図1は、本発明の一実施形態例を示すドラム式洗濯乾燥機の外観斜視図である。図2は、図1に示すドラム式洗濯乾燥機の内部構造を示す左側面の模式図である。図3は、図1に示すドラム式洗濯乾燥機の内部構造を示す右側面の模式図である。なお、以下の説明における前後左右上下の方向は、本発明の洗濯乾燥機100を水平面に設置した際の前後左右上下の方向に一致させた図1に示す各方向を基準とする。
図1に示すように、本実施の形態例に係る洗濯乾燥機100は、その外郭を構成する筐体1を備えている。筐体1は、左右の側板1a,1b、前面カバー1c、背面カバー1d、上面カバー1e、下部前面カバー1f、およびゴム足1h(図2参照)を備えたベース1gで箱形状を形成し、十分な強度を有している。筺体1のサイズを筺体横幅寸法W1、筺体奥行き寸法D1、筺体高さ寸法H1で表す。
前面カバー1cの略中央には、洗濯物を出し入れするための投入口1iが形成されており、この投入口1iには主に透明樹脂で形成されて洗濯乾燥機100内の視認可能なドア3が設けられている。なお、ドア3は、後述する前補強材2a(図2参照)に図示しないヒンジを介して開閉自在に取り付けられており、ドア3の外縁に設けられたドア開放レバー3aによりロック/アンロック機構(図示省略)のロック状態を解除することで開くようになっている。また、このドア3は、ユーザによって前面カバー1c側に向けて押し付けられることで、前記投入口を閉じた状態で前記したロックアンロック機構(図示省略)によりロック状態となる。
筐体1の上部中央には、操作パネル4が設けられている。この操作パネル4は、電源スイッチ4a、操作スイッチ4b及び表示器4cを備えている。これらの電源スイッチ4、操作スイッチ4b及び表示器4cは、筐体1内の下部に配置された制御装置5(図2参照)に電気的に接続されている。
図2に示すドラム21は、回転可能に支持された円筒状の洗濯兼脱水兼乾燥槽であり、その円筒状の側壁および底壁に通水および通風のための多数の貫通孔21e(図4参照)を有し、前側端面に衣類を出し入れするための開口部21a(図4参照)を設けてある。この開口部21aの外側にはドラム21と一体の流体バランサ21cを備えている。ドラム21の後端面には、後述するモータ22との結合部であるドラムフランジ21dを備えている。ドラム21の内壁には、衣類を持ち上げるための凸形状を有するリフタ21bが複数個設けてあり、洗濯、乾燥時にドラム21が回転すると、衣類はリフタ21bと回転による遠心力で円筒状の側壁に沿って持ち上がり、重力で落下する動きを繰り返す。ドラム21の回転中心軸Azは、水平または開口部21a側が高くなるように傾斜している。
23は、背面を有する円筒状の外槽であり、水を保持できる。外槽23は、ドラム21を同軸上に内包し、前面には衣類を出し入れするための開口部21aを有し、背面の中央に外槽フランジ23dを介してモータ22を取り付ける。モータ22のシャフト22aは、外槽23を貫通し、ドラム21と結合している。外槽23は、開口部23aを含む槽カバー23bと、モータ22の取り付けられる水槽23cで分割することができる。開口部23aと前補強材2aに設けた開口部は、ゴム等の弾性体であるベローズ25で接続しており、ドア3を閉じることで外槽23を水封する。外槽23の底部には、排水口23eが設けてあり、排水ホース35と連通するように接続している。
24は、外槽23の加速度を検出する振動センサであり、水槽23c下面の中央前端部に設置される。この振動センサ24が、外槽23の振動状態を制御装置5に送信することで、外槽23の振動状態に合せて運転することが可能となっている。なお、この振動センサ24は、外槽23の速度あるいは変位を検出するタイプでもよい。
28aおよび28bは、外槽23の質量バランスを調整するための重りであり、ドラム回転軸Azよりも上側に一つ、下側に二つ備えている。ドラム回転軸Azよりも下側のウエイトは、水槽23cのできるだけ前方に、ドラム回転軸Azに対して左右対称に設けられる。なお、詳細は後述する。
