JP5635207B1 - 電磁アクチュエータ - Google Patents

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Abstract

【課題】高いリニア特性で動作し、高再現性等を実現し、かつ共振を抑えた高性能な電磁アクチュエータを提供する。【解決手段】本発明の電磁アクチュエータ1は、ボビン6の外周にコイル5が巻装された電磁コイル2と、電磁コイル2のボビン6内部に固定された磁性体からなる固定鉄心3と、電磁コイル2への通電時に発生する電磁吸引力により固定鉄心3に吸引される磁性体からなる可動鉄心4と、可動鉄心4の軸心上部に連結された非磁性体からなるシャフト11と、シャフト11に連結された可動鉄心4を電磁吸引力に抗して押圧する押し戻し専用ばね14と、シャフト11の軸体11aに内縁部15aが固定され、その外縁部15bが固定側部材に固定されてシャフト11を固定側部材に非接触で浮上支持する上部板ばね15と、可動鉄心4の軸心下部に内縁部16aが固定され、その外縁部16bが固定側部材に固定されて可動鉄心4を固定側部材に非接触で浮上支持する下部板ばね16とを備え、上部板ばね15と下部板ばね16が電磁コイル2を挟んだ上下に配置されている。【選択図】図1

Description

本発明は、電磁吸引力により駆動する比例電磁弁の駆動機構に適用可能な電磁アクチュエータに関する。
従来、一般的な比例電磁弁は、弁体を駆動するシャフト部分に必ず摺動する摺動部を必要としている。ところが、この摺動部は、長期の使用による摺動摩耗が原因で最も早く寿命に至る部位であり、最終的には動作不良に至ることもある。このため、比例電磁弁の構造において、いかにして摺動する部位をなくすことができるかが課題となっている。
このような課題を解決するための手法として、例えば特許文献1に記載されているフラットスプリングを利用した比例ソレノイド制御バルブが知られている。この制御バルブは、ハウジングの内側段差部分とプランジャの外側段差部分に押圧されたフラットスプリングによって、プランジャを浮上支持する構造になっている。しかし、この構造によると、プランジャの下端側しか支持されておらず、一枚のフラットスプリングによってプランジャを支持する機能と弁閉方向にばね付勢する機能の両機能を同時に発揮させようとしている。このため、強いばね力を付与するにはフラットスプリングについて、十分な板厚が必要になり、板厚を厚くすると表面応力が増大し、ばねの耐久性が低下するため、プランジャの駆動ストロークを短く設定せざるを得なくなる。したがって、一般的な電磁弁のようにON/OFFするだけの用途には適しているが、弁開度を精密に調節する比例電磁弁の用途としては駆動ストロークが足りないため不適切である。また、プランジャの外周を囲むように円筒状のプランジャハウジングが設けられており、プランジャをフラットスプリングで支持していても、結局は駆動時にプランジャとプランジャハウジングとが摺動してしまう構造になっている。
特開2005−249191号公報
本発明はこのような問題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、駆動時に摺動する部分をなくして高再現性と長寿命化を図ることができ、かつ、比例電磁弁の駆動機構として好適な、高い比例制御特性を備えた高性能な電磁アクチュエータを提供することにある。
前記の目的を達成するため、本発明の電磁アクチュエータは、ボビンの外周にコイルが巻装された電磁コイルと、前記電磁コイルのボビン内部に固定された磁性体からなる固定鉄心と、前記電磁コイルへの通電時に発生する電磁吸引力により前記固定鉄心に吸引される磁性体からなる可動鉄心と、前記可動鉄心の軸心上部に連結された非磁性体からなるシャフトと、前記シャフトに連結された可動鉄心を前記電磁吸引力に抗して押圧する押し戻し専用ばねと、前記シャフトの軸体に内縁部が固定されており、その外縁部が固定側部材に固定されて前記シャフトを前記固定側部材に非接触で浮上支持する上部板ばねと、前記可動鉄心の軸心下部に内縁部が固定されており、その外縁部が固定側部材に固定されて前記可動鉄心を前記固定側部材に非接触で浮上支持する下部板ばねと、前記シャフトの軸体外周を包囲し、前記軸体の動作方向に対して垂直方向の磁界を与えて発生する渦電流により前記可動鉄心及び前記シャフトの共振を減衰させる非接触式の渦電流ダンパーと、を備え、前記上部板ばねと前記下部板ばねが前記電磁コイルを挟んだ上下に配置されていることを特徴とする。
