JP5604094B2 - 防かび剤組成物、およびそれを使用した木材および木製品 - Google Patents

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Description

本発明は、防かび剤組成物、特に表面に塗膜を形成されていない木材および木製品にも適した防かび剤組成物、およびそれを使用した防かび加工方法、木材および木製品等に関する。
木材および木製品は、表面の保護または改質などの目的のため、塗料などを用いて表面に塗膜が形成されて使用されることが多い。一方、ある種の木材および木製品は、塗膜を形成せずに用いられることが好まれる。そのようなものの代表的なものとして、桐(学名:Paulownia tomentosa)がある。
桐は、軽い、湿気を通さない、熱を通さない、収縮率が小さい、虫がつかない、耐久性・耐火性が高い、音響性がよい等の多くの利点を有し、たんす等の家具や各種の箱、琴等の楽器、下駄などを含む多様な製品の材料や、金庫の内張り材などとして多く用いられている。桐材は、木目が明瞭で光沢があるので、表面の豊かな質感を明瞭に表現するために無塗装で用いられることが多く、白木のまま使用されたり、カルカヤの束で表面をこすって木目を強調するうづくり加工や天然着色剤として植物抽出液を用いた伝統的な表面加工が施されて使用されている。
洋たんすなどの木製家具では表面の美観保護と生物劣化制御とを目的として防かび剤が含まれた塗装加工が行われるのが一般的であるのに対し、桐材およびその製品では、微生物による劣化に対して特別な工夫がなされていなかった。しかし、桐製であっても、使用環境によっては、木材または製品の表面や内部にかびが生育して着色することがあり、問題となっている。このような事例が多発すれば桐製品に対するイメージ低下が避けられない。また、桐材に生育したかびや着色の除去についても、知見が不足しており、適切な対処方法が確立されていない。
一般的な工業用または木材用の防かび剤または抗菌剤としては、アゾール系、イソシアネート系、イソチオゾリン系、イミダゾール系、ピリジン系、フェノール系およびヨード系化合物などの多くの物質が公知である。また、抗菌スペクトルを広げることなどを目的としてこれらの2種以上を組合わせて使用することもいくつか提案されている。
しかし、これらの防かび剤または抗菌剤に関して、桐材のような木材に対する具体的な効果または影響については報告が見当たらない。
特開2009−96754号公報 特開平7−290948号公報 特許第4338461号公報 特開2007−254321号公報
そこで、本発明は、表面に塗膜を形成されていない木材および木製品、特に、桐の無垢材や、桐のつき板を用いた天然木化粧合板などの木質材料、桐箱・桐たんすなどの木製品に対しても、これらの表面の質感を損なうことなく適用することができ、素材・半製品・製品のいずれに対しても簡便な工程で容易に安価に使用することができる、防かび剤組成物および防かび加工方法を提供することを目的とする。さらに、これらの木材および木製品に生育したかびおよび着色の除去およびこれらの対象物に対する持続的な防かび効果の付与、これらの木製品の製造工程中に行うことができる有効な防かび加工法を提供することを目的とする。
本発明によれば、
〔1〕 2−イソプロピル−5−メチルフェノールと、
2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オンと、
オルトフェニルフェノール、オルトフェニルフェノールのナトリウム塩、モノクロロ−2−フェニルフェノール、および2−(4’−チオゾリル)−ベンツイミダゾールからなる群から選択される1種以上の化合物と、を有効成分として含有する、防かび剤組成物;
〔2〕 オルトフェニルフェノール、オルトフェニルフェノールのナトリウム塩、およびモノクロロ−2−フェニルフェノールから選択される1種以上の化合物と、2−(4’−チオゾリル)−ベンツイミダゾールとを含有する、前記〔1〕記載の防かび剤組成物;
〔3〕 上記有効成分を溶解する溶剤が、C1〜4アルコール、アセトン、およびジメチルスルホキシドからなる群から選択される1種以上からなる、前記〔1〕または〔2〕記載の防かび剤組成物;
〔4〕 上記溶剤が、エタノールからなる、前記〔3〕記載の防かび剤組成物;
〔5〕 乾燥後に塗膜を形成しない、前記〔1〕〜〔4〕のいずれか1項記載の防かび剤組成物;
