図1は本実施の形態に係る通信装置100の構成を示す図である。本実施の形態に係る通信装置100は、例えば、複信方式としてTDD(Time Division Duplexing)方式が採用されたLTE(Long Term Evolution)に準拠した基地局であって、複数の通信相手装置(通信端末)と通信を行う。LTEは、「E−UTRA」とも呼ばれている。LTEでは、下り通信ではOFDMA(Orthogonal Frequency Division Multiple Access)方式が使用され、上り通信ではSC−FDMA(Single Carrier-Frequency Division Multiple Access)方式が使用される。したがって、通信装置100から通信相手装置への送信にはOFDMA方式が使用され、通信相手装置から通信装置100への送信にはSC−FDMA方式が使用される。OFDMA方式では、互いに直交する複数のサブキャリアが合成されたOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)信号が使用される。
通信装置100は、時間軸と周波数軸とからなる2次元で特定される無線リソースを複数の通信相手装置のそれぞれに個別に割り当てることによって、当該複数の通信相手装置と同時に通信することが可能となっている。通信装置100は、送受信アンテナとしてアレイアンテナ10を有し、アダプティブアレイアンテナ方式を用いてアレイアンテナ10の指向性を希望波に向けることが可能である。
図1に示されるように、通信装置100は、無線通信部1と、複数のD/A変換部2と、複数のA/D変換部3と、制御部4とを備えている。
制御部4は、例えばCPUやメモリなどで構成されており、通信装置100の動作を統括的に制御する。制御部4は、ベースバンドの送信信号を生成して複数のD/A変換部2に出力する。また制御部4は、複数のA/D変換部3から出力される受信信号に含まれる、通信相手装置が生成したビットデータを再生する。
無線通信部1は、複数のアンテナ10aから成るアレイアンテナ10と、複数の送信部11と、複数の受信部12とを備えている。各アンテナ10aは、通信相手装置からの送信信号を受信する。複数のアンテナ10aでの受信信号は、複数の受信部12にそれぞれ入力される。また、複数の送信部11が出力する送信信号は複数のアンテナ10aにそれぞれ入力される。これにより、各アンテナ10aから信号が無線送信される。
各D/A変換部2は、制御部4から入力される、デジタル形式のベースバンドの送信信号をアナログ形式のベースバンドの送信信号に変換して出力する。複数の送信部11には、複数のD/A変換部2から出力される送信信号がそれぞれ入力される。各送信部11は、入力されたベースバンドの送信信号を搬送帯域の送信信号に変換して出力する。
各受信部12は、入力される搬送帯域の受信信号をベースバンドの受信信号に変換して出力する。複数のA/D変換部3には、複数の受信部12から出力されるアナログ形式の受信信号がそれぞれ入力される。各A/D変換部3は、入力されるアナログ形式の受信信号をデジタル形式の受信信号に変換して出力する。
図2は制御部4の主要な構成を示すブロック図である。図2に示されるように、制御部4は、複数のIDFT部40と、送信ウェイト処理部41と、送信信号生成部42とを備えている。さらに制御部4は、複数のDFT部50と、受信ウェイト処理部51と、受信データ取得部52と、推定部53と、無線リソース割り当て部60とを備えている。
複数のA/D変換部3から出力される受信信号は、制御部4において、フィルタ処理された後に、サイクリック・プレフィックス(CP)が除去されて、複数のDFT部50にそれぞれ入力される。各DFT部50は、入力される受信信号に対して離散フーリエ変換(DFT:Discrete Fourier Transform)を行う。これにより、各DFT部50では、入力された受信信号を構成する複数のサブキャリアにそれぞれ対応する複数の複素信号が得られる。以後、DFT部50で得られる複素信号を「受信複素信号」と呼ぶ。また、DFT部50で得られる複数の複素信号を「受信複素信号列」と呼ぶ。各DFT部50で得られた受信複素信号列は、受信ウェイト処理部51に入力される。
受信ウェイト処理部51は、各アンテナ10aでの受信信号、つまり、各DFT部50から出力される受信複素信号列に設定する受信ウェイトを、例えばMMSE(最小二乗誤差法)を用いて算出する。受信ウェイトは、通信相手装置(通信端末)からの送信信号に含まれる既知の複素信号に基づいて算出することができる。
受信ウェイト処理部51は、入力された複数の受信複素信号列のそれぞれについて、当該受信複素信号列を構成する複数の受信複素信号のそれぞれに対して、対応する受信ウェイトを乗算(複素乗算)する。そして、受信ウェイト処理部51は、複数の受信複素信号列に含まれる、同一のサブキャリアについての受信ウェイト乗算後の複数の受信複素信号を加算する。これにより、アレイアンテナ10の指向性が、特定の通信相手装置からの1つのサブキャリア(希望波)に向けられるようになり、当該1つのサブキャリアについての希望複素信号を取得することができる。つまり、複数の受信複素信号列に含まれる、同一のサブキャリアについての受信ウェイト乗算後の複数の受信複素信号を足し合わせて得られる新たな複素信号では、干渉成分が除去されており、当該新たな複素信号が希望複素信号として取得される。受信ウェイト処理部51は、受信信号を構成する複数のサブキャリアのそれぞれについて希望複素信号を取得して出力する。
