以下、本発明の実施の形態による画像形成装置の一例について図面を参照して説明する。
図1は、本発明の実施の形態による画像形成装置の一例を模式的に示す断面図である。
図1を参照して、図示の画像形成装置は、タンデム型の画像形成装置である。この画像形成装置は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色のトナー像を形成する画像形成部20Y、20M、20C、及び20Kを有している。つまり、画像形成装置は複数の像担持体である感光体ドラムを有している。
さらに、図示の画像形成装置は、画像形成部20Y、20M、20C、及び20Kで形成された各色のトナー像を重ね合わせて記録紙に転写するベルトユニット5Aを有している。
画像形成部20Y、20M、20C、及び20Kの各々は、同一の構成を有しているので、ここでは、画像形成部20Yについて説明し、他の画像形成部20M、20C、及び20Kについては説明を省略する。
画像形成部20Yには、像担持体(第1の駆動部材)である感光体ドラム1を有しており、感光体ドラム1は、図中実線矢印(第1の駆動方向)で示す方向に回転駆動される。そして、感光体ドラム1の周囲には、帯電ローラ2、露光装置3、現像装置4、及びドラムクリーニングブレード(図示せず)が配置されている。
画像形成が開始されると、感光体ドラム1に接触する帯電ローラ2は、感光体ドラム1の表面を所定の電圧で均一に帯電する。続いて、露光装置3が上位装置(図示せず)から画像情報(画像データ)を受け、画像情報に応じて変調されたレーザ光で感光体ドラム1の表面を露光する。これによって、感光体ドラム1上に画像情報に応じた静電潜像を形成する。
そして、現像装置4は感光体ドラム1に現像バイアス電圧を印加して、感光体ドラム1上に形成された静電潜像にイエロートナーを付着させて、イエロートナー像を形成する。
なお、画像形成部20Yと同様にして、画像形成部20M、20C、及び20Kにおいて、感光体ドラム1上にはそれぞれマゼンタトナー像、シアントナー像、及びブラックトナー像が形成される。
ベルトユニット5Aは、転写媒体(無端状担持体)である無端状の中間転写ベルト(中間転写体:第2の駆動部材)5を有している。図示の中間転写ベルト5は、ベルト駆動ローラ(駆動部)7、従動ローラ8、及び二次転写ローラ9に懸架されて、ベルト駆動ローラ7の回転駆動に応じて、図中実線矢印(第2の駆動方向)で示す方向に搬送される。
なお、ベルトユニット5Aには、図示しないベルトクリーニングブレードが備えられている。また、中間転写ベルト5に一定の張力を与えて、そのたわみを防止するため、従動ローラ8はテンションばね(図示せず)によって加圧されている。
画像形成の際には、ベルトユニット5Aは、一次転写ローラ6によって中間転写ベルト5に一次転写バイアス電圧を加えて、画像形成部20Yの感光体ドラム1上に形成したイエロートナー像を中間転写ベルト5に転写する(一次転写)。一次転写の後、感光体ドラム1に残留する残留トナーは、クリーニングブレードによって除去される。
続いて、イエロートナー像が転写された中間転写ベルト5は、ベルト駆動ローラ7の駆動によって画像形成部20Mに搬送され、ここで、中間転写ベルト5にマゼンタトナー像が転写される。これによって、イエロートナー像とマゼンタトナー像とが重ね合わされる。
同様にして、画像形成部20Cからシアントナー像が中間転写ベルト5に転写され、画像形成部20Kから中間転写ベルト5にブラックトナー像が転写される。そして、各色のトナー像が重ね合わされて、中間転写ベルト5上にフルカラートナー像が形成される。
ベルト駆動ローラ7の駆動によって、フルカラートナー像が転写された中間転写ベルト5は二次転写ローラ9に至り、二次転写ローラ9によって中間転写ベルト5に二次転写バイアス電圧が印加される。
一方、記録紙(記録材)Pが給紙カセット(図示せず)からピックアップローラ10によって二次転写ローラ9に搬送され、中間転写ベルト5上のフルカラートナー像が記録紙Pに転写される(二次転写)。
フルカラートナー像を転写された記録紙Pは定着器11に送られて、ここで、加熱・加圧等の画像定着処理が施される。その後、記録紙Pは排紙トレイ(図示せず)に排出される。二次転写終了後、中間転写ベルト5上に残留する残留トナーは、中間転写ベルト5に当接するベルトクリーニングブレードによって除去される。
ところで、各色の感光体ドラム1から中間転写ベルト5にトナー像を転写する際、一次転写位置における誤差は、記録紙P上に転写されるカラー画像の色ずれとなる。そこで、図示の画像形成装置では、後述する同期制御装置を用いて中間転写ベルト5と感光体ドラム1との位置を高精度に制御して、色ずれを低減する。
まず、同期制御装置の制御対像である感光体ドラム1及び中間転写ベルト5の駆動系について、その構成を説明する。そして、上記の駆動系の相互干渉を考慮した制御モデルについて説明する。
