JP5633133B2 - 遺伝子解析装置 - Google Patents

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本発明は、遺伝子解析装置に関する。より詳細には、本発明は、核酸の増幅反応、光連結反応および蛍光測定を利用した遺伝子解析装置に関する。
最近、DNAマイクロアレイをはじめとするハイブリダイゼーション検出技術の実用化が進んでいる。DNAマイクロアレイは、多種・多様のDNAプローブを基板表面に集積して固定したものである。このDNAマイクロアレイを用いて、DNAマイクロアレイ基板表面のハイブリダイゼーションを検出することにより、細胞・組織等における遺伝子を網羅的に解析することができる。
このマイクロアレイにより得られたデータを、PCR法(polymerase chain reaction;ポリメラーゼ連鎖反応)を用いて検証することが微量核酸の定性分析および定量分析の標準的手法となっている。
リアルタイムPCR法では、「熱変性→プライマーとのアニーリング→ポリメラーゼ伸長反応」という増幅サイクルを連続的に行い、DNA等を数十万倍にも増幅させ、このように得られたPCR増幅産物をリアルタイムでモニタリングすることで、前記微量核酸の定性分析および定量分析を行う。試料にて増幅反応が進行する際に励起光を照射することで、増幅の程度が蛍光信号としてリアルタイムで検出される。
遺伝子発現量をリアルタイムPCRで定量する原理を以下に述べる。まず、段階希釈した濃度既知の標準サンプルを鋳型として使用してPCRを行なう。そして、一定の増幅産物量に達するサイクル数(threshold cycle;Ct値)を求める。このCt値を横軸に、初発のDNA量を縦軸にプロットして、検量線を作成する。未知濃度のサンプルについても、同じ条件下でPCR反応を行ってCt値を求める。この値と前述した検量線とから、サンプル中の目的のDNA量を測定できる。
リアルタイムPCRでは、PCR増幅産物を蛍光により検出する。検出方法は、大きく分けてインターカレーターを用いる方法と蛍光標識プローブを用いる方法の2種類がある。
インターカレーター法は、二本鎖DNAをすべて検出するため、検出の対象となる遺伝子ごとにプローブを用意する必要がない。そのため、実験コストを低く抑えることができ、反応系の構築も容易である。しかしながら、検出特異性はあまり高くない。当該方法では、SYBR Green Iといった、二本鎖DNAに結合することで蛍光を発する試薬(インターカレーター)が使用される。インターカレーターは、PCR反応によって合成された二本鎖DNAと結合し、励起光の照射により蛍光を発する。この蛍光強度を検出することにより、増幅産物の生成量をモニターできる。
一方、蛍光標識プローブを用いる方法は、コストは高くなるが、検出特異性が高いため相同性の高い配列同士であっても区別して検出できる。当該方法では、例えばTaqManプローブが使用される。このプローブは、5’末端を蛍光色素で、3’末端をクエンチャーで修飾したオリゴヌクレオチドである。TaqManプローブは、アニーリングステップで鋳型DNAに特異的にハイブリダイズするが、プローブ上にクエンチャーが存在するため、励起光を照射しても蛍光の発生は抑制される。伸長反応ステップにおいて、TaqDNAポリメラーゼのもつ5’→3’エキソヌクレアーゼ活性により、鋳型にハイブリダイズしたTaqManプローブが分解されると、蛍光色素がプローブから遊離し、クエンチャーによる抑制が解除されて蛍光が発せられる。この原理を用いて、SNP等の検出が可能となる。
光連結反応を利用した遺伝子の解析方法は、365nm前後のUV光を照射することで連結反応を誘導することができる光応答性化合物を用いた解析方法である。当該方法では、光応答性化合物で修飾したプローブを、複製されたDNA等に配列特異的にハイブリダイゼーションさせ、プローブの光連結反応の有無を通じて、DNAの塩基配列を判別する。このとき、365nm前後のUV光を必要なエネルギー量だけ照射することで、反応量を任意に制御でき、さらに、反応に適した温度、タイミングなどの条件選択も可能となる。特にSNP検出等において、その選択性と障害性を用いて蛍光収量に差異を生じさせることができるため、SNP等の検出に有効な方法と考えられている。
光連結反応を利用した技術および装置に関する先行文献として、特許文献1が知られている。特許文献1の第1図は、特許文献1に係る検定を行うための方法および装置の模式図である。この模式図には、ターゲットポリヌクレオチドおよび第一プローブと第二プローブにハイブリダイゼーション条件を付与する手段、封入容器内に放射エネルギーを発生させる手段、および検出手段等が含まれていると記載されている(特許文献1の12頁左カラム39行目〜46行目参照)。しかし、各構成要素は具体的に示されておらず、当該方法を実施するための装置も開示されていない。
特許第2858771号公報
従来の方法によれば、遺伝子解析に用いる光連結反応は単独で行われることは少なく、PCRによる増幅を経た後に光連結反応のための操作が行われる。すなわち、PCRによる増幅、光連結のための光照射および光連結の検出が、それぞれ専用の独立した装置で行われている。そのため、PCR装置、光連結用UV照射装置および光連結用検出装置間のチューブ等の移動操作が煩雑となり、一連の解析のために手間および時間を要している。このような煩雑な操作は、解析結果の精度を下げる一因ともなっている。
また、従来の方法では、PCR用装置の温度調節手段のみを使ってチューブを一定の温度に加熱し、その後、紫外線照射により光連結を行うが、紫外線照射ユニットとチューブの位置決めの自由度が高い装置が用いられるため、使用する人によって位置決め位置が異なるといった場合もあり、再現性に問題が生じている。
本発明の目的は、煩雑な操作が要らず、再現性の高い解析が可能な遺伝子解析装置を提供することにある。
