JP5606731B6 - 適応型帰還利得補正 - Google Patents

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本発明は補聴器において適応型帰還相殺を行う方法に関する。
補聴器は入力トランスデューサ、増幅器、およびレシーバを備える。音声がレシーバのスピーカから発せられると一部の音声は入力トランスデューサに戻る。入力トランスデューサに戻るこの音声は次に入力トランスデューサ信号に加算されて再び増幅される。したがってこの処理は無限に続き、補聴器の利得が高い場合は口笛音(whistling)を引き起こすことすらある。この口笛音の問題は長年知られており、補聴器に関する標準的な文献では一般的に帰還、リンギング、ハウリング、または発振と呼ばれる。
帰還はこのように補聴器において実現可能な最大安定利得を制限する。この帰還問題を回避するいくつかの従来の手法は帰還相殺部を利用する。これにより帰還経路が適応的に推定され、帰還相殺信号が生成されて補聴器への入力信号から減じられる。これによって、口笛音が出現する前に10dBもの追加利得が実現可能である。
しかしながら、補聴器用の極めて良好な適応ディジタル帰還相殺システムおいてすら常に残留誤差が存在し、例えば、帰還相殺信号の利得が余りに大きい(この場合、補聴器利得が適切でなくなる程度に帰還が過補償される)か、あるいは余りに小さい(この場合、信号の利得が最大安定利得限度を越えることになり、口笛音が生じ得る)のいずれかとなる。
本発明の一つの目的は改良された帰還相殺を有する方法を提供することである。
本発明の第1の態様は、音声信号を生成する入力トランスデューサと、補聴器の帰還経路をモデル化するように構成された帰還モデルと、補償音声信号を形成するために帰還モデルの出力信号を音声信号から減じる減算器と、減算器の出力に接続された信号処理装置であって、聴力損失補償を行うために補償音声信号を処理する信号処理装置と、信号処理装置の出力に接続されたレシーバであって、処理された補償音声信号を音声信号に変換するレシーバと、を備える補聴器に関する。本補聴器は、異なる周波数帯において聴力損失補償を違ったやり方で行うことにより対象使用者の聴力損失の周波数依存性を考慮するマルチバンド補聴器であってよい。マルチバンド補聴器では、入力トランスデューサからの音声信号は2つ以上の周波数チャネルまたは帯域に分割され、通常、音声信号は各周波数帯において違ったやり方で増幅される。例えば、対象使用者の聴力損失に従って音声信号のダイナミックレンジを圧縮するために圧縮器を利用することができる。マルチバンド補聴器では、圧縮器は、圧縮比だけでなく各帯域に関連する時定数も変化させることにより各周波数帯において圧縮を違ったやり方で行う。この時定数はアタック時定数とリリース時定数を指す。
補聴器はさらに、帰還モデルの出力信号の残留誤差の推定値に基づき補償音声信号の処理において利得調整を行う適応型帰還利得補正部を備えることができる。
補聴器は、適応型帰還利得補正部において処理パラメータを平滑するように構成されたアタックフィルタとリリースフィルタを有することができる。
帰還モデルは、適応型帰還相殺フィルタを備えることができる。
残留誤差の推定値は、適応型帰還相殺フィルタのフィルタ係数に基づいてよい。
残留誤差の推定値は、適応型帰還相殺フィルタの出力信号の監視に基づいてよい。
適応型帰還相殺フィルタの出力信号の信号電力レベルは、適応型帰還相殺フィルタのフィルタ係数の振る舞い/適応性に関係するので、別の実施形態では残留誤差の推定値は適応型帰還相殺フィルタの出力信号の信号電力レベルに基づいてよいであろう。あるいは残留誤差の推定値は、適応型帰還相殺フィルタの出力信号の信号電力レベルだけでなく適応型帰還相殺フィルタのフィルタ係数にも基づいてもよい。
利得調整は聴力損失補償とは別に行われてよい。
信号処理装置は、一組の周波数帯においてマルチバンド聴力損失補償を行うように構成されてよい。このとき残留誤差の推定値は、各周波数帯kにおける残留誤差の推定値Aに基づいてよい。
帰還経路における変化に適応する帰還モデル(例えば適応フィルタ)は、広帯域モデルであってよい。すなわちモデルは補聴器の実質的に全周波数範囲で、あるいは一組の周波数帯に分割されることなく補聴器の周波数範囲のかなりの部分で動作し、したがって残留誤差の推定値は、推定値に対する適応広帯域寄与βの推定値に基づいてよい。
帰還モデルは、各周波数帯における帰還経路の個々のモデル化のために一組の周波数帯に分割されてよい。この場合、残留誤差の推定値は、帰還モデルの各周波数帯mにおける推定値に対する適応寄与の推定値βに基づいてよい。
帰還モデルの周波数帯mと聴力損失補償の周波数帯kは、同一であってもよいが異なることが好ましい。帰還モデルの周波数帯の数値mは聴力損失補償の周波数帯の数値より小さいことが好ましい。
本発明の第2の態様は、音声信号を生成する入力トランスデューサと、補聴器の帰還経路をモデル化するように構成された帰還モデルと、補償音声信号を形成するために帰還モデルの出力信号を音声信号から減じる減算器と、減算器の出力に接続された信号処理装置であって、聴力損失補償を行うために補償音声信号を処理する信号処理装置と、信号処理装置の出力に接続されたレシーバであって、処理された補償音声信号を音声信号に変換するレシーバと、を備える補聴器における方法に関する。
