以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
(加熱炉制御システムの概略について)
まず、図1を参照しながら、本発明の実施形態に係る加熱炉制御システムの概略について、簡単に説明する。図1は、本発明の実施形態に係る加熱炉制御システムの概略を示した説明図である。
なお、以下に示す本発明の各実施形態において、リサイクルガスとは、いわゆるバイオマスガス及び古タイヤや廃プラスチック等の廃材由来のガスの少なくとも何れか一方を含む可燃性のガスをいう。かかるリサイクルガスでは、バイオマスガスや廃材由来のガスの混合比率に応じて、ガスに含まれる成分や当該成分の比率が変化する。そのため、かかるリサイクルガスを利用する場合には、含まれる各成分ガスがどのような比率で含まれているかによって、リサイクルガスを燃焼させた際に生じる発熱量が変動することとなる。
本発明の実施形態に係る加熱炉制御システム1は、図1に例示したように、加熱炉3と、加熱炉3に設けられた炉内温度を測定する熱電対などからなる炉温測定装置5と、加熱炉温度制御装置7と、を備える。また、加熱炉3には、燃料であるリサイクルガスが供給されるリサイクルガス配管と、空気が供給される燃焼空気配管とが接続されており、各配管には、リサイクルガス及び空気それぞれ用に流量制御機構10,20がそれぞれ設けられている。また、本発明の実施形態に係る加熱炉制御システム1は、更に、加熱炉空燃比制御装置30を備え、各配管に設けられた流量制御機構10,20を制御して、加熱炉3に供給される燃料(リサイクルガス)の空燃比を制御する。
ここで、加熱炉温度制御装置7は、熱電対などの炉温測定装置5により測定された加熱炉3の炉内温度(実績炉温)に応じて、加熱炉3の炉内温度の制御を実施する装置である。すなわち、加熱炉温度制御装置7は、予め設定された加熱炉の設定温度と測定された実績炉温とを比較し、設定温度と実績炉温とは異なる場合に、後述する加熱炉空燃比制御装置30に対して燃料流量の調整を要請する信号(以下、単に、調整要請信号とも称する。)を出力する。この際、加熱炉温度制御装置7は、設定温度と実績炉温との偏差が予め設定した閾値よりも大きいときに、調整要請信号を出力するようにしてもよい。
また、各配管に設けられた流量制御機構10,20は、各配管に設けられた各種の流量計や流量調節弁等から構成されており、以下で説明する加熱炉空燃比制御装置30の制御のもとで、加熱炉3に供給されるリサイクルガスや燃焼空気の流量を制御する。
更に、加熱炉空燃比制御装置30は、加熱炉温度制御装置7からの空燃比の調整要請信号に応じて、後述するような方法によりリサイクルガス及び燃焼空気の混合比率(すなわち、空燃比)を決定し、決定した空燃比を用いて、流量制御機構20の駆動制御を実施する。これにより、本発明の実施形態に係る加熱炉空燃比制御装置30は、燃焼ガス流量(リサイクルガス流量)と燃焼空気流量の比率を、加熱炉3におけるススやSOx/NOx等の化学物質の発生を抑制するように制御する。
なお、かかる流量制御機構10,20及び加熱炉空燃比制御装置30については、以下で改めて詳細に説明する。
また、本発明の実施形態では、説明の便宜上、加熱炉温度制御装置7と、加熱炉空燃比制御装置30とが異なる装置として実現されているものとするが、加熱炉温度制御装置7と加熱炉空燃比制御装置30とは、一体に構成されていてもよい。すなわち、加熱炉温度制御装置が、本発明の実施形態に係る加熱炉空燃比制御装置の機能を更に有していてもよく、本発明の実施形態に係る加熱炉空燃比制御装置が、加熱炉温度制御装置の機能を更に有していてもよい。更に、本発明の実施形態に係る加熱炉空燃比制御装置30は、いわゆる分散制御システム(Distributed Control System:DCS)により実現されてもよい。
以上、図1を参照しながら、本発明の実施形態に係る加熱炉制御システム1の概略について、簡単に説明した。
(第1の実施形態)
次に、図2〜図6を参照しながら、本発明の第1の実施形態に係る加熱炉制御システム、加熱炉空燃比制御装置及び加熱炉空燃比制御方法について、詳細に説明する。
<流量制御機構及び各種測定機器について>
まず、図2を参照しながら、本実施形態に係る加熱炉制御システム1に設けられた流量制御機構10,20、及び、リサイクルガス配管に設置された各種測定機器について説明する。図2は、本実施形態に係る流量制御機構10,20及びリサイクルガス配管に設置された各種測定機器の一例を示した説明図である。
図2に例示したように、リサイクルガス配管には、当該配管により加熱炉3に供給されるリサイクルガスの発熱量を測定するためのカロリー計31と、リサイクルガスに含まれる一酸化炭素(CO)の濃度を測定するためのCO分析用レーザガス分析計33と、リサイクルガスに含まれるメタン(CH4)の濃度を測定するためのCH4分析用レーザガス分析計35と、がそれぞれ設けられている。
カロリー計31は、リサイクルガス配管を介して供給されるリサイクルガスに対して、当該リサイクルガスが完全燃焼をするのに十分な酸素を供給し、リサイクルガスが完全燃焼した際に発生する熱量(発熱量)を計測する装置である。従って、通常は一度の測定に分オーダーの時間を要する。カロリー計31により測定されたリサイクルガスの発熱量に関する測定結果は、後述する加熱炉空燃比制御装置30に随時出力される。なお、かかるカロリー計31は、市販品で構成してもよい。
CO分析用レーザガス分析計33及びCH4分析用レーザガス分析計35は、それぞれリサイクルガス中に含まれるCO成分及びCH4成分の濃度(例えば、体積%)を測定する装置である。本実施形態では、リサイクルガス中に含まれる主要な燃焼成分であるCO成分及びCH4成分に着目し、これらの成分の分オーダーでの変動を、通常は5秒程度以下の時間で測定可能であり、上記カロリー計と比べて時間応答性のよいレーザガス分析計(すなわち、高速応答レーザガス分析計)により高速かつ的確に把握する。以下ではまず、図3を参照しながら、これらレーザガス分析計の仕組みについて、簡単に説明する。図3は、レーザガス分析計の仕組みについて説明するための説明図である。
レーザガス分析計は、図3に例示したように、所定波長を有するレーザ光を射出するレーザ発光部と、レーザ発光部から射出されたレーザ光を受光するレーザ受光部と、レーザ光の受光量に基づいて演算を行う演算部と、を備えている。ここで、レーザ発光部及びレーザ受光部は、測定対象であるリサイクルガス配管を挟んで対向するように設置される。
