以下、本発明に係る試料処理装置、試料処理方法及びこれらに使用する反応容器について、図面を参照して詳細に説明する。
試料処理装置は、図1に示すように、載置台1の一面における所定の位置に複数の反応容器2を取り付け、反応容器2を用いて生物学的試料に対して様々な処理を実施するものである。試料処理装置は、載置台1と、複数の試薬瓶を収容できる試薬ラック3と、処理対象の生物学的試料を充填した試料容器を収容できる検体ラック4と、複数の磁性体棒を収容した磁性体棒ラック5と、複数の磁性体棒カバーを収容したカバーラック6と、複数のディスポーザブルチップを収容したチップラック7と、廃棄物を捨てるための廃棄物用容器8と、載置台1の一面に対向する位置において移動自在に配置されたノズル機構9と、ノズル機構9の移動及び位置決めを制御する駆動制御装置10とを備えている。また、図示しないが、試料処理装置は、処理条件や生物学的試料に関する情報、その他の各種情報を入力するためのコンピュータを備えている。
ここで、生物学的試料とは、特に限定されないが、ヒトを含む動物から採取された血液、血漿、組織片、体液及び尿といった生体試料;動物細胞、植物細胞及び昆虫細胞といった細胞;細菌、真菌及び藻類等の微生物;ウイルス(ウイルス感染細胞を含む)を包含する意味である。また、生物学的試料とは、これら細胞、微生物及びウイルスを培養した培養液、これら細胞、微生物及びウイルスを懸濁した懸濁液を含む意味である。また、これら生物学的試料には、試料処理装置による分離抽出や精製の対象となる生物学的分子が含まれている。ここで、生物学的分子とは、DNAやRNA等の核酸、酵素や抗体等のタンパク質、ペプチド断片を意味する。なお、試料処理装置は、分離抽出や精製の対象を核酸やタンパク質、ペプチド断片に限定するものではなく、細胞や微生物が産生する化合物(有機化合物や低分子化合物を含む)を生物学的分子として分離抽出や精製の対象とすることができる。
試料処理装置において反応容器2は、図2〜4に示すように、全体が略箱型を呈しており、内部に各種試薬を分注するための複数の反応部11a〜11dを有している。複数の反応部11a〜11dは、所定の容積となるように窪み部として形成されている。なお、本例では、反応部11dは、反応部11a〜11cの容積よりも小となるように、浅い窪み部として形成されている。なお、反応容器2において、反応部の数及び各反応部の容積は特に限定されず、生物学的試料に対する処理の内容に応じて適宜設定することができる。また、試料処理装置には、生物学的試料に対する処理の内容に応じて、反応部の数や核反応部の容積が異なる種類の反応容器2を取り付けることができる。
また、反応容器2は、複数の反応部11a〜11dにおける開口端の上方に、側壁によって囲まれた空間部12を有している。すなわち、反応容器2は、四方の側壁と複数の反応部11a〜11dの開口端が臨む一面とから構成される空間部12を有している。さらに、反応容器2は、ノズル機構9に取り付けられた磁性体棒カバーを着脱するためのカバー着脱機構13を備えている。
カバー着脱機構13は、磁性体棒カバーを保持するための上部押さえ板14及び下部押さえ板15を有している。上部押さえ板14及び下部押さえ板15は、所定の間隔をもって互いに略平行に配置されている。また、上部押さえ板14及び下部押さえ板15には、複数の反応部11a〜11dのそれぞれに対向し、磁性体棒カバーの外形寸法に合わせた形状の切り欠き部16が形成されている。切り欠き部16は、反応容器2を上方から見たときに反応部11a〜11dの開口部の内方に臨む位置に端面が位置するように形成されている。
試料処理装置においてノズル機構9は、図5に示すようなノズル部17を複数備えている。ノズル機構9は、少なくとも反応容器2の数より多い数のノズル17を備えている。言い換えれば、試料処理装置において、ノズル17の個数以下の反応容器2を配設することができる。より具体的には、ノズル17は例えば8〜12連程度までの並列化が可能である。ノズル17を並列化することで、単位時間当たりの処理能力(スループット)を向上させることが可能となる。