本方法はさらに、帰還モデルにより行われる帰還経路モデル化の残留誤差を推定する工程と、推定値に基づき補償音声信号の利得を調整する工程とを含むことができる。
帰還モデルは適応型帰還相殺フィルタを備えることができる。この場合、本方法はさらに、適応型帰還相殺フィルタのフィルタ係数を監視する工程と、監視に基づき残留誤差を推定する工程を含むことができる。
利得調整工程は聴力損失補償を行う前に行われるとよい。
本発明の第3の態様は、信号処理装置と、信号処理装置に電気的に接続された入力トランスデューサと、信号処理装置に電気的に接続されたレシーバと、レシーバから入力トランスデューサまでの信号経路からの帰還を抑制するように構成された適応型帰還相殺フィルタと、を備える補聴器であって、信号処理装置の利得パラメータを適応型帰還相殺フィルタの係数に基づいて調整するように構成された帰還利得補正部をさらに備える補聴器に関する。
信号処理装置の利得パラメータの調整は、信号処理装置への入力信号の利得調整を含むことができる。
利得パラメータの調整はさらに、一組の基準係数に基づいてよい。
利得パラメータの調整はさらに、帰還相殺フィルタのフィルタ係数の一組の基準フィルタ係数からの偏差に基づいてよい。
基準係数は、フィッティング状態中に測定によりおよび/または以前の利得調整に基づく推定により設定されてよい。
本発明の第4の態様は、補聴器の信号処理装置の利得パラメータを調整する方法であって、補聴器の帰還相殺フィルタのフィルタ係数を監視する工程と、監視フィルタ係数に基づいて信号処理装置の利得パラメータを調整する工程と、を含む方法に関する。
信号処理装置の利得パラメータの調整は、信号処理装置への入力信号の利得調整を含むことができる。
信号処理装置の利得パラメータの調整はさらに、一組の基準フィルタ係数に基づいてよい。
利得パラメータの調整はさらに、帰還相殺フィルタのフィルタ係数の一組の基準フィルタ係数からの偏差に基づいてよい。
信号処理装置の利得パラメータの調整は、複数の周波数帯において帯域的手法で決定されても、あるいは広帯域において決定されてもよく、そして複数の周波数帯において帯域的手法で行われてよい。
信号処理装置の利得パラメータの調整は、複数の周波数帯において帯域的手法で決定されても、あるいは広帯域において決定されてもよく、そして広帯域において行われてよい。
帰還相殺は、入力信号から推定帰還信号を減じることにより行うことができる。
信号処理装置は、雑音低減および/またはラウドネス復元を行うように構成することができる。
本発明は、図面を参照し、さらに詳細に検討される。
補聴器を概略的に図示する。 帰還相殺を有する補聴器を概略的に図示する。 補聴器内の帰還相殺の概念的概略図である。 利得補正を有する帰還相殺の概念的モデルを概略的に図示する。 利得補正を有する適応型帰還相殺を有する補聴器を概略的に図示する。 帰還相殺部を備えた補聴器の概略図である。 本発明による方法の実施形態のフローチャートを示す。 本発明による方法の好ましい実施形態のフローチャートを示す。
次に、適応型帰還利得補正について、様々な例が示された添付図面を参照し以下に詳細に説明する。添付図面は概略であり明確にするために単純化された。これらの図面は本発明の理解に不可欠な詳細を示すだけであり他の詳細は省略した。本発明は、添付図面に示されない異なる形式で具現化可能であり、本明細書に記載の例に限定するように解釈すべきでない。むしろ、これらの例は本開示が詳細かつ完全となるように提示され、当業者に本発明の範囲を完全に伝えるであろう。同様な参照符号は本明細書を通して同様な要素を指す。
補聴器の実施形態は入力トランスデューサ、増幅器、およびレシーバを備える。一般的には、トランスデューサはエネルギーを1つの形式から別の形式へ変換可能な手段であると理解される。一実施形態では、入力トランスデューサは音響信号を電気信号に変換可能な手段であるマイクロホンである。別の実施形態では、磁場のエネルギーを電気信号に変換可能なテレコイルである。好ましい実施形態では入力トランスデューサはマイクロホンとテレコイルの両方を備えるが、マイクロホン入力とテレコイル入力を切り替え可能なスイッチシステムを備えていてもよい。使用中、レシーバから発せられた音声の一部はマイクロホンにおいて受信される。また、レシーバのコイルにより生成された電磁場はテレコイルに到達し電磁場または磁場に加わってテレコイルにより捕捉されることがある。レシーバにより発せられ入力トランスデューサにより受信されるこの音声と電磁場は帰還と呼ばれる。これはある周波数の再増幅をもたらし補聴器の装着者にとって不快なものとなり得るので望ましくない。したがって補聴器内に帰還相殺部を備えるとよい。入力トランスデューサはマイクロホン等であってよい。帰還を引き起こし得るのは可聴音だけではない。補聴器筐体における振動もまた帰還を引き起こし得る。
したがって、上記のように、帰還相殺器の性能の限界により、推定された帰還相殺信号と実際の帰還信号との間の残留誤差が残ることがある。したがって本発明の一つの目的は、帰還相殺システムの残留誤差が考慮された帰還相殺システムを設けることにより帰還相殺を改善するシステムを提供することである。
