JP5631632B2 - 表面処理Ti材料及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、燃料電池用セパレータ材料等に好適に用いることが可能で、表面にAu又はAu合金(Auを含む層)が形成された表面処理Ti材料及びその製造方法に関する。
チタンは、耐食性に優れる元素として腐食環境下で多く用いられる金属のひとつである。しかしながら、チタン自体は導電率が低く、さらに表面に酸化層を形成するために接触抵抗が高く、チタンに他の部材を接触させて導電性を確保するような部位には用いにくい。
そこで、チタン基材に、湿式金めっきを施すことで接触抵抗を小さくすることが知られている。又、Ti表面にAu,Ru、Rh、Pd、Os、Ir及びPt等から選ばれる貴金属をスパッタ成膜する技術が知られている(特許文献1)。さらに、特許文献1には、Ti表面に上記貴金属の酸化物を成膜することが記載されている。
一方、Ti基材の酸化被膜の上に、Ti,Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W等からなる中間層を介してAu膜を形成する技術が知られている(特許文献2)。この中間層は、基材酸化膜との密着性、すなわちO(酸素原子)との結合性が良いとともに、金属または半金属のためにAu膜との密着性、結合性が良いとされている。
更にTi基材の表面に、Ru、Rh、Pd、Ir、Os及びPtからなる群より選択される少なくとも1種類以上のAuより易酸化性の貴金属からなる第1成分とAuとの合金層、又はAu単独層が形成され、
前記合金層又は前記Au単独層と前記Ti基材との間に、Ti、Oがそれぞれ10%以上でかつ前記第1成分が20%以上含まれる1nm以上の中間層が存在する技術が知られている(特許文献3)。
特開2001−297777号公報 特開2004−185998号公報 特開2009−35748号公報
しかしながら、湿式の金めっきの場合、金めっきの電着形状が粒状であり、金めっきの付着量が少ないと、チタン基材表面の一部に非めっき部分となる部分が生じる。そのため、チタン基材表面全体を均一に金めっきするためには、Auの付着量を多くする必要がある。
特許文献1記載の技術の場合、密着性の良いAu合金膜を得るためには、チタン基材表面の酸化皮膜を取り除く処理が必要であり、酸化被膜の除去が不充分な場合は貴金属膜の密着性が低下するという問題がある。
又、特許文献2記載のチタン材の場合、表面処理層や中間層が薄い場合には耐摩耗性が十分ではないことがある。一方、Au層が薄く、中間層を構成する金属が厚い場合には、耐摩耗性は良好であるが、中間層の金属によっては導電性が十分ではない場合がある。
すなわち、本発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、チタン基材表面に高導電性及び高摩耗性を有する表面層を設けた表面処理Ti材料及びその製造方法の提供を目的とする。
本発明者らは種々検討した結果、Ti基材表面にAuとCrを含む表面層を形成させ、さらにTi,O及びCrを含む中間層を形成させると共に、表面層と中間層との合計厚み部分のCr量を規定することで、導電性を有しつつ、耐摩耗性を有する表面層が得られることを見出した。
上記の目的を達成するために、本発明の表面処理Ti材料は、Ti基材の表面にAuとCrとを含む表面層が乾式成膜により形成され、前記表面層と前記Ti基材との間に、Ti及びOがそれぞれ10原子%以上で、Au20原子%未満かつCr20原子%以上の中間層が1nm以上存在し、Auの付着量が4000ng/cm以上70000ng/cm未満であり、前記表面層と前記中間層の合計厚みに対し、Crを20原子%以上含む厚み部分が30%以上を占める。


Crの付着量が200ng/cm以上であることが好ましい。
前記Ti基材は、Tiと異なる基材表面に厚み10nm以上のTi被膜を形成してなるものであってもよい。
本発明の表面処理Ti材料の製造方法は、前記表面処理Ti材料の製造方法であって、前記Ti基材の表面に、Crを乾式成膜した後、Auを乾式成膜する。
前記乾式成膜がスパッタリングであることが好ましい。
本発明によれば、Auの付着量を低減しつつ、Auを含む層をTi上に強固かつ均一に形成させることができ、さらに導電性、耐食性及び耐摩耗性を向上できる。
