JP5641307B2 - 凹凸模様を有する真空成形体の製造方法及び樹脂容器 - Google Patents
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Description
赤外線吸収剤等の熱発生物質は近赤外光や赤外光を吸収して熱を発生する。特許文献2はこの現象を利用し該熱発生物質と接する高分子化合物を可塑化させて凹部あるいは開口部を設けている。
赤外線吸収インキは赤外線吸収剤等を含有するインキであり、照射された赤外線を吸収し発熱する。即ち赤外線吸収インキで印刷された樹脂シートに赤外線を照射すると、前記赤外線吸収インキで印刷された部位のみに、赤外線照射で付与される熱量以上の熱量が加わる。
一方、赤外線反射インキは赤外線反射物質を含有するインキであり、照射された赤外線を反射する。赤外線反射インキで印刷された樹脂シートに該樹脂シート側(即ち樹脂シートの印刷面とは反対側の面)から赤外線を照射すると、該樹脂シートを通過した赤外線が該赤外線反射インキで反射されることにより、赤外線透過部位と反射部位とが重なる印刷部位のみに、赤外線照射で付与される熱量以上の熱量が加わる(これは具体的には、絵柄を設けない部位Bと比較し、部位Aはより効率よくシートへ熱を供給できる結果、と推定している)。
即ち、赤外線吸収インキ又は赤外線反射インキを印刷した部位のみに、赤外線照射で付与される熱量以上の熱量が加わるため、該部位の表面温度を高くすることができ、結果、樹脂シートの、赤外線吸収インキで印刷された部位と印刷されない部位とに温度差を生じさせることができる。
この場合、部位A及び部位Bともに赤外線照射で付与される熱量以上の熱量が加わるが、部位Aは部位Bよりインキ濃度が高い結果、より熱が加わる。従って、部位Aのほうが相対的に部位Bよりも表面温度が高くなる。
前記赤外線吸収または反射率の高いインキで絵柄を設けた部位Aと前記赤外線吸収または反射率の低いインキで絵柄を設けた部分Bとが異なる表面温度となるようにする。
この場合、部位A及び部位Bともに赤外線照射で付与される熱量以上の熱量が加わるが、部位Aは部位Bよりも赤外線吸収または反射率の高いインキを設けた結果、より熱が加わる。従って、部位Aのほうが相対的に部位Bよりも表面温度が高くなる。
本発明において、該樹脂シートの同一面内にある複数の部位が異なる表面温度となるように前記(1)〜(3)の手段とした場合、本発明において、凹凸が出現するのは赤外線吸収インキ又は赤外線反射インキで絵柄を設けた部位である。インキはグラビア印刷等の汎用の印刷方法で絵柄印刷でき、凹凸を付与するための物理的な方法を必要としないため、シート製造工程において過剰の装置を必要とすることなくコストが押さえられる。
本発明において凹凸の形成は、前述の通り、熱収縮性を有する樹脂シートを保持した状態で、該樹脂シートの同一面内にある隣り合う部位Aと部位Bとが異なる表面温度となることで生じる。本発明においては、相対的に表面温度の高い部位を部位A、相対的に表面温度の低い部位を部位Bと定義する。この時部位Aは相対的に凹部となり部位Bは相対的に凸部となる。
この自己収縮挙動による厚み変化は、樹脂シートをなんら保持しない状態では、起点を持たず全体的に収縮が起こり全体的に厚くなる傾向があるが、樹脂シートをクランプ等で該シート外周の一部のみもしくは外周全部を保持した状態(以下単に「保持した状態」と称する場合がある)では、温度の低いクランプ部分等を起点に収縮が発生する傾向がありこの結果部位Aの薄膜化が発生すると考えられる。従って、部位Aは赤外線照射前、即ち収縮前の樹脂シートの膜厚よりも薄くなる場合が多い。
図1のように前記樹脂シートに赤外線を照射することにより、図2の通り、高濃度の赤外線吸収インキの印刷部4即ち部位Aが最も薄膜化が生じ即ち凹部となり、低濃度の赤外線吸収インキ5が、前記印刷部4よりは厚膜となるが)色インキ印刷部6よりは薄膜となり前記印刷部4からみると凸部となる。さらに色インキ印刷部6が最も厚膜となるために最も高い凸部となる。