本発明は、帰還モデルの残留誤差を低減するあるいはそれをなくすために適応型帰還利得補正(Adaptive Feedback Gain Correction:AFGC)を提供する。これを実現するためには、モデル誤差の推定値が与えられなければならない。このモデル誤差の推定値は、安定性を維持するとともに正常なラウドネスを理想的に復元することができる適切な利得補正を与えるために、予め決定された最大安定利得限界と組み合わせてもよい。
通常、補聴器は聴力損失補償を異なる周波数帯において違ったやり方で行うことにより対象使用者の聴力損失の周波数依存性を考慮する。このような多チャンネルまたはマルチバンド補聴器は、入力トランスデューサ(例えば1つまたは複数のマイクロホン、テレコイルなど)からの音声信号を2つ以上の周波数チャネルまたは帯域に分割し、通常、音声信号を各周波数帯において違ったやり方で増幅する。例えば、対象使用者の聴力損失に従って音声信号のダイナミックレンジを圧縮するために圧縮器を利用することができる。マルチバンド補聴器では、圧縮器は、圧縮比だけでなく各帯域に関連する時定数も変化させることにより各周波数帯において圧縮を違ったやり方で行う。この時定数はアタック時定数とリリース時定数を指す。アタック時間は大きな音声の開始で圧縮器が応答して利得を低くするのに必要な時間である。逆に、リリース時間は大きな音声の停止後に圧縮器が応答して利得を増加するのに必要な時間である。
マルチバンド補聴器では、モデル誤差の推定値は、安定性を維持するとともに正常なラウドネスを理想的に復元することができる適切な利得補正を与えるために、各周波数帯における予め決定された最大安定利得限界と組み合わせてもよい。
図1に、補聴器10における一般的な帰還を概略的に図示する。図1では、外部信号はマイクロホン12により受信される音響信号であり、マイクロホン12はこの音響信号を信号処理装置14に入力される音声信号に変換する。信号処理装置14では、音声信号は使用者の聴力損失に合わせて増幅される。信号処理装置14は例えばマルチバンド圧縮器を備えることができる。信号処理装置14の出力信号はレシーバ16により音響信号に変換され、レシーバ16は補聴器が使用者により適正に装着された場合にこの音響信号を使用者の鼓膜方向に導く。図1の帰還経路22により示すように、通常、レシーバ16からの音響信号がマイクロホン12へも伝播することを完全には防ぐことができない。
信号18がレシーバ16から入力トランスデューサ12へ漏れて戻る現象は帰還と呼ばれる。低増幅では、帰還は無害な影響を音声に与えるだけである。しかしながら、補聴器利得が大きくレシーバ16から入力トランスデューサ12へ伝播して戻る増幅信号が元の信号のレベルを越え始めると、帰還ループは不安定になり可聴歪みときしみ音を生じる。
この帰還問題を克服するために、たいていのディジタル補聴器は図2に示すような帰還相殺と呼ばれる技術を利用する。
図2には、帰還モデル15を有する従来の補聴器10のブロック線図を概略的に図示する。帰還モデル15は帰還経路22をモデル化する、すなわち帰還モデルは帰還経路22に沿って伝達される信号と同一の信号を生成しようとする。従来の補聴器10では、帰還モデル15は通常、帰還経路22における変化に適応する適応ディジタルフィルタ15である。補聴器10はさらに、入力音声を受信し音声信号に変換するマイクロホン12を備える。音声信号は補聴器10の使用者の聴力損失を補償するために信号処理装置14において処理される。レシーバ16は信号処理装置14の出力を音声に変換する。このようにして信号処理装置14は、増幅器、圧縮器、雑音低減システム等の様々な信号処理要素を備えることができる。帰還モデル15は帰還信号24を抑制または相殺するために減算部17へ補償信号を生成し、これによって帰還経路22に沿った帰還は信号処理装置14において処理が始まる前に抑制または相殺される。
外部帰還経路22はレシーバ16とマイクロホン12間の破線18、24として示される。外部帰還経路22はマイクロホン12がレシーバ16から音声を捕捉することを可能にし、このことは口笛音などのよく知られた帰還問題の原因となり得る。レシーバ16とマイクロホン12間には内部帰還経路も存在し得る。内部帰還経路としては、補聴器10の筐体内のレシーバ16とマイクロホン12間の音響的結合、機械的結合または音響的および機械的結合の両方の組み合わせが挙げられる。
帰還モデル15が外部および/または内部帰還経路22を完全にモデル化しないと、帰還信号の一部は再び増幅される。以下では、帰還経路のモデル15と実際の帰還経路22との差分が補聴器10の増幅へ与える影響について説明する。
本明細書の残りの部分では単純化された数学表記を用いる。ここでは小文字は時間領域信号を表し大文字はそのz変換を表す。すべてのアナログ部品の線形性を仮定しそれらの寄与を1つの帰還経路にマージすることにより図2を単純化することができる。その結果、図3を得る。
図3には、補聴器10の信号経路を概略的に図示する。図3に示すように、使用者に提供される難聴補正出力信号zを与えるために、音声信号26は入力トランスデューサにより生成され処理される。音声信号26は、帰還経路22を介し入力トランスデューサ(図示せず)に漏れて戻る帰還信号24に加算される。帰還信号24は、減算部17における帰還モデル15のモデル信号28の減算により補正または抑制される。帰還モデル15は帰還補償フィルタを備えることができる。
図3を参照すると、残留誤差は次のように定義される。
R=F−C
これは帰還モデル15の出力信号と実際の帰還経路22を介し入力トランスデューサに漏れて戻る信号との差分を表す。