レーザ発光部は、濃度測定対象とする化合物(例えば、本実施形態で着目するCOやCH4)に特徴的な吸収波長帯に属する波長のレーザ光を射出する。レーザ発光部から射出されたレーザ光は、測定対象とする化合物を含むリサイクルガス中を透過して、レーザ受光部に受光される。レーザガス分析計の演算部は、レーザ発光部から射出されたレーザ光の強度、及び、レーザ受光部が受光したレーザ光の強度を用いて、濃度測定対象とする化合物により吸収された光量の割合(すなわち吸光度)を算出し、算出した吸光度に基づいて、濃度測定対象とする化合物の濃度を、高速に算出することができる。なお、かかるレーザガス分析計は、市販品で構成してもよい。
本実施形態に係る加熱炉空燃比制御装置30では、後述するように、カロリー計31により測定された発熱量から算出した理論空気量を、時間応答性に優れた上述のようなレーザガス分析計により測定された測定結果から得られる成分変動量に基づいて補正する。これにより、供給されるリサイクルガスの理論空気量を、カロリー計のみを用いる場合に比べて高速かつ正確に測定することが可能となる。
CO分析用レーザガス分析計33及びCH4分析用レーザガス分析計35による測定結果を示したデータは、後述する加熱炉空燃比制御装置30に随時出力される。
また、図2に例示したように、これら測定装置の下流側(加熱炉3側)には、流量制御機構10が設置されている。かかる流量制御機構10は、流量計101と、流量調節弁103と、カロリー計105と、密度補正機構107と、を備える。
流量計101は、リサイクルガス配管を流れるリサイクルガスの流量を計測する装置であり、図2に例示したように、例えば差圧式流量計を利用することが可能である。また、差圧式流量計を用いる場合には、リサイクルガスの密度を補正することが求められるため、カロリー計105及び密度計のような密度補正機構107が設けられている。密度補正後のリサイクルガスの流量に関する情報は、後述する加熱炉空燃比制御装置30に随時出力される。また、流量調節弁103は、後述する加熱炉空燃比制御装置30の制御のもとで、加熱炉3に供給されるリサイクルガスの流量を制御する。
また、燃焼空気配管には、図2に示したように、流量制御機構20が設けられている。この流量制御機構20は、流量計201と、流量調節弁203と、温圧補正機構205と、を備える。
流量計201は、燃焼空気配管を流れる燃焼空気の流量を計測する装置であり、測定結果は、温圧補正機構205により補正された上で、後述する加熱炉空燃比制御装置30に随時出力される。また、流量調節弁203は、後述する加熱炉空燃比制御装置30の制御のもとで、加熱炉3に供給される燃焼空気の流量を制御する。
加熱炉空燃比制御装置30は、以上説明したような各種測定機器及び流量制御機構から出力される測定結果を用いて、供給されているリサイクルガスに適した理論空気量を精度よく算出し、得られた理論空気量に基づいて、リサイクルガス配管に設けられた流量調節弁103及び燃焼空気配管に設けられた流量調節弁203の制御を実施する。これにより、加熱炉3に供給されるリサイクルガスの空燃比が、適切に制御されることとなる。
以上、図2を参照しながら、本実施形態に係る加熱炉制御システム1に設けられた流量制御機構10,20、及び、リサイクルガス配管に設置された各種測定機器について説明した。なお、流量制御機構10,20は、市販品で構成してもよい。
図2では、流量制御機構10が差圧式流量計を備える場合について説明したが、流量計101として、差圧式流量計ではなく、渦流量計や超音波流量計を使用してもよい。渦流量計や超音波流量計を使用することで、カロリー計105や密度補正機構107を設けることなく、リサイクルガスの流量を計測することが可能となる。
<加熱炉空燃比制御装置の構成について>
続いて、図4を参照しながら、本実施形態に係る加熱炉空燃比制御装置の構成について、詳細に説明する。図4は、本実施形態に係る加熱炉空燃比制御装置の構成の一例を示したブロック図である。
なお、以下の説明に先立ち、本実施形態に係る加熱炉空燃比制御装置30は、当該装置の設定情報(例えば、設定パラメータ等)を示したデータや、他の分析装置による分析結果を示したデータ等を参照することで、リサイクルガス配管中を流れるリサイクルガスの成分(組成成分)や、各成分の体積比(体積%の比率)のデータ等を随時取得することが可能であるものとする。ここで、上記体積比は、ある期間に測定された体積の平均値である平均体積を用いて予め算出された平均体積比であってもよい。
本実施形態に係る加熱炉空燃比制御装置30は、図4に示したように、測定情報取得部301と、理論空気量演算部303と、空燃比算出部309と、制御信号出力部311と、記憶部313と、を主に備える。
測定情報取得部301は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、通信装置等により実現される。測定情報取得部301は、リサイクルガス配管に設けられたカロリー計31、及び、CO分析用レーザガス分析計33及びCH4分析用レーザガス分析計35のそれぞれから出力される、測定結果を示した情報である測定情報のデータを取得する。
また、測定情報取得部301は、リサイクルガス配管及び燃焼空気配管に設けられた各流量制御機構10,20から、各配管を流れる気体の現在流量に関する情報のデータを取得することも可能である。
測定情報取得部301は、リサイクルガス配管に設けられた各種測定機器から取得した測定情報のデータ、及び、各流量制御機構10,20から取得した現在流量に関する流量情報のデータを取得すると、取得したこれらの情報のデータを、後述する理論空気量演算部303に出力する。また、測定情報取得部301は、取得したこれらの情報に、これらの情報を取得した日時等に関する時刻情報を関連づけ(紐付けて付記し)、後述する記憶部313等に履歴情報として格納してもよい。
理論空気量演算部303は、例えば、CPU、ROM、RAM等により実現される。理論空気量演算部303は、測定情報取得部301が取得したカロリー計31による測定結果を示したデータ、CO分析用レーザガス分析計33による測定結果を示したデータ、及び、CH4分析用レーザガス分析計35による測定結果を示したデータ等の各種情報や、後述する記憶部313等に格納されている、又は、本実施形態に係る加熱炉空燃比制御装置30の操作者等により当該加熱炉空燃比制御装置30に入力された、リサイクルガスの組成成分及び各組成成分の体積比を示したデータ等の各種情報等を用いて、リサイクルガス配管を介して加熱炉3に供給されるリサイクルガスの理論空気量を演算により算出する。かかる理論空気量の演算処理は、例えば、加熱炉温度制御装置7から出力された空燃比制御要請の信号に応じて実行されてもよいし、所定周期毎に実施されてもよいし、加熱炉空燃比制御装置30の操作者による所定の入力操作に応じて実施されてもよい。なお、本明細書において、各測定機器による測定結果(測定値)や各演算部及び制御器による演算結果(演算値)並びにその他のデータ値等を、単に「○○○の情報」とも称することとする。