受信データ取得部52は、受信ウェイト処理部51から出力される、受信信号を構成する複数のサブキャリアについての希望複素信号に対して、等化処理を行った後、逆離散フーリエ変換(IDFT:Inverse DFT)を行う。そして、受信データ取得部52は、逆離散フーリエ変換の実行によって得られた信号に対して復調処理を行って、当該信号をビットデータに変換する。その後、受信データ取得部52は、得られたビットデータに対してデスクランブル処理及び復号化処理を行う。これにより、受信データ取得部52では、通信相手装置で生成された通信装置100向けのビットデータが再生される。
推定部53は、複数のDFT部50から出力される受信複素信号列に基づいて、アレイアンテナ10での受信信号における周波数選択性フェージングの度合を推定する。
送信信号生成部42は、通信相手装置に送信するビットデータを生成し、当該ビットデータに対して、符号化処理及びスクランブル処理を行う。そして、送信信号生成部42は、処理後のビットデータを、複数のサブキャリアに対応する、IQ平面上での複数の複素信号(複素シンボル)に変換して送信ウェイト処理部41に入力する。以後、送信信号生成部42で生成される複素信号を「送信複素信号」と呼ぶ。また、送信信号生成部42で生成される複数の複素信号を「送信複素信号列」と呼ぶ。
送信ウェイト処理部41は、入力された送信複素信号列を、アンテナ10aの数だけ準備する。この複数の送信複素信号列は、複数のアンテナ10aからそれぞれ送信される。そして、送信ウェイト処理部41は、各送信複素信号列に設定する送信ウェイト、言い換えれば、各アンテナ10aからの送信信号に設定する送信ウェイトを算出する。送信ウェイトは、受信ウェイト処理部51で算出された受信ウェイトに基づいて算出することができる。
送信ウェイト処理部41は、入力された複数の送信複素信号列のそれぞれについて、当該送信複素信号列を構成する複数の送信複素信号のそれぞれに対して、対応する送信ウェイトを乗算する。その後、送信ウェイト処理部41は、送信ウェイト乗算後の複数の送信複素信号列を、複数のIDFT部40にそれぞれ入力する。
各IDFT部40は、入力される送信複素信号列に対して逆離散フーリエ変換を行う。これにより、IDFT部40では、送信複素信号列を構成する複数の送信複素信号(複素シンボル)で変調された複数のサブキャリアが合成されたベースバンドのOFDM信号が得られる。複数のIDFT部40で生成されたベースバンドの送信信号は、制御部4において、サイクリック・プレフィックスが付加された後、フィルタ処理が行われて、複数のD/A変換部2にそれぞれ入力される。
無線リソース割り当て部60は、各通信相手装置に対して、当該通信相手装置に通信装置100が信号を送信する際に使用する無線リソース(以後、「下り無線リソース」と呼ぶことがある)を割り当てる。これにより、各通信相手装置について、下り通信(OFDMA方式)に使用される周波数帯域(サブキャリア)及び通信時間帯が決定される。制御部4は、無線リソース割り当て部60での下り無線リソースの割り当て結果に基づいてベースバンドの複数の送信信号を生成するとともに、当該割り当て結果に基づいたタイミングで当該複数の送信信号を複数のD/A変換部2にそれぞれ入力する。これにより、無線通信部1は、各通信相手装置に対して、当該通信相手装置に割り当てられた下り無線リソースを用いて信号を送信する。
また、無線リソース割り当て部60は、各通信相手装置に対して、当該通信相手装置が通信装置100に信号を送信する際に使用する無線リソース(以後、「上り無線リソース」と呼ぶことがある)を割り当てる。これにより、各通信相手装置について、上り通信(SC−FDMA方式)に使用される周波数帯域及び通信時間帯が決定される。制御部4は、無線リソース割り当て部60において通信相手装置に対して上り無線リソースが割り当てられると、当該上り無線リソースを当該通信相手装置に通知するための通知信号を生成する。そして、制御部4は、生成した通知信号を含む、ベースバンドの複数の送信信号を生成して、これらを複数のD/A変換部2にそれぞれ入力する。これにより、各通信相手装置には、当該通信相手装置に通信装置100で割り当てられた上り無線リソースが通知される。各通信相手装置は、通信装置100から通知された上り無線リソースを用いて信号を通信装置100に送信する。
図3は受信ウェイト処理部51の構成を示すブロック図である。図3に示されるように、受信ウェイト処理部51は、複数の複素乗算部510と、加算部511と、受信ウェイト算出部512とを備えている。