この残留誤差を使用することにより図3のモデルの伝達関数は次のようになる。
Figure 0005606731

これは、補聴器により提供される実効利得は補聴器の利得であるG(|GR|<<1すなわち残留誤差が非常に小さい場合はG)を近似することを示す。
以下では、帰還相殺を有する補聴器の出力電力と完全な帰還相殺を有する補聴器(すなわちR=0の補聴器)とを比較する。このような理想的補聴器の期待出力電力は次のように与えられる。
Figure 0005606731

式中、Eは期待値演算子である。
実際の補聴器の期待出力電力は次のように与えられる。
Figure 0005606731
これらの電力推定値を除算することで、FとC間の不整合により補聴器が使用者に誤って与える過剰利得gを定義する。
Figure 0005606731
この定義を実際に使用するためには、期待値演算子の具体的な解を依然として必要とするが、これはRの位相についていくつかの仮定をすることにより可能である。例えば、Rに関する正確な位相情報がない場合、最悪ケース過剰利得gwceは次のようになる。
Figure 0005606731
あるいは、より現実的には、期待過剰利得geeは複素平面において全角度にわたって積分すること(位相は一様に分布するという仮定に対応する)により得ることができ、次のようになる。
Figure 0005606731
原理的に、楽観的推定値は「位相は常に分母を最大にする」と仮定することにより計算することができるが、これは通常、あらゆる使用のためには非常に正確な位相情報を必要とする。
先の章では、真の帰還経路Fと帰還モデルC間の不整合が補聴器により与えられる実効利得をどのように変えるかを示した。次に、過剰利得を補正する設計について考察する(実効利得が所望利得を越える予想ケースを仮定する)。
図4には、本発明の一実施形態における信号処理を概略的に図示する。図4に示す信号のすべてが観測できるとは限らないということに留意すべきである。図4には、音声信号xを生成する入力トランスデューサ(図示せず)と、補聴器の帰還経路Fをモデル化することにより信号cを生成するように構成された帰還モデルC(好ましくは適応型帰還相殺フィルタ)とを備える補聴器の信号処理を例示する。補聴器はさらに、補償音声信号e=x+f−cを形成するために音声信号xから帰還モデルCの出力信号cを減じる減算器(図示せず)を有する。信号fは、帰還経路Fに沿って入力トランスデューサに伝播して戻り入力トランスデューサにより変換された帰還信号である。さらに、聴力損失補償を行うために補償音声信号eを処理する信号処理装置は減算器の出力に接続され、処理された補償音声信号zを、補聴器が使用者により適切に装着された場合に使用者の鼓膜に向かって導かれる音声信号に変換するレシーバ(図示せず)は信号処理装置の出力に接続される。
残留誤差r(すなわち、帰還モデルCにより生成されたモデル信号cとレシーバ(図示せず)から入力トランスデューサ(図示せず)へ伝播し戻った信号fとの差分)の影響を補償するために、補聴器は補償音声信号eの利得調整αのための適応型帰還利得補正部AFGCをさらに備える。利得調整αは、帰還モデルCにより行われる帰還経路モデル化の残留誤差rの推定値から決定される。
図4に示す実施形態では、利得調整αは、信号処理装置において適用された利得と帰還モデルCのパラメータ(例えば、帰還モデルCの適応型帰還相殺フィルタのフィルタ係数)とに基づく。
図示された実施形態では、利得調整は、信号処理装置において行われる聴力損失補償とは別にかつその前に行われる。このようにしてAFGC以外の信号処理回路は設計され、従来の方法で使用することができる。例えば、補聴器を対象使用者の聴力損失にフィッティングするために信号処理装置内のマルチバンド圧縮器のニーポイント、圧縮比、および時定数を調整するのに使用されるフィッティングソフトウェアは通常、開発するにはかなり複雑である。図4に図示するAFGCの構成では、このようなフィッティングソフトウェアはAFGCを組み込むために変更される必要はない。
さらに、図4の信号処理装置は所望の音響信号から生成された音声信号の所望箇所のラウドネスと合致する信号yで動作するので、聴力損失補償(例えばラウドネス復元)は目的の信号に基づくことが知覚される。
利得調整は信号経路内の他の位置(例えば信号処理装置の後ろ)で行われてもよいが、この場合、処理の他の部分は帰還モデルCの残留誤差rに対処しなければならない。
マルチバンド補聴器では、利得調整αは補聴器の周波数帯ごとに決定されることが好ましい。
利得調整αの決定についてさらに以下に説明する。
図4では、信号xは入力トランスデューサ(図示せず)により与えられる音声信号であり、信号rもまた入力トランスデューサ(図示せず)により与えられる残留誤差信号であり、そしてfは真の帰還信号である。図示された信号のすべてを観測できるとは限らないことに留意すべきである。補聴器処理装置により観測すなわち決定され得る信号はe、c、y、zである。(理想的には)利得補正後の信号電力が音声信号のものに対応するように、したがって出力zが所要の増幅を反映するように、次式
Figure 0005606731

