JP5646037B1 - 消振装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】偏心重錘を容易に着脱して消振装置運転中にその状態を維持することができ、さらにメンテナンス等の手間を低減することができるようにして信頼性を高めること。【解決手段】固定偏心重錘3および固定偏心重錘3よりも軽重量の調整用偏心重錘4をそれぞれ取り付けた一対の回転軸1a、1bと、一対の回転軸を互いに逆方向に回転可能に収納したケーシング5と、を備えた消振装置において、調整用偏心重錘4は、人力で運べる複数個の調整用偏心重錘単体4awを軸方向に結合して構成されるとともに、固定偏心重錘3に対して回転軸2の軸心を中心とした軸対称位置に取り付けられ、ケーシング5は、上部に開口部16を設けて、調整用偏心重錘単体4awの取り付けおよび取り外しを可能にした。【選択図】図1

Description

本発明は、船舶や橋梁その他の構造物に設置され、エンジン等の振動源によって発生する振動を相殺する消振装置に関する。
大型の船舶では、主エンジンの振動で船体が共振し振動するために、消振装置を船尾に設置し船体の2次振動を打ち消して船体振動を抑制するようにしている。
従来の消振装置について、図6乃至図9を参照して説明する。
従来の消振装置は、平行に配置した一対の回転軸に固定偏心重錘と調整用偏心重錘を取り付け、それを互いに逆方向に等速に回転させることにより起振力を一定方向、例えば上下方向に生じさせ、その起振力によって生じる振動をエンジン等の振動源によって発生する船体の2次振動と逆位相となるように制御することで船体の共振振動を抑制するように構成されている。なお、以下、対を構成する一方の回転体Aの符号に添字aを、他方の回転体Bの符号に添字bをそれぞれ付けて説明する。
図6において、従来の消振装置は、平行に配置された一対の回転体A、Bそれぞれの回転軸1a、1bに固定された平歯車等の歯車2a、2bを噛合させて互いに逆回転するように配設し、かつ、各歯車2a、2bの両側面(回転軸1a、1bの軸方向)に直接半月状の固定偏心重錘3a、3bを取り付け、さらにこの固定偏心重錘3a、3bの外側面に着脱可能な起振力調整用の偏心重錘である調整用偏心重錘4a、4bを重ねて取り付けた構成になっている。この調整用偏心重錘4a、4bは、複数枚の板状の単体から構成されている。
そして、回転軸1a、歯車2a、固定偏心重錘3aおよび調整用偏心重錘4aからなる一方の回転体Aと、回転軸1b、歯車2b、固定偏心重錘3bおよび調整用偏心重錘4bからなる他方の回転体Bと、をケーシング5に回転自在に収納している。なお、ケーシング5は、回転軸1a、1bの回転中心線Cを含む面で水平に上部ケーシング5uと下部ケーシング5dとに分割され、下部ケーシング5d内に歯車2a、2bの潤滑用オイル6を収容してある。
このように構成された消振装置は、回転体A、Bの回転軸1a、1bのうち、いずれか一方を図示しないモータによって回転駆動させて、噛み合っている歯車2aおよび歯車2bを互いに逆回転させる。これにより、左右の偏心重錘すなわち、歯車2aに取付けられた固定偏心重錘3aおよび調整用偏心重錘4aの組と、歯車2bに取付けられた固定偏心重錘3bおよび調整用偏重心錘4bの組によって発生する左右方向の遠心力は、互いに打ち消し合い、上下方向の遠心力は、主エンジンの振動によって共振する船体2次振動を打ち消すように作用することができる。
このように構成された消振装置において、起振力を調整、変更するためには、固定偏心重錘3a、3bの側面に重ねて取付けた調整用偏心重錘4a、4bの取り付け枚数を調整する必要がある。取り付け枚数を調整する場合、まず、図7で示すように上部ケーシング5uを取り外して歯車2a、2b、固定偏心重錘3a、3bおよび調整用偏心重錘4a、4bを露出させる。その後、自重によって回転軸1a、1bの下側に位置している固定偏心重錘3a、3bおよび調整用偏心重錘4a、4bを図8に示すように上側の位置となるように半回転させる。この状態で図9のように、固定偏心重錘3a、3bに既に取り付けてある調整用偏心重錘4a、4bの板状の単体を所定枚数だけ取り付け、取り外すことによって起振力の調整を行なっている。
