JP5633196B2 - 炭酸エステルの精製方法および炭酸エステル - Google Patents

炭酸エステルの精製方法および炭酸エステル Download PDF

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本発明は、炭酸エステルの精製方法及び炭酸エステルに関する。更に詳しくは、炭酸エステルから、微量の不純物を除去する精製方法及び微量の不純物が除去された炭酸エステルに関するものである。本発明により精製された炭酸エステルは、溶融エステル交換法による芳香族ポリカーボネートの原料として有用である。そして、その芳香族ポリカーボネートは光ディスク基板、ICやLEDの精密電子部材の搬送容器用樹脂、電子機器のハウジング材として有用である。その他、電池やコンデンサなどの非水電解液の溶媒としても有用である。
炭酸エステルの製造方法としては、従来アルコールにホスゲンを反応させる方法が工業的に行われてきた。近年では、ホスゲンの毒性などの問題から、ホスゲンを使用しない製造法として、アルコールと一酸化炭素および酸素とを反応させ製造する方法(特許文献1、2)も採用されている。
工業的に製造される炭酸エステルは、いずれの製造法でも反応副生成物や原料、触媒由来の各種不純物を含有しており、これらの不純物の内、可視領域(400〜700nm)に吸収を示す不純物の存在が確認されている。芳香族ポリカーボネートや電池やコンデンサなどの非水電解液のように着色が問題となる製品は、これらの不純物による着色が品質に大きな影響を与えるため、精製工程で十分に除去する必要がある。
炭酸エステルの工業的な精製方法としては、蒸留法(特許文献3、4)、晶析法(特許文献5)、吸着法(特許文献6、7)などの各種方法が提案されている。
蒸留法は、物質ごとの蒸気圧の差を利用して混合物の特定成分を濃縮する方法で、工業的に最も汎用的に実施されている精製方法である。しかしながら、炭酸エステルに含まれる可視領域に吸収を示す不純物の中には、蒸気圧が炭酸エステルと近い物質が存在し、蒸留法により完全に除去することが困難である。
晶析法は、目的成分を結晶化させる際に、その温度で結晶化しない不純物成分が結晶中には入り込まないことを利用する精製方法である。晶析法は、高純度化が比較的容易であるが、炭酸エステルの中には凝固点が非常に低く(例えば、炭酸プロピレンの凝固点は−55℃)、晶析法が適用できない溶媒が多い。
吸着法は、シリカゲルや、活性アルミナ、合成ゼオライトなどの吸着剤と接触させ不純物を除去する精製方法である。吸着法は、吸着剤の持つ極性効果を利用するため、水分やアルコールなどの極性の高い物質は容易に除去できるが、炭酸エステルに含まれる可視領域に吸収を示す不純物の中には、極性の低い物質が存在するため、これらの吸着剤で完全に除去することは困難である。
特公昭60−58739号 特公昭61−8816号 特許第3036677号 特許第3807817号 特開2009−215177 特開平09−227550 特許第4310919
本発明は、炭酸エステル中に含まれる可視領域に吸収を示す微量の不純物を容易に除去することができる炭酸エステルの精製方法及び微量の不純物が除去された炭酸エステルを提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成するために種々の検討を重ねた結果、特定のイオン交換樹脂を炭酸エステルと接触させることによって、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明の要旨は、下記に示すとおりである。
[1]炭酸エステルをH形の強酸性陽イオン交換樹脂と接触させることを特徴とする炭酸エステルの精製方法。
[2]H形の強酸性陽イオン交換樹脂と接触される炭酸エステルに含まれるカチオン種の総和が1000質量ppm未満であることを特徴とする上記[1]記載の炭酸エステルの精製方法。
