JP5605638B2 - 処理装置 - Google Patents

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Description

本発明は完全な耐腐食性を備えた表面保護膜が設けられた接ガス部材を有する処理装置に関し、特に、メカニカルポンプのような処理装置に関する。
メカニカルポンプ等のガス排気装置やプロセス処理にガスを用いた処理装置においては、排出すべき気体または処理に用いる気体と接触する接ガス部の部材は、その表面を保護膜で覆う必要がある。
これは、例えば、減圧中で有毒ガスまたは腐食性ガス等を使用する半導体製造装置、大型薄型ディスプレイ製造装置、太陽電池製造装置における処理工程(プラズマエッチング、減圧気相成長)の装置やそのガス排気部に用いられるガス排気ポンプ等において、これらのガスが装置やポンプ内などで反応して接ガス部を腐食させる恐れがあるためである。
また、これらのガスが接ガス部表面を構成する材料の触媒作用によって分解解離し、反応生成物が蓄積して装置やガス排気ポンプなどの正常な動作を阻害させるといった問題があるためである。
より具体的には、例えば従来のメカニカルポンプの接ガス部はニッケル系の処理がなされている場合があるが、ニッケルは半導体製造装置、大型薄型ディスプレイ製造装置、太陽電池製造装置の処理工程(プラズマエッチング、減圧気相成長)においてよく使用されるガスである、SiH、AsH、PH、B、等の水素化合物分子に対する触媒効果がきわめて強い。
そのため、半導体プロセスで頻繁に使用されるSiH、AsH、PH、B、等の水素化合物分子がポンプ内の接ガス部のニッケルの触媒効果で分解し、Si、As、P、B等が発生し、化学反応によって発生した生成物としてメカニカルポンプ内に堆積するという問題があった。
そのため、接ガス部の表面を、耐腐食性に優れ、触媒効果のないイットリア(酸化イットリウム、Y)膜で覆うことによって、ガスの分解解離を抑制し、ポンプ内への生成物の堆積を抑えた構造が提案されている(特許文献1)。
さらに、イットリア(Y)膜の表面欠陥を減少させるために、イットリアにセリウムを含有した膜を用いることも提案されている(特許文献2)。
特開2008−88912号公報 特願2009−269201号
特許文献1、2記載の技術は、ガスの分解解離を抑制し、ポンプ内への生成物の堆積を抑える効果が得られるという点で、優れた技術である。
しかしながら、本発明者等は、基材に鉄系の金属を用いた場合、その表面保護膜のイットリア膜(セリウム酸化物CeO2入りイットリア膜を含む。以下同じ)に基材からFeが侵入して、イットリア膜の耐腐食性を低下させる場合があるという知見を新たに得た。
そこで本発明は、各種ガス分子に対して触媒効果を持たず、腐食性ガスの侵入を抑制することができかつ鉄または鉄合金基材中のFe成分の表面保護膜への侵入を防止できる、コストの安い処理装置を提供することを目的とする。
本発明者等は、基材からのFeの侵入を防止できる構造が必要と考え、鉄合金系基材の表面に、基材からのFeの拡散を防ぐバリア膜を設けることを考えた。また、表面保護膜としてイットリア膜、特に、酸化クロム(Cr)をFe合金表面に処理した表面にイットリア膜を試作した。酸化クロム(Cr)膜を形成するには、クロムを含有する鉄合金の基材を用い、その表面を熱酸化するのが簡便であるが、クロムを含有する鉄合金、例えば、Crをそれぞれ16.0〜18.0%含有するSUS316L、SUS440Cは、基材コストが高く、SUS316Lに関しては材料の線膨張係数が大きい(15.9×10-6/℃、0〜100℃)ことからポンプ等には不向きであるという問題があることが判明した。
本発明によれば、内部を各種のガスが通過または滞留する処理装置において、前記各種のガスと接する部分は、鉄を含有する基材と、前記基材表面に設けられFeの拡散を防止することができるバリア膜と、その上に形成された少なくともイットリア(Y)を主成分とする表面保護膜とを有することを特徴とする処理装置が得られる。バリア膜としてはNiが好ましい。またNiバリア膜はめっきで形成するのが好ましい。
Niメッキ等のバリア膜を設けた基材の接ガス部の表面にイットリア(Y)膜、またはCeOを酸化物換算の原子比で1%〜10%、望ましくは2%〜4%、さらに望ましくは3%程度、含有したイットリア(Y)膜が表面保護膜として設けられる。