本発明の第1の実施形態によれば、核酸の増幅および光連結反応が行われるサンプルが収容される反応容器と、前記反応容器内のサンプルの温度を調節する温度調節手段と、前記反応容器内のサンプルに光連結反応を促進する光を照射する光連結用光源を備えた光連結誘導手段と、前記反応容器内のサンプルにおける光連結反応の有無を測定するための蛍光測定用励起光源および蛍光取得ユニットを備えた蛍光測定手段とを備え、前記光連結誘導手段と前記蛍光測定手段とが、前記反応容器を挟んで対向して位置し、前記光連結誘導手段と前記反応容器との間に、前記光連結誘導手段側に紫外光に対する反射防止コーティングが施され、前記反応容器側に赤外光を反射する赤外反射コーティングが施されたガラス基板を有する遺伝子解析装置が提供される。
本発明の第の実施態様によれば、前記蛍光測定手段が、前記蛍光測定用励起光源からの光の波長帯域を制限するフィルターと、前記反応容器内のサンプルから放出される蛍光の波長帯域を制限するフィルターとを備え、前記反応容器が蓋を有したチューブであり、前記蓋は平らな形状であり且つ紫外光から可視光の間の光を透過し、前記光連結誘導手段と前記反応容器との間に、前記チューブの蓋に押し付けて固定されるヒータープレートを備え、前記ヒータープレートは前記光連結誘導手段からの光を前記反応容器まで通過させる孔を有し、前記温度調節手段は、複数の前記反応容器をそれぞれ収容できる複数の孔を有した温度調節ブロックと、前記温度調節ブロックの側面に備えられた温度調節用ヒートシンクとを備え、前記光連結誘導手段は、前記光連結用光源を固定し且つ冷却する冷却固定ブロックと、前記冷却固定ブロックに取り付けられた光連結用ヒートシンクとをさらに備えた請求項1に記載の装置が提供される。
本発明の第の実施態様によれば、前記光連結用光源が、365nmを中心波長とする光を照射し、365nm±10nmのバンド幅の透過用フィルターを備える請求項1に記載の装置が提供される。
本発明の第の実施態様によれば、前記温度調節手段が、前記反応容器内のサンプルの温度を、核酸の増幅および光連結反応の進行に適した温度に調節する請求項1に記載の装置が提供される。
本発明の第の実施態様によれば、前記蛍光測定用励起光源が発光ダイオードであり、前記蛍光取得ユニットがアバランシェ・フォトダイオード、光電子増倍管またはフォトダイオードである請求項1に記載の装置が提供される。
本発明の第の実施態様によれば、前記光連結用光源と前記反応容器との間に挿入可能な、表面に凹凸が形成された無反射板を備える請求項1に記載の装置が提供される。
本発明の第の実施態様によれば、前記ガラス基板における前記赤外反射コーティングは、100nm以下の厚さの酸化インジウムスズ膜から成る請求項1に記載の装置が提供される。
本発明の第の実施態様によれば、前記光連結誘導手段は、前記光連結用ヒートシンクに対して送風する空冷ファンをさらに備えた請求項に記載の装置が提供される。
本発明によれば、核酸を増幅する手段、光連結を誘導する手段および蛍光を測定する手段とが備わった装置が提供されるため、煩雑な操作を必要とせず、且つ、再現性の高い光連結を行うことが可能となり、精度の高い遺伝子解析を行うことができる。
本発明の遺伝子解析装置を示す断面図。 本発明の装置の一部を構成する反応容器の平面図および正面図。 本発明の遺伝子解析装置を示す斜視図。 ガラス基板の反射防止コーティングの特性を示すグラフ。 ガラス基板の赤外反射コーティングの特性を示すグラフ。 従来方法による測定結果を示すグラフ。 本発明方法による測定結果を示すグラフ。 混合方法による測定結果を示すグラフ。 図6〜図8における90℃の蛍光強度比を示すグラフ。
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。
図1は、本発明の遺伝子解析装置の概要を示す断面図である。本発明の遺伝子解析装置は、反応容器1、温度調節手段2、光連結誘導手段3および蛍光測定手段4を備える。当該装置には、任意に、ガラス基板5およびヒータープレート6を設けることができる。光連結誘導手段3は、光連結用光源31を備え、任意に光連結用フィルター32を備える。蛍光測定手段4は、蛍光測定用励起光源41および蛍光取得ユニット42を備え、任意に、励起用フィルター43、蛍光測定用フィルター44、ダイクロイックミラー45、迷光吸収ユニット46および集光レンズ47を備える。
本発明の遺伝子解析装置において、反応容器1は、その内部に研究対象のサンプルや反応の進行のために必要な試薬等を保持し、当該装置によって誘導される反応の場を提供する。温度調節手段2は、反応容器1内部の温度条件を調節するために設置され、核酸の増幅等の反応を誘導する。光連結誘導手段3は、反応容器1内部における光連結反応を誘導するために設置される。蛍光測定手段4は、反応容器1内部にて生じた反応を随時モニタリングするために設置される。本発明の遺伝子解析装置は、以上の反応容器1、温度調節手段2、光連結誘導手段3および蛍光測定手段4を具備することによって、医学または生物学の分野で要求される種々の遺伝子解析を行うことができる。
そのような使用例の1つは、特定の塩基配列におけるSNPの検出である。この使用例では、当該装置によって、(a)標的核酸の増幅、(b)標的核酸と2種のプローブとのハイブリダイゼーション、(c)プローブ間の光連結および(d)連結したプローブから照射される蛍光の測定が、この順に行われる。例えば、標的核酸が正常な配列である場合、正常な配列に対して相補的に設計された2種のプローブと、標的核酸とがハイブリダイズし、その結果、2種のプローブは標的核酸上で隣接する。その状態で特定の光を照射して2種のプローブ間で光連結反応を誘導すると、プローブ同士が連結する。その後、連結したプローブ双方に予め修飾された蛍光色素が蛍光共鳴エンルギー転移(FRET)により発光した特定波長の蛍光を測定することで、標的核酸が正常配列であったことを確認できる。これに対し、標的核酸中にSNPが生じている場合、標的核酸とプローブとが完全にハイブリダイズしないため、特 定の光を照射してもプローブ間での光連結反応が起こらず、結 果的にFRET光を発光することができない。このようにして、SNPの存在を確認できる。なお、このような使用方法については、後に詳述する。
