JP5646418B2 - ガスバリアフィルム - Google Patents

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Description

本発明は、透明性を有し、酸素、水蒸気等のガスバリア性に優れ、且つ、熱水処理後の耐層間剥離性及びラミネート用接着剤との密着性に優れたガスバリアフィルムに関する。
近年、酸素あるいは水蒸気等に対するバリア性材料として、フィルム基材に酸化ケイ素、酸化アルミニウム等の無機酸化物を、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、化学気相成長法等で形成してなる透明なガスバリアフィルムが注目されている。そして、この透明なガスバリアフィルムは、一般には透明性、剛性に優れる二軸延伸ポリエステルフィルムからなる基材面に無機酸化物を蒸着したフィルムであるので、そのままでは蒸着層が使用時の摩擦等に弱く、包装用フィルムとして使用する場合、後加工の印刷やラミネート時、又内容物の充填時に、擦れや伸びにより無機酸化物にクラックが入りガスバリア性が低下することがある。
一方、ガスバリア性を有するポリビニルアルコール、エチレン・ビニルアルコール共重合体を二軸延伸フィルム基材に積層する方法(例えば、特許文献1)、あるいはポリビニルアルコールとポリ(メタ)アクリル酸との組成物を二軸延伸フィルム基材に被覆する方法(例えば、特許文献2)が提案されている。しかしながら、ポリビニルアルコールを積層してなるガスバリアフィルムは、高湿度下での酸素バリア性が低下し、ポリビニルアルコールとポリ(メタ)アクリル酸との組成物は、エステル化を十分に進行させて、フィルムのガスバリア性を高めるためには高温で長時間の加熱が必要であり生産性に問題があり、また、高湿度下でのガスバリア性は不十分であった。また、高温で長時間反応させることによりフィルムが着色し、外観を損ねるため食品包装用には改善が必要である。
他方、ポリビニルアルコールとポリ(メタ)アクリル酸との組成物はエステル化に高温で長時間の反応が必要なことから、ポリアクリル酸にイソシアネート化合物等の架橋剤成分を添加する方法(例えば、特許文献3)、更には金属イオンと反応させる方法(例えば、特許文献4)等が提案されているが、かかる方法においても、ポリアクリル酸を架橋剤成分で架橋するには、実施例に記載されているように、180〜200℃で5分間と高温での処理を必要とする。
さらに、基材層(X)に、赤外線吸収スペクトルにおける1700cm-1付近のカルボン酸基のνC=Oに基づく吸光度A0と1520cm-1付近のカルボキシレートイオンのνC=Oに基づく吸光度Aとの比(A0/A)が0.25未満である不飽和カルボン酸化合物多価金属塩の重合体(a)を含有する層(Y)からなるガスバリアフィルムが知られているが、さらにガスバリア性の向上が求められている(特許文献5)。
しかしながら、不飽和カルボン酸化合物多価金属塩の重合体(a)を含有する層(Y)を酸化ケイ素層などの無機化合物層に積層した場合は、当該積層体をレトルト処理すると密着性が低下する場合があることが判った。
特開昭60−157830号公報(特許請求の範囲) 特許第3203287号公報(請求項1) 特開2001−310425号公報(請求項1、実施例1) 特開2003−171419号公報(請求項1、表1) WO2005/108440(請求項1)
本発明は、透明性を有し、酸素、水蒸気等のガスバリア性、に優れ、且つ、熱水処理後の耐層間剥離性及びラミネート用接着剤との密着性に優れたガスバリアフィルムを得ることを目的とする。
本発明は、片面に無機化合物層が形成された基材フィルムの無機化合物層に、不飽和カルボン酸化合物多価金属塩の重合体(a)、ビニルアルコール系重合体(b)、及び、(メタ)アクリル系シランカップリング剤を含む層(Y)が積層されてなるガスバリアフィルムに関する。
本発明のガスバリアフィルムは、透明性を有し、酸素、水蒸気等のガスバリア性に優れ、且つ、熱水処理後の耐層間剥離性ラミネート用接着剤との密着性に優れている。
<基材フィルム>
本発明のガスバリアフィルムを構成する無機化合物層が形成された基材フィルムは、熱可塑性樹脂からなるフィルムである。
熱可塑性樹脂としては、種々公知の熱可塑性樹脂、例えば、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ4−メチル・1−ペンテン、ポリブテン等)、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)、ポリアミド(ナイロン−6、ナイロン−66、ポリメタキシレンアジパミド等)、ポリ塩化ビニル、ポリイミド、エチレン・酢酸ビニル共重合体もしくはその鹸化物、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル、ポリカーボネート、ポリスチレン、アイオノマー、あるいはこれらの混合物等を例示することができる。これらのうちでは、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアミド等、延伸性、透明性が良好な熱可塑性樹脂が好ましく、とくにポリエチレンテレフタレート及びポリエチレンナフタレート等のポリエステルがガスバリア性、耐熱性等に優れているので好ましい。
本発明に係る基材フィルムとしては、二軸延伸フィルム、中でも、ポリエチレンテレフタレート及びポリエチレンナフタレート等のポリエステルからなる二軸延伸フィルムが特に好ましい。
本発明に係る基材フィルムの厚さは、通常、1〜500μm、好ましくは3〜400μm、更に好ましくは5〜300μmの範囲にある。
<無機化合物層>
本発明に係る基材フィルムの片面に形成されてなる無機化合物層は、珪素、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、錫、マグネシウム、インジウムなどの無機元素、無機元素の酸化物、窒化物、弗化物の単体、あるいはそれらの複合物からなる層である。無機化合物層は、種々公知の方法、例えば、CVD法(プラズマCVD法、CAT−CVD法など)、PVD法などの蒸着、スパッタリング法などの成膜方法、あるいは、乾式製膜法を用いて形成することができる。無機化合物層の厚さは、通常、0.1〜1000nm、好ましくは1〜500nm、さらに好ましくは3〜200nmの範囲にある。
