JP5612533B2 - 石英導波路溝内の充填用材料および光波長合分波回路の屈折率調整方法 - Google Patents

石英導波路溝内の充填用材料および光波長合分波回路の屈折率調整方法 Download PDF

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本発明は、光通信の分野に関する。特に、波長多重伝送を行うときに用いられる温度無
依存の光波長合分波器の絶対波長および透過波形を調整し、また損失を改善する充填材料に関する。さらに、これら充填材料が充填された光回路に関する。
光通信の分野においては、異なる波長の光キャリアを複数の信号で変調して、1本の光ファイバに多重化して伝送し情報容量を増加する波長分割多重方式が用いられている。この波長分割多重方式では、温度無依存化されたアレイ導波路回折格子(以下AWG:Arrayed Waveguide Grating)を用いた、異なる波長の光を合分波する光波長合分波器が重要な役割を果たしている。
光波長合分波器においては、AWGの基板および各導波路を構成する材料であるガラスの屈折率が温度依存性を持ち、さらに熱膨張生じるため、温度とともに透過波長が大きく変動してしまうという問題がある。ここで透過波長(中心波長)とは、AWGに設定された1つのチャネルの透過帯域における中心透過波長のこと言う。上述のAWG温度依存性の問題に対しては、通常、ヒータなどによって一定温度に基板等を加熱して用いて対応している。また、スラブ導波路上に溝を設けて、この溝に石英ガラスとは屈折率の温度依存性の極性が逆のポリマーなどの樹脂を充填して、温度が変化しても透過波長が変動しないように温度無依存化することもできる。
またAWGでは、光回路の製作プロセスの様々な揺らぎにより、分波波長(透過波長)が、標準規格によって定められている絶対波長からずれてしまうことが多い。製作プロセスの揺らぎには、例えば、作成温度のばらつき、ガス濃度や、基板材料の特性ばらつき、さらには溝のエッチング条件のばらつき等がある。そこで、光回路の製作プロセスにおいては、作製されたAWGに紫外線を当てて、その透過波長をモニタしながら石英導波路の屈折率を変化させて、透過波長をトリミング調整する方法が通常用いられている(特許文献1)。
また温度無依存化されたアレイ導波路格子(以下、アサーマルAWGという)において、三角形に形成した溝の中に充填したポリマーに紫外線を当てることにより、ポリマーの屈折率を変化させて、AWGの透過波長をトリミング調整する方法も提案されている(特許文献2)。
光源に許容される波長誤差の条件を緩和し、AWGの変動温度に起因する特性変動に対して耐性を与えるため、AWGの透過スペクトルの形状に対するアプローチも提案されている。AWGの透過スペクトルの形状は、通常ガウシアン分布形状であるが、スペクトルの先端をフラットにする構造が提案されている。透過スペクトルの形状をフラットにすることで、光源の波長誤差やAWG自体の温度変動に起因する変動があっても、これらの影響が緩和される。例えば、AWGのスラブ導波路の入力導波路側に2段のマッハツェンダ干渉計(MZI)を配置する構成が提案されている。この構成においては、追加されたMZI自体も温度無依存化する必要がある。このため、MZI内の一方のアーム導波路に多数の溝を形成して、この溝内に樹脂を充填している(特許文献3)。
具体的には、アレイ導波路上に溝を設けて、この溝に石英ガラスとは屈折率の温度依存性の極性が逆のポリマーなどの樹脂を充填している。このような温度無依存化したアレイ導波路回折格子では、温度が変化しても透過波長が変動しないようにできるものの、充填する材料の屈折率が溝によって生じる損失に大きく影響する。導波路から溝へ出射した光は溝内で広がるため、大きな損失となる。このため光が広がらないように溝内の樹脂に光の閉じこめ効果を持たせることが推奨されている。さらに、光の広がりは樹脂の屈折率に大きく依存し、屈折率が高いほど広がりにくいため、溝内の樹脂にコアよりも屈折率の高い材料(屈折率が1.6以上)を用いることが推奨されている。
特開2001−154043号 明細書 特表2003−523528号 明細書 PCT/JP2010/000082号 明細書 特許第3552159号公報 明細書
S. Kamei et al. "50-GHz-Spacing Athermal Mach-Zehnder Interferometer-Synchronized Arrayed-Waveguide Grating with Improved Temperature Insensitivity, "IEEE PHOTONICS TECHNOLOGY LETTERS, VOL. 21, NO. 17, SEPTEMBER 1, 2009 1205 インターネット、http://silicones.momentive.jp/catalog/files/SiliconeOil.pdf Yasuyuki Inoue, Hiroshi Takahashi, Member, IEEE, Shinji Ando, Takashi Sawada, Akira Himeno and Masao Kawachi , "Elimination of Polarization Sensitivity in Silica-Based Wavelength Division Multiplexer Using a Polyimide Half Waveplate," JOURNAL OF LIGHTWAVE TECHNOLOGY, VOL. 15, NO. 10, OCTOBER, pp. 1947-1957, 1997 Shin Kamei, Yasuyuki Inoue, Member, IEEE, Tomohiro Shibata, and Akimasa Kaneko、" Low-Loss and Compact Silica-Based Athermal Arrayed Waveguide Grating Using Resin-Filled Groove," JOURNAL OF LIGHTWAVE TECHNOLOGY, VOL. 27, NO. 17, SEPTEMBER 1,pp. 3790799, -2009
しかしながら、従来のAWGの温度依存性に対処するための技術には、以下のような問題点があった。引用文献3に開示された構成では、MZIはその出力ポート間の位相が±0.05λ程度の精度で設定されないと、スペクトル先端の形状を平坦とすることができない。このため、追加したMZIの位相調整をするために、MZIのアーム導波路に対しても紫外線を照射して、位相をトリミングする必要がある。通常、2段のMZIが設けられるので、紫外線照射をする場所は2ヶ所となる。この場合、紫外線を照射して調整する場所は、主たるAWGの導波路を含めれば、合計3ヶ所になってしまう(特許文献3)。
また、AWGの波長の温度依存性の2次の項の効果を補正するために、9:1カプラを設ける方法が提案されている(非特許文献1)。この場合でも、カプラに形成した溝に樹脂が充填されており、さらに、このカプラの片方の導波路の屈折率を紫外線照射によってトリミングする必要がある。
上述のように、紫外線照射によりスラブ導波路においてAWG全体の透過波長のトリミングを行い、2段のMZIにおいて位相のトリミング(照射2、3)を行い、さらにカプラの位相のトリミング(照射4)を行なうため、合計で4ヶ所に紫外線を照射しなくてはならない。したがって、光波長合分波器の製造工程においては、波長およびスペクトル形状などを確認しながら、複数の箇所に紫外線を繰り返し照射する必要があり、全体の調整工程に非常に手間が掛かるという問題があった。
AWG上に形成した溝内に充填したポリマーに対して紫外線を照射して、波長および位相を調整する方法もあった。しかし、紫外線を照射して屈折率が簡単に変化するポリマーは耐候性が低く、長期の信頼性試験において、屈折率が変化してしまう。結局、AWGの透過波長や、MZIおよびカプラの位相がずれてしまい、調整そのものが無意味になってしまうという問題があった。
特許文献4には、溝内に充填する材料の屈折率が高い場合に、溝によって生じる損失がより低くなることが記載されている。しかし、これは溝が一本だけ形成された場合に妥当するものであった。AWG上に形成する溝については、同じ溝の長さを維持したままで多数の溝に分割することによって損失を低減することが知られている。このような場合にも、上述の屈折率の関係が妥当するかどうかは明確でなかった。形成された溝による損失に加えて、AWGで構成されるフィルタ特性のスペクトルがブロードになり、隣接チャネルにおける消光比が低下する問題も生じていた。形成された溝によって新たに生じる損失を、さらに低減することが要求されていた。
また、導波路チップのサイズを小さくするために、近年、コア−クラッド間の屈折率差Δnを大きくする傾向にある。そのため導波路のコアの屈折率は1.46、1.5、1.55と次第に大きくなってきている。このような中で、コアの多様な屈折率にも対応可能であって、さらに溝によって生じる損失を抑えることのできる最適の充填材料やその要件は明らかでなかった。
上述のように、AWGを用いた光回路では、光回路・光信号処理装置の調整工程を簡略化すること、さらに、充填する材料により溝で生じる損失を低減することが求められている。本発明は、光回路(光波長合分波回路)の調整工程を大幅に簡略化できる材料を、また、溝で生じる損失が小さくスペクトル形状が良好で、隣接チャネルにおける消光比の良好な特性が得られる充填材料を提供する。さらには、充填材料の屈折率の調整方法、およびその調整方法によって製造される光回路を提供する。