複数の複素乗算部510には、複数のDFT部50で取得された、同一のサブキャリアについての受信複素信号RSがそれぞれ入力される。また、複数の複素乗算部510には、受信ウェイト算出部512から出力される複数の受信ウェイトRWがそれぞれ入力される。各複素乗算部510は、入力された受信複素信号RSに対して、入力された受信ウェイトRWを複素乗算し、受信ウェイトRWが乗算された受信複素信号RSを出力する。加算部511は、複数の複素乗算部510から出力される、受信ウェイトRWが乗算された受信複素信号RSを足し合わせて、それによって得られた新たな受信複素信号を復調複素信号DSとして出力する。
受信ウェイト算出部512は、加算部511で得られた既知の復調複素信号DSについての参照信号に対する誤差を示す誤差信号を生成して出力する。この参照信号は、加算部511で得られた既知の復調複素信号DSについての理想信号である。
受信ウェイト算出部512は、逐次推定アルゴリズム、例えばRLSアルゴリズムを用いて、生成した誤差信号が小さくなるように複数の受信ウェイトRWを更新する。受信ウェイト算出部512は、以下の式(1)〜(3)を使用して複数の受信ウェイトRWを更新する。
ここで、jは受信ウェイトRWの更新回数を示している。w(j)は、複数の複素乗算部510にそれぞれ入力される複数の受信ウェイトRWから成る受信ウェイトベクトルを示している。x(j)は、複数の複素乗算部510にそれぞれ入力される複数の受信複素信号RSから成る受信信号ベクトルを示している。e(j)は、複数の複素乗算部510において、受信信号ベクトルx(j)を構成する複数の既知の受信複素信号RSに対して、受信ウェイトベクトルw(j)を構成する複数の受信ウェイトRWをそれぞれ設定したものを、加算部511で足し合わせて得られる既知の復調複素信号DSと、それに対応する参照信号との誤差を示す誤差信号を示している。k(j)はカルマンゲインベクトルと呼ばれており、λは忘却係数と呼ばれている。また、P(0)=cIで表される。ただし、Iは単位行列であって、cは任意の大きさの正数である。
受信ウェイト算出部512は、複数の受信ウェイトRW(受信ウェイトベクトル)を所定回数更新すると、複数の受信ウェイトRWの更新を終了する。更新終了後の複数の受信ウェイトRWが複数の複素乗算部510にそれぞれ入力されると、加算部511からは、干渉成分が除去された復調複素信号DS、つまり希望複素信号が出力されるようになる。これにより、受信ウェイト処理部51からは、各サブキャリアについての希望複素信号が出力される。
次に通信装置100と通信相手装置との間で使用されるTDDフレーム300について説明する。TDDフレーム300は、時間軸と周波数軸とからなる2次元で特定される。TDDフレーム300の周波数帯域幅(システム帯域幅)は例えば20MHzであって、TDDフレーム300の時間長は10msである。通信装置100は、TDDフレーム300から、各通信相手装置に対して割り当てる上り無線リソース及び下り無線リソースを決定する。
図4はTDDフレーム300の構成を示す図である。図4に示されるように、TDDフレーム300は、2つのハーフフレーム301で構成されている。各ハーフフレーム301は、5個のサブフレーム302で構成されている。つまり、TDDフレーム300は10個のサブフレーム302で構成されている。サブフレーム302の時間長は1msである。
各サブフレーム302は、時間方向に2つのスロット303を含んで構成されている。各スロット303は、7個のシンボル期間304で構成されている。したがって、各サブフレーム302は、時間方向に14個のシンボル期間304を含んでいる。このシンボル期間304は、OFDMA方式の下り通信では、OFDMシンボルの1シンボル期間となり、SC−FDMA方式の上り通信では、DFTS(Discrete Fourier Transform Spread)−OFDMシンボルの1シンボル期間となる。各シンボル期間304は、CP(サイクリック・プリフィックス)が含められるCP期間305と有効シンボル期間306とで構成されている。以後、1つのスロット303を構成する7個のシンボル期間304を先頭から順に第0〜第6シンボル期間304とそれぞれ呼ぶことがある。
以上のように構成されるTDDフレーム300には、少なくとも1つの上り通信用のサブフレーム302と、少なくとも2つの下り通信用のサブフレーム302とが含められる。以後、上り通信用のサブフレーム302を「上りサブフレーム302」と呼び、下り通信用のサブフレーム302を「下りサブフレーム302」と呼ぶ。
LTEでは、TDDフレーム300において、周波数方向に180kHzの周波数帯域幅を含み、かつ時間方向に7個のシンボル期間304(1スロット303)を含む領域(無線リソース)が「リソースブロック」と呼ばれている。リソースブロックには、12個のサブキャリアが含まれる。TDDフレーム300には、周波数方向において、複数のリソースブロックが含まれる。TDDフレーム300において、周波数方向に含まれる複数のリソースブロックの数をLで表すと、例えばL=100に設定される。