これら無機化合物層の中でも、酸化アルミ、酸化ケイ素、無機窒化物などがガスバリア性に優れており、特に、酸化アルミ、酸化ケイ素、酸窒化ケイ素は透明性に優れるので好ましい。
<不飽和カルボン酸化合物多価金属塩の重合体(a)、ビニルアルコール系重合体(b)、及び、(メタ)アクリル系シランカップリング剤を含む層(Y)>
本発明のガスバリアフィルムを構成する層(Y)は、不飽和カルボン酸化合物多価金属塩の重合体(a)、ビニルアルコール系重合体(b)、及び、(メタ)アクリル系シランカップリング剤を含む層である。
本発明のガスバリアフィルムを構成する不飽和カルボン酸化合物多価金属塩の重合体(a)を含有する層(X)は、不飽和カルボン酸多価金属塩を重合することによって得ることができる層である。
<不飽和カルボン酸化合物 >
不飽和カルボン酸化合物多価金属塩の重合体(a)に用いられる不飽和カルボン酸化合物多価金属塩を形成する不飽和カルボン酸化合物は、アクリル酸、メタアクリル酸、マレイン酸、イタコン酸等のα、β−エチレン性不飽和基を有するカルボン酸化合物であり、重合度が20未満、好ましくは単量体若しくは重合度10以下の重合体である。重合度が20を越える重合体(高分子化合物)を用いた場合は、後述の多価金属化合物との塩が完全には形成されない虞があり、その結果、当該金属塩を重合して得られる層は高湿度下でのガスバリア性が劣る虞がある。これら不飽和カルボン酸化合物は、一種でも二種以上の混合物であってもよい。
これら不飽和カルボン酸化合物の中でも単量体が多価金属化合物で完全に中和された塩を形成し易く、当該塩を重合して得られる重合体層を基材層の少なくとも片面に積層してなるガスバリアフィルム等のガスバリア性積層体は、高湿度下でのガスバリア性に特に優れるので好ましい。
<多価金属化合物 >
本発明に係わる不飽和カルボン酸化合物多価金属塩を形成する成分である多価金属化合物は、周期表の2A〜7A族、1B〜3B族及び8族に属する金属及び金属化合物であり、具体的には、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、アルミニウム(Al)等の二価以上の金属、これら金属の酸化物、水酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩、リン酸塩、亜リン酸塩、次亜リン酸塩、硫酸塩若しくは亜硫酸塩等である。これら金属化合物の中でも、二価の金属化合物が好ましく、特には酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化バリウム、酸化亜鉛、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化亜鉛等が好ましい。これら二価の金属化合物を用いた場合は、前記不飽和カルボン酸化合物との塩を重合して得られる膜の高湿度下でのガスバリア性が特に優れている。これら多価金属化合物は、少なくとも一種が使用され、一種のみの使用であっても、二種以上を併用してもよい。これら多価金属化合物の中でもMg、Ca、Zn、Ba及びAl、特にZnが好ましい。
<不飽和カルボン酸化合物多価金属塩>
本発明に係る不飽和カルボン酸化合物多価金属塩の重合体(a)を構成する成分である不飽和カルボン酸化合物多価金属塩は、前記重合度が20未満の不飽和カルボン酸化合物と前記多価金属化合物との塩である。これら不飽和カルボン酸化合物多価金属塩は一種でも二種以上の混合物であってもよい。かかる不飽和カルボン酸化合物多価金属塩の中でも、特に(メタ)アクリル酸亜鉛が得られる重合体層の耐熱水性に優れるので好ましい。
<ビニルアルコール系重合体(b)>
層(Y)に含まれるビニルアルコール系重合体(b)は、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、変性ビニルアルコール系重合体などの主成分として、ビニルアルコールを含む重合体である。
ポリビニルアルコールは混合可能であれば特に問題ないが、好ましくは重合度が100〜3000、更には200〜2500、最も好ましくは300〜2000の範囲にある。この範囲にあると、水溶液にして基材層にコーティングし易く延伸性、ガスバリア性も良い。鹸化度は90%以上、好ましくは95%以上であり、この範囲であればガスバリア性が良い。また、耐水性や延伸性からオレフィン含有ポリビニルアルコールを使用してもよい。オレフィン含有量が0〜25モル%、好ましくは1〜20モル%、更には2〜16モル%、オレフィンとしては、炭素数4以下のものが好ましく、エチレン、プロピレン、n−ブテン、イソブテン等が挙げられるが、耐水性の点でエチレンが最も好ましい。
層(Y)に含まれるビニルアルコール系重合体(b)の含有量は、通常、不飽和カルボン酸化合物多価金属塩の重合体(a)とビニルアルコール系重合体(b)との合計量(100質量%)に対して、ビニルアルコール系重合体(b)が2〜40重量%、好ましくは)5〜30重量%の範囲である。ビニルアルコール系重合体(b)を上記範囲で含むことにより、可とう性に優れるガスバリアフィルムが得られる。
これらビニルアルコール系重合体(b)としては、反応性官能基を有した変性ビニルアルコール系重合体が好ましく、不飽和カルボン酸化合物多価金属塩との反応性官能基を有した変性ビニルアルコール系重合体(b1)が耐水性に優れるため特に好ましい。
<変性ビニルアルコール系重合体(b1)>
本発明に係る変性ビニルアルコール系重合体(b1)としては、ビニルアルコール系重合体(b)に、種々の公知の反応性を有する基(反応性基)を付加、置換、あるいはエステル化等により反応性基を結合して変性したもの、酢酸ビニル等のビニルエステルと反応性基を有する不飽和化合物とを共重合して得た共重合体を鹸化したもの等を挙げることができる。これら反応性重合基としては、(メタ)アクリレート基、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリルアミド基、ビニル基、アリル基、スチリル基、チオール基、シリル基、アセトアセチル基、エポキシ基などが挙げられる。反応性基の量は、適宜決めることができるが、基体となるビニルアルコール系重合体のOH基の量が少なくなるとビニルアルコール系重合体が本来有するガスバリア性が損なわれる虞があるので、通常、反応性基の量は、0.001〜50モル%の範囲にある(反応性基とOH基の合計で100モル%とする)。