を満たす利得係数すなわち利得補正係数αを発見することが望ましい。表記し易いように、以下において期待値演算子は省略され、その代りに分散が用いられる(これはすべての信号は零の平均値を有するので妥当である)。
残留誤差rと音声信号xは無相関であるという仮定の下では(帰還相殺器は相関を最小化するように動作するのでこれは合理的な仮定である)、帰還補正信号eの信号電力は次のように与えられる。
Figure 0005606731
次に利得補正係数αを適用することにより次式を得る。
Figure 0005606731

これは理想的には音声信号電力と合致する(下記参照)。
補聴器利得Gを適用し、残留誤差モデルを通して伝播させると次式を得る。
Figure 0005606731
上記式をすべて組み合わせることにより、信号eの信号電力についての以下の推定値を得る。
Figure 0005606731
項を再配列すると音声信号電力についての以下の推定値が得られる(αが1に設定された場合、上に提示されたgeeの推定値との対応に注意されたい)。
Figure 0005606731
これを利得補正
Figure 0005606731

後の電力と一致させると次式を得る。
Figure 0005606731
次に分散で割って項を書き直すと次の2乗利得補正を得る。
Figure 0005606731
上記結果の複数の帯域への拡張は可能である。各帯域k毎に、残留誤差|R|は定義され、所望利得|G|と次のように組み合わせられる。
Figure 0005606731
次に、適応型帰還利得補正(AFGC)実施の具体化について以下にさらに詳細に検討する。
残留誤差|R|を決定する1つの方法について図5に関連し以下にさらに説明する。図5には、ディジタル周波数ワーピング(digital frequency warping)を用いてダイナミックレンジ圧縮を行う圧縮器を備えた補聴器を概略的に図示する。このような補聴器は国際公開第03/015468号にさらに詳細に開示され、特にワープ圧縮器(warped compressor)の基本的な動作原理は国際公開第03/015468号の図10と明細書の対応部分に示される。図5に示す本発明による補聴器は、国際公開第03/015468号の図10の補聴器に対応するが、帰還相殺、AFGC、および雑音低減が補聴器の信号処理回路に追加された。他の処理回路もまた追加してよい。本発明は、周波数帯がワープされないマルチバンド補聴器においても有利に使用することができる。
図5に概略的に図示された補聴器は単一のマイクロホン12を有する。しかしながら補聴器は2つ以上のマイクロホン(可能性としてビームフォーマ(beamformer)と共に)を備えることができる。簡単にするために、これらの部品は示されない。同様に、簡単にするために、可能なA/DおよびD/A変換器、バッファ構成、随意の追加チャンネル等は示されない。
マイクロホン12により受信された入力信号は、信号が零の平均値を有することを保証するDCフィルタ32に通されるが、これは先に検討されたように統計値の計算に便利である。別の実施形態では、マイクロホン12により受信された信号は直接減算器17に通してよい。
既に説明したように、帰還相殺は、音声信号xから推定帰還信号cを減じることにより適用することができる。帰還信号推定値は、補聴器の(遅延)出力信号zで動作する一連の固定フィルタ37と適応フィルタ41を備えるディジタル帰還抑制(digital feedback suppression:DFS)サブシステム15により計算される。原理的には1つの適応フィルタ41だけが必要であるが、固定フィルタ37とバルク遅延39はここでは効率と性能のために組み込まれた。固定フィルタ37は通常、ある時点で(例えば、補聴器が耳において作動されると、あるいはフィッティング状況で)初期設定される全極フィルタまたは一般的な無限インパルス応答(IIR)フィルタである。適応フィルタ41は好ましくは有限インパルス応答(FIR)フィルタであるが、原理的には他の任意の適応フィルタ構造(格子、適応IIR等)を使用することができる。好ましい実施形態では、適応フィルタ41は全零フィルタである。
図示された実施形態では、DFSは広帯域システムである、すなわちDFSはマルチバンド補聴器の全周波数範囲で動作する。しかしながらラウドネス復元を行う補聴器の信号処理装置(例えば圧縮器)と同様に、DFSは各DFS周波数帯において個々の帰還相殺を有する多くの周波数帯に分割されてもよい。信号処理装置周波帯の数とDFS周波数帯の数は同一であってもよいが通常は異なる。好適には、DFSはラウドネス復元を行う信号処理装置より少ない数の周波数帯を有する。DFSサブシステム15の出力信号cは音声信号xから減じられ、周波数領域に変換される。国際公開第03/015468号において(詳細には国際公開第03/015468号の図10と明細書の対応部分において)さらに詳細に説明されるように、図5に示す補聴器は信号の解析を信号経路外で行う側枝構造(side−branch structure)を有し、信号成形は側枝の出力から構築される時間領域フィルタを使用することにより行われる。ワープ側枝システム(warped side−branch system)は高品質低遅延信号処理の利点を有するが、原理的には任意の教科書的なFFTシステム、マルチレートフィルタバンク、または非ワープ側枝システム(non−warped side−branch system)を使用することができる。したがって周波数ワーピングを用いると便利であるが、本発明を実行するためには全く必要ない。
信号の解析は、各ワープ周波数帯毎の信号電力推定値を与えるワープ高速フーリエ変換(FFT)を構築することで始まる。ワーピングは、FIRフィルタ43のタップ遅延線における単位遅延を全通過フィルタにより置換することによりFIRフィルタ43において得られる。このとき、ワープ側枝51では、一連のいわゆる利得エージェントがこれらの電力推定値を解析し、特定の順序で各帯域における利得および対応する電力を調整する。ここで示された順序は、適応型帰還利得補正(AFGC)45、雑音低減47、ラウドネス復元49の順である。他の実施形態は他の組み合わせまたは系列を使用することができる。
第1の利得エージェントAFGC45は、矢印53により示されるようにDFSサブシステム15(帰還モデルの相対誤差の推定値を与える)から入力を得る。また、矢印55により示されるように、先の反復で計算されるようなラウドネス復元ブロック49により出力される周波数領域の利得ベクトル(ワープFIRフィルタ43により印加されるような電流利得を表す)はAFGC45に入力される。次に、AFGC45は、適切な利得調整を計算するためにこれらの入力とそれ自身の帰還基準利得設定(例えば、フィッティング状況中に帰還経路を測定または推定することにより初期設定から得られる予備的知識)とを組み合わせる。利得調整の決定については以下にさらに詳細に説明する。雑音低減を実現するここで示された第2の利得エージェント47は随意である。雑音低減は現代の補聴器ではしばしば用いられる快適な特徴である。併せて最初の2つの利得エージェントは、聴力損失には関係なく信号が任意の聴取者に対して最適に提供されるようなやり方で信号を成形しようとする、すなわち不要な雑音または帰還のない元の信号のエンベロープを復元しようとする。
最後に、残りの利得エージェント49は使用者依存聴力損失を補償するためにラウドネスを調整する。AFGC部45により行われるように帰還のない元の信号のラウドネスを復元することと、ラウドネス復元ブロック49により行われるように聴力障害聴取者の正常なラウドネス知覚を復元することとの大きな違いに留意すべきである。後者は通常、かなりの増幅(帰還抑制システムの必要性の原因となる)を必要とし、しばしばマルチバンド圧縮と組み合わせられ、そして(より大きな増幅を大きな信号より、ソフトな信号に与える)戦略を制限する。
前述のように、原理的には、利得チェーン内のエージェント45、47、49は再順序付けされてよい(例えばチェーンの端にAFGCエージェント45を置くことにより)。しかしながら、聴力損失依存調整(非線形でかつ音圧レベル依存性があるかもしれない)を行う前に最初に信号のエンベロープを補正する図示の順序を用いることが現在は好ましい。
利得チェーンの端では、周波数領域の出力利得ベクトル(各周波数帯の個々の利得エージェントの寄与の組み合わせを含む)により構成される出力55は、逆高速フーリエ変換(IFFT)57を用いて時間領域へ変換されワープFIRフィルタの係数ベクトルとして用いられる。矢印55により図示されるように、利得ベクトルは次の利得調整決定に用いられるAFGC部45に伝達され戻される。
最後に、ワープFIRフィルタ43を通過した信号は、レシーバ16および/またはマイクロホン12の(恐らく未知の)非線形性が帰還経路にあまり大きな影響を与えないことを保証するために出力リミッタ59において出力制限される。さもなければ、DFSシステム15は極端な信号レベルを適切にモデル化しそこなう場合がある。実際は、個別の出力制限は、既に例えばダイナミックレンジ圧縮器によりあるいはディジタル信号処理装置(DSP)の固定小数点精度における制限により提供されているので随意である。
実際の利得補正を計算するために、残留誤差のモデルが必要である。
残留誤差は次式により近似できると考えられる。
Figure 0005606731

式中、βは帰還相殺器の微小残差の適応広帯域推定値であり、|A|は帰還経路の予備的知識に基づく帯域依存定数を与える。
この式を用いると帯域kの2乗利得調整は次のようになる。
Figure 0005606731