この起振力調整の一連の作業において、上部ケーシング5u、固定偏心重錘3a、3bおよび調整用偏心重錘4a、4bは重量物であるため、クレーンやチェーンブロックなどの荷吊り機械がなければ吊り上げることができない。特に、下側に位置している固定偏心重錘3a、3bおよび調整用偏心重錘4a、4bを半回転させて、上側の位置に持ち上げるためには、上述したような荷吊り機械が必要になる。また、船内に装備されたクレーンの数が少ないため、チェーンブロックを数台用いて、これを多数の作業員で作業を行わなければならず、時間もかかる作業になり、船内での作業には困難を極めていた。
上記問題を解決するための発明として、油圧装置を用いて偏心重錘位置を調整可能にした偏心重錘部を回転軸自体に取付けた消振装置がある(例えば、特許文献1、2参照)。
特公平2−12292号公報 特公平3−14091号公報
上述した特許文献1、2の消振装置の場合、油圧モータや油圧ポンプ、ブースタポンプ等の油圧機器および油圧配管が必要となる。これらの油圧機器を設置する場合、狭い船内において設置スペースを確保することが必要になるとともに、多大な設備費が必要となるうえに、そのメンテナンスにも多大な時間と手間がかかるという欠点がある。
本発明は、上記の課題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、調整用偏心重錘をクレーン等を用いずに人手で容易に着脱可能な構成にするとともに、消振装置運転中にその状態を維持することができ、さらにメンテナンス等の手間を低減することができる信頼性の高い消振装置を提供することにある。
上記の課題を達成するために、請求項1に係る消振装置の発明は、固定偏心重錘および前記固定偏心重錘よりも軽重量の調整用偏心重錘をそれぞれ取り付けた一対の回転軸と、前記一対の回転軸を回転可能に収納したケーシングと、を備え、前記一対の回転軸を互いに逆方向に等速に回転させることにより対象物が発する振動と逆位相の起振力の振動を発生させ、対象物の振動を打ち消す消振装置において、前記調整用偏心重錘は、1乃至複数個の調整用偏心重錘単体から構成すると共に前記調整用偏心重錘を回転軸に対して固定偏心重錘とほぼ軸対称の位置に配設し、前記回転軸が無拘束状態になると、前記固定偏心重錘と調整用偏心重錘との自重差により回転軸が回転し、調整用偏心重錘がケーシングの上部近傍に位置するように構成すると共に、前記調整用偏心重錘が位置する近傍の前記ケーシングに、開口部および前記開口部を覆う蓋部を設け、回転軸が無拘束状態の時に前記蓋部を開け、前記開口部より前記調整用偏心重錘単位を取り付け、取り外すことにより、発生する振動の起振力を調整できる構成としたことを特徴とする。
また、請求項2に係る消振装置の発明は、前記固定偏心重錘と調整用偏心重錘単体を前記一対の回転軸にそれぞれ固定して互いに噛合して等速回転する歯車に設けたことを特徴とする。
また、請求項3に係る消振装置の発明は、前記歯車および前記各調整用偏心重錘単体に、前記回転軸の軸と平行に配したスタッド用孔とそのスタッド用孔を貫通するスタッド、を備え、前記歯車と調整用偏心重錘単体との位置あわせを行うことを特徴とする。
また、請求項4に係る消振装置の発明は、前記調整用偏心重錘単体の一方の面に凸部を、他方の面に凹部を形成すると共に、前記歯車にも凸部あるいは凹部を形成し、それぞれ隣接する凸部と凹部を嵌合して前記歯車と調整用偏心重錘単体との位置あわせを行うことを特徴とする。
さらに、請求項5に係る消振装置の発明は、前記各調整用偏心重錘単体に形成される凸部と凹部は、各調整用偏心重錘単体に穿設された貫通孔に一方が略半分嵌入され、他方が略半分が突出した短尺ピンによって構成されると共に、前記歯車に形成される凸部あるいは凹部は、歯車に穿設された貫通孔に略半分が突出した短尺ピンあるいは略半分嵌入された短尺ピンによって構成されていることを特徴とする。