変性ビニルアルコール系重合体(b1)の製法としては、ビニルアルコール系重合体(b)に種々公知の反応性を有する基(反応性基)を付加、置換あるいはエステル化等により反応性基を結合して変性したもの、酢酸ビニル等のビニルエステルと反応性基を有する不飽和化合物とを共重合して得た共重合体を鹸化したもの等を挙げることができ、重合体として分子内に反応性基を有する限りとくに限定はされない。
変性ビニルアルコール系重合体(b1)は、通常、重合度が100〜3000、好ましくは300〜2000の範囲のものが使用し得る。また、不飽和カルボン酸化合物多価金属塩(a)と併用して得られる重合体のガスバリア性の観点から鹸化度が70〜99.9%の高いものが好ましく用いられ、とくに85〜99.9%のものが好ましい。
これら変性ビニルアルコール系重合体(b1)が有する反応性基としては、具体的には、例えば、(メタ)アクリレート基、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリルアミド基、ビニル基、アリル基、スチリル基、チオール基、シリル基、アセトアセチル基、エポキシ基などが挙げられる。変性ビニルアルコール系重合体に於ける反応性基の量は、適宜決め得るが、基体となるビニルアルコール系重合体のOH基の量が少なくなるとビニルアルコール系重合体が本来有するガスバリア性が損なわれる虞があるので、通常、反応性基の量は、0.001〜50モル%の範囲にある(反応性基とOH基の合計が100モル%)。
また、変性ビニルアルコール系重合体(b1)は、好ましくは水、低級アルコール、有機溶媒等に溶解性があるものであり、とくに水あるいは水−低級アルコール系混合溶媒に溶けるものが好ましい。
これら反応性基で変性した変性ビニルアルコール系重合体(b1)を成分の一つに用いることにより、不飽和カルボン酸化合物多価金属塩(a)と混合して重合する際に、変性ビニルアルコール系重合体(b1)と不飽和カルボン酸化合物多価金属塩(a)の少なくとも一部が何らかの結合をした重合体からなる低湿度下におけるガスバリア性が改良された層(Y)が得られる。
このような変性ビニルアルコール系重合体(b1)の具体例としては、例えば、基体となるビニルアルコール系重合体のOH基の一部をアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等のα、βエチレン性不飽和基を有するカルボン酸化合物あるいはその誘導体と反応させ(メタ)アクリレート基を導入してなる(メタ)アクリレート基変性ビニルアルコール系重合体(b1イ);イソチウロニウム塩やチオール酸エステルを有するビニルモノマーと酢酸ビニルとを共重合し、得られた重合体を酸や塩基で分解しチオール基とする方法、高分子反応により、ビニルアルコール系重合体の側鎖に反応性官能基を導入する方法、チオール酸の存在下にビニルエステル類を重合し、得られた重合体を鹸化することにより分子の末端にのみチオール基を導入する方法等により得られる、基体となるビニルアルコール系重合体のOH基の一部にチオール基(−SH基)を有する、チオール基変性ビニルアルコール系重合体(b1ロ);ビニルアルコール系重合体あるいはカルボキシル基又は水酸基を含有する酢酸ビニル系重合体にオルガノハロゲンシラン、オルガノアセトキシシラン、オルガノアルコキシシラン等のシリル化剤を用いて後変性によりシリル基を付加する方法、あるいは酢酸ビニルとビニルシラン、(メタ)アクリルアミド−アルキルシラン等のシリル基含有オレフィン性不飽和化合物との共重合体を鹸化し、分子内にアルコキシシリル基、アシロキシシリル基あるいはこれらの加水分解物であるシラノール基又はその塩等のシリル基を導入する方法等により得られる、基体となるビニルアルコール系重合体のOH基の一部にトリメトキシラン基、トリエトキシシラン基等のトリアルコキシシラン基、トリカルボニルオキシシラン基等を有する、シリル基変性ビニルアルコール系重合体(b1ハ);ビニルアルコール系重合体を酢酸溶媒中に分散させておき、これにジケテンを添加する方法、ビニルアルコール系重合体をジメチルホルムアミド、またはジオキサンなどの溶媒にあらかじめ溶解しておき、これにジケテンを添加する方法、及びビニルアルコール系重合体にジケテンガスまたは液状ジケテンを直接接触させる方法等により得られる、基体となるビニルアルコール系重合体のOH基の一部にアセトアセチル基を有する、アセトアセチル基変性ビニルアルコール系重合体(b1ニ);その他反応性官能基を有するモノマーを酢酸ビニルと共重合した後鹸化することにより、側鎖に反応性官能基を導入する方法、高分子反応により、ポリビニルアルコールの側鎖に反応性官能基を導入する方法、連鎖移動反応を利用して反応性官能基を末端に導入する方法等、種々公知の方法により分子内に、(メタ)アクリルアミド基、アリル基、ビニル基、スチリル基、分子内二重結合、ビニルエーテル基等のその他のラジカル重合基を付加してなる変性ビニルアルコール系重合体、エポキシ基、グリシジルエーテル基等のカチオン重合基を付加してなる変性ビニルアルコール系重合体等を例示できる。
これら変性ビニルアルコール系重合体(b1)の中でも、(メタ)アクリレート基変性ビニルアルコール系重合体(b1イ)を用いて得られる重合体からなる層は、高湿度下及び低湿度下でのガスバリア性(酸素バリア性)に優れ、熱水処理後のガスバリア性(耐熱水性)の低下もなく、柔軟性を有し、また、このような層が形成された積層体、中でもフィルムを包装材等に用いる場合、ヒートシール強度が改良されるという特徴を有する。
<(メタ)アクリレート基変性ビニルアルコール系重合体(b1イ)>
本発明に係る(メタ)アクリレート基変性ビニルアルコール系重合体(b1イ)としては、好ましくは(メタ)アクリロイル基の量(−OH基との対比;エステル化率)が0.001〜50%、より好ましくは0.1〜40%の範囲にある。エステル化率が0.001%未満のものは得られる層(Y)の耐熱水性、柔軟性等が改良されない虞があり、一方、50%を超えるものは得られる層(Y)の耐熱水性、酸素バリア性等が改良されない虞がある。