[3]炭酸エステルと強酸性陽イオン交換樹脂とを接触する場合の通液条件が下記内であることを特徴とする上記[1]又は[2]記載の炭酸エステルの精製方法。
ア)通液速度(SV)が1以上200以下であること
イ)通液温度が0℃〜80℃であること
[4]強酸性陽イオン交換樹脂の官能基がスルホン酸基であることを特徴とする上記[1]ないし[3]のいずれか記載の炭酸エステルの精製方法。
[5]強酸性陽イオン交換樹脂の母体構造が、架橋されたポリスチレン骨格をもつ樹脂であることを特徴とする上記[1]ないし[4]のいずれか記載の炭酸エステルの精製方法。
[6]強酸性陽イオン交換樹脂が、架橋度が6質量%以下のゲル型強酸性陽イオン交換樹脂であることを特徴とする上記[1]ないし[5]のいずれか記載の炭酸エステルの精製方法。
[7]強酸性陽イオン交換樹脂が、細孔容積0.01ml/g以上の微多孔質構造を有する樹脂であることを特徴とする上記[1]ないし[5]のいずれか記載の炭酸エステルの精製方法。
[8]強酸性陽イオン交換樹脂が、細孔容積0.1ml/g以上、比表面積1m/g以上の多孔質構造を有する樹脂を用いることを特徴とする上記[1]ないし[5]のいずれか記載の炭酸エステルの精製方法。
[9]強酸性陽イオン交換樹脂が粒径500μm以下の樹脂であることを特徴とする上記[6]記載の炭酸エステルの精製方法。
[10]強酸性陽イオン交換樹脂のH形含有率が80%以上であることを特徴とする上記[1]ないし[9]のいずれか記載の炭酸エステルの精製方法。
[11]非水電解液の溶媒として用いる炭酸エステルであって、前記炭酸エステルがジメチルカーボネートであり、可視領域の吸光度積算値が7.3未満であることを特徴とする炭酸エステル。
[12]非水電解液の溶媒として用いる炭酸エステルであって、前記炭酸エステルがプロピレンカーボネートであり、可視領域の吸光度積算値が24.7未満であることを特徴とする炭酸エステル。
[13]非水電解液の溶媒として用いる炭酸エステルであって、前記炭酸エステルがジメチルカーボネートとジフェニルカーボネートの混合物であり、可視領域の吸光度積算値が5.7未満であることを特徴とする炭酸エステル。
[14]非水電解液の溶媒として用いる炭酸エステルであって、前記炭酸エステルがジメチルカーボネートとエチルメチルカーボネートの混合物であり、可視領域の吸光度積算値が1.3未満であることを特徴とする炭酸エステル。
[15]非水電解液の溶媒として用いる炭酸エステルであって、前記炭酸エステルがジメチルカーボネートとジエチルカーボネートの混合物であり、可視領域の吸光度積算値が3.6未満であることを特徴とする炭酸エステル。
[16]非水電解液の溶媒として用いる炭酸エステルであって、前記炭酸エステルがジメチルカーボネートとエチレンカーボネートの混合物であり、可視領域の吸光度積算値が4.2未満であることを特徴とする炭酸エステル。
[17]非水電解液の溶媒として用いる炭酸エステルであって、前記炭酸エステルがジメチルカーボネートとビニレンカーボネートの混合物であり、可視領域の吸光度積算値が3.6未満であることを特徴とする炭酸エステル。
(上記[11]〜[17]において、前記可視領域の吸光度積算値は、前記炭酸エステル20mlに純度98%硫酸を0.6g添加し、30分間静置後、長さ50mmの石英セルに入れ、紫外可視分光光度計を用いて、波長域400nmから700nmの吸光度を1nm間隔で測定し、得られた吸光度の値を積算し求める。)
本発明によれば、炭酸エステルに含まれる可視領域に吸収を示す微量の不純物をH形の強酸性陽イオン交換樹脂と反応させ、炭酸エステルから除去することで、芳香族ポリカーボネートの原料や電池やコンデンサ用の非水電解液の溶媒として好適な炭酸エステルを得ることができる。
以下、本発明を詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、これらの内容に特定はされない。
[炭酸エステル]