ノズル17は、図示しないが、内部が筒状となっておりポンプ手段等の吸引・吐出駆動装置と接続されている。ノズル17は、最も小径の先端部18、先端部18よりも大径の中途部19を有している。
ノズル17の先端部18には、図6に示すディスポーザブルチップ20及び図7に示す磁性体棒21を選択的に装着することができる。ディスポーザブルチップ20及び磁性体棒21は、それぞれ基端部の内径がノズル17の先端部18とほぼ同径となっており、また先端に向かって小径となるような形状となっている。よって、ディスポーザブルチップ20及び磁性体棒21は、基端部にノズル17の先端部18を挿入することでノズル17に嵌め込むことができる。また、ディスポーザブルチップ20は、基端部にフリンジ部22を有している。磁性体棒21は、先端に磁界を発生する磁性体23を有しており、基端部にフリンジ部24を有している。磁性体棒21は、ディスポーザブルチップ20等の分注チップの先端部に磁性体23を挿入することで作製できる。
一方、ノズル17の中途部19には、図8に示す磁性体棒カバー25を装着することができる。磁性体棒カバー25は、基端部の内径がノズル17の中途部19とほぼ同径となっており、また先端に向かって小径となるような形状となっている。よって、磁性体棒カバー25は、基端部からノズル17の中途部を挿入することでノズル17に嵌め込むことができる。また、磁性体棒カバー25は、先端部が開口端となっており、基端部にフリンジ部26を有している。
なお、これらディスポーザブルチップ20、磁性体棒21(磁性体23を除く部分)及び磁性体棒カバー25は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネートなどの樹脂を使用して作製することができる。
なお、ノズル機構9は、図示しないが、先端部18や中途部19に取り付けられたディスポーザブルチップ20、磁性体棒21及び磁性体棒カバー25を取り外すための取外し機構を備えていることが好ましい。取外し機構としては、例えば、ディスポーザブルチップ20のフリンジ部22、磁性体棒21のフリンジ部24及び磁性体棒カバー25のフリンジ部26を下方に押し下げる押圧部を採用することができる。
試料処理装置において試薬ラック3は、複数の試薬瓶を収容できる箱形を呈している。試薬ラック3には、生物学的試料に対して実施する具体的な処理内容によって異なる試薬瓶を収容することができる。例えば、生物学的試料から核酸成分を抽出する処理を実施する場合には、カオトロピック剤を含有する溶液の試薬瓶、洗浄液の試薬瓶、溶離液の試薬瓶、反応容器2に分注するオイルの試薬瓶等を試薬ラック3に収容することができる。また試薬ラック3には、同種の試薬瓶がノズル機構9に備わった複数のノズル17の数と同数収容されていてもよい。この場合、同種の試薬瓶は、複数のノズル17の間隔と合致するように配置される。
試料処理装置において検体ラック4は、異なる又は同一の生物学的試料を充填した複数の検体チューブを収容できる箱形を呈している。検体ラック4には、複数の検体チューブが複数のノズル17の間隔と合致するように配置される。
試料処理装置において磁性体棒ラック5は、図7に示した複数の磁性体棒21を収容する複数の開口部を有している。この開口部は、磁性体棒21の外径よりやや大であり、且つフリンジ部24よりやや小となる径を有している。また、これら複数の開口部は、複数のノズル17の間隔と合致するように配置されている。すなわち、複数の開口部の中心間隔が複数のノズル17の先端部の中心間隔と略等しくなるよう、ノズルと同数又はその倍数の開口部が並列し、複数段にわたってこれら開口部の列が形成されている。
試料処理装置においてカバーラック6は、図8に示した複数の磁性体棒カバー25を収容する複数の開口部を有している。この開口部は、磁性体棒カバー25の外径よりやや大であり、且つフリンジ部26よりやや小となる径を有している。また、これら複数の開口部は、複数のノズル17の間隔と合致するように配置されている。すなわち、複数の開口部の中心間隔が複数のノズル17の先端部の中心間隔と略等しくなるよう、ノズルと同数又はその倍数の開口部が並列し、複数段にわたってこれら開口部の列が形成されている。