これはdB尺度では次のように変換される。
Figure 0005606731

式中、ΔgはdBでの利得補正の目標、すなわち利得調整の目標を与える。側枝における利得は通常、対数領域で計算されるのでここでは線形形式αの代わりに符号Δgが用いられる。以下では、(βdB+σkdB+AkdB)は未補正残差帰還利得(uncorrected residual feedback gain)r(dB)と呼ばれる。実際上、rは、利得チェーンの出力(すなわちラウドネス復元ブロック49の出力)において利用可能な実際の補聴器利得(すべての利得エージェントの寄与、直前の利得補正、帰還基準利得を含む)から再帰的に更新されることになる。
様々な利得は閉ループで更新されるので発振が発生することがある。障害の可能性のある利得変動を低減するために、利得調整はアタックフィルタとリリースフィルタを用いて平滑化される。帰還経路における突然の変化に迅速に応答するために高速アタックを使用することができる。潜在的な発振は、低利得方向に緩やかにリリースすることにより減衰される。
図示の実施形態では、アタックフィルタとリリースフィルタは2段階で適用される。第1段階では、すべての帯域に使用されるDFS特性βは設定可能なアタック速度とリリース速度で平滑化される。各帯域において適用される第2の段階では、瞬時アタックは緩やかな固定ステップリリースと組み合わせられる。
各帯域毎に指数と対数を計算することはDSP上ではかなり高価であるので、その代りに近似を用いることができる。
以下では、各周波数帯kの定数Aの推定値を決定する1つの方法が開示される。|A|は帰還基準利得を表す。|A|は、帰還相殺器の初期設定により(例えば、補聴器のフィッティング中に帰還経路のインパルス応答を測定することにより)得られる帰還経路の知識から推定することができる。帰還モデルは帰還基準利得|A|を発見するための良好な出発点である。しかしながらモデルは不正確かもしれないので他の可能な帰還経路も考えることは有用である。
例えば、校正手順が2つの最大安定利得MSG曲線(すなわちMSGon、MSGoff)を提供してもよい。MSGoff曲線は初期設定手順により測定されるような帰還利得曲線の逆数である。MSGon曲線(誤差曲線としても知られる)は、モデル化帰還利得曲線と測定帰還利得曲線との差分の逆数である。
初期設定から、次の3つの帰還経路(1)内部経路、(2)外部経路、(3)内部経路と外部経路との差分を導出することができる。内部経路は単に、校正手順により得られるインパルス応答にフィッティングされたモデルである。定常波を回避するために、帰還経路のインパルス応答の測定はMLS信号を用いることにより行われることが好ましい。他の信号(例えば帯域制限白色雑音)もまた同様に使用することができる。外部経路は、その振幅応答が逆MSGoff曲線と同一である初期設定において得られる生のインパルス応答により定義される。第3の経路はMSGon曲線から得ることができる。通常、MSGon曲線は、加算された安定利得のためにMSGoff曲線のかなり上にあり、したがって基準として用いるためにはこのオフセットを考慮するとよい。
この時点で、アンチエイリアシングとDCフィルタの影響が他の何らかの校正手順を通して既に考慮されていなかったならば、これもまた考慮してよい。
次に、これらの曲線はワープ周波数領域に変換されなければならないが、これは2つの異なる方法で行うことができる。いずれにしても、各ワープ帯域(warp band)毎に振幅応答により窓を掛けるために好適な窓関数が最初に用いられる。窓が用いられる場合、窓関数により行われた減衰による帯域境界における信号特徴の損失を考慮するために周波数帯はオーバーラップしていることが好ましい。このとき、最大利得(最悪ケース周波数)を取るか、あるいはパーセバルの定理(Parseval's theorem)を用いてすべてのビンの寄与をマージする(すなわち、線形領域において規格化2乗値を合計する)のいずれかである。
念のため、利用可能な変換はすべて計算して各帯域における最大値を用いるとよい。これは、狭いピークと広いピークの両方に対する上限推定値の使用を保証し、また基準および固定フィルタのまずいモデル化に起因する潜在的自己誘導帰還も考慮に入れる。
以下では、β(帰還相殺器の残留誤差の適応広帯域部分推定値(adaptive broad−band part estimate)を決定する1つの方法が開示される。
校正手順の実行中、帰還経路の予備的知識は適応FIRフィルタの基準ベクトル形式で格納される。低利得(例えば、MSGoff以下数dB)では安定性は適応FIRフィルタ係数ベクトルwをその基準係数ベクトルwref(初期設定から得られるモデルにおける零を表す)から1ノルム距離内にクランプすることにより保証可能であるということを示すことができる。FIRフィルタ係数に適用された場合、係数ベクトルの1ノルムは任意の入力信号に対しフィルタにより達成可能な増幅の上限を表す。次に、帰還相殺器の解空間を明示的に制限する代わりに、不安定性の前に利得を調整してマージンを持つことによりクランプ推定値(すなわち基準係数に対する1ノルム距離)を暗黙的に用いてもよい。
仮説では、基準ベクトルは真の帰還経路によって生じると想定され、基準係数と適応フィルタ係数との差分は別のFIRフィルタにより処理されてよい。このとき、この仮想フィルタの出力電力は残留誤差の上限を与える。当然ながら、実際は、適応フィルタ係数は正当な理由で基準から離れて適応すること、そしてこのことは残留誤差の1対1増加をもたらさないことと、が想定されてよい。結局、基準からの偏差の一部のみが残留誤差に寄与すると想定されてよい。
帰還問題はいくつかの周波数において発生する可能性が他の周波数においてより高いことが知られているので、係数ベクトルを前フィルタ処理することにより推定値においてこのことを強調することは可能である。この前フィルタ処理は、直流係数ドリフトまたは音声信号に対する感度のような別の問題に起因する推定値の潜在的な劣化を回避するのにも役立つ。
最後に、モデルの限界と音響環境により、基準との距離が零になる場合ですら残留誤差には下限が存在すると考えられる。
次に、これらの考えを組み合わせて、微小な残留誤差の以下の推定値を公式化する。
Figure 0005606731

式中、βminは最小残留誤差を表し、hは特定の周波数を強調するフィルタを表し、cは調整用パラメータであり、βnormは同じノルム
Figure 0005606731

を用いて計算される正規化定数(最終実施に際してはcに含まれてもよい)である。
パラメータβminは帰還相殺器の静的性能に密接に関係するので、校正手順により与えられるヘッドルーム推定値に関連付けられてもよい。パラメータcは帰還相殺器の動的性能に密接に関係するので試行錯誤により調整されなければならない。hの好適な選択は、DCを除去し高周波を強調するとともに掛算なしで計算可能な一次差分フィルタと思われる。
簡単にするために、1ノルムを用いてよく、この場合βは次式
Figure 0005606731


