JP5636350B2 - 内外装材取付用下地構造 - Google Patents

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Description

本発明は、タイルや石材等の内外装材を建築物乃至構築物の躯体表面に、該内外装材と躯体表面との間の間隔をできるだけ狭く維持しながら、高い強度で、かつ不陸調整可能に取り付けることのできる内外装材取付用下地構造に関する。
このような内外装材取付用下地構造又はこれに類する構造に関しては、いくつかの提案がある。
特許文献1は、石材の取付構造に関するものであり、これは、石材の裏面に板状の基材を取り付けて複合石材を構成し、該複合石材の裏面の上部に取付金具を取り付けると共に、該複合石材の上端部から上方に突出する該取付金具の上部に孔部を設け、該複合石材の下部に支持金具を取り付けると共に、該支持金具の下端縁に開口する凹部を基材の背面において設け、他方、取付対象の壁面にナットを取り付け、前記複合石材の取付金具の孔部を通してボルトを前記壁面のナットに螺合し、この複合石材の上側に配置される他の複合石材の支持金具の凹部を取付金具よりも壁面側においてボルトに被挿して係合してなる石材の取付構造である。
この特許文献1の取付構造では、以上のように、前記複合石材を壁面に取り付ける際に、ボルトの壁面に配したナットへのねじ込み深さを調整することで、不陸の調整はできるものであるが、該複合石材は、該壁面に直接に一個ずつ取り付けるものであり、不陸を一個ずつ調整しなければならない煩わしさは耐え難いものである。またナットは、壁面に簡単に埋め込んだに過ぎないもののようであり、石材の重量を支持するのに十分とも思われない。ナットとしてその軸心に沿って長い物を採用し、壁面に深く埋め込んで使用するように構成すれば、ナット自体の壁面への取付はかなり確かなものになりうるが、該ナットに結合して複合石材を支持するボルトは何らの補強もされていないので、対応するナットも含めて相当大径なものを採用しなければ、十分な強度は得られない。更に複合石材も基材に石材を接着剤で接着固定して構成したに過ぎないもので、いずれ石材は基材から剥離落下する危険のあるものである。
特許文献2は、胴縁固定用ブラケットであり、本件と関連する構成の胴縁固定用ブラケットは、ブラケット本体と、該ブラケット本体の内端に備えたアンカーボルト類などの雄ねじ部に螺合する雌ねじ部と、該雌ねじ部をアンカーボルト類などの雄ねじ部に螺合した場合に建物躯体外面に当接する前記ブラケット本体の外周から張り出した鍔状部材と、該ブラケット本体の外端側に構成した胴縁取付部とからなり、
該胴縁取付部を、これに胴縁をその不陸を調整しつつ取り付ける不陸調整機能を備えた構造に構成することとし、
その不陸調整機能を備えた構造を、ブラケット本体の外端に開口する雌ねじ部と、該雌ねじ部に進退調整自在に螺合しうる調整雄ねじ部材であって、その外端に胴縁固定用の固定雌ねじ部を備えた調整雄ねじ部材と、該調整雄ねじ部材の外端面に裏面側を当接させて配した胴縁をこれに開口したねじ孔を通じて該固定雌ねじ部に螺合して固定する雄ねじ部材とで構成した胴縁固定用ブラケットである。
この特許文献2の本件と関連する胴縁固定用ブラケットによれば、これに不陸を調節しながら胴縁を取り付けることが可能であり、予め胴縁を不陸調整しながら取り付けてしまえば、外装材は、それに取り付けるだけで、個別には不陸の調整をする必要がなくなり、能率的にその取り付けを行うことができる。特許文献1のそれより、スピーディにその取付作業を行うことができる。また胴縁固定用ブラケットの建物躯体への取り付けが確実であり、鍔状部材等の作用により、胴縁に取り付ける外装材等の重量による曲げや剪断力に対しても十分な強度が得られるようになっている。その意味で、この特許文献2の胴縁固定用ブラケットは、優れたものであると言うことができる。しかしそれらを構成する部材が特有の部材で若干高価になりがちである問題がある。またこの胴縁固定用ブラケットの場合は、躯体壁面と外装材との間に断熱材を装入しない用法で用いるとすると、躯体壁面と外装材との間隔が僅かながら広くなる問題もある。