試料処理装置においてチップラック7は、図6に示した複数のディスポーザブルチップ20を収容する複数の開口部を有している。この開口部は、ディスポーザブルチップ20の外径よりやや大であり、且つフリンジ部22よりやや小となる径を有している。また、これら複数の開口部は、複数のノズル17の間隔と合致するように配置されている。すなわち、複数の開口部の中心間隔が複数のノズル17の先端部の中心間隔と略等しくなるよう、ノズルと同数又はその倍数の開口部が並列し、複数段にわたってこれら開口部の列が形成されている。
試料処理装置において廃棄物用容器8は、使用済みのディスポーザブルチップ20、磁性体棒21及び磁性体棒カバー25や、処理後の生物学的試料、洗浄液等を廃棄する容器であり箱形を呈している。なお、廃棄物用容器8は、図示しないが、ノズル17の先端部18や中途部19に取り付けられたディスポーザブルチップ20、磁性体棒21及び磁性体棒カバー25を取り外すための取外し機構を備えていることが好ましい。取外し機構としては、例えば、ディスポーザブルチップ20のフリンジ部22、磁性体棒21のフリンジ部24及び磁性体棒カバー25のフリンジ部26に当接し、ノズル17を上方に駆動することでこれらフリンジ部22、24及び25下方に押し下げる押圧板を採用することができる。なお、取外し機構は、ノズル機構9及び廃棄物容器8のうちいずれか一方に備わっていればよい。
試料処理装置において駆動制御装置10は、図示しないが、モータ等の動力源、動力源からの動力を伝達するギア機構及びアーム等からなる駆動機構と、上述したノズル機構9を図1中のx軸、y軸及びz軸に沿って移動及びz軸を中心として回動させる制御信号を当該駆動機構に出力する制御基板とを備えている。なお、制御基板には、図示しないコンピュータで操作者が設定した各種条件が入力される。
ところで、本発明は、上述した構成の試料処理装置に限定されるものではない。上述した試料処理装置は、カバー着脱機構13を有する反応容器2を載置台1に取り付ける構成であった。しかしながら、試料処理装置は、反応容器2を取り付ける位置にカバー脱着機構13を備えてもよい。すなわち、試料処理装置がカバー着脱機構13を有する構成であってもよい。具体的には、図9に示すように、試料処理装置は、載置台1の一面における反応容器2を取り付ける位置に、カバー脱着機構13を備えるカバー保持部30を備えている。カバー保持部30は、断面L字状の一対の側面31と、一対の側面31により所定の高さに位置するカバー脱着機構13とから構成されている。カバー保持部30は、図示しないが、載置台1に対して着脱自在となるような機構を有していても良い。また、カバー保持部30を有する試料処理装置においては、カバー脱着機構13を有しない以外は同様な構成を有する反応容器2を使用する。また、試料処理装置は、複数の反応容器2を取り付ける場合、各反応容器2に対応する複数のカバー保持部30を備えることとなる。
また、カバー保持部30は、カバー脱着機構13を上下方向(図1に示したz軸方向)に移動、位置決めできるように構成しても良い。この場合、一対の側面31の互いに対向する面に、上下方向に平行な複数の凹溝を形成し、凹溝に沿ってカバー脱着機構13を上下方向に移動させることができる。また、この場合、カバー脱着機構13を一対の側面31に固定するため、ピン等の固定手段を有していることが好ましい。
以上のように構成された試料処理装置は、生物学的試料に対する様々な処理を実施することができる。以下では、生物学的試料から核酸成分を抽出する処理を実施する形態を例として試料処理装置を説明する。具体的には、試料処理装置は、核酸及びその他の不純物を含有する試料にカオトロピック剤存在下でシリカコーティングされた磁性ビーズを混合し、当該磁性ビーズの表面へ核酸を吸着させ、核酸を吸着した磁性ビーズを分離し、洗浄した後に磁性ビーズから核酸を溶離する核酸抽出を実施する。