本発明によれば、従来よりも腐食性ガスの侵入を抑制することができ、かつ基材中のFe成分の表面保護膜への侵入を防止でき、各種のガスに対して十分な耐腐食性を備えたガス処理装置およびメカニカルポンプを提供することができる。
本発明の実施形態に係るスクリューポンプ(メカニカルポンプ)の一例を示した断面図である。 本発明の実施例に係るメカニカルポンプ部材(試料)の構造を示す断面図である。 耐腐食性試験前の実施例に係る試料の表面から内部に向かう組成分析結果を示す図である。 本発明に係る試料すなわち構造材であるSCM440の表面に、バリア膜であるNi-Pメッキを施した表面写真と其の上にCeO2含有Y2O3膜を塗布乾燥した表面電子顕微鏡写真並びに表面凸凹のデータである。 耐腐食性試験に使用する反応管を示す概略図である。 耐腐食性試験前後の試料の表面状態を示す表面の電子顕微鏡写真と表面凸凹のデータである。 (A)は、塩素ガス雰囲気下での耐腐食性試験後の試料の表面から内部に向かう組成分析結果を示す図である。(B)は、図7(A)の表面部を拡大して示す表面から内部に向かっての組成分析結果を示す図である。 (b1)〜(b4)はスクリューポンプの各種スクリューロータの写真である。 不等リード不等傾斜角スクリューブースターポンプの排気速度曲線である。 等リードスクリューバックポンプの排気速度曲線である。
以下、図面に基づき、本発明の実施形態を詳細に説明する。
まず、図1を参照して、本実施形態に係る処理装置としてのスクリューブースターポンプ(メカニカルポンプ)の構造、および処理装置の接ガス部の構造について説明する。図1はスクリューブースターポンプ本体Aの構成を断面図によって示したものである。スクリューブースターポンプ本体Aには、複数の螺旋状の陸部と溝部を有し、互いにかみ合いながら実質的に平行な二軸の回りを回転する一対のスクリューブースターロータa1(a2)が具備されている。
図1のスクリューロータa1(a2)が図8のb4の等リードロータであるが、図8のb3の不等リード、図8のb1の不等リードと等リード(1乃至12リード)、図8のb2の等リードと不等リード或いは等リードと不等リードと等リード(1乃至12リード)の各歯筋の方程式が接線或いは接線に近い形状で繋いだスクリューも含まれる。
また、スクリューロータa1(a2)は、ケーシングa3内に収納され、スクリューロータa1(a2)を支持するシャフトa4は吸入側には軸受が無く、吐出側のみの軸受けによって回転可能に支持されている。
シャフトa4の一端部には、タイミングギアa6が取り付けられ、このタイミングギアa6を介して一対のスクリューロータa1(a2)が同期して回転されるように構成されている。なお、シャフトa4の他端部にはモータMが取り付けられる。
一方、前記両スクリューロータa1(a2)を収納するケーシングa3の上端部には吸入ポートa7が形成されており、またケーシングa3の下端部側には吐出ポートa8が形成されており、モータMの回転により、前記スクリューロータa1(a2)が同期して回転することにより、気体を吸入ポートa7から吸入し、吐出ポートa8より排気するガス排気ポンプの作用がなされるように構成されている。
さらに、スクリューロータの回転軸方向のほぼ中央部におけるケーシングa3の一部には、不活性ガス注入口a10が穿設されており、この不活性ガス注入口a10より注入されるガスは、一対のスクリューロータa1(a2)に侵入し、両者の間の隙間のガスを希釈し、分子量の小さなガスの排気性能を向上させると共に生成物の発生、腐食を抑える。
図9は不等リード不等傾斜角スクリューブースターポンプの排気速度のグラフである。
排気速度は水素と窒素の差が殆んど無く、3×10−4Torr〜3Torr 程度まで安定した排気速度を維持している。
図10は不等リード不等傾斜角スクリューブースターポンプの吐出側に接続されて排気する等リードスクリューバックポンプで1〜760Torr程度を安定して排気することができる。
上記したように、スクリューブースターポンプの吐出側にスクリューバックポンプを設けた構成を採用し、スクリューブースターポンプとして、吸入側圧力と吐出側圧力の圧縮比が30000以上のものを使用した場合、粘性流域から分子流域まで分子の大きさに関係無く水素を含め全てのガスに対して略々一定の排気速度で排気を行えると共に、