本発明によれば、一対の回転軸が無拘束状態になると、重量の重い固定偏心重錘が回転軸の下方側に位置し、それに伴って重量の軽い調整用偏心重錘が上方側の位置に配されるので、従来のようにクレーン等を用いて下方位置にある固定偏心重錘を上部位置まで持ち上げる必要がなく、ケーシングの上部に形成された開口部から調整用偏心重錘を構成する偏心重錘単体を容易に取り付け、取り外しができ、しかも、調整用偏心重錘単体は、人手で容易に取り扱いできる程度の大きさに構成していることから、船内等の設置空間の狭い場所でも、容易に少ない作業員で起振力の調整作業を行うことができる消振装置が提供できる。
本発明の実施形態1に係る消振装置を示す図であり、(a)はケーシングの一部を切り欠いて示す正面図、(b)は側面図である。 図1に示す消振装置の調整用偏心重錘を取り付け、取り外す状態を示す図であり、(a)は正面図、(b)は側面図である。 本発明の実施形態2に係る消振装置の調整用偏心重錘の支持構造を示す図であり、(a)は正面図、(b)は側面図である。 本発明の実施形態3に係る消振装置の調整用偏心重錘の支持構造を示す図であり、(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は歯車と調整用偏心重錘との嵌合部分の拡大断面図である。 本発明の実施形態4に係る消振装置の歯車と調整用偏心重錘との嵌合部分の拡大断面図。 従来の消振装置を示す図であり、(a)は正面図、(b)は側面図。 従来の消振装置の上部ケーシングを取り外し、下部ケーシングの一部を切り欠いた状態を示す図であり、(a)正面図、(b)は側面図である。 図7に示す固定偏心重錘および調整用偏心重錘を上部位置まで回転させた状態を示す図であり、(a)は正面図、(b)は側面図である。 図8に示す調整用偏心重錘を取り付け、取り外す状態を示す図であり、(a)は正面図、(b)は側面図である。
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、各図を通して、共通する部品には同一符号を付けて、重複する説明は適宜省略するものとする。
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係る消振装置を示す図であり、(a)はケーシングの一部を切り欠いて示す正面図、(b)は側面図、図2は図1に示す消振装置の調整用偏心重錘を取り付け、取り外す状態を示す図であり、(a)はケーシングの開口部を開放させ、かつ、ケーシングの一部を切り欠いて固定偏心重錘および調整用偏心重錘を可視化した正面図、(b)は側面図である。
まず、図1から説明する。
図1において、符号1aおよび1bは、平行に配置された一対の回転体A、Bの回転軸であり、従来と同様にそれぞれの回転軸1aおよび回転軸1bには、互いに噛合する歯車2aおよび歯車2bを嵌合固定している。そして、本発明は、これら歯車2aおよび歯車2bの両側面の下部位置(回転中心線Cよりも下部の位置)に、ほぼ半月状に形成された固定偏心重錘3a、3bを取り付け、回転軸1a、1bの上部位置(すなわち、固定偏心重錘3a、3bに対して回転軸1a、1bの軸心を中心とした軸対称位置)に同じく半月状に形成された調整用偏心重錘4a、4bを取り付けている。そして、それぞれの歯車2a、2bに取付けられた固定偏心重錘3a、3b、および調整用偏心重錘4a、4bはそれぞれ同一重量としているが、固定偏心重錘3a、3bの重量は、調整用偏心重錘4a、4bの重量よりも重く構成している。従って、回転軸1a、1bが無拘束状態になると、この自重差によって固定偏心重錘3a、3bが下方に、それに伴って調整用偏心重錘4a、4bが上方となるように歯車2a、2bが自然に回転し、調整用偏心重錘4a、4bがケーシング5の上部位置近傍に位置して停止する。