および
Figure 0005606731

で計算されるが、p−ノルム、ユークリッドノルム、上限ノルム、最大値ノルム等の他のノルム関数を使用してもよい。
別の実施形態では、適応型帰還相殺フィルタの出力信号は監視され、残留誤差は出力信号の監視に基づき推定される。
適応型帰還相殺フィルタの出力信号の信号電力レベルは適応型帰還相殺フィルタのフィルタ係数の振る舞い/適応に関係するので、別の実施形態では残留誤差の推定値は適応型帰還相殺フィルタの出力信号の信号(例えば信号電力レベル)に基づいてよい。あるいは、残留誤差は、適応型帰還相殺フィルタの出力信号の信号電力レベルだけでなく適応型帰還相殺フィルタのフィルタ係数にも基づいてよい。
上述のように、本発明は、信号処理装置、信号処理装置に電気的に接続された入力トランスデューサ、信号処理装置に電気的に接続されたレシーバ、およびレシーバから入力トランスデューサへの信号経路からの帰還を抑制するように構成された適応型帰還相殺フィルタを備える補聴器に関する。本補聴器はさらに、信号処理装置の利得パラメータを適応型帰還相殺フィルタの係数に基づいて調整するように構成された帰還利得補正部を備える。
上述のように、レシーバにより発せられた音声の一部は、入力トランスデューサに漏れて戻ることがある。この漏れは帰還信号を構成する。したがって補聴器内の帰還信号の影響を抑制または低減する必要がある。信号処理装置の利得パラメータ(例えば利得)を調整することは、帰還信号の効率的な相殺または抑制を実現すると同時に、使用者に対し最適のラウドネスを提供すると考えられる。信号処理装置の利得パラメータは、帰還相殺フィルタのフィルタ係数により影響される帰還相殺信号の利得ではなく信号処理装置のフィードフォワード利得であることが理解される。
信号処理装置の利得パラメータの調整量を信号処理装置への入力信号の利得調整により計算または決定することは有利であると考えられる。これによって、聴覚障害補正信号を与えるために信号処理装置において恐らく非線形信号処理される前に入力信号の利得はスケーリングされるので、利得パラメータを調整する簡単な方法が実現される。入力信号はこのようにして信号処理装置により聴覚障害専用処理される前に最適なラウドネスを有し、したがって聴覚障害補正信号が使用者に提供されるときには最適なラウドネスを有することになる。
一実施形態では、利得パラメータの調整はさらに、一組の基準係数(例えば、帰還経路をモデル化する適応ディジタルフィルタのフィルタ係数)に基づいてよい。基準係数は、フィッティング状況中に測定により、および/または以前の調整に基づく推定により設定することができるかもしれない。
一実施形態では、利得パラメータの調整はさらに、帰還相殺フィルタのフィルタ係数の一組の基準フィルタ係数からの偏差に基づいてもよい。この偏差は、フィルタ係数と基準値との数値差分としてあるいは実際のフィルタ係数と基準の一組のフィルタ係数との数値差分の一部として設定することができるかもしれない。
適応型帰還相殺フィルタの係数は以前のサンプルまたはサンプルのブロックから決定されてもよい。適応型帰還相殺フィルタの新係数すなわち適応係数は、現在のサンプルまたはサンプルのブロックに対して決定されてもよく、現在のサンプルまたはサンプルのブロックの信号特性に基づいてもよい。
一実施形態では、補聴器はさらに、利得補正部において処理パラメータを平滑化するように構成されたアタックフィルタとリリースフィルタを備えることができる。これはより速い処理を可能にすると考えられる。
また既に述べたように、本発明の第2の態様は補聴器の信号処理装置の利得パラメータを調整する方法に関する。本方法は、補聴器の帰還相殺フィルタのフィルタ係数を監視する工程と、監視フィルタ係数に基づいて信号処理装置の利得パラメータを調整する工程を含むことができる。
有利には、監視フィルタ係数は、以前のサンプルまたはサンプルのブロック(例えば、直前のサンプルまたはサンプルのブロック)から決定されるとよい。
一実施形態では、信号処理装置の利得パラメータの調整は、信号処理装置への入力信号の利得調整を含むことができる。
有利には、信号処理装置の利得パラメータの調整はさらに、一組の基準フィルタ係数に基づいてもよい。
また、利得パラメータの調整はさらに、帰還相殺フィルタのフィルタ係数の一組の基準フィルタ係数からの偏差に基づいてもよい。
一実施形態では、信号処理装置の利得パラメータの調整は、複数の周波数帯において帯域的手法で決定されても、あるいは広帯域において決定されてもよく、そして複数の周波数帯において帯域的手法で行われる。
あるいは、信号処理装置の利得パラメータの調整は、複数の周波数帯において帯域的手法で決定されても、あるいは広帯域において決定されてもよく、そして広帯域において行われる。
一実施形態では広帯域は複数の周波数帯を備える周波数帯であり、好ましい実施形態では複数の周波数帯はオーバーラップする。好ましくは、オーバーラップは中心周波数の後に帯域が連続的に順序付けされるとともに1つの帯域が帯域境界において次の帯域とオーバーラップするように構成される。
帰還相殺は入力信号から推定帰還信号を減じることにより行うことができるのでさらに有利である。これは帰還を抑制または低減すると考えられる。
信号処理装置は雑音低減および/またはラウドネス復元を行うように構成することができるのでさらに有利である。これは、補聴器の使用者または装着者への快適な音声信号の提供を可能にすると考えられる。
図6には、外部音声信号を受信するように構成された入力トランスデューサ36を備える補聴器を概略的に図示する。入力トランスデューサ36はマイクロホンとテレコイルを備えることができる。あるいは入力トランスデューサ36がマイクロホンを備えていてもよい。補聴器はさらに帰還相殺部38を備える。補聴器はさらに信号処理装置40を備える。補聴器はさらにレシーバ42を備える。レシーバ42は信号処理装置40により処理される音声を発する(すなわち送信する)ように構成される。レシーバ42から送信された(すなわち発せられた)音声の一部は、矢印44により図示されるように入力トランスデューサ36に漏れて戻ることがある。これにより、外部音声信号は上述のようにレシーバ42から漏れて戻る音声と混合することがある。
帰還相殺部38の図示された構成は、当該技術領域で一般的に知られたいわゆる帰還経路構成である、ここでは、帰還相殺部は、入力トランスデューサ36により与えられた入力信号から減算される帰還信号を加算器54において生成する。しかしながら、別の実施形態では帰還相殺部38はフィードフォワード信号経路内に配置され得ることが理解される。
帰還相殺部38は、帰還相殺に使用される1つまたは複数の以前のサンプルを保持する記憶装置を備えることができる。さらに、帰還相殺部38から信号処理装置40への矢印58により図示されるように、帰還相殺フィルタの実際のフィルタ係数に関する情報は信号処理装置40の利得パラメータ(例えば利得自体)を調整するために使用することができる。したがって、帰還相殺フィルタ38の実際のフィルタ係数に関する情報は、補聴器のフィードフォワード利得(例えば増幅)を調整するために使用することができると理解される。具体的には、信号処理装置40の利得は帰還相殺フィルタ38の実際のフィルタ係数が一組の基準フィルタ係数からどれだけずれるかに基づいて調整することができるが、基準の一組のフィルタ係数は例えば補聴器のフィッティング中に(例えば販売者のオフィスにおいて)帰還経路の測定値から生成されているとよい。
図7には、補聴器を提供する工程46を含む方法を概略的に図示する。本補聴器は、信号処理装置、信号処理装置に電気的に接続された入力トランスデューサ、信号処理装置に電気的に接続されたレシーバ、レシーバから入力トランスデューサへの信号経路からの帰還を抑制するように構成された適応型帰還相殺フィルタ、および信号処理装置への入力信号の利得調整を行うように構成された帰還利得補正部を備える。本方法は、サンプル(例えば、入力トランスデューサを介し受信された音声信号の信号サンプルのブロックを含む)を記録する工程48と、サンプルまたはサンプルのブロックと適応型帰還相殺フィルタの以前の係数とに基づく利得調整を決定する工程50と、聴覚障害補償の前に利得調整を適用する工程52とを含む。
図8には、補聴器の利得パラメータを調整する方法の好ましい実施形態を概略的に図示する。本方法は、補聴器の帰還相殺フィルタのフィルタ係数を監視する工程63と、監視フィルタ係数と一組の基準フィルタ係数とを比較する工程65と、この比較に基づいて補聴器の利得パラメータを調整する工程67と、を含む。フィルタ係数と一組の基準フィルタ係数とを比較する工程は、差分(例えば、実際のフィルタ係数と基準の一組のフィルタ係数との数値差分)を決定することを含むことができる。さらに、本方法の有利な実施形態は以下に定義されるように従属請求項に記載される。
上述の特徴は、任意の有利な方法で組み合わせることができる。