なお、各色の感光体ドラム1の駆動系は同一であるため、以下の説明では、イエロートナーに係る感光体ドラム1の駆動系について説明することにする。
図2は、図1に示す感光体ドラム1及び中間転写ベルト5の駆動系とこれら駆動系を制御する同期制御装置41の一例を概略的に示す図である。
図2を参照して、駆動系はドラム駆動系とベルト駆動系とがある。ドラム駆動系はドラム駆動モータ21及びドラムエンコーダ31を有している。そして、ドラム駆動モータ21によって感光体ドラム1が回転駆動される。また、ドラムエンコーダ31は感光体ドラム1の回転角度θdを検出する。
ベルト駆動系は、前述のベルト駆動ローラ7、従動ローラ8、二次転写ローラ9、ベルト駆動モータ22、及びベルトエンコーダ32を有している。そして、ベルト駆動モータ22によってベルト駆動ローラ7が回転駆動される。また、ベルトエンコーダ32はベルト駆動ローラ7の回転角度θbを検出する。なお、前述のように、中間転写ベルト5と感光体ドラム1とは互いに接触して配置される。
ここで、上述した構成のドラム駆動系とベルト駆動系の接触を考慮した制御モデルについて説明する。なお、制御モデルの導出に当たっては次の(1)〜(5)の条件を設定するものとする。
(1)中間転写ベルト5と中間転写ベルト5を支持するベルト駆動ローラ7、従動ローラ8、及び二次転写ローラ9との間のすべりについては考慮しない。さらに、中間転写ベルト5の伸縮を考慮せず、中間転写ベルト5、ベルト駆動ローラ7、従動ローラ8、及び二次転写ローラ9は剛体であるとする。
(2)ベルト駆動ローラ7とベルト駆動モータ22との間のばね剛性と減衰とを考慮せず、剛体であるとする。
(3)感光体ドラム1とドラム駆動モータ21との間のばね剛性と減衰を考慮せず、剛体であるとする。
(4)ドラムエンコーダ31及びベルトエンコーダ32の慣性については考慮しない。
(5)中間転写ベルト5と感光体ドラム1とが接触することによって、両者の位置の差に比例するばね力と速度の差に比例する摩擦力が発生する。
ベルト駆動ローラ7の慣性負荷をJb、ベルト駆動ローラ7の半径をrb、ベルト駆動モータ22の出力トルクをTbとして、条件(1)、(2)、及び(4)に応じて、式(1)に示すベルト駆動ローラ7の運動方程式を得る。
また、感光体ドラム1の慣性負荷をJd、感光体ドラム1の半径をrd、ドラム駆動モータ21の出力トルクをTdとして、条件(3)及び(4)に応じて、式(2)に示す感光体ドラム1の運動方程式を得る。
ここで、式(1)及び(2)中のFは、中間転写ベルト5と感光体ドラム1との干渉によって生じる力を示している。条件(5)によって、Fは、ばね剛性Kcと摩擦係数Ccを用いて、式(3)で表される。
ここで、上記の式(1)、(2)、及び(3)から、制御モデルのシステム方程式を導出する。ここでは、状態変数ベクトルx、入力変数ベクトルu、及び出力変数ベクトルyをそれぞれ式(4)、(5)、及び(6)で定義する。
なお、詳細については後述するが、式(6)中のyd及びybをそれぞれドラム位置とベルト位置と定義する。
まず、状態方程式が式(7)で表される。
式(7)中の状態行列Ap及び入力行列Bpは、それぞれ式(8)及び(9)で示される。そして、式(8)、(9)中のM、C、Kは、それぞれ式(10)、(11)、及び(12)で表される。
次に、出力方程式を式(13)で表す。式(13)中の出力行列Cpは、式(14)で表される。
式(13)及び(14)によって、観測出力(つまり、ドラム位置及びベルト位置)は、式(15)及び(16)で表されることになる。
ここで、式(15)から、観測出力(ドラム位置)ydは感光体ドラム1の表面の回転軸周りの変位量を表している。また、式(16)から、観測出力(ベルト位置)ybは、ベルト駆動ローラ7の表面の回転軸周りの変位量を表している。
ここで、条件(1)から、ベルト駆動ローラ7と中間転写ベルト5との間のすべりは考慮しないので、上記の変位量は中間転写ベルト5の移動距離に等しいことになる。
入力変数ベクトルuから出力変数ベクトルyまでの伝達関数は、式(7)及び(13)によって、ラプラス演算子sを用いて、式(17)で表すことができる。
式(17)において、Pddはドラム駆動モータ21の出力トルクから感光体ドラム1の位置までの伝達関数を表す、また、Pbbはベルト駆動モータ22の出力トルクから中間転写ベルト5の位置までの伝達関数を表す。そこで、ここでは、伝達関数Pdd及びPbbを制御対像の直達項と呼ぶことにする。
また、Pdbはベルト駆動モータ22の出力トルクから感光体ドラム1の位置までの伝達関数を表す。Pbdはドラム駆動モータ21の出力トルクから中間転写ベルト5の位置までの伝達関数を表す。
このように、伝達関数Pdb及びPbdは中間転写ベルト5と感光体ドラム1との相互干渉による伝達特性を表すため、ここでは、PdbとPbdを制御対像の連成項と呼ぶことにする。
図3は、図2に示す駆動系及び同期制御装置41で用いられる制御モデルの変数を示す図である。