また、理論空気量演算部303は、演算の結果得られたリサイクルガスの理論空気量の情報を、加熱炉空燃比制御装置30が備えるディスプレイ等の表示装置(図示せず。)や、加熱炉空燃比制御装置30の外部に設けられた各種装置が備えるディスプレイ等の表示装置に出力してもよい。かかる情報を表示装置に出力することで、加熱炉制御システム1の操作者(管理者)は、算出されたリサイクルガスの理論空気量の情報を、その場で把握することが可能となる。
本実施形態に係る理論空気量演算部303は、図4に示したように、理論空気量算出部305と、理論空気量補正部307と、を更に備える。
理論空気量算出部305は、例えば、CPU、ROM、RAM等により実現される。理論空気量算出部305は、測定情報取得部301が取得した測定情報のうち、カロリー計31により測定されたリサイクルガスの発熱量(低位発熱量)の測定結果を示したデータ用いて、加熱炉3に供給されているリサイクルガスの理論空気量を算出する。
ここで、気体燃料の理論空気量をAoと表すこととすると、気体燃料を完全に燃焼させるために要する酸素量(理論酸素量)をOoと表した場合に、理論空気量Aoは、酸素の体積比率を0.21としたとき、一般に以下の式101に示した式を用いることで算出することができる。ここで、以下の式101において、理論酸素量は、式102で表される値である。
上記式102は、気体燃料中に存在する可燃性成分(H2、CO、CH4等)を完全燃焼させるために要する酸素量を表した式であり、V(X)は、気体燃料中に存在する可燃性成分Xの体積%を表している。また、式102の右辺最終項に示したV(O2)は、気体燃料中に存在する酸素の濃度を表している。
他方、加熱炉の過去の操業実績等を解析することで、リサイクルガスの発熱量(すなわち、カロリー計31による測定結果)と、リサイクルガスの理論空気量とは、相関関係にある(より詳細には、線形関係にある)ことが分かっている。従って、リサイクルガスの発熱量(低位発熱量:単位[kcal/Nm3])をH1と表すこととすると、理論空気量Aoは、以下の式103のように表すことができる。ここで、以下の式103におけるα及びβは、操業実績等から予め算出される実数である。
Ao=α×H1+β ・・・(式103)
そこで、本実施形態に係る理論空気量算出部305は、測定情報取得部301が取得した測定情報のうち、カロリー計31により測定されたリサイクルガスの発熱量(低位発熱量)に関する測定結果を用いて、上記式103で表されるような相関関係式を用いて、リサイクルガス配管中を流れるリサイクルガスの理論空気量を算出する。
加熱炉3に供給されるリサイクルガスの成分は、混合されるガス(例えば、バイオマスガスや、古タイヤに由来する廃材由来ガスや、廃プラスチックに由来する廃材由来ガス等)の種別や混合比率が大きく変化しなければ、大きく変動しないものと考えられる。そこで、本実施形態に係る加熱炉空燃比制御装置30では、カロリー計31で測定したリサイクルガスの発熱量を用いてリサイクルガスの理論空気量を算出したうえで、後述する理論空気量補正部307によりリサイクルガス成分の変動に起因する理論空気量の変化量を補正し、加熱炉3に供給されるリサイクルガスの空燃比を適切に制御する。
理論空気量算出部305は、このようにして算出したリサイクルガスの理論空気量を、後述する理論空気量補正部307に出力する。また、理論空気量算出部305は、算出した理論空気量を示すデータに、当該データを算出した日時等に関する時刻情報を関連づけ(紐付けて付記し)、後述する記憶部313等に履歴情報として格納してもよい。
理論空気量補正部307は、例えば、CPU、ROM、RAM等により実現される。理論空気量補正部307は、リサイクルガスに含まれる一酸化炭素及びメタンの体積の値と、算出された理論空気量と、測定情報に含まれる一酸化炭素及びメタンの濃度の値と、を用いて、リサイクルガスに含まれる一酸化炭素及びメタンの濃度の変動に応じて理論空気量を補正する。ここで、一酸化炭素及びメタンの体積の値は、予めある期間に測定された体積の平均値である平均体積であってもよい。
より具体的には、理論空気量補正部307は、以下の式104を用いて理論空気量Aoを補正し、補正理論空気量Ao_compを算出する。ここで、以下の式104において、Vmeas(X)は、成分Xの測定濃度(単位:体積%)であり、Vave(X)は、成分Xの平均濃度(単位:体積%)である。
上記式104の右辺第1項は、理論空気量算出部305が算出した理論空気量であり、右辺第2項は、リサイクルガスに含まれる一酸化炭素の濃度変動に伴う理論空気量の変化量であり、右辺第3項は、リサイクルガスに含まれるメタンの濃度変動に伴う理論空気量の変化量である。また、右辺第2項に含まれる係数0.5と、右辺第3項に含まれる係数2は、各成分の燃焼化学式により規定される係数である。
ここで、本実施形態に係る理論空気量補正部307は、各成分の変動に起因する理論空気量の変化量を算出するに際して、制御の可変ゲインを考慮するために、右辺第2項に補正係数K1を導入しており、右辺第3項に補正係数K2を導入している。
かかる補正係数K1,K2は、加熱炉3におけるススの発生状況及び加熱炉3の排ガス成分(例えば、排ガスO2の測定値や、NOxの測定濃度等)の変化に応じて調整される。例えば、補正係数K1,K2の値は、加熱炉3においてススが発生した場合には増加され、加熱炉3の排ガスに含まれる上述のような所定成分の濃度が閾値超過となった場合には、減少される。
かかる補正係数K1,K2の値の設定は、理論空気量補正部307が、ススの発生状況や排ガス成分等の変化に応じて自動的に行っても良く、加熱炉空燃比制御装置30の操作者(管理者)が、ススの発生状況や排ガス成分等の変化に応じて、人為的に設定してもよい。
理論空気量補正部307は、このようにして理論空気量の補正を行う(換言すれば、補正理論空気量の算出を行う)と、得られた結果を示したデータを、後述する空燃比算出部309に出力する。また、理論空気量補正部307は、算出した補正理論空気量を示すデータに、当該データを算出した日時等に関する時刻情報を関連づけ(紐付けて付記し)、後述する記憶部313等に履歴情報として格納してもよい。
空燃比算出部309は、例えば、CPU、ROM、RAM等により実現される。空燃比算出部309は、理論空気量補正部307により算出された補正理論空気量と、流量制御機構10から出力されたリサイクルガスの供給流量とを用いて、加熱炉3に供給されるリサイクルガスの燃焼空気量を算出し、かかる燃焼空気量を用いてリサイクルガスの空燃比を算出する。