特開平06−129075号公報 特開2004−251031号公報
本発明は、以上の従来例の問題点を解消し、タイルや石材等の内外装材を建築物や構築物の躯体表面に取り付ける場合に、該内外装材と躯体表面との間の間隔をできるだけ狭く構成し得、かつ不陸の調整が可能でありつつ高い強度を備えた下地構造とすることのできる内外装材取付用下地構造を提供することを解決の課題とする。
本発明の1は、前面板及びその両側の側板からなる端面視U字形で、その凹部側を躯体壁面に向け、かつ該躯体壁面に縦胴縁又は横胴縁として固定する不陸調整用胴縁と、
前記不陸調整用胴縁の前面板に開口した複数の固定用穴であって、該不陸調整用胴縁を前記躯体壁面の前面に縦胴縁又は横胴縁として固定すべくその前面板の外面側から軸状結合部材を挿入しその内端を前記躯体壁面に固定するための固定用穴と、
前記不陸調整用胴縁を前記躯体壁面の前面に縦胴縁又は横胴縁として固定すべくその前面板の外面側から前記固定用穴を通じて挿入し該躯体壁面にその内端を固定する軸状結合部材と、
前記不陸調整用胴縁の凹部側に、該不陸調整用胴縁を縦胴縁として用いる場合は、前記各固定用穴の下方となる部位に位置させるべく、該不陸調整用胴縁を横胴縁として用いる場合は、前記各固定用穴の両側となる部位に位置させるべく、それぞれ配する、前記凹部の深さより厚さ寸法の大きいモルタル流出防止用及び不陸吸収用の弾性閉塞部材と、
前記不陸調整用胴縁を縦胴縁として用いる場合は、該不陸調整用胴縁の直立状態で、その前面板及び両側板のうちの前記各固定用穴より上方に位置する部位に、前記不陸調整用胴縁を横胴縁として用いる場合は、該不陸調整用胴縁の水平状態で、その両側板のうちの前記各固定用穴より上方に位置する部位に、それぞれ開口したモルタル注入穴と、
前記不陸調整用胴縁の前面板の外面側から前記固定用穴を通じて挿入し前記躯体壁面に内端を固定した軸状結合部材を埋め込む状態に、該躯体壁面、該不陸調整用胴縁の凹部側及び前記各1個又は2個の弾性閉塞部材の間に充填するモルタル部材と、
で構成した内外装材取付用下地構造である。
本発明の2は、本発明の1の内外装材取付用下地構造において、
前記固定用穴の周囲に、該固定用穴に挿入する前記軸状結合部材の頭部が埋設状態となる凹所を構成したものである。
本発明の3は、本発明の1又は2の内外装材取付用下地構造において、
前記軸状結合部材として、アンカー又はビス部材を採用したものである。
本発明の1の内外装材取付用下地構造によれば、建物の躯体壁面と該躯体壁面に不陸を調整しつつ取り付ける内外装材との間の間隔寸法を最小限とすることができる。またその構成が極めて簡単で、取付工程も同様に簡単でありながら、高い強度を確保することができる。
本発明の1の内外装材取付用下地構造によれば、建物の躯体壁面の不陸は、その外表面に最も突出する部分に対応して、前記不陸調整用胴縁を、その背後側(凹部側)が、該躯体壁面の該最も突出する部分に近接する又は接触する位置関係でその前面に直立状態に配し又は水平状態に配し、他の不陸調整用胴縁も全て該不陸調整用胴縁に面一になるように直立状態又は水平状態に配した上で、いずれも前記軸状結合部材によりその状態で建物の躯体壁面に固定することにより、不陸調整用胴縁を躯体壁面の最も突出する部分から0か又は僅かの寸法である最小の間隔で該躯体壁面に取り付けることで、調整する。
また不陸調整用胴縁は、これを固定する軸状結合部材が、前記躯体壁面、該不陸調整用胴縁の凹部側及び1又は2の前記弾性閉塞部材の間に充填されるモルタル部材の中に埋設状態になるため、該軸状結合部材が補強され、極めて高いその固定状態を得ることができる。すなわち、該軸状結合部材の曲げ強度が極めて高いレベルで強化される。なお、モルタル部材は、これを前記モルタル注入穴から注入した際に、該1又は2の弾性閉塞部材で下方又は両側が閉塞されているため、その硬化までの間に無用に流出することもないようになっている。また該弾性閉塞部材は、文字通り、弾力性を有するものであるから、前記のように、躯体壁面の前面に不陸調整用胴縁を直立状態又は水平状態に配する際に、該躯体壁面との間の間隔が狭い場合であっても、該不陸調整用胴縁を該躯体壁面側に適切な圧力で押し付ければ、これに応じて収縮し、適切な平面内の直立状態又は水平状態を確保することができる。
