JP5635960B2 - 原子炉システム - Google Patents

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Description

本発明は原子炉システムに係り、特に、冷却材喪失事故時に崩壊熱を除去し、原子炉格納容器内の圧力上昇を抑制するための冷却設備をそなえているものに好適な原子炉システムに関する。
一般に、改良型沸騰水型原子力発電所における原子炉システムには、冷却材喪失事故時に崩壊熱を除去し、原子炉格納容器内の圧力上昇を抑制するための設備が備えられている。
主蒸気管破断で代表される冷却材喪失事故時には、原子炉圧力容器から原子炉格納容器内に放出された蒸気と、通常運転中に原子炉格納容器内を置換している不凝縮性気体は、ベント管を通して圧力抑制室内の圧力抑制プールに流入する。この時、圧力抑制プールに流入した不凝縮性気体は、圧力抑制プールの上方のウェットウェルに移動する。また、圧力抑制プールに流入した蒸気は、凝縮して圧力抑制プール内で熱エネルギーを放出することで、原子炉格納容器内の急激な圧力上昇を抑制している。
また、冷却材喪失事故時には、原子炉圧力容器への注水による炉心冷却や原子炉格納容器内への注水による除熱を目的とした緊急炉心冷却装置が作動する。改良型沸騰水型原子炉の緊急炉心冷却装置は、低圧注水系、高圧炉心注水系、原子炉隔離時冷却系及び自動減圧系で構成され、原子炉圧力容器に注水することで核燃料を長期に渡って冷却し燃料棒の損壊を防止している。
上述した低圧注水系、高圧炉心注水系及び原子炉隔離時冷却系は、ポンプ、ポンプ用の電源、注水用の水源である復水貯蔵タンク、隔離弁、隔離弁を操作するための制御用電源、配管などで構成されている。そのため、緊急炉心冷却装置の機能の内、崩壊熱除去(冷却)機能の動作には電気を必要とし、発生確率は非常に小さいが全電源喪失時には、これらの機器は使用できなくなる可能性がある。
そこで、電気を使用せず長期に渡り原子炉格納容器を冷却する技術として、原子炉格納容器壁の材質を鋼製とし、原子炉格納容器の外周部に冷却水プール(外周プール)を設け、炉心の崩壊熱で発生した蒸気をベント管から導いて圧力抑制プールで凝縮させ高温となった圧力抑制プールから、鋼製の原子炉格納容器壁を介して外周プールに放熱する技術が知られている(特許文献1参照)。
また、特許文献1に加えて、圧力抑制室の気相空間であるウェットウェルから鋼製の原子炉格納容器壁を介して自然通風により冷却する技術(特許文献2参照)や、原子炉格納容器全体を外部から空気を利用して冷却する技術も知られている(特許文献3〜5参照)。
また、熱交換器やブロアを原子炉格納容器内に設置し、それらを用いて原子炉格納容器の除熱を行う技術も知られている(特許文献6参照)。これは、原子炉格納容器内に熱交換器及びブロアを設置し、原子炉格納容器外に熱交換器の伝熱管へ水を供給するための水タンクや冷却水強制循環設備を準備し、熱交換器内の伝熱管内外で除熱を行うものである。水タンクについては原子炉格納容器より高い位置に設置することで重力を駆動力として、伝熱管内に水を供給することができるものである。
特開平1−91089号公報 特開平4−125495号公報 特開平6−59073号公報 特開平2−296196号公報 特開平5−87967号公報 特開2004−198118号公報
上述した特許文献1及び2では、原子炉格納容器壁を鋼製にすることで原子炉格納容器外部からの冷却が可能となる。しかし、ドライウェルの冷却に着目すると、原子炉格納容器壁は、ドライウェルの他に圧力抑制室内の圧力抑制プールとウェットウェルにも接しており、原子炉格納容器壁の全てがドライウェルの冷却に寄与していない。