具体的には、空燃比算出部309は、算出された補正理論空気量にリサイクルガスの供給流量を乗じることで、加熱炉3に供給されるリサイクルガスを完全に燃焼させるために必要な空気量(燃焼空気量)を算出する。従って、空燃比算出部309は、リサイクルガスの供給流量と、算出した燃焼空気量の比をとることで、空燃比を算出することができる。
また、空燃比算出部309は、燃焼空気量を算出する際に、予め設定された過剰空気比mを用いて、燃焼空気量を算出してもよい。この過剰空気比mは、理論空気量補正部307による理論空気量の補正処理を実施していない状況下で、リサイクルガスの発熱量の変動を考慮しつつ、加熱炉3におけるススの発生状況や、排ガス中の所定成分の濃度を参照しながら決定することができる。かかる過剰空気比mの値は、加熱炉3の大きさや設置条件等に応じて適宜設定すればよいが、例えば1.2程度の値から開始して、加熱炉3におけるススの発生状況や、排ガス中の所定成分の濃度を参照しながら決定することが可能である。
空燃比算出部309は、以上のようにして空燃比を算出すると、算出した空燃比を、後述する制御信号出力部311に出力する。また、空燃比算出部309は、算出した空燃比を示すデータに、当該データを算出した日時等に関する時刻情報を関連づけ(紐付けて付記し)、後述する記憶部313等に履歴情報として格納してもよい。
なお、空燃比算出部309は、具体的な空燃比の値を算出せずに、算出した燃焼空気量を示すデータそのものを、後述する制御信号出力部311に出力してもよい。
制御信号出力部311は、例えば、CPU、ROM、RAM、通信装置等により実現される。制御信号出力部311は、算出されたリサイクルガスの空燃比又は燃焼空気量を示すデータや予め設定された過剰空気比を用いて、リサイクルガスの供給流量及び加熱炉に供給される空気の供給流量を制御するための制御信号を生成し、流量制御機構10,20にそれぞれ出力する。これにより、加熱炉3に供給されるリサイクルガスの供給流量及び燃焼空気の供給流量が流量制御機構10,20の流量調節弁により制御され、リサイクルガスの空燃比の制御が行われることとなる。
記憶部313は、本実施形態に係る加熱炉空燃比制御装置30が備えるストレージ装置の一例である。記憶部313には、理論空気量算出部305がリサイクルガスの発熱量を用いて理論空気量を算出するための相関関係式を示したデータや、過去の操業実績等に関する各種のデータベースや、加熱炉空燃比制御装置30の設定パラメータの情報等が格納されている。また、記憶部313には、本実施形態に係る加熱炉空燃比制御装置30が、何らかの処理を行う際に保存する必要が生じた様々なパラメータや処理の途中経過等、または、各種のデータベース・プログラム等が、適宜格納される。この記憶部313には、加熱炉空燃比制御装置30が備える各処理部が、自由に読み書きを行うことが可能である。
以上、本実施形態に係る加熱炉空燃比制御装置30の機能の一例を示した。上記の各構成要素は、汎用的な部材や回路を用いて構成されていてもよいし、各構成要素の機能に特化したハードウェアにより構成されていてもよい。また、各構成要素の機能を、CPU等が全て行ってもよい。従って、本実施形態を実施する時々の技術レベルに応じて、適宜、利用する構成を変更することが可能である。
なお、上述のような本実施形態に係る加熱炉空燃比制御装置の各機能を実現するためのコンピュータプログラムを作製し、パーソナルコンピュータ等に実装することが可能である。また、このようなコンピュータプログラムが格納された、コンピュータで読み取り可能な記録媒体も提供することができる。記録媒体は、例えば、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、フラッシュメモリなどである。また、上記のコンピュータプログラムは、記録媒体を用いずに、例えばネットワークを介して配信してもよい。
<加熱炉空燃比制御方法の流れについて>
続いて、図5及び図6を参照しながら、本実施形態に係る加熱炉制御システム1で実施される加熱炉空燃比制御方法の流れについて説明する。図5は、本実施形態に係る加熱炉空燃比制御方法の全体的な流れの一例を示した流れ図である。図6は、本実施形態に係る理論空気量補正係数の算出処理の流れの一例を示した流れ図である。
[全体的な流れについて]
まず、図5を参照しながら、本実施形態に係る加熱炉空燃比制御方法の全体的な流れについて説明する。
加熱炉空燃比制御装置30の測定情報取得部301は、リサイクルガス配管に設けられたカロリー計31及び各レーザガス分析計33,35から、リサイクルガスの測定データを取得する(ステップS101)。また、測定情報取得部301は、上記測定データに加えて、リサイクルガス配管及び燃焼空気配管に設けられた各流量制御機構10,20から、供給されている気体の流量の測定データを取得する。
測定情報取得部301は、これらの測定データを取得すると、取得した測定データを、理論空気量算出部305に出力する。
次に、理論空気量算出部305は、測定情報取得部301から出力された測定情報を示したデータのうち、カロリー計31の測定結果(リサイクルガスの発熱量)を示したデータを用いて、リサイクルガスの理論空気量を算出し(ステップS103)、理論空気量補正部307に出力する。
理論空気量補正部307は、まず、測定情報取得部301から出力されたリサイクルガス中に含まれる一酸化炭素及びメタンの測定結果等を示したデータを用いて、理論空気量補正係数K1,K2を算出する(ステップS105)。その後、理論空気量補正部307は、算出した理論空気量補正係数K1,K2と、理論空気量算出部305が算出した理論空気量と、を用いて、補正理論空気量を算出する(ステップS107)。理論空気量補正部307は、補正理論空気量を算出すると、算出した補正理論空気量を示した情報を空燃比算出部309に出力する。
続いて、空燃比算出部309は、算出された補正理論空気量を用いて、供給されるリサイクルガスの燃焼空気量を算出し、算出した燃焼空気量に基づいて空燃比を算出する(ステップS109)。その後、空燃比算出部309は、算出した空燃比を、制御信号出力部311に出力する。
制御信号出力部311は、空燃比算出部309により算出された空燃比を用いて、かかる空燃比を実現するために必要な制御信号を生成し、生成した制御信号を流量制御機構10,20に出力する(ステップS111)。これにより、供給されるリサイクルガスに応じた空燃比の制御がなされることとなる。
その後、加熱炉空燃比制御装置30は、取得した各種測定情報等を参照しながら、空燃比の制御を終了するか否かを判断する(ステップS113)。空燃比の制御を継続する場合には、加熱炉空燃比制御装置30はステップS101に戻って処理を継続する。また、空燃比の制御を終了する場合には、加熱炉空燃比制御装置30は空燃比の制御処理を終了する。