本発明において精製対象とされる炭酸エステルは、次の一般式(I)で表される化合物である。
−O−CO−O−R・・・・・(I)
一般式(I)中、RとRは、それぞれ独立して、置換基を有してもいてもよい炭化水素基であり、RとRは結合して、環状炭酸エステルを形成してもよい。
とRとが結合せずに鎖状炭酸エステルを形成する場合は、アルキル基、アルケニル基、アリル基などが挙げられ、特にアルキル基の場合に精製効果を発現し易い。RとRの合計炭素数が2〜10、好ましくは2〜8が適している。これらの基は直鎖、分岐鎖いずれでもよい。また、RとRが結合している場合は、アルキレン基、アルケニレン基などを形成する例が挙げられる。
環状炭酸エステル、鎖状炭酸エステルはいずれの場合でも更に置換基を有していてもよい。置換基としては、フッ素、塩素などのハロゲン原子、水酸基、アミノ基、シアノ基などが挙げられる。
本発明に使用する炭酸エステルとして、鎖状炭酸エステルとしては、炭酸ジフェニル、炭酸メチルフェニル、炭酸ジメチル、炭酸エチルメチル、炭酸ジエチルなどが挙げられる。環状炭酸エステルとしては、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、炭酸ブチレン、炭酸ビニレンなどが挙げられる。
本発明では炭酸エステルの入手方法は特に限定されず、市販品でもよく、例えば、アルコールとホスゲンの反応やアルコールと一酸化炭素および酸素との反応など公知の方法で製造された物でもよい。
[イオン交換樹脂]
炭酸エステルに含まれる可視領域に吸収を示す不純物は、極めて微量であるため同定されていないが、吸収スペクトルから、C=C二重結合及び/又はC=Oなどの発色団を有する化合物と推定される。これらの化合物は、特異的なイオン性官能基を有していないので、炭酸エステル中から選択的に除去することが非常に困難である。本発明者らは鋭意検討した結果、該不純物を含有する炭酸エステルをH形の強酸性陽イオン交換樹脂と接触させることにより、該不純部に起因する可視領域の吸収を大幅に低減できることを見出し、本発明に到達した。
強酸性陽イオン交換樹脂等の陽イオン交換体としては、ゼオライトに代表される無機イオン交換体、フェノール−ホルマリン縮合体のスルホン化物に代表される縮合系イオン交換樹脂、カルボン酸基を有する弱酸性陽イオン交換樹脂、燐酸基を有する中酸性陽イオン交換樹脂、樹脂骨格にスルホン酸基を導入した強酸性陽イオン交換樹脂などが知られている。本発明で用いる強酸性陽イオン交換樹脂の種類としては、中でも架橋したポリスチレンにスルホン酸基を導入した強酸性陽イオン交換樹脂が有用である。
該架橋ポリスチレンの架橋剤をとしては種々のものが知られおり、特に限定は無いが、通常は化学的安定性の高いジビニルベンゼンが有用である。
架橋度(全仕込モノマーの質量に対する該架橋剤の質量の割合)は、樹脂の構造により異なるが、通常、物理的多孔を有しないゲル型の樹脂では1質量%〜16質量%、乾燥状態(樹脂が溶媒和していない状態)では殆ど多孔度を有さないが湿潤状態(樹脂が溶媒和している状態)では多孔度を有する微多孔性樹脂では2質量%〜20質量%、乾燥状態でも多孔度を有する樹脂では8質量%〜55質量%程度のものが知られている。
本発明で用いる強酸性陽イオン交換樹脂の架橋度、粒径は特に限定されない。ゲル型樹脂を用いた場合、目的とする反応が基本的にイオン交換樹脂粒子の外部表面および溶媒により膨潤された部分で行われるため、架橋度や粒径の影響を大きく受ける。かかる観点から、ゲル型樹脂は、乾燥状態で架橋度6質量%以下のものが好ましく、粒径は500μm以下のものが好ましい。イオン交換樹脂の乾燥状態での粒径は、例えば、篩別法やレーザ回折・散乱法で測定できる。微多孔質型樹脂は、乾燥状態で、架橋度14質量%以下、細