また、特許文献3では、内張の鋼製ライナを設置したコンクリート製原子炉格納容器の外部に空気を流している。この場合、空気が接する原子炉格納容器壁の材質が熱伝導率の低いコンクリートのために、十分な冷却性能が得られない可能性がある(伝熱工学資料 改訂第5版(日本機械学会)より、例えば、珪岩質骨材コンクリートの熱伝導率は1.1W/mK(600K)、機械構造用炭素鋼S35Cは38.6W/mK(500K))。更に、冷却材喪失事故後に作動する熱発生安全装置により、原子炉格納容器外の空間内の空気を暖め上昇流を生じさせる必要がある。
また、特許文献4及び5では、鋼製の原子炉格納容器の外部(原子炉建屋と原子炉格納容器の間の空間)に空気を流して冷却しており、ドライウェルと接する原子炉格納容器壁は、原子炉格納容器の側面の一部と上部である。この場合、ドライウェルの冷却性能を更に向上させるには、原子炉格納容器内の内部構造に沿って空気流路を設ける必要がある。一方、矩形形状のコンクリート製原子炉格納容器に特許文献4及び5の内容を採用する場合には、原子炉格納容器外部から空冷することになり、特許文献3と同様の課題が残る。
また、特許文献6では、ドライウェルに熱交換器やブロアを設置するとともに、原子炉格納容器外にポンプや冷却プールを設置する必要がある。発生確率が非常に小さい全電源喪失時には、これらの機器は使用できなくなる可能性があると共に、プール水の水源も継続的に確保する必要がある。
本発明は上述の点に鑑みなされたもので、その目的とするところは、原子炉格納容器における冷却性能が向上することは勿論、全電源喪失時であっても、簡単な構成で電気を使用せずに原子炉格納容器の冷却を行うことができる原子炉システムを提供することにある。
本発明の原子炉システムは、上記目的を達成するために、炉心を内包する原子炉圧力容器と、該原子炉圧力容器を格納する原子炉格納容器と、該原子炉格納容器内に前記原子炉圧力容器を取り囲むように設置されたドライウェルと、前記原子炉格納容器の下部に設置され、該原子炉格納容器内の圧力上昇を抑制するための圧力抑制プールを保有する圧力抑制室と、前記ドライウェルと前記圧力抑制プールを連結するベント管とを備えた原子炉システムにおいて、前記ドライウェル内に、前記原子炉格納容器壁の一部である鋼製ライナと空気流路用構造物で形成される空気流路を設置し、該空気流路内を前記原子炉格納容器外から取り入れた空気が流れて前記原子炉格納容器外に排出されることを特徴とする。
また、前記空気流路は、前記ドライウェルを囲むように該ドライウェルの最外周に設置されていることを特徴とする。
また、前記ドライウェル内の垂直部の前記空気流路は環状流路、前記ドライウェル内のダイヤフラムフロア及び天丼に設ける空気流路は水平流路であり、かつ、それら環状流路と水平流路は連通していることを特徴とする。
また、前記空気流路用構造壁は、炭素鋼で形成されていることを特徴とする。
また、前記ドライウェル内のダイヤフラムフロア及び天井に設ける水平流路は、前記空気流路の出口に向かって上向きに傾斜していることを特徴とする。
また、前記空気流路の内側に補助流路若しくはフィンが設置されていることを特徴とする。
また、前記圧力抑制室に囲まれている部分に位置する前記ドライウェル内に垂直に配置されている前記空気流路の内側に、これをバイパスするように複数の配管から成る補助流路を設けると共に、その上方の幅広の前記ドライウェル内に垂直に配置されている空気流路の内側に、これをバイパスするように複数の配管から成る補助流路を設けたことを特徴とする。
また、前記ドライウェル内の前記空気流路に加えて、前記圧力抑制室内に空気流路を設けたことを特徴とする。
また、前記原子炉格納容器外から前記空気流路に空気を取り入れる空気流路入口配管と前記原子炉格納容器外に空気を排出する空気流路出口配管には、それぞれ空気流路入口用隔離弁及び空気流路出口用隔離弁が設けられていると共に、前記空気流路には圧力計、流量計、温度計或いは放射性物質測定計器を設け、かつ、それらの各測定計器の測定値に対応して空気流路入口用隔離弁及び空気流路出口用隔離弁が開閉されることを特徴とする。