以上、図5を参照しながら、本実施形態に係る加熱炉空燃比制御方法の全体的な流れについて説明した。
[理論空気量補正係数の算出処理について]
次に、図6を参照しながら、理論空気量補正部307により実施される理論空気量補正係数の算出処理の流れを説明する。
まず、理論空気量補正部307は、測定情報取得部301が取得した測定情報のうち、一酸化炭素の濃度に関する測定結果を参照して、一酸化炭素成分(CO成分)の濃度が変化したか否かを判断する(ステップS121)。一酸化炭素成分の濃度が変化していない場合には、理論空気量補正部307は、後述するステップS133を実施する。また、一酸化炭素成分の濃度が変化していた場合には、理論空気量補正部307は、CO成分の変化量(CO成分の濃度平均からの変化量)を算出し、算出したCO成分の変化量を用いて理論空気量の変化量を算出する。その後、理論空気量補正部307は、算出した理論空気量の変化量に応じて、補正係数K1を設定する(ステップS123)。
理論空気量補正部307により補正係数K1が設定された後に、加熱炉3においてススが発生したか否かについての判断が実施される(ステップS125)。加熱炉3においてススが発生した場合には、いわゆるガスリッチな状態にあると判断し、補正係数K1の値を例えば0.1増加させて(ステップS127)、理論空気量の変化量を大きく見積もるようにし、再びステップS125の処理が実施される。また、ススが発生していない場合には、加熱炉3の排ガスに含まれるNOxの濃度が規定値以内であるか否かの判断が実施される(ステップS127)。
NOxの濃度が規定値超過である場合には、いわゆるエアリッチな状態にあると判断し、補正係数K1の値を例えば0.1減少させて(ステップS129)、理論空気量の変化量を小さく見積もるようにし、再びステップS129の処理が実施される。また、NOxの濃度が規定値以内であれば、後述するステップS133が実施される。
続いて、理論空気量補正部307は、測定情報取得部301が取得した測定情報のうち、メタンの濃度に関する測定結果を参照して、メタン成分(CH4成分)の濃度が変化したか否かを判断する(ステップS133)。メタン成分の濃度が変化していない場合には、理論空気量補正部307は、理論空気量補正係数の算出処理を終了する。また、メタン成分の濃度が変化していた場合には、理論空気量補正部307は、CH4成分の変化量(CH4成分の濃度平均からの変化量)を算出し、算出したCH4成分の変化量を用いて理論空気量の変化量を算出する。その後、理論空気量補正部307は、算出した理論空気量の変化量に応じて、補正係数K2を設定する(ステップS135)。
理論空気量補正部307により補正係数K2が設定された後に、加熱炉3においてススが発生したか否かについての判断が実施される(ステップS137)。加熱炉3においてススが発生した場合には、いわゆるガスリッチな状態にあると判断し、補正係数K2の値を例えば0.1増加させて(ステップS139)、理論空気量の変化量を大きく見積もるようにし、再びステップS137の処理が実施される。また、ススが発生していない場合には、加熱炉3の排ガスに含まれるNOxの濃度が規定値以内であるか否かの判断が実施される(ステップS141)。
NOxの濃度が規定値超過である場合には、いわゆるエアリッチな状態にあると判断し、補正係数K2の値を例えば0.1減少させて(ステップS143)、理論空気量の変化量を小さく見積もるようにし、再びステップS141の処理が実施される。また、NOxの濃度が規定値以内であれば、理論空気量補正部307は、理論空気量補正係数の算出処理を終了する。
以上、図6を参照しながら、理論空気量補正部307により実施される理論空気量補正係数K1,K2の算出処理の流れについて説明した。
以上説明したように、本実施形態に係る加熱炉空燃比制御装置及び加熱炉空燃比制御方法によれば、レーザガス分析装置により測定された測定結果を利用することで、リサイクルガスの変動に追随して、事前に正確に理論空気量を算出することが可能となるため、燃料として用いられるリサイクルガスの変動への追随性を更に向上させ、リサイクルガスと空気との混合比(空燃比)を精度よく制御することが可能となる。その結果、加熱炉におけるスス、NOxの発生を未然に防ぐことが可能となる。また、加熱炉におけるススの発生を抑制することにより、加熱炉内に設けられた耐火物の寿命を延ばすことが可能となる。
(参考例:第2の実施形態)
以上説明した第1の実施形態に係る加熱炉空燃比制御装置及び加熱炉空燃比制御方法では、リサイクルガスの発熱量を計測するために、リサイクルガス配管に一般的に高価な測定機器であるカロリー計を設置した。
以下で説明する第2の実施形態に係る加熱炉空燃比制御装置及び加熱炉空燃比制御方法では、リサイクルガス配管にカロリー計に代わる測定機器を設置することにより、設備の低コスト化を図るものである。以下では、図7〜図9を参照しながら、本発明の第2の実施形態に係る加熱炉空燃比制御装置及び加熱炉空燃比制御方法について、簡単に説明する。
<流量制御機構及び各種測定機器について>
まず、図7を参照しながら、本実施形態に係る加熱炉制御システム1に設けられた流量制御機構10,20、及び、リサイクルガス配管に設置された各種測定機器について説明する。図7は、本実施形態に係る流量制御機構10,20及びリサイクルガス配管に設置された各種測定機器の一例を示した説明図である。
図7に例示したように、リサイクルガス配管には、当該配管により加熱炉3に供給されるリサイクルガスに含まれる一酸化炭素(CO)の濃度を測定するためのCO分析用レーザガス分析計33と、リサイクルガスに含まれるメタン(CH4)の濃度を測定するためのCH4分析用レーザガス分析計35と、リサイクルガスに含まれる水素(H2)の濃度を測定するためのH2濃度分析計37と、がそれぞれ設けられている。
CO分析用レーザガス分析計33及びCH4分析用レーザガス分析計35は、それぞれリサイクルガス中に含まれるCO成分及びCH4成分の濃度(例えば、体積%)を測定する装置である。本実施形態では、リサイクルガス中に含まれる主要な燃焼成分であるCO成分及びCH4成分に着目し、これらの成分の分オーダーでの変動を、応答性の高いレーザガス分析計により高速かつ的確に把握する。
CO分析用レーザガス分析計33及びCH4分析用レーザガス分析計35による測定結果のデータは、加熱炉空燃比制御装置30に随時出力される。なお、かかるレーザガス分析計は、市販品で構成してもよい。
H2濃度分析計37は、リサイクルガスに含まれる水素(H2)の濃度(例えば、体積%)を測定するための測定機器である。気体中に含まれる水素の濃度を測定可能な機器であれば、任意の方式を利用した測定機器を利用可能であるが、かかるH2濃度分析計37として、例えば、熱伝導度方式を利用したH2濃度分析計等を挙げることができる。H2濃度分析計37による測定結果は、加熱炉空燃比制御装置30に随時出力される。なお、かかるH2濃度分析計は、市販品で構成してもよい。