スクリューブースターポンプの圧縮比が大きいため、スクリューブースターポンプの吐出側圧力は30Torr程度に排気することでスクリューブースターポンプの性能は維持できる。このためスクリューバックポンプの吸入側圧力は、30Torr程度の粘性流域で排気することができるので500L/min程度の小さな排気速度のスクリューバックポンプで排気する事ができる。これによって一般に使用されているバックポンプの50%程度の消費電力削減ができる。
これらの性能を維持するためポンプ部材に耐腐食性処理及び生成物の発生を抑える表面保護膜を着け、きわめて長時間に亘る安定排気を実現した。
ここで、スクリューブースターポンプ本体Aのスクリューロータa1(a2)、ケーシングa3、吸入ポートa7、吐出ポートa8、内部等は排気ガスに接触する部材(接ガス部)において、鉄を含む基材の表面に、後述するように、バリア膜を設けると共に、バリア膜上に表面保護膜をコーティングしたものを用いた。
ここで、鉄(Fe)を含む基材としては、例えば、SUS316Lより線膨張係数が小さい材料、例えば、SCM440、S45C、Inconel(登録商標)、SPRON、INCOLOY909等がポンプ基材材料として好ましい。換言すれば、本発明に使用される基材材料は、必ずしもCrを含まない材料であっても良い。また、バリア膜としては、例えば、Ni層が好ましく、特に、無電解メッキによって形成されたNi層が好ましい。
表面保護膜の一例は、イットリア(Y)膜である。この表面保護膜は、例えば構成部材の表面にイットリア(Y)をゾルゲル、もしくはMOD(Metal Organic Decomposition 金属の有機化合物を有機溶剤に溶解した溶液)コーティング後、窒素雰囲気下で加熱しながら減圧乾燥(1Torr〜30Torr)した後、例えば酸素が100%の雰囲気下で250℃乃至1000℃の熱処理をしてイットリア(Y)を形成することによって得られる。(ここに記載した熱処理方法は一例であり、熱処理の仕方はこれに限定されるものではない。)このような保護膜は耐食性に優れ、触媒効果がないため、ポンプの接ガス部の部材の表面とすることで排気ガスの分解解離を抑制し、ポンプ内への生成物の堆積を抑える。即ち、前記のイットリア(Y)処理をメカニカルポンプ接ガス部の部材にすることによりポンプの信頼性を向上させ、ポンプの正常な動作を長期間保証することができる。
なお、バリア膜及びイットリア(Y)膜をポンプの接ガス部の部材に表面処理をしたメカニカルポンプ内部における、生成物の堆積をさらに抑制させるためには、メカニカルポンプ本体の温度を80℃〜150℃程度の温度に維持することが好ましい。
一方、メカニカルポンプの性能を維持するためには、250℃以下の温度に維持するのが好ましい。したがって、メカニカルポンプ本体の温度を80℃乃至250℃の範囲内に維持することが好ましく、さらに好ましくは、メカニカルポンプ本体の温度を略々150℃に維持するのが良い。温度が180℃を超えると、Y2O3膜上でB2H6等の分解解離が始まるからである。
接ガス部の温度を80〜180℃の範囲内に維持するために、スクリューポンプは、温度制御手段を有するのが望ましい。
例えば、この温度制御手段としては、図示はしないが、電気ヒータと、冷却構造とを有するものが挙げられる。冷却構造は、例えばケーシングa3に空洞部を形成し、そこに冷却用の水やオイル等の冷媒を循環させるものである。電気ヒータと冷却構造は、スクリューブースターポンプ本体Aの所定箇所に設けられた温度センサによる監視温度に基づいて、接ガス部の温度をフィードバック制御するようなものが挙げられる。
なお、電気ヒータに代えて、スクリューブースターポンプの動作によって発生する気体圧縮熱や動作部材の摩擦熱などを熱源として利用するものであってもよい。
表面保護膜としてイットリア(Y)を用いる場合、セリウムを含有させるのが望ましい。より具体的には、酸化セリウム(CeO)を含有させる。
この場合、酸化セリウムの含有量は、酸化物換算の原子比で1%乃至10%が望ましく、より望ましくは1%乃至5%、さらに望ましくは2%乃至4%である。
上記範囲で、酸化セリウムをイットリア(Y)に含有させることにより、イットリア膜中の微細なポアなどの欠陥を減少させることができ、従来のイットリア(Y)膜と比較して、腐食性ガスの侵入を徹底的に抑制することができる。