また、前記空気流路の空気流路入口配管に空気流路気密漏洩検査弁を設けると共に、前記空気流路入口用隔離弁及び空気流路出口用隔離弁を閉止し、かつ、前記空気流路気密漏洩検査弁を開放した状態で、加圧装置により前記空気流路内を加圧して該空気流路の健全性を検査することを特徴とする。
また、前記原子炉格納容器の壁は、鉄筋コンクリートと内張の鋼製ライナで構成されていることを特徴とする。
本発明によれば、原子炉格納容器における冷却性能が向上することは勿論、全電源喪失時であっても、簡単な構成で電気を使用せずに原子炉格納容器の冷却を行うことができる。
本発明の原子炉システムの実施例1を示す断面図である。 図1のA−A矢視を示した図である。 図1のB−B矢視を示した図である。 図1のC−C矢視を示した図である。 図1のa部詳細を示した拡大断面図である。 本発明の原子炉システムの実施例2を示す断面図である。 本発明の原子炉システムの実施例3を示す断面図である。 図7のD−D矢視を示した図である。 本発明の原子炉システムの実施例4を示す断面図である。 図9のE−E矢視を示した図である。
以下、図示した実施例に基づいて本発明の原子炉システムを説明する。
図1乃至図5に本発明の原子炉システムの実施例1を示す。
図1に示すように、実施例1の原子炉システムは、炉心1を内包する原子炉圧力容器2と、原子炉圧力容器2を格納する原子炉格納容器4と、原子炉格納容器4内に原子炉圧力容器2を取り囲むように設置されたドライウェル3と、原子炉格納容器4の下部に設置され、この原子炉格納容器4内の圧力上昇を抑制するための圧力抑制プール6を保有する圧力抑制室5と、ドライウェル3と圧力抑制プール6を連通するベント管8とで概略構成されている。また、本実施例の原子炉格納容器4の壁は、図5に示すように、内張の鋼製ライナ4bと鉄筋コンクリート4aで構成されており、ここが圧力境界部となる。
そして、本実施例の特徴となる構成要素は、原子炉格納容器4を冷却する設備として、ドライウェル3内に、具体的にはドライウェル3を囲むようにドライウェル3の最外周に、空気流路10を設け、原子炉格納容器4外から空気流路10に空気を取り入れて空気流路10に空気を流し、その後、原子炉格納容器4外に空気を排出するようにしたことである。
このドライウェル3内の空気流路10は、図5に示すように、気密機能保持のために用いている原子炉格納容器4の内側に鉄筋コンクリート4aを介して設けられた内張の鋼製ライナ4bと空気流路用構造壁16で構成され、空気流路用構造壁16が支持構造材11で鋼製ライナ4bに複数ヶ所支持されることで、空気流路10が形成されている。尚、空気流路用構造壁16は、熱伝導率の高い材質(例えば、炭素鋼)を用いている。
また、図2及び図4に示すように、ドライウェル3内の垂直部の空気流路10は環状流路、ダイヤフラムフロア18や天井19などに設ける水平部の空気流路は、水平流路となっている。
尚、空気流路10である水平流路も環状流路と同様に、原子炉格納容器4壁の一部である内張の鋼製ライナ4bと類似した鋼製のライナ(図示せず)と空気流路用構造壁16で構成されている。
また、ドライウェル3内の空気流路10は、環状流路と水平流路を連通させたものであり、それら空気流路10の両端部は、原子炉格納容器4外に設ける空気流路入口配管12と空気流路出口配管13にそれぞれ接続されている。
通常運転時には、ドライウェル3内は常温であるため空気流路10に空気を流す必要が無いことから、原子炉格納容器4内外を隔離するために、空気流路入口配管12には空気流路入口用隔離弁14を、空気流路出口配管13には空気流路出口用隔離弁15を設けている。この空気流路入口用隔離弁14及び空気流路出口用隔離弁15は、電気(外部電源喪失時はバッテリ)や空気を駆動源として自動で開閉操作できる設備となっている。