ここで調整用偏心重錘4a、4bは、クレーンやチェーンブロックなどの荷吊り機械を使用せずに、人手で取り付けおよび取り外しができる程度の重量となるように、回転軸1aおよび1bの軸方向に沿って複数個の単体(単体一つひとつを調整用偏心重錘単体4aw、4bwと呼ぶ)に分割されており、各調整用偏心重錘単体4aw、4bwは図示しない適当な結合手段で歯車4a、4bの両側面に回転軸1a、1bの軸方向に取り付けている。
5は、回転軸1a、1bを回転自在に軸支し、歯車2a、2b、固定偏心重錘3a、3b、調整用偏心重錘4a、4bおよび歯車潤滑用オイル6を収容したケーシングであり、その上部には開口部16が形成されており、その開口部16には蓋部7が取り外し可能に取り付けられている。従って、蓋部7を取り外すことにより、固定偏心重錘3a、3bと調整用偏心重錘4a、4bとの自重差で開口部16近傍に位置している調整用偏心重錘単体4aw、4bwをケーシング5の上部に設けた開口部16から取り外し、あるいは取り付けでき、しかも、調整用偏心重錘4a、4bは複数に分割した偏心重錘単体4awから構成しているので、人手で容易に取り付け、取り外しできる。
なお、本発明は、図示していないが、前述した歯車2a、2bの内、一方の例えば歯車2bには、この歯車2bと噛合する歯車が設けられており、この歯車をケーシング5の外部から駆動モータ等によって駆動することにより、一対の歯車2a、2bを互いに逆方向に等速回転させるように構成している。
このような構成で、駆動モータ等によって一対の歯車2a、2bを互いに逆方向に等速回転することにより、固定偏心重錘3a、3bと調整用偏心重錘4a、4bとの重量差により上下方向の起振力が発生し、この起振力をエンジン等の振動源によって発生する船体の共振振動と逆位相となるように位相と起振力を調整することで船体振動を相殺することができる。
図2は、歯車2aの片側から調整用偏心重錘単体4awを2個取り外す様子を示しているが、最終的に起振力の大きさを変更するには、歯車2a、2bの左右両側面から調整用偏心重錘単体4aw、4bwを同量の所定枚数を、取り付けまたは取り外しを行ない、調整用偏心重錘4a、4bの重量を変更する。これにより、固定偏心重錘3a、3bとの間に重量差が生じ起振力の大きさを変更することができる。
以上述べたように、本実施形態1によれば、回転軸の無拘束状態により、固定偏心重錘と調整用偏心重錘との自重差で自然に調整用偏心重錘が上部位置に位置するので、調整用偏心重錘単体4aw、4bwを取り付け、あるいは取り外すために、従来のように下部位置にある固定偏心重錘を上部位置にまで持ち上げるためのクレーン等が必要なく、しかも、調整用偏心重錘は複数に分割し人手で持ち運びできる程度の大きさの調整用偏心重錘単体から構成しているために、ケーシングの上部に設けた開口部から多数の人手をかけずに簡単に取り外し、取り付けでき、作業スペースの少ない場所でも消振装置の起振力を容易にかつ短時間で変更することができる。また、起振力の調整に油圧機器を使う必要がないのでメンテナンス等の手間を低減し、信頼性の高い消振装置を提供することができる。
(実施形態2)
図3は、本発明の実施形態2に係る消振装置の調整用偏心重錘の支持構造部分の正面図(a)と側面図(b)である。なお、一対の回転体A、Bは同じ構造を採用しているので、側面図(b)には一方の回転体Aのみを示し、他方に配した回転体Bの図示も説明も省略する。
本実施形態2は、前述した実施形態1では明記しなかった半月状の調整用偏心重錘単体4awの結合手段について具体的に述べたものである。
図3において、本実施形態は歯車2aおよび調整用偏心重錘4aに対して、回転軸1aの中心線Cに近い部位に軸方向にピン用孔8を2個形成し、このピン用孔8よりも外周に近い部位に軸方向にスタッド用孔9を4個形成している。そして、ピン用孔8にはピン10を嵌合し、スタッド用孔9にはスタッド11を洞貫(挿入)したあと、その両側にナット12を捩じ込んで歯車2aに締結するようになっている。ピン用孔8およびスタッド用孔9の個数や位置は例示であり、調整用偏心重錘4aの重量、大きさ等に応じて適宜、変更することができる。なお、本実施形態では、ピン用孔8とピン10との嵌合部、スタッド用孔9、スタッド11およびナット12による締結部を総称して結合手段と呼称する。