本発明の電磁アクチュエータによれば、上下の板ばねは可動鉄心を浮上支持する機能に特化させたことにより、駆動時に可動鉄心が固定側部品に一切触れず、擦れて摩耗することがなく、エネルギーロスがない。また、可動鉄心を押し戻す機能は押し戻し専用ばねが担うことにより、板ばねの板厚を薄くすることができ、可動鉄心の駆動ストロークを長く確保することができる。したがって、高い比例制御特性で動作し、高分解能、高速応答、低ヒステリシス、及び高再現性を実現し、かつ、共振を抑えた高性能な電磁アクチュエータを提供することができる。
本発明に係る電磁アクチュエータの全体構造を示す断面図である。 板ばねの形状を示す平面図である。 下部板ばねの固定構造を示す断面図である。 共振周波数と駆動電流との関係を示すグラフ図である。 固定鉄心と可動鉄心の対向面がテーパー形状の場合の磁気通路を示す説明図である。 固定鉄心と可動鉄心の対向面がフラット形状の場合の磁気通路を示す説明図である。 テーパー形状とフラット形状の電磁吸引力特性を比較したグラフ図である。 渦電流ダンパーの構造と磁界の流れを示す説明図である。 内側マグネットと外側マグネットの形状を示す斜視図である。 一般的なマグネットの形状と着磁方向を示す斜視図である。 本発明におけるマグネットの製造方法を示す説明図で、(a)はマグネットを分割した状態を示す図、(b)は着磁方向を示す図、(c)は円筒2分割を示す図、(d)は円筒4分割を示す図、(e)は円筒6分割を示す図、(f)は理想の状態を示す図である。 本発明に係る電磁アクチュエータの内部構造を示す断面図で、(a)は図1のA−A断面図、(b)は渦電流ダンパー付近の断面図である。 本発明に係る電磁アクチュエータを比例電磁弁の弁体駆動機構に適用した例を示す断面図で、全閉の状態を示す図である。 本発明に係る電磁アクチュエータを比例電磁弁の弁体駆動機構に適用した例を示す断面図で、全開の状態を示す図である。 本発明に係る電磁アクチュエータを比例電磁弁の弁体駆動機構に適用した例を示す断面図で、中間開度の状態を示す図である。
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら説明する。
図1に示すように、本実施形態の電磁アクチュエータ1は、例えば比例電磁弁の弁体駆動機構のように、電磁吸引力に比例して全開、全閉、及び中間開度にリニア制御可能な直線往復運動を行う駆動機構であって、電磁コイル2と、固定鉄心3と、可動鉄心4を備えて大略構成されている。
電磁コイル2は、リード線に接続されたコイル5をボビン6の外周に巻装した電磁石であり、鉄等の磁性体からなるコイルケース7に収容されている。電磁コイル2には、図示しない外部の制御装置からリード線を介してコイル5へと駆動電流が供給される。
固定鉄心3は、電磁ステンレス等の磁性体からなり、ボビン6の内部に挿入され、コイルケース7と非磁性体の連結ネック8とに挟まれて固定されている。コイルケース7と連結ネック8との間にはガタつき防止用のばね片9が設けられている。このばね片9を設けた理由は、両者の間にガタつきがあると電磁コイル2の磁気回路特性に変化が生じる恐れがあるからである。
可動鉄心4は、電磁ステンレス等の磁性体からなり、電磁コイル2への通電時に発生する電磁吸引力によって固定鉄心3に吸引され、ボビン6の内部に装着された非磁性体のガイドパイプ10に沿って昇降自在に設置されている。可動鉄心4の軸心上部には非磁性体からなるシャフト11が同軸上に連結されている。シャフト11を非磁性体にした理由は、磁性体にするとコイルケース7の外部に漏れ磁界が流れてしまうからである。