無線リソース割り当て部60での通信相手装置に対する無線リソースの割り当ては、リソースブロック単位で行われる。したがって、リソースブロックの周波数帯域は、通信相手装置に対する周波数帯域の割り当て単位となる。以後、リソースブロックの周波数帯域を「割り当て単位帯域」と呼ぶことがある。上り通信ではSC−FDMA方式が使用されていることから、上りサブフレーム302の1つのスロット303において、通信相手装置に対して複数のリソースブロックが割り当てられる際には、周波数方向に連続した複数のリソースブロック、つまり連続した複数の割り当て単位帯域が割り当てられる。
以後、TDDフレーム300において、周波数方向に並ぶL個のリソースブロックを、周波数が低い方から順にリソースブロックRB0〜RBLと呼ぶことがある。また、上りサブフレーム302に含まれるスロット303を「上りスロット303」と呼び、上りスロット303に含まれるリソースブロックを「上りリソースブロック」と呼ぶことがある。
図5は上りサブフレーム302の1スロット分を示す図である。上りサブフレーム302の各上りスロット303では、先頭から4つ目の第3シンボル期間304の各サブキャリアにおいて、既知の複素信号である復調リファレンス信号(DRS:Demodulation Reference Signal)が送信される。そして、上りサブフレーム302の各上りスロット303では、第0〜2シンボル期間304及び第4〜第6シンボル期間304においてデータが送信される。
以後、上りリソースブロックRBn(0≦n≦99)に含まれる12個のサブキャリアを用いて送信される12個の復調リファレンス信号を、送信されるサブキャリアの周波数が低いものから順に復調リファレンス信号s(n,0)〜s(n,11)とそれぞれ呼ぶ。そして、アレイアンテナ10を構成する複数のアンテナ10aで受信される複数の復調リファレンス信号s(n,i)(0≦i≦11)から成る信号ベクトルを「リファレンス信号ベクトルS(n,i)」とする。
受信ウェイト処理部51は、上りスロット303ごとに受信ウェイトベクトルを算出する。受信ウェイト処理部51は、各上りスロット303において、上り無線リソースとして少なくとも1つの上りリソースブロックが割り当てられた通信相手装置から受信する、データを含む受信信号に設定する受信ウェイトベクトルを、当該少なくとも1つの上りリソースブロックで送信される複数の復調リファレンス信号に基づいて算出する。
以上のような本実施の形態に係る通信装置100において、その受信信号における周波数選択性フェージングの度合が大きい場合には、広い周波数帯域を占める複数の復調リファレンス信号の間では受信状態に大きなばらつきが生じることになる。したがって、広い周波数帯域を占める複数の復調リファレンス信号を使用して1つの受信ウェイトベクトルを求めると、その受信ウェイトベクトルの精度が大きく劣化し、その結果、受信性能が大きく劣化してしまう。
そこで、本実施の形態では、受信信号における周波数選択性フェージングの度合にかかわらず、受信ウェイトベクトルの精度を向上させることが可能な通信装置100を提供する。以下に、通信装置100が受信ウェイトベクトルを算出する際の当該通信装置100の動作について詳細に説明する。
本実施の形態では、ある上りスロット303において、周波数方向で連続するM個(2≦M≦L)の上りリソースブロックが通信相手装置に割り当てられている場合には、受信ウェイト処理部51は、当該M個の上りリソースブロックに関して、N個(1≦N≦M)の上りリソースブロックごとに(Nが2以上の場合には、周波数方向に連続するN個の上りリソースブロックごとに)1つの受信ウェイトベクトルを求める。そして、受信ウェイト処理部51は、求めた受信ウェイトベクトルに基づいて、それに対応するN個の上りリソースブロックの周波数帯域における複数のアンテナ10aの受信の指向性を制御する。つまり、受信ウェイト処理部51は、求めた受信ウェイトベクトルを、それに対応するN個の上りリソースブロックの周波数帯域での受信信号に設定する。受信ウェイト処理部51は、アレイアンテナ10での受信信号における、M個の上りリソースブロックの周波数帯域での周波数選択性フェージングの度合に基づいてNの値を決定する。言い換えれば、受信ウェイト処理部51は、アレイアンテナ10での受信信号における、M個の上りリソースブロックの周波数帯域での周波数選択性フェージングの影響に基づいてNの値を決定する。周波数選択性フェージングの度合は推定部53で推定される。以後、周波数選択性フェージングの度合を単に「選択性フェージング度合」と呼ぶ。
図6は、ある上りスロット303において、周波数方向で連続するM個の上りリソースブロックRBm〜RBm+(M-1)が割り当てられている通信相手装置からの受信信号に設定される受信ウェイトベクトルが算出される際の本実施の形態に係る通信装置100の動作を示すフローチャートである。以下では、説明の対象の上りスロット303を「対象上りスロット303」と呼び、説明の対象の通信相手装置を「対象通信相手装置」と呼ぶ。また、通信相手装置に対して割り当てられた上りリソースブロックを「割り当て上りリソースブロック」と呼ぶことがある。また、通信相手装置に対して割り当てられたM個の上りリソースブロックRBm〜RBm+(M-1)の周波数帯域を「相手側送信周波数帯域」と呼ぶことがある。