前記色インキ印刷部6を使用せずに非印刷部を有する樹脂シートの場合は、高濃度の赤外線吸収インキ印刷部が凹部となり、低濃度の赤外線吸収インキ印刷部が低い凸部、非印刷部が最も高い凸部となる。(図不示)
このように相対的に薄膜化と厚膜化が生じるため、凹凸が生じる。
図3は、図2における前記樹脂シートを真空成形法により粘着層に貼り付けて一体化させた状態を示した図である。本発明の化粧シートを粘着層に、真空成形により貼り付けると、基材の貼り付け面に浮き等が生じることもなく、綺麗に密着した凹凸を有する化粧シートとすることができる(図3参照)。さらに部位Aと部位Bとのシート表面の高低差は、図2に示す状態即ち真空成形前よりもより生じることが確認されている。これは恐らく真空成形法では樹脂シートが可塑化された状態(即ち加熱した状態)で成形するために、膜厚の薄いA部位も可塑化された状態で圧力をかけて粘着層と接触するので、部位Aも粘着層に密着し、相対的に膜厚の厚いB部位とのシート表面の高低がより大きく再現されるものと推定される。このことから、粘着層は剥離シート等で保持された状態で真空下で貼り合わせることが好ましい。
柄の例としては、点描や線描(具体的には絵画や文字の輪郭、木目、ストライプ、ヘアライン模様等が挙げられる)で表現された描画や、ドットや幾何学模様、文字やマークそのものを浮き出したい場合にはその模様の面積が小さい物の方がより好ましい。勿論本発明においてはこの限りではなく、模様や文字等、模様状の全ての柄を表現することが可能である。
図4〜図7に、本発明において凹凸で表現される柄模様の例を示す。黒部分が赤外線吸収インキ又は赤外線反射インキで絵柄印刷された部分である。図4はストライプ、図5はドット、図6は幾何学模様、図7は木目を表す。
本発明においては、前記温度の指標として「前記部位Aと前記部位Bとの表面温度」と定義しているが、前述の通り樹脂シートの前記部位Aと前記部位Bの熱挙動は前記部位Aと部位Bとの表面だけではなく内部まで均等に温度がかかった状態で生じるものと推定される。しかしながら内部温度を測定する手段はないために、表面温度で定義した。本発明において表面温度はNEC/Avio社製「サーモトレーサー9100」を使用した。
本発明で使用する熱収縮性を有する樹脂シート(以下樹脂シートSと略す)は、加熱により展延性を示しフィルム化可能な樹脂であり、更に配向戻り強度変曲点を有する樹脂シートである。更に真空成形時の展延性の容易さから熱可塑性樹脂シートであることが好ましい。
本発明における配向戻り強度変曲点温度とは、フィルムに外部から熱が加えられた時のフィルム温度であって、フィルム自体がこの温度になると延伸された分子が収縮し始めることにより、フィルム全体が収縮する温度であり、本発明においては、下記方法において配向戻り強度変曲点温度Tを定義している。
本発明においては前記熱収縮応力測定法を利用して、配向戻り強度と加熱温度との関係を示す右上がりグラフの凸となる変曲点の温度Tを求めた。凸となる変曲点が複数ある場合は、最も高い温度域の変曲点の温度を配向戻り強度変曲点温度Tとした。
具体的には、日理工業株式会社製D.N式ストレステスターを用い、電圧調整メモリを6とし、ヒーター温度を5℃刻みで昇温し、各測定温度での配向戻り応力を測定し、収縮応力が発現した後、配向戻り強度と加熱温度との関係を示すグラフの変曲点温度Tを求めた。図11に例を示した。図16は、東洋紡績株式会社製の二軸延伸PETシート「ソフトシャインX1130(膜厚125μm)」(実施例におけるシートS1)を測定したときのグラフである。該グラフの最も高い温度域の凸となる変曲点の温度T188℃を、シートS1の配向戻り強度変曲点温度Tとした。