さらに、従来明らかでなかった溝内に充填する材料に対して要求される屈折率の条件を明らかにし、最適な充填材料の選択方法を提供する。後述するように、既存のものでコアの屈折率に近くかつ屈折率の温度依存性(dn/dT)が大きな材料は存在していないため、本発明はコアの屈折率に近く、かつ屈折率の温度依存性(dn/dT)が大きな材料およびその材料の調整方法も提供する。
本発明は、このような目的を達成するために、請求項に記載の発明は、予め値が知られた屈折率を有する異なる2種類以上の材料を、目標屈折率n TARGET となるように、所定の体積比、重量比もしくはモル比に従って混合して得られる混合物または混合して化学反応させて得られる化合物から成り、石英導波路上に形成した溝内に充填する充填用材料において、前記屈折率の異なる材料は、シロキサンを基本とするジメチルシリコーンゲルもしくはジメチルシリコーンゴムの第1のグループ、メチルーフェニルシリコーンゲルもしくはメチルーフェニルシリコーンゴムの第2のグループ、並びに、フェニルシリコーンゲルまたはフェニルシリコーンゴムの第3のグループのいずれかのグループから選択され、前記選択された異なる2つのシリコーンゲルまたはゴムの屈折率の差異は0.04以内であって、前記選択された2つのシリコーンゲルもしくはゴムの混合物または混合して化学反応させて得られる化合物の屈折率が、前記目標屈折率nTARGETとなるように、nを選択された第1のシリコーンゲルまたはシリコーンゴムの屈折率、nを選択された第2のシリコーンゲルまたはシリコーンゴムの屈折率、Aを前記第1のシリコーンゲルまたはシリコーンゴムの体積混合比、重量比もしくはモル比、Bを前記第2のシリコーンゲルまたはシリコーンゴムの体積混合比、重量比もしくはモル比とするとき、式
TARGET=(n×A+n×B)/(A+B)
を満たすようなAおよびBを算出して、A:Bの体積比、重量比もしくはモル比で混合して得られる前記混合物または混合して化学反応させて得られる化合物から成ることを特徴とする充填用材料である
請求項に記載の発明は、予め値が知られた屈折率を有する異なる2種類以上の材料を、目標屈折率n TARGET となるように、所定の体積比、重量比もしくはモル比に従って混合して得られる混合物または混合して化学反応させて得られる化合物から成り、石英導波路上に形成した溝内に充填する充填用材料において、前記屈折率の異なる材料は、フタル酸エステル系可塑剤、アジピン酸エステル系可塑剤、ポリエステル系可塑剤を含むグループの中から選択された2種類の可塑剤と、エチレンプロピレンゴムからなるポリマーとであって、前記2種類の可塑剤と前記ポリマーとの混合物または混合して化学反応させて得られる化合物の屈折率が、前記目標屈折率nTARGETとなるように、nを選択された第1可塑剤の屈折率、nを選択された第2の可塑剤の屈折率、nを前記ポリマーの屈折率、Aを第1の可塑剤の体積混合比、重量比またはモル比、Bを第2の可塑剤の体積混合比、重量比またはモル比、Cを前記ポリマーの体積混合比、重量比またはモル比とするとき、式
TARGET=(n×A+n×B+n×C)/(A+B+C)
を満たすようなA、BおよびCを算出して、A:B:Cの体積比、重量比もしくはモル比で混合して得られる前記混合物または混合して化学反応させて得られる化合物から成ることを特徴とする。
請求項に記載の発明は、請求項1または2の充填材料であって、前記目標屈折率nTARGETは、前記石英導波路のコアの屈折率nとするとき、n±0.04の範囲にあることを特徴とする。
請求項に記載の発明は、請求項1乃至のいずれかの充填材料であって、前記石英導波路は、アレイ導波路回折格子(AWG)のスラブ導波路または移相用アレイ導波路であることを特徴とする。
請求項に記載の発明は、請求項の充填材料であって、前記石英導波路は、前記スラブ導波路の前段に設けられた多段接続した複数のマッハツェンダ干渉計の各々の導波路であることを特徴とする。
請求項に記載の発明は、スラブ導波路および移相用アレイ導波路を少なくとも含むアレイ導波路回折格子(AWG)において、いずれかの前記導波路上に形成された溝内に充填される材料の屈折率を調整する方法において、前記溝内に、少なくとも2種類の、予め知られた屈折率を有するマッチングオイルまたは予め知られた屈折率を有するマッチングオイル以外の材料を充填するステップと、前記マッチングオイルまたはマッチングオイル以外の前記材料が充填された状態で、前記マッチングオイルまたはマッチングオイル以外の前記材料の各々に対して、前記AWGの中心透過波長を測定するステップと、前記測定された波長および前記予め知られた屈折率に基づいて、前記AWGの中心波長が所望の波長になるように、前記溝内に充填されるべき充填材料の目標屈折率nTARGETを算出するステップと、前記目標屈折率が得られるように、予め屈折率の知られている屈折率の異なる2種類以上の材料を、各々の所定の体積比、重量比もしくはモル比に従って混合して得られる混合物または混合して化学反応させて得られる化合物を前記溝に充填するステップとを備えることを特徴とする調整方法である。
前記マッチングオイルまたはマッチングオイル以外の前記材料は、好ましくは樹脂または液体である。
請求項に記載の発明は、スラブ導波路と、移相用アレイ導波路とを少なくとも含むアレイ導波路回折格子(AWG)のいずれかの前記導波路上に形成された第1の溝内、または、前記スラブ導波路の前段に設けられた多段接続した複数のマッハツェンダ干渉計をさらに含む前記AWGの前記マッハツェンダ干渉計の各々に形成された第2の溝内に充填される材料の屈折率を調整する方法において、前記いずれかの溝内に、少なくとも2種類の、予め知られた屈折率を有するマッチングオイルまたは予め知られた屈折率を有するマッチングオイル以外の材料を充填するステップと、前記マッチングオイルまたはマッチングオイル以外の前記材料が充填された状態で、前記マッチングオイルまたはマッチングオイル以外の前記材料の各々に対して、前記AWGの透過スペクトルを測定するステップと、前記測定された透過スペクトルの形状および前記予め知られた屈折率に基づいて、前記AWGの透過スペクトルが所望の形状となるように、前記溝内に充填されるべき充填材料の目標屈折率nTARGETを算出するステップと、前記目標屈折率が得られるように、予め屈折率の知られている屈折率の異なる2種類以上の材料を、前記選択された各材料を所定の体積比、重量比もしくはモル比に従って混合して屈折率を調整した混合物または混合して化学反応させて得られる化合物を前記溝に充填するステップとを備えることを特徴とする調整方法である。
好ましくは、少なくとも前記第2の溝に対して前記AWGの透過スペクトルが所望の形状となるように、前記溝内に充填されるべき充填材料の目標屈折率nTARGETを算出するステップを実行し、混合物または混合して化学反応させて得られる化合物を前記溝に充填する。前記マッチングオイルまたはマッチングオイル以外の前記材料は、好ましくは樹脂または液体である。
請求項に記載の発明は、請求項またはの調整方法であって、前記屈折率の異なる材料は、シロキサンを基本とするジメチルシリコーンゲルもしくはジメチルシリコーンゴムの第1のグループ、メチルーフェニルシリコーンゲルもしくはメチルーフェニルシリコーンゴムの第2のグループ、並びにフェニルシリコーンゲルまたはフェニルシリコーンゴムの第3のグループのいずれかのグループから選択され、前記選択された異なる2つのシリコーンゲルまたはゴムの屈折率の差異は0.04以内であって、前記選択された2つのシリコーンゲルもしくはゴムの混合物または混合して化学反応させて得られる化合物の屈折率が、前記目標屈折率nTARGETとなるように、nを選択された第1のシリコーンゲルまたはシリコーンゴムの屈折率、nを選択された第2のシリコーンゲルまたはシリコーンゴムの屈折率、Aを前記第1のシリコーンゲルまたはシリコーンゴムの体積混合比、重量比もしくはモル比、Bを前記第2のシリコーンゲルまたはシリコーンゴムの体積混合比、重量比もしくはモル比とするとき、式
TARGET=(n×A+n×B)/(A+B)
を満たすようなAおよびBを算出して、A:Bの体積比、重量比もしくはモル比で混合して得られる前記混合物または混合して化学反応させて得られる化合物を、前記溝に充填するステップを備えることを特徴とする。
請求項に記載の発明は、請求項またはの調整方法であって、前記屈折率の異なる材料は、フタル酸エステル系可塑剤、アジピン酸エステル系可塑剤、ポリエステル系可塑剤を含むグループの中から選択された2種類の可塑剤と、エチレンプロピレンゴムから成るポリマーであって、前記2種類の可塑剤と前記ポリマーとの混合物または混合して化学反応させて得られる化合物の屈折率が、前記目標屈折率nTARGETとなるように、nを選択された第1可塑剤の屈折率、nを選択された第2の可塑剤の屈折率、nを前記ポリマーの屈折率、Aを第1の可塑剤の体積混合比、重量比またはモル比、Bを第2の可塑剤の体積混合比、重量比またはモル比、Cを前記ポリマーの体積混合比、重量比またはモル比とするとき、式
TARGET=(n×A+n×B+n×C)/(A+B+C)
を満たすようなA、BおよびCを算出して、A:B:Cの体積比、重量比もしくはモル比で混合して得られる前記混合物または混合して化学反応させて得られる化合物を、前記溝に充填するステップを備えることを特徴とする。
以上説明したように、本発明のアサーマルAWGの溝への充填材料は、石英導波路に形成した溝に充填するのに適した材料であって、さらに、これらを所定の体積混合比で混合することにより、所望の屈折率に制御することができる。この屈折率の制御性によって、アサーマルAWGの中心波長や透過スペクトル形状を任意に制御可能となる。従来のAWGの光波長合分波器の生産工程において、AWGの複数の箇所に紫外線を繰り返し照射する必要がなくなり、全体の調整工程を簡略化することができる。
さらにAWG上に形成した溝により生じる損失が小さく、スペクトル形状が良好で消光比の高いアサーマルAWGを実現することができる。