図示の例においては、中間転写ベルト5と感光体ドラム1との間のばね剛性Kcを0としている。何故なら、図2に示す同期制御装置41では、感光体ドラム1から中間転写ベルト5へのトナー像の転写効率を上げるため、中間転写ベルト5の搬送速度が感光体ドラム1の周速度(移動速度)よりも常に一定速度だけ速くなるように制御するからである。
これによって、中間転写ベルト5と感光体ドラム1とは常にすべり状態にあるため、両者の間に働く力として摩擦力のみを考慮する。但し、同期制御装置41は、干渉による力としてばね力を有する制御対像に対しても適用可能であるため、以降の説明では、ばね剛性Kcを省略せずに説明する。
図4は、図2に示す制御対像である感光体ドラム1及び中間転写ベルト5の伝達関数Pdd、Pdb、Pbd、及びPbbに係る周波数応答を示す図である。ここで、図4(a)は感光体ドラム1の伝達関数Pdd及びPdbに係る周波数応答を示す図である。また、図4(b)は中間転写ベルト5の伝達関数Pbd及びPbbに係る周波数応答を示す図である。
図4(a)において、実線で示す曲線は、伝達関数Pddに係る周波数応答を示し、破線で示す曲線は伝達関数Pbdに係る周波数応答を示している。図4(a)に示すように、0.4Hz以下の低周波数域では伝達関数Pdd及びPbdのゲイン特性と位相特性とがともによく一致していることが分かる。
図4(b)において、実線で示す曲線は伝達関数Pbbに係る周波数応答を示し、破線で示す曲線は伝達関数Pdbに係る周波数応答を示している。図4(b)に示すように、1Hz以下の低周波数域では伝達関数Pbb及びPdbのゲイン特性と位相特性とがともによく一致していることが分かる。
上述の点を考慮すると、中間転写ベルト5と感光体ドラム1との間に作用する摩擦力によって相互干渉が生じて、低周波数域の制御入力に対して中間転写ベルト5と感光体ドラム1との運動が連成していることが理解できる。
再び、図2を参照して、図示の同期制御装置41は、ドラム位置制御器(第1の位置制御手段)42、ベルト位置制御器(第2の位置制御手段)43、及び同期補償器(同期補償手段)44を備えている。同期制御装置41では、乗算器411がドラムエンコーダ31の出力(回転角度θd)を受けて、半径rdを乗算して、ドラム位置(検出位置)ydを得る。また、乗算器412がベルトエンコーダ32の出力(回転角度θb)を受けて、半径rbを乗算して、ベルト位置(検出位置)ybを得る。そして、ドラム位置ydは減算器41a及び41cに与えられ、ベルト位置ybは減算器41b及び41cに与えられる。
減算器41aはドラム位置目標値からドラム位置ydを減算して、その偏差(ドラム位置偏差:第1の位置偏差)を求める。また、減算器41bはベルト位置目標値からベルト位置ybを減算して、その偏差(ベルト位置偏差:第2の位置偏差)を求める。そして、これらドラム位置偏差及びベルト位置偏差はそれぞれドラム位置制御器42及びベルト位置制御器43に与えられる。
一方、減算器41cは、ベルト位置ybからドラム位置ydを減算して、ベルト位置とドラム位置との同期誤差を求める。そして、この同期誤差は同期補償器44に与えられる。
ドラム位置制御器42は、ドラム位置偏差に応答して、感光体ドラム1の位置(以下、ドラム位置と呼ぶ)をドラム位置目標値(目標位置)に偏差なく追従させるために用いられるドラムフィードバック入力ud(第1のフィードバック量)を生成して出力する。
同様に、ベルト位置制御器43は、ベルト位置偏差に応答して、中間転写ベルト5の位置(以下、ベルト位置と呼ぶ)をベルト位置目標値(目標位置)に偏差なく追従させるために用いられるベルトフィードバック入力ub(第2のフィードバック量)を生成して出力する。
また、同期補償器44はベルト位置とドラム位置との同期誤差を受けて、ベルト駆動モータ22及びドラム駆動モータ21のトルク補償量を出力する。以下、ベルト駆動モータ22のトルク補償量をベルトトルク補償量(第2のトルク補償量)と呼び、ドラム駆動モータ21のトルク補償量をドラムトルク補償量(第1のトルク補償量)と呼ぶことがある。
前述のように、ベルト位置とベルト位置目標値との偏差をベルト位置偏差、ドラム位置とドラム位置目標値との偏差をドラム位置偏差と定義して、ベルト位置とドラム位置の差分である同期誤差と区別することにする。
図示の例では、ドラム位置制御器42及びベルト位置制御器43として、例えば、比例動作、微分動作、及び積分動作を行う補償器が並列に接続されたPID制御器が用いられる。
ここで、ベルト位置制御器43の伝達関数Kbとドラム位置制御器42の伝達関数Kdを、それぞれ式(18)及び(19)で表す。
図5は、図2に示すベルト位置制御器43及びドラム位置制御器42の設計パラメータを示す図である。