ピン用孔8に嵌合されるピン10は、調整用偏心重錘単体4awが回転によって径方向に生じる遠心力を受け止める機能と、調整用偏心重錘単体4awの取り付け、取り外し時の位置決めの機能とを主として担っており、また、スタッド11は、複数個の調整用偏心重錘単体4awを歯車2aに一体的に組み立てて調整用偏心重錘4aを構成する機能を主として担っている。
本実施形態2では、歯車2aに調整用偏心重錘単体4awを取り付ける際、まず、歯車2aのピン用孔8にピン10を嵌合し、固定する。この場合、ピン10は歯車2aの両側においてほぼ同じ寸法だけ突出するように嵌合し、ピン10の中心部を歯車2aに固定させる。次に、ピン10をガイドとして歯車2aの両側面に同数個の調整用偏心重錘単体4awを順次嵌合していく。その後、全長に亘ってネジが形成してあるスタッド11をスタッド用孔9に洞貫(挿入)させ、そのスタッド11の両側からナット12を捩じ込んで調整用偏心重錘4aを歯車2aに固定する。なお、スタッド11は、上述した全長にネジ溝を形成したものに限らず、両端部にのみネジ溝を形成したスタッドであってもよい。
本実施形態2の場合、ピン10と調整用偏心重錘単体4awとの嵌合箇所数よりも、スタッド11と調整用偏心重錘単体4awとの嵌合箇所数を多く構成しているため、消振装置の運転中の調整用偏心重錘4aの遠心力を歯車2aに取り付けた2本のピン10で主に担うことができ、スタッド11に不均一な遠心力がかかることを妨げている。また、調整用偏心重錘4aの取り付け或いは取り外し時の際、ピン10がガイドとして機能するため、消振装置の起振力の大きさの変更を容易、かつ、短時間で実施することができる。
以上述べたように、本実施形態2によれば、消振装置の起振力の大きさを変更する際、ピン10をガイドとして調整用偏心重錘単体4awを着脱することで容易に行うことができる。しかも、運転中にはスタッド11によって径方向の動きを強固に固定されているので、その状態を維持することができる。さらに、起振力の大きさを変更する際、油圧機器を使うことがないのでメンテナンス等の手間を低減した信頼性の高い消振装置を提供することができる。
(実施形態3)
図4は、本発明の実施形態3に係る消振装置の調整用偏心重錘の支持構造を示す図であり、(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は歯車と調整用偏心重錘との凹凸嵌合部の一例を示す拡大図である。
なお、一対の回転体A、Bは同じ構造を採用しているので、側面図(b)には一方の回転体Aのみを示し、他方に配した回転体Bの図示も説明も省略する。
本実施形態3が、調整用偏心重錘単体4awに生じる遠心力を受け止める機能と、調整用偏心重錘単体4awの組み立て時に位置決めする機能とをピンおよびピン用孔とによる嵌合で実現する点は前述した実施形態2の場合と同じであるが、本実施形態3が実施形態2と異なる点は、ピンの形状である。
すなわち、本実施形態3は、実施形態2で示した1本の長いピン10に替えて、歯車2aに嵌合するピンを短尺の第1ピン10とし、また、調整用偏心重錘単体4awのピン用孔8に嵌合するピンをやはり短尺の第2ピン10としたものである。第1ピン10および第2ピン10を短尺ピンと総称する。
ここで、歯車2aの厚みをw、調整用偏心重錘単体4awの厚みをwとすると、歯車2aに嵌合される第1ピン10の長さは、歯車2aの左右両側面から、調整用偏心重錘単体4awの厚みwの半分の寸法(w=w/2)だけ先端部が突出するように選定されている。一方、第2ピン10の長さは、調整用偏心重錘単体4awの厚みwと同じ寸法に選定されている。そして、この第2ピン10は調整用偏心重錘単体4awのピン用孔8に対して全長の半分(w/2)だけ嵌合し、残り半分は調整用偏心重錘単体4awの側面から突出するようになっている。第2ピン10はこの状態において溶接等で固定される。なお、ピン用孔8と第1ピン10との嵌合公差、およびピン用孔8と第2ピン10との嵌合公差はほぼ零に設定してある。