外槽23は、下側をベース1gに固定されたサスペンション26(コイルばねとダンパで構成)で防振支持されている。また、外槽23の上側は上補強材(図示せず)に取り付けた前補助ばね27aと後補助ばね27b(図4参照)で支持されており、外槽23の前後方向への倒れを防ぐ。
34は、筐体1内の上部左側に設けた洗剤容器で、筐体1の上補強材に固定されている。洗剤容器34の後ろ側には、電磁弁やポンプ、水位センサなど給水に関連する部品から成る給水ユニット31を設けてある。上面カバー1eには、水道栓からの給水ホース接続口32a、風呂の残り湯の吸水ホース接続口33aが設けてある。洗剤容器34は、外槽23に接続されており、給水ユニット31内の給水電磁弁(図示せず)、あるいは風呂水給水ポンプ(図示せず)を運転することで、外槽23に洗濯水を供給する。
排水ホース35は、途中に循環ポンプ35a、糸屑フィルタ(図示せず)、排水弁35bを備え、排水弁35bを閉じて給水することで外槽23に水を溜め、排水弁35bを開いて外槽23内の水を機外へ排出する。
循環ポンプ35aは、循環ホース35cと洗剤溶解用循環ホース35dへの吐き出し口を有しており、循環ポンプ35aの回転方向を切り替えることにより、吐き出し口の切り替えが可能である。これにより、洗剤溶かしと洗濯水の洗濯物への散布が可能となっている。洗剤を溶かす時は、循環ポンプ35aを逆回転させて洗剤溶解用循環ホース35cを通り、外槽23(槽カバー23b)の底部に戻るよう循環する。この時、循環ポンプ35a内で未溶解の洗剤と水が強力に撹拌され、効率よく洗剤を溶かし、高濃度の洗剤液を生成することができる。一方、洗濯中は循環ポンプ35aを正回転させる。外槽23の底部に溜まった洗濯水は、排水口23eから糸屑フィルタを通り循環ポンプ35aに入り、循環ホース35cを通り槽カバー23bの上部に設けた散水口(図示せず)からドラム21内に散水され、外槽23の下部に戻るように循環する。これにより、洗濯水を洗濯物に万遍なく降りかけることができるため、高い洗浄力やすすぎ性能が得られるとともに、少ない洗濯水を循環ポンプ35aで循環させ、繰り返し使用するため節水が可能である。
図3に示す41aは、筐体1の背面内側に縦方向に設置した水冷除湿機構で、外槽23の背面下部と後述する送風ユニット41bを接続し、図3中の矢印のように外槽23内の空気を循環させ除湿できるようになっている。上補強材に固定された送風ユニット41bは、図示しないが、その流路内部に乾燥フィルタ、送風ファン、ヒータが設けられている。水冷除湿機構41aから送風ユニット41bに入った空気は、乾燥フィルタでリントが除去された状態で送風ファンにより昇圧され、さらにヒータから熱を得てドラム21内に送られる。なお、ここでは除湿に水冷除湿機構41aとヒータ41bを用いるが、ヒータ41bの代わりにヒートポンプを用いる方法や、湿った空気をそのまま排気して除湿する方法でもよい。
次に、本実施形態に係る洗濯乾燥機100の特徴的な構成要素について、図4を用いて説明する。図4は、本実施形態に係る洗濯乾燥機100の構成のうち、ドラム21、モータ22、外槽23、重り28など質量が大きく振動に与える影響の大きい振動部200と、サスペンション26、前補助ばね27a、後補助ばね27b、ベローズ25から成る防振支持手段を抽出して示している。前述したように、外槽23は槽カバー23bと水槽23cに分割することができ、分割面のうち、外槽23と槽カバー23bを固定するための座面が設けられている面を分割面A−Aとする。また、略円柱状であるサスペンション26の中心軸と外槽23が交わる点から、鉛直方向に引ける直線を防振支持軸Bで表す。防振支持軸Bは、外槽23がサスペンション26から受ける力の鉛直成分に相当する。