本発明の2の内外装材取付用下地構造によれば、不陸調整用胴縁を躯体壁面に軸状結合部材を用いて固定した際に、該軸状結合部材の頭部が凹所に埋設状態となるため、該不陸調整用胴縁の前面にタイルや石材等の外装材を配する際に、それが邪魔になるような問題が生じない。
本発明の3の内外装材取付用下地構造によれば、軸状結合部材としてアンカー又はビス部材を採用したものであり、不陸調整用胴縁の躯体壁面への取り付けを非常に簡単に行うことができる。そして小径のそれらを用いても、前記のように、モルタル部材で補強するので十分な強度を得ることができる。
(a)は実施例1の内外装材取付用下地構造の概略正面図、(b)は側面図、(c)は平面図。 (a)は実施例1の内外装材取付用下地構造の一部(最上部の胴縁)の正面図、(b)は側面図、(c)は平面図、(d)は(a)のA−A線断面図、(e)は(a)のB−B線断面図、(f)は(a)のC−C線断面図。 躯体壁面に実施例1の内外装材取付用下地構造を作成した状態の、一部のビス部材及びモルタル部材を省略した一部切欠正面図。 図3のD部拡大図。 (a)は躯体壁面に実施例1の内外装材取付用下地構造を作成した状態の側面説明図、(b)は(a)のE部拡大図。 (a)は躯体壁面に実施例1の内外装材取付用下地構造を作成した状態の平面説明図、(b)は(a)のF部拡大図。 (a)は実施例2の内外装材取付用下地構造の概略正面図、(b)は概略平面図、(c)は概略右側面図。 (a)は実施例2の内外装材取付用下地構造の一部(胴縁の右端)の正面図、(b)は平面図、(c)は右側面図、(d)は(a)のG−G線断面図、(e)は(a)のH−H線断面図、(f)は(a)のI−I線断面図。 躯体壁面に実施例2の内外装材取付用下地構造を作成した状態の、一部のビス部材及びモルタル部材を省略した一部切欠正面図。 図3のJ部拡大図。 (a)は躯体壁面に実施例2の内外装材取付用下地構造を作成した状態の平面断面説明図、(b)は(a)のK部拡大図。 (a)は躯体壁面に実施例2の内外装材取付用下地構造を作成した状態の側面断面説明図、(b)は(a)のL部拡大図。
本発明を実施するための形態を実施例に基づき図面を参照しながら詳細に説明する。
<実施例1>
この実施例1の内外装材取付用下地構造は、不陸調整用胴縁1を縦胴縁として用いる例に関し、図1〜図6に示すように、基本的に、端面視U字形の不陸調整用胴縁1と、該不陸調整用胴縁1の凹部側に配置した複数の弾性閉塞部材2、2…と、該弾性閉塞部材2、2…の各々の上方の位置に開口した固定用穴3、3…と、前記不陸調整用胴縁1をRC造の建物の躯体壁面Wの前面に直立状態に固定すべく該固定用穴3、3…を通じて該躯体壁面Wにねじ込んだビス部材(軸状結合部材)4、4…と、該不陸調整用胴縁1の該各固定用穴3、3…より上方の位置に開口したモルタル注入穴5、5…と、該不陸調整用胴縁1の外面側から前記固定用穴3、3…を通じて前記躯体壁面Wにねじ込むビス部材4、4…を埋め込み状態に充填するモルタル部材6と、で構成したものである。
前記不陸調整用胴縁1は、図1(a)〜(c)及び図2(a)〜(f)に示すように、前面板1a及びその両側の側板1b、1bからなる、一般に用いられる端面視U字形の金属製の胴縁部材を採用することができる。図3〜図6(a)、(b)に示すように、この実施例1では、その凹部側を躯体壁面Wに向けて直立状態に配して使用する。躯体壁面Wの全体の中で最も膨らんでいる部分(最も突出している部分)を基準にして、その部位に近接する又は当接する状態で直立させ、該躯体壁面Wと該不陸調整用胴縁1の外面に取り付けられる内外装材との間の間隔を最小限としながら不陸を調整すべく使用するものである。