本発明の実施形態に係る表面処理Ti材料の構成を示す模式図である。 実施例1の表面処理Ti材料の断面のXPS像を示す図である。
以下、本発明の実施形態に係る表面処理Ti材料について説明する。なお、本発明において%とは、特に断らない限り、原子(at)%を示すものとする。
又、本発明の表面処理Ti材料は電気伝導性を有し、従来からAuを被覆した材料の用途である装飾品として使用する他に、半導体部品、航空宇宙材料部品、自動車部品、センサー、計測機器部品、端子、電気接点部品、電極材料等に使用することができる。
又、本発明は材料同士が接触して用いられ、導電性を維持しつつ、耐摩耗性に優れる点においては、燃料電池用セパレータとしても使用できる。
図1に示すように、表面処理Ti材料は、Ti基材2の表面に中間層2aが形成され、中間層2aの表面に表面層6が形成されてなる。
<Ti基材>
本発明の表面処理Ti材料は、一般的な環境下の使用で実用上問題なく使用できるが、Ti基材自身の耐食性が良好なことから、腐食環境下で或いは腐食されやすい環境下での使用が期待される。
Ti基材は無垢のチタン材であってもよいが、Tiと異なる基材表面に厚み10nm以上のTi被膜を形成したものであってもよい。Tiと異なる基材としてはステンレス鋼やアルミニウム,銅等が挙げられ、これらの表面にTiを被覆することにより、チタンと比べて耐食性の低いステンレス鋼やアルミニウム,銅等の耐食性を向上させることができる。但し、耐食性向上効果はTiを10nm以上被覆しないと得られない。
Ti基材2の材質はチタンであれば特に制限されない。又、Ti基材2の形状も特に制限されず、Cr及び金をスパッタできる形状であればよいが、セパレータ形状にプレス成形することを考えると、Ti基材の形状は板材であることが好ましく、Ti基材全体の厚みが10μm以上の板材であることが好ましい。
中間層2aに含まれるO(酸素)は、Ti基材2を空気中に放置することにより自然に形成されるが、酸化雰囲気で積極的にOを形成してもよい。
なお、Tiの濃度は、後述するXPSによる濃度検出で行い、指定元素の合計を100%として、各元素の濃度を分析して行う。又、表面処理Ti材料の最表面から1nmの深さとは、XPS分析によるチャートの横軸(厚み方向)の距離(SiO2換算での距離)である。
<表面層>
Ti基材2上に、CrとAuとを含む表面層6が形成される。この表面層は、Ti基材にAuの特性(導電性)と耐磨耗性を付与するためのものであり、用途に応じて耐食性、耐水素脆性をも付与する。
Crは、a)酸素と結合しやすく、中間層を形成して表面層とTi基材との密着性を向上させる、b)Auと合金を構成することでAuとの密着性を確保させる、c)合金化して硬い層が得られる、d)Crを含む層の導電率がAuと比べて大きく低下しない、という性質を有し、導電率を維持しつつ、耐摩耗性のある表面処理層を構成することができる。また、Crは耐食性に優れ、水素を吸収しにくい。
Zr、Hf、V、Nb、Ta、Mo、Wも、酸素と結合しやすく、Auと合金化する元素ではあるが、Zr、Hf、Vの場合、Auと合金化した層の導電率がAuとCrの合金層の導電率に比べて低い。又、Wは高価であり、コストが高くなる。Nb、Ta、Moの場合、特にAuが薄い場合にCrに匹敵する耐食性が得られない。
Ru、Rh、Pd、Ir、Os及びPtも酸素と結合しやすく、Auと合金化する元素である。しかし、Ru、Pd、又はPtがAuと合金化した層の硬さは、AuとCrの合金層の硬さに比べて柔らかく、耐摩耗性がAuとCrの合金層に比べて劣る。Rh、Ir、Osは高価であり、コストが高くなる。
表面層は、後述するXPS分析により確認することができ、XPS分析により最表面から下層に向かってAuとCrを含む部分であって、以下の中間層より上層に位置する部分(Au20%以上の部分)を表面層とする。表面層の厚みは3〜100nmであることが好ましい。表面層の厚みが3nm未満であると、Ti基材上に燃料電池用セパレータに要求される耐食性を確保できなくなる場合がある。表面層の厚みがより好ましくは5nm以上、さらには好ましくは10nm以上である。
なお、表面層6の最表にAu単独層が形成されていてもよい。Au単独層は、XPS分析によりAuの濃度がほぼ100%の部分である。
