JP5628713B2 - ディーゼル燃料製造用精製器および精製方法、これを用いたディーゼル燃料製造システムおよび製造方法 - Google Patents
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Description
(i)ディーゼル燃料中に混入する有機酸などの酸性成分は、エンジンまたはその周辺部品に対して悪影響を及ぼすため、バイオディーゼル燃料混合軽油については、品質確保法によりその濃度は酸価として0.13以下と定められている。その対策として、アルカリによる中和処理、イオン交換樹脂などによる吸着処理、水素化による分解処理などが挙げられるが、それぞれアルカリ廃水の発生、イオン交換樹脂の再生薬剤の投入および再生廃油の発生、水素の投入および高圧設備の利用、などの課題があり、より安価で簡便な後処理方法が求められている。
(ii)このとき、上記のように、安価な吸着材として酸性白土や活性白土等を用いる方法があるが、こうした吸着剤は、吸着力は強い一方で飽和吸着量は小さいため、有機酸の含有濃度が高くなると破過速度が早くなり大量の吸着材が必要となってしまう。また、吸着剤を再生する場合も、エネルギー投入や薬品処理とそれに伴う廃棄物の発生は避けられないという課題があった。さらに、薬品を用いて再生処理された吸着剤では、被処理ディーゼル燃料へのアルカリ成分の溶解が起りやすいという課題があった。
(a)反応生成物あるいは製品に対して化学的あるいは物理的な影響を与えない不純物の除去処理として、種々の検討の結果、吸着剤によることが好ましいとの知見を得た。
(b)具体的には、吸着剤として、有機酸等の不純物に対して高い吸着特性を有することが要求される。つまり、有機酸におけるカルボキシル基やエステル化合物におけるエステル基に対して大きな吸着力をする必要がある。種々の検討の結果、アルミニウム化合物系あるいはアルミナ系の吸着剤に、高い吸着特性を有する吸着剤があるとの知見を得た。
(c)また、吸着剤として、有機酸等の不純物に対して選択性の高い吸着特性を有することが要求される。つまり、軽質油等ディーゼル燃料の主成分となる炭化水素系成分に対して吸着力が弱く、有機酸等に対して吸着力の大きな吸着剤を選択する必要がある。種々の検討の結果、アロフェンおよび活性アルミナが高い選択性を有するとの知見を得た。
こうした知見を基にディーゼル燃料製造用精製器を検証した結果、吸着剤としてアロフェンあるいはこれに加えて活性アルミナを使用することによって、原料油から分解油を作製する接触分解反応およびその後の軽質油等の分離処理に伴い発生する有機酸などの不純物を速やかに除去し、かつ簡易に再生可能な構成で、高い純度のディーゼル燃料が得られるディーゼル燃料製造用精製器および精製方法を提供することができる。
接触分解反応は液相で行なわれる一方、反応生成物は製造プロセスにおいて気相で取り出され、液相の製品とされる。このとき、不純物を生成の初期段階で除去することが好ましい一方、除去手段として吸着剤を使用した場合、気相に適した素材と液相に適した素材がある。また、耐熱性あるいは再生可能性など、使用条件の適正も吸着剤として重要な特性となる。発明者の検証の結果、ディーゼル燃料製造プロセスにおいて、アロフェンは、液相のディーゼル燃料中の有機酸に対して非常に選択性の高い吸着特性を有することから、これを対象とする精製器に用いることによって、高い純度のディーゼル燃料が得られるディーゼル燃料製造用精製器を構成することが可能となった。
アロフェンあるいは活性アルミナは、有機酸等の不純物に対して高い吸着特性を有するとともに、再生可能な吸着剤である点において優位である。つまり、分解油や製品油の精製に使用された吸着剤表面には、主として分解反応の副生成物である有機酸が付着する。吸着剤表面における有機酸の酸基は、吸着剤あるいは担持された担体に対して破損あるいは吸着活性の低下を招くとともに、吸着剤の再生機能が損なわれ、再生できなくなることから、所定期間の使用後に再生処理を行う必要がある。発明者の検証の結果、アロフェンあるいは活性アルミナは、こうした影響を受けにくく、また、吸着した有機酸に対しては、不純物の除去手段として、空気あるいは酸素を含有するガスにより燃焼させて除去することによって吸着特性を回復させることができるとの知見を得た。