〔6〕 前記〔1〕〜〔5〕のいずれか1項記載の防かび剤組成物を、木材または木製品に適用する工程を含む、防かび加工方法;
〔7〕 前記〔1〕〜〔5〕のいずれか1項記載の防かび剤組成物で表面を処理された木材;
〔8〕 前記〔1〕〜〔5〕のいずれか1項記載の防かび剤組成物で表面を処理された木製品
が提供される。
本発明の防かび剤組成物は、種々の対象物に適用することができ、表面に塗膜形成されていない木材または木製品に適用しても、その色味および風合いに影響せず、持続性の高い防かび効果を付与することができる。さらに、本発明の防かび剤組成物の効果は、かびが発生する前の木材または木製品に適用した場合の予防効果のみではなく、既に生育したかびに対する除去効果も有する。また、金属部品の塗膜に対する影響が小さいため、適用対象の木材または木製品に金属部品が使用されている場合であっても、金属部品がついた状態で本発明の防かび剤組成物を適用することができる。このため、本発明の防かび剤組成物は、木材または木製品の製造工程において、製品化後のかびの発生を予防するために使用できるだけでなく、完成品を使用中に発生したかびの除去に対しても使用することができ、しかも製品を分解したり、金属部品を取り外したりする必要もなく簡便に適用することができる。
また、本発明の防かび剤組成物は、かびの発生している木材表面に塗付してもその防かび効果が塗布後すぐに得られ、即効性が高いうえ、処理後は長期にわたって持続的に防かび効果が得られる。
さらに、本発明の防かび剤組成物は、入手容易な材料で容易に製造でき、有効成分が相乗的に作用することにより比較的低濃度でも長期間有効な防かび効果を奏することができるため、防かび剤組成物の製造コストの点でも有利である。さらに、人体に対する安全性および速乾性も高い。そのため、本発明の防かび加工方法は簡便な工程で迅速に行うことができ、作業性も優れている。したがって、加工コストおよび本発明の防かび剤組成物で処理した製品の製造の点でも有利である。
図1は、桐たんす用金具に対する溶剤の影響を示す図である。パネル(A)は溶剤の滴下前、パネル(B)は溶剤(DMSOまたはアセトン)の滴下後の金具の表面の写真である。 図2は、撥水加工に与える本発明の防かび剤組成物による処理の影響を示す図である。パネル(A)は撥水加工後に本発明の防かび剤組成物を適用した場合、パネル(B)は本発明の防かび剤組成物の適用後に撥水加工を施した場合の試験片の写真である。 図3は、撥水加工に与える本発明の防かび剤組成物による処理の影響を示すグラフである。左は撥水加工後に本発明の防かび剤組成物を適用した場合、右は本発明の防かび剤組成物の適用後に撥水加工を施した場合の撥水度である。
本発明の防かび剤組成物は、有効成分として、
(A)2−イソプロピル−5−メチルフェノール(チモール)、
(B)2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン(オクチリノン)、および
(C)オルトフェニルフェノール(OPP)、OPPのナトリウム塩(OPP−Na)、モノクロロ−2−フェニルフェノール(Cl−OPP)、および2−(4’−チオゾリル)−ベンツイミダゾール(チアベンダゾール;TBZ)からなる群から選択される1種以上の化合物
を含有する。上記(C)成分としては、製品保全などの観点からはOPP、OPP−Na、TBZが好ましく、OPPまたはOPP−Naがより好ましい。
溶剤としては、ジメチルスルホキシド(DMSO)、アセトン、および低級(C1〜4)アルコール(メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノールおよびイソプロパノール)を単独で、または2種以上の混合物として用いることができる。これらのうち、速乾性などの点からは揮発性の高いC1〜4アルコール、特に直鎖アルコールが好ましく、エタノールが最も好ましい。
本発明の防かび剤組成物は、必要量の上記の必須有効成分を、溶剤と混ぜ合わせ、溶解させることにより製造することができる。溶剤中の有効成分の濃度は、これらの成分の公知の有効濃度を参考に、適宜決定することができる。たとえば、チモールについては0.1〜3.0%;オクチリノンについては0.1〜0.5%;OPP、OPP−NaおよびCl−OPPについてはそれぞれ0.3〜5.0%;TBZについては0.1〜5.0%であることができる(「%」はいずれも重量/重量%である)。また、これらの有効成分の比は、たとえばチモール:オクチリノン:OPP(OPP−NaまたはCl−OPPでもよい)=1:1:1〜5:1:4程度、チモール:オクチリノン:TBZ=1:1:1〜5:1:4程度、チモール:オクチリノン:OPP(OPP−NaまたはCl−OPPでもよい):TBZ=1:1:1:1〜6:1:10:10程度、であることができる。