図2及び図5を参照して、ベルト位置制御器43及びドラム位置制御器42におけるパラメータ(設計パラメータ)の調整について説明する。前述のように、制御対像は連成項Pdb及びPbdを有するため、直達項Pdd及びPbbと位置制御器42及び43の係数Kd及びKbとを乗算した一巡伝達関数KdPdd及びKbPbbのみを用いて制御系の安定性と外乱抑圧性能とを評価することはできない。
なお、ここでは、係数Kdは、図5に示すドラム位置制御器比例ゲインKpd、ドラム位置制御器積分ゲインKid、及びドラム位置制御器微分ゲインKddを表す。また、係数Kbは、図5に示すベルト位置制御器比例ゲインKpb、ベルト位置制御器積分ゲインKib、及びベルト位置制御器微分ゲインKdbを表す。
そこで、まず一巡伝達関数KdPdd及びKbPbbがゼロクロス周波数で十分な位相余裕を有するように位置制御器42及び43のパラメータを調整する。次いで、制御対像の入力端にトルク外乱を印加して、ベルト位置とドラム位置との時刻歴応答をシミュレーションによって求める。数回のシミュレーションの後に、十分な外乱抑圧性能を有するようにベルト位置制御器43及びドラム位置制御器42のパラメータを設計した。
次に、同期補償器44の構成及び動作と設計手法とについて説明する。図2に示す同期補償器44は、中間転写ベルト5及び感光体ドラム1の同期性能を向上させるため、両者の間に作用する摩擦力を打ち消して、新たなばね力と減衰力を付加する。
図6は、図2に示す同期補償器44の構成の一例を示すブロック図である。
図2及び図6を参照して、同期補償器44には、前述のように、減算器41cにおいてベルト位置ybからドラム位置ydを減算した結果である同期誤差esが入力される(式(20)参照)。
この同期誤差esは、微分器45に与えられ、ここで微分される。そして、微分器45は微分量を出力する。この微分量は摩擦補償器46で所定の第1の増幅率(−Cc倍)で増幅されて、摩擦補償微分量として出力される。この摩擦補償器46は、第1の増幅手段に相当し、第1の増幅率は中間転写ベルト5ベルトと感光体ドラム1との間に働く摩擦係数Ccの符号を反転させた−Ccとする。
さらに、同期誤差esは、比例補償器47に与えられ、ここで、比例ゲインKsを第2の増幅率として増幅されて、比例ゲイン同期誤差として出力される。この比例補償器47は第2の増幅手段に相当し、比例ゲインKsは中間転写ベルト5と感光体ドラム1との間に新しく付加するばね剛性を表している。
また、前述の同期誤差の微分量が微分補償器48に与えられ、ここで、微分ゲインCsを第3の増幅率として増幅されて、微分ゲイン微分量として出力される。この微分補償器48は第3の増幅手段に相当し、微分ゲインCsは中間転写ベルト5と感光体ドラム1との間に新しく付加する減衰係数を表わしている。
上記の摩擦補償微分量、比例ゲイン同期誤差、及び微分ゲイン微分量は、加算器49に与えられる。加算器49は、摩擦補償微分量、比例ゲイン同期誤差、及び微分ゲイン微分量を加算して、加算結果を出力する。
そして、この加算結果は、ベルトトルク補償器44b及びドラムトルク補償器44aに与えられる。ベルトトルク補償器44bは、加算結果にベルト駆動ローラ径rbを乗算したベルトトルク補償量Tsbを出力する。一方、ドラムトルク補償器44aは、加算結果に感光体ドラム径rdを乗算したドラムトルク補償量Tsdを出力する。このように、ベルトトルク補償器44b及びドラムトルク補償器44aはトルク補償量生成手段として機能する。
つまり、ベルトトルク補償量Tsb及びドラムトルク補償量Tsdはそれぞれ式(21)及び(22)で表されることになる。
上記のベルトトルク補償量Tsb及びドラムトルク補償量Tsdはそれぞれ減算器50及び加算器51に与えられる。減算器50(第2の駆動制御手段)はベルトフィードバック入力ubからベルトトルク補償量Tsbを減算してベルトトルク指令値Tbを出力する。一方、加算器51(第1の駆動制御手段)はドラムフィードバック入力udとドラムトルク補償量Tsdとを加算してドラムトルク指令値Tdを出力する。
従って、ベルトトルク指令値Tb及びドラムトルク指令値Tdは、それぞれ式(23)及び(24)で表されることになる。
ここで、比例補償器47、微分補償器48、摩擦補償器46の機能を説明するが、そのため、前述の式(3)、(23)、及び(24)を用いて、ベルト駆動ローラ7及び感光体ドラム1の運動方程式(1)及び(2)から前述のF、Tb、及びTdを消去する。これによって、次の式(25)及び(26)で示す結果が得られる。
式(25)及び(26)においては、中間転写ベルト5と感光体ドラム1との間に本来働いている摩擦係数Ccが含まれていない。これによって、摩擦補償器46は、中間転写ベルト5と感光体ドラム1との間に働く減衰力Ccを打ち消す機能を有することが分かる。
なお、中間転写ベルト5と感光体ドラム1との間に働く摩擦係数Ccは実験によって計測することができる。