前述の通り配向戻り強度変曲点を有する樹脂シートは一般に延伸処理を施してあるが、該延伸処理方法としては、押出成膜法等で樹脂を溶融押出してシート状にした後、同時二軸延伸あるいは逐次二軸延伸を行うことが一般的である。逐次二軸延伸の場合は、はじめに縦延伸処理を行い、次に横延伸を行うことが一般的である。具体的にはロール間の速度差を利用した縦延伸とテンターを用いた横延伸を組み合わせる方法が多く用いられる。
なお、充分な熱固定をされた結晶化処理された樹脂シートはより大きな凹凸を発現させることが出来るのでなお好ましい。これは、結晶の融解現象が急激に進行するため、結晶化を施したシートは部位Aと部位Bの配向戻り強度変曲点温度Tで発生する強度差がより明確になるためと推測している。つまり、電磁波、特に赤外線照射によるエネルギーを効果的に凹凸発現に利用できるためと推測している。
本発明で使用する赤外線吸収インキとは赤外線吸収剤を含むインキであり、赤外線反射インキは赤外線反射物質を含有するインキであり、いずれもセキュリティインキ等に利用されているインキである。
前述の通り、赤外線吸収インキは照射された赤外線を吸収し発熱する。即ち赤外線吸収インキで印刷された樹脂シートに赤外線を照射すると、前記赤外線吸収インキで印刷された部位のみに、赤外線照射で付与される熱量以上の熱量が加わる。一方、赤外線反射インキは赤外線反射物質を含有するインキであり、照射された赤外線を反射する。赤外線反射インキで印刷された樹脂シートに該樹脂シート側(即ち樹脂シートの印刷面とは反対側の面)から赤外線を照射すると、該樹脂シートを通過した赤外線が該赤外線反射インキで反射されることにより、赤外線透過部位と反射部位とが重なる印刷部位のみに、赤外線照射で付与される熱量以上の熱量が加わる。即ち、赤外線吸収インキ又は赤外線反射インキを印刷した部位のみに、赤外線照射で付与される熱量以上の熱量が加わるため、該部位の表面温度を高くすることができ、結果、樹脂シートの、赤外線吸収インキで印刷された部位と印刷されない部位とに温度差を生じさせることができる。
部位Aのみが配向戻り強度変曲点温度T以上の表面温度となるように赤外線照射してもよく、また、部位Aと部位Bの両方が配向戻り強度変曲点温度T以上の表面温度となるように赤外線照射してもよい。この場合、後者のほうがより深い凹凸を得ることができる。
一方、前記インキ濃度は、濃度が高い程部位Aにかかる熱量が大きくなる。従って所望する凹凸の程度により適宜含有量を変えることが好ましい。一方濃度が低すぎると赤外線照射により発生する熱量や赤外線反射量が少なすぎて凹部とならず、濃度が高すぎると発生する熱量や赤外線反射量が大きくなりすぎて、破れや穴あき等の原因となるので、後述の通り成形時の弾性率が0.5MPa以下にならない様に適宜調整をする必要がある。
絵柄は、通常は、前記樹脂シートSを被着体に貼り付けた際に、前記樹脂シートSと被着体との間となるように設けると、樹脂シートSにより絵柄が保護されることや、美観が付与されることから好ましい。通常は、図1のように、赤外線が樹脂シートを透過して赤外線吸収インキ又は赤外線反射インキ層に到達するように照射する。特に赤外線反射インキを使用した場合には、このような照射方法としないと、逆に赤外線反射インキが樹脂シートを透過する前に赤外線を反射してしまい、即ち樹脂シートの印刷部に赤外線が透過せずに可塑化されない可能性がある。従って例えば使用する真空成形装置の赤外線照射装置が、成形用シートの保持(クランプ)部と被着体との間に設置されている場合、即ち成形用シートを加熱する際に該シートの被着体との密着面から加熱するように設計されている真空成形装置を使用する場合は、得られた真空成形体の加飾部分は、赤外線から得た熱を反射させる物質を含有するインキ層/樹脂シートS/被着体の順となるように成形するのが好ましい。
前記(2)の手段は、具体的には、インキ濃度の異なるインキを使用して部位A及び部位Bを設ける、あるいは、インキは1種であるがそのインキ盛り量を部位Aにより多くするなどの方法により、インキ濃度を調整することが可能である。