図6に示されるように、ステップST1において、推定部53は、対象上りスロット303において、相手側送信周波数帯域での受信信号における選択性フェージング度合を推定する。本実施の形態では、複数のアンテナ10aのうちの1つのアンテナ10aでの受信信号における選択性フェージング度合を推定する。
ステップST1では、まず、推定部53は、アレイアンテナ10を構成する複数のアンテナ10aのそれぞれに関して、対象上りスロット303に含まれるL個(例えばL=100)の上りリソースブロックのそれぞれについての受信電力を、当該上りリソースブロックで送信される12個の復調リファレンス信号に基づいて算出する。1つのアンテナ10aで受信される、上りリソースブロックRBnの信号についての受信電力PW(n)は、以下の式(4)で求められる。
次に、推定部53は、各アンテナ10aに関して、対象スロット303のL個のリソースブロックについての受信電力の総和を総和受信電力PWsumとして求める。つまり、推定部53は、各アンテナ10aに関して、対象スロット303におけるシステム帯域全体での受信電力を求める。総和受信電力PWsumは以下の式(5)で求められる。
次に、推定部53は、複数のアンテナ10aのうち、対応する総和受信電力PWsumが最大となるアンテナ10aを、選択性フェージング度合を推定するために使用するアンテナとして決定する。以後、選択性フェージング度合を推定するために使用するアンテナ10aを「推定使用アンテナ10a」と呼ぶ。
次に、推定部53は、推定使用アンテナ10aで受信された復調リファレンス信号に基づいて算出した、M個の割り当て上りリソースブロックRBm〜RBm+(M-1)についての受信電力の平均値PWaveと標準偏差PWsdを求める。平均値PWave及び標準偏差PWsdは以下の式(6),(7)でそれぞれ求められる。
そして、推定部53は、標準偏差PWsdを平均値PWaveで割った値を、受信信号における相手側送信周波数帯域での選択性フェージング度合の推定値EVとする。推定値EVは以下の式(8)で表される。
ここで、受信信号における相手側送信周波数帯域での受信電力のばらつきが大きくなると、標準偏差PWsdが大きくなって、推定値EVが大きくなる。受信信号における相手側送信周波数帯域での受信電力のばらつきが大きいことは、受信信号における相手側送信周波数帯域での選択性フェージング度合が大きいことを意味していることから、推定値EVは、選択性フェージング度合を示すことになる。
図7は受信信号に含まれる各サブキャリアの受信電力をシミュレーションによって求めた結果を示すグラフである。図7のグラフ600,601は、周波数選択性フェージングが有る場合と周波数選択性フェージングが無い場合の受信信号に含まれる各サブキャリアの受信電力を示している。グラフ600,601は、伝送路モデルとしてVehicular−Aを用いた際のシミュレーション結果である。図7に示されるように、受信信号に周波数選択性フェージングが存在する場合には、複数のサブキャリアの間で受信電力が大きくばらついている。したがって、受信信号における相手側送信周波数帯域での選択性フェージング度合が大きくなると、標準偏差PWsdが大きくなって、推定値EVが大きくなる。
ステップST1では、以上のようにして、対象スロット303での受信信号における相手側送信周波数帯域での選択性フェージング度合が推定される。
次にステップST2において、受信ウェイト算出部512は、M個の割り当て上りリソースブロックRBm〜RBm+(M-1)に関して、N個の割り当て上りリソースブロックごとに1つの受信ウェイトベクトルを求める際のそのNの値を、推定値EVに基づいて決定する。
例えば、受信ウェイト算出部512は、推定値EVがしきい値(例えば0.5)以上の場合には、選択性フェージング度合が大きいと判断して、N=1とする。これにより、選択性フェージング度合が大きい場合には、M個の割り当て上りリソースブロックRBm〜RBm+(M-1)のそれぞれについて1つの受信ウェイトベクトルが求められる。
一方で、受信ウェイト算出部512は、推定値EVがしきい値(例えば0.5)未満の場合には、選択性フェージング度合が小さいと判断して、Nの値を、選択性フェージング度合が大きいと判断した場合と比較して大きい値に設定する。
例えば、Mの値が5の倍数である場合には、N=5とする。Mの値が、5の倍数でなく4の倍数である場合には、N=4とする。Mの値が、5の倍数及び4の倍数ではなく、3の倍数の場合には、N=3とする。そして、Mの値が、5の倍数、4の倍数及び3の倍数ではなく、2の倍数の場合には、N=2とする。これにより、選択性フェージング度合が大きい場合には、複数の割り当て上りリソースブロックごとに1つの受信ウェイトベクトルが求められるようになる。ただし、Mの値が、5の倍数、4の倍数、3の倍数及び2の倍数ではない場合には、選択性フェージング度合が大きい場合と同様にN=1とする。なお、Mの値が、7以上の素数の倍数となる場合にも、N=1としてもよい。