孔径15〜75,000Åの細孔容積0.1ml/g以上のものが好ましい。イオン交換樹脂の乾燥状態での細孔容積は、例えば、200Å以上細孔径については水銀圧入法、それ以下の細孔についてはBET多点法で測定できる。多孔質型樹脂は、イオン交換樹脂としての機能は細孔表面で行われるため、架橋度によって規定することは困難である。本発明で用いる多孔質型樹脂は、乾燥状態で、細孔径15〜75,000Åの細孔容積0.1ml/g以上であることが好ましく、0.3ml/g以上がさらに好ましい。また、比表面積は、1m/g以上が好ましく、10m/g以上がさらに好ましく、20m/g以上であることが特に好ましい。イオン交換樹脂の乾燥状態での比表面積は、例えば、BET多点法で測定できる。微多孔質及び多孔質樹脂は、細孔表面での反応が大きく寄与するため、粒径の影響はゲル型樹脂に比べ小さく、特に規定するものではない。
強酸性陽イオン交換樹脂による不純物の除去機構は不明であるが、少なくとも酸性基の関与が大きいことから、イオン交換樹脂のイオン形はH形とする。H形含有率(イオン交換樹脂の総交換容量に対するH形の交換基容量の比率)は、50%以上であることが好ましく、80%以上であることがさらに好ましい。50%未満であると、イオン解離平衡から、イオン交換樹脂の陽イオン解離による炭酸エステルの汚染(Na形を含む場合はNa汚染)が起こり、好ましくない。
かかる強酸性陽イオン交換樹脂としては市販の各種の樹脂が使用できる。例えば、ゲル型樹脂としては「ダイヤイオン」UBK510、UBK530、UBK08(商品名。いずれも三菱化学製、架橋度4質量%、6質量%、8質量% 粒径各330μm、220μm、650μm)、微多孔質樹脂としては「ダイヤイオン」PK208、PK212(商品名。いずれも三菱化学製、架橋度4質量%、6質量%)、多孔質樹脂としては「ダイヤイオン」RCP160M(商品名。三菱化学製)、「アンバーライト」IR200CT、「アンバーリスト」15(商品名。いずれもローム&ハース社製)、「ダウエックス」MSC−1(商品名。ダウ社製)、「レバチット」S2568、「モノプラス」SP112H(商品名。いずれもランクセス社製)などが有用である。
[精製方法]
強酸性陽イオン交換樹脂による炭酸エステルの精製手段は、両者を接触させればよく、特に限定されない。例えば、炭酸エステルの中に樹脂を入れ、攪拌することによる精製に代表されるバッチ形式、樹脂をカラムに充填し、炭酸エステルを通液することによるカラム流通形式などが使用できるが、工業的な実用面からは、連続で行うことが可能なカラム形式が安定した炭酸エステルの品質を与えることから、好ましい。
この場合、炭酸エステルが多量の水分を含有すると、H形の強酸性陽イオン交換樹脂による炭酸エステルの加水分解が起こり、製品に加水分解によりできた不純物が混入することになり好ましくない。かかる観点から、炭酸エステル原料の含水率は10000質量ppm以下とすることが好ましく、1000質量ppm以下とすることがさらに好ましく、200質量ppm以下とすることが特に好ましい。また、同様の理由から強酸性陽イオン交換樹脂に含まれる水分は、炭酸エステルを通液前に適当な溶媒、例えば、メタノール、エタノール、アセトン等で置換することが好ましい。強酸性陽イオン交換樹脂の含水率は、樹脂質量の1質量%以下とすることが好ましく、0.1質量%以下とすることがさらに好ましい。
炭酸エステル原料に陽イオン交換樹脂とイオン交換できるようなカチオンが含まれていると、樹脂の官能基とイオン交換し、イオン交換樹脂の活性を下げることになるので、好ましくない。かかる観点から、炭酸エステル原料中のカチオンは1000質量ppm以下であることが好ましく、100質量ppm以下であることがさらに好ましく、10質量ppm以下であることが特に好ましい。
炭酸エステルを処理する際のカラムへの通液速度(以下SVと略記する。これは、1時間あたりに炭酸エステルをイオン交換樹脂容積の何倍通液するかを示す値である。)は、炭酸エステル中に存在する不純物の量や温度などにより異なるが、下限としては、通常1以上、好ましくは5以上、さらに好ましくは10以上、特に好ましくは20以上であり、上限としては、通常200以下、好ましくは100以下、さらに好ましくは50以下である。通液速度が低すぎる場合には、イオン交換樹脂と炭酸エステルの接触時間が長くなりすぎ、炭酸エステルの分解や副反応を併発する傾向がある。通液速度が高すぎる場合には、着色性不純物の除去が十分に行われない傾向がある。