また、図7に例示したように、これら測定装置の下流側(加熱炉3側)には、流量制御機構10が設置されている。かかる流量制御機構10は、流量調節弁103と、流量計111と、温圧補正機構113と、を備える。
流量計111は、リサイクルガス配管を流れるリサイクルガスの流量を計測する装置であり、図7に例示したように、例えば渦流量計や超音波流量計等の密度測定が不要な方式に基づく流量計を利用する。流量計111による測定結果は、温圧補正機構113により補正された上で、加熱炉空燃比制御装置30に随時出力される。また、流量調節弁103は、加熱炉空燃比制御装置30の制御のもとで、加熱炉3に供給されるリサイクルガスの流量を制御する。なお、かかる流量制御機構10は、市販品で構成してもよい。
また、燃焼空気配管には、図7に示したように、流量制御機構20が設けられている。この流量制御機構20は、第1の実施形態に示した流量制御機構20と同様の構成を有し、同様の効果を奏するものであるため、詳細な説明は省略する。
加熱炉空燃比制御装置30は、以上説明したような各種測定機器及び流量制御機構から出力される測定結果を用いて、供給されているリサイクルガスに適した理論空気量を精度よく算出し、得られた理論空気量に基づいて、リサイクルガス配管に設けられた流量調節弁103及び燃焼空気配管に設けられた流量調節弁203の制御を実施する。これにより、加熱炉3に供給されるリサイクルガスの空燃比が、適切に制御されることとなる。
以上、図7を参照しながら、本実施形態に係る加熱炉制御システム1に設けられた流量制御機構10,20、及び、リサイクルガス配管に設置された各種測定機器について説明した。
<加熱炉空燃比制御装置の構成について>
続いて、図8を参照しながら、本実施形態に係る加熱炉空燃比制御装置の構成について、説明する。図8は、本実施形態に係る加熱炉空燃比制御装置の構成の一例を示したブロック図である。
なお、以下の説明に先立ち、本実施形態に係る加熱炉空燃比制御装置30は、当該装置の設定情報(例えば、設定パラメータ等)を示したデータや、他の分析装置による分析結果を示したデータ等を参照することで、リサイクルガス配管中を流れるリサイクルガスの成分(組成成分)や、各成分の体積比(体積%の比率)等のデータを随時取得することが可能であるものとする。ここで、上記体積比は、予めある期間に測定した体積の平均値を用いた体積比である平均体積比であってもよい。
本実施形態に係る加熱炉空燃比制御装置30は、図8に示したように、測定情報取得部301と、理論空気量算出部351と、空燃比算出部353と、制御信号出力部311と、記憶部313と、を主に備える。
測定情報取得部301は、例えば、CPU、ROM、RAM、通信装置等により実現される。測定情報取得部301は、リサイクルガス配管に設けられたCO分析用レーザガス分析計33及びCH4分析用レーザガス分析計35、及び、H2濃度分析計37のそれぞれから出力される、測定結果を示した情報である測定情報のデータを取得する。
また、測定情報取得部301は、リサイクルガス配管及び燃焼空気配管に設けられた各流量制御機構10,20から、各配管を流れる気体の現在流量に関する情報のデータを取得することも可能である。
測定情報取得部301は、リサイクルガス配管に設けられた各種測定機器から取得した測定情報のデータ、及び、各流量制御機構10,20から取得した現在流量に関する流量情報のデータを取得すると、取得したこれらの情報のデータを、後述する理論空気量演算部303に出力する。また、測定情報取得部301は、取得したこれらの情報に、これらの情報を取得した日時等に関する時刻情報を関連づけ(紐付けて付記し)、後述する記憶部313等に履歴情報として格納してもよい。
理論空気量算出部351は、例えば、CPU、ROM、RAM等により実現される。理論空気量算出部351は、測定情報取得部301が取得したCO分析用レーザガス分析計33による測定結果を示したデータ、CH4分析用レーザガス分析計35による測定結果を示したデータ、及び、H2濃度分析計37による測定結果を示したデータ等の各種情報や、記憶部313等に格納されている、又は、本実施形態に係る加熱炉空燃比制御装置30の操作者等により当該加熱炉空燃比制御装置30に入力された、リサイクルガスの組成成分及び各組成成分の体積比を示したデータ等の各種情報等を用いて、リサイクルガス配管を介して加熱炉3に供給されるリサイクルガスの理論空気量を演算により算出する。かかる理論空気量の演算処理は、例えば、加熱炉温度制御装置7から出力された空燃比制御要請の信号に応じて実行されてもよいし、所定周期毎に実施されてもよいし、加熱炉空燃比制御装置30の操作者による所定の入力操作に応じて実施されてもよい。
また、理論空気量算出部351は、演算の結果得られたリサイクルガスの理論空気量の情報を、加熱炉空燃比制御装置30が備えるディスプレイ等の表示装置(図示せず。)や、加熱炉空燃比制御装置30の外部に設けられた各種装置が備えるディスプレイ等の表示装置に出力してもよい。かかる情報を表示装置に出力することで、加熱炉制御システム1の操作者(管理者)は、算出されたリサイクルガスの理論空気量に関する情報を、その場で把握することが可能となる。
具体的には、理論空気量算出部351は、CO分析用レーザガス分析計33、CH4分析用レーザガス分析計35、及び、H2濃度分析計37から取得した測定情報のデータを用いて、以下の式151に基づいて、理論酸素量を算出する。
ここで、上記式151において、V(X)は、リサイクルガス中に存在する可燃性成分Xの体積%を表しており、式151の右辺最終項に示したV(O2)は、リサイクルガス中に存在する酸素の濃度を表している。
次に、理論空気量算出部351は、算出した理論酸素量Ooを用いて、以下の式152に示した式を用いることで、理論空気量Aoを算出する。
理論空気量算出部351は、このようにして算出したリサイクルガスの理論空気量を、空燃比算出部353に出力する。また、理論空気量算出部351は、算出した理論空気量を示すデータに、当該データを算出した日時等に関する時刻情報を関連づけ(紐付けて付記し)、記憶部313等に履歴情報として格納してもよい。
空燃比算出部353は、例えば、CPU、ROM、RAM等により実現される。空燃比算出部353は、理論空気量算出部351により算出された理論空気量と、流量制御機構10から出力されたリサイクルガスの供給流量とを用いて、加熱炉3に供給されるリサイクルガスの燃焼空気量を算出し、かかる燃焼空気量を用いてリサイクルガスの空燃比を算出する。