このような解析方法を行う場合、従来、上記(a)〜(d)のそれぞれの工程を独立した装置によって行っていたが、本発明の装置を使用することで、最初に必要な試薬等を反応容器1に投入し、適切な条件を設定して解析を開始するだけで、途中で試薬の投入等なんら処理を行う必要なく、自動で解析が終了する。これによって、操作者は煩雑な作業から解放され、さらに、そのような作業に起因して生じる実験の誤差やエラーを防止することができる。なお、本発明の遺伝子解析装置は、上記のようなSNP解析に限定されず、挿入・欠損、繰り返し配列変異、コピー数変異(CNV)等、当業者に既知のあらゆる対象の解析方法に利用することができる。
次に、本発明の遺伝子解析装置の、各要素について詳述する。
反応容器1は、その内部に研究対象のサンプルや反応の進行のために必要な試薬等を保持し、当該装置によって誘導される反応の場を提供する。反応容器1としては、そのような反応に影響を与えず、且つ、温度調節手段2によって加熱された場合でも変形しない容器が使用される。例えば、反応容器1として、チューブまたはプレートを使用することができる。また、内部に収容する反応液が蒸発して消失することを防止するために、蓋が付いており密封することが可能なものが好ましい。チューブとしては、PCR用途に使用される一般的なチューブを使用することができ、例えば、ポリプロピレン製チューブを使用できる。
チューブを使用する場合、図2に示される形状のものが好適である。すなわち、チューブ本体1bに、取り外し可能な蓋1aを有するものである。蓋1aは、側面からみた図(図2B)に示されるとおり、上部が平らな形状を有していることが好ましい。また、蓋1aは、上からみた図(図2A)に示されるとおり、透過窓1cを有しており、チューブ内部に対して特定の光を透過できることが好ましい。透過窓1cは、紫外から可視にかけての光、特に365nm付近に波長ピークを有する光に対して透過性が高いことが好ましい。チューブの上部に光連結誘導手段3を配置し、透過窓1cに対して光を照射する構成とする場合、透過窓1cが平らで、且つ透過性が高いことにより、光の強度を維持したままチューブ内部に光を到達させることが可能となる。
温度調節手段2は、反応容器1内部の温度条件を調節するために設置され、核酸の増幅等の反応を誘導する。温度調節手段2としては、従来のPCR用サーマルサイクラーに一般的に使用される温度調節手段を使用することができる。例えば、アルミニウムまたは銅といった熱伝導性の高い金属のブロックとペルチェ素子とを組み合わせたものを使用できる。さらに温度センサとして熱電対を具備させることもできる。図1の断面図のように、反応容器1と温度調節手段2との接触面積がより大きいほうが、熱伝導の観点から有利である。したがって、図1に示されるように、温度調節手段2のブロックに、反応容器1の形状に合わせた溝または孔を作り、そこに反応容器1を隙間なく収容することで、高い熱伝導性を達成出来る。
より具体的には、図3に示されるように、温度調節手段2は、温度調節ブロック21に温度調節用ヒートシンク22を設けたものである。図3に示される温度調節手段2では、温度調節ブロック21は、複数の孔を有し、複数の反応容器1を同時に収容できるようになっている。温度調節ブロック21の側面に、温度調節用ヒートシンク22が備えられており、温度調節用ヒートシンク22から熱を放出させることで、過度の温度上昇を避けることができる。温度調節用ヒートシンク22は、例えば、アルミニウムや銅といった熱伝導性の高い金属を素材とするものを使用でき、また、大きさや形状は放出熱容量に合わせたものを選ぶ。例えば、温度調節ブロック21の大きさに合わせた金属プレートを、温度調節ブロック21の側面に接着することで、温度調節用ヒートシンク22を形成できる。さらに放熱性を上げるために、温度調節用ヒートシンク22に対して送風するファンを設置することもできる。
温度調節手段2によって、反応容器1内部の温度を適切に調節することが可能となる。温度調節手段2は、一定の温度まで上昇させる機能のみ、または一定の温度を維持する機能のみを有するものであってもよいが、好ましくは、PCR法等の実行のために要求される温度条件を達成できる機能を有する。すなわち、予め設定したプログラムに従って、一定の温度を一定時間維持し、さらに、そのようなサイクルを複数回繰り返すことが可能であることが好ましい。なお、本発明の遺伝子解析装置において、主に温度調節手段2によって達成される核酸の増幅反応は、PCR法のみに限定されず、LAMP法、NASBA法、SMAP法、LCR法等、当該分野において既知の方法で行うことができる。また、温度調節手段2は、核酸の増幅反応においてのみ機能するわけではなく、光連結反応、蛍光測定時において、それらの反応に適した温度条件を提供することもできる。例えば、光連結反応を行う際には、反応容器1内部の温度を約50℃程度にすることが好ましく、このような温度条件を温度調節手段2によって達成することができる。
光連結誘導手段3は、反応容器1内部における核酸等の連結反応を誘導するために設置される。光連結誘導手段3は、図1に示されるように、光連結用光源31および光連結用フィルター32を含む。光連結用光源31としては、波長365nmを中心波長とする光源、例えば高出力発光ダイオード(UV−LED)を使用することができる。光連結用フィルター32としては、365nm付近の光を透過するフィルター、例えば365nm±10nmのバンド幅の透過用フィルターを使用することができる。更に、光連結用フィルター32として凸レンズを使用し、光連結用光源31からの光を、反応容器1内の適切な距離で焦点を結ぶよう設定することができる。光連結誘導手段3は、図3に示されるように、反応容器1と同数設けることができる。これによって、複数の反応容器1に対して同時に光を照射することができ、全体の処理時間の短縮が達成できる。なお光連結用光源及び各フィルターの波長は、用いる光応答性化合物に応じて適宜選択することが可能である。以下の説明では、光応答性化合物の応答波長が365nm付近であるとして説明するが、これを応答波長に応じて差し替えることができる。