付加的成分として、たとえば、増粘剤、凍結防止剤、撥水剤、充填剤、懸濁助剤、消泡剤、酸化防止剤、光安定剤、顔料、染料などを含有させることができる。
本発明の防かび剤組成物は、種々の対象物、特に、桐をはじめとして、木の種類を問わず各種の木材および木製品に適用することができるが、主に屋内で使用される木材および木製品に適している。適用対象物である木材は、無垢材であってもよく、木質材料であってもよい。木質材料としては、たとえば集成材、表面(つき板)のみ天然木で形成された天然木化粧合板のような合板、単板積層材などが挙げられる。本発明の防かび剤組成物は、特に、白木で使用される木材、または撥水処理などの非塗膜形成性の処理を施された、表面に塗膜が形成されていない木材、あるいはそれらを用いた製品に適用するのに適している。製品の例としては、桐たんすをはじめとして、家具、建具、楽器、下駄、箱などが挙げられる。
本発明の防かび剤組成物をこれらの適用対象物に適用するには、刷毛塗り、スプレーなど、一般的な方法を採用することができる。既にかびが発生しているものに適用する場合は、刷毛を用いて塗布することにより、塗布と同時にかびの除去を行うことができる。また、適用対象物に撥水加工を施す場合、本発明の防かび剤組成物を適用する工程は、撥水剤の適用工程の前または後のいずれでもよく、いずれの時点で適用しても同等の撥水効果および防かび効果が得られる。
塗布量は、当業者が適宜決定することができるが、一般的には、たとえば、1m2あたり20〜60gである。
最適な態様の本発明の防かび剤組成物は、たとえば桐たんすや箱のように、釘や化粧金具のような金属製の部品を有する製品に対しても、金具のコーティングを傷めることがないので、そのまま適用することができる。特殊な表面仕上げの金具については、金具をマスキングして適用することが好ましい。
1. 桐たんすからのかびの分離
異なる環境で使用され、かび汚染が発生した桐たんすA、B、C(いずれも株式会社相徳製)からかびを分離し、同定した。
かび採取は、スタンプ培地(商品名「ぺたんチェック(登録商標)25 CP 加ポテトデキストロース寒天培地」、栄研化学)の培地面を直接桐たんすに押し付けることでかびを採取するスタンプ法、滅菌綿棒で桐たんす表面をふき取り、ポテトデキストロース寒天(PDA、和光純薬)平板培地または好乾性真菌の検出が可能な商品名「ジクロラン−グリセロール(DG−18)寒天基礎培地」(DG−18、OXOID)平板培地に画線分離するふき取り法を用いて行った。さらに、引き出しからのかび採取は、PDA平板培地およびDG−18平板培地に画線分離するふき取り法を用いて行い、黒色染み部分はガラス板を用いてかき出した粉末をPDA平板培地およびDG−18平板培地上に定着させる直接分離法を用いて行った。
以上の方法で採取・分離されたかびを、26℃のインキュベータで1週間程度培養後、同定を試みた。同定は、肉眼および実体顕微鏡(OLYMPUS製SZ2−ILST、20〜50倍程度)による、コロニーの大きさ、表面性状、コロニーの色調(表面・裏面)、臭気、浸出液の有無(量・色);生物顕微鏡(OLYMPUS 製BX51TF、100〜600倍)による、胞子の大きさおよび形態、胞子形成細胞の形態、胞子着生方法、菌糸についての形態観察の結果に基づいて、かび同定に関する図譜を参考にして行った。
その結果、桐たんすAからはかびが分離されなかった。このことから、桐たんすAのかびは、分離に用いたPDA平板培地では発育できない好乾性のかびと考えられた。桐たんすBからは、主にChaetomium属およびAspergillus属が検出され、黒色の染み部分からはAspergillus penicillioidesが分離された(表1)。
Figure 0005604094