図1は、本発明の調整方法の第1のフローの概要を説明する図である。 図2は、溝を設けたアサーマルAWGの構造を示す図である。 図3は、充填する樹脂の屈折率とAWG中心波長との関係を示す図である。 図4は、入力側にMZIをタンデム接続したアサーマルAWGの構造を示す図である。 図5は、図4のアサーマルAWGにおいて、第1段目のMZIに位相誤差が存在した場合の透過スペクトル形状を計算して示した図である。 図6は、図4のアサーマルAWGにおいて、第2段目のMZIに位相誤差が存在した場合の透過スペクトル形状を計算して示した図である。 図7は、本発明の調整方法の第2のフローの概要を説明する図である。 図8は、樹脂を充填可能な溝の構造例を示す図である。 図9は、溝壁面での反射の効果のみを考慮した場合の複数の溝を持つAWGの透過率の充填樹脂屈折率依存性のシミュレーション計算例を示した図である。 図10は、導波路に形成した溝の壁面の荒れを概念的に示した図である。 図11は、充填するシリコーン樹脂の屈折率を変えた場合の透過スペクトルの実測値を示した図である。 図12は、透過帯域における最大透過率実測値の、充填したシリコーン樹脂屈折率依存性を示した図である。 図13は、2つの屈折率群のシリコーンゲル、ゴムの混合結果をまとめて示した図である。 図14は、フェニルシリコーンゲルと、メチルフェニルシリコーンオイルまたは変性シリコーンオイルとを混合した結果を示した図である。 図15は、TiO2ナノ粒子の添加量と屈折率との関係を示す図である。 図16は、代表的な可塑剤を示す表である。 図17は、代表的な可塑剤とポリマーの組み合わせを示す表である。
本発明は、AWGの透過波長および/または透過波形をトリミングする際の充填用材料、コアの屈折率に近い屈折率を持つ充填用材料および、その充填用材料を用いたAWGの調整方法、さらにこの方法により製造されたアサーマルAWGを提供する。本発明の材料および調整方法を使用することにより、紫外線照射工程を省略することができる。また、損失が少なく、スペクトルが良好で消光比の高いAWGを実現することができる。まず、本発明による光波長合分波回路の屈折率調整方法について説明する。
図1は、本発明の調整方法の第1のフローの概要を説明するフロー図である。図1では、AWGの透過帯域の中心波長に対して調整を行なうが、後に図7と共に概要を説明する第2のフローでは、AWGの1つのチャネルにおける透過スペクトルの形状に対して調整を行なう。次の段落の説明では、第2のフローにおける対応する対象またはパラメータを括弧の中に示す。
本方法の第1のフローは、AWGが作製された後で、開始する(S100)。S101において、調整のためにAWG上(MZI上)に形成した溝内にマッチングオイルまたはマッチングオイル以外の屈折率が予め知られている材料(液体または樹脂)を充填する。S102において、そのAWGの中心波長(透過スペクトル波形の形状)を測定する。マッチングオイルまたはマッチングオイル以外の屈折率が予め知られている材料(液体または樹脂)は、複数の異なる種類のものを使用して、測定を繰り返しても良い。S103においては、測定した中心波長に基づいて、所望の中心波長(所望の透過スペクトル波形)になるような溝内の充填材料の目標屈折率nTARGETを算出する。目標屈折率nTARGETの算出が終ると、充填したマッチングオイルまたはマッチングオイル以外の屈折率が予め知られている材料(液体または樹脂)を除去する。S103では、目標屈折率nTARGETの算出は、特定の充填材料を前提としておらず、屈折率そのものを求めていることに留意されたい。
S104において、溝へ充填する樹脂の材料を選択・決定する。さらに、S105において、目標屈折率ntargetを実現するために選択した屈折率の異なる2種類以上の材料の正確な体積混合比、重量比またはモル比(材料によってこれらの比を使い分ける)を計算する。選択する材料の屈折率は、既知である。選択する材料は、樹脂のほかに、ナノ粒子、可塑剤、ゲル化剤、増粘剤も含む。S106において、決定した体積混合比等で、選択した樹脂等の材料の混合物または混合して化学反応させて得られる化合物を溝に充填し、この調整フローは終了する(S107)。
本発明の方法において、溝に充填する材料は、dn/dT(屈折率の温度係数)の1次の係数が大きく、信頼性が高く、光信号の損失が少なく、粘弾性が低く、石英導波路内に掘った溝の充填に適した材料である必要がある。より詳細には、AWGの溝に充填するのに適した樹脂は、以下の条件を満たしている必要がある。
(1)dn/dTの1次の係数が大きい
(2)実用温度範囲(通常−40℃から80℃)において、屈折率の転移が無い
(3)1.5μm帯において透明性が高い
(4)粘弾性が小さく、温度を急激に上げても、屈折率が温度に追従する
(5)信頼性が優れている
(6)狭くて深い溝に充填できる(通常、幅数μm〜数10μm、深さ30〜40μm)
(7)混合が可能である
上記の(1)〜(7)の条件を満たす樹脂は非常に限られたものになる。発明者らは、上記条件を満たす樹脂を100種類以上におよぶ樹脂の中から選定した。
即ち、AWGの溝に充填する材料としては、シリコーンゲルもしくはシリコーンゴム、シリコーンオイル、シリコーンオイルをゲル化したもの、フッ素ゲル、ポリイソブチレン、エチレンプロピレンゴム、可塑剤添加もしくは無添加のエチレン酢酸ビニル共重合体、可塑剤添加もしくは無添加のエチレンアクリレート共重合体、ポリエチレンに限られる。これら以外の材料は、(1)〜(5)の条件を満足しなかった。具体的には、他の材料では、温度を変化させた時に大きな粘弾性を持つことにより、一定温度に保っても数時間から十数時間の間に屈折率が徐々に増加してしまう問題が生じた。このような問題のため、他の材料では、温度無依存AWGとなり得ないという欠点があった。
(1)〜(7)の条件を満足した上記材料群の中から、本発明により、屈折率の異なる2種類以上の材料を組み合わせて混合することによって、所望の屈折率に調整が可能な材料をさらに決定した。組み合わせて得られる混合物または混合して化学反応させて得られる化合物の屈折率は、組み合わせる個々の材料の体積比、重量比またはモル比によって正確に決まることがわかった。すなわち、屈折率n1の材料と屈折率n2の材料をA:Bの体積比、重量比またはモル比で混合すると、混合物または混合して化学反応させて得られる化合物の屈折率nは次式によって表される。ここで、体積比、重量比またはモル比のどれを選択するかは材料に依存する。
n=(n1×A+n2×B)/(A+B) 式(1)
石英導波路内の溝に樹脂を充填する際、本発明に従って、混合物または混合して化学反応させて得られる化合物の混合比を正確に決定してその屈折率を正確に制御することにより大きな利点が生じる。以下、さらにこの利点について詳細に説明する。
当然のことながら、混合を行わなくてもn1またはn2が所望の屈折率に一致する場合もある。そのような場合は、A=0またはB=0となる。また当然のことながら、硬化して使用する材料では、硬化前の材料を混合して、混合させた後で硬化させる。例えば、シリコーンゲルやシリコーンゴムは2液性または1液性のものが利用可能であるが、これらは混合した後、室温放置または熱硬化によって硬化させる。従って混合する場合には、硬化前の材料を混合して硬化させる必要がある。
AWGの中心波長の調整:
図2は、溝を設けたアサーマルAWGの構造を示す図である。アサーマルAWG100は、入力用チャネル導波路12、入力側スラブ導波路13、移相用チャネル導波路14、出力側スラブ導波路16および出力用チャネル導波路15から構成される。いずれの構成要素も、石英基板11上に形成される。通常のAWGのこれら構成要素に加えて、アサーマルAWGでは、温度無依存化のために入力用スラブ導波路13上に複数の三角溝または三日月溝17をさらに設け、溝17の内部には光学樹脂18が充填されている。ここでは溝17は入力側スラブ導波路13に形成されているが、出力用スラブ導波路16上に形成しても良いし、移相用チャネル導波路14上に形成しても良い。
アサーマルAWGにおける中心透過波長λは、式(2)で与えられる。ここで、nはコアの屈折率、npolymerは樹脂の屈折率、ΔL移相用導波路の隣接する導波路間の光路長差、ΔLpolymerは樹脂が在る部分の隣接する導波路間の光路長差、mは回折次数を表す。
Figure 0005612533
通常の通信波長帯域におけるAWGでは、波長1520nm〜1560nmに1本のスペクトルが現れる、回折次数はm=34に相当する。尚、図2では溝がスラブ導波路上に形成されているので、ΔLpolymerは、仮想的にスラブ導波路上にも導波路があるとした場合の隣接チャンネル間の光路長差に相当する。
通常の石英ガラスについては、nCの値はT=30℃で正確に知られている。AWGの前述の生産工程の様々な揺らぎにより、AWGチップごとにΔLおよびΔLpolymerが少しずつ異なってくる。これにより、中心透過波長λCのばらつきが発生する。そこで、屈折率が予め分かっているマッチングオイルまたはマッチングオイル以外の屈折率が予め知られている材料(液体あるいは樹脂)を1種類以上用意し、これを溝に充填して(S101)、T=30℃において中心透過波長を測定する(S102)。
一般にAWGを利用する通信システムにおいては、波長に対しては1ppm程度の絶対精度が求められる。ここでは2種類のシリコーンオイル1(屈折率が予め分かっていればそれ以外の材料でも構わない)およびシリコーンオイル2(屈折率が予め分かっていればそれ以外の材料でも構わない)を充填した場合について考える。測定される中心波長をそれぞれλ1,λ2とすると、式(2)から次の式(3)、式(4)が与えられる。
Figure 0005612533
Figure 0005612533
ここで、noil1、noil2はそれぞれのオイルの屈折率である。式(3)、式(4)の連立方程式を解くことにより、AWGチップ毎に、ΔLおよびΔLpolymerを、導出することができる。