また、可動鉄心4とシャフト11の連結部分には、シャフト11の外周に突出したストッパー12が設けられている。このストッパー12は、可動鉄心4が上昇した時に固定鉄心3に完全に張り付くのを防止し、可動鉄心4と固定鉄心3とが至近距離にならないようにして可動鉄心4が下降する時に固定鉄心3から離れやすくするためのものである。また、ストッパー12が磁性体であるとストッパー12を経由して磁界が流れてしまい張り付きやすくなるため、非磁性体のシャフト11と一体成形して磁気通路を遮断するようにしてある。
この固定鉄心3と可動鉄心4との間には、固定鉄心3の内側に設けられたホルダー13に、コイルスプリング等からなる押し戻し専用ばね14が収容されている。押し戻し専用ばね14は、シャフト11に連結された可動鉄心4を電磁吸引力に抗して押し戻すためのもので、そのばね付勢力によってストッパー12を垂直下向きに常時押圧している。この押し戻し専用ばね14の形態はコイルスプリングに限られず、例えば皿ばねを複数段に重ねたものなど、スプリングとして機能するものであればどのようなタイプのものであっても良い。
また、本実施形態では押し戻し専用ばね14とは別に、その上下に一枚ずつ独立した板ばね15,16を設置することにより、シャフト11に連結された可動鉄心4を完全に浮上支持する構造を採用している。すなわち、押し戻し専用ばね14の上方に設けられた上部板ばね15は、ステンレス製等のばね鋼板を図2に示すようなS字に波打たせた円形状のフラットスプリングからなり、内縁部15aがシャフト11の軸体11aに固定され、外縁部15bが固定側部材に固定されてシャフト11を支持している。一方、押し戻し専用ばね14の下方に設けられた下部板ばね16は、上部板ばね15と全く同じ形状のフラットスプリングからなり、内縁部16aが可動鉄心4の軸心下部に固定され、外縁部16bが固定側部材に固定されて可動鉄心4を支持している。なお、上部板ばね15と下部板ばね16の素材はステンレス製等の金属に限られない。
ここで、これら板ばね15,16の固定構造について詳しく説明する。図3に示すように下部板ばね16の場合、可動鉄心4の軸心下部に凸部4aが設けられており、この凸部4aを下部板ばね16の取付孔16cに嵌めた後、これと嵌合する凹部17aが設けられた軸部17を圧入することにより、下部板ばね16の内縁部16aが固定されている。これに対し、下部板ばね16の外縁部16bには、その表裏面にPTFE等の樹脂やゴム製の緩衝材18,18が設けられており、固定側部材である金属製のベース19の上に、緩衝材18,18で挟んだ下部板ばね16を載せ、その上から固定リング20で挟み込むことにより、ベース19とガイドパイプ10の間に下部板ばね16の外縁部16bが固定されている。
このように上下の板ばね15,16の嵌合接触部位に緩衝材18を設けた理由は、加工面にゆがみ、バリ、異物などがあると、板ばね15,16の座りが不安定になり本来のばね機能を果たせなくなるが、この緩衝材18を介在させることによってこれらの悪影響を包み込んで吸収し、板ばね15,16の品質を安定させるためである。なお、下部板ばね16の内縁部16aの固定については、接触面積が小さく影響が少ないと考えられることから、緩衝材18を設けなくても良い。
また、本実施形態において、ガイドパイプ10とベース19の間には、固定リング20の上からテンションを付与するために、ばね片やOリング等からなるテンションばね21が設置されている。このテンションばね21を設置した理由は、緩衝材18が樹脂やゴムであり、長期の使用によりクリープや永久歪み等の変形によるガタつきが必ず発生するので、緩衝材18が正常に機能するように別部材で常にテンションを付与し、長期にわたって安定したばね機能を発揮させるためである。