本発明に係る(メタ)アクリレート基変性ビニルアルコール系重合体(b1イ)は、例えば、ビニルアルコール系共重合体と(メタ)アクリル酸または(メタ)アクリル酸ハロゲン化物、(メタ)アクリル酸無水物、(メタ)アクリル酸エステル等の(メタ)アクリル酸誘導体とを、例えばブレンステッド酸、ブレンステッド塩基、ルイス酸、ルイス塩基、金属化合物などの触媒の存在下または非存在下に反応させることにより得られる。またビニルアルコール系共重合体と、例えばグリシジル(メタ)アクリレート、2−イソシアナトエチル(メタ)アクリレート等のビニルアルコール系共重合体のOH基と反応する官能基を分子内に有する(メタ)アクリル酸誘導体とを反応させ、(メタ)アクリレート基をビニルアルコール系共重合体に間接的に導入することもできる。
<チオール基変性ビニルアルコール系重合体(b1ロ)>
本発明に係るチオール基変性ビニルアルコール系重合体(b1ロ)としては、イソチウロニウム塩やチオール酸エステルを有するビニルモノマーと酢酸ビニルとを共重合し、得られた重合体を酸や塩基で分解しチオール基とする方法、高分子反応により、ポリビニルアルコール系重合体の側鎖に反応性官能基を導入する方法、−COSH基を有する有機チオール酸を包含する、チオール酢酸、チオールプロピオン酸、チオール酪酸等のチオールカルボン酸の存在下に、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バーサテイック酸ビニル、ラウリル酸ビニル、ステアリン酸ビニル等のビニルエステル類を重合し、得られた重合体を鹸化することにより分子の末端にのみチオール基を導入する方法等、公知の方法により分子内にチオール基を付与させた重合体で、通常、チオール基変性率は0.1〜50モル%の範囲にある。
これらチオール基変性ビニルアルコール系重合体(b1ロ)として、例えば、(株)クラレからクラレMポリマーの商品名で、「M−115」及び「M−205」が製造・販売されている。
<シリル基変性ビニルアルコール系重合体(b1ハ)>
本発明に係るシリル基変性ビニルアルコール系重合体(b1ハ)としては、ビニルアルコール系重合体あるいはカルボキシル基又は水酸基を含有する酢酸ビニル系重合体にトリメチルクロルシラン、ジメチルジクロルシラン、メチルトリクロルシラン、ビニルトリクロルシラン、ジフェニルジクロルシラン等のオルガノハロゲンシラン、トリメチルアセトキシシラン、ジメチルジアセトキシシラン等のオルガノアセトキシシランあるいはトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン等のオルガノアルコキシシラン等のシリル化剤を用いて後変性によりシリル基を付加する方法、あるいは酢酸ビニルと例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス−(β−メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリアセトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリアセトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルジメチルメトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルジメチルエトキシシラン、ビニルメチルジアセトキシシラン、ビニルジメチルアセトキシシラン、ビニルイソブチルジメトキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、ビニルトリヘキシロキシシラン、ビニルメトキシジヘキシロキシシラン、ビニルジメトキシオクチロキシシラン等のビニルシラン、あるいは3−(メタ)アクリルアミド−プロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリルアミド−プロピルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリルアミド−プロピルトリ(β−メトキシエトキシ)シラン、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロピルトリメトキシシラン、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルエチルトリメトキシシラン、N−(2−(メタ)アクリルアミド−エチル)−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリルアミド−プロピルトリアセトキシシラン、2−(メタ)アクリルアミド−エチルトリメトキシシラン、1−(メタ)アクリルアミド−メチルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリルアミド−プロピルメチルジメトキシシラン、3−(メタ)アクリルアミド−プロピルジメチルメトキシシラン、3−(N−メチル−(メタ)アクリルアミド)−プロピルトリメトキシシラン、3−((メタ)アクリルアミド−メトキシ)−3−ハイドロキシプロピルトリメトキシシラン、3−((メタ)アクリルアミド−メトキシ)−プロピルトリメトキシシラン等の(メタ)アクリルアミド−アルキルシラン等のシリル基含有オレフィン性不飽和化合物との共重合体を鹸化する方法等で得られる分子内にアルコキシシリル基、アシロキシシリル基あるいはこれらの加水分解物であるシラノール基又はその塩等のシリル基を有する重合体等を挙げることができる。かかるシリル基の変性量は、通常、0.1〜50モル%の範囲にある。
これらシリル基変性ビニルアルコール系重合体(b1ハ)として、例えば、(株)クラレからクラレRポリマーの商品名で、「R−1130」、「R−2105」及び「R−2130」が製造・販売されている。
<アセトアセチル基変性ビニルアルコール系重合体(b1ニ)>
本発明に係るアセトアセチル基変性ビニルアルコール系重合体(b1ニ)としては、前記ビニルアルコール系重合体の溶液、分散液又は粉末に液状又はガス状のジケテンを添加反応させて得られるものであり、通常、アセトアセチル化度は1〜10モル%、好ましくは3〜5モル%の範囲にある。