まず、特徴の一つであるドラム21について説明する。ドラム直径Dは、筺体幅寸法W1に対してできるだけ大きくなるように設けられる。その理由は、ドラム式洗濯乾燥機100の洗濯が、リフタ21bで持ち上げた衣類を重力で落下させドラム21の円筒状の側壁に叩き付けることで洗浄する「たたき洗い」方式であり、その性能はドラム直径Dが大きいほど良いからである。一方、筺体幅寸法W1は、一般住宅への設置性と使用者の使い勝手を考慮すると、その大きさに制約を受ける。我々の調査によれば、筺体横幅寸法W1が670mm〜700mmでは、設置可能な住居の割合は80%であるが、筺体幅寸法W1を610mm以下にすると、設置可能な割合は約98%まで増加する。そこで、例えば筺体幅寸法W1を610mm以下とすると、ドラム直径Dは最大でも500〜530mm程度となる。
このように、一般住宅への設置性から筺体幅寸法W1が制約され、ドラム直径Dを大きくできない場合、ドラム奥行き寸法Ldの延伸により高い洗浄力を確保することができる。その理由を次に二つ述べる。
図5は、リフタで持ち上げた衣類を落下させて洗濯を行うたたき洗いの模式図であり、衣類の落下高さhとドラム奥行き寸法Ldの関係を表している。図5(a)のようにドラム奥行き寸法Ldが短い場合、ドラム21の円筒状の側壁に重なる層が厚くなり、落下高さhが低くなる。これに対して、図5(b)のようにドラム奥行き寸法Ldが長い場合、衣類がドラムの奥行き方向に分散し衣類の重なりによる層が薄くなるため、落下高さhが高くなる。このため、奥行き寸法Ldを大きくすると、同じドラム直径Dでも落下高さが高くなるため、洗浄力が向上する。
また、ドラム奥行き寸法Ldの延伸によりドラム容積を大きくすることで、ドラム21内の衣類はより動きやすくなり、その結果汚れも落ちやすくなる。我々の調査によれば、洗濯物質量9kgではドラム容積が約72L以上であれば十分な洗浄力が得られるため、例えばドラム直径Dを500〜530mmとすると、ドラム奥行き寸法Ldは360〜410mm程度必要となり、ドラム直径Dに対するドラム奥行き寸法Ldの割合が0.6を超える奥行きの長いドラムとなる。なお、ここで用いるドラム容積は、ドラム直径Dとドラム奥行き寸法Ldから求められる計算容積から、リフタ21bや流体バランサ21cなどの容積を引いた実容積である。
しかし、ドラム奥行き寸法Ldとドラム直径Dの比Ld/Dが0.6を超えるような、ドラム奥行き寸法Ldの長いドラムを有する洗濯乾燥機100は、洗浄力の向上を図ることができるものの、振動に対して次のような影響を与える。ドラム奥行き寸法Ldを延伸することで衣類に偏りが生じたときの加振力の作用点は、重心から遠い位置に作用しやすくなり、振動部200の前端が振れ回るような振動が大きくなる。加えて、振動部200の前端の左右変位は、奥行き寸法Ldが長くなるにつれ大きくなる。したがって、奥行き寸法Ldの長いドラム21を有する本実施形態例の洗濯乾燥機100は、振動部200の並進方向の振動よりも振れ回り振動、すなわち回転方向の振動が生じやすく、その変位量も大きいといえる。このような回転方向の振動を低減するためには、振動部200の慣性モーメントを大きくする必要がある。
次に、二つ目の特徴である外槽23について説明する。外槽23の後側端面には、十分な強度を有する外槽フランジ23dを介してモータ22が取り付けられる。モータ22は、外槽フランジ23dに固定されたステータ22cと、永久磁石を備えたロータ22bと一体となったシャフト22aから成る。シャフト22aは、外槽フランジ23dに設けられた軸受け22dで回転自在に支持され、外槽23の背面中央を貫通して、ドラム21の背面に位置する強度部材のドラムフランジ21dに結合している。
外槽23は、前述のようにドラム21を内包するため、開口部23aのある槽カバー23bとモータ22を備える水槽23cに分割できるようになっている。水槽23cは、背面に外槽フランジ23dを備えており、開口部23aのある槽カバー23bに比べて強度がある。そのため、大きな力が作用するサスペンション26を水槽23c下部に設けることができる。すなわち、防振支持軸Bの少なくとも一部が、外槽フランジ23dのある水槽23cを通過するように設けることで、サスペンション26の反力で外槽23が変形するのを防ぐことができる。なお、サスペンション26のように必ずしもばねとダンパが一体である必要はなく、外槽23に減衰力を付与できる防振支持手段であればよい。例えば、ダンパのようなばねを含まない防振支持手段で水槽23cの下部を支持する構成でもよい。