本発明の遺伝子解析装置において、光連結誘導手段3と蛍光測定手段4を、反応容器1を挟んで対向して位置するよう設置することができる。このように、光連結誘導手段3を反応容器1の真上に配置することで、光連結用光源31と反応容器1内部の照射領域との間の距離をより小さくすることができ、その間を進む紫外光の強度を維持することができる。すなわち、このような配置は、強度の低い光連結用光源31を本発明に使用できる点で有利である。
図1のように光連結用光源31を装置の上部に設置する場合、温度調節手段2や、後に詳述するヒータープレート6から発生した熱によって、光連結用光源31が加熱される場合がある。この場合、光連結用光源31の紫外線放射効率が下がることによって必要な照射が得にくくなる問題、温度の上昇のため照射される光の中心波長が長波長側に多少シフトする問題、光連結用光源31の寿命が短くなる問題等が発生し得る。
加熱の問題を回避するために、図3に示すように冷却固定ブロック33および光連結用ヒートシンク34を用いる。冷却固定ブロック33内部に、複数の光連結用光源31が等間隔に並べて固定されている。光連結用光源31は、冷却固定ブロック33の低部まで貫通しており、光連結用光源31から照射される光は、遮断されることなく反応容器1に到達できる。冷却固定ブロック33は、温度調節ブロック2と同様に、アルミニウムまたは銅といった熱伝導性の高い金属にペルチェ素子を組み合わせたものを使用できる。冷却固定ブロック33と光連結用光源31との間の熱伝導性を上げるために、冷却固定ブロック33と光連結用光源31との間にアルミの粉末が練りこまれた熱伝熱性の高いシリコーン樹脂を挟むことができる。冷却固定ブロック33に光連結用ヒートシンク34を取り付けて、放熱効率を上げる。さらに、光連結用ヒートシンク34に対して送風する空冷ファン35を設置することで、光連結用ヒートシンク34に伝わった熱を効率良く放出させることができる。
上記の加熱の問題の他の回避策として、光連結用光源31と反応容器1との位置関係を変更してもよい。すなわち、光連結用光源31を反応容器1の真上に配置せず、光連結用光源31からの光を、例えばダイクロイックミラーを介して反応容器1に照射する構成とすることができる。このような構成では、光連結用光源31は、反応容器1の真上に位置しないため、反応容器1とそれを囲む温度調節手段2等からの熱を直接受けることがなく、当該熱に起因する加熱を抑制できる。
その他の加熱の問題の回避策として、ガラス基板5または無反射板の利用が挙げられるが、これらに関しては後に詳述する。
蛍光測定手段4は、反応容器1内部にて生じた反応を随時モニタリングするために設置される。図1に示されるように、蛍光測定用励起光源41および蛍光取得ユニット42を備え、任意に、励起用フィルター43、蛍光測定用フィルター44、ダイクロイックミラー45、迷光吸収ユニット46および集光用レンズ47を備える。
蛍光測定用励起光源41としては、反応容器1に添加される試薬に応じて、適切な波長を照射する光源が選択される。例えば、波長470nm付近の光によって励起される蛍光分子を使用する場合には、蛍光測定用励起光源41として、470nm付近のピーク波長を有する光源が使用される。一般に、励起光の波長と、蛍光分子から照射される蛍光の波長とが重複しないことが好ましい。従って、蛍光測定用励起光源41が、必要な波長以外の光を照射する場合には、励起用フィルター43を使用して、そのような光を遮断することができる。例えば、波長470nm付近の光によって励起したい場合、励起用フィルター43として、スペクトル幅を470nm±20nmまたは470nm±10nmに限定するバンドパスフィルターを使用できる。また、励起用フィルター43をレンズとすることもでき、この場合、蛍光測定用励起光源41から照射された励起光を、反応容器1内の光照射位置11に集光させることができる。
蛍光取得ユニット42としては、アバランシェ・フォトダイオード、光電子増倍管(PMT:フォトマルチプライヤー)またはフォトダイオードといった、特定の光を電流に変換できる素子が使用される。このような素子によって、反応容器1内の蛍光分子から生じた光を検出することができる。蛍光の検出の際は、検出の精度向上の観点から、バックグラウンドの光を抑え、蛍光分子から発生した蛍光のみを検出することが好ましい。したがって、蛍光測定用フィルター44を取り付けて、蛍光測定用励起光源41からの直接の光や外部からの光を遮断し、測定しようとする波長の光のみが蛍光取得ユニット42に到達するようにできる。
図1に示すように、蛍光測定用励起光源41から水平方向に出た光は、ダイクロックミラー45で波長選択反射され、鉛直下方から反応容器1内のサンプルに照射される。励起された蛍光分子から放出された蛍光は、集光用レンズ47励起用を透過した後、ダイクロイックミラー45を反射せずに透過し、蛍光測定用フィルター44を透過して蛍光取得ユニットに取り込まれる。なお、蛍光測定用励起光源41を出てダイクロイックミラー45を反射せずに透過する迷光は、迷光吸入ユニット46に吸収させ、測定への影響を抑えることができる。
本発明の遺伝子解析装置では、図3に示されるように、反応容器1に合わせて複数設置される光連結誘導手段3とは異なり、蛍光測定手段4の設置数は1つとすることが好ましい。この場合、蛍光測定手段4は、移動手段を備え、複数の反応容器1を順に測定できる。複数の蛍光測定手段4を設置する場合、蛍光測定手段4ごとの測定誤差が生じる可能性があるが、蛍光測定手段4を1つとすることで、この問題を回避できる。
本発明の遺伝子解析装置は、図1および図3のように、光連結誘導手段3と反応容器1との間に、ガラス基板5を有する。このガラス基板5は、温度調節手段2等に起因した光連結誘導手段3の加熱の防止を主な目的とする。また、ヒータープレート6を使用する場合には、ガラス基板5は、光連結誘導手段3とヒータープレート6との間に設置される。