<中間層>
表面層(又はAu単独層)6とTi基材2との間に、XPS分析により、Ti及びOがそれぞれ10原子%以上で、Au20原子%未満かつCr20原子%以上の中間層2aが1nm以上存在する。中間層の厚みの上限は限定されないが、Crのコストの点から100nm以下であることが好ましい。
通常、Ti基材は表面に酸化層を有しており、酸化され難いAu(含有)層をTi表面に直接形成させるのは難しい。一方、上記金属はAuに比べて酸化され易く、Ti基材の表面でTi酸化物中のO原子と酸化物を形成し、Ti基材表面に強固に結合するものと考えられる。
なお中間層にはAuは含まれないほうが好ましく、Auが20%以上含まれると密着性が低下する。中間層中のAu濃度を20%未満とするためには、Ti基材上に、Cr単体のターゲット、又は低Au濃度のCr−Au合金ターゲットを用いてスパッタすることが好ましい。
ここで、XPS(X線光電子分光)分析による深さ(Depth)プロファイルを測定し、Au,Ti,O,Crの濃度分析を行ってスパッタ層の層構造を決定することができる。なお、XPSによる濃度検出は、指定元素の合計を100%として、各元素の濃度を分析する。又、XPS分析で厚み方向に1nmの距離とは、XPS分析によるチャートの横軸の距離(SiO換算での距離)である。
Ti、Oの下限をそれぞれ10%とし、Crの下限を20%とした理由は、Crが20%未満である部分はTi基材の表面に近く、Tiが10%未満である部分は表面層に近くなるためであり、又、Oが10%未満である部分はCrとTiがO原子と充分な酸化物を形成しておらず、中間層として機能しないと考えられるからである。又、Ti、Oはそれぞれ10%から急激に減少するので、測定上から10%を下限とする。Auを20%未満とした理由は密着性を向上させるためである。中間層が1nm未満の場合には,Crが薄く,Ti基材とAuが接する部分が多くなるため、表面層の密着性が劣化する場合がある。
本発明の表面処理Ti材料において、Auの付着量が4000ng/cm以上である必要がある。
Auの付着量が4000ng/cm未満であると、燃料電池用セパレータに要求される導電性、耐食性を確保できなくなり、接触抵抗が高くなる。なお、省金化の点からAuの付着量は70000ng/cm未満であり、好ましくは40000ng/cm以下、更に好ましくは20000ng/cm以下である。Auの付着量70000ng/cmは、純Auの厚み30nmに相当する。
又、本発明の表面処理Ti材料において、Crの付着量が200ng/cm以上である必要がある。
Crの付着量が200ng/cm未満であると、Crが少ないために表面層の密着性が劣化する。
又、本発明の表面処理Ti材料において、厚み方向のXPS分析により、表面層と中間層の合計厚みに対し、Crを20原子%以上含む厚み部分が30%以上を占める。
Crは比較的硬い(ビッカース硬度が高い)金属である一方、Auは柔らかい金属である。そのため,Auを含む膜にCrが多く含まれる(Crを20原子%以上含む厚み部分が30%以上を占める)と皮膜の硬さが向上し,結果として耐摩耗性が向上する。
本発明において、Ti基材と表面層6との間に、Tiが50%未満でOが20%以上含まれる酸化層が100nm未満の厚みで形成されていることが好ましい(なお、この酸化層の一部が中間層の領域と重なる場合もある)。
酸化層が存在すると、燃料電池の連続発電試験を行った場合にチタン基材が脆化することを防止する。
ここで、Tiが50%未満の領域は,Ti濃度が全体の1/2以下であるので,チタン基材と異なる部分とみなしている。そして、Ti基材の表面には酸化膜が存在するため,Tiが50%未満の厚み部分から表面層までを酸化層と定義する。又、Oを20%以上含まれる領域を酸化層とした理由は、酸化層のO(酸素)濃度が20%未満であると、燃料電池の連続発電試験を行った場合にTi基材が脆化し、表面処理Ti材料としての耐久性が劣化するためである。
但し、酸化層の厚みが100nm以上になると、表面層の密着性や導電性が低下する場合がある。一方、酸化層が薄いと,燃料電池の連続発電試験を行った場合にチタン基材が脆化して表面処理Ti材料としての耐久性が劣化する恐れもある。従って、酸化層の厚みが好ましくは5nm以上,より好ましくは10nm以上である。