前記弾性閉塞部材2、2…は、図1(a)〜(c)及び図2(a)〜(f)に示すように、前記不陸調整用胴縁1の凹部側に相互に該不陸調整用胴縁1の長さ方向に離間させて配置固定する弾性部材である。合成ゴムで構成したが、これに限定されない。弾力性を有する種々の部材を採用することができる。また該弾性閉塞部材2、2…は、そのサイズを、該不陸調整用胴縁1の凹部の深さより厚さ寸法の厚いものとし、その凹部側に埋めるように押し込んで固定した状態で、該凹部から十分に突出した状態となるようにする。例えば、その厚さの40%程度が該凹部から突出した状態とする。これは、一つは、後述するように、この上に流下充填した流動状態のモルタル部材6をここから流下させないように閉塞するための手段となり、もう一つは、不陸吸収の作用を果たすべき手段となるものである。従って取付対象のRC造の建物における躯体壁面Wの不陸の状態に対応させ、その不陸が大きい場合は、更に突出寸法を大きくし、不陸が小さい場合は、突出寸法を小さくするのが適当である。
前記固定用穴3、3…は、図1(a)、図2(a)、(b)、(e)、図3、図4及び図5(a)、(b)に示すように、前記不陸調整用胴縁1の前面板1aのそれぞれ弾性閉塞部材2、2…の配してある部位より若干上方の部位に開口する。これらに挿入して背後の躯体壁面Wにねじ込むビス部材4、4…を十分な量のモルタル部材6で補強するために、該弾性閉塞部材2、2…の上面から該不陸調整用胴縁1の幅の1/2程度の高さ、或いはそれ以上の高さの部位に開口するのが適当である。この実施例1では、該弾性閉塞部材2、2…の上面から該不陸調整用胴縁1の幅の1/2程度の高さの部位に開口したものである。
また該固定用穴3、3…は、図2(a)〜(e)、図5(a)、(b)及び図6(a)、(b)に示すように、前記ビス部材4、4…の皿状の頭部を埋め込むことが可能なように、前面板1aの該固定穴3、3…の周囲に前面側から皿状に凹む凹所3aを構成したものである。ビス部材4、4…の頭部形状がこれと異なる場合は、該固定用穴3、3…の周囲には、その前面側に異なる頭部形状に対応する凹所を形成しておくものとする。
前記ビス部材4、4…は、図4、図5(a)、(b)及び図6(a)、(b)に示すように、皿状の頭部と該頭部から延長する螺旋部とで構成した一般的なものであり、同図に示すように、前記不陸調整用胴縁1の前面側から前記固定穴3、3…を貫通して躯体壁面Wにねじ込み、該不陸調整用胴縁1を該躯体壁面Wに固定する手段である。云うまでもなく、同様に作用しうるアンカーボルトその他の軸状結合部材をこれに代えて使用することもできる。
前記モルタル注入穴5、5…は、図1(a)、図2(a)、(b)、図3、図4及び図5(a)、(b)に示すように、前記不陸調整用胴縁1の前面板1aの前記各固定用穴3、3…より上方の位置に開口した、文字通り、流動性のモルタル部材6をこれを通じて注入するための穴である。該モルタル注入穴5、5…は、該各固定用穴3、3…から、該各固定用穴3、3…と対応する弾性閉塞部材2、2…の上面との間の間隔と同程度以上に高い位置に開口するのが適当である。この実施例1では、該モルタル注入穴5、5…は、弾性閉塞部材2、2…の上面から、該各固定用穴3、3…と対応する弾性閉塞部材2、2…の上面との間の間隔の2倍程度の高さ位置に開口した。
なお、この実施例では、前記モルタル注入穴5、5…は、図1(a)、図2(a)、(b)、図3、図4及び図5(a)、(b)に示すように、前記不陸調整用胴縁1の前面板1aの中央に開口したが、両側板1b、1bのいずれかに開口することも可能である。各々の弾性閉塞部材2、2…からの高さ位置は、前記した場合と同様である。
前記モルタル部材6は、図3、図4、図5(a)、(b)及び図6(a)、(b)に示すように、前記不陸調整用胴縁1の前面板1aの外面側から前記固定用穴3、3…を通じて前記躯体壁面Wにねじ込んだビス部材4、4…を埋め込む状態に、該躯体壁面W、該不陸調整用胴縁1の凹部側(前面板1a、両側板1b、1bで囲まれた空間)及び前記弾性閉塞部材2の上面の間に充填する部材であり、硬化して該ビス部材4、4…を補強するものである。