なお、表面保護膜のコーティング厚さは0.06μm乃至10μmとするのが望ましい。これはコーティング厚さが0.06μm未満の場合、貫通ポアにより下地が露出されるポイントが存在する可能性があり、10μm以上の場合は、膜ストレスにより膜剥離が発生する可能性があるからである。
次に、基材として鉄または鉄合金が用いられるが、ここでは、基材としてSCM440を用いた場合について説明する。SCM440は、鉄を主成分とし、Si、C、Mn、Moを0.15乃至0.9原子%含有し、Crを0.9〜1.2原子%、他の成分の含有量は0.05原子%以下の材料である。尚、本発明に係る基材材料としては、Crを含まない材料、例えば、INCOLOY909も使用できる。
SCM440によって形成された基材表面に、無電解めっきで2μm程度〜15μm程度の厚さのNi-P層がバリア膜として形成される。この無電解めっき工程は水を含む溶液を用いた工程であるので、バリア膜形成後、表面保護膜としてイットリア膜を形成する前に、例えば、窒素ガス雰囲気中で、1Torr〜30Torr程度の減圧下で、400℃程度に加熱し脱ガスを行うのが好ましい。
このように、Niのバリア膜を設けることにより、後述するように、基材から表面保護膜へのFeの侵入を防止でき、Feの侵入による耐腐食性の低下を抑制できるのである。
また、基材上にFe拡散を防止するバリア膜を設けることにより、基材として、SUS316等のように、線膨張係数の大きな材料よりも、線膨張係数の小さい材料が使用できる。例えば、Feを含有しクロムを少量含有する材料(S45C)、Feを含有し、クロムを含有しない材料(INCOLOY909)、或いは、Feを他の成分に比較して少量含有する材料(Inconel718,InconelX−750,SPRON510)等も基材材料として使用することが可能になる。
因みに、Inconel(登録商標)718は、重量比でFe18.5%、Cr18.0%、Ni54%を含む材料であり線膨張係数は(13.1×10-6/℃、0〜93℃)、Inconel(登録商標)X−750は,重量比でFe7.0%、Cr15.5%、Ni73%を含む材料であり(12.6×10-6/℃、0〜93℃)の線膨張係数を有している。また、SPRON510は、重量比でFe1.6%、Cr20.0%、Ni32.4%,Mo10%を含む材料であり(12〜13×10-6/℃、20〜50℃)の線膨張係数を有している。更に、INCOLOY909は、重量比でFe42%、Ni38%、Co13%、Nb4.7%を含む材料であり、8.0×10-6/℃(0〜100℃)ともっとも小さな線膨張係数を有する材料であり、高速回転する用途には最も適する材料である。本発明のCeO2含有Y2O3膜・バリア膜を表面に設けることにより、全てのガスに対して完全な耐腐食性を有し、ガスを分解する触媒効果を全く持たないことからこうした新しい材料が存分に活用できるようになるのである。
このように、基材と表面保護膜との間に、バリア膜を設けることにより、基材として、必ずしもCrを含有せず、且つ、SUS440C及びSUS316Lに比較して線膨張係数の小さい材料を使用して、メカニカルポンプを構成することができる。因みに、SUS316Lの線膨張係数は(15.9×10-6/℃、0〜100℃)であるのに反し、SCM440の線膨張係数は(11.2×10-6/℃、20〜100℃)である。更に、S45C、INCOLOY909、Inconel718,InconelX−750,SPRON510の線膨張係数は、前述したように、SUS316Lの線膨張係数(15.9×10-6/℃、0〜100℃)以下である。
以上の説明で明らかなように、本発明は、半導体製造装置、大型薄型ディスプレイ製造装置、太陽電池製造装置の処理工程(プラズマエッチング、減圧気相成長等)に用いられる処理装置、あるいはこれらの処理装置に適用できる。具体的には、本発明は、処理装置に含まれるメカニカルポンプの処理ガスや排気ガスの接ガス部を、鉄を含有する基材上にNiバリア膜を設け、その上にイットリア(Y)表面処理を行い、150℃程度の温度に維持することにより反応生成物の付着・堆積を抑制し、接ガス部が耐食性に優れ、触媒効果のない処理装置を構成できるのである。また、基材として、SUS440C、SUS316Lよりも線膨張係数が小さく、安価な材料を使用できるため、メカニカルポンプを安価に構成できる。