図3は、アサーマルAWGの溝に充填する樹脂の屈折率と中心波長との関係を示す図である。図3に示すように、溝に充填するマッチングオイルまたはマッチングオイル以外の屈折率が予め知られている材料(液体あるいは樹脂)の屈折率を変化させることで、中心波長は線形的に変化する。一般にAWGでは、1つのチャネルが100GHz間隔に設定されており、絶対波長を調整する範囲は最大で0.8nmで良い。ここで、波長を0.8nm変化させるのに必要な屈折率の調整幅Δnoilを求めるため、式(3)にm=34、Lpolymer=35/34(μm)を代入する。
0.8(nm)=Δnoil×35/(34×34) 式(5)
式(5)から、Δnoilは0.026となる。最大調整幅0.026とし、最小調整単位を2.6×10-4で、屈折率を正確に調整することができれば、最大調整幅で100GHz、最小調整単位1GHzで、中心波長λCを調整することができる。
充填するシリコーンオイルの屈折率が予めわかっていれば、シリコーンオイルで測定された中心波長から、目標とする中心波長に調整するための目標屈折率nTARGETを算出することができる(S103)。
上述の例では、2種類のオイルを充填して、2回の測定を行なうように説明しているが、nおよびΔLはほぼ一定なので、式(3)、式(4)の連立方程式を解く必要性は少ない。したがって、1種類のオイルで1回の測定によって、目標屈折率nTARGETを算出することもできる。ここでは、マッチングオイル以外の予め屈折率の分かっている材料(液体でも樹脂でも構わない)を用いても構わない。
AWGの透過スペクル波形の調整:
AWGのスラブ導波路の入力側(移相用チャネル導波路の反対側)に、マッハツェンダ干渉計(MZI)を2段接続(タンデム接続)すると、AWGの透過スペクトルの先端部分の形状を平坦にすることができる(特許文献3)。
図4は、入力側にMZIをタンデム接続したアサーマルAWGの構造を示す図である。AWG200は、通常の構成要素として、入力導波路39、入力側スラブ導波路35、移相用チャネル導波路33、出力側スラブ導波路32、出力チャネル導波路31を備えている。また、温度無依存化のために入力用スラブ導波路35上に複数の三角溝または三日月溝34を設け、溝34の内部には光学樹脂が充填されている。
さらに本構成のAWGでは、入力導波路39と入力側スラブ導波路35との間に、第1段目のMZI38、第2段目のMZI37およびモード変換部36が備えられている。第1段目のMZI38は、一方のアーム導波路上に複数の溝41b形成され、この溝内には樹脂が充填されている。第3段目のMZI37も、一方のアーム導波路上には複数の溝41aが形成され、この溝内にも樹脂が充填されている。モード変換部36は、1次モードカプラ43とマルチモード導波路41を含む。
従来、図4の構成のアサーマルAWGにおいては、MZI37、38それぞれについてUV光を照射して、アーム導波路間の位相を調整することによって、透過スペクトルの形状(波形)が矩形と成るようにトリミング調整していた(特許文献3)。これらのMZIについても温度無依存化する必要がある。このため、アーム導波路上に複数の溝を形成して、これら溝の中に樹脂を充填していた。
そこで、上述のAWGの中心波長の調整の場合と同様に、このMZIの溝内の樹脂の屈折率を正確に制御できれば、UV照射が不要となり得る。どのように屈折率を調整すれば、透過スペクトルの形状を矩形に制御できるかについて検討した。以下、MZIのアーム導波路上に形成した溝に充填する樹脂の屈折率による、透過スペクトル波形の制御性を計算した。
位相を1λ可変できれば、MZIの位相を1周期(2π)ずらすことができる。図4の例では、第1段目のMZI38の複数の溝41bの幅総和は119μmであり、第2段目のMZI37の複数の溝41aの幅総和は59.5μmである。ここで、幅総和とは、導波路の光進行方向についての各溝の幅の累計値のことを言う。従って、第1段目のMZI38については、溝に充填する材料の屈折率を0.0132変えることができれば、位相を1λずらすことができる。同様に、第2段目のMZI37については、溝に充填する材料の屈折率を0.0264可変できれば、位相を1λ可変することができる。
図5は、図4のMZIをタンデム接続したアサーマルAWGにおいて、第1段目のMZI38に位相誤差が存在した場合の、透過スペクトル形状を位相をパラメータとして計算して示した図である。(b)は、1つのチャネルの透過スペクトルの全体を示し、(a)は、透過スペクトル先端部の拡大図を示している。(a)、(b)いずれも、MZIの位相誤差が、0、0.05、0.1の3つの場合を示している。図5から、第1段目のMZI38については、概ね位相誤差が±0.05λならば許容できるが、±0.1λは許容できないレベルであることがわかる。
図6は、図4のMZIをタンデム接続したアサーマルAWGにおいて、第2段目のMZI37に位相誤差が存在した場合の、透過スペクトル形状を位相をパラメータとして計算して示した図である。図4同様に(b)は、1つのチャネルの透過スペクトルの全体を示し、(a)は、透過スペクトル先端部の拡大図を示している。(a)、(b)いずれも、MZIの位相誤差が、0、0.05、0.1の3つの場合を示している。図6から、第2段目のMZI37についても、概ね位相誤差が±0.05λならば許容できるが、±0.1λは許容できないレベルであることがわかる。
従って、図4のMZIをタンデム接続したアサーマルAWGにおいては、各MZIに対して位相誤差を±0.05λの範囲で制御できれば、透過スペクトルの形状を矩形に保つことによって、温度無依存化が可能となる。先に述べたように、位相を1λ変化させるためには、充填する材料の屈折率を、第1段目のMZI38については0.0132、第2段目のMZI37については0.0264それぞれ可変できれば良い。従って、第1段目のMZI38については、0.0132×0.05=±0.00066、第2段目のMZI37については、0.0264×0.05=±0.00132の誤差内で、それぞれ屈折率を制御できれば良い。
図7は、本発明の調整方法の第2のフローの概要を説明するフロー図である。図1で、AWGの中心波長の測定値に基づいて充填材料の屈折率を調整する第1のフローについて既に説明した。図7の第2のフローでは、温度無依存化のために追加したMZIに対して、透過スペクトルの形状の測定に基づいて、充填材料の屈折率を調整する。
本発明の方法の第2のフローは、AWGが作製された後、開始する(S200)。S201において、調整のためにMZI上に形成した溝内にマッチングオイルまたはマッチングオイル以外の屈折率が予め知られている材料(液体あるいは樹脂)を充填する。S202において、そのAWGの透過スペクトル波形の形状を測定する。マッチングオイルまたはマッチングオイル以外の屈折率が予め知られている材料(液体あるいは樹脂)は、複数の異なる種類のものを使用して、測定を繰り返しても良い。S203においては、測定した透過スペクトル波形の形状に基づいて、所望の透過スペクトル波形になるように、目標屈折率nTARGETを算出する。目標屈折率nTARGETの算出が終ると、マッチングオイルまたはマッチングオイル以外の屈折率が予め知られている材料(液体あるいは樹脂)を除去する。
S204において、溝へ充填する樹脂の材料を選択・決定する。さらに、S205において、目標屈折率nTARGETを実現するために選択した屈折率の異なる2種類以上の材料の正確な体積混合比を計算する。選択する材料の屈折率は、既知である。選択する材料は、樹脂のほかに、ナノ粒子、可塑剤、ゲル化剤、増粘剤も含む。S206において、決定した体積混合比で選択した樹脂等の材料の混合物または混合して化学反応させて得られる化合物を溝内に充填する。
S207で、すべてのMZIについて、透過スペクトルの調整が完了したかを判断し、すべてのMZIの調整が完了するまでS201〜S206を繰り返す。その後、この調整フローは終了する(S208)。
S203における目標屈折率の決定は、透過スペクトルの波形の特徴から何らからのパラメータを抽出して、S202で測定されたスペクトル波形からMZIの位相誤差を推定して行なうことができる。目標屈折率が決定されれば、適切な充填材料を選択し、さらに選択された材料の混合比を決定して、混合物をMZIの溝内に充填する。図5および図6で示したように、194THz帯で1チャネルが100GHzの帯域幅を持つ光波長合分波回路の場合では、温度無依存AWGおよびMZIの溝に充填する材料の屈折率を0.0264程度の範囲で可変調整できれば、中心波長および透過スペクトル波形の調整が可能となる。後述の実施例では、溝の充填に適した材料であって、その屈折率の調整が可能な材料について詳細に述べる。
尚、上述の図2および図4の構成のアサーマルAWGでは、樹脂を充たす溝は、導波路を横断するように形成されており、光は導波路から樹脂を通過していく。本発明の調整方法を適用できる溝はこれに限られない。
図8は、樹脂を充填可能な溝の構造例を示す図である。図8の(a)は、溝が導波路を横断するように形成された場合を、(b)は、溝が導波路に平行に、導波路リッジを形成して、その側面に樹脂等の材料を充填した場合を示す。(a)、(b)において、矢印51は伝搬する光の方向を示し、破線によって導波路52を示している。(a)では、溝53は導波路52を横断するように設けられている。光は、コア54の内部を進む。
(b)では、導波路52に対して、溝54は導波路側面に設けられている。この場合溝54に充填される樹脂はクラッドの役割も果たす。このため、屈折率はコアまたはクラッドの屈折率に近くなる必要がある。溝の屈折率がコアに近ければ、光はコアから滲みだし樹脂の屈折率を感じるので、樹脂のdn/dTを感じることになる。この場合、正確に樹脂の屈折率を調整する必要がある。また図8の(a)では、溝の本数が多くなるとき、後述するように溝によって生じる反射損失が大きくなるのを避けるため、充填する樹脂の屈折率はできる限りコアの屈折率に近い方が望ましい。