該モルタル部材6は流動状態に作成し、前記モルタル注入穴5、5…から注入し、以上のように、ビス部材4、4…をこの中に埋め込み状態として補強するものであるが、その流動性は、該モルタル注入穴5、5…から良好に注入しうるとともに、躯体壁面Wと不陸調整用胴縁1の両側板1b、1bとの間の隙間等から無用に流出しない程度のそれとすべきである。
従ってこの実施例1の内外装材取付用下地構造によれば、RC造の建物の躯体壁面Wと、該躯体壁面Wに不陸を調整しつつ取り付ける内外装材との間の間隔を最小限とすることができる。またその構成が極めて簡単で、それ故、躯体壁面Wへの組み付け工程も、以下に述べるように、非常に簡単に行えながら、極めて高い強度を確保することができる。
まず不陸調整用胴縁1を対象の建物の躯体壁面Wに不陸を調整しつつ取り付ける。該躯体壁面Wのうち、外部に最も突出する部分を見出し、これに該不陸調整用胴縁1の背後側、すなわち、凹部側を近接させ、かつ該不陸調整用胴縁1を直立状態に配する(この実施例1では、前記したように、不陸調整用胴縁1を縦胴縁として用いる)。このとき、前記弾性閉塞部材2、2…は、その各々の位置する部位に対応する躯体壁面Wの不陸の状態により、大きく又は小さく圧縮されることにより、不陸を吸収し、該不陸調整用胴縁1の直立状態に障害を与えない。
この状態で、該不陸調整用胴縁1を固定すべく、図4、図5(a)、(b)及び図6(a)、(b)に示すように、前記固定用穴3、3…にビス部材4、4…を順次挿入し、かつ躯体壁面Wの対応する部位に予め開口しておいた下穴にその螺旋の先端側をねじ込む。同図に示すように、このとき、該ビス部材4、4…の皿状の頭部は、該固定用穴3、3…の周囲の凹所3a中に沈み込んだ状態になり、該不陸調整用胴縁1の前面板1aの前面側に突出するようなことはない。
この後は、流動状態の前記モルタル部材6を前記モルタル注入穴5、5…からそれぞれ充填する。該モルタル部材6は、特に図3、図4及び図5(a)、(b)に示すように、該モルタル注入穴5、5…から注入されると、各モルタル注入穴5、5…の下方は、該不陸調整用胴縁1の凹部を構成する前面板1aと両側板1b、1b、前記弾性閉塞部材2、2…及び前記躯体壁面Wによって概ね囲まれた空間となっているため、その中に充填された状態となる。該モルタル部材6の流動性が高すぎると、一部が、該不陸調整用胴縁1の両側板1b、1bと躯体壁面Wとの隙間等を通じて流出することもあるが、極端に流動性を高くしなければ、殆どの場合、僅かの流出で抑えることができる。このモルタル部材6の注入は、同図に示すように、概ねその上面が前記固定用穴3、3…と該モルタル注入穴5、5…との高さ方向の中間より若干上方程度の高さまでとする。勿論、これより上方まで充填しても良いが、余り高くまで充填しても意味はない。低すぎるのは、良くない。いずれも前記ビス部材4、4…の補強の観点からである。
このようにモルタル部材6を充填すると、ビス部材4、4…は、不陸調整用胴縁1と躯体壁面Wとの間に位置する部分がモルタル部材6に埋まった状態となり、該モルタル部材6が硬化することにより、非常に高い補強効果が得られる。ビス部材4、4…は、モルタル部材6を施さなかった場合に比較して10倍程度の曲げ強度の向上が認められる。従って、比較的細いビス部材4、4…を使用して十分に高い強度を確保することができる。
この後は、他の不陸調整用胴縁1、1…を、以上のように設置した不陸調整用胴縁1と面一になるように配して、それぞれ同様にビス部材4、4…を用いて躯体壁面Wに固定し、かつ同様にモルタル部材6を配して、ビス部材4、4…を補強する。こうして、躯体壁面Wの所要領域に不陸調整用胴縁1、1…を固設すれば、不陸の調整された内外装材取付用下地構造は完成である。
なお、以上においては、不陸調整用胴縁1を躯体壁面Wにビス部材4、4…を用いて固定した後、直ちにモルタル部材6をモルタル注入穴5、5…から注入する手順を採用したが、不陸調整用胴縁1、1…を所要領域の全部又は一部の範囲に設置固定した後に、纏めてモルタル部材6の注入作業を行う手順でも不都合ではない。この内外装材取付用下地構造は種々の合理的な手順で自由にこれを作成することができる。