また、空気流路10に設ける圧力計、流量計、温度計あるいは放射性物質測定計器などの計測機器による測定値に対応して、空気流路入口用隔離弁14及び空気流路出口用隔離弁15を開閉することができる設備となっている。更に、全電源喪失時に手動でも開閉操作できる構造となっている。
また、本実施例では、ドライウェル3内の空気流路10は、環状流路と水平流路を連通させているが、環状流路や水平流路を複数の配管に置き換えても、本実施例と同様の効果が得られるので問題は無いし、本実施例では、空気流路入口配管12や空気流路出口配管13は、複数設けているが、配管サイズを大きくすればそれぞれの配管は1本でも問題ない。
ところで、主蒸気配管9の破断で代表される冷却材喪失事故が起こると、事故初期には、主蒸気配管9からドライウェル3内に多量の蒸気が流出し、ドライウェル3内の温度及び圧力が上昇する。蒸気と不凝縮性気体(通常運転時にドライウェル3内の気体を置換している窒素ガスを含む)が充満したドライウェル3内の圧力は、ベント管8の開口部までの水深による水頭に打ち勝ち、蒸気と不凝縮性気体は圧力抑制プール6内に流入し、蒸気は凝縮され、原子炉格納容器4内の過度の圧力上昇を抑制する。その際、圧力抑制プール6水の温度は、蒸気凝縮により上昇する。不凝縮性気体は、圧力抑制プール6上方のウェットウェル7に移動する。
時間の経過と共にドライウェル3内の圧力が低下するため、ベント管8の開口部までの水深による水頭に打ち勝てなくなり、圧力抑制プール6への蒸気及び不凝縮性気体の流入量は徐々に減っていくことになる。その後、ドライウェル3内の圧力がベント管8の開口部までの水深による水頭より低くなるため、圧力抑制プール6への蒸気及び不凝縮性気体の流入は無くなり、ドライウェル3内の温度は高温状態で放置される。
本実施例では、ドライウェル3を囲むようにドライウェル3の最外周に空気流路10を設けて、この空気流路10に常温の空気を流しているので、熱伝導率の高い材質(例えば、炭素鋼)の空気流路用構造壁16を介してドライウェル3内の除熱が実現可能となる。
冷却材喪失事故時、空気流路入口配管12及び空気流路出口配管13に設けた空気流路入口隔離弁14と空気流路出口隔離弁15は、開放する設定にしておくか、或いは手動でも開放操作ができる隔離弁を設置しておく。この空気流路入口隔離弁14と空気流路出口隔離弁15を開放することで、ドライウェル3内の空気流路10と外気は、空気流路入口配管12及び空気流路出口配管13を介して連通することになる。
ドライウェル3内の温度が上昇すると、ドライウェル3内の高温の蒸気から熱伝達、熱伝導、熱伝達という形態で、空気流路用構造壁16を介して空気流路10内の空気に熱が伝わる。空気流路10内の空気が暖まると、空気の密度が小さくなり、暖まった空気は空気流路出口配管13に向かって上昇する。空気流路入口隔離弁14が開放していることから、空気の上昇に伴い、空気流路入口配管12から空気流路10内に空気が吸い込まれていく。
一方、空気流路出口隔離弁15も開放していることから、空気の上昇に伴い、空気流路出口配管13から空気が排出されていく。空気流路10内は常温の空気が流れ込むため、ドライウェル3内の温度と空気流路10内の空気の温度に差が生じている限り、前記の作用は継続的に行われる。このため、全電源喪失時であっても、簡単な構成で電気を使用せずに、原子炉格納容器4内の冷却性能を向上させることができる。
