JP5607942B2 - 植物栽培ベッドの培地温度管理方法 - Google Patents

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本発明は温室内においてイチゴなどの植物を栽培するために用いられる栽培ベッドの培地の温度管理のための設備コストおよびランニングコストを低減可能な培地温度管理方法に関する。
温室栽培においては、地面に直接植物を植えず、地面と切り離された培地空間に植物を植栽し、培地を土壌ではなくロックウールなどの代替品を用いる栽培手法が、多収穫化、高品質化を目的として行われている。この栽培手法を採用する場合には、培地を入れる栽培ベッドが用いられる。栽培ベッドは地面と切り離されているので培地の温度管理が可能である。ここで、植物の生育は、大気に触れている地上部の温度だけでなく、土(培地)に触れている根などの地下部の温度管理も大きく影響されるので、培地の温度管理は極めて重要である。
従来、培地の暖房には石油暖房機で温めた温水を、栽培ベッド内に敷設したパイプを通して行ってきた。しかし、この暖房方法は配管工事等の初期費用が嵩むこと、配管劣化で水漏れが多発すること、補修時の手間が多くかかること、温度制御を精度良く行うことが困難であること等の欠点がある。
そこで、特許文献1に開示されているように、温水パイプの代わりに電熱線を栽培ベッド内に敷設し、電熱線に対する給電制御を行うことにより培地の温度管理を行う方法が提案されている。
特開2005−237371号公報
ここで、電熱線に対する給電制御を行うことにより栽培ベッドの温度管理を行う場合には次のような問題点がある。まず、栽培ベッドの温度は、外気温の変化に応じて変化して朝方に最も低くなり、この時点で給電が開始されることが通常である。多数列の栽培ベッドに敷設されている多数の電熱線回路に同時に給電が開始されるので、必要電力量が極めて大きい。これに対応できるように大型のキュービクル式高圧受電設備などを設置する必要があり、設備費が掛るという問題点がある。また、電熱線に対する給電は朝方など、電機料金の安い深夜電力帯であるが、使用電力量が多いのでランニングコストも高いという問題点がある。さらに、栽培ベッドの培地の温度変化は外気温(室内温度)に対して所定のタイムラグがあるが、従来においてはこの点が考慮されていないので、培地温度を適切な温度範囲内に留まるように管理することが困難である。
本発明の課題は、このような点に鑑みて、栽培ベッドの培地内に敷設した電熱線に対する給電制御を適切に行うことにより、給電設備コストおよびランニングコストを大幅に低減できるようにした植物栽培ベッドの培地温度管理方法を提案することにある。
上記の課題を解決するために、本発明の植物栽培ベッドの培地温度管理方法は、
温室内において当該温室の地面から所定の高さ位置に、植物栽培用の培地を入れた栽培ベッドを配置し、
前記栽培ベッド内において当該栽培ベッドの長さ方向に電熱線を引き回し、
前記電熱線を複数の給電系統に分割し、
1日の間における深夜電力料金が適用される深夜電力時間帯を含む指定時間帯において、前記複数の給電系統に対して時分割給電動作を行うことにより、前記培地の温度を設定許容範囲内の温度となるように制御し、
前記時分割給電動作を開始する動作開始温度を設定し、
当該動作開始温度を、前記設定許容範囲内の値であって、当該設定許容範囲を規定する最低温度よりも当該設定許容範囲を規定する最高温度に近い値に設定し、
前記温室の室温が前記動作開始温度以下になると、前記時分割給電動作を開始することを特徴としている。
本発明では、電熱線の給電系統に対して時分割で給電しているので、最大供給電力を低減することができるので、給電設備コストを低減できる。また、最大供給電力を低減できるので基本電力料金を下げることができるので、特に、深夜時間帯における電力使用料金を大幅に下げることができる。よって、設備コストおよびランニングコストを抑制可能な培地温度管理を実現できる。
また、本発明では、培地温度が設定許容範囲を下回った時点で一度に全ての電熱体に給電を開始して暖房する場合とは異なり、制御遅れが発生しないので、培地温度が設定許容範囲を下回ることを確実に防止できる。また、最大投入電流量も少なくて済むので電気料金も大幅に低減できる。