このように躯体壁面Wに内外装材取付用下地構造を構成した後は、既存の種々の技法により又は新たな技法により石材や種々のタイル等の内外装材を取り付けることができる。
この実施例1の内外装材取付用下地構造によれば、前記のように、十分高い強度で不陸調整用胴縁1、1…を取り付けることができるものであり、内外装材としてかなり重量のあるものでも取り付け可能になる。また、該不陸調整用胴縁1、1…の外面と躯体壁面Wとの間の間隔をほぼ最小限としたものであり、土地の利用に無駄を生じさせないようにすることもでき、特に都会では有用である。
<実施例2>
この実施例2の内外装材取付用下地構造は、不陸調整用胴縁1を横胴縁として用いる例に関し、図7〜図12に示すように、基本的に、端面視U字形の不陸調整用胴縁1と、該不陸調整用胴縁1の凹部側に配置した複数対の弾性閉塞部材2、2…と、該各一対の弾性閉塞部材2、2…の各々のほぼ中間部に開口した各一個の固定用穴3、3…と、前記不陸調整用胴縁1をRC造の建物の躯体壁面Wの前面に水平状態に固定すべく該固定用穴3、3…を通じて該躯体壁面Wにねじ込んだビス部材(軸状結合部材)4、4…と、該不陸調整用胴縁1の該各固定用穴3、3…より上方の側板1bに開口したモルタル注入穴15、15…と、該不陸調整用胴縁1の外面側から前記固定用穴3、3…を通じて前記躯体壁面Wにねじ込むビス部材4、4…を埋め込み状態に充填するモルタル部材6と、で構成したものである。
前記不陸調整用胴縁1は、図7(a)〜(c)及び図8(a)〜(f)に示すように、前面板1a及びその両側の側板1b、1bからなる、実施例1のそれと全く同一の一般に用いられる端面視U字形の金属製の胴縁部材を採用したものである。図9〜図12(a)、(b)に示すように、この実施例2では、その凹部側を躯体壁面Wに向けて水平状態に配して使用する。該不陸調整用胴縁1は、躯体壁面Wの全体の中で最も膨らんでいる部分(最も突出している部分)を基準にして、その部位に近接する又は当接する状態で水平状態に配し、該躯体壁面Wと該不陸調整用胴縁1の外面に取り付けられる内外装材との間の間隔を最小限としながら不陸を調整すべく使用するものである。
前記弾性閉塞部材2、2…は、図7(a)〜(c)、図8(a)〜(f)及び図9に示すように、一定の間隔で配した一対のそれを組として用い、複数対のそれらを前記不陸調整用胴縁1の凹部側に相互に該不陸調整用胴縁1の長さ方向に離間させて配置固定する弾性部材である。これらは、実施例1のそれと個々的には全く同一の部材であり、合成ゴムで構成したが、これに限定されない。弾力性を有する種々の部材を採用することができる。また該弾性閉塞部材2、2…のサイズ及び不陸調整用胴縁1の凹部に取り付けた場合の突出状態等は実施例1と同様である。各一対の弾性閉塞部材2、2は、図7(a)、(b)、図8(a)、(b)及び図9に示すように、それらの幅とほぼ同様の間隔をそれらの間にあけて前記不陸調整用胴縁1の凹部に配する。
前記固定用穴3、3…は、図7(a)、図8(a)、(b)、(e)、図9、図10及び図11(a)、(b)に示すように、前記不陸調整用胴縁1の前面板1aのそれぞれ各一対の弾性閉塞部材2、2の中央部付近に開口する。これらに挿入して背後の躯体壁面Wにねじ込むビス部材4、4…を十分な量のモルタル部材6で補強するために、各一対の弾性閉塞部材2、2の間隔は、前記のように、適切に設定してある。
また該固定用穴3、3…は、図8(a)〜(e)、図11(a)、(b)及び図12(a)、(b)に示すように、前記ビス部材4、4…の皿状の頭部を埋め込むことが可能なように、前面板1aの該固定穴3、3…の周囲に前面側から皿状に凹む凹所3aを構成したものである。実施例1と全く同様である。ビス部材4、4…の頭部形状がこれと異なる場合は、云うまでもなく、該固定用穴3、3…の周囲には、その前面側に異なる頭部形状に対応する凹所を形成しておくものとする。
前記ビス部材4、4…は、図10、図11(a)、(b)及び図12(a)、(b)に示すように、皿状の頭部と該頭部から延長する螺旋部とで構成した一般的なものであり、同図に示すように、前記不陸調整用胴縁1の前面板1aの外面側から前記固定穴3、3…を貫通して躯体壁面Wにねじ込み、該不陸調整用胴縁1を該躯体壁面Wに固定する手段である。実施例1のそれと全く同様である。