炭酸エステルを処理する際のカラムの温度は、下限としては、通常0℃以上、好ましくは10℃以上であり、限としては、通常80℃以下、好ましくは60℃以下、さらに好ましくは50℃以下である。カラムの温度が低すぎる場合には、不純物の除去速度が低下する傾向がある。高すぎる場合には、炭酸エステルの分解等の副反応を生起させる傾向がある。
精製後の炭酸エステルの用途に応じて、精製する際は、炭酸エステル単独、複数種類の炭酸エステル混合物のいずれでもよく、更に、溶剤、添加物などを加えて精製することも可能である。
[着色性の評価方法]
炭酸エステルの着色は、炭酸エステル単独では発生せず、酸素の混入や光の照射、製品にする際に他の原料に含まれる不純物との反応などにより起こる。炭酸エステルの潜在的な着色性の定量は、例えば紫外可視吸光光度計を用いて、特定波長における吸光度、可視領域全体の吸光度積分値などを得ることにより実施可能である。詳細な定量方法は限定されないが、例えば、「JIS K0072,化学製品の硫酸着色試験方法」、「ASTM-D848-03,Standard Test Method for Acid Wash Color of Industrial Aromatic Hydrocarbons」など
公知の方法で評価できる。
本発明方法によると、実施例、比較例で示したように、炭酸エステルの可視領域における吸光度が低減されており、これにより、炭酸エステルが精製されていることが把握できる。
以下に実施例及び比較例により、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は下記実施例及び比較例に限定されるものではない。
(比較例1)
蒸留精製した純度99.9%以上の炭酸ジメチル(DMC)20mlに純度98%硫酸
を0.6g添加し、30分間静置後、長さ50mmの石英セルに入れ、島津製作所製の紫外可視分光光度計UV−1800を用いて、波長域400nmから700nm(以下、可視領域とする)の吸光度を1nm間隔で測定し、得られた吸光度の値を積算した。可視領域の吸光度の積算値は、7.3であった。
(比較例2)
蒸留精製した純度99.9%以上の炭酸プロピレン(PC)の吸光度を比較例1と同様
の方法で測定した。可視領域の吸光度の積算値は、24.7であった。
(比較例3)
蒸留精製した純度99.9%以上のDMCと蒸留精製した純度99.9%以上の炭酸ジフェニル(DPC)の混合溶媒(質量比1:0.4)の吸光度を比較例1と同様の方法で測定した。可視領域の吸光度の積算値は、5.7であった。
(比較例4)
蒸留精製した純度99.9%以上のDMCと蒸留精製した純度99.9%以上の炭酸エチルメチル(EMC)の混合溶媒(質量比1:1)の吸光度を比較例1と同様の方法で測定した。可視領域の吸光度の積算値は、1.3であった。
(比較例5)
蒸留精製した純度99.9%以上のDMCと蒸留精製した純度99.9%以上の炭酸ジエチル(DEC)の混合溶媒(質量比1:1)の吸光度を比較例1と同様の方法で測定した。可視領域の吸光度の積算値は、3.6であった。
(比較例6)
蒸留精製した純度99.9%以上のDMCと蒸留精製した純度99.9%以上の炭酸エチレン(EC)の混合溶媒(質量比1:1)の吸光度を比較例1と同様の方法で測定した。可視領域の吸光度の積算値は、4.2であった。
(比較例7)
蒸留精製した純度99.9%以上のDMCと蒸留精製した純度99.9%以上の炭酸ビニレン(VC)の混合溶媒(質量比1:1)の吸光度を比較例1と同様の方法で測定した。可視領域の吸光度の積算値は、3.6であった。
(実施例1)