溝に充填する樹脂の屈折率がクラッドに近ければ、光はコアに閉じこめられすぎて、樹脂のdn/dTを感じない。また、反対に樹脂の屈折率が高すぎると光はコアから樹脂の方へ流れてしまう。従って、(b)の構成の溝の場合も、屈折率の正確な制御が必要となる。
上述の本発明の方法を実行して屈折率の調整を行うために、石英導波路溝への充填に適し、かつ、屈折率が制御可能な材料の実施例について、以下詳細に述べる。これらの材料によって、紫外光の照射工程を削除することが可能となる。さらに、AWG上に形成した溝によって生じる損失を低下させ、透過帯域のスペクトルの形状を改善し、さらに隣接チャネルにおける消光比を高くすることができる。
シリコーンゲルまたはシリコーンゴム
シリコーンゲルまたはシリコーンゴムは、石英導波路内の溝に充填するのに最も適した材料である。すなわち、以下の特徴を持っているので溝に充填するのに適している。
(1)dn/dTが−350×10-6と大きい
(2)高温高湿試験でも殆ど特性が変化せず、耐久性がある
(3)粘弾性が小さく、急激に温度を上げたりまたは下げたりしても、屈折率が温度変化に追従して、屈折率−温度依存性にヒステリシスが表れない
通常、充填に使用される樹脂は、1つはジメチルシリコーンゲルであり、その屈折率は波長1.5μmの光(T=30℃)で1.395±0.005である。もう1つは、フェニルシリコーンゲルであり、その屈折率は波長1.5μmの光(T=30℃)で1.53±0.005である。メチル基およびフェニル基をそれぞれ有するこれら2つのシリコーンゲルは、相互の屈折率の差異が0.12あり、大きく離れている。これら2つのシリコーンゲルを直接混ぜ合わせたところ、混合物または混合して化学反応させて得られる化合物は白濁してしまい、光の損失が大きくなる。このため、AWGやMZIの溝に充填する材料としては不適であった。この結果を踏まえて、さらに種々のシリコーンゲルを混合してみた結果、白濁させることなく異なるシリコーンゲルを混ぜ合わせるためには、2つの材料の相互の屈折率差が、大きくても0.04以内であることが必要と分かった。
屈折率の若干異なるメチルフェニルシリコーンゲルは、市販のシリコーンゲルの中にも存在しており、以下にその例を列挙する。
1液性シリコーンゲルKE-1056(信越化学社製)はジメチルシリコーンゲルであるが、KE-1055(信越化学社製)はフェニル基が少し入ったメチルフェニルシリコーンゲルであり、KE-1056よりも屈折率が0.03高くなっている。
(1)KE-1056 n=1.399 (1.5μm、T=30℃)(1液性)
(2)KE-1055 n=1.43 (1.5μm、T=30℃)
また、別のフェニルタイプシリコーンゲル(モメンティブ社製)の屈折率は以下の通りである。
(3)IVS5022 n=1.51 (1.5μm、T=30℃)
さらに別のフェニルタイプシリコーンゲル(東レダウコーニング社製)の屈折率は以下の通りである。
(4)OE-6450 n=1.54 (1.5μm、T=30℃)
IVS5022(モメンティブ社製)には、メチル基が少し含まれている。これらの(1)〜(4)のシリコーンゲルは、相互に屈折率が0.03程度しか離れおらず、白濁することなく、混ぜ合わせることが可能であった。当然のことながら、これらの樹脂は充填後硬化させるものであるため、硬化させる前に混合して、混合した後室温放置あるいは加熱することによって硬化させる。
また、メチルフィニルシリコーンゲル(モメンティブ社製)
(5)XE14-C2860 n=1.52 (1.5μm、T=30℃)
さらにメチルフィニルシリコーンゲル(信越化学社製)
(6)KER-6200 n=1.50 (1.5μm、T=30℃)
も、これらと、屈折率が大きく異なっているがOE-6450(東レダウコーニング社製、n=1.54)とを白濁せずに混ぜ合わせることが可能であった。当然のことながら、上述のこれらの樹脂は充填後硬化させるものであるため、硬化させる前に混合して、混合した後で室温放置あるいは加熱することによって硬化させる。
混合物または混合して化学反応させて得られる化合物の屈折率は、混合材料の体積比、重量比またはモル比に正確に比例するので、0.1%以下の精度の混合比で異なる材料を混合することによって、屈折率を0.03×0.1%=3×10-5の精度で混合できた。上述の(1)〜(4)の各シリコーンゲルは、透明性が高く、粘弾性が低く、耐熱性が高い。また、dn/dTの1次の係数が−350×10-6と大きく、アサーマルAWGに充填するのに適していた。
これらのシリコーンゲルを体積比、重量比またはモル比0.1vol%の精度で混ぜ合わせることによって、屈折率を0.03可変することが可能で、その精度は3×10-5であった。
より具体的には、ジメチルシリコーンゲルDMS(Dimethyl silicone)(n=1.4063)の硬化前の原料と、メチルフェニルシリコーンゲルMPS(methyl phenylsilicone )(n=1.428) の硬化前の原料とを、所定の重量比で混合した。その混合物をアレイ導波路格子の溝に充填し、室温放置または150℃で3時間加熱によって硬化させた場合の、屈折率、中心波長および損失を測定した。屈折率および中心波長は重量比に従って線形に増加し、損失の増大もなく混合可能であった。また、波長可変幅は220pm、波長の制御精度は±6pm以内に収まった。
さらにメチルフェニルシリコーンゲルMPS(n=1.522)の硬化前の原料と、メチルフェニルシリコーンゲルMPS(n=1.55) の硬化前の原料とを、所定の体積比で混合した。その混合物をアレイ導波路格子の溝に充填して硬化した場合の、屈折率、中心波長および損失を測定した。屈折率および波長は体積比に従って線形に増加し、損失の増大もなく混合可能であった。また、波長可変幅は800pm、波長の制御精度は±12pm以内に収まった。この組み合わせにおいて体積比を用いたのは、メチルフェニルシリコーンゲルMPS(n=1.522)およびメチルフェニルシリコーンゲルMPS(n=1.55)の比重が異なっていたためである。
本発明の屈折率調整方法では、横軸に混合物の1つの材料の重量比を、縦軸に屈折率または波長を取ると、通常、屈折率または波長は重量比とともに線形に増加する。しかしながら、メチルフェニルシリコーンゲルMPS(n=1.522)の硬化前の原料と、メチルフェニルシリコーンゲルMPS(n=1.55)の硬化前の原料とを混合する場合では、横軸に重量比を取っても、屈折率または波長は線形には増加しなかった。そこで、横軸に重量比の代わりに体積比を取ると、屈折率または波長は線形に増加した。
上述のこれらのシリコーンゲルを、図2に示したアサーマルAWGのスラブ導波路に設けた溝に充填することによって、100GHz(0.8nm)の波長を調整可能であった。またこれらのシリコーンゲルを、図6に示したスラブ導波路の入力側に設けたタンデム型のMZIの各溝に充填することによって、透過スペクトルの形状を矩形型に最適化することができた。
従来、前述の特許文献4によれば、導波路に形成した溝に充填する材料の屈折率が高い方が、溝における損失が低いとされてきた。特許文献4に記載された発明では、導波路から溝に出射した光の広がり角は、充填材料の屈折率が高い方がより小さくなるため、溝の損失が小さくなるとしていた。そのため導波路溝に充填する材料は、コアよりも屈折率のより高い材料が望ましい(屈折率が1.6以上)とされていた。
非特許文献3を参照すると、溝が1本の場合の導波路における損失は、下の式によって与えられる。
Figure 0005612533
上式(6)において、dは溝幅、ωは導波路のスポットサイズ(半径)、nsiliconeはシリコーン樹脂の屈折率、λは波長を示す。上式(6)によれば、溝幅dが狭く、充填する樹脂(シリコーン樹脂)の屈折率が高いほど、損失は低下する。
しかしながら、上式(6)は、溝が1本の場合にのみ妥当するものである。すなわち、数本以上の溝が形成された場合であって、溝を通過して導波路コアに入った光(導波路モード)と溝を通過してクラッドに入った光(放射モード)との間で位相がπずれる条件では、放射モードは導波路モードとカップリングする。このため、溝の形成は必ずしも損失とはならない。通常、石英導波路に溝を形成して樹脂を充填する場合、溝は1本ではなく、溝の長さを維持したままで分割をして、数本から数10本にして溝の損失を下げている。従って、溝が1本の場合の、AWGの溝に充填する樹脂の屈折率が高いほど溝群での損失が低くなる関係は必ずしも明確に現れない。溝による損失は、溝幅、溝形状、溝間の導波路の長さおよび波長によって変化する(非特許文献4)。
発明者らは、シミュレーションおよび実験によって、充填する樹脂の屈折率の新たな要件を見出した。すなわち、充填する樹脂の屈折率がコアの屈折率に近い方が、溝による損失はより低くなることを明らかにした。例えば、波長ブロッカなどに適用する場合、樹脂の屈折率がコアの屈折率に近いほど、AWGの1つのチャネルの透過スペクトルも細く、隣接チャネル波長での消光比も高くなることを見出した。
シミュレーションおよび実験に用いた石英ガラスの屈折率は(1)のようにnD(25℃)=1.458であり、複数の設定したコア−クラッド間の屈折率差Δnにおいて、石英導波路のコアの屈折率は下記の(2)〜(6)の通りである。
(1) 石英ガラスの屈折率 nD(25℃)=1.458
(2) Δn=0.75%、コアの屈折率nD(25℃)=1.468
(3) Δn=1%のコア、屈折率nD(25℃)=1.47
(4) Δn=1.5%、コアの屈折率nD(25℃)=1.48
(5) Δn=2.5%、コアの屈折率nD(25℃)=1.4944
(6) Δn=5%、コア屈折率nD(25℃)=1.53