更に、メカニカルポンプ内部は耐腐食性があり、触媒効果が無く、また、メカニカルポンプ本体をある程度の温度に昇温することにより、さらに反応生成物の堆積を抑えるためメカニカルポンプの正常な動作を長期間保証することができる。また前記メカニカルポンプを接続した半導体製造装置、大型薄型ディスプレイ製造装置、太陽電池製造装置は長時間安定した性能を維持するため、前記各装置の長時間に亘る安定稼動が可能となるのである。
以下、実施例に基づき、本発明をさらに詳細に説明する。
<試料の作製>
まず、以下に示す手順に従って試料を作製した。
(実施例1)
図2を参照して、本発明の実施例に係るメカニカルポンプ部材の製造方法を説明する。まず、平面寸法が6mm×6mm×20mmのSCM440からなる直方体の基材21を用意し、当該基材21を表面研磨した。次に、表面研磨された基材21全面に、バリア膜22を形成した。実施例1では、Niを含む次亜燐酸水溶液に、基材21を浸して、加熱することにより、無電解ニッケルリンメッキを行い、厚さ2μm程度〜15μm程度のNi層を形成し、当該Ni層をバリア膜22とした。
無電解メッキによって形成されたNi層は、水分を含んでいるため、N2をキャリアガスとして400℃程度の温度で5Torr程度の減圧下で、4.5時間脱ガス処理を行った。
脱ガス処理を行った後に、バリア膜22の表面にYにCeOを3%程度含有させた表面保護膜23を形成した。
具体的には、まず、表面にバリア膜22を形成した基材21にY+3%CeO用コート材を塗布し、1500rpmで60秒間回転させた。
その後、焼成装置を用いて、100%Nガスを1L/minの流量で流しながら圧力5Torr(6.67×10Pa)程度の減圧下で400℃まで5℃/minの昇温速度で昇温し、400℃に達した後、その状態で8時間保持して脱ガスを行った。
脱ガス終了後、常圧、400℃、100%Oガス雰囲気下で1L/minの流量でOを流しながら1時間保持して酸化焼成を行い、YにCeOを3%含有させた表面保護膜23を得た。なお、塗布/焼成は2回繰り返し、膜厚が略々100nm(0.1μm)となるようにした。
このようにして得られた表面保護膜23のセリウム含有量は、酸化物換算の原子比で1%〜10%が好ましく、より好ましくは、酸化物換算の原子比で1〜5%であり、より好ましくは、酸化物換算の原子比で2〜4%である。
以上の手順により、基材21上に、バリア膜22及び表面保護膜23を形成したポンプ部材の試料を作製した。
<組成分析>
次に、実施例に係るポンプ部材の試料の深さ方向の組成分析を行った。分析には日本電子株式会社(JEOL)製の光電子分光装置(XPS、X-ray Photoelectron Spectroscopy)であるJPS-9010-MXを用い、表面から深さ350nmまでの組成を分析した。
結果を図3に示す。尚、図3の横軸は、SiOの膜厚に換算した場合における表面からの深さであり、縦軸は元素の組成比(原子比)である。
図3に示すように、実施例に係る試料では、略々100nmの膜厚の表面保護膜23の下に、表面保護膜23を形成するY+3%CeOと、バリア膜22を形成するNiとを含む中間層(界面)が110nm〜230nmの厚さに亘って生成されていた。図3からも明らかな通り、350nmの深さから表面まで、Feは検出されず、Niのバリア膜22を設けることにより、基材に含まれるFeの表面保護膜23への侵入は完全に抑制されていることが分る。他方、Niは深さ110nmから検出されると共に、無電解メッキの際に用いられた次亜リン酸に起因するPが深さ150nmから検出された。
また、表面保護膜23に起因する酸素(O)が表面から230nmの深さまで検出され、他方、Yが表面から230nmの深さまで検出された。OとYが230nmの深さまで検出されるのは基材表面粗さの影響によるものである。また、微量のCeが100nmの深さまで検出された。
<表面状態>
基材21を形成するSCM440に、脱ガスしたNi層によって形成されたバリア膜22の表面状態と、バリア膜22上に表面保護膜23として形成されたY+3%CeOの表面を観測した。図4は、倍率×10000倍と×100000倍における表面状態とAFM(Atomic Force Microscope)により測定した□1μmエリアの平均表面粗さRa、Peak to valley値PVと共に示されている。