具体的には、空燃比算出部353は、算出された理論空気量にリサイクルガスの供給流量を乗じることで、加熱炉3に供給されるリサイクルガスを完全に燃焼させるために必要な空気量(燃焼空気量)を算出する。従って、空燃比算出部353は、リサイクルガスの供給流量と、算出した燃焼空気量の比をとることで、空燃比を算出することができる。
また、空燃比算出部353は、燃焼空気量を算出する際に、予め設定された過剰空気比mを用いて、燃焼空気量を算出してもよい。この過剰空気比mは、リサイクルガスの発熱量の変動を考慮しつつ、加熱炉3におけるススの発生状況や、排ガス中の所定成分の濃度を参照しながら決定することができる。かかる過剰空気比mの値は、加熱炉3の大きさや設置条件等に応じて適宜設定すればよいが、例えば1.2程度の値から開始して、加熱炉3におけるススの発生状況や、排ガス中の所定成分の濃度を参照しながら決定することが可能である。
空燃比算出部353は、以上のようにして空燃比を算出すると、算出した空燃比を、制御信号出力部311に出力する。また、空燃比算出部353は、算出した空燃比を示すデータに、当該データを算出した日時等に関する時刻情報を関連づけ(紐付けて付記し)、記憶部313等に履歴情報として格納してもよい。
なお、空燃比算出部353は、具体的な空燃比の値を算出せずに、算出した燃焼空気量を示すデータそのものを、制御信号出力部311に出力してもよい。
制御信号出力部311は、例えば、CPU、ROM、RAM、通信装置等により実現される。制御信号出力部311は、算出されたリサイクルガスの空燃比又は燃焼空気量を示すデータや予め設定された過剰空気比を用いて、リサイクルガスの供給流量及び加熱炉に供給される空気の供給流量を制御するための制御信号を生成し、流量制御機構10,20にそれぞれ出力する。これにより、加熱炉3に供給されるリサイクルガスの供給流量及び燃焼空気の供給流量が流量制御機構10,20の流量調節弁により制御され、リサイクルガスの空燃比の制御が行われることとなる。
記憶部313は、本実施形態に係る加熱炉空燃比制御装置30が備えるストレージ装置の一例である。記憶部313には、過去の操業実績等に関する各種のデータベースや、加熱炉空燃比制御装置30の設定パラメータの情報等が格納されている。また、記憶部313には、本実施形態に係る加熱炉空燃比制御装置30が、何らかの処理を行う際に保存する必要が生じた様々なパラメータや処理の途中経過等、または、各種のデータベース・プログラム等が、適宜格納される。この記憶部313には、加熱炉空燃比制御装置30が備える各処理部が、自由に読み書きを行うことが可能である。
以上、本実施形態に係る加熱炉空燃比制御装置30の機能の一例を示した。上記の各構成要素は、汎用的な部材や回路を用いて構成されていてもよいし、各構成要素の機能に特化したハードウェアにより構成されていてもよい。また、各構成要素の機能を、CPU等が全て行ってもよい。従って、本実施形態を実施する時々の技術レベルに応じて、適宜、利用する構成を変更することが可能である。
なお、上述のような本実施形態に係る加熱炉空燃比制御装置の各機能を実現するためのコンピュータプログラムを作製し、パーソナルコンピュータ等に実装することが可能である。また、このようなコンピュータプログラムが格納された、コンピュータで読み取り可能な記録媒体も提供することができる。記録媒体は、例えば、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、フラッシュメモリなどである。また、上記のコンピュータプログラムは、記録媒体を用いずに、例えばネットワークを介して配信してもよい。
<加熱炉空燃比制御方法の流れについて>
続いて、図9を参照しながら、本実施形態に係る加熱炉制御システム1で実施される加熱炉空燃比制御方法の流れについて説明する。図9は、本実施形態に係る加熱炉空燃比制御方法の流れの一例を示した流れ図である。
加熱炉空燃比制御装置30の測定情報取得部301は、リサイクルガス配管に設けられた各レーザガス分析計33,35及びH2濃度分析計から、リサイクルガスの測定データを取得する(ステップS201)。また、測定情報取得部301は、上記測定データに加えて、リサイクルガス配管及び燃焼空気配管に設けられた各流量制御機構10,20から、供給されている気体の流量の測定データを取得する。
測定情報取得部301は、これらの測定データを取得すると、取得した測定データを、理論空気量算出部351に出力する。
次に、理論空気量算出部351は、測定情報取得部301から出力された測定情報を示したデータを用いて、リサイクルガスの理論空気量を算出し(ステップS203)、空燃比算出部353に出力する。
続いて、空燃比算出部353は、算出された理論空気量を用いて、供給されるリサイクルガスの燃焼空気量を算出し、算出した燃焼空気量に基づいて空燃比を算出する(ステップS205)。その後、空燃比算出部353は、算出した空燃比を、制御信号出力部311に出力する。
制御信号出力部311は、空燃比算出部353により算出された空燃比を用いて、かかる空燃比を実現するために必要な制御信号を生成し、生成した制御信号を流量制御機構10,20に出力する(ステップS207)。これにより、供給されるリサイクルガスに応じた空燃比の制御がなされることとなる。
その後、加熱炉空燃比制御装置30は、取得した各種測定情報等を参照しながら、空燃比の制御を終了するか否かを判断する(ステップS209)。空燃比の制御を継続する場合には、加熱炉空燃比制御装置30はステップS201に戻って処理を継続する。また、空燃比の制御を終了する場合には、加熱炉空燃比制御装置30は空燃比の制御処理を終了する。
以上、図9を参照しながら、本実施形態に係る加熱炉空燃比制御方法の流れについて説明した。
以上説明したように、本実施形態に係る加熱炉空燃比制御装置及び加熱炉空燃比制御方法によれば、レーザガス分析装置により測定された測定結果を利用することで、リサイクルガスの変動に追随して、事前に正確に理論空気量を算出することが可能となるため、燃料として用いられるリサイクルガスの変動への追随性を更に向上させ、リサイクルガスと空気との混合比(空燃比)を精度よく制御することが可能となる。その結果、加熱炉におけるスス、NOxの発生を未然に防ぐことが可能となる。また、加熱炉におけるススの発生を抑制することにより、加熱炉内に設けられた耐火物の寿命を延ばすことが可能となる。
(ハードウェア構成について)
次に、図10を参照しながら、本発明の実施形態に係る加熱炉空燃比制御装置30のハードウェア構成について、詳細に説明する。図10は、本発明の実施形態に係る加熱炉空燃比制御装置30のハードウェア構成を説明するためのブロック図である。