また、図1に示すように、空気流路10内の圧力を測定するため、圧力計22を設けている。例えば、ドライウェル3を除熱中に空気流路10が損傷(例えば、空気流路10が破断)した場合、ほぼ大気圧に近い空気流路10内の圧力が急激に上昇するため、上記した圧力計22で異常を検知し、その検知信号により空気流路入口用隔離弁14と空気流路出口用隔離弁15を閉止するようにしている。従って、空気流路10が損傷したとしても、原子炉格納容器4の外部への影響は殆ど無い。
尚、図1では圧力計22により空気流路10内の異常を検知しているが、流量計、温度計あるいは放射性物質測定計器などの計測機器を単独で使用しても組み合わせて使用しても同様の効果が得られる。それぞれの異常事象は、流量計であれば空気流路を流れる空気流量が増加すること、温度計であれば空気流路内の温度が上昇すること、放射性物質測定計器であれば空気流路内の放射性物質の飛散量が増加することである。
また、改良型沸騰水型原子炉の定期検査時には、原子炉格納容器4の気密漏洩検査を実施している。従来の原子炉格納容器4では、原子炉格納容器4の全体を加圧して、気密機能を保持するために使用している内張の鋼製ライナ4bの健全性確認及び原子炉格納容器4の貫通部からの漏洩検査を実施している。
これに対して、本実施例の原子炉格納容器4では、ドライウェル3内の空気流路10は、原子炉格納容器4の一部である鋼製ライナ4bと空気流路用構造壁16で構成しているが、改良型沸騰水型原子炉の定期検査時には、先ず空気流路入口配管12及び空気流路出口配管13に設けられている空気流路入口用隔離弁14及び空気流路出口用隔離弁15を閉止し、空気流路入口配管12から分岐した配管に設けられている空気流路気密漏洩検査用弁20を開放する。そして、気密漏洩検査時には、空気流路気密漏洩検査用弁20の先端に設けられている気密漏洩検査用加圧装置21により空気流路10内を加圧して、空気流路10の健全性、つまり原子炉格納容器4の健全性及び原子炉格納容器4の貫通部からの漏洩検査を実施している。
これにより、従来から行っていた気密漏洩検査時に、ドライウェル3と圧力抑制室5を含む原子炉格納容器4の全体を加圧していた作業が軽減され、ドライウェル3内の空気流路10と圧力抑制室5の2区分を加圧すれば良く、気密漏洩の検査作業の簡素化、検査時間の短縮に繋がり、作業効率の向上となる。
尚、空気流路気密漏洩検査用弁20は常設にしておく必要があるが、気密漏洩検査用加圧装置21は常設では無く、可搬式として後から設置する形でも問題は無い。また、本実施例では、コンクリート製の原子炉格納容器4のドライウェル3内に空気流路10を設けているが、鋼製の原子炉格納容器に空気流路を設けても問題は無い。
本発明の原子炉システムの実施例2を図6に示す。該図に示す本実施例の特徴は、空気流路10の水平部10a〜10cを、空気流路出口に向かって上向きに傾斜を設けたことである。
例えば、ダイヤフラムフロア18に設けた空気流路10の水平部10bでは、ドライウェル3内の熱は、ドライウェル3から空気流路10の水平部10bの壁を介して除熱される。
通常、空気流路入口配管12から空気流路出口配管13に向かって空気は流れるが、空気流路10の水平部10bでは、空気流路10の上方の空気のみが暖められ、空気流路10の上方位置に高温の空気が停滞することが考えられる。高温の空気が停滞すると、空気流路10の水平部10bにおいて、ドライウェル3内と空気流路10内の気体(高温の空気)との温度差が小さくなり除熱性能が悪くなる。
そこで、本実施例のように、空気流路10の水平部10bを空気流路出口に向かって上向きに傾斜を設けることによって、空気流路10の壁を介して暖められた高温の空気が空気流路10の途中で停滞することなく、空気流路出口配管13の方向に流れやすくなり、空気流路の水平部10a〜10cの除熱性能を向上させることができる。
このような本実施例の構成としても、実施例1と同様な効果を得ることができる。