上記の5種類の導波路にそれぞれ溝を形成した場合の透過率を、シミュレーション計算および実験によって求めた。先にも述べたように、溝の分轄数を増やすと溝1つ当たりの幅が短くなるので、溝全体における損失は低下する。通常、溝の分轄数は数本から40本程度である。
図9は、溝壁面での反射の効果のみを考慮した場合の、複数の溝を持つAWGの透過率(反射損失)のシミュレーション計算例を示した図である。横軸には、溝に充填する樹脂の屈折率を取っている。縦軸には、1.55μmの波長で計算した中心波長における透過率を取っている。40本に溝を分轄をした場合において、屈折率差Δn=2%のコアを持つAWGの溝での放射損失をほぼ0と仮定して、溝における反射損失に基づいた透過率の計算結果を示した。溝に充填する樹脂の屈折率が、コアの屈折率(1.458)に一致したとき、溝において生じる損失は最も低くなる。通常、溝にはジメチルシリコーンゲルを充填するが、その屈折率は1.404である。図9から、ジメチルシリコーンゲルを充填する場合、反射によって透過率が0.35dBも低下することがわかる。さらに、透過率の低下は溝の実際の構造にも起因する。
図10は、導波路に形成した溝の壁面の荒れを概念的に示した図である。例えば、スラブ導波路62上に形成した分割した複数の溝61において、1つの溝60の壁面は、実際には凹凸がある。この凹凸によって、溝を通過する光の位相が変化するとAWGの透過スペクトルがブロードとなる。通過域の20dBバンド幅が広がって阻止域の減衰量も低下し、隣接チャネル(例えば、100GHz、±0.8nm離れたチャネル)での消光比が悪くなる。従って、溝に充填する樹脂の屈折率を導波路コアの屈折率に一致させるのが、スペクトル形状および中心波長における透過率の点から望ましい。
図11は、屈折率差Δn=2.5%、 コア屈折率nC=1.4944のAWGの溝に様々な樹脂を充填した場合の、スペクトルの実測値を示した図である。具体的には、ジメチルシリコーンゲル(1.404)、メチルフェニルシリコーンゲル(1.445), フェニルフェニルシリコーンゲル(1.51), フェニルシリコーンゲル(1.57)を充填した場合の各スペクトルを示している。
図12は、透過帯域における最大透過率実測値の、充填したシリコーン樹脂の屈折率依存性を示した図である。実測値の損失が、図9に示した計算値よりも大きいのは、実測値に、計算値では考慮していない溝における放射損失も含まれているからである。図12の各プロット点に対応する充填した樹脂は、左側のプロットから順に、以下の通りである。
ジメチルシリコーンゲル信越化学製 KE-1051J nD(25℃)=1.404
メチルフェニルシリコーンゲル信越化学製 X-32-3178 nD(25℃)=1.445
フェニルシリコーンゲル モメンティブ製 IVS5022 nD(25℃)=1.51
フェニルシリコーンゲル ASP-1120 nD(25℃)=1.57
図12からわかるように、本測定に用いた導波路のコアの屈折率1.4944に精度良く一致させなくても、±0.04程度の誤差の範囲内であれば、損失の改善およびスペクトルの改善に効果がある。図12の場合では、IVS5022(モメンティブ製)の屈折率(1.51)はコアの屈折率1.494に対して±0.04の範囲内に入っているので、あえて混合しない場合であっても良好なスペクトルが得られた。すなわち、シリコーン樹脂(シリコーンゲル)の混合比は、いずれか一方が0でも構わない。
市販のフェニルシリコーンゲル・ゴムは、大別して、1.39<nD(25℃)<1.445の範囲にあるジメチルシリコーンゲル-メチルフェニルシリコーンゲル・ゴムA群と、1.495<nD(25℃)<1.57の範囲にあるフェニルシリコーンゲル・ゴムB群とに分かれる。A群内およびB群内では、それぞれ白濁することなく混合が可能である。しかし、A群とB群とは屈折率が離れているため、A群とB群とを混合すると白濁する場合が多い。
図13は、フェニルシリコーン樹脂(PS:phenylsilicone)および変性シリコーンオイルの、2つの屈折率群のシリコーンゴムを混合した結果をまとめて示した図である。黒丸●が、それぞれ、市販されているジメチルシリコーンゲル・ゴムDMS、メチルフェニルシリコーンゲル・ゴムMPS、フェニルシリコーンゲル・ゴムPSを示している。白丸○は、その混合比で混合した場合に白濁せずに混合可能な組合せ、バツ印×は白濁する組合せを示している。
A群の中では、屈折率差が0.022以内であれば、白濁せずに混合可能であるが、それ以上の屈折率差になると白濁する。このため、0.04の幅で屈折率を可変するためには、屈折率差が0.02位内の物を2種類以上用意する必要がある。これに対して、B群では屈折率差が0.04以内であっても混合可能であった。B群の中でも、屈折率差が0.04以上になると少し白濁する場合があった(△で表示)。
A群とB群との境界の領域(n=1.45〜1.5)は市販のシリコーンゲルを混合しても白濁してしまう。アレイ導波路格子のコア−クラッド間屈折率差Δnが0.75%〜2.5%のコアの屈折率は1.46〜1.49の範囲内にあるので、市販の材料ではこの屈折率を持つ物は存在していない。先にも述べたように、導波路チップのサイズを小さくするために、コア−クラッド間の屈折率差Δnをより大きくする傾向にあり、そのため導波路のコアの屈折率は1.46、1.5、1.55と次第に大きくなっている。溝へ充填する樹脂の屈折率を高くしながら、同時にコアの屈折率に近づける必要がある。
そこで、シリコーンゲルの原料となるメチルフェニルシリコーンオイルおよび変性シリコーンオイルを混ぜ合わせることによって、このA群とB群との境界の領域(n=1.45〜1.5)の屈折率にも調整可能であった。例えば変性シリコーンオイルには、以下のもの(信越化学社製)をはじめとして、その他種々のものがある。
(1) 脂環式エポキシ変性シリコーンオイル X-22-2046 nD(25℃)=1.474
(2) エポキシアラルキル変性シリコーンオイル X-22-3000T nD(25℃)=1.484
(3) メタクリル変性シリコーンオイル X-22-164 nD(25℃)=1.450
(4) アラルキル変性シリコーンオイル KF-410 nD(25℃)=1.480
(5) ポリエーテル変性シリコーンオイル KF-354L nD(25℃)=1.463
(6) フェニル変性シリコーンオイル KF-53nD(25℃)=1.485
図14は、フェニルシリコーンゲルと、メチルフェニルシリコーンオイルまたは変性シリコーンオイルとを混合した結果を示した図である。図14においてフェニルシリコーンゲルの原料PS(n=1.49)と上記の変性シリコーンオイルとを混ぜ合わせ硬化させると、屈折率が1.45〜1.49の範囲のシリコーンゲルを作製することができた。このように、多様なコアの屈折率にも対応可能であって、さらに溝によって生じる損失を低減できる最適の溝内充填材料を調製することができる。
さらに、後述のシリコーンオイルと、ジメチルシリコーンゲルA群またはフェニルシリコーンゲルB群とを混合することにより、白濁することなく、屈折率1.45〜1.5の範囲にシリコーンゲルの屈折率を調整することが可能であった。シリコーンオイルの屈折率は下記の通りである。
(1)ジメチルシリコーンオイル: 1.375〜1.404
(2)高級脂肪酸エステル変成シリコーンオイル: 1.425
(3)アルキルアラルキル変性シリコーンオイル: 1.468〜1.49
(4)アルキル・ポリエーテル変性シリコーンオイル:1.437〜1.45
(5)メチルフェニルシリコーンオイル: 1.424〜1.498
(6)環状シリコーンオイル: 1.396
既に述べたように、溝における反射損失を下げるためまたは透過スペクトルを急峻としかつ消光比を改善するためには、溝への充填材料の屈折率を設定する精度は緩くても構わない。すなわち、コアの屈折率±0.04程度の範囲内に合わせれば、改善の効果が確認できる。また、必ずしも2つの樹脂を混合しなくても、単一樹脂の屈折率がこの領域内に入っていれば、その樹脂を用いれば良い。
ナノ粒子添加:酸化チタンTiO2は、構造によってその屈折率が異なる。アナターゼ型のTiO2で2.52、およびルチル型のTiO2で、2.71であり、非常に屈折率が高い。またdn/dTを測定した結果、1次の係数は−350×10-6と非常に大きいことがわかった。さらに、TiO2は無機材料であるため、信頼性に優れている。
メトキシプロパノールに分散させたTiO2溶液(ナノグラム社製)は、ルチル型またはアナターゼ型である。溶液は牛乳のように白濁しているが、40nm程度の粒径に分散している。
フェニルタイプシリコーンゲルOE-6450(東レダウコーニング社製)にメトキシプロパノール分散TiO2を混ぜると、真っ白にペンキのようになって凝集した。一方、1液性シリコーンゲルKE-1056(信越化学社製)にメトキシプロパノールTiO2を混ぜると、ほとんど白濁せず、凝集も少ない。熱硬化時にメトキシプロパノールは揮発して飛んでいく。TiO2の屈折率は2.5〜2.7の範囲であり、シリコーンゲル(屈折率は約1.4)に混ぜることによって、屈折率が増大することが期待できる。そこで、プリズムカプラ法によって、シリコーンゲルとTiO2との混合物または混合して化学反応させて得られる化合物の屈折率を測定した。
図15は、TiO2ナノ粒子の添加量と屈折率の関係を示した図である。シリコーンゲルにTiO2ナノ粒子を数vol%添加するだけで、屈折率を0.03程度の幅で変化させることができることがわかる。数vol%程度のTiO2ナノ粒子を添加しても、シリコーンゲルの粘弾性は全く変化せず、さらにdn/dTも十分に大きいままであった。信頼性も、シリコーンゲルとほぼ同じであった。