また、部位Aは1つである必要はなく、例えば、インキ濃度の異なる3種のインキを使用した場合、濃度の最も低いインキを使用した部位は部位Bとなり凸部となり、濃度の最も高いインキを使用した部位は最も深い凹部である部位A”となる。またインキ盛り量で調節することも勿論可能である。
前記赤外線吸収インキの吸収率、あるいは赤外線反射インキの反射率は一概には比較できないが、大まかな目安としては、アルミニウムを使用した赤外線反射インキとカーボンブラックを使用した赤外線吸収インキを併用した場合には、アルミニウムを使用したインキが凹部となりカーボンブラックを使用したインキは凸部となる。またカーボンブラックを使用した赤外線吸収インキと酸化チタンを使用した赤外線吸収インキとを併用した場合には、カーボンブラックを使用したインキが凹部となり酸化チタンを使用したインキは凸部となる。
従って、具体的には、部位Aをアルミニウムを含むインキで印刷し、部位Bをカーボンブラックを含むインキで印刷すれば、部位Aは凹部となり部位Bが凸部となる。また、部位Aをカーボンブラックを含むインキで印刷し、部位Bを酸化チタンを含むインキで印刷すれば、部位Aは凹部となり部位Bが凸部となる。このように、熱発生物質は、所望する凹凸意匠と視認性を有する絵柄意匠とを加味して適宜選択することが可能である。
また赤外線吸収インキであって濃度の低いインキと濃度の高いインキとを使用して印刷を行い、且つ非印刷部を設けた場合は、濃度の高いインキの刷り部位が最も深い凹部であり、濃度の低いインキを使用の刷り部位が前記濃度の高いインキの刷りの部位からみると凸部であり非印刷部からみると凹部であり、且つ非印刷部が凸部であるような凹凸を与えることができる。
本発明の加飾表面に凹凸模様を有する真空成形体の製造方法は、具体的には、
熱収縮性を有する樹脂シートを、保持した状態で、
該樹脂シートの同一面内にある隣り合う部位Aと部位Bとが、前記部位Aと前記部位Bとの表面温度が異なり、且つ、少なくとも部位Aの表面温度が前記樹脂シートの配向戻り強度変曲点温度T以上の表面温度となるように、赤外線照射して、前記部位Aと部位Bとに膜厚差を生じさせる工程(1)と
前記樹脂シートを真空成形法により金型に押し当てて成形する工程(2)と、
を有することを特徴とする。
前記工程1において、保持した状態とは、前述の通り、該樹脂シートS外周の一部のみもしくは外周全部を固定した状態、即ち、該シートSの被着体に貼り付ける面は基板等でなんら支持されない状態を指す。具体的には、樹脂シートSの一部分を挟持等で固定する方法や樹脂シートSの全周囲を枠状クランプで挟持させ固定する方法等が挙げられるが、樹脂シートSの張力を適正化(均一化)することができるためシートの全周囲を枠状クランプで挟持させ固定する方法が好ましい。
なおここで固定とは、枠状クランプ等のジグを使用して挟持する方法の他、樹脂シートSの可塑化や収縮を防止することによっても可能である。具体的には、樹脂シートSの被着体に貼り付ける面以外の部分、好ましくはシート外周部位のシート温度をガラス転移温度(以下Tgと称する場合がある)以下に保ち可塑化を防ぐことによっても、固定が可能である。
前記樹脂シートSを保持した状態で、少なくとも部位Aの表面温度が前記樹脂シートの配向戻り強度変曲点温度T以上の表面温度となるように赤外線照射することで、前記部位Aと前記部位Bとが異なる表面温度となって加温され、結果、前記部位Aと部位Bとに膜厚差が生じる。
このとき照射する赤外線は、赤色から近赤外、赤外レーザー光の波長域であれば特に限定はなく使用できる。赤外線照射量の上限は、特に制限はないが、あまり高い熱量がかかると樹脂シートSの剛性が落ち、可塑化が進み破れ発生等、成形に支障をきたすおそれがあるため、使用する樹脂シートSの最も高い部分の温度が、JIS K7244−1法で求められる動的粘弾性測定の貯蔵弾性率(E’)の値として0.5MPa以上となる様にすることが好ましく、より好ましくは1MPa以上となるように照射量を設定することが好ましい。