これらアセトアセチル基変性ビニルアルコール系重合体(b1ニ)として、例えば、日本合成化学工業(株)から「ゴーセファイマーZ100」、同「Z200」、同「Z200H」及び同「Z210」の商品名で製造・販売されている。
また、これら変性ビニルアルコール系重合体は、好ましくは水、低級アルコール、有機溶媒に溶解性であるものであり、特に水−低級アルコール系混合溶媒に溶解するものが好ましい。
これら変性ビニルアルコール系重合体を含めビニルアルコール系重合体の水溶液には、水以外の溶媒、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、或いはその他ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等を必要に応じて、1種または2種以上を組み合わせて加えることも可能である。又、ポリビニルアルコール系重合体には、本発明の特徴を阻害しない範囲で濡れ性向上剤、帯電防止剤、その他各種添加剤を加えることが可能である。
<(メタ)アクリル系シランカップリング剤>
層(Y)に含まれる(メタ)アクリル系シランカップリング剤は、下記一般式(1)で表される(メタ)アクリル系シランカップリング剤である。
Figure 0005646418
〔但し、R1はメチル基、R2はメトキシ基、エトキシ基または2-メトキシエトキシ基、R3はアクリル基、メタクリル基を含む官能基、nは1以上の整数である。〕
これら(メタ)アクリル系シランカップリング剤の具体例としては、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、及び、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシランなどがあげられる。
(メタ)アクリル系シランカップリング剤は、当該カップリング剤を加水分解した溶液にして用いてもよい。加水分解の際に酸性条件下にして加水分解を促進させてもよい。また、(メタ)アクリル系シランカップリング剤を加水分解した溶液を希釈して用いてもよい。希釈溶媒としては、水、メタノール、エタノール、2−プロパノール等のアルコールが挙げられる。
<接着剤層>
本発明のガスバリアフィルムを、他のフィルムと積層する際に用いられる、接着剤層は、種々公知の接着剤等からなる。本発明に係る接着剤層を構成するための接着剤としては、有機チタン系樹脂、ポリエチレンイミン系樹脂、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、オキサゾリン基含有樹脂、変性シリコン樹脂及びアルキルチタネート、ポリエステル系ポリブタジエン等から組成されているラミネート接着剤、または一液型、二液型のポリオールと多価イソシアネート、水系ウレタン、アイオノマー等がある。また用途によりそれらの接着剤に硬化剤、シランカップリング剤など等、他の添加物を添加する場合もある。またアクリル系、酢酸ビニル系、ウレタン系、ポリエステル樹脂等を主原料とした水性接着剤もある。レトルト等の熱水処理の場合、耐熱性や耐水性の観点より、ポリウレタン系接着剤に代表されるドライラミネート用接着剤が用いられる場合が多く、好ましくは溶剤系の二液硬化タイプのポリウレタン系接着剤がよい。
<ガスバリアフィルム>
本発明のガスバリアフィルムは、前記片面に無機化合物層が形成された基材フィルムの無機化合物層に、前記不飽和カルボン酸化合物多価金属塩の重合体(a)、ビニルアルコール系重合体(b)、及び、(メタ)アクリル系シランカップリング剤を含む層(Y)が積層されてなるガスバリアフィルムである。
本発明のガスバリアフィルムは、更に、層(Y)上に、接着剤層が積層されていてもよい。
また、本発明のガスバリアフィルムは、接着剤層上に、前記他のフィルムが積層されていてもよい。
本発明のガスバリアフィルムは、片面に無機化合物層が形成された基材フィルムの他の片面(無機化合物層が形成されていない面)に、熱融着層を積層することにより、ヒートシール可能な包装用フィルムとして好適なガスバリアフィルムが得られる。
かかる熱融着層としては、通常熱融着層として公知のエチレン、プロピレン、ブテン−1、ヘキセン−1、4−メチル・ペンテン−1、オクテン−1等のα−オレフィンの単独若しくは共重合体、高圧法低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン(所謂LLDPE)、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリプロピレンランダム共重合体、ポリブテン、ポリ4−メチル・ペンテン−1、低結晶性あるいは非晶性のエチレン・プロピレンランダム共重合体、エチレン・ブテン−1ランダム共重合体、プロピレン・ブテン−1ランダム共重合体等のポリオレフィンを単独若しくは2種以上の組成物、エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体あるいはその金属塩、EVAとポリオレフィンとの組成物等から得られる層である。
中でも、高圧法低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン(所謂LLDPE)、高密度ポリエチレン等のエチレン系重合体から得られる熱融着層が低温ヒートシール性、ヒートシール強度に優れるので好ましい。
<ガスバリアフィルムの製造方法>
本発明のガスバリアフィルムは、前記片面に無機化合物層が形成された基材フィルムの無機化合物層に、重合度が20未満の不飽和カルボン酸化合物多価金属塩を含有する溶液(s)、前記ビニルアルコール系重合体(b)、及び前記(メタ)アクリル系シランカップリング剤を所望の量で混合した溶液を塗工した後、重合度が20未満の不飽和カルボン酸化合物多価金属塩を重合し、不飽和カルボン酸化合物多価金属塩の重合体(a)、ビニルアルコール系重合体(b)、及び、(メタ)アクリル系シランカップリング剤を含む層(Y)を形成させた後、層(Y)上に、前記接着剤層を形成することにより製造し得る。