図6は、槽カバー23bと水槽23cの分割面A−Aの一部を含むように拡大した側断面図である。分割面A−Aを基準に、槽カバー23bの開口部23aのある前側端面の内壁までの距離をLd23b、水槽23cの後側端面の内壁までの距離をLd23cとし、外槽23の前端面の内側から後端面の内側までの距離をLd23とする。つまり、Ld23bとLd23cの和がLd23となる。
ここで、Ld23bとLd23cの関係について説明する。図7は、衣類の位置により外槽23と筺体1の衝突しやすい位置が異なることを説明するために、ドラム21、外槽23、筺体1に注目し、説明に不要な部分を省略した上面図である。図7(a)はドラム21の前側に衣類の偏りが生じた場合の様子であり、(b)はドラム21の後側に衣類の偏りが生じた場合の様子である。振動の詳細は後述するが、ドラム21の回転速度と衣類の偏り状態により図7(a)のような外槽23の前側の振れる振動が大きくなったり、図7(b)のような外槽23の後側の振れる振動が大きくなったりする。このとき振動が大きいと、外槽23と筺体1が衝突し騒音を発生することがあるため、外槽23の前側端面と後側端面の外径をできるだけ小さく設定する必要がある。逆に、外槽23の前側あるいは後側の振れに対して最も筺体1と距離を保つことができるのは、外槽23の前後方向中央部分であり、外槽23の前側端面あるいは後側端面に比べて筺体1との隙間に余裕がある。そこで、槽カバー23bと水槽23cをねじ締結するための分割面A−A(図6参照)を、外槽23の前後方向中央付近に設定することで、外槽23と筺体1との衝突を起こりにくくすることができる。この回転振動による筺体1との衝突は、筺体幅寸法W1とドラム直径Dが一定の条件下ではドラム奥行き寸法Ldの長い方が生じやすい。そこで、ドラム奥行き寸法Ldとドラム直径Dの比Ld/Dが0.6を超えるような奥行きの長い洗濯乾燥機100は、Ld23bをLd23cに対して0.8倍から1.2倍の長さとすることで、外槽23と筺体1の衝突の発生をできるだけ抑えている。例えば、本実施の形態例に示す洗濯乾燥機100では、Ld23bを約190mm、Ld23cを約215mmに設定している。
以上のことに加えて、Ld23cに対してLd23bを0.8から1.2倍の長さとすることは、次のような効果もある。図6のように、槽カバー23bと水槽23cは、円筒面の内壁がドラム回転軸Azに対して勾配θ23bとθ23cを持っており、これらは製造工程で設けられる。槽カバー23bと水槽23cは、図8のように、内壁を形成する雄型90aと外観を形成する雌型90bの間に、ガラス繊維入りポリプロピレンのような強化プラスチックを射出し、冷却して固めたのちに、図6中の矢印方向に雄型を引き抜き、成型品を取り出して作られる。このとき、雄型90aおよび雌型90bに予め抜き勾配θを設けることで、雄型90aを引き抜くときに過度な力が成型品にかかるのを防ぐことができる。しかし、抜き勾配θにより雄型90aの凸部90cでは内径が小さくなり、槽カバー23bと水槽23cの端面では、分割面A−Aと比べてドラム21との隙間が狭くなる。ドラム21と外槽23との隙間が小さすぎると、ドラム21あるいは外槽23の変形や組み付け誤差を許容することができない。一方で、省スペース化の面では、ドラム21と外槽23との隙間はできるだけ小さい方が良い。このように、ドラム21と外槽23との隙間を設けつつ、かつその隙間をできるだけ小さくするには、抜き勾配による内径の減少をできるだけ抑える必要がある。