原料油を貯留する原料タンクと、前記原料タンクから供給される前記原料油を炭化水素からなる分解油に変換するための触媒を有する反応器と、前記反応器で得られた前記分解油を精製する前記第1精製器と、前記第1精製器で精製された前記分解油から軽質油および軽油留分を含む軽油成分を分離する分留器と、前記分留器で分離された前記軽油成分を冷却して精製前粗油にする冷却器と、前記冷却器で作製された前記精製前粗油を精製して製品油にする第2精製器と、を備えることを特徴とする。
原料油を触媒に接触させて炭化水素からなる分解油に変換する接触分解工程と、前記接触分解工程で得られた前記分解油を精製する第1精製工程と、前記第1精製工程で精製された前記分解油から軽質油および軽油留分を含む軽油成分を分離する分留工程と、前記分留工程で分離された軽油成分を冷却して精製前粗油にする冷却工程と、前記冷却工程で冷却された前記精製前粗油を精製して製品油にする第2精製工程と、を備えることを特徴とする。
こうした構成によって、原料油からより高い収量の分解油を作製し、さらにより高い収量のディーゼル燃料が得ることができる。また、熱媒体として原料油を用い、冷却器、第2分留器および第1分留器の順に熱利用する構成としたことで、分留器と冷却器の冷却熱量により原料油の予熱量をまかなうことができ、消費熱量を低減できる。さらに、原料油の予熱により、各分留器内の温度幅が小さくなるとともに、運転立ち上げ時から定常運転まで安定した温度制御が可能となる。このように従前にないエネルギー効率の高いディーゼル燃料製造システムを構成することができる。
精製器の1つの実施態様として、概略全体構成を、図1に示す。精製器Aは、被精製物を精製する吸着剤が充填された充填層A1,被精製物が導入される導入部A2,精製処理された処理物が供出される供出部A3,再生ガスが導入される再生ガス導入部A4、精製処理に使用された再生ガス(排ガス)が排出されるガス排出部A5を備える。また、加熱条件下での再生処理を行うために、精製器Aの周囲に加熱手段A6が設けられる。
分解油や製品油の精製に使用された吸着剤表面には、主として分解反応の副生成物である有機酸が付着する。吸着剤表面における有機酸の堆積は、吸着機能の低下を招くとともに、吸着剤の再生機能が損なわれ再生できなくなることから、所定期間の使用後に再生処理を行う必要がある。精製器Aにおいては、酸素を所定量含む再生ガスを充填層A1に導入し、主として有機酸等を酸化,燃焼させて除去することによって、再生できるとの知見を得た。ここで、精製器Aに充填される吸着剤の再生は、空気のように酸素を含有する清浄な再生ガスを用いることが好ましい。また、再生処理温度は、約200〜500℃に設定されることが好ましく、約300〜400℃が、より好ましい。再生ガスが充填層A1内を通過しながら加熱された吸着剤と接触することによって、吸着剤表面に付着した有機酸が、酸化反応(燃焼反応)により二酸化炭素(CO2)や水(H2O)に変換され、吸着活性を回復させることができる。200℃未満では、酸化反応の効率および脱離効率が低下することがあり、500℃を超えると、酸化反応に伴う反応熱によって吸着剤表面に局部的な過熱が生じ、吸着特性の劣化を生じることがある。充填層A1の温度は、精製器Aの周囲に設けられた加熱手段A6による加熱を制御することによって維持され、その均一化を図ることができる。加熱手段A6の構成は、特に制限されず、例えば、電気ヒータ、バーナ、または熱風、スチーム、廃ガス廃熱等を用いた熱交換器等が挙げられる。