あらかじめ2mol/lの塩酸水溶液でイオン交換基をプロトン置換し、脱塩水で十分に洗浄後、無水メタノールで樹脂中の水分を除去した強酸性陽イオン交換樹脂「アンバーライト」200CT(ローム&ハース社製、架橋度非公開、細孔容積0.3ml/g、比表面積41m/g、粒径600μm、H形含有率98%)12.5mlを内径16mmのガラスカラムに充填した。カラムの上方から、蒸留精製した純度99.9%以上のDM
CをSV20の流速でカラムに通液し、メタノールが除去されたことを確認した後、500ml回収した。回収したDMCの吸光度を比較例1と同様の方法で測定した。可視領域の吸光度の積算値は、0.2であった。
(実施例2)
炭酸エステルをPCに変更した以外は、実施例1と同じ方法で可視領域の吸光度を測定した。可視領域の吸光度の積算値は、4.8であった。
(実施例3)
炭酸エステルをDMCとDPCの混合溶媒(質量比1:0.4)に変更した以外は、実施例1と同じ方法で可視領域の吸光度を測定した。可視領域の吸光度の積算値は、1.4であった。
(実施例4)
炭酸エステルをDMCとEMCの混合溶媒(質量比1:1)に変更した以外は、実施例1と同じ方法で可視領域の吸光度を測定した。可視領域の吸光度の積算値は、0であった。
(実施例5)
炭酸エステルをDMCとDECの混合溶媒(質量比1:1)に変更した以外は、実施例1と同じ方法で可視領域の吸光度を測定した。可視領域の吸光度の積算値は、0.3であった。
(実施例6)
炭酸エステルをDMCとECの混合溶媒(質量比1:1)に変更した以外は、実施例1と同じ方法で可視領域の吸光度を測定した。可視領域の吸光度の積算値は、0.5であった。
(実施例7)
炭酸エステルをDMCとVCの混合溶媒(質量比1:1)に変更した以外は、実施例1と同じ方法で可視領域の吸光度を測定した。可視領域の吸光度の積算値は、0.5であった。
(実施例8)
流速をSV40に変更した以外は、実施例1と同様に可視領域の吸光度を測定した。可視領域の吸光度の積算値は、0.9であった。
(実施例9)
流速をSV100に変更した以外は、実施例1と同様に可視領域の吸光度を測定した。可視領域の吸光度の積算値は、2.7であった。
(実施例10)
流速をSV200に変更した以外は、実施例1と同様に可視領域の吸光度を測定した。可視領域の吸光度の積算値は、3.9であった。
(実施例11)
イオン交換樹脂を強酸性陽イオン交換樹脂「ダイヤイオンPK208」(三菱化学社製、架橋度4質量%、細孔容積0.02ml/g、比表面積0.1m/g、粒径560μm、H形含有率98%)に変更した以外は、実施例1と同様に可視領域の吸光度を測定した。可視領域の吸光度の積算値は、0.3であった。
(実施例12)
流速をSV100に変更した以外は、実施例11と同様に可視領域の吸光度を測定した。可視領域の吸光度の積算値は、4.5であった。
(実施例13)
イオン交換樹脂を強酸性陽イオン交換樹脂「ダイヤイオン」UBK08(三菱化学社製、架橋度8質量%、細孔容積0ml/g、比表面積0m/g、粒径600μm、H形含有率98%)に変更した以外は、実施例1と同様に可視領域の吸光度を測定した。可視領域の吸光度の積算値は、6.1であった。
(比較例8)
イオン交換樹脂を弱酸性陽イオン交換樹脂「ダイヤイオン」WK40L(三菱化学社製、架橋度非公開、細孔容積0.01ml/g、比表面積0.1m2/g、粒径650μm)に変更した以外は、実施例1と同様に可視領域の吸光度を測定した。可視領域の吸光度の積算値は、7.5であった。
(実施例14)
実施例1と同様に準備したカラムの上方から、蒸留精製した純度99.9%以上のPC
をSV20の流速で10L通液した後、PCを20ml回収した。回収したPCを実施例1と同様の方法で可視領域の吸光度を測定した。可視領域の吸光度の積算値は、5.1であった。
(比較例9)
蒸留精製した純度99.9%以上のPCに市販のジエチルヒドロキシアミン(DEHA
)を1000質量ppm加えた以外は、実施例14と同様に可視領域の吸光度を測定した。可視領域の吸光度の積算値は、25.6であった。