多くの場合、真空成形法、圧空真空成形法等に用いる既存の熱成形機には、加熱手段として赤外線照射装置が設置あるいは外付けできるようになっているので、これを利用することが好ましい。赤外線照射装置は熱発生物質のみが吸収可能な波長を照射する必要があるため、中赤外から近赤外の領域に強い波長ピークをもつハロゲンヒーター、短波長ヒーター、カーボンヒーター、中赤外線ヒーター等を使用することが好ましい。これら赤外線照射装置のメイン波長のピークは1.0〜3.5μm内にあることが好ましく、効率よい膜厚さを生じさせることが出来、吸熱性物質とその他の部分の温度差が付きすぎず効率の良い生産が可能な事から1.5〜3.0μmの範囲が更に好ましい。
赤外線照射の最低量は、樹脂シートSの少なくとも部位Aの表面温度が前記樹脂シートの配向戻り強度変曲点温度T以上の表面温度となるように設定する。一方、部位Aの温度は、あまり高い温度となると部位Aの可塑化が進み穴あき等の不良が発生するおそれがあることから、部位Aの動的粘弾性測定で測定されるE’が0.5MPa以上とするように、赤外線照射の最高量を設定することが好ましく、より好ましくは1.0MPa以下である。
本発明で使用する金型は、特に限定されず、一般的な真空成形用金型を使用することが出来る。また、真空下で成形を実施する装置、例えば布施真空社製NGF成形機のような成形装置の場合は金型からの真空引きを行う必要がないため、真空孔の無い金型を用いることも出来、この場合、真空孔痕の無い美麗な成形品を作ることが可能である。金型に使用する材料としてはアルミニウム、鉄等の金属系、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂の様な樹脂系、松やアガチス等の木材系等を用いることが出来るが、量産耐久性の観点から金属系の金型が好ましく用いられる。
前記製造方法により得た真空成形体は、各種包装用の樹脂容器として使用できる。例えば、サラダ容器、寿司等の蓋や底材等の食品容器や軽量物の展示や輸送用の容器、コンテナ、ブリスターパック、仕切材等が挙げられる。特にデザイン性を活かしたディスプレイ用容器には好適に用いることが出来る。
樹脂シートSとしては、以下のシートを使用した。
シートS0:東洋紡績株式会社製の二軸延伸PETシート「ソフトシャインX1130」(膜厚188μm)
シートS1:東洋紡績株式会社製の二軸延伸PETシート「ソフトシャインX1130」(膜厚125μm)
シートS2:二軸延伸ポリスチレンシート(膜厚250μm)「DIC社製ポリスチレンCR−4500」を押出機用いて210℃にて押出後、Tダイから無延伸原反を成膜した。その後、130℃の温度条件で延伸加工を行いMD方向0.4Mpa、TD方向0.5Mpaの熱収縮応力を持つ膜厚250μmの延伸シートとした。
エンボスシート:日本デコール株式会社製エンボス化粧シート(事前に熱ロールにより凹凸が付与されている) サニークロス−05E(膜厚140μm)
前記樹脂シートSの配向戻り強度変曲点温度Tは、以下のように行った。
日理工業株式会社製D.N式ストレステスターを用い、電圧調整メモリを6とし、ヒーター温度を5℃刻みで昇温し、各測定温度での配向戻り応力を測定し、配向戻り強度変曲点温度Tを読み取った。
結果、
シートS0の配向戻り強度変曲点温度T: 188℃
シートS1の配向戻り強度変曲点温度T: 188℃
シートS2の配向戻り強度変曲点温度T: 109℃
赤外線吸収インキ又は赤外線反射インキ、及び色インキは以下のインキを使用した。
インキP1:三菱鉛筆社製「ペイントマーカー」黒色 赤外線吸収インキとして使用。
インキP2:三菱鉛筆社製「ペイントマーカー」銀色 赤外線反射インキとして使用。
インキP3:三菱鉛筆社製「ペイントマーカー」青色 色インキとして使用。
インキG1:DICグラフィクス社製グラビア印刷用インキ「NH−NT」黒色 カーボンブラックを含み赤外線吸収インキとして使用。