さらに、桐たんすCの上面からは不明な菌種を除いて5属が分離されたが、側面からはAspergillus属のみが分離され、特に黒色染み部分からはAspergillus penicillioidesが分離された(表2)。桐たんすCの上面からのみ代表的な空中浮遊菌が多数検出されたことから、桐たんすCの上面にはほこりに付着しているかびや落下菌などが付着している可能性が考えられた。
Figure 0005604094
異なる環境で使用されていた桐たんすBおよび桐たんすCの黒色染みからAspergillus penicillioidesが分離されたことで、Aspergillus penicillioidesが桐たんすの黒色染み発生に関係するものと考えられた。また、別の実験において、セルロース分解性のかびであるChaetomium属には、強い赤色の色素を産生するもの、褐色の染みを生じるものが含まれることが判明した。
さらに、別の実験において、桐たんすの表面処理に用いられるヤシャ液(ヤシャブシ(学名:Alnus firma)の実を煮出した抽出液)および砥粉(超微細な粒子状の粘土)からも、かびを分離し、同定した。その結果、ヤシャ液からはPenicillium属、Aspergillus nigerPaecilomyces variotiiおよび酵母、砥粉からはおよびChaetomium属、Penicillium属、Cladospolium属、Paecilomyces属およびAspergillus属等が、それぞれ分離された。
したがって、これらのかびに対して有効な成分を選択する必要があることが判明した。
2. 防かび剤組成物の調製
上記の結果に基づいて有効な可能性のある防かび成分を選択し、以下の試薬を用いて防かび剤組成物を調製した。防かび有効成分として、チモール(和光純薬工業(株)製、試薬特級)、チアベンタゾール(TBZ、東京化成工業(株))、オクチリノン(東京化成工業(株)、試薬)、ヒノキチオール(東京化成工業(株)、試薬)、(2−ピリジルチオ−1−オキシド)ナトリウム(Na−オマジン、和光純薬工業(株)製、試薬)およびオルトフェニルフェノール(OPP、和光純薬工業(株)製、試薬特級)を使用した。溶剤として、消毒用エタノール(和光純薬工業(株)製、日本薬局方、濃度76.9〜81.4%)、エタノール(和光純薬工業(株)製、試薬特級、濃度99.5%)、アセトン(和光純薬工業(株)製、試薬特級、濃度99.5%)およびジメチルスルホキシド(DMSO、和光純薬工業(株)製、試薬特級、濃度99.0%)を使用した。
調製した防かび剤組成物の組成は表3に示すとおりであった。(表中、「%」は(重量/重量)%である。)
Figure 0005604094
3. 防かび剤組成物の評価
3.1 防かび有効成分の有効性
上記で製造した各防かび剤組成物を、それぞれ1mあたり約40gの塗布量で桐試験片(防かび剤無処理の桐試験片(柾目面試料)を約40mm×40mm×6mm(厚み)の大きさに切り出したもの)に塗布し、静置して乾燥させた。これらの試験片の色調変化および臭気に基づいて伝統工芸士が桐たんす(桐製品)に対する防かび剤組成物の適性を判定した。
また、防かび剤組成物を塗布した試験片のかび抵抗性を、JIS Z 2911:2006かび抵抗性試験方法「6.一般工業製品の試験」(木竹製品)にしたがって調べた。すなわち、Aspergillus niger van Tieghem NBRC 6341、Penicillium citrinun Thom NBRC 6352、Rhizopus oryzae Went et Prinsen-Geerligs NBRC 31005、Cladosporium cladosporioides (Fresenius) de Vries NBRC 6348、およびChaetomium globosum Kunze ex Fries NBRC 6347の混合胞子懸濁液を試験片の表面に吹きつけた後、温度28±2℃、湿度95〜99%の環境下で4週間培養した。
結果を表4に示す。
Figure 0005604094
その結果、A、B、C、E剤は4週間の試験期間中にかびの発生が認められなかったが、D剤では培養2週間目でかびの発生が確認された。これにより、D剤は、A、B、C、E剤と比較して防かび効果が劣ることが明らかになった。
さらに、伝統工芸士による防かび剤組成物の塗りやすさ、塗布後の色味、臭気、風合い等の評価結果においても、A、B、C、E剤はいずれも良好であったのに対し、D剤については変色することが確認された。
3.2 溶剤の検討