例えば、イチゴの苗の栽培においては、温室内の温度は夜間においては8℃程度まで下がり、日中においては25℃〜30℃に上昇する。培地温度は2〜4時間程度のタイムラグで室温に追従するように変化する。培地の温度はイチゴの苗の栽培のためには13℃〜15℃を下回らないようにすることが望ましい。
この場合、本発明の方法を適用した場合には、例えば、設定許容範囲が13℃〜28℃に設定され、動作開始温度が25℃に設定される。例えば、設定時間帯が深夜電力帯(一般には23時〜7時までの間)に設定されている場合において、室温が25℃を下回ると電熱体に対して時分割による給電動作が開始される。この結果、培地温度が13℃を下回った時点で一度に全ての電熱体に給電を開始して暖房する場合とは異なり、制御遅れが発生しないので培地温度が13℃を下回ることを確実に防止できる。また、最大投入電流量も少なくて済むので電気料金も大幅に低減できる。
ここで、前記指定時間帯を変更可能であることが望ましい。培地温度は外気温によって影響されるので、季節に応じて培地暖房を必要とする時間帯が変動するので、これに対応できるようにする必要があるからである。
また、前記電熱線の前記給電系統に対する時分割給電動作を、一つの前記給電系統毎に行うのか、複数の前記給電系統毎に行うのかを変更可能であることが望ましい。例えば、夏場などにおいては、同時に給電される系統の本数を少なくして最大必要電力を低減でき、真冬などにおいては暖房能力を高めるために、同時に給電される系統の本数を増加させることができる。
さらに、前記培地の温度の前記設定許容範囲は、最低温度および最高温度、または、前記指定時間帯における各時刻に対応付けした最低温度および最高温度によって規定することができ、当該設定許容範囲を変更可能にすることが望ましい。栽培対象の植物などに応じて適切な温度範囲が異なる場合などに対応することが可能になる。
本発明の培地温度管理方法では、栽培ベッドの培地に敷設した電熱体を複数の給電系統に分け、深夜電力帯を含む指定時間帯において、これらに対して時分割により給電を行うようにしている。これにより、培地暖房用の設備コストを低減できると共に培地暖房のためのランニングコストも大幅に低減できるという作用効果を奏する。また、制御遅れが発生しないので培地温度が設定許容範囲を下回ることを確実に防止できる。更に、最大投入電流量も少なくて済むので電気料金も大幅に低減できる。
温室内に設置されているイチゴ栽培用の高設栽培装置を示す説明図である。 図1の高設栽培装置の栽培ベッドを示す横断面図である。 培地温度管理システムの制御系を示す概略ブロック図である。 電熱体の時分割動作を示す説明図である。 培地の温度変化の例を示す説明図である。
以下に、図面を参照して本発明を適用したイチゴ栽培ベッドの培地温度管理システムの実施の形態を説明する。
(高設栽培装置)
まず、培地温度管理システムの説明に先立って、図1、2を参照して、イチゴ栽培用の高設栽培装置の例を説明する。イチゴ栽培用の温室内においては多数列の高設栽培装置1が配置され、各高設栽培装置1は、一定幅で一定高さの長尺状のものであり、金属製のパイプ、アングル材などを組み立てて構成した長尺状の支持台2を備えている。支持台2の上にはイチゴ栽培ベッド3が配置されている。支持台2に多段、例えば上下二段にイチゴ栽培ベッド3を乗せることもできる。
図2はイチゴ栽培ベッド3の構成を示す部分横断面図であり、図1におけるII−II線で切断した部分を示すものである。イチゴ栽培ベッド3は、発泡スチロール製などの発泡プラスチック製のイチゴ栽培容器4と、このイチゴ栽培容器4を左右の下側から支持している左右の桟木5、6とを備えている。桟木5、6は同一形状のものであり、左右対称な状態に配置されている。これらの桟木5、6も発泡スチロールなどのプラスチック製のものである。桟木5、6の底面には支持台2の長手方向に向けて水平かつ平行に延びる左右の容器支持パイプ7、8に乗せて位置決めするための半円形断面の溝5a、6aが形成されている。