抜き勾配による内径の減少は奥行き寸法に比例することから、Ld23cに対してLd23bを0.8倍から1.2倍の長さとすることで、槽カバー23bと水槽23cのどちらも内径の減少を小さくすることができる。例えば、本実施の形態例に示す洗濯乾燥機100では、水槽23cの奥行き寸法Ld23cは約215mmであり、Ld23cに対してLd23bを0.8倍から1.2倍の長さとすると、槽カバー23bの奥行き寸法Ld23bは172mmから258mmとなる。このとき、槽カバー23bの抜き勾配θ23bを1度とすると、槽カバー23bの内径の減少ΔD23bは、最大で4.5mm程度となる。よって、ドラム21と外槽23の径方向の隙間は、少なくとも4.5mm以上確保する必要があり、加えて寸法精度の誤差を許容できるようにドラム直径Dと外槽内径を設定すればよい。また、ドラム21の前端は、軸受22d(図4参照)から遠い分、外槽23に対して振れ回りが生じやすく、ドラム回転速度によってはドラム21の前端部と外槽23(槽カバー23b)内壁が衝突することがある。よって、ドラム21の前端部と槽カバー23bの隙間を確保するために、Ld23cとLd23bをほぼ同じ長さか、Ld23bを若干短くする方が望ましい。
ここで、槽カバー23bと水槽23cの分割面A−Aについて説明する。槽カバー23bと水槽23cは、分割面A−Aで互いにかみ合うように溝と突起部が設けられており、その間にゴム製のOリング(図示せず)を挟み込むことで、外槽内を水封する。さらに、槽カバー23bと水槽23cの分割面A−A上には、互いにねじ締結するための座面が離散的に設けられており、槽カバー23c側からねじ23gを締めることで、両者を固定する。例えば、プラスチックの強度を考慮してねじ23gの種類はM6以上が望ましい。このように、槽カバー23bと水槽23cは等方性の一様な材料で成型すると、接合部で不連続となるため、その接合部を境に機械的特性は変化する。言い換えると、外槽23の剛性は、外力に対して槽カバー23bと水槽23cの分割面で変曲点を持つことになる。
次に、三つ目の特徴である重り28bについて説明する。図4に示すように、本実施形態に係る洗濯乾燥機100において、ドラム回転軸Azよりも下側に位置する重り28bの、少なくとも一部が、槽カバー23bと水槽23cの分割面と、水槽23c側にあるサスペンション26の間に設けられることを特徴とする。言い換えれば、図中の破線で囲まれる部分に、重り23cの少なくとも一部が含まれていればよい。重り28bは、円弧形状にして一つにまとめてもよく、また2個以上設けても良い。また、重り28bを外槽23の最外径よりも左右方向に関して内側に設置することで、重り28bが外槽23より先に筺体1に衝突するのを防ぐことができる。この位置に重り23cを配置する効果を説明するために、まず洗濯乾燥機100の振動について述べる。
洗濯乾燥機100は、脱水運転時に衣類の偏りが生じると、ドラム21の回転速度に応じて振動の挙動が変化する。図9は説明を簡単にするために、外槽23とドラム21の振動挙動を二つの回転速度域に分け、さらにスケールを調整した模式図である。
ドラム21の回転速度が停止状態から上昇していくと、例えば毎分100〜300回転あたりで、振動部200が一体となって左右上下前後の並進方向あるいは回転方向に振動する1次、2次共振モードが現れる。1次、2次共振モードでは、振動部200を構成する部品は剛体として考えても問題ないことから、振動部200の質量と慣性モーメントが支配的な共振モードといえる。例えば、加振力に対して振動部200の慣性モーメントが小さい場合、1次、2次共振モードにより振動が大きくなり、外槽23が筺体1内壁に衝突し騒音を発生することがある。特に、振動部200の重心付近を中心として、振動部200の前側が左右方向に回転するような振動、言い換えると首振りのような振動で、外槽23と筺体1の内壁との衝突が起こりやすい。このような、回転方向の振動を低減するには振動部200の慣性モーメントを増加する必要がある。そこで、振動部200の慣性モーメントを大きくする手段を次に説明する。