ガラス基板5の反応容器1側の面は、温度調節手段2等からの熱伝達を防止するために、赤外線を反射するための赤外反射コーティング52が施される。特に、赤外反射コーティング52は、図5の分光特性に示されるように、700nm以上の光を反射する。赤外反射コーティング52は、ITO(酸化インジウムスズ)膜とすることができる。ガラス基板5に対するITO膜のコーティングは、例えば高周波スパッタ装置によって行うことができる。ITO膜は、作製条件によっては波長365nmの光の一部を吸収するため、100nm以下の薄い膜とすることが好ましい。例えば、高周波スパッタ装置を用いて、屈折率1.52のガラス基板上に、ガラス基板温度を200℃として、ITO膜を50nm程度の厚さでコーティングすることができる。
一方、ガラス基板5の光連結用光源31側の面は、光連結用光源31から照射される光を良好に透過するために、反射防止コーティング51が施される。特に、反射防止コーティング51は、図4の透過率特性に示されるように、紫外域の光、具体的には365nmをピークとし半値幅が20nmである光を良好に透過するものが選択される。反射防止コーティング51は、例えば誘電体多層膜で構成することができ、具体的には、SiO(低屈折率1.47)とTiO(高屈折率2.38)をλ/4の膜厚で10〜30層積層することで得られる。通常の光学ガラスでは片面4%、両面8%程度の反射が起こるところ、反射防止コーティング51を施したガラス基板5では、反射が1〜2%程度に抑えられ、好ましくは0.5%以下、さらに好ましくは0.2%以下に抑えられる。結果として、波長365nmに光について99%以上の透過率が得られる。
本発明の遺伝子解析装置は、光連結誘導手段3と反応容器1との間に、ヒータープレート6を有する。ヒータープレート6は、反応容器1(特にチューブ)の蓋に押し付けて固定され、且つ、光連結用光源31から照射される光を反応容器1に到達させるための孔を有する。
PCR法による核酸の増幅の工程において、反応容器1内の温度は100℃前後まで加熱される。これにより、反応容器1中の溶液が気化した状態となる。この結果、反応容器1内部の、温度調節手段2に覆われていない部分に結露が生じる。この結露が、光連結誘導手段3からの光を取り込む部分に部分(例えば、図2における透過窓1c)に生じた場合、光の透過率を減少させる。また溶媒が気化することによって、反応溶液中の試薬濃度に変化が生じ、反応の進行の障害となり得る。さらに、気化することで反応容器1の内部圧力が上昇し、反応容器1の蓋が開くおそれがある。
このような問題は、ヒータープレート6を設置することで解決できる。ヒータープレート6は、反応容器1に接触して固定される。ここにおいて、反応容器1は、図1に示されるように、ヒータープレート6と温度調節手段2との間に挟まれて固定され、これによって、反応容器1内の内部圧力が上昇した場合でも、蓋の開封が防止される。また、ヒータープレート6は、100℃以上まで加熱することができ、反応容器1が接触する部分の結露を防ぐことができる。このように結露が予防されるため、反応溶液の溶媒の量も一定に保たれる。ヒータープレート6に設けられる光を通過させるための孔の大きさは、使用する反応容器1に合わせて適宜選択でき、例えば図2のようなチューブを使用する場合、孔の大きさは、透過窓1cの大きさとほぼ同一にすることができる。当該孔は、反応容器1の数に応じて設けられる。ヒータープレートは、アルミニウムまたは銅といった熱伝導性の高い金属のプレートにシリコンヒーターを設置したものを使用できる。
本発明の遺伝子解析装置は、光連結誘導手段3と反応容器1との間に挿入可能な、表面が凹凸形状である無反射板を具備することができる。無反射板の素材としては、表面を光の反射を低く抑えるように凹凸加工できるもの、最も好ましくはサブミクロンの凹凸に加工できるもの、あるいは、素材自体が光の反射性が低いものであれば任意のものを使用でき、例えば金属またはプラスチック等を使用できる。蛍光測定手段4によって測定を行う際に、無反射板を光連結誘導手段3と反応容器1との間に挿入することで、測定に影響を与える光の反射を防止できる。本発明の遺伝子解析装置にガラス基板5を使用している場合、無反射板は光連結誘導手段3とガラス基板5との間に挿入することが好ましい。
本発明の遺伝子解析装置は、医学または生物学の分野で要求される種々の遺伝子解析のために使用することができる。その一例は、塩基配列中のSNP(Single Nucleotide Polymorphism:一塩基多型)の検出である。この例では、本発明の遺伝子解析装置によって、(a)標的核酸の増幅、(b)標的核酸と2種のプローブとのハイブリダイゼーション、(c)プローブ間の光連結および(d)連結したプローブから照射される蛍光の測定が、この順に行われる。以下に詳細を説明する。
(a)核酸の増幅
この工程では、PCR法によって標的核酸が増幅される。予め反応容器1内に、解析の対象となる配列を含むゲノムDNA、プライマー、ポリメラーゼおよびPCRに必要な試薬が添加されており、温度調節手段2により反応容器1内の温度条件を調節することによってPCRが進行し、ゲノムDNAから特定の配列を有した標的核酸が増幅される。なお、標的核酸の増幅はPCR法によらず、当該分野で既知のその他の増幅方法によって行うこともできる。
(b)核酸とプローブのハイブリダイゼーション
この工程では、増幅した標的核酸と、予め反応容器1内に添加されていた2種のプローブとのハイブリダイゼーションが行われる。このハイブリダイゼーションは、主に温度調節手段2による温度条件の設定によって達成される。例えば、解離温度まで加熱して増幅した二本鎖の標的核酸を一本鎖にした後、一定の温度まで冷却して、当該一本鎖にプローブをアニーリングさせる。この2種のプローブの配列は、標的核酸の配列に相補的であり、且つ、標的核酸にハイブリダイズした場合には互いに隣接して位置するように設計されている。また、プローブの2つの末端のうち、標的核酸上で隣接してハイブリダイズしたときに他方のプローブ側に位置する末端は、それぞれ光応答物質によって修飾されている。光応答物質とは、例えば、光照射によって開裂する共役二重結合を有した化合物であり、光の照射によって2種のプローブの共有結合による連結をもたらす。さらに、一方のプローブにはアクセプター分子が結合されており、他方のプローブにはドナー分子が結合されており、これらの分子が接近した場合にはFRET(Fluorescence Resonance Energy Transfer、蛍光共鳴エネルギー移動)が生じるように設計されている。ここにおいて、FRETとは、互いに近接したドナー分子とアクセプター分子との間で、励起エネルギーが、電磁波となることなく、電子の共鳴により直接移動する現象のことである。標的核酸の配列が、予め設計したプローブの配列と一致する場合には、標的核酸と2種のプローブとのハイブリダイゼーションが良好に生じ、標的核酸上で2種のプローブが隣接した状態となる。一方、標的核酸の配列にSNPが生じており、予め設計したプローブの配列とは完全に一致しない場合、少なくとも一方のプローブは標的核酸とハイブリダイズできずまたは不完全な状態でハイブリダイズし、その結果、標的核酸上で、2種のプローブが十分隣接した状態とならない。