より具体的には、先ず、図10に示すように、反応部11aに処理対象の生物学的試料とカオトロピック剤や界面活性剤を含む溶液、反応部11b及び11cに洗浄液、反応部11dに溶離液を分注する。これら溶液を反応部11a〜11dに分注する際には、ノズル機構9のノズル17にディスポーザブルチップ20を取り付ける。ディスポーザブルチップ20をノズル17に取り付けるには、先ず、駆動制御装置10による制御によりノズル機構9を、チップラック7に収容されたディスポーザブルチップ20の基端部の中心とノズル17の先端部18とが正確に対向する位置に移動させる(x軸及びy軸方向の移動)。次に、駆動制御装置10による制御によりノズル機構9を下方(z軸)に移動させることによって、ノズル17の先端部18にディスポーザブルチップ20を取り付けることができる。以上の一連の動作により、ノズル機構9が有する複数のノズル17の全てにディスポーザブルチップ20を取り付けることができる。
そして、ディスポーザブルチップ20を取り付けた状態で、駆動制御装置10による制御によりノズル機構9を試薬ラック4の上方に移動し、試薬瓶の内部にディスポーザブルチップ20の先端を挿入し、図示しないポンプ手段等の吸引・吐出駆動装置により所定量の溶液を吸引する。このとき、所定の試薬瓶をノズル17の数と同数準備して試薬ラックに並列させることで、複数のディスポーザブルチップ20の全てに同時に溶液を吸引することができる。
その後、駆動制御装置10による制御によりノズル機構9を反応容器2の上方に移動し、ディスポーザブルチップ20の先端を所定の反応部11a〜11d上に位置決めする。この状態で吸引・吐出駆動装置が作動し、ディスポーザブルチップ20内に吸引した溶液を所定の反応部11a〜11d内に分注することができる。溶液を分注し終わると、駆動制御装置10による制御によりノズル機構9を廃棄物用容器8の上方に移動し、ノズル機構9又は廃棄物用容器8に取り付けられた取外し機構を作動させて、使用済みのディスポーザブルチップ20を廃棄する。
以上の一連の動作は、洗浄液や溶離液、カオトロピック剤や界面活性剤を含む溶液を分注する際に共通する動作である。なお、生物学的試料の分注については、検体ラック4に収容された検体チューブから所定量の生物学的試料を吸引する以外は、以上の一連の動作により実施される。また、洗浄液、溶離液、生物学的試料及びカオトロピック剤や界面活性剤を含む溶液を分注する際には、それぞれ異なるディスポーザブルチップ20が使用される。
次に、図11に示すように、処理対象の生物学的試料が分注された反応部11aに対して、シリカコーティングされた磁性ビーズ40を分注する。なお、磁性ビーズ40は、予め反応部11aに分注されていても良いし、磁性ビーズを分散した溶液を上述したノズル機構9の動作と同様にして、反応部11aに分注しても良い。また、図10に示した段階で生物学的試料を分注したが、生物学的試料は磁性ビーズ40とともに或いは順次この段階で分注されても良い。
ここで、磁性ビーズ40とは、例えば、バイオテクノロジーの分野で従来使用されている磁性体としての特徴を有するビーズであれば如何なる材質、形状及び粒径のものを使用することができる。また、試料処理装置において核酸抽出処理を実施する場合は、核酸吸着能を有する磁性ビーズ40を使用する。核酸吸着能は、磁性体からなるビーズの表面をシリカコーティングすることによって付与することができる。
この段階では、反応部11aにカオトロピック剤が存在するため、生物学的試料に含まれていた核酸成分がシリカコーティングされた磁性ビーズ40の表面に吸着する。また、この段階では、反応部11aの内部を撹拌しても良い。反応部11aの内部を撹拌するには、例えば、反応容器2の外部から磁界を周期的に印加することで磁性ビーズ40を内部で移動させる方法、又は、ノズル17にディスポーザブルチップ20や磁性体棒カバー25を取り付け、駆動制御装置10でノズル機構9を制御してノズル17に取り付けたディスポーザブルチップ20や磁性体棒カバー25を反応部11a内部で回転若しくは揺動させる方法を使用することができる。