本発明の原子炉システムの実施例3を図7及び図8に示す。該図に示す本実施例の特徴は、図1の実施例1の構成に加えて、ドライウェル3内の空気流路10の内側に補助流路17a、17bを設けたことである。
即ち、本実施例では、圧力抑制室5に囲まれている部分に位置するドライウェル3内に垂直に配置されている空気流路10に、これをバイパスするように複数の配管から成る補助流路17aを設けると共に、その上方の幅広のドライウェル3内に垂直に配置されている空気流路10に、これをバイパスするように複数の配管から成る補助流路17bを設けたものである。
このような本実施例のように構成することにより、図1の実施例1の効果に加えて、本実施例では、補助流路17a、17bを追加することにより、ドライウェル3内を除熱するための伝熱面積が増加し、更に、ドライウェル3の除熱性能が向上する。
尚、図7及び図8では、補助流路17a、17bを複数の配管で構成しているが、空気流路用構造壁16の内外にフィンを設けることでも同様の効果が得られる。
本発明の原子炉システムの実施例4を図9及び図10に示す。該図に示す本実施例の特徴は、図1の実施例1の特徴であるドライウェル3内の空気流路10に加えて、圧力抑制室5内にも空気流路10を設けたことである。
ドライウェル3内の空気流路10では、図1の実施例と同様に、空気流路用構造壁16を介してドライウェル3内の除熱が実現可能となる。冷却材喪失事故時、ドライウェル3内の蒸気がベント管8を通して圧力抑制プール6に流入し、蒸気が凝縮することによって圧力抑制プール6水の温度が上昇するが、本実施例のように、圧力抑制室5内にも空気流路10を設けることで、高温となった圧力抑制プール6水と空気流路10内の常温の空気との温度差によって圧力抑制プール6の除熱ができ、圧力抑制プール6の水の温度上昇を抑制できる。
更に、ウェットウェル7内では、不凝縮性気体とともに蒸気も混合しているが、圧力抑制プール6での作用と同様に、ウェットウェル7内の高温の蒸気と空気流路10内の常温の空気との温度差によって、ウェットウェル7内の除熱が実現可能となる。
このような本実施例の構成としても、実施例1と同様な効果を得ることができることは勿論、これに加え、上記のような効果を得ることができる。
尚、上述した実施例1乃至4では、ドライウェル3に接する領域のみ空気流路10を形成するため、気密漏洩検査は原子炉格納容器4の全体では無く部分的ではあるが、ドライウェル3部分に関しては空気流路10を利用して気密漏洩検査を実現でき、検査作業の効率向上となる。
更に、各実施例の原子炉格納容器4では、ドライウェル3及び圧力抑制室5内の空気流路10は、原子炉格納容器4の一部である鋼製ライナ4bと空気流路用構造壁16で構成しているが、原子炉格納容器4の気密漏洩検査時には、図1と同様な方法で空気流路10内を加圧して、空気流路10の健全性、つまり原子炉格納容器4の健全性及び原子炉格納容器4の貫通部からの漏洩検査を実施することができる。
これにより、従来から行っていた気密漏洩検査時に原子炉格納容器4全体を加圧していた作業が無くなり、空気流路10のみを加圧すれば良く、気密漏洩の検査時間の短縮に繋がり、作業効率向上となる。
1…炉心、2…原子炉圧力容器、3…ドライウェル、4…原子炉格納容器、4a…鉄筋コンクリート、4b…鋼製ライナ、5…圧力抑制室、6…圧力抑制プール、7…ウェットウェル、8…ベント管、9…主蒸気配管、10…空気流路、10a〜10c…空気流路の水平部、11…支持構造材、12…空気流路入口配管、13…空気流路出口配管、14…空気流路入口用隔離弁、15…空気流路出口用隔離弁、16…空気流路用構造壁、17a、17b…補助流路、18…ダイヤフラムフロア、19…天井、20…空気流路気密漏洩検査用弁、21…気密漏洩検査用加圧装置、22…圧力計。

Claims (11)