(c)プローブ間の光連結
この工程では、標的核酸上で隣接して位置する2種のプローブに、光連結誘導手段3から光を照射し、プローブ間の光連結を誘導する。それぞれのプローブを光応答物質で修飾しているため、標的核酸上で隣接した場合には、波長365nmの光を受けることで、光応答物質の有する共役二重結合が開裂し、光応答物質間で共有結合が生じる。一方、標的核酸中にSNPが生じており、標的核酸とプローブとの間で良好なハイブリダイゼーションが生じなかった場合、光を照射しても、光応答物質同士が十分接近していないため共有結合が生じない。すなわち、正常な配列とSNPを有する配列との違いが、光連結の有無となる。
(d)連結したプローブから放出される蛍光の測定
この工程では、光連結の有無を蛍光の発生の有無として検出する。上記の通り、2種のプローブには、FRETの反応におけるドナー分子およびアクセプター分子がそれぞれ結合されており、2種のプローブ同士が光連結できた場合、ドナー分子とアクセプター分子との間でFRETが生じ得る状態となる。ここで、ドナー分子として、波長436nmの光によって励起され、波長480nmの光を放出する分子を使用し、アクセプター分子として波長480nmの光によって励起され、波長535nmの光を放出する分子を使用した場合、蛍光測定用励起光源41から436nmの光を照射すると、その光は一旦ドナー分子に吸収された後、FRETによってアクセプター分子が励起され、続いて波長535nmの光が放出される。一方、光連結が出来なかった場合は、蛍光測定用励起光源41からの波長436nmの光は、ドナー分子によって吸収された後、そのままドナー分子から波長480nmの光として放出される。蛍光測定用フィルター44および蛍光取得ユニット42で測定することで、波長535nmの光が放出されたか、波長480nmの光が放出されたかを判断することによって、光連結反応が生じたか否か、すなわち標的核酸にSNPがあったか否かが判断できる。また、ドナー分子およびアクセプター分子の代わりに、蛍光分子およびクエンチャー分子を使用することもでき、この場合、光連結が生じた場合では、励起された蛍光分子から生じるエネルギーは、クエンチャー分子によって消光され、光連結が生じなかった場合には、励起された蛍光分子から生じるエネルギーは、そのまま蛍光として放出される。
上述のようなSNP検出方法は、本発明の遺伝子解析装置の使用の一例であり、その他の用途にも使用できる。例えば、SNPに限らず特定の配列を有する核酸のスクリーニング等にも使用できる。また、本発明の遺伝子解析装置は、温度調節手段2、光連結誘導手段3および蛍光測定手段4の全ての機能を使用する用途に限定されず、PCRの増幅のみ、光連結誘導のみまたは蛍光測定のみに使用することもできる。
本発明の遺伝子解析装置を作製し、遺伝子解析を実行し、評価した。遺伝子解析としては、CYP2C9遺伝子のSNP解析を行った。
[装置の製造]
<反応容器>
反応容器としてPCR用チューブを使用した。200μl容量で、キャップ上面が平らなマイクロチューブ(Applied Biosystems社製)を使用した。
以下の表1に示される各物質を、表記した量となるように添加し、全量45μlのサンプルを作製した。
Figure 0005633133
ここにおいて、ゲノムDNAの条件を代えて、WT、MTおよびNCで示される、以下の3種類のサンプルを作製した。
WT:正常なCYP2C9遺伝子を含むゲノムDNAを使用
MT:SNPを含むCYP2C9遺伝子を含むゲノムDNAを使用
NC:ゲノムDNAを添加しない。
<温度調節手段>
温度調節手段としては、一般にPCR用サーマルサイクラーにおいて使用されるものを使用した。すなわち、複数枚のペルチェ素子と熱電対とで構成された温度調節ブロックを使用した。当該ブロックは、チューブを12連で設置可能なものとした。それを制御系に接続し、通常のPCR法を実行できるよう設定した。また、光連結反応および蛍光測定において、特定の温度条件を達成できるように設定した。
<光連結誘導手段>
光連結誘導手段として、波長365nmの光を照射する光連結用光源と、光連結用フィルターとしてのレンズとを組み合わせて作製した。光連結用光源は、日亜化学の高出力UV−LEDチップ(型番NCSU033A:駆動電流500mA)を備えた浜松ホトニクス製のUV−LEDモジュール(型番LC−L2)を用いた。レンズは、チューブ内の光照射位置での照度および希望照射距離を考慮して、φ6mmの照射エリアを持つもの(浜松ホトニクス社製、型番L10561−215)を選択した。
チューブとUV−LEDとが一対一となるように、12個のUV−LEDを用意した。12個のUV−LEDを等間隔に並べ、冷却固定ブロック(アルミ製ブロック)で固定した。そのように固定されたブロックを、温度調節手段に設置されたチューブの上に設置することで、1つのUV−LEDが、1つのチューブの蓋部分を真上から照射できる。このアルミ製ブロックは、2つのブロックから構成され、それぞれに円筒状のUV−LEDを挟持固定できるよう溝が形成されている。UV−LEDとアルミ製ブロックとの間には、アルミの粉末が練り込まれた熱伝導性の高いシリコーン樹脂を挟んだ。さらに、UV−LEDを挟んで固定した後、アルミ製ブロックの外側に、ヒートシンク(10cm角、厚さ30mm)を4枚取り付けた。さらに、ヒートシンクに対して送風する空冷ファンを設置した。