このように、本実施の形態では、選択性フェージング度合が大きい場合には、少ない数の割り当て上りリソースブロックごとに受信ウェイトベクトルを求めることによって、狭い周波数帯域を占める複数の復調リファレンス信号を使用して受信ウェイトベクトルを求めることができる。選択性フェージング度合が大きい場合には、つまり周波数選択性フェージングの影響が大きい場合には、広い周波数帯域を占める複数の復調リファレンス信号の間では受信状態に大きなばらつきが生じることから、広い周波数帯域を占める複数の復調リファレンス信号を使用して1つの受信ウェイトベクトルを求めると、その受信ウェイトベクトルの精度が大きく劣化し、その結果、受信性能が大きく劣化してしまう。本実施の形態のように、狭い周波数帯域を占める複数の復調リファレンス信号を使用して1つの受信ウェイトベクトルを求めることによって、受信ウェイトベクトルの精度を高めることができ、その結果、受信性能を向上することができる。
これに対して、本実施の形態では、選択性フェージング度合が小さい場合には、つまり周波数選択性フェージングの影響が小さい場合には、多くの割り当て上りリソースブロックごとに1つの受信ウェイトベクトルを求めている。したがって、選択性フェージング度合が小さい場合には、周波数方向に並ぶ多くの復調リファレンス信号を使用して1つの受信ウェイトベクトルを求めることができる。選択性フェージング度合が小さい場合には、周波数方向に並ぶ複数の復調リファレンス信号の間での受信状態のばらつきは小さいことから、広い周波数帯域を占める多くの復調リファレンス信号を使用して1つの受信ウェイトベクトルを求めたとしても、周波数選択性フェージングの影響によって受信ウェイトベクトルの精度が劣化することは少ない。一方で、より多くの復調リファレンス信号を使用して1つの受信ウェイトベクトルを求める場合には、つまり受信ウェイトベクトルを求める際に当該受信ウェイトベクトルをより多く更新する場合には、受信ウェイトベクトルをより最適値に近づけることができる。したがって、本実施の形態のように、選択性フェージング度合が小さい場合には、周波数方向に並ぶより多くの復調リファレンス信号を使用して1つの受信ウェイトベクトルを求めることによって、受信ウェイトベクトルの精度を高めることができる。その結果、受信性能を向上することができる。
ステップST2においてNの値が決定されると、ステップST3において、受信ウェイト算出部512は、M個の割り当て上りリソースブロックRBm〜RBm+(M-1)に関して、N個の割り当て上りリソースブロックごとに1つの受信ウェイトベクトルを算出する。受信ウェイト算出部512においては、受信ウェイトベクトルが(M÷N)個求められる。
例えば、M=10、N=5の場合には、受信ウェイト算出部512は、対象スロット303において、アレイアンテナ10が受信する、5個の割り当て上りリソースブロックRBm〜RBm+4の周波数帯域の受信信号に含まれる60個のリファレンス信号ベクトルS(m,0)〜S(m,11),S(m+1,0)〜S(m+1,11),S(m+2,0)〜S(m+2,11),S(m+3,0)〜S(m+3,11),S(m+4,0)〜S(m+4,11)を用いて1つの受信ウェイトベクトルを求める。そして、受信ウェイト算出部512は、対象スロット303において、アレイアンテナ10が受信する、残りの5個の割り当て上りリソースブロックRBm+5〜RBm+9の周波数帯域の受信信号に含まれる60個のリファレンス信号ベクトルS(m+5,0)〜S(m+5,11),S(m+6,0)〜S(m+6,11),S(m+7,0)〜S(m+7,11),S(m+8,0)〜S(m+8,11),S(m+9,0)〜S(m+9,11)を用いて1つの受信ウェイトベクトルを求める。
例えば、M=3、N=1の場合には、受信ウェイト算出部512は、対象スロット303において、アレイアンテナ10が受信する、1つの割り当て上りリソースブロックRBmの周波数帯域の受信信号に含まれる12個のリファレンス信号ベクトルS(m,0)〜S(m,11)を用いて1つの受信ウェイトベクトルを求める。また、受信ウェイト算出部512は、対象スロット303において、アレイアンテナ10が受信する、別の1つの割り当て上りリソースブロックRBm+1の周波数帯域の受信信号に含まれる12個のリファレンス信号ベクトルS(m+1,0)〜S(m+1,11)を用いて1つの受信ウェイトベクトルを求める。そして、受信ウェイト算出部512は、対象スロット303において、アレイアンテナ10が受信する、さらに別の1つの割り当て上りリソースブロックRBm+2の周波数帯域の受信信号に含まれる12個のリファレンス信号ベクトルS(m+2,0)〜S(m+2,11)を用いて1つの受信ウェイトベクトルを求める。
N個の割り当て上りリソースブロックRBn〜RBn+(N-1)の複数の復調リファレンス信号を用いて1つの受信ウェイトベクトルを求める際には、上述の式(2),(3)における受信信号ベクトルx(j)を以下の式(9)のようにし、式(1)を用いて受信ウェイトベクトルを(12×N)回更新する。
ここで、[a]はaを超えない最大の整数を意味し、mod(a,b)は、aをbで割った余りを意味している。