本実施形態3では、調整用偏心重錘単体4awを歯車2aの図示右側面に取り付ける場合、歯車2aの側面から突出する第1ピン10の先端部を調整用偏心重錘単体4awの左側のピン用孔8に嵌合する。そして、同調整用偏心重錘単体4awの図示右側面から突出している第2ピン10の先端部に対して、図示しない次に隣接する調整用偏心重錘単体4awのピン用孔8を嵌合する。以後、所定個数の調整用偏心重錘単体4awを順次第2ピン10とピン用孔8との嵌合により取り付けていく。また、同様にして歯車2aの図示左側面にも所定個数の調整用偏心重錘単体4awを順次取り付けていく。
以上述べたように、本実施形態3によれば、実施形態2で採用した長尺のピン10を、短尺の第1ピン10および第2ピン10に置き換えても、実施形態2の場合と同様の作用効果を奏することができる。
(実施形態4)
図5は、本発明の実施形態4に係る消振装置の歯車と調整用偏心重錘単体とを並べて示す断面図である。なお、消振装置の正面図と側面図とは、図4の正面図(a)および側面図(b)と同様なので、図示を省略する。
本実施形態4は、歯車2aに調整用偏心重錘単体4awを取り付ける際、ピン用孔8とピン10との嵌合に替わって、凹凸嵌合部によって取り付けるようにした点に特徴がある。
すなわち、歯車2aは両側面に凹部13を設けており、これに対して調整用偏心重錘単体4awは、一側面(図示左側面)に歯車2aに設けた凹部13と嵌合する凸部14を設け、他側面(図示右側面)に凹部13と同一寸法の凹部15をそれぞれ設けている。これら凹部および凸部による嵌合部を以下、凹凸嵌合部という。そして、凸部14は調整用偏心重錘単体4awに溶接で結合してもよく、あるいは調整用偏心重錘単体4awを成形する際に削り出して形成してもよい。
そして、歯車2aの凹部13には調整用偏心重錘単体4awの凸部14が嵌合し、調整用偏心重錘単体4awの凹部15には隣接する図示しない他の調整用偏心重錘単体4awの凸部14が嵌合するようになっている。なお、凹部13と凸部14との嵌合公差、凸部14と凹部15との嵌合公差はほぼ零に設定してある。
本実施形態4では、歯車2aに調整用偏心重錘単体4awを取り付ける際、歯車2aの両側面に形成した凹部13に対して、まず、左右の両側から隣接する1個目の調整用偏心重錘単体4awの一側面に形成した凸部14を嵌合する。これにより、調整用偏心重錘4aの位置決めを行う。次に、1個目の調整用偏心重錘単体4awの他側面に形成した凹部15に対して2個目の調整用偏心重錘単体4awの凸部14を嵌合する。同様にして2個目の調整用偏心重錘単体4awの他側面の凹部15に対して3個目の調整用偏心重錘単体4awの凸部14を嵌合する。このような作業を歯車2aの両側面において所定個数分の取り付けが終わるまで行なう。その後、回転軸1aの軸方向に沿った位置にあるスタッド用孔9にスタッド11を洞貫(挿入)させ、両側からナット12を捩じ込むことにより、調整用偏心重錘単体4awを一体化するとともに歯車2aに対して固定する。
なお、歯車2aおよび調整用偏心重錘単体4aw間の凹凸嵌合部、調整用偏心重錘単体4aw相互間の凹凸嵌合部は、図5の例に限定されるものではなく、凹部と凸部との位置関係を逆に構成すること、すなわち、歯車2aの凹部13を凸部に置き換え、調整用偏心重錘単体4awの凸部14を凹部に置き換え、さらに凹部15を凸部に置き換えるように構成することもできる。
以上述べたように、本実施形態4によれば、実施形態1乃至3の奏する作用効果に加え、歯車2aおよび調整用偏心重錘単体4aw間、調整用偏心重錘単体4aw相互間における凹凸嵌合部により消振装置運転中の調整用偏心重錘4aの遠心力を主として受け持つ構成にしたので、実施形態2で用いた長尺のピン10や、実施形態3で用いた短尺のピン10、10等を省くことができる。