なお、上部板ばね15の固定構造について詳しい説明は省略するが、図1に示すように上部板ばね15の内縁部15aはシャフト11と後述の渦電流発生体26との間に圧入して固定されており、外縁部15bは緩衝材18,18を介して連結ネック8と固定リング22との間に挟み込んで固定されている。
以上のように構成された電磁アクチュエータ1を駆動する場合、図示しない外部の制御装置からリード線を介して電磁コイル2に通電し、コイル5に駆動電流を供給する。ここで、電磁コイル2への通電は、一般的な定電圧PWM制御によると温度変化に伴ってコイル抵抗が変化し、電流値が変動することで再現性が悪くなってしまう。そこで、本実施形態では電磁コイル2への通電は、ディザ波形を加えた定電流制御(詳しくは特許第4169780号公報を参照)とすることにより、静止摩擦力の影響や電磁気的ヒステリシスを取り除き、停止位置の温度ドリフトを防ぐことで高い再現性が得られる。また、図4に示すように、動作として共振周波数の傾斜角度αよりも小さくなるようにコイル5に流す電流の立ち上がり傾斜角度βを制限する(速度リミッターを設ける)ことにより、電磁コイル2への通電による共振が抑制され、振動を緩和することができるとともに、急激な全閉時の衝撃によって発生する変形を同時に防ぐことができる。
このように電磁コイル2に通電してコイル5へと駆動電流を供給すると、コイル5の内部が磁化され、図5に矢印で示すように磁性体である固定鉄心3からコイルケース7を経由して可動鉄心4へと流れる磁気通路が形成される。このとき、固定鉄心3と可動鉄心4の間には駆動電流に比例した電磁吸引力が発生し、この電磁吸引力によって、可動鉄心4が固定鉄心3に引き寄せられ、コイルスプリングからなる押し戻し専用ばね14を圧縮しながらガイドパイプ10に沿って上昇する。ただし、可動鉄心4はガイドパイプ10には接触していない。そして、固定鉄心3の電磁吸引力と押し戻し専用ばね14のばね付勢力とが釣り合った平衡位置で可動鉄心4が停止する。
一方、コイル5への駆動電流の供給を停止すると、固定鉄心3と可動鉄心4の間に生じていた電磁吸引力がなくなり、可動鉄心4が押し戻し専用ばね14の付勢力によって押し下げられる。これにより、可動鉄心4がガイドパイプ10に沿って下降し、初期の中立位置で停止する。このように、可動鉄心4は固定鉄心3の電磁吸引力となる磁束密度によって移動量が決まり、磁束密度は電磁コイル2に流れる駆動電流の電流値に比例する。したがって、この電磁アクチュエータ1によれば、電磁コイル2に供給される駆動電流に比例して可動鉄心4の移動量が調節され、これにより可動鉄心4の位置をリニアに制御することができる。
また、図6に示すように、固定鉄心3と可動鉄心4の対向面がフラットな一般的形状の場合、可動鉄心4から固定鉄心3へと流れる磁気通路が広いため(図6の破線で囲んだ部分を参照)、図7のAで示す範囲では急激に電磁吸引力が変化し、可動鉄心4が固定鉄心3に張り付くと離れにくくなる。このため、図7に破線で示すように直線性が悪く、電磁吸引力特性がリニアでなく、駆動ストロークが短くなってしまう。したがって、例えば比例電磁弁のように全開や全閉だけでなく、中間開度で停止するような比例制御を行う用途に適したものとならない。
これに対し、本実施形態の電磁アクチュエータ1の場合、図5に示すように固定鉄心3と可動鉄心4の対向面をそれぞれ傾斜面とし、固定鉄心3と可動鉄心4の互いに接近する部位がテーパー形状に成形されている。この傾斜面の傾斜角度は特に限定されないが、約2°程度が望ましい。また、可動鉄心4とシャフト11の連結部分に非磁性体からなるストッパー12が設けられており、可動鉄心4が固定鉄心3に完全に密着することがなく、可動鉄心4から固定鉄心3へと流れる磁気通路が狭くなっている(図5の破線で囲んだ部分を参照)。したがって、図7に実線で示すように直線性が良く、電磁吸引力特性が高いリニア性を有しており、比例制御する用途に適したものとなる。また、可動鉄心4が固定鉄心3から離れやすくなり、電磁吸引力に応じた駆動ストロークを十分に確保することができる。