層(Y)に含まれる重合度が20未満の不飽和カルボン酸化合物多価金属塩を含有する溶液(s)を作成する方法としては、予め前記不飽和カルボン酸化合物と前記多価金属化合物とを反応させて、不飽和カルボン酸化合物の多価金属塩とした後、溶液としてもよいし、直接溶媒に前記不飽和カルボン酸化合物と前記多価金属化合物を溶かして多価金属塩の溶液としてもよい。
中でも、予め前記不飽和カルボン酸化合物と前記多価金属化合物とを反応させて得た不飽和カルボン酸化合物の多価金属塩を用いる場合は、得られる不飽和カルボン酸化合物多価金属塩の重合体(a)が基本的に遊離のカルボキシル基を含まないので、よりガスバリア性に優れるガスバリアが得られるので好ましい。
本発明のガスバリアフィルムの製造方法として、直接溶媒に前記不飽和カルボン酸化合物と前記多価金属化合物を溶かす場合、即ち、前記不飽和カルボン酸化合物と前記多価金属化合物とを含有する溶液を用いる場合は、前記不飽和カルボン酸化合物に対して、0.3化学当量比を越える量の前記多価金属化合物を添加することが好ましい。多価金属化合物の添加量が0.3化学当量比以下の混合溶液を用いた場合は、遊離のカルボン酸基の含有量が多い重合体層となり、結果として、ガスバリア性が低い延伸フィルムとなる虞がある。また、多価金属化合物の添加量の上限はとくに限定はされないが、多価金属化合物の添加量が1化学当量比を越えると未反応の多価金属化合物が多くなるので、通常、5化学当量比以下、好ましくは2化学当量比以下で十分である。
なお、本発明における化学当量比は、不飽和カルボン酸化合物に対する多価金属化合物の化学当量比を示し、以下の式により算出される値である。
化学当量比=(多価金属化合物のモル数)×(多価金属化合物の価数)/不飽和カルボン酸化合物に含まれるカルボキシル基のモル数
例えば、多価金属化合物として水酸化カルシウム(分子量74g/モル)を37g、不飽和カルボン酸化合物としてアクリル酸単量体(分子量72g/モル)72gを混合した場合の化学当量比は1となる。
また、不飽和カルボン酸化合物と多価金属化合物との混合溶液を用いる場合は、通常、不飽和カルボン酸化合物と多価金属化合物とを溶媒に溶かしている間に、不飽和カルボン酸化合物の多価金属塩が形成されるが、多価金属塩の形成を確実にするために、1分以上混合しておくことが好ましい。
不飽和カルボン酸化合物多価金属塩、ビニルアルコール系重合体(b)、及び、(メタ)アクリル系シランカップリング剤を含む溶液に用いる溶媒は、水、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等の低級アルコール若しくはアセトン、メチルエチルケトン等の有機溶媒あるいはそれらの混合溶媒が挙げられるが、水が最も好ましい。
片面に無機化合物層が形成された基材フィルムの無機化合物層に、重合度が20未満の不飽和カルボン酸化合物多価金属塩を含有する溶液(s)、前記ビニルアルコール系重合体(b)、及び前記(メタ)アクリル系シランカップリング剤を所望の量で混合した溶液を塗工する方法としては、種々公知の方法、例えば、当該溶液を、無機化合物層上にコーターを用いて塗工(塗布)する方法、噴霧する方法、刷毛等により塗布する方法等を採り得る。
不飽和カルボン酸化合物の多価金属塩を含有する溶液(s)等を塗工する方法としては、例えば、エアーナイフコーター、ダイレクトグラビアコーター、グラビアオフセット、アークグラビアコーター、グラビアリバース及びジェットノズル方式等のグラビアコーター、トップフィードリバースコーター、ボトムフィードリバースコーター及びノズルフィードリバースコーター等のリバースロールコーター、5本ロールコーター、リップコーター、バーコーター、バーリバースコーター、ダイコーター等種々公知の塗工機を用いて、重合度が20未満の不飽和カルボン酸化合物多価金属塩を含有する溶液(s)、前記ビニルアルコール系重合体(b)、及び前記(メタ)アクリル系シランカップリング剤を含む溶液を塗工する場合は、0.01〜50g/m2、好ましくは0.1〜20g/m2となるよう塗工すればよい。
不飽和カルボン酸化合物多価金属塩等を溶解させる際には、本発明の目的を損なわない範囲で、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチルなどのその他の不飽和カルボン酸(ジ)エステル化合物、酢酸ビニルなどのビニルエステル化合物等の単量体あるいは低分子量の化合物、滑剤、スリップ剤、アンチ・ブロッキング剤、帯電防止剤、防曇剤、顔料、染料、無機また有機の充填剤等の各種添加剤を添加しておいてもよいし、基材層との濡れ性を改良するために、各種界面活性剤等を添加しておいてもよい。
片面に無機化合物層が形成された基材フィルムの無機化合物層に塗工した重合度が20未満の不飽和カルボン酸化合物多価金属塩を含有する溶液(s)、ビニルアルコール系重合体(b)、及び(メタ)アクリル系シランカップリング剤を含む溶液に含まれる20未満の不飽和カルボン酸化合物多価金属塩を重合させるには、種々公知の方法、具体的には例えば、電離放射線の照射また加熱等による方法が挙げられる。
電離放射線を使用する場合は、波長領域が0.0001〜800nmの範囲のエネルギー線であれば特に限定されないが、かかるエネルギー線としては、α線、β線、γ線、X線、可視光線、紫外線、電子線等が上げられる。これらの電離放射線の中でも、波長領域が400〜800nmの範囲の可視光線、50〜400nmの範囲の紫外線及び0.01〜0.002nmの範囲の電子線が、取り扱いが容易で、装置も普及しているので好ましい。
電離放射線として可視光線及び紫外線を用いる場合は、不飽和カルボン酸化合物多価金属塩を含む溶液に光重合開始剤を添加することが必要となる。光重合開始剤としては、公知のものを使用することができ、例えば、2−ヒドロキシ−2メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製 商品名;ダロキュアー 1173)、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニルケトン(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製 商品名;イルガキュアー 184)、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製 商品名;イルガキュアー819)、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製 商品名;イルガキュアー 2959)、α―ヒドロキシケトン、アシルホスフィンオキサイド、4−メチルベンゾフェノン及び2,4,6−トリメチルベンゾフェノンの混合物(ランベルティ・ケミカル・スペシャルティ社製 商品名;エサキュアー KT046)、エサキュアー KT55(ランベルティー・ケミカル・スペシャルティ)、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド(ラムソン・ファイア・ケミカル社製 商品名;スピードキュアTPO)の商品名で製造・販売されているラジカル重合開始剤を挙げることができる。