表面層中のAuの割合が下層側から上層側に向かって増加する傾斜組成になっていることが好ましい。ここで、Auの割合は、上記したXPS分析で求めることができる。表面層の厚みは、XPS分析での走査距離の実寸である。
表面層を傾斜組成とすると、表面層の下層側ではAuより易酸化性のCrの割合が多くなり、Ti基材表面との結合が強固になる一方、表面層の上層側ではAuの特性が強くなるので、耐食性と耐久性が向上する。
<表面処理Ti材料の製造>
表面処理Ti材料の中間層の形成方法としては、Ti基材の表面Ti酸化膜を除去せずに、この基材にCrをターゲットとしてスパッタ成膜することにより、表面Ti酸化膜中のOにCrが結合し、中間層を形成することができる。又、Ti基材2の表面Ti酸化膜を除去後、Crの酸化物をターゲットとしてスパッタ成膜することや、Ti基材2の表面Ti酸化膜を除去後、Crをターゲットとし酸化雰囲気でスパッタ成膜することによっても中間層を形成することができる。
なお、スパッタの際、Ti基材の表面Ti酸化膜を適度に除去し、基材表面のクリーニングを目的として逆スパッタ(イオンエッチング)を行ってもよい。逆スパッタは、例えばRF100W程度の出力で、アルゴン圧力0.2Pa程度としてアルゴンガスを基材に照射して行うことができる。
中間層のAuは、以下の表面層を形成するためのAuスパッタにより、Au原子が中間層に入り込むことによって中間層内に含まれるようになる。又、CrとAuを含む合金ターゲットを用いてTi基材表面にスパッタ成膜してもよい。
表面層の形成方法としては、例えば上記したスパッタによりTi基材上にCrを成膜した後、Cr膜の上にAuをスパッタ成膜することができる。この場合、スパッタ粒子は高エネルギーを持つため、Cr膜のみがTi基材表面に成膜されていても、そこにAuをスパッタすることにより、Cr膜にAuが入り込み、表面層となる。又、この場合、表面層中のAuの割合が下層側から上層側に向かって増加する傾斜組成となる。
Ti基材表面に最初にCrとAuのうちAu濃度が低い合金ターゲットを用いてスパッタ成膜し、その後、CrとAuのうちAu濃度が高い合金ターゲットを用いてスパッタ成膜してもよい。
厚み方向のXPS分析において、表面層と中間層の合計厚みの30%以上の厚み部分がCrを20原子%以上含むようにする方法としては,スパッタ時に成膜するCrの厚みをAuに比較して厚くすることが挙げられる。好ましくは、(Auの厚み/Crの厚み)を10以下とするとよい。
本発明の実施形態に係る表面処理Ti材料によれば、Auを含む層をTi上に強固かつ均一に形成させることができ、この層が導電性、耐食性及び耐久性を有する。又、本発明の実施形態によれば、Auを含む層をスパッタ成膜すればこの層が均一な層となるので、湿式の金めっきに比べて表面が平滑となり、Auを無駄に使用しなくて済むという利点がある。
<試料の作製>
Ti基材として、厚み100μmの工業用純チタン材(JIS1種)を用い、FIB(集束イオンビーム加工)による前処理をした。FE−TEM(電解放射型透過電子顕微鏡)によるエネルギー分散型蛍光X線分析(EDX)により観察したところ、Ti基材の表面には予め約10nmのチタン酸化物層が形成されていたのを確認した。
又、一部の実施例では、厚み100μm工業用純ステンレス鋼材(SUS316L)若しくは厚み100μm純銅(C1100)に対し、表1に示す所定厚みのTiを被覆したものを用いた(Ti被覆材)。Tiの被覆は、電子ビーム蒸着装置(アルバック製、MB05−1006)を用いた真空蒸着により行った。
次に、Ti基材のチタン酸化物層の表面に、スパッタ法を用いて所定の目標厚みとなるように、Crを成膜した。ターゲットには純Crを用いた。次に、スパッタ法を用いて所定の目標厚みとなるようにAuを成膜した。ターゲットには純Auを用いた。
目標厚みは以下のように定めた。まず、予めチタン基材にスパッタで対象物(Cr、Au)を成膜し、蛍光X線膜厚計(Seiko Instruments製 SEA5100、コリメータ0.1mmΦ)で実際の厚みを測定し、このスパッタ条件におけるスパッタレート(nm/min)を把握した。そして、スパッタレートに基づき、厚み1nmとなるスパッタ時間を計算し、この条件でスパッタを行った。