また、本実施形態の電磁アクチュエータ1によれば、フラットスプリングからなる上部板ばね15と下部板ばね16は、シャフト11に連結された可動鉄心4を完全に浮上支持する機能に特化させてある。これにより、従来のフラットスプリングのようないわゆる片持ち支持とは異なり、駆動時に可動鉄心4がガイドパイプ10等の固定側部品に一切触れず、擦れて摩耗することがないため、エネルギーロスがなく、可動鉄心4を安定して再現性良く駆動させることができる。
また、可動鉄心4を押し戻す機能はフラットスプリングとは別のコイルスプリングからなる押し戻し専用ばね14に任せることにより、フラットスプリングの板厚を薄くすることができ、可動鉄心4の駆動ストロークも3mm程度(通常は1mm程度)と長く確保することができる。したがって、従来のように擦れる加工面同士のザラツキ等による再現性の悪さから脱却でき、高分解能を常に維持することができる。なお、この電磁アクチュエータ1の寿命は押し戻し専用ばね14と上部板ばね15と下部板ばね16の3つの弾性部材に起因するため、弾性変形領域の応力範囲内であれば半永久的に長持ちし、耐久性も大幅に向上させることができる。
ところで、本実施形態の電磁アクチュエータ1によると、前記のように上下の板ばね15,16によって可動鉄心4とシャフト11が完全に浮上支持されていることから、可動側部材と固定側部材との間にほとんど摩擦抵抗がない。このような摩擦抵抗がないアクチュエータほどエネルギーロスがないため理想的なアクチュエータといえるが、ロスがないことで逆に振動しやすく、共振しやすい傾向となる。そこで、共振を抑えるために粘性を与える必要があるが、非接触で粘性を与えなければ摩擦抵抗をなくした意味がなく、その手段としては電気粘性とメカ粘性のいずれかの方法が考えられる。
電気粘性とは、センサ等で可動鉄心4の位置を検出し、コイル5に流れる電流を制御して可動鉄心4の動作を強制的に鈍くする方法である。しかし、共振周波数が高い場合には制御の応答が間に合わず、また、停電してしまった場合などは共振を抑えることができないため、このような電気粘性を採用するのは難しい。一方、メカ粘性とは、一般的にはオイルダンパーのような粘性流体によって流路を絞り、可動鉄心4が急激に動かないようにその動作を鈍くする方法である。この方法によるとシール部がまた必要となり、ゴムを使用した粘性も考えられるが、耐久性に難点があり、長期にわたって効果を得ることは難しい。ただし、電気粘性に比べれば、電気を一切使用しないため安全であるといえる。
そこで、本実施形態では、非接触でメカ粘性を与える方法として渦電流ダンパー23を採用した。図1に示すように、この渦電流ダンパー23はシャフト11の軸体11a外周を包囲し、電磁誘導効果によって生じる渦電流を利用して可動鉄心4とシャフト11の共振を減衰させる非接触式のダンパーであって、図8に示すようにマグネット24と、ヨーク25と、渦電流発生体26とから構成されている。
マグネット24は、強い渦電流を発生させるために、ネオジム磁石のように表面磁力が3000G以上の強力な磁石からなり、その形状は図9に示すような内外二重の円筒状に成形されている。また、円筒状の内側マグネット24Aと外側マグネット24Bは、それぞれ円周方向に沿って複数個に分割された分割マグネットにより構成されており、各々の分割マグネットはすべて外周側がN極、内周側がS極となるように径方向に着磁されている。
ここで、本実施形態のマグネット24の製造方法について説明する。図10に示すように、通常のマグネットは円筒状に成形して焼き固め、その後、着磁を行う方法が一般的である。このため、磁力の強いネオジム磁石で異方性マグネットを製造する際には、円筒状の形態で着磁したい方向へ磁場を与える必要があるが、専用の設備が必要となり、大幅なコストアップになる問題がある。