さらに、重合度または重合速度を向上させるため重合促進剤を添加することができ、例えば、N、N−ジメチルアミノ−エチル−(メタ)アクリレート、N−(メタ)アクリロイル−モルフォリン等が挙げられる。
不飽和カルボン酸化合物多価金属塩の重合を電離放射線を照射して行う場合は、通常、電離放射線の照射量を1〜1000mJ/cm2、好ましくは5〜300mJ/cm2、とくに10〜200mJ/cm2の範囲にすることが好ましい。照射量をかかる範囲にすることにより、重合率が80%以上、好ましくは90%以上のガスバリアフィルム等のガスバリア性積層体が安定して得られる。
次に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を越えない限りこれらの実施例に制約されるものではない。
実施例及び比較例における物性値等は、以下の評価方法により求めた。
<評価方法>
〔物性測定用多層フィルムの調整〕
厚さ70μmの無延伸ポリプロピレンフィルム(三井化学東セロ社製 商品名:RXC−21)の片面に、エステル系接着剤(ポリエステル系接着剤(三井化学ポリウレタン社製 商品名:タケラックA525):9重量部、イソシアネート系硬化剤(三井化学ポリウレタン社製 商品名:タケネートA52):1重量部及び酢酸エチル:7.5重量部)を塗布し乾燥後、実施例、比較例で得られたガスバリア性積層フィルムのバリア面と貼り合わせ(ドライラミネート)、多層フィルム(レトルト前の試料)を得た。
上記多層フィルムを無延伸ポリプロピレンフィルムが内面になるように折り返し、2方をヒートシールして袋状にした後、内容物として水を40cc入れ、もう1方をヒートシールにより袋を作成し、これを高温高圧レトルト殺菌装置で120℃、30分間の条件でレトルト処理を行った。レトルト処理後、内容物の水を抜き、レトルト処理後の多層フィルム(レトルト後の試料)を得た。
〔酸素透過度[ml/(m2・day・MPa)]〕
上記方法で得られたレトルト前後の多層フィルムを、モコン社製OX−TRAN2/20を用いて、JIS K 7126に準じ、温度20℃、湿度90%R.H.の条件で測定した。
〔剥離強度(N/15mm)
上記方法で得られたレトルト前後の多層フィルムを15ミリメータ(mm)幅に採取した後、ガスバリア性積層フィルムの剥離のきっかけを作るために試料の角をラミネート面と無延伸ポリプロピレンフィルムの間を部分的に剥離し、その後300(mm/分)の剥離速度で、180度ラミネート剥離強度を測定した。レトルト後の試料は濡れた状態で測定した。
〔剥離界面〕
上記方法で得た剥離後のサンプルのガスバリア性積層フィルム剥離面と無延伸ポリプロピレンフィルム剥離界面を蛍光X線にて、ZnとSiの強度を測定し、剥離界面の特定をした。
(表1における剥離界面の表示)
A:接着剤と有機バリア層、B:SiOxと有機バリア層、C:延伸ポリエチレンナフタレートとSiOx、D:接着剤とSiOx
<溶液(Z):3-アクリロキシプロピルトリメトキシシランの加水分解液の作製>
3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業社製 商品名KBM5103)10gに精製水34.46gを加え、酢酸0.25gを加えて20分攪拌し、その後、イソプロピルアルコール34.46gを加えて3-アクリロキシプロピルトリメトキシシランの加水分解液である溶液(Z)を得た。
<溶液(Y):3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシランの加水分解液の作製>
3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業社製 商品名KBM503)10gに精製水34.46gを加え、酢酸0.25gを加えて20分攪拌し、その後、イソプロピルアルコール34.46gを加えて3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシランの加水分解液である溶液(Y)を得た。
<溶液(X):N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシランの加水分解液の作製>
N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業社製 商品名KBM603)10gに精製水34.46gを加え20分攪拌し、その後、イソプロピルアルコール34.46gを加えてN−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシランの加水分解液を得た。得られた加水分解液である溶液(X)を得た。
<溶液(W)の作製>
アクリル酸亜鉛とアクリレート基変性ポリビニルアルコールの混合水溶液 液濃度21%(アクリル酸亜鉛成分18.5%、アクリレート基変性ポリビニルアルコール成分2.5%)に上記アクリル酸亜鉛水溶液 液濃度30%(浅田化学工業社製)を混合させて、アクリル酸亜鉛成分を固形分比率で89.4%、アクリレート基変性ポリビニルアルコール成分を固形分比で8.8%、メチルアルコールで25質量%に希釈した光重合開始剤〔1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製 商品名:イルガキュアー 2959)〕を固形分比率で1.2重量%、及び界面活性剤(花王社製 商品名:エマルゲン120)を固形分比率で0.6重量%となるように混合し、アクリル酸亜鉛とアクリレート基変性ポリビニルアルコールからなる溶液(W)を作成した。