次に、上記精製器を用いたディーゼル燃料製造システム(以下「本システム」という)を詳述する。本システムは、原料タンク、反応器、第1精製器、分留器、冷却器、および第2精製器を備えることを特徴とし、反応器によって作製された気相の分解油を精製する第1精製器と、冷却器によって冷却された精製前粗油を精製して製品油にする第2精製器が構成される。本システムは、上記精製器の有する優れた機能を生かすことによって、原料油からより高い収量の分解油を作製し、さらにより高い収量のディーゼル燃料を得ることができる。
次に、上記本システムにおいて、分留器を、分解油から軽質油を分離する第1分留器と軽質油から油留分を回収する第2分留器で構成するとともに、原料タンクから反応器に供給される原料油を、冷却器、第2分留器および第1分留器の順に熱媒体として利用することを特徴とする構成例を挙げる。原料油からより高い収量の分解油を作製し、さらにより高い収量のディーゼル燃料が得ることができる。また、熱媒体として原料油を用い、冷却器、第2分留器および第1分留器の順に熱利用する構成としたことで、分留器と冷却器の冷却熱量により原料油の予熱量をまかなうことができ、消費熱量を低減できる。さらに、原料油の予熱により、各分留器内の温度幅が小さくなるとともに、運転立ち上げ時から定常運転まで安定した温度制御が可能となる。このように従前にないエネルギー効率の高いディーゼル燃料製造システムを構成することができる。
上記ディーゼル燃料の製造プロセスにおいては、精製器の有機酸等の不純物の除去効率が重要である。ここでは、精製器に充填される吸着剤の有機酸等の吸着特性(吸着能)を、種々の吸着剤を用いて実証し、その技術的効果を検証した。
上記構成例に係る精製器を用い、下表1に示す各種吸着剤の吸着能の比較・検証を行った。具体的には、有機酸を含むバイオディーゼル燃料(BD燃料,酸価10mgKOH/g)100mlに、各吸着剤を10Wt%となるように添加し、常温常圧下において1昼夜放置後、BD燃料の酸価を測定し、吸着剤の酸吸着能力を評価した。酸価の測定は、JIS K 2501−2003(石油製品及び潤滑油−中和価試験方法)に準じて行った。具体的には、酸価測定試薬キット(株式会社チヒロ販売:Kittiwake,型式:FG−K24743−KW)を用いた。
各吸着剤について、有機酸の吸着能測定結果を、下表1に示す。アルカリ性の吸着剤は、吸着ではなく、アルカリ成分と有機酸の中和反応が起こり、BD燃料にアルカリ成分が溶解・懸濁するため、吸着能を測定不能であった。アロフェンおよび活性アルミナを用いた場合は、吸着能が他の吸着剤に比べて4倍以上高くなる結果であった。また、BD燃料へのアルカリ成分の溶解は見られなかった。
上記ディーゼル燃料の製造プロセスに使用される精製器は、有機酸等の吸着能の高さとともに、長期間使用できるための再生機能を有することが重要である。ここでは、〔実施例1〕において高い吸着能を示した活性アルミナとアロフェンについて、再生ガスによる再生処理前後の吸着能を実証し、その技術的効果を検証した。
反応器の後段に第1構成例に係る精製器を配設し、各吸着剤について、下表2に示すように、再生回数が1,5回を含む再生前後の各吸着剤の吸着能の比較・検証を行った。具体的には、有機酸を含むBD燃料(酸価10mgKOH/g)100mlを、各吸着剤を10Wt%となるように充填された精製器に導入し、出口で回収されたBD燃料の酸価の測定を行い、各吸着剤の酸吸着性能を評価した。吸着剤の充填層は、300℃とした。吸着剤は、使用後に空気供給による再生を行った後に再度評価した(再生回数1回:使用回数2回、再生回数5回:使用回数6回)。
各条件の各吸着剤について、有機酸の吸着能測定結果を、下表2に示す。ブランク(吸着剤なし)に対して、各吸着剤ともに酸価が大きく低減され、高温域でも優れた酸除去性能を示した。また、空気添加による再生後も変わらず高い性能を維持した。さらに、アロフェンに比較して活性アルミナの再生能力が高いことが判った。
2 原料タンク
3 分留器