Claims (18)

  1. 音声信号を生成する入力トランスデューサと、
    補聴器の帰還経路をモデル化するように構成された帰還モデルと、
    補償音声信号を形成するために前記帰還モデルの出力信号を前記音声信号から減じる減算器と、
    前記減算器の出力に接続された信号処理装置であって、聴力損失補償を行うために前記補償音声信号を処理する信号処理装置と、
    前記信号処理装置の出力に接続されたレシーバであって、前記処理された補償音声信号を音声信号に変換するレシーバと、
    を備える補聴器であって、
    前記帰還モデルの前記出力信号の残留誤差の推定値に基づき前記補償音声信号の利得を調整する適応型帰還利得補正部をさらに備える、補聴器。
  2. 前記帰還モデルは適応型帰還相殺フィルタを備える、請求項1に記載の補聴器。
  3. 前記残留誤差の前記推定値は前記適応型帰還相殺フィルタの出力信号に基づく、請求項2に記載の補聴器。
  4. 前記残留誤差の前記推定値は前記適応型帰還相殺フィルタのフィルタ係数に基づく、請求項2に記載の補聴器。
  5. 前記利得調整は聴力損失補償とは別に行われる、請求項1〜4のいずれか一項に記載の補聴器。
  6. 前記信号処理装置は一組の周波数帯においてマルチバンド聴力損失補償を行うように構成され、前記残留誤差の前記推定値は前記各周波数帯kにおける残留誤差の推定値Aに基づく、請求項1〜5のいずれか一項に記載の補聴器。
  7. 前記残留誤差の前記推定値は前記推定値に対する適応広帯域寄与βの推定値に基づく、請求項6に記載の補聴器。
  8. 前記利得調整αは次式
    Figure 0005606731

    で計算され、式中、
    前記各周波数帯kにおける残留誤差Rは次式
    Figure 0005606731

    で計算され、式中、
    βは前記推定値に対する前記適応広帯域寄与であり、
    は前記各周波数帯kにおける前記残留誤差に対する寄与である、請求項7に記載の補聴器。
  9. は前記適応型帰還相殺フィルタの初期設定中に推定される、請求項8に記載の補聴器。
  10. βの決定は、前記適応型帰還相殺フィルタの前記フィルタ係数に基づく、請求項2に従属する請求項8または9に記載の補聴器。
  11. βは次式
    Figure 0005606731

    から計算され、式中、
    βminはβの最小値を表し、
    hは特定の周波数を強調するフィルタを表し、
    cは調整用パラメータであり、
    βnormは正規化定数
    Figure 0005606731


    であり、
    wは前記適応型帰還相殺フィルタの前記係数ベクトルであり、
    refは、前記フィルタの初期設定中に得られる前記適応型帰還相殺フィルタの基準係数ベクトルである、請求項10に記載の補聴器。
  12. 前記利得補正部において処理パラメータを平滑化するように構成されたアタックフィルタとリリースフィルタをさらに備える、請求項1〜11のいずれか一項に記載の補聴器。
  13. 音声信号を生成する入力トランスデューサと、
    補聴器の帰還経路をモデル化するように構成された帰還モデルと、
    補償音声信号を形成するために前記帰還モデルの出力信号を前記音声信号から減じる減算器と、
    前記減算器の出力に接続された信号処理装置であって、聴力損失補償を行うために前記補償音声信号を処理する信号処理装置と、
    前記信号処理装置の出力に接続されたレシーバであって、前記処理された補償音声信号を音声信号に変換するレシーバと、
    を備える補聴器に関する方法であって、
    前記帰還モデルにより行われる前記帰還経路モデル化の残留誤差を推定する工程と、
    前記推定値に基づき前記補償音声信号の利得を調整する工程と、
    を含む方法。
  14. 前記帰還モデルは適応型帰還相殺フィルタを備えており、
    前記適応型帰還相殺フィルタの出力信号を監視する工程と、
    前記監視に基づき前記残留誤差を推定する工程と、
    をさらに含む、請求項13に記載の方法。
  15. 前記帰還モデルは適応型帰還相殺フィルタを備えており、
    前記適応型帰還相殺フィルタのフィルタ係数を監視する工程と、
    前記監視に基づき前記残留誤差を推定する工程と、
    をさらに含む、請求項13に記載の方法。
  16. 聴力損失補償を行う前に前記利得調整工程を行うことをさらに含む、請求項13〜15のいずれか一項に記載の方法。
  17. 前記信号処理装置において一組の周波数帯におけるマルチバンド聴力損失補償を行う工程と、
    前記各周波数帯kにおける残留誤差の推定値Aに基づき前記残留誤差を推定する工程と、
    をさらに含む、請求項13〜16のいずれか一項に記載の方法。
  18. 前記残留誤差の前記推定値は前記推定値に対する適応広帯域寄与βの推定値に基づく、請求項17に記載の方法。
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