UV−LEDを固定したアルミ製ブロックは、チューブが設置される温度調節手段の上部に、上下移動可能な状態で吊るして設置した。また、当該アルミ製ブロックの両端に位置決め用のピンを付けた。このピンは、アルミ製ブロックを温度調節手段に向けて降ろしたときに、温度調節手段に設けられた穴に収まるようになっており、これによって、各UV−LEDが、対応するチューブに対して適切に位置することができ、さらに、衝撃等に起因してそれらの位置関係がずれるのを予防することができる。
UV−LEDは、UV−LEDヘッド部とLEDドライバー部からなり、LEDドライバー部はACアダプターによって電源供給される。LEDドライバーは、RS232C通信でパソコンと接続した。UV−LEDの制御は、米国National Instruments社のLabviewを用いて作製した。また、PCR装置とUV−LEDを連動させて、UV照射、PCRチューブの温度制御、蛍光測定を行った。UV−LEDの冷却固定ブロックの温度をモニターし、たとえば、30℃を超えた場合には、空冷ファンが回り冷却するように設計した。
<蛍光検出手段>
蛍光検出手段は、蛍光測定用励起光源として日亜化学の470nmの青発光の駆動電流20mAのLEDを使用した。また、蛍光取得ユニットとして、浜松ホトニクス製の光電子増倍管(型番H6780)を使用した。上記青色LEDは、470nm以外の可視光も若干放出するため、蛍光波長に被らないように励起光源のスペクトル幅を470nm±20nmや470nm±10nmに限定するバンドパスフィルターを必要に応じ設置した。蛍光については、3波長用に3組のフィルターを交換して使用した。
また、図1に示すように、ダイクロイックミラーおよび迷光吸収ユニットを使用した。これにより、励起光源から照射された波長470nmの光が、ダイクロイックミラーで90度曲げられて、チューブの底から照射される。それによって励起された蛍光分子から放射される蛍光は、フィルターを通して光電子増倍管で検出される。
<ガラス基板>
反射防止コーティングと、赤外反射コーティングとを施したガラス基板を使用した。屈折率1.52のガラス基板の片面に、高周波スパッタ装置により、基板温度を200℃として、ITOを50nm程度形成した。これが、赤外反射コーティングとなる。また、ガラス基板の他方の面に、スパッタで屈折率1.47のSiOの膜を62nm程度形成した。これによって、通常4%以上の反射率が、1〜2%程度の反射率に抑えられる。これが、反射防止コーティングとなる。
<ヒータープレート>
チューブを固定および加熱するためのヒータープレートを作製し、設置した。アルミ製プレートのチューブを固定する面とは反対側に、坂口電熱製シリコンラバーヒーターを貼り付けた。またヒーター内に、ヒーターの温度制御用の熱電対を設置した。ヒーター温度調節は、熱電対の温度モニターでヒーターをPID制御した。ヒータープレートは、温度調節手段にチューブをセットした後に、チューブの蓋を押し付けて固定した。
[解析の実行および評価]
上記の通り作製した遺伝子解析装置を使用して、PCR法による核酸増幅、UV照射による光連結およびFRETを利用した蛍光検出を行った。上述のとおり、3種のサンプル(WT、MTおよびNC)について、CYP2C9遺伝子のSNP解析を行った。CYP2C9遺伝子のSNP解析は、既に正常遺伝子と変異遺伝子との識別検出系が確立されている。
上記の遺伝子解析装置を使用した方法(本発明方法)のほかに、核酸増幅、光連結および蛍光検出を個々の装置によって行う従来の解析方法(従来方法)を行い、さらに、核酸増幅および光連結を本発明の装置によって行い、蛍光検出のみ従来の測定装置で行う方法(混合方法)を行った。
<従来方法>
図6は、従来方法による測定結果である。蛍光測定の際に、ドナー分子が発する波長488nm近辺の光およびアクセプター分子が発する波長594nm近辺の光を、チューブの温度を上昇しながら随時測定した。縦軸を、アクセプター分子由来の594nm付近の蛍光強度をドナー分子由来の488nm付近の蛍光強度で割った比とし、横軸を温度として表した。したがって、アクセプター分子とドナー分子との間でFRETが良好に生じる場合には、縦軸の蛍光強度比は高く検出される。
NCのサンプルは、鋳型となるゲノムDNAを添加していないため、PCRを行っても標的核酸が増幅されず、2種のプローブが標的核酸上で隣接した状態が生じない。そのため、アクセプター分子とドナー分子との間でFRETが生じることはなく、それぞれ独立に蛍光を発する。結果として、図6のように、温度変化にかかわらず、一定の蛍光強度比を示す。
一方、WTのサンプルは、正常なCYP2C9遺伝子を含むゲノムDNAを添加したものであり、PCRによって正常配列を有した標的核酸が増幅される。増幅された標的核酸に対し、2種のプローブが隣接してハイブリダイズする。その後、UVを照射し光連結を誘導するが、ここで、全ての隣接したプローブ間で光連結が生じるわけではなく、一部のみが光連結する。図6の結果の通り、低温域では、光連結の有無に関係なく、2種のプローブは標的核酸上で隣接した状態に維持されているため、FRETが良好に生じて蛍光強度比が高く検出される。しかし、高温域では、プローブと核酸とのハイブリダイゼーションが解かれ、光連結を生じなかったプローブ同士が分離する分、蛍光強度比は低下する。高温域で検出される蛍光強度比は、光連結が生じてアクセプター分子とドナー分子とが近接した状態が維持されたプローブに起因するものである。この実験で使用されるプローブのTm値(ハイブリダイゼーションが解かれる温度)は、65度付近であるが、その温度付近を境に蛍光強度比が低下していることから、本実験の信頼性が高いことがわかる。