〔比較例1〕
易接着層のある12μmの二軸延伸ポリエチレンナフタレートの易接着面にSiOを蒸着源にして0.5×10−4Torrの真空下で、真空蒸着法により厚さ20ナノメータ(nm)のSiOx膜を形成させガスバリア性フィルムを得た。
得られたガスバリア性フィルムを上記記載の方法で評価した。結果を表1に示す。
〔実施例1〕
比較例1で得られたガスバリア性フィルムのSiOx面に溶液(W)と溶液(Z)の混合液を、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシランの固形分比が5%となるよう混合し、塗工量にあわせ液濃度を調整した液をメイヤバーにて乾燥後の塗工量が1.4g/m2になるように塗布し、熱風乾燥器を使用して温度;40℃、時間;15秒の条件で乾燥し、この後速やかに塗布面を上にしてステンレス板に固定し、UV照射装置(アイグラフィック社製 EYE GRANDAGE 型式ECS 301G1)を用いて、積算光量220mJ/cm2の条件で紫外線を照射して重合を行い、有機バリア層を形成し、ガスバリア性積層フィルムを得た。
得られたガスバリア性フィルムを上記記載の方法で評価した。結果を表1に示す。
〔実施例2〕
実施例1の溶液(W)と溶液(Z)の混合液を、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシランの固形分比が3%となるように混合した液を用いる以外は実施例1と同様に行った。
得られたガスバリア性フィルムを上記記載の方法で評価した。結果を表1に示す。
〔実施例3〕
実施例1の溶液(W)と溶液(Y)の混合液を3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシランの固形分比が5%となるように混合した液を用いる以外は実施例1と同様に行った。
得られたガスバリア性フィルムを上記記載の方法で評価した。結果を表1に示す。
〔比較例2〕
実施例1の溶液(W)と溶液(X)の混合液をN−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシランの固形分比が3%となるように混合した液を用いる以外は実施例1と同様に行った。
得られたガスバリア性フィルムを上記記載の方法で評価した。結果を表1に示す。
〔比較例3〕
比較例1で得られたガスバリア性フィルムのSiOx面にエポキシアクリレート(新中村化学社性 商品名:EA−1020)、トリメチロールプロパントリアクリレート(共栄社化学社製 商品名:A−TMPT)、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシランを固形分比率64.8:27.5 : 5 となるように混合した溶液(V−1)に光重合開始剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製 商品名:イルガキュアー 184)を固形分比が3%になるように混合した溶液(V−2)をメイヤバーにて乾燥後の塗工量が10g/m2になるように塗布し、UV照射装置(アイグラフィック社製 EYE GRANDAGE 型式ECS 301G1)を用いて、積算光量1400mJ/cm2の条件で紫外線を照射して重合を行い、有機バリア層を形成し、ガスバリア性積層フィルムを得た。
得られたガスバリア性フィルムを上記記載の方法で評価した。結果を表1に示す。
〔比較例4〕
比較例3の溶液(V−2)の塗工量が1.4g/m2になるように塗布した以外は比較例3と同様に行った。
得られたガスバリア性フィルムを上記記載の方法で評価した。結果を表1に示す。
Figure 0005646418
本発明のガスバリアフィルムは、高湿度下でのガスバリア性に優れており、かかる特徴を活かして、種々の用途に用いることができる。例えば、乾燥食品、水物、ボイル・レトルト食品、サプリメント食品等の包装材料、なかでも特に高いガスバリア性が要求される内容物の食品包装材をはじめ、シャンプー、洗剤、入浴剤、芳香剤等のトイレタリー製品の包装材料、粉体、顆粒状、錠剤等の医薬品、輸液バッグをはじめとする液状の医薬品、医療用具の包装袋及び包装容器部材等の医療用途、ハードディスク、配線基盤、プリント基盤等の電子部品包材、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、無機・有機E L ディスプレイ、電子ペーパー等のフラットパネルディスプレイ用バリア材、太陽電池用のバックシート等のバリア材、その他の電子材料用のバリア材、真空断熱材用バリア材、インクカートリッジ等の工業製品の包装材等、さまざまな製品の包装材料、あるいは電子材料、精密部品、医薬品をはじめ、酸素ガスの透過及び湿気を嫌う材料の保護材としても好適に使用することができる。

Claims (6)

  1. 片面に無機化合物層が形成された基材フィルムの無機化合物層に、不飽和カルボン酸化合物多価金属塩の重合体(a)、ビニルアルコール系重合体(b)、及び、(メタ)アクリル系シランカップリング剤を含む層(Y)が積層されてなるガスバリアフィルム。
  2. 層(Y)上に更に接着剤が積層されてなる請求項1記載のガスバリアフィルム。
  3. 層(Y)におけるビニルアルコール系重合体(b)の含有量が、不飽和カルボン酸化合物多価金属塩の重合体(a)とビニルアルコール系重合体(b)との合計量:100質量%に対して、2〜40質量%である請求項1記載のガスバリアフィルム。
  4. 層(Y)における(メタ)アクリル系シランカップリング剤の含有量が、不飽和カルボン酸化合物多価金属塩の重合体(a)とビニルアルコール系重合体(b)との合計量:100質量%に対して、0.1〜20質量%である請求項1記載のガスバリアフィルム。
  5. 層(Y)におけるビニルアルコール系重合体(b)が、変性ビニルアルコール系重合体(b1)である請求項1または2記載のガスバリアフィルム。
  6. 請求項2に記載のガスバリアフィルムの接着剤層面に、他のフィルムが積層されてなるガスバリアフィルム。
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