また、式(25)及び(26)の右辺第1項の係数Ks+Kcは、中間転写ベルト5及び感光体ドラム1の駆動系が本来有するばね剛性Kcと比例補償器47で付加するばね剛性Ksの和になっている。これによって、比例補正器47は、中間転写ベルト5と感光体ドラム1との間にばね力を付加する機能を有することが分かる。
さらに、式(25)及び(26)の右辺第2項の係数Csは、微分補償器48で付加される減衰係数Csとなっている。これによって、微分補償器48は、中間転写ベルト5と感光体ドラム1との間に減衰力を付加する機能を有することが分かる。
続いて、同期補償器44における比例ゲインKsと微分ゲインCsの設計手法について説明する。ここでは、制御対像の入力端にトルク外乱を印加して、同期誤差の時刻歴応答をシミュレーションによって求める。そして、同期誤差の最大値を小さくし、誤差が短時間で収束するように時刻歴応答を確認しつつ、比例ゲインKsを設計する。
このとき、微分ゲインCsを、式(27)で表されるようにする。
つまり、微分ゲインCsが比例補償器47による補償後のばね剛性Ks+Kcに対する臨界減衰係数となるように設計する。このように、新しく付加するばね剛性に対して適切な減衰係数を設計すれば、同期誤差の最大値を小さくして、誤差が短時間で収束する同期補償器44を設計することができる。
続いて、図2に示す同期制御装置を用いて、中間転写ベルト5及び感光体ドラム1の同期性能が従来に比べて向上することについて、シミュレーションによって説明する。
図7は、図2に示す制御対像である中間転写ベルト5の入力端に0.1N・mのステップ外乱を印加した際のベルト位置偏差及びドラム位置偏差のシミュレーション応答を示す図である。ここで、図7(a)は、図6に示す同期補償器44を備える制御系(同期制御系と呼ぶ)の応答を示す図である。図7(b)は、図6に示す同期補償器44を用いず、図2に示すベルト位置制御器43とドラム位置制御器42のみを用いて中間転写ベルト及び感光体ドラムを制御する制御系(非同期制御系と呼ぶ)の応答を示す図である。また、図7(c)は、中間転写ベルト5と感光体ドラム1との間に働く摩擦力を打ち消して、両者を独立に制御する制御系(非干渉化制御系と呼ぶ)の応答を示す図である。なお、図7(a)〜(c)において、ベルト位置偏差を実線で示し、ドラム位置偏差を破線で示す。
図7(a)に示すように、同期制御系においては、中間転写ベルト5に外乱が印加されると、中間転写ベルト5に位置偏差が生じるだけでなく、感光体ドラム1にも中間転写ベルト5と同期する振動的な偏差が生じていることが分かる。これは、中間転写ベルト5と感光体ドラム1との間に新しく付加したばね力と減衰力とによって、中間転写ベルト5の振動が感光体ドラム1に伝達しているためである。
さらに、同期補償器44は、中間転写ベルト5と感光体ドラム1の双方に対して、同期誤差を低減するように、両者のフィードバック入力を補償する。このため、中間転写ベルト5自体の位置偏差が非同期制御系及び非干渉化制御系に比べて小さくなっていることが分かる。
図7(b)に示すように、非同期制御系では同期制御系と同様に、外乱が印加された中間転写ベルト5だけでなく、感光体ドラム1にも振動的な位置偏差が生じていることが分かる。これは、中間転写ベルト5と感光体ドラム1との間に生じる摩擦力によって、中間転写ベルト5の振動が感光体ドラム1に伝達しているためである。
ところが、0.02秒(s)以降における中間転写ベルト5及び感光体ドラム1の応答から、同期制御系と異なり、両者の振動が同期していないことが分かる。
図7(c)に示すように、非干渉化制御系においては、外乱が印加された中間転写ベルト5にのみ位置偏差が生じている。これは、非干渉化制御系であるから、感光体ドラム1には中間転写ベルト5との干渉による摩擦力が伝達していないためである。
このように、非干渉化制御系を用いると、中間転写ベルト5に印加された外乱の抑圧性能はベルト位置制御器の性能にのみ依存し、ベルト位置偏差はそのまま中間転写ベルト5と感光体ドラム1との同期誤差となる。
図8は、図2に示す中間転写ベルト5の入力端にステップ外乱を印加した際の同期制御系、非同期制御系、及び非干渉化制御系に生じる同期誤差を比較して示す図である。
図8において、同期制御系における同期誤差は実線で示し、非同期制御系における同期誤差は破線で示す。また、非干渉化制御系における同期誤差は点線で示す。図示のように、同期制御系においては、非同期制御系及び非干渉化制御系に比べて同期誤差の最大値が低減し、同期誤差の収束時間も非同期制御系に比べて短縮していることが分かる。
一方、非干渉化制御系では、非同期制御系に比べて同期誤差の収束時間が短縮される一方で、同期誤差の最大値が増幅されていることが分かる。
このように、図6に示す同期補償器44を用いて、中間転写ベルト5と感光体ドラム1との間に新たなばね力とばね力に適した減衰力を付加することによって、同期誤差の最大値を小さくして、同期誤差の収束時間を短縮できるようになる。