イチゴ栽培容器4は左右対称の横断面形状のものであり、上方に開口した凹部11を備えており、この凹部11の底面の中央にはその長手方向に延びる矩形断面の排水溝12が形成されている。イチゴ栽培容器4における凹部11の内周面および上端面および外側の側面を覆う状態に、防水シート20が配置されている。防水シート20には、凹部11の底面の左右の部位を覆っている部位の上に左右一対の電熱線テープ31、32(電熱体)が貼り付けられている。これらの電熱線テープ31、32はイチゴ栽培容器4の長さ方向に沿って配置されている。
排水溝12の上端開口は長尺状の一定厚さ、一定幅の封鎖板21によって封鎖されている。排水溝12の内部には、封鎖板21が排水溝内に落下しないように支持している同一形状の2枚の支持板22、23が配置されている。また、防水シート20および封鎖板21を覆う状態に防根シート24が配置されている。そして、この上から、ロックファイバー微粒綿などの培土25が凹部11に充填されて栽培床が構成されており、ここに、イチゴの苗木26が植えられている。なお、栽培床の上には、液体肥料の供給管27が長手方向に延びており、栽培床の各部分に液体肥料が供給されるようになっている。
(培地温度管理システム)
図3は上記構成の高設栽培装置1が多数列配置されているイチゴ栽培用の温室に設定されている培地温度管理システムを示す概略ブロック図である。培地温度管理システム40は、3相200Vの商用交流電力が供給される配電盤41と、この配電盤41に搭載されているコントローラ42と、コントローラ42に接続されている外部通信用の通信インターフェース43とを備えている。配電盤41には操作パネル44および表示パネル45が取り付けられており、これらは通信インターフェース43を介してコントローラ42に接続されている。
また、各高設栽培装置1における異なる場所にはベンチ温度センサ46が取り付けられている。例えば、これらの検出温度の平均値を検出ベンチ温度として判断する。また、温室内の各部にも室温センサ47が配置されており、例えば、これらの検出温度の平均値を検出室温であると判断する。
配電盤41の配電制御部48を介して、例えば、8系統の分けた電熱体給電系統st1〜st8に対する給電制御が行われる。温室内に配置されている多数列の高設栽培装置1は8系統に分割されており、各電熱体給電系統st1〜st8に属する各列の高設栽培装置1の栽培ベッド3に敷設されている電熱線テープ31、32に給電が行われるようになっている。
コントローラ42は、動作時間指定機能51、電力制限指定機能52およびベンチ温度設定機能53を備えている。動作時間設定機能51は、1日の間における深夜電力料金が適用される深夜電力時間帯を含む指定時間帯を設定するタイマー機能である。指定時間帯は、操作パネル44からの入力設定、あるいは、通信インターフェース43を介して外部の端末装置50からの入力指令に基づき、設定あるいは変更を行うことができる。
電力制限指定機能52は、電熱体給電系統st1〜st8に対する通電量を設定して制限するための機能である。例えば、電熱体給電系統st1〜st8の間には、図3に示すように、スイッチsw1〜sw3が取り付けられている。これらがオフの状態では、8分割の電熱体給電系統st1〜st8に対して8分割による給電動作を行うことができ、定格電力の1/8の電力による駆動が可能である。
スイッチsw1のみをオンに切り替えると、4分割の電熱体給電系統(st1、st2)、(st3、st4)、(st5、st6)、(st7、st8)に切り替わり、4分割による給電動作を行うことができる。スイッチsw1およびsw2のみをオンに切り替えると、2分割の電熱体給電系統(st1〜st4)、(st5〜st8)に切り替わり、2分割による給電動作を行うことができる。全てのスイッチsw1〜sw3をオンに切り替えると、1系統の電熱体給電系統にすることができる。この設定も、操作パネル44からの入力設定、あるいは、通信インターフェース43を介して外部の機器からの入力指令に基づき、設定あるいは変更を行うことができる。
ベンチ温度設定機能53は、培地温度の許容範囲(最低温度および最高温度)を設定するための機能であり、操作パネル44からの入力設定、あるいは、通信インターフェース43を介して外部の機器からの入力指令に基づき、設定あるいは変更を行うことができる。また、培地温度の許容範囲を、時刻に応じて設定することも可能である。例えば、日中の時間帯における許容最低温度および許容最高温度と、夜間における許容最低温度および許容最高温度とを異なる設定にすることも可能となっている。