Ni層によって形成されたバリア膜22の表面粗さは、Raで0.54nmで、PVで6.4nmである。他方、表面保護膜23の表面粗さは、Raで0.31nm、PVで3.2nmであった。このことからも明らかな通り、表面保護膜23の表面がNiのバリア膜22の表面よりも平坦であった。また、表面保護膜23には膜剥離、ポアなどは見受けられなかった。
<耐腐食性試験>
次に、実施例で作製された試料を腐食雰囲気下に置いて、耐腐食性を評価した。具体的な手順は以下の通りである。
まず、試料を図5に示すように、直径1/2インチ、長さ30cmの表面がAl23処理されているAl−SUS製の反応管内部に配置した。
次に、Nを1L/minで反応管内に流しながら昇温速度5℃/minで温度200度まで上昇させ、この状態で1時間保持した(この過程で試料や反応管内表面に付着していた水分はほぼ完全に除去されている)。続いて、ガスをCl2に切り替え、圧力3kgf/cm(2.9×10Pa)となるようにして、この状態で24時間保持した。
その後、試料を取り出して、試験前と同じ条件で表面粗さの測定、表面観察、組成分析を行った。
表面観察結果を図6に、試験後の組成分析結果を図7に示す。図6では、段差計により測定長5mmで測定した表面粗さが示されている。表面粗さ測定をAFM でなく、段差計により測定したのは、Cl2ガス封止により表面凸凹が大きくなり、AFM における表面粗さ測定の限界を超えるためである。図6に示すように、Cl2に曝される前の試料(試験前の試料)は、219.5nmのRa、1781nmのPVを有していた。尚、図6の段差計により測定した表面粗さの値が、図4のAFM により測定した表面粗さの値よりも格段に大きくなっているのは、AFM により測定した表面粗さは□1μmエリアの微視的な表面粗さを測定したのに対し、段差計により測定長5mmで測定した表面粗さは、測定領域が長く、基材自体の表面凸凹の影響を含むためである。
一方、Clに曝された後の試料(試験後の試料)は、277.2nmのRa、2245nmのPVを有し、×10000の観測において部分的な反応が観測されたが、膜剥離等は観測されなかった。また試験後の試料に見られる部分的な反応ポイントの影響により表面粗さが若干増加していた。
図7(A)を参照すると、表面保護膜の表面から350nmの深さまでの組成分析結果が示されており、図3に示された組成分析結果に、Clの分析結果が加えられていることが分る。図7(A)から、ClはY+3%CeO表面保護膜の表面で留まっており、Ni層には検出されていないのが明らかである。
図7(B)は、図7(A)の表面部における組成分析結果のうち、表面から深さ50nmまでの範囲を拡大して示す図であり、Clは12nmの深さに留まっていることが分る。因みに、Niメッキのみの場合、Clは20nmの深さまで侵入することが判明した。
図6から明らかなように、実施例(SCM440+バリア膜+表面保護膜)では表面が部分腐食にとどまっており、Clの侵入量も12nmと、表面保護膜内部にとどまり、基材まで侵入していないことが分かった。
以上の結果より、基材として、線膨張係数の小さい鉄系材料を用い、基材表面に、Niからなるバリア膜及びY+3%CeO表面保護膜を形成することにより、表面保護膜中へのFeの侵入を阻止できると共に、Clガス等に対する耐腐食性を改善できることが分かった。図7の結果は、圧力3Kg/cm2、200℃で24時間の結果である。
実際には150℃程度でガス圧は高くても30Torr程度であるから十分な耐腐食性が得られるのである。
尚、ここでは、バリア膜22の膜厚が15μmの場合についてのみ説明したが、基材からのFeの侵入及びClの表面保護膜からの侵入を防止するためには、バリア膜22は0.5μm程度以上あれば良い。
上記した実施形態では本発明をスクリューブースターポンプに適用した場合について説明したが、本発明は特にこれに限定されることはなく、例えばル−ツポンプ等のメカニカルポンプにも適用することができるし、減圧中で有毒ガスまたは腐食性ガス等を使用する半導体製造装置、大型薄型ディスプレイ製造装置、太陽電池製造装置における処理工程(プラズマエッチング、減圧気相成長)の装置にも適用することができる。
A スクリューポンプ本体
a1、a2 スクリューロータ
a3 ケーシング
a4 シャフト
a6 タイミングギア
a7 吸入ポート
a8 吐出ポート
a10 不活性ガス注入口
M モータ

Claims (17)