Cr及びAuのスパッタは、株式会社アルバック製のスパッタ装置を用い、出力DC50W アルゴン圧力0.2Paの条件で行った。
<層構造の測定>
得られた試料について、XPS(X線光電子分光)分析による深さ(Depth)プロファイルを測定し、Au,Ti,O,Crの濃度分析を行ってスパッタ層の層構造を決定した。XPS装置としては、アルバック・ファイ株式会社製5600MCを用い、到達真空度:6.5×10−8Pa、励起源:単色化AlK、出力:300W、検出面積:800μmΦ、入射角:45度、取り出し角:45度、中和銃なしとし、以下のスパッタ条件で、測定した。
イオン種:Ar+
加速電圧:3kV
掃引領域:3mm×3mm
レート:2nm/min.(SiO換算)
なお、XPSによる濃度検出は、指定元素の合計を100%として、各元素の濃度(at%)を分析した。又、XPS分析で厚み方向に1nmの距離とは、XPS分析によるチャートの横軸の距離(SiO換算での距離)である。
図2は、実施例1の試料の断面のXPS像を示す。
Ti基材2の表面に、CrとAuとを含む表面層6が形成されている。さらにTi基材2と表面層6との間に、Ti及びOがそれぞれ10原子%以上で、Au20原子%未満かつCr20原子%以上の中間層2aが1nm以上存在することがわかる。
また、厚み方向のXPS分析により、表面層と中間層の合計厚みtに対し、Crを20原子%以上含む厚み部分tが30%以上を占めることがわかる。
なお、本発明においては、中間層を定義するためTi、O等の濃度を規定している。従って、中間層の境界は便宜上Ti、O濃度によって決められるため、中間層とその上下の層(例えばTi基材2)との間に、中間層ともTi基材とも異なる層が介在する場合もある。
<各試料の作製>
初期の表面Ti酸化層の厚みがそれぞれ異なるチタン基材(純Ti、Ti被覆材)に対し、スパッタ時のCr膜及びAu膜の目標厚みを種々変更して実施例1〜8の試料を作製した。
比較例9として、Au膜のみ成膜した。
比較例10として、Cr膜のスパッタ厚みを0.25nmに低減して試料を作製した。
比較例11として、Au膜のスパッタ厚みを3nmに低減し、Cr膜のスパッタ厚みを0.25nmに低減して試料を作製した。
比較例12として、Au膜のスパッタ厚みを15nmに厚くして試料を作製した。
比較例13として、Au膜のスパッタ厚みを30nmに厚くして試料を作製した。
比較例14として、Au膜のスパッタ厚みを2nmに低減したこと以外は実施例1と同様にして試料を作製した。
参考例15として、スパッタの代わりに、湿式めっきによりTi基材表面にAu層を5nm相当成膜した。湿式めっきは、基材の浸漬脱脂、水洗、酸洗、水洗、活性化処理、水洗を順に行った後、亜硫酸系のめっき浴で金めっきし、さらに水洗、熱処理を行った。
参考例16として、スパッタ時にCrの代わりにTiを成膜したこと以外は実施例1と同様にして試料を作製した。
参考例17として、スパッタ時にCrの代わりにTaを成膜したこと以外は実施例1と同様にして試料を作製した。
参考例18として、スパッタ時にCrの代わりにMoを成膜したこと以外は実施例1と同様にして試料を作製した。
参考例19として、スパッタ時にCrの代わりにPdを成膜したこと以外は実施例1と同様にして試料を作製した。
<評価>
各試料について以下の評価を行った。
A.被膜の密着性
各試料の最表面(表面層)に1mm間隔で碁盤の目を罫書いた後、粘着性テープをはり付け、さらに各試験片を180°曲げて元の状態に戻し、曲げ部のテープを急速にかつ強く引き剥がす剥離試験を行った。
剥離が全くない場合を○とし、一部でも剥離があると目視で認められた場合を×とした。
B.成膜形状
各試料の断面のSTEM像を撮影し、数nmから数百nmの粒子が集まった凹凸構造が観察された場合を粒状とし、粒状に比べて表面が平滑な場合を層状とした。
なおSTEMは、日立製作所製の型番HD−2000を用い、加速電圧200kV、1視野横50nm領域を、1試料につき3視野を測定した。
C.付着量
試料の片面のAuとCuの付着量は,50mm×50mmの試料をフッ硝酸溶液に全量溶解し,ICP(誘導結合プラズマ)発光分光分析して評価した。なお、サンプル数は5個とし,それらの値を平均した値を採用した。
D.導電性(接触抵抗)