ステップST3において(M÷N)個の受信ウェイトベクトルが求められると、ステップST4が実行される。ステップST4では、受信ウェイト処理部51は、算出された各受信ウェイトベクトルついて、当該受信ウェイトベクトルを、対象スロット303においてアレイアンテナ10が受信する、当該受信ウェイトベクトルに対応するN個の割り当て上りリソースブロックの周波数帯域での受信信号に含まれる、リファレンス信号ベクトル以外の受信信号ベクトル、つまりデータを含む受信信号ベクトルに対して設定する。これにより、受信ウェイト処理部51からは、干渉成分が除去された、データを含む復調複素信号DSが出力されるようになる。よって、対象スロット303の第0〜第2シンボル期間304及び第4〜第6シンボル期間304において対象通信相手装置から送信されるデータを受信データ取得部52において適切に再生することができる。
以上のようにして、通信相手装置に対して複数の上りリソースブロックが割り当てられている場合には、少なくとも1つの受信ウェイトベクトルが求められる。なお、通信相手装置に対して1つの上りリソースブロックが割り当てられている場合には、当該1つの上りリソースブロックで送信される12個の復調リファレンス信号を用いて1つの受信ウェイトベクトルが求められる。
このように、本実施の形態に係る通信装置100では、通信相手装置に割り当てたM個の割り当て上りリソースブロックに関して、N個の割り当て上りリソースブロックごとに(Nが2以上の場合には周波数方向に連続するN個の上りリソースブロックごとに)受信ウェイトベクトルを求める際のそのNの値を、当該M個の割り当て上りリソースブロックの周波数帯域での選択性フェージング度合に基づいて決定している。周波数方向で言えば、上り無線リソースの周波数帯域として通信相手装置に割り当てたM個の割り当て単位帯域(相手側送信周波数帯域)に関して、N個の割り当て単位帯域ごと(Nが2以上の場合には連続するN個の割り当て単位帯域ごとに)に受信ウェイトベクトルを求める際のそのNの値を、当該M個の割り当て単位帯域での選択性フェージング度合に基づいて決定している。そのため、相手側送信周波数帯域での選択性フェージング度合が大きい場合には、狭い周波数帯域ごとに受信ウェイトベクトルを求めることができる。その結果、受信ウェイトベクトルの精度を向上することができる。一方で、相手側送信周波数帯域での選択性フェージング度合が小さい場合には、広い周波数帯域ごとに受信ウェイトベクトルを求めることができる。その結果、多くの既知信号を用いて受信ウェイトベクトルを求めることができ、受信ウェイトベクトルをより最適値に近づけることができる。よって、受信ウェイトベクトルの精度が向上する。
図8は、受信ウェイトベクトルの更新回数(j)と誤差信号e(j)の電力(大きさ)との関係をシミュレーションで求めた結果を示す図である。図8の縦軸に示す誤差電力は、誤差信号e(j)の電力を意味している。図8及び後述の図9に示されるシミュレーション結果は、伝搬路モデルとしてVehicular−Aが用いられている。
図8のグラフ700は、受信信号において周波数選択性フェージングが無い場合において、1つの割り当て上りリソースブロックごとに受信ウェイトベクトルを求める際の当該受信ウェイトベクトルの更新回数と誤差電力との関係を示している。
図8のグラフ701は、受信信号において周波数選択性フェージングが有る場合において、1つの割り当て上りリソースブロックごとに受信ウェイトベクトルを求める際の当該受信ウェイトベクトルの更新回数と誤差電力との関係を示している。
図8のグラフ710は、受信信号において周波数選択性フェージングが無い場合において、連続する5個の割り当て上りリソースブロックごとに受信ウェイトベクトルを求める際の当該受信ウェイトベクトルの更新回数と誤差電力との関係を示している。
図8のグラフ711は、受信信号において周波数選択性フェージングが有る場合において、連続する5個の割り当て上りリソースブロックごとに受信ウェイトベクトルを求める際の当該受信ウェイトベクトルの更新回数と誤差電力との関係を示している。
グラフ700,701あるいはグラフ710,711を比較すると理解できるように、選択性フェージング度合が大きくなると、受信ウェイトベクトルの更新完了後の誤差電力が大きくなり、受信ウェイトベクトルの精度が劣化する。
図9は、M=30の場合、つまり30個の上りリソースブロックを通信相手装置に割り当てた際の各割り当て上りリソースブロックでの受信EVM(Error Vector Magnitude)をシミュレーションで求めた結果を示す図である。
ここで、受信ウェイト処理部51で得られる希望複素信号、つまり、更新完了後の受信ウェイトベクトルが設定された複数の受信複素信号RSが足し合わされて得られる復調複素信号DSのIQ平面上での信号点と、その信号点の理想点との差を示すベクトルの大きさを「サブキャリアEVM」とする。割り当て上りリソースブロックでの受信EVMとは、当該割り当て上りリソースブロックで送信される、復調リファレンス信号以外の複数の複素信号(データを含む複素信号)についてのサブキャリアEVMの平均値である。図9の横軸のリソースブロック番号は、通信相手装置に割り当てられている30個の上りリソースブロックに対して、周波数が低いものから順に1〜30までの番号をそれぞれ付与した場合のその番号を示している。