なお、以上述べた実施形態1乃至4では、歯車2aおよび歯車2bにそれぞれ固定偏心重錘3a、3bおよび調整用偏心重錘4a、4bを直接取り付けるように構成したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、歯車2a、2bとは別体に構成した一対の円板を回転軸1a、1bにそれぞれ嵌合固定し、この一対の円板にそれぞれ固定偏心重錘および調整用偏心重錘を取り付けるように構成してもよい。
また、図1乃至図5では、固定偏心重錘3a、3bおよび調整用偏心重錘4a、4bの平面形状を半月形状としたが、本発明はこれに限定されるものではない。たとえば、回転軸1a、1bの回転中心線Cを含む水平面で2分割された半円形状とし、かつ、分割面(半円の弦の部分)に回転軸1a、1bの外周面に対応した凹部を設けるようにしてもよい。このような半円形状を採用する場合、平面形状が半月形状よりも大きくなるので固定偏心重錘3a、3bおよび調整用偏心重錘4a、4bの板厚を薄くすることができるという利点がある。
また、本発明は、消振装置について説明したが、設置場所に振動を与える加振機も構造が全く同じであるので、加振機の加振力の調整機構にも利用可能である。
1a、1b…回転軸、2a、2b…歯車、3a、3b…固定偏心重錘、4a、4b…調整用偏心重錘、4aw、4bw…調整用偏心重錘単体、5…ケーシング、6…歯車潤滑用オイル、7…蓋部、8…ピン用孔、9…スタッド用孔、10…ピン、10…第1ピン(短尺ピン)、10…第2ピン(短尺ピン)、11…スタッド、12…ナット、13…凹部、14…凸部、15…凹部、16…開口部。

Claims (5)

  1. 固定偏心重錘および前記固定偏心重錘よりも軽重量の調整用偏心重錘をそれぞれ取り付けた一対の回転軸と、前記一対の回転軸を回転可能に収納したケーシングと、を備え、前記一対の回転軸を互いに逆方向に等速に回転させることにより対象物が発する振動と逆位相の起振力の振動を発生させ、対象物の振動を打ち消す消振装置において、
    前記調整用偏心重錘は、1乃至複数個の調整用偏心重錘単体から構成すると共に、
    前記調整用偏心重錘を回転軸に対して固定偏心重錘とほぼ軸対称の位置に配設し、
    前記回転軸が無拘束状態になると、前記固定偏心重錘と調整用偏心重錘との自重差により回転軸が回転し、調整用偏心重錘がケーシングの上部近傍に位置するように構成すると共に、
    前記調整用偏心重錘が位置する近傍の前記ケーシングに、開口部および前記開口部を覆う蓋部を設け、回転軸が無拘束状態の時に前記蓋部を開け、前記開口部より前記調整用偏心重錘単位を取り付け、取り外すことにより、発生する振動の起振力を調整できる構成としたことを特徴とする消振装置。
  2. 前記固定偏心重錘と調整用偏心重錘単体は、前記一対の回転軸にそれぞれ固定して互いに噛合して等速に逆回転する歯車に設けたことを特徴とする請求項1に記載の消振装置。
  3. 前記歯車および前記各調整用偏心重錘単体には、前記回転軸の軸と平行に配したスタッド用孔とそのスタット用孔を貫通するスタット、を備え、前記歯車と調整用偏心重錘単体との位置あわせを行うことを特徴とする請求項2に記載の消振装置。
  4. 前記調整用偏心重錘単体の一方の面に凸部を、他方の面に凹部を形成すると共に、前記歯車にも凸部あるいは凹部を形成し、それぞれ隣接する凸部と凹部を嵌合して前記歯車と調整用偏心重錘単体との位置あわせを行うことを特徴とする請求項2に記載の消振装置。
  5. 前記各調整用偏心重錘単体に形成される凸部と凹部は、各調整用偏心重錘単体に穿設された貫通孔に一方が略半分嵌入され、他方が略半分が突出した短尺ピンによって構成されると共に、前記歯車に形成される凸部あるいは凹部は、歯車に穿設された貫通孔に略半分が突出した短尺ピンあるいは略半分嵌入された短尺ピンによって構成されていることを特徴とする請求項4に記載の消振装置。
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