続いて、本発明の実施の形態による画像形成装置で用いられる同期制御装置の他の例について説明する。ここでは、イエロー、シアン、マゼンタ、及びブラックの各色の感光体ドラムと中間転写ベルトとの位置を同期させる同期制御装置について説明する。なお、画像形成装置自体の構成については、図1で説明した画像形成装置と同様であるので、ここでは説明を省略する。
ここで用いられる同期制御装置は、中間転写ベルトと各色の感光体ドラムとの間に、それぞればね力と減衰力とを付加して、中間転写ベルトと感光体ドラムとの高精度な同期制御を行う。
まず、各色の感光体ドラムと接触することによって中間転写ベルトが受ける力は、各感光体ドラムと中間転写ベルトとの間に働く摩擦力の合力となることについて説明する。
始めに、図1に示すベルト駆動ローラ7の運動方程式を求める。中間転写ベルト5は各色の感光体ドラム1と接触しているため、全ての感光体ドラム1から干渉による摩擦力を受ける。
前述した条件(1)によって、この例ではベルトが剛体であるとしている。従って、中間転写ベルト5が受ける摩擦力は、各色の感光体ドラム1と中間転写ベルト5との間の干渉によって働く力の合力となる。イエロー、マゼンタ、シアン、及びブラックの感光体ドラム1と中間転写ベルト5との間のばね剛性をそれぞれKca、Kcb、Kcc、及びKcdとする。また、減衰係数をそれぞれCca、Ccb、Ccc、及びCcdとし、同期誤差をそれぞれesa、esb、esc、esdとする。さらに、ベルトトルク指令値をTballとすると、ベルト駆動ローラ7の運動方程式は、式(28)で表すことができる。
図9は図1に示す画像形成装置で用いられる同期制御装置の構成の他の例を示すブロック図である。
図9を参照すると、図示の同期制御装置は、色毎のドラム位置制御器42a、42b、42c、及び42d及び色毎の同期補償器44を有するとともに、ベルト位置制御器43を有している。なお、図9においては、図2で説明した減算器41a及び41bと乗算器411及び412とに相当する構成要素は省略されている。
ドラム位置制御器42a、42b、42c、及び42dには、色(Y,M,C,K)毎のドラム位置目標値とドラム位置との偏差(つまり、イエロー、マゼンタ、シアン、及びブラックのドラム位置偏差)が入力される。そして、ドラム位置制御器42a、42b、42c、及び42dは、色毎のドラムフィードバック入力を出力する。
色毎の同期補償器44には、それぞれ減算器41c−1、41c−2、41c−3、及び41c−4から色毎の同期誤差が入力され、後述するように、各色の感光体ドラム1と中間転写ベルト5とにばね力及び減衰力を付加する。
ここで、ベルト位置制御器43、ドラム位置制御器42a、42b、42c、及び42d、及び色毎の同期補償器44は、図2及び図6で説明した同期制御装置と同一の構成を有している。よって、ここでは、詳細な説明を省略することにする。
図9に示す同期制御装置では、ベルトトルク指令値Tballの演算手法にその特徴がある。図示の同期制御装置においては、各同期補償器44の出力が全て加算器52に入力されて、ここで加算される。当該加算器52は第3の加算手段に相当する。
加算器52の出力である加算結果は、減算器50に与えられ、ここで、ベルト位置制御器43から与えられるベルトフィードバック入力ubから加算結果が減算される。そして、減算器50はベルトトルク指令値Tballを出力する。
このようにして、各色の感光体ドラム1が中間転写ベルト5に与える摩擦力を全て考慮されることになる。ベルトトルク指令値Tballは、色毎の同期補償器44が出力するベルトトルク補償量Tsba、Tsbb、Tsbc、及びTsbdを用いて、式(29)で表される。
ここで、イエロー、マゼンタ、シアン、及びブラックの感光体ドラム1とベルト駆動ローラの同期誤差をそれぞれesa、esb、esc、esdとする。また、色毎の同期補償器44の比例ゲインをそれぞれKsa、Ksb、Ksc、Ksdとする。さらに、微分ゲインをCsa、Csb、Csc、Csdとし、ベルトトルク補償量Tsba、Tsbb、Tsbc、及びTsbdとする。ベルトトルク補償量Tsba、Tsbb、Tsbc、及びTsbdは、それぞれ式(30)、(31)、(32)、及び(33)で表すことができる。
式(29)〜(33)を用いて式(28)からTballを消去すると、式(34)で示す結果が得られる。
式(34)の右辺第1項から第4項は式(25)の右辺第1項と同様の形をしており、色毎の同期補償器44は中間転写ベルト5と各色の感光体ドラム1との間に新たなばね剛性を付加していることが分かる。
また、式(34)の右辺第5項から第8項は式(25)の右辺第2項と同様の形をしており、色毎の同期補償器44は中間転写ベルト5と各色の感光体ドラム1との間に新しい減衰係数を付加していることが分かる。
このように、図9に示す同期制御装置では、中間転写ベルト5と各色の感光体ドラム1との間に働く摩擦力を打ち消して、新しいばね力と減衰力を付加することになる。従って、図示の色毎の同期補償器44を用いれば、各色の感光体ドラム1と中間転写ベルト5との位置を高精度に同期させることができることになる。その結果、色ずれの少ない高精細なフルカラー画像を形成することが可能となる。