図9のグラフ800は、受信信号に周波数選択性フェージングが有る場合において、1つの割り当て上りリソースブロックごとに受信ウェイトベクトルを求めた際の受信EVMを示している。
図9のグラフ801は、受信信号に周波数選択性フェージングが有る場合において、連続する5つの割り当て上りリソースブロックごとに受信ウェイトベクトルを求めた際の受信EVMを示している。
図9のグラフ802は、受信信号に周波数選択性フェージングが無い場合において、1つの割り当て上りリソースブロックごとに受信ウェイトベクトルを求めた際の受信EVM、及び連続する5つの割り当て上りリソースブロックごとに受信ウェイトベクトルを求めた際の受信EVMを示している。
グラフ801に示されるように、受信信号に周波数選択性フェージングが有る場合において、5つの割り当て上りリソースブロックごとに受信ウェイトベクトルを求めると、つまり広い周波数帯域を占める複数の復調リファレンス信号を用いて受信ウェイトベクトルを求めると、受信EVMが大きくなって、希望複素信号の誤差が大きくなる。したがって、希望複素信号に含まれるデータを適切に再生できなくなる。
これに対して、グラフ800に示されるように、受信信号に周波数選択性フェージングが有る場合において、1つの割り当て上りリソースブロックごとに受信ウェイトベクトルを求めると、つまり狭い周波数帯域を占める複数の復調リファレンス信号を用いて受信ウェイトベクトルを求めると、受信EVMが小さくなって、希望複素信号の誤差が小さくなる。したがって、希望複素信号に含まれるデータを適切に再生することができる。
以上より、選択性フェージング度合が大きい場合には、本実施の形態のように、少ない数の割り当て上りリソースブロックごとに受信ウェイトベクトルを求めることによって、つまり狭い周波数帯域を占める複数の復調リファレンス信号を用いて受信ウェイトベクトルを求めることによって、希望複素信号の誤差を小さくすることができ、受信性能が向上する。
なお、上記の例では、推定値EVと比較されるしきい値は1つであったが、互いに異なる複数のしきい値と推定値EVを比較しても良い。例えば、Mの値が4の倍数に設定される場合には、推定値EVが第1しきい値以上のときにはN=1とし、推定値EVが第2しきい値(<第1しきい値)以上第1しきい値未満のときにはN=2とし、推定値EVが第2しきい値未満のときにはN=4としても良い。
また例えば、Mの値が8の倍数に設定される場合には、推定値EVが第1しきい値以上のときにはN=2とし、推定値EVが第2しきい値(<第1しきい値)以上第1しきい値未満のときにはN=4とし、推定値EVが第2しきい値未満のときにはN=8としても良い。
<選択性フェージング度合の推定方法の変形例>
上述の実施の形態では、推定部53は、相手側送信周波数帯域での受信信号の受信電力に基づいて、選択性フェージング度合を推定していたが、他の方法によって選択性フェージング度合を推定しても良い。例えば、推定部53は、相手側送信周波数帯域での受信信号に含まれる既知信号と、当該既知信号についての理想信号(参照信号)との相関値に基づいて選択性フェージング度合を推定しても良い。以下にこの方法について詳細に説明する。
まず、推定部53は、上述のようにして、推定使用アンテナ10aを決定する。次に推定部53は、M個の割り当て上りリソースブロックRBm〜RBm+(M-1)のそれぞれについて、推定使用アンテナ10aで受信された復調リファレンス信号と、その理想信号である参照信号との相関値を算出する。割り当て上りリソースブロックRBnについての相関値CV(n)は以下の式(10)を用いて求められる。
式(10)のr(n,i)は、推定使用アンテナ10aで受信された復調リファレンス信号s(n,i)についての参照信号(理想信号)を示している。またr*(n,i)は、r(n,i)の共役複素信号を示している。
次に、推定部53は、M個の割り当て上りリソースブロックRBm〜RBm+(M-1)についての相関値の平均値CVaveと標準偏差CVsdを求める。平均値CVave及び標準偏差CVsdは以下の式(11),(12)でそれぞれ求められる。
そして、推定部53は、標準偏差CVsdを平均値CVaveで割った値を、受信信号における相手側送信周波数帯域での選択性フェージング度合の推定値EVとする。推定値EVは以下の式(13)で表される。
受信ウェイト処理部51は、上述の実施の形態と同様にして、式(13)で示される推定値EVに基づいてNの値を決定する。
このように、相手側送信周波数帯域での受信信号に含まれる既知信号と、当該既知信号についての理想信号との相関値に基づいて選択性フェージング度合を推定する場合であっても、実施の形態と同様の効果を得ることができる。
<その他の変形例>
上述の説明では、本発明をLTEの基地局に適用する場合について説明したが、本発明は他の通信装置にも適用することができる。例えば、本発明は、PHS(Personal Handyphone System)での基地局や、WiMAX(Worldwide Interoperability for Microwave Access)での基地局にも適用することができる。