インキG2:DICグラフィクス社製グラビア印刷用インキ「NH−NT」銀色 アルミペーストを含み赤外線反射インキとして使用。
インキGH2:DIC社製グラビア印刷用インキ「XS−756」青色 色インキとして使用
なお、前記インキG1とインキG2では、G2のほうが表面温度が高くなる。
樹脂シートSとしてシートS0〜シートS2のいずれかを使用し、流れ方向(MD)及びクロス方向(CD)に、前記インキP1〜P3を使用して幅2mmの直線を描いた。これを布施真空株式会社製「NGF−0709成形機」を使用し、真空下、シート周囲を完全にクランプで固定した状態で、ヒーターとしてヘリウス社製中赤外線ヒーターを使用し前記樹脂シートSを前記直線を描いた面とは反対側から間接加熱した。
キーエンス社製FT−H30放射温度計にて、樹脂シートSの表面温度がヒーター設定温度まで上昇したことを確認した後、常温まで冷却しクランプをはずして試料とした。
インキが描かれている部位Aとインキが描かれていない部位Bの表面温度は、NEC/Avio社製サーモトレーサーTH9100を使用して、前記部位Aが、使用する樹脂シートSの配向戻り強度変曲点温度Tとなった時の、前記部位Aと前記部位Bの温度差/℃と、使用する樹脂シートSの表面温度がヒーター設定温度まで上昇した時(該温度は、通常、熱成形が可能となったことを判断する温度である)の、前記部位Aと前記部位Bの温度を測定した。
また、前記部位Aと前記部位Bの膜厚の測定は、アンリツ社製K351C、高低差測定は東京精密社製サーフコムver1.71表面粗さ系を使用し、前記部位Aと前記部位Bとの最大膜厚差を測定した。
以下、シートS0〜S2と、インキP1〜P2の組み合わせを表1に従い適宜変更したものを、参考例とした。結果を表1及び表2に示す。
参考比較例1は、シートの配向戻り強度変曲点温度よりも部位Aの温度が低い例であるが、凹凸を発現させることができなかった。
また参考比較例2は、色インキを使用したものであるが、部位Aが配向度戻り開始点温度以上になったにもかかわらず凹凸を発現させることができなかった。
前記樹脂シートSに、前記インキG1又はG2を使用して、グラビア4色印刷機にて厚さ3μmの絵柄を印刷した。
樹脂シートSとしてシートS1を使用し、インキG1でグラビア印刷にて所定の絵柄印刷を行った(図8参照)。周囲をクランプ後、布施真空株式会社製「NGF−0709成形機」の上下ボックスを閉じ、ボックス内をほぼ完全真空状態にした後、ヒーターとしてヘリウス社製中赤外線ヒーターを使用し前記樹脂シートSを上面より間接加熱を行った。前記樹脂シートS1の表面温度を成形開始設定温度まで上昇した後に、常温まで冷却しクランプをはずし、印刷面、非印刷面とも凹凸状態になっているシート(1)を得た(図9参照)。次に三和興業株式会社製「PLAVAC TV−33型成形機」にシート(1)を移動し、周囲をクランプ後、成形開始設定温度になるまで遠赤外線ヒーターを使用し上下面より間接加熱を行った。その後、成形間口直径90mm、深さ15mm、底部直径75mmのカップ金型を乗せたテーブルを上昇させ、シートと金型が接触後、カップ底部にある真空孔より吸引を行い、前記シート(1)の非印刷面をカップ金型に押し当て、印刷面のみが凹凸となっているカップ型真空成形体(1)を得た(図10参照)。得られた真空成形体底面部の凹凸差の最大値を測定した結果、20μm以上の明瞭な凹凸の発現が認められた。
樹脂シートSとしてシートS1を使用し、インキG2でグラビア印刷にて所定の絵柄印刷を行った(図8参照)。周囲をクランプ後、布施真空株式会社製「NGF−0709成形機」の上下ボックスを閉じ、ボックス内をほぼ完全真空状態にした後、ヒーターとしてヘリウス社製中赤外線ヒーターを使用し前記樹脂シートSを上面より間接加熱を行った。その後、成形間口直径90mm、深さ15mm、底部直径75mmのカップ金型を乗せたテーブルを上昇させ、上ボックス中に0.2MPaの圧空を吹き込み、前記樹脂シートSの非印刷面をカップ金型に押し当て、印刷面のみが凹凸となっているカップ型真空成形体(2)を得た(図10参照)。得られた真空成形体底面部の凹凸差の最大値を測定した結果、20μm以上の明瞭な凹凸の発現が認められた。