そこで、本実施形態では、図11(a)に示すように円筒を4分割した形状の分割マグネットを成形して焼き固め、その後、各々の分割マグネットを着磁してから結合する方法を採用している。このような円筒を分割した形状であれば、分割した各々のマグネットに対し、図11(b)に示す一般的な上下着磁を行えるため、既存の着磁器を使用して小ロット、低価格で、容易に製造することが可能になる。ただし、複数個の分割マグネットを結合する際に、各々の分割マグネットは円弧面に対して垂直方向に着磁されることから、結合して円筒状にした場合の磁力方向はすべてが中心に向いているわけではない。例えば、図11(c)に示す円筒2分割のマグネットを結合した場合には、磁力が互いに反発し合うので好ましくない。したがって、図11(d)に示す円筒4分割や、図11(e)に示す円筒6分割のように、できる限り分割数を増やした方が、図11(f)に示す円筒状の形態で着磁したときの理想の状態に近くなり、渦電流発生体26へ磁力線が垂直に当たるので好ましい。
このように製造されたマグネット24に対し、図8に示すように、純鉄などの飽和磁束密度の高い材料からなるヨーク25が、内側マグネット24Aの内壁と外側マグネット24Bの外壁を連結するように取り付けられている。また、内側マグネット24Aと外側マグネット24Bの間に形成された隙間には、アルミニウムや銅などの高導電率材料からなる円筒状の渦電流発生体26が挿入されており、この渦電流発生体26は図1に示すようにシャフト11との圧入によって軸体11a外周に一体に取り付けられている。また、内側マグネット24Aの外壁には、図12に示すように非磁性体からなる強制リング27が設けられており、磁石同士の反発によって内側マグネット24Aが外側に飛び出してしまうのを防いでいる。なお、外側マグネット24Bについては、飛び出す方向である外側にヨーク25が取り付けられており、ヨーク25が外側マグネット24Bの飛び出しを防ぐ機能を兼ね備えているため、強制リング27を設ける必要はない。
以上のように構成された渦電流ダンパー23によれば、図8に示すように渦電流発生体26に対して内側マグネット24Aから外側マグネット24Bに向かって垂直方向の強力な磁場が与えられており、その磁場の間を渦電流発生体26がシャフト11の動きに連動して昇降動作することにより、電磁誘導効果によって渦状の誘導電流(渦電流)が発生する。このため、レンツの法則によって周囲の磁界の変化を打ち消す磁界が生じ、これが渦電流ブレーキとなり、結果としてダンパー効果が得られる。したがって、本実施形態のように浮上支持された高性能の電磁アクチュエータ1において、渦電流ダンパー23のダンパー効果によって共振周波数で振動することがなくなり、共振を効果的に抑制することができる。
特に、渦電流ダンパー23を構成するマグネット24に表面磁力の強力なネオジム磁石を使用し、ヨーク25に純鉄などの飽和磁束密度の高い材料を使用し、渦電流発生体26にアルミニウムや銅などの高導電率材料を使用しているため、磁気効率が向上し、強い渦電流が発生してダンパー効果が高まり、ダンパー全体の小型化を図ることができる。また、マグネット24、ヨーク25、及び渦電流発生体26の各部品をそれぞれ円筒形状に成形して組み合わせたことにより、ダンパー全体がコンパクトに集約され、電磁アクチュエータ1への組み付けの位置決めを容易に行えるという利点もある。さらに、一般的なダンパーは摺動する構造であるため摩耗し、寿命が短くなるが、本実施形態の渦電流ダンパー23は非接触構造であるため一切摩耗せず、半永久的な長寿命化を実現することができる。
以上が渦電流ダンパー23の構造であるが、本実施形態ではさらに、電磁アクチュエータ1の異常や故障を判断するための位置センサ28が取り付けられている。このような位置センサ28を取り付ける場合、センサ自身も同様に耐久性が必要となる。そこで、本実施形態では、シャフト11の軸体11a上端に鉄片等の磁性体29を装着し、これを非磁性体からなる円筒状のカバー30で覆い、その外側にコイル部31を設けた差動トランス式の位置センサ28が取り付けられている。なお、この位置センサ28は、コイル部31に交流を流すため、カバー30にも渦電流が発生しやすい。そこで、カバー30は、センサの検出不良を起こさないように渦電流が発生しにくい低導電率材料で構成されていることが好ましい。