図10は、振動部200が回転方向に振動する様子を右側から見た図であり、回転中心Oから重り28bまでの前後方向の距離Lwが長い場合を(a)、短い場合を(b)で表す。回転中心Oは、言い換えると振れ回り振動の節となる点であり、振動モードによって異なる点となる。振動部200の1、2次共振モードのうち、外槽23と筺体1の内壁の衝突が起こり易いのは、振動部200の重心付近あるいは防振支持軸B上の点を回転中心として、振動部200の前側が首を振るように振動するときである。振動部200の重心位置は、外槽フランジ23d、ドラムフランジ21d、モータ22などの重量物を後側に備えているため、外槽23の前後方向中心よりも後側になる。また、振動部200を保持するサスペンション26の取り付け位置も、振動部200の重心の下側になるように位置している。よって、図10の回転中心Oは、外槽23の前後方向中心よりも後側になる。ただし、サスペンション26のような防振支持手段を三つ以上備える場合、防振支持軸Bが必ずしも重心付近になるとは限らないが、重量物が後側に集中する振動部200の振動を低減するために、防振支持手段の少なくとも一つは外槽23の前後方向中心よりも後側に必要となる。
図10(a)のように、回転中心Oと重り28bの距離Lwが長いと、重り28bによる慣性モーメントが大きくなり、回転方向の振動が小さくなる。逆に、Lwが短い(b)では慣性モーメントが小さくなり、回転方向の振動が大きくなる。すなわち、1次、2次共振モードの振動部200の振動は、回転中心Oと重り28bの前後方向の距離Lwが長くなるにつれ、小さくなるといえる。
さらに回転速度が上昇すると、ドラム21と外槽23が別々に振動する3次共振モードが現れる。この共振モードでは、前述した慣性モーメントだけでなく、振動部200の剛性も支配的となる。ドラム回転速度に対して振動部200の剛性が低い場合、3次共振モードにより、図7のようにドラム21に対して外槽23が振れ回るような別々の振動が現れ、ドラム21外壁と外槽23内壁の衝突に起因する騒音を生じることがある。このような3次共振モードを防ぐためには、振動部200の剛性を高めればよい。特に、振動部200のうち外槽23の剛性を高めることが効果的である。なぜなら、ドラム21、シャフト21a、外槽フランジ23dのように金属材料で作られている部分の引張強度は200MPa以上であるのに対し、ガラス繊維入りポリプロピレンで作られている外槽23の引張強度は25MPa程度と一桁程度強度が低下するからである。次に、外槽23の剛性を高める方法を述べる。
外槽23の剛性を高める方法には、外槽23の材質をより強いものにする、外槽23の肉厚を厚くする、あるいはリブのような補強形状を追加する、などが挙げられる。しかし、材質で剛性を高めることはコストの上昇をもたらし、また、外槽形状で剛性を高めることは外槽23の大型化をもたらすことになる。一般住宅への設置性から、限られた筺体寸法にできるだけ大きなドラムを収める必要がある条件下では、外槽23の大型化は必ずしも適当とはいえない。よって、これらによらず外槽23を向上する手段が求められる。そこで、外槽23の寸法を変えることなく、剛性を高める方法を次に説明する。
図11は、槽カバー23bの質量に作用する力F23bと、槽カバー23bが重り28bから受ける力Fwと、分割面A−Aのねじ締結部に作用する力Fを示す。なお、振動部200のうち、説明に不要な部分は省略する。3次共振モードでは、シャフト21a、ドラムフランジ21d、外槽フランジ23dなどのドラム21の支持部を支点とした振れ回り振動が生じる。図11(a)のように、このドラム21の支持部と重り28bの前後方向の間に分割面A−Aを含む場合、槽カバー23bの質量に作用する力F23bと重り28bから受ける力Fwの二つに起因する力が、分割面A−Aのねじ締結部近傍に作用することになる。一方、図11(b)のように、このドラム21の支持部と重り28bの前後方向の間に分割面A−Aを含まない場合、分割面A−Aのねじ締結部近傍に関係する力は、槽カバー23bの質量に作用する力F23bのみである。