MTのサンプルは、SNPを含むCYP2C9遺伝子を含むゲノムDNAを添加したものであり、PCRによって標的核酸は増幅されるものの、2種のプローブとのハイブリダイゼーションは、WTほど効率良く生じない。その結果、UV照射を行っても光連結はほとんど生じない。図6の結果から、低温域では標的核酸とのハイブリダイゼーションに起因して蛍光強度比が高くなっているものの、高温域では、ハイブリダイゼーションが解かれると、プローブがばらばらとなり、蛍光強度比が低下することが理解できる。MTは、最終的に、NCの蛍光強度比と近い値となっている。
実際に未知の標的核酸についてSNP検出する場合、値の安定した高温域での蛍光強度比によって判定できるが、全温域における蛍光強度比のプロファイルからは、測定結果の信頼性を知ることが出来る。したがって、本発明による測定が信頼できるものかどうかを判断する場合、最終的な蛍光強度比の比較に加えて、プロファイルの比較が重要となる。
<本発明方法>
図7は、本発明方法による測定結果である。本発明による遺伝子測定装置を使用した場合、NCのサンプルでは、温度にかわらずほぼ一定の蛍光強度比が得られるのに対し、WTのサンプルおよびMTのサンプルでは、低温域では高いものの、65度付近を境に高温域で低い蛍光強度比が得られた。さらに、WTのサンプルに比べて、MTのサンプルは、全温度域で低く、高温域ではMTはNCに近い蛍光強度比となった。すなわち、本発明の遺伝子解析装置を使用した方法によって、個々の装置を組み合わせて使用する従来方法と同様の結果が得られることがわかった。
<混合方法>
図8は、混合方法による測定結果である。すなわち、核酸の増幅および光連結誘導までは本発明の遺伝子解析装置によって行い、その後、サンプルを従来の蛍光検出装置に移して測定した結果である。測定結果から、この方法によっても、従来方法と同様の結果が得られることがわかった。このことから、核酸の増幅および光連結誘導について、本発明の装置によれば、個別の装置を使用する場合と、同程度の反応効率を達成できることがわかった。
さらに、図9は、図6〜図8に示されるプロファイルから90℃における蛍光強度比を抽出し、棒グラフとして示したものである。この結果から、各方法の間で、蛍光強度比の値に多少の違いはあるものの、NC:WT:MTの蛍光強度比の値の比は同等であることがわかる。
以上より、本発明の遺伝子解析装置を使用すれば、従来の個別の装置を使用して行う遺伝子解析と同様に、信頼性の高い結果が得られることがわかった。また、本発明の装置を使用することで、サンプルチューブの装置間の移動といった煩雑な作業を行う必要がなく、最終的に解析結果が得られるまでの時間も短縮された。
本発明は、遺伝子解析装置に関する。より詳細には、本発明は、核酸の増幅反応、光連結反応および蛍光測定を利用した遺伝子解析装置に関する。
1…反応容器、1a…蓋、1b…チューブ本体、1c…透過窓、11…光照射位置、2…温度調節手段、21…温度調節ブロック、22…温度調節用ヒートシンク、3…光連結誘導手段、31…光連結用光源、32…光連結用フィルター、33…冷却固定ブロック、34…光連結用ヒートシンク、35…空冷ファン、4…蛍光測定手段、41…蛍光測定用励起光源、42…蛍光取得ユニット、43…励起用フィルター、44…蛍光測定用フィルター、45…ダイクロイックミラー、46…迷光吸収ユニット、47…集光用レンズ、5…ガラス基板、51…反射防止コーティング、52…赤外反射コーティング、6…ヒータープレート

Claims (8)

  1. 核酸の増幅および光連結反応が行われるサンプルが収容される反応容器と、
    前記反応容器内のサンプルの温度を調節する温度調節手段と、
    前記反応容器内のサンプルに光連結反応を促進する光を照射する光連結用光源を備えた光連結誘導手段と、
    前記反応容器内のサンプルにおける光連結反応の有無を測定するための蛍光測定用励起光源および蛍光取得ユニットを備えた蛍光測定手段と
    を備え、
    前記光連結誘導手段と前記蛍光測定手段とが、前記反応容器を挟んで対向して位置し、
    前記光連結誘導手段と前記反応容器との間に、前記光連結誘導手段側に紫外光に対する反射防止コーティングが施され、前記反応容器側に赤外光を反射する赤外反射コーティングが施されたガラス基板を有する
    遺伝子解析装置。
  2. 前記蛍光測定手段が、前記蛍光測定用励起光源からの光の波長帯域を制限するフィルターと、前記反応容器内のサンプルから放出される蛍光の波長帯域を制限するフィルターとを備え、
    前記反応容器が蓋を有したチューブであり、前記蓋は平らな形状であり且つ紫外光から可視光の間の光を透過し、
    前記光連結誘導手段と前記反応容器との間に、前記チューブの蓋に押し付けて固定されるヒータープレートを備え、前記ヒータープレートは前記光連結誘導手段からの光を前記反応容器まで通過させる孔を有し、
    前記温度調節手段は、複数の前記反応容器をそれぞれ収容できる複数の孔を有した温度調節ブロックと、前記温度調節ブロックの側面に備えられた温度調節用ヒートシンクとを備え、
    前記光連結誘導手段は、前記光連結用光源を固定し且つ冷却する冷却固定ブロックと、前記冷却固定ブロックに取り付けられた光連結用ヒートシンクとをさらに備えた
    請求項1に記載の装置。
  3. 前記光連結用光源が、365nmを中心波長とする光を照射し、365nm±10nmのバンド幅の透過用フィルターを備える請求項1に記載の装置。
  4. 前記温度調節手段が、前記反応容器内のサンプルの温度を、核酸の増幅および光連結反応の進行に適した温度に調節する請求項1に記載の装置。
  5. 前記蛍光測定用励起光源が発光ダイオードであり、前記蛍光取得ユニットがアバランシェ・フォトダイオード、光電子増倍管またはフォトダイオードである請求項1に記載の装置。
  6. 前記光連結用光源と前記反応容器との間に挿入可能な、表面に凹凸が形成された無反射板を備える請求項1に記載の装置。
  7. 前記ガラス基板における前記赤外反射コーティングは、100nm以下の厚さの酸化インジウムスズ膜から成る請求項1に記載の装置。
  8. 前記光連結誘導手段は、前記光連結用ヒートシンクに対して送風する空冷ファンをさらに備えた請求項に記載の装置。
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