防かび剤組成物に使用される溶剤が金属部品に与える影響を調べるため、一般的な桐たんす用金具に各種溶剤を滴下して変化を観察した。
その結果、DMSOおよびアセトンを滴下した場合は、この金具の塗膜の溶解または剥離が起こった(図1)。試験した他の溶剤は金具に影響を与えなかった。したがって、金具がついた状態で防かび剤組成物を使用する場合には、溶剤としては、DMSOおよびアセトンを含有させないか、これらの溶剤の量を少なくすることが望ましく、エタノールなどのアルコールが最適であることが判明した。
また、A、B、C、E剤を、伝統工芸士が桐の試験片にそれぞれ塗布し、塗布後の乾燥に要する時間および桐試験片の色味の変化を比較した。その結果、溶剤としてDMSOを含むA、B、C剤は塗布後の乾燥時間が30分以上であったのに対し、溶剤がエタノールのみであるE剤は塗布後の乾燥時間が5分と非常に短く、作業効率が優れていることが明らかになった。さらに、A、B、C剤を用いた場合、許容範囲ではあるものの、乾燥後に桐試験片がごくわずかに変色することがわかった。
以上の結果から、溶剤としては、エタノールのような揮発性の高いアルコールが最適であると判定された。
4. 防かび加工方法の検討
桐たんす製造の仕上げには、通常撥水剤が塗布されている。そこで、防かび剤組成物を撥水剤に上塗りする(以後「HB」と呼ぶ)か、もしくは下塗りする(以後「BH」と呼ぶ)ことによって防かび効果や撥水効果に及ぼす影響について検討した。防かび剤組成物としてはE剤を使用した。撥水剤としては商品名「メガファックスESM−1」(大日本インキ化学工業株式会社)をアセトンに溶解したものを使用した。塗布量は、E剤は桐試験片40mm×40mmあたり約0.06g、撥水剤は「メガファックスESM−1」約10g/m2であった。
はじめに、HBおよびBHの防かび効果を確認するため、「JIS Z 2911 かび抵抗性試験」(6.一般工業製品の試験)を上記と同様にして実施した。その結果、HBおよびBHはいずれもかびの発生が認められなかった(表5)。
Figure 0005604094
次に、(財)日本住宅・木材技術センター木材保護着色塗料品質評価マニュアル「7.2 撥水度の評価方法」を用いて撥水度の評価を行った。
その結果を図2および3に示す。通常の桐材表面処理での撥水度を100%とすると、HBおよびBHの撥水度はいずれも99.6%であり、防かび剤組成物を塗布することによる撥水効果への大きな影響は認められなかった。以上の結果から、防かび剤組成物および撥水剤を塗布する工程は、どちらを先にしても、撥水度およびかび抵抗性に違いがないことがわかった。

Claims (9)

  1. 2−イソプロピル−5−メチルフェノールと、
    2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オンと、
    オルトフェニルフェノール、オルトフェニルフェノールのナトリウム塩、モノクロロ−2−フェニルフェノール、および2−(4’−チオゾリル)−ベンツイミダゾールからなる群から選択される1種以上の化合物と、を有効成分として含有する、桐材または桐製品用の防かび剤組成物。
  2. オルトフェニルフェノール、オルトフェニルフェノールのナトリウム塩、およびモノクロロ−2−フェニルフェノールから選択される1種以上の化合物と、2−(4’−チオゾリル)−ベンツイミダゾールとを含有する、請求項1記載の防かび剤組成物。
  3. 上記有効成分を溶解する溶剤が、C1〜4アルコール、アセトン、およびジメチルスルホキシドからなる群から選択される1種以上からなる、請求項1または2記載の防かび剤組成物。
  4. 上記溶剤が、エタノールからなる、請求項3記載の防かび剤組成物。
  5. 乾燥後に塗膜を形成しない、請求項1〜4のいずれか1項記載の防かび剤組成物。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項記載の防かび剤組成物を、材または製品に適用する工程を含む、防かび加工方法。
  7. 桐材または桐製品にはっ水剤を適用する工程をさらに含む、請求項6記載の防かび加工方法。
  8. 請求項6または7記載の防かび加工方法で表面を処理された材。
  9. 請求項6または7記載の防かび加工方法で表面を処理された製品。
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