Figure 0005633196
Figure 0005633196
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表1から明らかなように、強酸性陽イオン交換樹脂に通液した炭酸エステル(実施例1〜7)は、蒸留のみで精製した炭酸エステル(比較例1〜7)に比べて、硫酸添加後の可視領域の吸光度が小さくなる。これは、通常行われている蒸留精製では除去できなかった
炭酸エステル中の微量不純物が、強酸性陽イオン交換樹脂により除去され、炭酸エステルの着色性が低下したことを示している。
表2から明らかなように、強酸性陽イオン交換樹脂による炭酸エステル中の微量不純物の除去効果は、通液速度を上げると低下する傾向にあるが、実施例10の結果から分かるように、SV200までは効果が見られる。
表3から明らかなように、炭酸エステルを強酸性陽イオン交換樹脂に10L(樹脂体積の800倍)通液後、DEHAを含まない炭酸エステル(実施例14)は、強酸性陽イオン交換樹脂による炭酸エステル中の微量不純物の除去効果が維持されているのに対して、DEHAを1000質量ppm含有する炭酸エステル(比較例9)は、除去効果が消失する。これは、炭酸エステル中にカチオン種であるDEHAが含まれると、DEHAが樹脂の官能基とイオン交換して、官能基の反応活性が低下するためと考えられる。
本発明方法により得られた高純度の炭酸エステルは、芳香族ポリカーボネートの原料や電池やコンデンサ用の非水電解液の溶媒などに利用可能である。

Claims (10)

  1. 炭酸エステルをH形の強酸性陽イオン交換樹脂と、通液速度(SV)が20以上200以下の条件で接触させることを特徴とする炭酸エステルの精製方法。
  2. H形の強酸性陽イオン交換樹脂と接触される炭酸エステルに含まれるカチオン種の総和が1000質量ppm未満であることを特徴とする請求項1記載の炭酸エステルの精製方法。
  3. 炭酸エステルと強酸性陽イオン交換樹脂とを接触する場合の通液条件が下記内であることを特徴とする請求項1又は2記載の炭酸エステルの精製方法
    液温度が0℃〜80℃であること
  4. 強酸性陽イオン交換樹脂の官能基がスルホン酸基であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか記載の炭酸エステルの精製方法。
  5. 強酸性陽イオン交換樹脂の母体構造が、架橋されたポリスチレン骨格をもつ樹脂であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか記載の炭酸エステルの精製方法。
  6. 強酸性陽イオン交換樹脂が、架橋度が6質量%以下のゲル型強酸性陽イオン交換樹脂であることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか記載の炭酸エステルの精製方法。
  7. 強酸性陽イオン交換樹脂が、細孔容積0.01ml/g以上の微多孔質構造を有する樹脂であることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか記載の炭酸エステルの精製方法。
  8. 強酸性陽イオン交換樹脂が、細孔容積0.1ml/g以上、比表面積1m/g以上の多孔質構造を有する樹脂を用いることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか記載の炭酸エステルの精製方法。
  9. 強酸性陽イオン交換樹脂が粒径500μm以下の樹脂であることを特徴とする請求項6記載の炭酸エステルの精製方法。
  10. 強酸性陽イオン交換樹脂のH形含有率が80%以上であることを特徴とする請求項1ないし9のいずれか記載の炭酸エステルの精製方法。
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