前記モルタル注入穴15、15…は、図7(b)、図8(a)、(b)、図9、図10及び図11(a)、(b)に示すように、前記不陸調整用胴縁1の取り付け状態で上側に位置する側板1bに、前面板1aに開口した各固定用穴3、3…に対応させて開口した、文字通り、流動性のモルタル部材6をこれを通じて注入するための穴である。
前記モルタル部材6は、図9、図10、図11(a)、(b)及び図12(a)、(b)に示すように、前記不陸調整用胴縁1の前面板1aの外面側から前記固定用穴3、3…を通じて前記躯体壁面Wにねじ込んだビス部材4、4…を埋め込む状態に、該躯体壁面W、該不陸調整用胴縁1の凹部側(前面板1a、両側板1b、1bで囲まれた空間)及び前記各一対の弾性閉塞部材2、2の各内側面の間に充填する部材であり、硬化して該ビス部材4、4…を補強するものである。
該モルタル部材6は流動状態に作成し、前記モルタル注入穴15、15…から注入し、以上のように、ビス部材4、4…をその中に埋め込み状態として補強するものであるが、その流動性は、該モルタル注入穴15、15…からスムーズに注入しうるとともに、躯体壁面Wと不陸調整用胴縁1の下方の側板1bとの間の隙間等から無用に流出しない程度のそれとすべきである。
従ってこの実施例2の内外装材取付用下地構造によれば、実施例1の場合と同様に、RC造の建物の躯体壁面Wと、該躯体壁面Wに不陸を調整しつつ取り付ける内外装材との間の間隔を最小限とすることができる。またその構成が極めて簡単で、それ故、躯体壁面Wへの組み付け工程も、以下に述べるように、非常に簡単に行えながら、極めて高い強度を確保することができる。
まず不陸調整用胴縁1を対象の建物の躯体壁面Wに不陸を調整しつつ取り付ける。該躯体壁面Wのうち、外部に最も突出する部分を見出し、これに該不陸調整用胴縁1の背後側、すなわち、凹部側を近接させ、かつ該不陸調整用胴縁1を水平状態に配する(この実施例2では、前記したように、不陸調整用胴縁1を横胴縁として用いる)。このとき、前記各一対の弾性閉塞部材2、2…は、その各々の位置する部位に対応する躯体壁面Wの不陸の状態により、大きく又は小さく圧縮されることにより、不陸を吸収し、該不陸調整用胴縁1の一定平面内の水平状態に障害を与えない。
この状態で、該不陸調整用胴縁1を固定すべく、図10、図11(a)、(b)及び図12(a)、(b)に示すように、前記固定用穴3、3…にビス部材4、4…を順次挿入し、かつ躯体壁面Wの対応する部位に予め開口しておいた下穴にその螺旋の先端側をねじ込む。同図に示すように、このとき、該ビス部材4、4…の皿状の頭部は、該固定用穴3、3…の周囲の凹所3a中に沈み込んだ状態になり、該不陸調整用胴縁1の前面板1aの前面側に突出するようなことはない。
この後は、流動状態の前記モルタル部材6を前記モルタル注入穴15、15…からそれぞれ充填する。該モルタル部材6は、特に図9、図10及び図11(a)、(b)に示すように、該モルタル注入穴15、15…から注入されると、各モルタル注入穴15、15…の下方は、該不陸調整用胴縁1の凹部を構成する前面板1aと上下の両側板1b、1b、両側に位置する各一対の弾性閉塞部材2、2…及び前記躯体壁面Wによって概ね囲まれた空間となっているため、その中に充填された状態となる。該モルタル部材6の流動性が高すぎると、一部が、該不陸調整用胴縁1の下側の側板1bと躯体壁面Wとの隙間等を通じて流出することもあるが、極端に流動性を高くしなければ、殆どの場合、僅かの流出で抑えることができる。このモルタル部材6の注入は、同図に示すように、概ねその上面が上側の側板1bの内面に一致する高さまでとする。これより僅かに低くても良いが、低すぎるのは、良くない。前記ビス部材4、4…の補強の観点からである。