さらに別のZrO2ナノ粒子(住友大坂セメント社製)を、同様にシリコーンゲルに混合して、屈折率の変化を調べた。ZrO2の屈折率は2.05であり、TiO2と同様にシリコーンゲルに比べて非常に高い。従って、TiO2と同様に、数vol%程度をシリコーンゲルに添加するだけで、シリコーンゲルの屈折率を0.03程度増大することができる。BaTiO3ナノ粒子も屈折率が2.4とシリコーンゲルに比べて高く、TiO2およびZrO2同様の効果があった。
可塑剤:可塑剤は、硬いポリマーを柔らかくするという特徴を持つ。またガラス転移点をシフトさせることができる。そのため可塑剤をポリマーに添加すると、−40℃から80℃外へガラス転移温度をずらすことができる。
図16は、代表的な可塑剤を示す表である。図16の可塑剤についてみると、フタル酸エステル系の可塑剤は、屈折率が1.48〜1.485の範囲にあり、アジピン酸エステル系の可塑剤は屈折率が1.45であり、ポリエステル系の可塑剤は屈折率が1.46であり、その他可塑剤では、TOTMが1.485であり、JP120が1.535である。
図16の表に示したいずれの可塑剤もその屈折率は、1.43〜1.53の範囲に分布している。これら可塑剤を、正確にその体積比、重量比またはモル比を制御してポリマーに混ぜ合わせることによって、ポリマーの屈折率を正確に調整することができる。また、これらの可塑剤は、凍結点が−50℃以下であって、沸点は350℃以上である。さらに酸化防止剤(例えば、ビスフェノール)を0.数wt%加えることによって、可塑剤の酸化が防止され揮発しにくくなる。実際に、120℃、90%RHの条件で、100時間のプレッシャークッカ試験を実施しても、可塑剤の揮発は殆ど認められなかった。
これらの可塑剤を、例えば、塩化ビニルあるいはエチレン酢酸ビニル共重合体、エチレンアクリレート共重合体、ポリイソブチレン、シリコーンゲル、シリコーンゴム、ポリプロピレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリ塩化ビニリデン、ポリブタジエンなどの樹脂(ポリマー)に、10vol%〜90vol%の体積比の範囲で添加することによって、これら樹脂の屈折率を調整することができる。さらに、可塑剤を混合することによって、ポリマーは軟らかくなるので非常に細い溝に充填するのにも適するようになる。ポリマーが軟らかくなると、粘弾性が小さくなる。このため、温度を急激に上下させても、屈折率はこれに追従し、屈折率−温度依存性の関係はヒステリシスを持たなくなる。
屈折率n1の可塑剤1と、屈折率n2の可塑剤2と、屈折率n3のポリマーを、A:B:Cの体積比、重量比またはモル比で混合すると、混合物または混合して化学反応させて得られる化合物の屈折率nは、次式となる。
n=(n1×A+n2×B+n3×C)/(A+B+C) 式(7)
例えば、下記の組合せについて混合物または混合して化学反応させて得られる化合物の屈折率を実測した。
可塑剤1:フタル酸エステル系可塑剤 DOP n1=1.485 沸点=386℃
可塑剤2:その他の可塑剤 JP120 n2=1.530 沸点=400℃
ポリマー:ポリエチレン (エチレン酢酸ビニル共重合体)EvaFlex) n3=1.48
これらを、A:B:C=0:50:50の体積比、重量比またはモル比で混合すると屈折率は1.505となり、A:B:C=50:0:50の体積比、重量比またはモル比で混合すると屈折率は1.4825となった。したがって、可塑剤1および可塑剤2の体積混合比を変えれば、最大で0.0225の幅で屈折率を調整可能である。全体で、さらに可塑剤の含まれる比を大きくすれば、屈折率の調整幅をさらに広くできる。
これらの可塑剤は、ポリマーのネットワークの中に微細に入り込む。このため、屈折率がポリマーと可塑剤で異なっていても樹脂は透明である。通常、屈折率の異なる高分子材料同士を混ぜ合わせると白濁するが、可塑剤の場合には白濁はほとんど発生しない。屈折率が大きく異なる場合に白濁する場合もあったが、概ね屈折率差が0.04以下であれば混合しても白濁することはなかった。
ポリマーを含まずに可塑剤だけの液体でも、十分に屈折率制御液となり得るが、気泡が発生する可能性があるため、10%以上のポリマーを含んでいることが望ましい。その際、例えば可塑剤90%、ポリマー10%の場合には、混合物または混合して化学反応させて得られる化合物は透明なゲルになる。ゲル化剤、増粘剤としてはミリスチン酸デキストリン等(商品名レオパールレオパールMKL2)、SS−40N、クルーセル G、ジャガー HP-120、ジュンロン P-11、アクペック HV−505ED(三晶社製)等のゲル化剤、あるいは無機のゲル化剤(ラポナイト社製など)が有効である。
図17は、代表的な可塑剤とポリマーとの組み合わせを示す表である。図17の表において、縦の欄はポリマーの種類を表し、横の欄は可塑剤の種類を表している。表の中の数値は、各組み合わせにおける相溶性を示しており、樹脂100に対して、可塑剤が溶ける数値を示している。例えば100という数値は、樹脂100に対して100可塑剤が入ることを意味し、また0という数値は相溶しないことを意味している。
シリコーンオイル
各種シリコーンオイルの屈折率を含む物性値は、例えば、各メーカ(モメンティブ社など)のカタログに記載されている(非特許文献2)。
カタログなどの記載によれば、シリコーンオイルの屈折率nは下記の通りである。
(1)ジメチルシリコーンオイル: 1.375〜1.404
(2)高級脂肪酸エステル変成シリコーンオイル: 1.425
(3)アルキルアラルキル変性シリコーンオイル: 1.468〜1.49
(4)アルキル・ポリエーテル変性シリコーンオイル: 1.437〜1.45
(5)メチルフェニルシリコーンオイル: 1.424〜1.498
(6)環状シリコーンオイル: 1.396
ジメチルシリコーンオイル、フェニルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイル、高級脂肪酸エステル変成シリコーンオイル、アルキルアラルキル変性シリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイル、アルキル・ポリエーテル変性シリコーンオイル、カルビノール変性シリコーンオイルなどのシリコーンオイル群において、同じ種類のシリコーンオイル同士であれば、混合しても透明であり、相溶性が良い。また異種のシリコーンオイル同士でも相溶性が良いものがある。これは、非特許文献2に記載されている。
上記のシリコーンオイル群の中の2つを混ぜ合わせて、屈折率を液体の屈折率測定計(アタゴ屈折率測定器)で測定した。グリース化するために、増粘剤を4%の体積比、重量比またはモル比で添加する。増粘剤は必ずしも添加しなくても構わないが、添加することによって気泡の発生は抑える効果がある。増粘剤としては、12−ヒドロステアリン酸、金属石鹸、デキストリン脂肪酸エステル等が有効であった。
例えば、ジメチルシリコーンオイルTSF451(モメンティブ社製、n=1.397)と、メチルフェニルシリコーンオイルTSF431(n=1.424)とは相溶性である。これら2つのシリコーンオイルの屈折率差は、0.027である。2つのシリコーンオイルの体積混交比を変化させることで、体積混合比に正確に従って、屈折率を1.397〜1.424の範囲で変えることができた。混合物または混合して化学反応させて得られる化合物をそのまま溝に充填しても良いが、傾けると垂れる場合には、封止などが必要となる。
さらにシリコーンオイルに、ゲル化剤、増粘剤であるミリスチン酸デキストリン、12−ヒドロステアリン酸、金属石鹸、デキストリン脂肪酸エステル等を1%〜5%程度添加して、70℃〜100℃に加熱して、よく混合した後放置すると、それぞれシリコーングリース、シリコーンゲルになった。ゲル化剤として、シリコーンゲルを用いても良い。シリコーンゲルは、1液性、2液性の物があるが、ジメチルシリコーンゲルを数%添加して、加熱するとシリコーンオイルは増粘した。これらを溝に充填しても良いし、再度100℃程度に基板と一緒に加熱して、流動性を上げてから溝に充填しても良い。さらに屈折率の調整範囲を広げるため、同じジメチルシリコーンであるTSF451(n=1.375)とメチルフェニルシリコーンオイルTSF431(n=1.424)も混合可能であり、0.049の幅で屈折率調整が可能である。
アルキルアラルキシルシリコーンオイルであるXF42-334(n=1.49)と、XF42-B3629(n=1.468)とでは、屈折率の差が0.02あるが、混合可能である。XF42-B3629(n=1.468)は石英ガラスに近い屈折率を持つので、石英導波路に充填した際に反射損失が少なくなるという利点がある。
メチルフェニルシリコーンオイルTSF431(n=1.424〜)とTSF437(n=1.498)とを混ぜ合わせ、増粘させるために、流動パラフィンモレスコホワイトP-70(n=1.46)を20%程度加え、さらに増粘剤(ミリスチン酸デキストリン等、商品名レオパールレオパールMKL2)を4%程度加えることによって、増粘させて屈折率を大きく調整することが可能であった。
その他のシリコーンオイルの組み合わせでも、屈折率を容易に変えることができた。これらのシリコーンオイルを混合してゲル化したものは、通常マッチングジェルとして入手できるが、石英、BK7等の特定の屈折率のものしか入手できない。0.03の幅で屈折率を精度良く連続的に調整するためには、上述のシリコーンオイルを用いた方法が有効である。
これらシリコーングリースを石英導波路溝に充填することによって、波長、波形の制御が容易となった。
以上詳細に説明してきたように、本発明のアサーマルAWGの溝への充填材料は、石英導波路に形成した溝に充填するに適した材料であって、(1)dn/dTの1次の係数が大きく、(2)実用温度範囲において、屈折率の転移がなく、(3)透明性が高く(波長1.5μm帯において)、(4)粘弾性が小さく(温度を急激に上げても、屈折率が温度に追従する)、(5)信頼性が優れるという特徴を持つ。さらに、これら充填材料を所定の体積比、重量比またはモル比で混合することにより、混合物または混合して化学反応させて得られる化合物の屈折率を所望の目標屈折率に制御することができる。