加熱炉空燃比制御装置30は、主に、CPU901と、ROM903と、RAM905と、を備える。また、加熱炉空燃比制御装置30は、更に、バス907と、入力装置909と、出力装置911と、ストレージ装置913と、ドライブ915と、接続ポート917と、通信装置919とを備える。
CPU901は、演算処理装置および制御装置として機能し、ROM903、RAM905、ストレージ装置913、またはリムーバブル記録媒体921に記録された各種プログラムに従って、加熱炉空燃比制御装置30内の動作全般またはその一部を制御する。ROM903は、CPU901が使用するプログラムや演算パラメータ等を記憶する。RAM905は、CPU901が使用するプログラムや、プログラムの実行において適宜変化するパラメータ等を一次記憶する。これらはCPUバス等の内部バスにより構成されるバス907により相互に接続されている。
バス907は、ブリッジを介して、PCI(Peripheral Component Interconnect/Interface)バスなどの外部バスに接続されている。
入力装置909は、例えば、マウス、キーボード、タッチパネル、ボタン、スイッチおよびレバーなどユーザが操作する操作手段である。また、入力装置909は、例えば、赤外線やその他の電波を利用したリモートコントロール手段(いわゆる、リモコン)であってもよいし、加熱炉空燃比制御装置30の操作に対応したPDA等の外部接続機器923であってもよい。さらに、入力装置909は、例えば、上記の操作手段を用いてユーザにより入力された情報に基づいて入力信号を生成し、CPU901に出力する入力制御回路などから構成されている。加熱炉空燃比制御装置30のユーザは、この入力装置909を操作することにより、加熱炉空燃比制御装置30に対して各種のデータを入力したり処理動作を指示したりすることができる。
出力装置911は、取得した情報をユーザに対して視覚的または聴覚的に通知することが可能な装置で構成される。このような装置として、CRTディスプレイ装置、液晶ディスプレイ装置、プラズマディスプレイ装置、ELディスプレイ装置およびランプなどの表示装置や、スピーカおよびヘッドホンなどの音声出力装置や、プリンタ装置、携帯電話、ファクシミリなどがある。出力装置911は、例えば、加熱炉空燃比制御装置30が行った各種処理により得られた結果を出力する。具体的には、表示装置は、加熱炉空燃比制御装置30が行った各種処理により得られた結果を、テキストまたはイメージで表示する。他方、音声出力装置は、再生された音声データや音響データ等からなるオーディオ信号をアナログ信号に変換して出力する。
ストレージ装置913は、加熱炉空燃比制御装置30の記憶部の一例として構成されたデータ格納用の装置である。ストレージ装置913は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)等の磁気記憶部デバイス、半導体記憶デバイス、光記憶デバイス、または光磁気記憶デバイス等により構成される。このストレージ装置913は、CPU901が実行するプログラムや各種データ、および外部から取得した各種のデータなどを格納する。
ドライブ915は、記録媒体用リーダライタであり、加熱炉空燃比制御装置30に内蔵、あるいは外付けされる。ドライブ915は、装着されている磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、または半導体メモリ等のリムーバブル記録媒体921に記録されている情報を読み出して、RAM905に出力する。また、ドライブ915は、装着されている磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、または半導体メモリ等のリムーバブル記録媒体921に記録を書き込むことも可能である。リムーバブル記録媒体921は、例えば、CDメディア、DVDメディア、Blu−rayメディア等である。また、リムーバブル記録媒体921は、コンパクトフラッシュ(登録商標)(CompactFlash:CF)、フラッシュメモリ、または、SDメモリカード(Secure Digital memory card)等であってもよい。また、リムーバブル記録媒体921は、例えば、非接触型ICチップを搭載したICカード(Integrated Circuit card)または電子機器等であってもよい。
接続ポート917は、機器を加熱炉空燃比制御装置30に直接接続するためのポートである。接続ポート917の一例として、USB(Universal Serial Bus)ポート、IEEE1394ポート、SCSI(Small Computer System Interface)ポート、RS−232Cポート等がある。この接続ポート917に外部接続機器923を接続することで、加熱炉空燃比制御装置30は、外部接続機器923から直接各種のデータを取得したり、外部接続機器923に各種のデータを提供したりする。
通信装置919は、例えば、通信網925に接続するための通信デバイス等で構成された通信インターフェースである。通信装置919は、例えば、有線または無線LAN(Local Area Network)、Bluetooth(登録商標)、またはWUSB(Wireless USB)用の通信カード等である。また、通信装置919は、光通信用のルータ、ADSL(Asymmetric Digital Subscriber Line)用のルータ、または、各種通信用のモデム等であってもよい。この通信装置919は、例えば、インターネットや他の通信機器との間で、例えばTCP/IP等の所定のプロトコルに則して信号等を送受信することができる。また、通信装置919に接続される通信網925は、有線または無線によって接続されたネットワーク等により構成され、例えば、インターネット、家庭内LAN、赤外線通信、ラジオ波通信または衛星通信等であってもよい。
以上、本発明の実施形態に係る加熱炉空燃比制御装置30の機能を実現可能なハードウェア構成の一例を示した。上記の各構成要素は、汎用的な部材を用いて構成されていてもよいし、各構成要素の機能に特化したハードウェアにより構成されていてもよい。従って、本実施形態を実施する時々の技術レベルに応じて、適宜、利用するハードウェア構成を変更することが可能である。
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
例えば、上記実施形態では、リサイクルガス中に含まれる可燃性成分として、水素、一酸化炭素及びメタンに着目したが、リサイクルガス中に含まれる可燃性成分が上記物質に限定されるわけではなく、上記成分に加えて、リサイクルガス中に含まれる他の可燃性成分に着目してもよいし、上記成分以外の可燃性成分について着目してもよい。