次に、本発明の実施の形態による画像形成装置で用いられる同期制御装置のさらに他の例について説明する。なお、ここで用いられる同期制御装置は、図9で説明した同期制御装置と比べて同期補償器の構成のみが異なるため、以下の説明では同期補償器についてのみ説明する。
図10は、図9に示す同期制御装置で用いられる同期補償器の他の例を示すブロック図である。なお、図10においては、1つの同期補償器44のみが示されているが、実際には、色毎に同期補償器44が備えられていることになる。
図10を参照すると、図示の同期補償器44は、図9で説明した同期補償器が有する構成要素に加えて、新たにゲイン切り替え器(増幅率変更手段)60を有している。そして、ゲイン切り替え器60によって、後述するように、比例補償器47の比例ゲインKs及び摩擦補償器46の微分ゲイン−Ccを切り替える(つまり、変化させる)。なお、ゲイン切り替え器60は、後述するように、各色の同期補償器44に対応付けて備えられ、比例補償器47の比例ゲインKs及び摩擦補償器46の微分ゲイン−Ccを切り替えることになる。
各色の感光体ドラム1及び中間転写ベルト5上に付着するトナーの濃度は、画像の色及び形状に依存するため、一様ではない。画像形成中に中間転写ベルト5と感光体ドラム1との接触面におけるトナーの濃度が時々刻々変化すると、両者に働く接触力の特性も変化する。従って、トナー濃度に起因する制御対像の運動特性の変動を考慮しないと制御性能が劣ってしまうことになる。
そこで、図示の例では、中間転写ベルト5と感光体ドラム1との間のトナーの濃度に応じて、比例補償器47の比例ゲインKs及び摩擦補償器46の微分ゲイン−Ccを変化させて、ばね剛性及び摩擦係数の変動を補償する。
図11は、図10に示すゲイン切り替え器60の構成の一例を示すブロック図である。
図11を参照すると、ここでは、各色の同期補償器44(図9参照)に対応付けてゲイン切り替え器60が設けられる。図示の例では、イエローに関するゲイン切り替え器及びマゼンタに関するゲイン切り替え器のみが示されている。そして、シアン及びブラックに関するゲイン切り替え器は省略されている。ここでは、イエローに関するゲイン切り替え器を符号60Aで示し、マゼンタに関するゲイン切り替え器を符号60Bで示す。
ゲイン切り替え器60Aは、トナー濃度推定器60a、ベルト遅延素子60b、剛性補償テーブル60c、及び減衰補償テーブル60dを有している。そして、トナー濃度推定器60aは濃度推定テーブル601及びドラム遅延素子602を備えている。
同様に、ゲイン切り替え器60Bは、トナー濃度推定器61a、ベルト遅延素子61b、剛性補償テーブル61c、及び減衰補償テーブル61dを有している。そして、トナー濃度推定器61aは濃度推定テーブル611及びドラム遅延素子612を備えている。加えて、ゲイン切り替え器60Bには、加算器61eが備えられている。
なお、図示の例ではゲインの切り替え周期としてドラムエンコーダのサンプリング周期を用いることにする。
まず、ゲイン切り替え器60Aの動作について説明する。画像の形成が開始されると、トナー濃度推定器60aにイエロー感光体ドラム1に係る露光時間(以下、イエロー露光時間と呼ぶ)が入力される。なお、ここでは露光時間を、ゲイン切り替え器60Aの一周期中にレーザを発光させる時間と定義する。
トナー濃度推定器60aは、前述のように、濃度推定テーブル601及びドラム遅延素子602を有しており、濃度推定テーブル601には、露光時間と感光体ドラム1に付着するイエロートナーの濃度推定量との関係が格納されている。この関係を露光・濃度関係と呼ぶ。なお、露光時間とトナー濃度の関係は、例えば、実験によって予め測定される。
ドラム遅延素子602はイエロートナー濃度推定量を所定の遅延時間Tdyだけ遅延させ、イエロー遅延推定量として出力する。遅延時間Tdyは、レーザ照射面から中間転写ベルト5と感光体ドラム1との接触面までのドラム表面の変位量Ldとドラム周速度の目標値vdとを用いて、式(35)で表される。
式(35)から、ドラム遅延素子601から出力されるイエロー遅延推定量は、イエロー感光体ドラム1と中間転写ベルト5との接触面におけるトナー濃度の推定量を表すことが分かる。
剛性補償テーブル60cには、中間転写ベルト5と感光体ドラム1との接触面におけるイエロートナー濃度の推定量と、中間転写ベルト5と感光体ドラム1との間のばね剛性Kcaとの関係が格納されている。この関係をばね剛性・濃度関係と呼ぶ。
そして、このばね剛性・濃度関係によって、ばね剛性Kcaに拘わらず、同期補償器44による補償後のばね剛性が常に一定となるように、比例補償器47の比例ゲインKsaが調整される。