3a,3b 第1,第2分留器
4 冷却器
5 製品油タンク
6 原料油供給ポンプ
7a,7b 第1,第2予熱器
A 精製器
Aa,Ab 第1,第2精製器
A1 充填層
A2 導入部
A3 供出部
A4 再生ガス導入部
A5 ガス排出部
A6 加熱手段
Lo,La,Lb,Lc,Ld,Le,L1,L2,L3 流路
Claims (7)
- 固体触媒を用いて原料油を炭化水素成分に変換させる接触分解法によって作製された分解油,該分解油を分離して作製された軽質油,あるいは該軽質油をさらに分離して作製された軽油留分のいずれかから、前記変換反応時において生成した不純物を除去し精製する精製器であって、吸着剤としてアロフェンあるいはこれに加えて活性アルミナを使用することを特徴とするディーゼル燃料製造用精製器。
- アロフェンを前記吸着剤として用い、液状の前記分解油,軽質油,あるいは軽油留分のいずれかが、導入されることを特徴とする請求項1記載のディーゼル燃料製造用精製器。
- 前記吸着剤を充填する吸着層および再生ガス導入部を有し、該再生ガス導入部から導入される酸素含有の再生ガスによって、前記不純物を除去することを特徴とする請求項1または2記載のディーゼル燃料製造用精製器。
- 請求項1〜3のいずれかに記載のディーゼル燃料製造用精製器を第1精製器および第2精製器として用いたディーゼル燃料製造システムであって、
原料油を貯留する原料タンクと、
前記原料タンクから供給される前記原料油を炭化水素からなる分解油に変換するための触媒を有する反応器と、
前記反応器で得られた前記分解油を精製する前記第1精製器と、
前記第1精製器で精製された前記分解油から軽質油および軽油留分を含む軽油成分を分離する分留器と、
前記分留器で分離された前記軽油成分を冷却して精製前粗油にする冷却器と、
前記冷却器で作製された前記精製前粗油を精製して製品油にする第2精製器と、
を備えることを特徴とするディーゼル燃料製造システム。 - 前記分留器を、前記分解油から前記軽質油を分離する第1分留器と、前記軽質油から前記軽油留分を回収する第2分留器で構成するとともに、
前記原料タンクから前記反応器に供給される前記原料油を、前記冷却器、前記第2分留器および前記第1分留器の順に熱媒体として利用してから前記反応器に供給可能にする原料油供給ラインを備え、
前記原料油供給ラインは、前記原料油を下流側に供給するための原料油供給ポンプと、
前記冷却器と前記第2分留器との間に設置されて前記原料油を加熱する第1予熱器と、
前記第2分留器と前記第1分留器との間に設置されて前記原料油を加熱する第2予熱器と、を有することを特徴とする請求項4記載のディーゼル燃料製造システム。 - 固体触媒を用いて原料油を炭化水素成分に変換させる接触分解法によって分解油が作製され,該分解油を分離して軽質油が作製され,該軽質油をさらに分離して軽油留分が作製されるディーゼル燃料製造プロセスにおいて、前記軽質油,軽油留分あるいは前記軽質油のいずれかから、アロフェンあるいはこれに加えて活性アルミナを吸着剤として使用し、前記変換反応時において生成した不純物を除去することを特徴とする精製方法。
- 請求項1〜3のいずれかに記載のディーゼル燃料製造用精製器あるいは請求項6記載の精製方法を第1精製工程および第2精製工程に用いたディーゼル燃料製造方法であって、
原料油を触媒に接触させて炭化水素からなる分解油に変換する接触分解工程と、
前記接触分解工程で得られた前記分解油を精製する第1精製工程と、
前記第1精製工程で精製された前記分解油から軽質油および軽油留分を含む軽油成分を分離する分留工程と、
前記分留工程で分離された軽油成分を冷却して精製前粗油にする冷却工程と、
前記冷却工程で冷却された前記精製前粗油を精製して製品油にする第2精製工程と、
を備えることを特徴とするディーゼル燃料製造方法。
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