これにより、可動鉄心4が駆動するとシャフト11上端の磁性体29がコイル部31の内部を移動し、磁気によって可動鉄心4の位置を非接触で検出することができる。このように、非接触式の位置センサ28を使用することにより、可動鉄心4の位置を監視して位置フィードバック制御を行うことが可能になり、電磁アクチュエータ1の異常や故障の自己診断を行うことができる。なお、本実施形態では差動トランス式の位置センサ28を採用したが、これに限らず、図示しないホール素子センサや、TMR素子、GMR素子、AMR素子などの磁気抵抗効果素子による磁気抵抗センサや、渦電流式センサなどの非接触式の磁気センサを設けても良く、これによりセンサの長寿命化を図ることができる。
以上説明した電磁アクチュエータ1の用途としては、例えば比例電磁弁の弁体駆動機構に適用することができる。すなわち、可動鉄心4の軸心先端の軸部17を取り外し、代わりに図13に示すように先細りテーパー形状に成形された着脱可能なニードル弁32を取り付け、この電磁アクチュエータ1を流路管33の弁座34に装着すれば良い。これにより、電磁アクチュエータ1を駆動すると可動鉄心4に取り付けられたニードル弁32が昇降動作し、弁座34の内部に設けられたオリフィス孔35をニードル弁32で開閉することができる。
したがって、駆動電流に比例した電磁吸引力によって、オリフィス孔35を図13に示す全閉(0%)の状態や図14に示す全開(100%)の状態だけでなく、図15に示す中間開度(50%)の状態にリニア制御することができる。特に、本実施形態の電磁アクチュエータ1を適用した比例電磁弁によれば、渦電流ダンパー23のダンパー効果により可動鉄心4の共振を抑制することができるだけでなく、急激な全閉が起こらず、ニードル弁32の衝撃によるオリフィス孔35の変形を防ぎ、長期にわたって安定的な開閉動作を実現することができる。
1:電磁アクチュエータ
2:電磁コイル
3:固定鉄心
4:可動鉄心
5:コイル
6:ボビン
7:コイルケース
8:連結ネック
9:ばね片
10:ガイドパイプ
11:シャフト
12:ストッパー
13:ホルダー
14:押し戻し専用ばね
15:板ばね(上部板ばね)
16:板ばね(下部板ばね)
17:軸部
18:緩衝材
19:ベース
20:固定リング
21:テンションばね
22:固定リング
23:渦電流ダンパー
24:マグネット
25:ヨーク
26:渦電流発生体
27:強制リング
28:位置センサ
29:磁性体
30:カバー
31:コイル部
32:ニードル弁
33:流路管
34:弁座
35:オリフィス孔

Claims (1)

  1. ボビンの外周にコイルが巻装された電磁コイルと、
    前記電磁コイルのボビン内部に固定された磁性体からなる固定鉄心と、
    前記電磁コイルへの通電時に発生する電磁吸引力により前記固定鉄心に吸引される磁性体からなる可動鉄心と、
    前記可動鉄心の軸心上部に連結された非磁性体からなるシャフトと、
    前記シャフトに連結された可動鉄心を前記電磁吸引力に抗して押圧する押し戻し専用ばねと、
    前記シャフトの軸体に内縁部が固定されており、その外縁部が固定側部材に固定されて前記シャフトを前記固定側部材に非接触で浮上支持する上部板ばねと、
    前記可動鉄心の軸心下部に内縁部が固定されており、その外縁部が固定側部材に固定されて前記可動鉄心を前記固定側部材に非接触で浮上支持する下部板ばねと、
    前記シャフトの軸体外周を包囲し、前記軸体の動作方向に対して垂直方向の磁界を与えて発生する渦電流により前記可動鉄心及び前記シャフトの共振を減衰させる非接触式の渦電流ダンパーと、を備え、
    前記上部板ばねと前記下部板ばねが前記電磁コイルを挟んだ上下に配置されていることを特徴とする電磁アクチュエータ。
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