このようにモルタル部材6を充填すると、ビス部材4、4…は、不陸調整用胴縁1と躯体壁面Wとの間に位置する部分がモルタル部材6に埋まった状態となり、該モルタル部材6が硬化することにより、非常に高い補強効果が得られる。ビス部材4、4…は、モルタル部材6を施さなかった場合に比較して10倍程度の曲げ強度の向上が認められる。従って、比較的細いビス部材4、4…を使用して十分に高い強度を確保することができる。
この後は、他の不陸調整用胴縁1、1…を、以上のように設置した不陸調整用胴縁1と面一になるように配して、それぞれ同様にビス部材4、4…を用いて躯体壁面Wに固定し、かつ同様にモルタル部材6を配して、ビス部材4、4…を補強する。こうして、躯体壁面Wの所要領域に不陸調整用胴縁1、1…を固設すれば、不陸の調整された内外装材取付用下地構造は完成である。
なお、以上においては、不陸調整用胴縁1を躯体壁面Wにビス部材4、4…を用いて固定した後、直ちにモルタル部材6をモルタル注入穴15、15…から注入する手順を採用したが、不陸調整用胴縁1、1…を所要領域の全部又は一部の範囲に設置固定した後に、纏めてモルタル部材6の注入作業を行う手順でも不都合ではない。この内外装材取付用下地構造は種々の合理的な手順で自由にこれを作成することができる。
このように躯体壁面Wに内外装材取付用下地構造を構成した後は、実施例1の場合と同様に、既存の種々の技法により又は新たな技法により石材や種々のタイル等の内外装材を取り付けることができる。
この実施例2の内外装材取付用下地構造によれば、前記のように、十分高い強度で不陸調整用胴縁1、1…を取り付けることができるものであり、内外装材としてかなり重量のあるものでも取り付け可能になる。また、該不陸調整用胴縁1、1…の外面と躯体壁面Wとの間の間隔をほぼ最小限としたものである。
本発明の内外装材取付用下地構造は、建材の製造業の分野及びこれを用いた建築等の分野で有効に利用することができる。
1 不陸調整用胴縁
1a 前面板
1b 側板
2 弾性閉塞部材
3 固定用穴
3a 凹所
4 ビス部材
5、15 モルタル注入穴
6 モルタル部材
W 躯体壁面

Claims (3)

  1. 前面板及びその両側の側板からなる端面視U字形で、その凹部側を躯体壁面に向け、かつ該躯体壁面に縦胴縁又は横胴縁として固定する不陸調整用胴縁と、
    前記不陸調整用胴縁の前面板に開口した複数の固定用穴であって、該不陸調整用胴縁を前記躯体壁面の前面に縦胴縁又は横胴縁として固定すべくその前面板の外面側から軸状結合部材を挿入しその内端を前記躯体壁面に固定するための固定用穴と、
    前記不陸調整用胴縁を前記躯体壁面の前面に縦胴縁又は横胴縁として固定すべくその前面板の外面側から前記固定用穴を通じて挿入し該躯体壁面にその内端を固定する軸状結合部材と、
    前記不陸調整用胴縁の凹部側に、該不陸調整用胴縁を縦胴縁として用いる場合は、前記各固定用穴の下方となる部位に位置させるべく、該不陸調整用胴縁を横胴縁として用いる場合は、前記各固定用穴の両側となる部位に位置させるべく、それぞれ配する、前記凹部の深さより厚さ寸法の大きいモルタル流出防止用及び不陸吸収用の弾性閉塞部材と、
    前記不陸調整用胴縁を縦胴縁として用いる場合は、該不陸調整用胴縁の直立状態で、その前面板及び両側板のうちの前記各固定用穴より上方に位置する部位に、前記不陸調整用胴縁を横胴縁として用いる場合は、該不陸調整用胴縁の水平状態で、その両側板のうちの前記各固定用穴より上方に位置する部位に、それぞれ開口したモルタル注入穴と、
    前記不陸調整用胴縁の前面板の外面側から前記固定用穴を通じて挿入し前記躯体壁面に内端を固定した軸状結合部材を埋め込む状態に、該躯体壁面、該不陸調整用胴縁の凹部側及び前記各1個又は2個の弾性閉塞部材の間に充填するモルタル部材と、
    で構成した内外装材取付用下地構造。
  2. 前記固定用穴の周囲に、該固定用穴に挿入する前記軸状結合部材の頭部が埋設状態となる凹所を構成した請求項1の内外装材取付用下地構造。
  3. 前記軸状結合部材として、アンカー又はビス部材を採用した請求項1又は2の内外装材取付用下地構造。
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