  1. 炉心を内包する原子炉圧力容器と、該原子炉圧力容器を格納する原子炉格納容器と、該原子炉格納容器内に前記原子炉圧力容器を取り囲むように設置されたドライウェルと、前記原子炉格納容器の下部に設置され、該原子炉格納容器内の圧力上昇を抑制するための圧力抑制プールを保有する圧力抑制室と、前記ドライウェルと前記圧力抑制プールを連結するベント管とを備えた原子炉システムにおいて、
    前記ドライウェル内に、前記原子炉格納容器壁の一部である鋼製ライナと空気流路用構造壁で形成される空気流路を設置し、該空気流路内を前記原子炉格納容器外から取り入れた空気が流れて前記原子炉格納容器外に排出されることを特徴とする原子炉システム。
  2. 請求項1に記載の原子炉システムにおいて、
    前記空気流路は、前記ドライウェルを囲むように該ドライウェルの最外周に設置されていることを特徴とする原子炉システム。
  3. 請求項1又は2に記載の原子炉システムにおいて、
    記ドライウェル内の垂直部の前記空気流路は環状流路、前記ドライウェル内のダイヤフラムフロア及び天井に設ける空気流路は水平流路であり、かつ、それら環状流路と水平流路は連通していることを特徴とする原子炉システム。
  4. 請求項1乃至3のいずれか1項に記載の原子炉システムにおいて、
    前記空気流路用構造壁は、炭素鋼で形成されていることを特徴とする原子炉システム。
  5. 請求項3又は4に記載の原子炉システムにおいて、
    前記ドライウェル内のダイヤフラムフロア及び天井に設ける水平流路は、前記空気流路の出口に向かって上向きに傾斜していることを特徴とする原子炉システム。
  6. 請求項1乃至5のいずれか1項に記載の原子炉システムにおいて、
    前記空気流路の内側に補助流路若しくはフィンが設置されていることを特徴とする原子炉システム。
  7. 請求項1乃至5のいずれか1項に記載の原子炉システムにおいて、
    前記圧力抑制室に囲まれている部分に位置する前記ドライウェル内に垂直に配置されている前記空気流路の内側に、これをバイパスするように複数の配管から成る補助流路を設けると共に、その上方の幅広の前記ドライウェル内に垂直に配置されている空気流路の内側に、これをバイパスするように複数の配管から成る補助流路を設けたことを特徴とする原子炉システム。
  8. 請求項1乃至7のいずれか1項に記載の原子炉システムにおいて、
    前記ドライウェル内の前記空気流路に加えて、前記圧力抑制室内に空気流路を設けたことを特徴とする原子炉システム。
  9. 請求項1乃至8のいずれか1項に記載の原子炉システムにおいて、
    前記原子炉格納容器外から前記空気流路に空気を取り入れる空気流路入口配管と前記原子炉格納容器外に空気を排出する空気流路出口配管には、それぞれ空気流路入口用隔離弁及び空気流路出口用隔離弁が設けられていると共に、前記空気流路には圧力計、流量計、温度計或いは放射性物質測定計器を設け、かつ、それらの各測定計器の測定値に対応して空気流路入口用隔離弁及び空気流路出口用隔離弁が開閉されることを特徴とする原子炉システム。
  10. 請求項9に記載の原子炉システムにおいて、
    前記空気流路の空気流路入口配管に空気流路気密漏洩検査弁を設けると共に、前記空気流路入口用隔離弁及び空気流路出口用隔離弁を閉止し、かつ、前記空気流路気密漏洩検査弁を開放した状態で、加圧装置により前記空気流路内を加圧して該空気流路の健全性を検査することを特徴とする原子炉システム。
  11. 請求項1乃至10のいずれか1項に記載の原子炉システムにおいて、
    前記原子炉格納容器の壁は、鉄筋コンクリートと内張の鋼製ライナで構成されていることを特徴とする原子炉システム。
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