分割面A−Aのねじ締結部近傍にかかる力が大きいとき、すなわち応力集中が起こるとき、その部分から壊れやすくなり、結果的に外槽23の剛性は低下する。したがって、外槽23の剛性を高めるには、重り28bを分割面A−Aよりも水槽23c側に設定する必要がある。言い換えると、重り28bの前後方向の位置が分割面A−Aよりも槽カバー23b側の場合、外槽23の剛性は低くなり、逆に水槽23c側では高くなる。このように、外槽23の剛性は、重り28bの前後方向の取り付け位置に対して、分割面A−Aで変曲点を有する傾向を示す。
図12は、前後方向の重り28b取り付け位置と外槽23の剛性および振動部200の振動の関係を模式的に表す図である。外槽23の分割面A−Aを含むねじ締結部に作用する力を、重り28bの取り付け位置ごとに(a)〜(d)で模式的に表し、それらの傾向を表にまとめて(e)に示す。1次、2次共振モードで生じる回転振動の回転中心を、モータ22の取り付け位置とし、重り28bまでの距離をLwで表す。また、図12の矢印Fは、分割面A−Aにある槽カバー23bと水槽23cの接合部にかかる力のうち最大となるものを表しており、その大きさを矢印の長さで模式的に表している。
まずは外槽23の剛性について説明する。分割面A−Aより槽カバー23b側では、ドラム21の支持部と重り28bの前後方向の間に分割面A−Aを含み、槽カバー23bと水槽23cの接合部にかかる力が大きくなるため、重り28bの取り付け位置による外槽23の剛性向上効果は小さい。逆に、分割面A−Aより水槽23c側では、重り28bが槽カバー23bに固定されていない分、槽カバー23bと水槽23cの接合部にかかる力が小さいため、重り28bの取り付け位置による外槽23の剛性向上効果は大きい。
次に、振動部200の振動について説明する。説明を簡単にするために、振動部200の回転振動の中心を図12ではモータ22の取り付け部とする。重り28bの取り付け位置が回転中心から遠くなるにつれ、振動部200の慣性モーメントが増加するため、振動部200の前側が左右方向に首を振るような振動は小さくなる。すなわち、回転中心と重り28bの距離Lwが大きくなるにつれ、振動低減効果も大きくなるといえる。この傾向は、分割面A−Aに関係なく、回転中心と重り28bの距離Lwに関係する。
以上より、重り28bの取り付け位置による外槽23の剛性向上効果と振動部200の振動低減効果は、図12(e)のようにまとめることができる。図12(e)の表のうち、外槽23の剛性を高め、かつ振動低減効果が最も高くなるのは、重り28bを分割面A−A近傍の水槽23c側に備えた図12(c)の構成であるといえる。言い換えると、重り28bを水槽23cのできるだけ前方に備えることで、低振動と高剛性を同時に実現することができる。また、水槽23cには防振支持手段であるサスペンション26を備えており、振動モードによっては防振支持軸B(図4参照)上に回転中心があるような回転方向の振動となる。慣性モーメントは質量と回転中心との距離で決まることから、防振支持軸B上に重り28bを取り付けても、防振支持軸Bが回転中心となるような振動モード時には慣性モーメント増加の効果は望めない。よって、少なくとも防振支持軸Bよりも前方に重り28bを取り付ける必要がある。
したがって、本実施形態に係る洗濯乾燥機100では、ドラム回転軸Azよりも下側に位置する重り28bの、少なくとも一部を、槽カバー23bと水槽23cの分割面A−Aと、水槽23c側にあるサスペンション26の間に設けることで、低振動と高剛性の両方を実現できる。なお、重り28bが水槽23cに取り付けられ、しかもより前方に取り付けるため、分割面A−Aをまたぐように取り付けてもかまわない。このように水槽23cに重り28bを取り付けることで、槽カバー23bに重量物である重り28bを取り付ける必要がないため、メンテナンス時に分解を容易に行える効果もある。