同様に、減衰補償テーブル60dには、イエロートナー濃度の推定量と、中間転写ベルト5と感光体ドラム1との間の摩擦係数Ccaとの関係が格納されている。この関係を摩擦係数・濃度関係と呼ぶ。そして、この摩擦係数・濃度関係に応じて、トナー濃度に拘わらず、補償後の減衰係数Csaが常に一定となるように、摩擦補償器46の微分ゲインCcaが調整される。なお、前述のばね剛性・濃度関係及び摩擦係数・濃度関係は、例えば、予め実験によって測定される。
ベルト遅延素子60bは、イエロー遅延推定量を受け、イエロー遅延推定量を所定の遅延時間遅延させて、ベルトトナー濃度推定量として出力する。このベルトトナー濃度推定量は、ゲイン切り替え器60Bに与えられる。
続いて、ゲイン切り替え器60Bの動作について説明する。なお、ゲイン切り替え器60Bにおいて、トナー濃度推定器61a、剛性補償テーブル61c、及び減衰補償テーブル61dについては、ゲイン切り替え器60Aと同一であるため、説明を省略する。但し、濃度推定テーブル611にはマゼンタトナーに係る露光・濃度関係が格納されている。また、剛性補償テーブル61c及び減衰補償テーブル61dには、それぞれマゼンタトナーに係るばね剛性・濃度関係及び摩擦係数・濃度関係が格納されている。
ゲイン切り替え器60Bにおいては、前述のように、加算器61eが備えられており、トナー濃度推定器61aの出力(マゼンタ遅延推定量)が加算器61eに与えられる。また、この加算器61eには、ゲイン切り替え器60Aから前述のベルトトナー濃度推定量が与えられ、ここで、マゼンタ遅延推定量とベルトトナー濃度推定量とが加算され、加算遅延推定量として出力される。そして、この加算遅延推定量に応じて比例補償器47の比例ゲインKsbと摩擦補償器46の微分ゲインCcbとを変化させることになる。
また、前述の加算遅延推定量は、ベルト遅延素子61bに与えられ、ここで所定の遅延時間遅延させてベルトトナー濃度推定量として出力する。図示はしないが、このベルトトナー濃度推定量は、シアントナーに係るゲイン切り替え器に与えられる。シアントナーに係るゲイン切り替え器は、マゼンタトナーに係るゲイン切り替え器60Bと同一の構成を有している。
そして、シアントナーに係るゲイン切り替え器からベルトトナー濃度推定量が、ブラックトナーに係るゲイン切り替え器に与えられる。ブラックトナーに係るゲイン切り替え器は、マゼンタトナーに係るゲイン切り替え器60Bと同様の構成を有しているが、ベルト遅延素子は備えられていない。
ここで、前述のベルトトナー濃度推定量について説明する。ゲイン切り替え器60Aにおいて、ベルト遅延素子60bはイエロー遅延推定量を所定の遅延時間Tbyだけ遅延させて、ベルトトナー濃度推定量として出力する。遅延時間Tbyは、イエロートナーの転写面とマゼンタトナーの転写面との距離Lym及び中間転写ベルト5の目標移動速vbを用いて、式(36)で表すことができる。
式(36)から、ベルトトナー濃度推定量は、マゼンタ感光体ドラム1と中間転写ベルト5との接触面におけるイエロートナー濃度の推定量を表すことが分かる。
シアントナー及びブラックトナーの濃度が変動する場合についても同様に、感光体ドラム1上のトナー濃度と中間転写ベルト5に転写したトナー濃度を加算することによって、中間転写ベルト5と感光体ドラム1との接触面におけるトナー濃度の推定が可能である。そして、推定結果に基づいて比例補償器47の比例ゲインKsc及びKsdと摩擦補償器46の微分ゲインCcc及びCcdを変化させることになる。
上述のように、ゲイン切り替え器60と同期補償器44とを組み合わせれば、制御対像の運動特性が変動しても制御性能の劣化を防ぐことができることになる。これによって、図示の同期制御装置は、画像の色及び形状に拘わらず精度よく色ずれを低減することができる。
以上のように、本発明の実施の形態によれば、感光体ドラムと中間転写ベルトとの位置誤差に比例するトルク補償量を求め、これらトルク補償量に応じてドラム位置目標値及びベルト位置目標値を補償するようにしている。この結果、感光体ドラムと中間転写ベルトとの間に新たなばね力が付加されることになって、同期誤差が生じた際にはその誤差を低減することができる。
また、感光体ドラムと中間転写ベルトの速度誤差に比例して、トルク補償量を求め、これらトルク補償量に応じてドラム位置目標値及びベルト位置目標値を補償するようにしている。このため、感光体ドラムと中間転写ベルトとの干渉に起因する摩擦力を打ち消して、新たな減衰力を付加することができる。
このように、本発明の実施の形態では、感光体ドラムと中間転写ベルトとの間に新たなばね剛性とこのばね剛性に適した減衰係数を付加することができる。従って、感光体ドラムと中間転写ベルトに係る制御系は同期誤差に係る情報を相互に利用できることになって、応答性が低い制御系に応答性が高い系が追従する制御系を設計することが可能となる。よって、感光体とドラムと中間転写ベルトとの間における同期性能が向上して、色ずれ等の画質不良を低減して高精細な画像形成を行うことができる。