この屈折率の制御の容易性によって、アサーマルAWGの中心波長や透過スペクトル形状を任意に制御できる。従来のAWGの光波長合分波器の生産工程において、AWGの複数の箇所に紫外線を繰り返し照射する必要がなくなり、全体の調整工程を簡略化することができる。
また、AWG上に形成された溝で生じる損失が小さく、スペクトル形状が良好で、隣接チャネルにおける消光比の良好な特性が得られる充填材料およびその調製法方を提供することができる。
本発明は、光回路および光回路の製造に使用することができる。
11 基板
12 入力用チャネル導波路
13、16、32、35、62 スラブ導波路
14、33 移相用アレイ導波路
15、31 出力チャネル導波路
17、34、53、60、61 溝
36 モード変換部
37、38 MZI
51 導波路
52、54 コア

Claims (9)

  1. 予め値が知られた屈折率を有する異なる2種類以上の材料を、目標屈折率n TARGET となるように、所定の体積比、重量比もしくはモル比に従って混合して得られる混合物または混合して化学反応させて得られる化合物から成り、石英導波路上に形成した溝内に充填する充填用材料において、
    前記屈折率の異なる材料は、シロキサンを基本とする
    ジメチルシリコーンゲルもしくはジメチルシリコーンゴムの第1のグループ、
    メチルーフェニルシリコーンゲルもしくはメチルーフェニルシリコーンゴムの第2のグループ、並びに、
    フェニルシリコーンゲルまたはフェニルシリコーンゴムの第3のグループ
    のいずれかのグループから選択され、前記選択された異なる2つのシリコーンゲルまたはゴムの屈折率の差異は0.04以内であって、前記選択された2つのシリコーンゲルもしくはゴムの混合物または混合して化学反応させて得られる化合物の屈折率が、前記目標屈折率nTARGETとなるように、
    を選択された第1のシリコーンゲルまたはシリコーンゴムの屈折率、nを選択された第2のシリコーンゲルまたはシリコーンゴムの屈折率、Aを前記第1のシリコーンゲルまたはシリコーンゴムの体積混合比、重量比もしくはモル比、Bを前記第2のシリコーンゲルまたはシリコーンゴムの体積混合比、重量比もしくはモル比とするとき、式
    TARGET=(n×A+n×B)/(A+B)
    を満たすようなAおよびBを算出して、A:Bの体積比、重量比もしくはモル比で混合して得られる前記混合物または混合して化学反応させて得られる化合物から成ることを特徴とする充填用材料。
  2. 予め値が知られた屈折率を有する異なる2種類以上の材料を、目標屈折率n TARGET となるように、所定の体積比、重量比もしくはモル比に従って混合して得られる混合物または混合して化学反応させて得られる化合物から成り、石英導波路上に形成した溝内に充填する充填用材料において、
    前記屈折率の異なる材料は、
    フタル酸エステル系可塑剤、アジピン酸エステル系可塑剤、ポリエステル系可塑剤を含むグループの中から選択された2種類の可塑剤と、
    エチレンプロピレンゴムからなるポリマーとであって、
    前記2種類の可塑剤と前記ポリマーとの混合物または混合して化学反応させて得られる化合物の屈折率が、前記目標屈折率nTARGETとなるように、
    を選択された第1可塑剤の屈折率、nを選択された第2の可塑剤の屈折率、nを前記ポリマーの屈折率、Aを第1の可塑剤の体積混合比、重量比またはモル比、Bを第2の可塑剤の体積混合比、重量比またはモル比、Cを前記ポリマーの体積混合比、重量比またはモル比とするとき、式
    TARGET=(n×A+n×B+n×C)/(A+B+C)
    を満たすようなA、BおよびCを算出して、A:B:Cの体積比、重量比もしくはモル比で混合して得られる前記混合物または混合して化学反応させて得られる化合物から成ることを特徴とする充填用材料。
  3. 前記目標屈折率nTARGETは、前記石英導波路のコアの屈折率nとするとき、n±0.04の範囲にあることを特徴とする請求項1または2に記載の充填用材料。
  4. 前記石英導波路は、アレイ導波路回折格子(AWG)のスラブ導波路または移相用アレイ導波路であることを特徴とする請求項1乃至のいずれかに記載の充填用材料。
  5. 前記石英導波路は、前記スラブ導波路の前段に設けられた多段接続した複数のマッハツェンダ干渉計の各々の導波路であることを特徴とする請求項に記載の充填用材料。
  6. スラブ導波路および移相用アレイ導波路を少なくとも含むアレイ導波路回折格子(AWG)において、いずれかの前記導波路上に形成された溝内に充填される材料の屈折率を調整する方法において、
    前記溝内に、少なくとも2種類の、予め知られた屈折率を有するマッチングオイルまたは予め知られた屈折率を有するマッチングオイル以外の材料を充填するステップと、
    前記マッチングオイルまたはマッチングオイル以外の前記材料が充填された状態で、前記マッチングオイルまたはマッチングオイル以外の前記材料の各々に対して、前記AWGの中心透過波長を測定するステップと、
    前記測定された波長および前記予め知られた屈折率に基づいて、前記AWGの中心波長が所望の波長になるように、前記溝内に充填されるべき充填材料の目標屈折率nTARGETを算出するステップと、
    前記目標屈折率が得られるように、予め屈折率の知られている屈折率の異なる2種類以上の材料を、各々の所定の体積比、重量比もしくはモル比に従って混合して得られる混合物または混合して化学反応させて得られる化合物を前記溝に充填するステップと
    を備えることを特徴とする調整方法。
  7. スラブ導波路と、移相用アレイ導波路とを少なくとも含むアレイ導波路回折格子(AWG)のいずれかの前記導波路上に形成された第1の溝内、または、前記スラブ導波路の前段に設けられた多段接続した複数のマッハツェンダ干渉計をさらに含む前記AWGの前記マッハツェンダ干渉計の各々に形成された第2の溝内に充填される材料の屈折率を調整する方法において、
    前記いずれかの溝内に、少なくとも2種類の、予め知られた屈折率を有するマッチングオイルまたは予め知られた屈折率を有するマッチングオイル以外の材料を充填するステップと、
    前記マッチングオイルまたはマッチングオイル以外の前記材料が充填された状態で、前記マッチングオイルまたはマッチングオイル以外の前記材料の各々に対して、前記AWGの透過スペクトルを測定するステップと、
    前記測定された透過スペクトルの形状および前記予め知られた屈折率に基づいて、前記AWGの透過スペクトルが所望の形状となるように、前記溝内に充填されるべき充填材料の目標屈折率nTARGETを算出するステップと、
    前記目標屈折率が得られるように、予め屈折率の知られている屈折率の異なる2種類以上の材料を、前記選択された各材料を所定の体積比、重量比もしくはモル比に従って混合して屈折率を調整した混合物または混合して化学反応させて得られる化合物を前記溝に充填するステップと
    を備えることを特徴とする調整方法。
  8. 前記屈折率の異なる材料は、シロキサンを基本とする
    ジメチルシリコーンゲルもしくはジメチルシリコーンゴムの第1のグループ、
    メチルーフェニルシリコーンゲルもしくはメチルーフェニルシリコーンゴムの第2のグループ、並びに
    フェニルシリコーンゲルまたはフェニルシリコーンゴムの第3のグループ
    のいずれかのグループから選択され、前記選択された異なる2つのシリコーンゲルまたはゴムの屈折率の差異は0.04以内であって、前記選択された2つのシリコーンゲルもしくはゴムの混合物または混合して化学反応させて得られる化合物の屈折率が、前記目標屈折率nTARGETとなるように、
    を選択された第1のシリコーンゲルまたはシリコーンゴムの屈折率、nを選択された第2のシリコーンゲルまたはシリコーンゴムの屈折率、Aを前記第1のシリコーンゲルまたはシリコーンゴムの体積混合比、重量比もしくはモル比、Bを前記第2のシリコーンゲルまたはシリコーンゴムの体積混合比、重量比もしくはモル比とするとき、式
    TARGET=(n×A+n×B)/(A+B)
    を満たすようなAおよびBを算出して、A:Bの体積比、重量比もしくはモル比で混合して得られる前記混合物または混合して化学反応させて得られる化合物を、前記溝に充填するステップを備えることを特徴とする請求項またはに記載の調整方法。
  9. 前記屈折率の異なる材料は、
    フタル酸エステル系可塑剤、アジピン酸エステル系可塑剤、ポリエステル系可塑剤を含むグループの中から選択された2種類の可塑剤と、
    エチレンプロピレンゴムから成るポリマーであって、
    前記2種類の可塑剤と前記ポリマーとの混合物または混合して化学反応させて得られる化合物の屈折率が、前記目標屈折率nTARGETとなるように、
    を選択された第1可塑剤の屈折率、nを選択された第2の可塑剤の屈折率、nを前記ポリマーの屈折率、Aを第1の可塑剤の体積混合比、重量比またはモル比、Bを第2の可塑剤の体積混合比、重量比またはモル比、Cを前記ポリマーの体積混合比、重量比またはモル比とするとき、式
    TARGET=(n×A+n×B+n×C)/(A+B+C)
    を満たすようなA、BおよびCを算出して、A:B:Cの体積比、重量比もしくはモル比で混合して得られる前記混合物または混合して化学反応させて得られる化合物を、前記溝に充填するステップを備えることを特徴とする請求項またはに記載の調整方法。
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