  1. 内部をガスが通過または滞留する処理装置において、前記ガスと接する部分は鉄を含有する基材と、前記基材表面に設けられたFeの拡散を防止するバリア膜と、前記バリア膜上に形成された少なくともイットリア(Y)を主成分とする表面保護膜とを有することを特徴とする処理装置。
  2. 前記バリア膜がニッケル(Ni)を主成分とすることを特徴とする請求項1に記載の処理装置。
  3. 前記バリア膜が無電解めっきで形成されたニッケル(Ni)からなることを特徴とする請求項1に記載の処理装置。
  4. 前記バリア膜はリン(P)、リン及びタングステン(P−W)、もしくはボロン(B)を含有することを特徴とする請求項2乃至3のいずれか一項に記載の処理装置。
  5. 前記イットリアからなる表面保護膜は酸化セリウムを含有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の処理装置。
  6. 前記イットリアからなる表面保護膜の酸化セリウム含有量は、酸化物換算の原子比で1%〜10%であることを特徴とする請求項5に記載の処理装置。
  7. 前記イットリアからなる表面保護膜の酸化セリウム含有量は、酸化物換算の原子比で1〜5%であることを特徴とする請求項5に記載の処理装置。
  8. 前記イットリアからなる表面保護膜の酸化セリウム含有量は、酸化物換算の原子比で2〜4%であることを特徴とする請求項5に記載の処理装置。
  9. 前記イットリアからなる表面保護膜の厚さは0.06μm乃至10μmで行うことを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載の処理装置。
  10. 前記処理装置は、ロータを収納したケーシングに気体の吸入ポートと吐出ポートを形成したメカニカルポンプであることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか一項に記載の処理装置。
  11. 前記処理装置は、ロータを収納したケーシングに気体の吸入ポートと吐出ポートを形成したメカニカルポンプであって、メカニカルポンプ本体の温度を80℃乃至180℃の範囲内に維持する温度制御手段を備えたことを特徴とする請求項1乃至9のいずれか一項に記載の処理装置。
  12. 前記処理装置は、ロータを収納したケーシングに気体の吸入ポートと吐出ポートを形成したメカニカルポンプであって、該メカニカルポンプのロータは2軸で互いに噛合う不等リード不等傾斜角スクリューでスクリューの歯溝に閉じ込めた吸入ガスを圧縮移送排気の動作をする形状で、スクリュー内部に軸受及びモータ内蔵或いは一部が内蔵され、またモータはいずれか一方の1軸のみ或いは2軸にそれぞれに取り付け、回転異常時にロータとロータの接触防止用タイミングギアが備えたことを特徴とする請求項1乃至11のいずれか一項に記載の処理装置。
  13. 前記処理装置は、メカニカルポンプと、該メカニカルポンプによってガスが排出される処理室と、前記処理室とメカニカルポンプとの間に設けられた配管とを有し、前記処理室、前記メカニカルポンプ、および前記配管の接ガス部に、前記表面保護膜を有することを特徴とする請求項1乃至9のいずれか一項に記載の処理装置。
  14. 前記処理装置は、粘性流域から分子流域まで分子の大きさに関係無く水素を含め全てのガスに対して略一定の排気速度を持ち、吸入側圧力と吐出側圧力の圧縮比が30000以上のスクリューブースターポンプとスクリューブースターポンプの圧縮比が大きいため吐出側を粘性流域で排気するスクリューバックポンプの組み合わせを特徴とする請求項1乃至13のいずれか一項に記載の処理装置。
  15. 前記処理装置は、半導体製造装置、薄型ディスプレイ製造装置、および太陽電池製造装置の少なくとも一部であることを特徴とする請求項1乃至14のいずれか一項に記載の処理装置。
  16. 鉄を含有する基材と、前記基材表面に設けられたFeの拡散を防止するバリア膜と、
    前記バリア膜上に形成された少なくともイットリア(Y)を主成分とする表面保護膜とを有するポンプ部材を特徴とする請求項1乃至15のいずれか一項に記載の処理装置。
  17. 前記記載の鉄を含有する基材は線膨張係数が小さいSCM440 或いはINCOLOY909 であることを特徴とする請求項1乃至16のいずれか一項に記載の処理装置。
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