樹脂シートSとしてシートS2を使用し、インキG1でグラビア印刷にて所定の絵柄印刷を行った(図8参照)。
実施例2と同様にして、印刷面のみが凹凸となっているカップ型真空成形体(3)を得た(図10参照)。得られた真空成形体底面部の凹凸差の最大値を測定した結果、20μm以上の明瞭な凹凸の発現が認められた。
樹脂シートSとしてシートS0を使用し、インキG1、GH1でグラビア印刷にて所定の絵柄印刷を行った(図11参照)。
成形間口直径90mm、深さ25mm、底部直径75mmのカップ金型を使用する以外は実施例2と同様にして、印刷面のみが凹凸となっているカップ型真空成形体(4)を得た。得られた真空成形体底面部の凹凸差の最大値を測定した結果、20μm以上の明瞭な凹凸の発現が認められた(図12参照)。
実施例1において、ヘリウス社製中赤外線ヒーターの代わりに所定の温度に加熱保温したタバイ社製ギアオーブンGPHH−100(加熱源は熱風である)に5分間投入した以外は実施例1と同様にしてシート(H1)を得た。その後前述と同様にして真空成形体(H1)を得た。結果を表4に示す。その結果、膜厚差は生じず、凹凸を有する真空成形体は得られなかった。
シートとして、日本デコール株式会社製のエンボス化粧シート「サニークロス−05E(膜厚140μm)」を用いた以外は実施例4と同様の方法で加飾成形体を作製した。「サニークロス−05E」は事前に熱ロールにより凹凸が付与されているため、成形前のシートS6の凹凸深さ、成形後のシートS6の凹凸深さを示した。その結果、成形時に凹凸が緩和されてしまい、真空成形体底面部の凹凸差の最大値を測定では、15μm未満と真空成形体底面部の凹凸が不十分になっていた。結果を表5に示す。
2:赤外線
3:熱収縮性を有する樹脂シート
4:高濃度の赤外線吸収インキ印刷部
5:低濃度の赤外線吸収インキ印刷部
6:(赤外線を吸収しない)色インキ印刷部
8:インキG1
11:インキGH1
Claims (6)
- 熱収縮性を有する樹脂シートを、保持した状態で、
該樹脂シートの同一面内にある隣り合う部位Aと部位Bとが、前記部位Aと前記部位Bとの表面温度が異なり、且つ、少なくとも部位Aの表面温度が前記樹脂シートの配向戻り強度変曲点温度T以上の表面温度となるように、赤外線照射して、前記部位Aと部位Bとに膜厚差を生じさせる工程(1)と
前記樹脂シートを真空成形法により金型に押し当てて成形する工程(2)と、
を有することを特徴とする、凹凸模様を有する真空成形体の製造方法。 - 前記熱収縮性を有する樹脂シートが、赤外線吸収インキ又は赤外線反射インキで絵柄を設けており、前記赤外線吸収インキ又は赤外線反射インキで絵柄を設けた部位Aと絵柄を設けない部位Bとを有する、請求項1に記載の真空成形体の製造方法。
- 前記熱収縮性を有する樹脂シートが、赤外線吸収インキ又は赤外線反射インキで絵柄を設けており、前記インキ濃度の高い部位Aと前記インキ濃度の低い部位Bとを有する、請求項1に記載の真空成形体の製造方法。
- 前記熱収縮性を有する樹脂シートが、赤外線吸収率または反射率の異なる複数種の赤外線吸収インキ又は赤外線反射インキで絵柄を設けており、前記赤外線吸収または反射率の高いインキで絵柄を設けた部位Aと前記赤外線吸収または反射率の低いインキで絵柄を設けた部位Bとを有する、請求項1に記載の真空成形体の製造方法。
- 前記熱収縮性を有する樹脂シートが、二軸延伸性ポリエチレンテレフタレートである、請求項1〜4のいずれかに記載の真空成形体の製造方法。
- 請求項1〜5のいずれかの製造方法により得た、凹凸模様を有する樹脂容器。
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