35を用いて、図4に示すような実施形態(係止部3Bを除いた実施形態)の本発明の電気防食用流電陽極B’を作製した。
磁極分散型磁気吸着装置A:95mm×80mm×高さ18mm
陽極本体1B:(120mm+140mm)×140mm×長さ730mm
取付部2B:平鋼50mm×厚み9mm−340mm
鋼板35:100mm×2000mm×厚み12mm
上記実施例1の磁極分散型磁気吸着装置Aを4個から8個に変更した以外は、実施例3と同様にして本発明の電気防食用流電陽極B”を作製した。
上記実施例4の電気防食用流電陽極B”における取付部2Bの両先端部に係止部3Bを取り付けて、図4に示すような実施形態の本発明の電気防食用流電陽極B'''を作製した。
鋼製本体31B:45mm×45mm×厚み4mm
ボルト及びナット:六角ボルトM20×長さ200mm。六角ナットM20
金属構造物に波が反射し、吸着固定した電気防食用流電陽極に対して水平方向に及び傾斜方向に引き離す力が働くことも考慮する必要がある。そのため、実施例3、4及び5で作製した本発明の電気防食用流電陽極B’、B”及びB'''について、下記の方法により耐荷重試験を行い、磁気吸引力を測定した。その結果を表2に示す。
〔耐荷重試験の方法2〕
試験台上に鋼板(400mm×2000mm×t20mm)を水平に固定し、この鋼板に電気防食用流電陽極B’、B”及びB'''を吸着させた状態でチェーンブロック及びバネ秤を用いて、水平方向に(電気防食用流電陽極に対して垂直に)及び傾斜方向に(電気防食用流電陽極に対して45°に)引っ張り、吸引が解除される力を測定した。よって、電気防食用流電陽極に対して水平方向に及び傾斜方向に引き離す力が作用しても、堅固に固定することができることがわかった。
1 永久磁石
2 凹形ヨーク
3 中仕切りヨーク
11 永久磁石の吸着面
21 凹部
B 電気防食用流電陽極
1B 陽極本体
2B 取付部
3B 係止部
10 金属構造物
Claims (2)
- 金属構造物の電気防食用流電陽極において、前記金属構造物に防食電流を通電するための陽極本体と、該陽極本体を前記金属構造物に固定するための固定手段とした磁極分散型磁気吸着装置と
を備えた電気防食用流電陽極であり、
前記磁極分散型磁気吸着装置が、吸着面に一方の磁極をもち、該吸着面に背向する背向面に他方の磁極をもつ板状乃至角柱状の永久磁石と、
前記永久磁石を所定の間隔を置いて隣り合う磁極が互いに異極となるように複数個配列して凹部に収容した軟磁性材料からなるトレー状の凹形ヨークと、
前記永久磁石の間隔を所定に保つために前記凹形ヨークの凹部に固着した軟磁性材料からなる中仕切りヨークと
を備えたことを特徴とする電気防食用流電陽極。 - 前記電気防食用流電陽極の長手方向の両側それぞれに、該長手方向に対して垂直方向の振れを防止するための係止部を設けた請求項1記載の電気防食用流電陽極。
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