接触抵抗の測定は、試料全面に荷重を加える方法で行った。まず、40×50mmの板状の試料の表裏にそれぞれカーボンペーパーを積層し、さらに表裏のカーボンペーパーの外側にそれぞれCu/Ni/Au板を積層した。Cu/Ni/Au板は厚み10mmの銅板に1.0μm厚のNi下地めっきをし、Ni層の上に0.5μmのAuめっきした材料であり、Cu/Ni/Au板のAuめっき面がカーボンペーパーに接するように配置した。
さらに、Cu/Ni/Au板の外側にそれぞれテフロン(登録商標)板を配置し、各テフロン(登録商標)板の外側からロードセルで圧縮方向に10kg/cmの荷重を加えた。この状態で、2枚のCu/Ni/Au板の間に電流密度100mA/cmの定電流を流した時、Cu/Ni/Au板間の電気抵抗を4端子法で測定した。
E.耐摩耗性
耐摩耗性は、磨耗試験機で2枚の試験片の表面層同士を対向させつつ両試料を擦り、擦る前の各試料の付着量と磨耗試験後の各試料の付着量を比較することで評価した。(磨耗試験後の付着量/磨耗試験前の付着量)=0.95以上の場合を耐摩耗性が良好とした。なお、AuとCrの付着量は、対向した2枚の試験片の付着量の平均である。
なお磨耗試験条件は次の通りである。
機器名:新東科学株式会社性 TYPE36
負荷荷重:0.01kgf
摩擦速度:0.001m/S
往復ストローク:30mm
試験片の面積:30×30mm
往復回数:100回/測定
1仕様につき測定するサンプル数:10個
得られた結果を表1、表2に示す。なお、中間層の存在は、試料断面の実際のXPS像から各成分の割合を求めて確認した。
Figure 0005631632
Figure 0005631632
表1、表2から明らかなように、Ti基材上に表面層と中間層が存在し、Auの付着量が4000ng/cm以上70000ng/cm未満であり、厚み方向のXPS分析により、表面層と中間層の合計厚みtに対し、Crを20原子%以上含む厚み部分tが30%以上を占める各実施例の場合、密着性、導電性及び耐磨耗性に優れていた。
一方、Cr膜を成膜しなかった比較例9の場合、密着性が劣化し、導電性及び耐磨耗性の評価ができなかった。
Cr膜のスパッタ厚みを0.25nmに低減した比較例10、11の場合、Cr付着量が200ng/cm未満となると共に、中間層の厚みが1nm未満となり、スパッタ膜の密着性が劣化した。又、導電性及び耐磨耗性の評価ができなかった。
実施例に比べてAu膜のスパッタ厚みが厚い比較例12,13の場合、tに対しtが占める割合が30%未満となり、耐磨耗性が劣化した。
実施例に比べてAu膜のスパッタ厚みが薄い比較例14の場合、導電性が劣化した。
湿式めっきでAuを5nm相当成膜した参考例15の場合、耐摩耗性が劣化した。これは、湿式めっきのめっき皮膜にCrが含有されていないため,皮膜の硬さが低いためと考えられる。
Crの代わりにそれぞれTi、Ta、Mo、Pdを成膜した参考例16〜19の場合、いずれも耐摩耗性が劣化した。
2 Ti基材
2a 中間層
6 表面層
表面層と中間層の合計厚み
Crを20原子%以上含む厚み部分

Claims (5)

  1. Ti基材の表面にAuとCrとを含む表面層が乾式成膜により形成され、
    前記表面層と前記Ti基材との間に、Ti及びOがそれぞれ10原子%以上で、Au20原子%未満かつCr20原子%以上の中間層が1nm以上存在し、
    Auの付着量が4000ng/cm以上70000ng/cm未満であり、
    前記表面層と前記中間層の合計厚みに対し、Crを20原子%以上含む厚み部分が30%以上を占める表面処理Ti材料。
  2. Crの付着量が200ng/cm以上である請求項1に記載の表面処理Ti材料。
  3. 前記Ti基材は、Tiと異なる基材表面に厚み10nm以上のTi被膜を形成してなる請求項1又は2に記載の表面処理Ti材料。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の表面処理Ti材料の製造方法であって、
    前記Ti基材の表面にCrを乾式成膜した後、Auを乾式成膜する表面処理Ti材料の製造方法。
  5. 前記乾式成膜がスパッタリングである請求項4に記載の表面処理Ti材料の製造方法。
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