コントローラ42は、指定時間帯において、検出室温が例えば25℃(動作開始温度)を下回る時点から時分割による給電動作を開始して、検出ベンチ温度をベンチ温度設定機能53によって設定された範囲内の温度に保持する。動作開始温度も操作パネル44からの入力設定、あるいは、通信インターフェース43を介して外部の機器からの入力指令に基づき、設定あるいは変更を行うことができる。
図4は8つの熱電体給電系統st1〜st8の時分割駆動の例を示す説明図である。この例では、4分割の熱電体給電系統A(st1、st2)、B(st3、st4)、C(st5、st6)、D(st7、st8)に設定した場合における時分割による給電動作を示しており、指定時間帯は深夜電力帯である23時から7時までに設定されている。
次に、図5は室温、培地温度の変化状態の例を示すグラフである。曲線Aは室温変化を表し、破線曲線Bは培地温度管理システム40によって制御した場合の培地温度の変化を表す。また、曲線Cは培地温度制御を行わない場合における培地温度の変化を表す。培地温度管理システム40による制御によって、室温が25℃を下回ると熱電体給電系統st1〜st8に対する時分割給電が開始され、培地暖房が始まる。したがって、破線曲線Bに示すように、培地温度が13℃を下回ってしまうことを確実に回避できる。また、時分割駆動を行っているのでピーク電力を抑えることができ、電力料金も大幅に削減できる。
1 高設栽培装置
2 支持台
3 イチゴ栽培ベッド
4 イチゴ栽培容器
5,6 桟木
7,8 容器支持パイプ
11 凹部
12 排水溝
20 防水シート
21 封鎖板
22,23 支持板
24 防根シート
25 培土
26 イチゴ苗木
27 供給管
31,32 電熱線テープ
40 培地温度管理システム
41 配電盤
42 コントローラ
43 通信インターフェース
44 操作パネル
45 表示パネル
46 ベンチ温度センサ
47 室温センサ
48 配電制御部
50 端末装置
51 動作時間指定機能
52 電力制限指定機能
53 ベンチ温度設定機能
st1〜st8 電熱体給電系統

Claims (4)

  1. 温室内において当該温室の地面から所定の高さ位置に、植物栽培用の培地を入れた栽培ベッドを配置し、
    前記栽培ベッド内において当該栽培ベッドの長さ方向に培地暖房用の電熱線を引き回し、
    前記電熱線を複数の給電系統に分割し、
    1日の間における深夜電力料金が適用される深夜電力時間帯を含む指定時間帯において、前記複数の給電系統に対して時分割給電動作を行うことにより、前記培地の温度を設定許容範囲内の温度となるように制御し、
    前記時分割給電動作を開始する動作開始温度を設定し、
    当該動作開始温度を、前記設定許容範囲内の値であって、当該設定許容範囲を規定する最低温度よりも当該設定許容範囲を規定する最高温度に近い値に設定し、
    前記温室の室温が前記動作開始温度以下になると、前記時分割給電動作を開始することを特徴とする植物栽培ベッドの培地温度管理方法。
  2. 請求項1において、
    前記指定時間帯を規定する前記時分割給電動作の開始時刻および終了時刻を変更可能であることを特徴とする植物栽培ベッドの培地温度管理方法。
  3. 請求項1または2において、
    前記電熱線の前記給電系統に対する時分割給電動作を、一つの前記給電系統毎に行うのか、複数の前記給電系統毎に行うのかを変更可能であることを特徴とする植物栽培ベッドの培地温度管理方法。
  4. 請求項1または3のうちのいずれかの項において、
    前記培地の温度の前記設定許容範囲は、最低温度および最高温度、または、前記指定時間帯における各時刻に対応付けした最低温度および最高温度によって規定し、
    当該設定許容範囲を変更可能にすることを特徴とする植物栽培ベッドの培地温度管理方法。
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