次に、図12に示すように、反応容器2の空間部12へオイル41を分注する。ここで、41としては、通常の機械油、ミネラルオイル、シリコンオイル、フッ素系オイル等を使用することができる。ただし、核酸を抽出する観点からはミネラルオイルを使用することがより好ましい。なお、空間部12へのオイル41の分注は、上述した駆動制御装置10による制御でノズル機構9により溶液を分注する動作と同様にして行うことができる。ここで、オイル41は、反応部11a〜11dに分注した各種溶液の蒸発や液滴の飛散によるコンタミネーションを防止できる程度に反応部11a〜11dの上方に存在する空間部12に十分に分注される。なお、オイル41の分注量は、上述した各種溶液の分注量と比較して大であるため、より高容量のディスポーザブルチップを別途準備して使用しても良い。
次に、図13に示すように、磁性体棒21及び磁性体棒カバー25をノズル17に取り付け、反応部11a内の磁性ビーズ40を磁性体棒カバー25の先端部に捕捉する。この段階において、磁性体棒21及び磁性体棒カバー25をノズル17に取り付けるには、上述した駆動制御装置10でノズル機構9を制御してノズル17にディスポーザブルチップ20を取り付ける動作と同様である。また、磁性体棒カバー25は、磁性体棒21をノズル17の先端部18に取り付けた後、ノズル17の中途部19に取り付ける。また、この段階では、磁性体棒21及び磁性体棒カバー25の先端部を反応部11a内において回動、揺動若しくは上下動させることで、磁性体棒カバー25の先端部に磁性ビーズ40を確実に捕捉することができる。磁性体棒21及び磁性体棒カバー25の先端部を反応部11a内において回動、揺動若しくは上下動させるには、駆動制御装置10でノズル機構9を制御することで実施できる。
次に、図14に示すように、駆動制御装置10によってノズル機構9を駆動制御し、磁気ビーズ40を捕捉した状態で、磁性体棒21及び磁性体棒カバー25の先端部を反応部11aから反応部11b移動させる。このとき、磁性体棒21及び磁性体棒カバー25は、カバー着脱機構13に接触しないよう空間部12内部を移動することとなる。また、この段階で、磁気ビーズ40を捕捉した磁性体棒カバー25は、空間部に分注されたオイル41内部を移動することとなる。
反応部11aで磁性体棒カバー25の先端部に磁気ビーズ40を捕捉すると、磁性体棒カバー25の周面や凝集した磁性ビーズ40の間に核酸以外のタンパク質やその他不純物を含む溶液が付着することとなる。しかし、上述のように、磁気ビーズ40を捕捉した磁性体棒カバー25がオイル41内を移動することによって、磁性体棒カバー25の周面や凝集した磁性ビーズ40の間に存在する溶液を除去することができる。例えば、凝集した磁気ビーズ40の間に不純物を含む溶液が存在していたとしても、オイル41内を通過することによって当該溶液がオイル41に置換されることとなる。これにより、反応部11aに分注された溶液が反応部11bに持ち込まれることを防止することができる。
また、反応部11aから磁性体棒カバー25とともに先端に捕捉された磁性ビーズ40を抜き取る動作の際、空間部12にオイル41が分注されているため、液滴やミストの発生を防止できる。仮に、空間部12にオイル41が存在しない場合には、反応部11aから磁性体棒カバー25とともに先端に捕捉された磁性ビーズ40を抜き取る動作によって、反応部11aに分注された溶液の液滴やミストが生じてしまう。生じた液滴やミストは、隣接する反応部11bのみならず隣接する反応容器2にまで達してしまうこととなり、コンタミネーションの原因となってしまう。すなわち、空間部12にオイル41を分注しておくことで、コンタミネーションを確実に防止することができ、より正確な核酸抽出処理を実施することができる。
次に、図15に示すように、駆動制御装置10によってノズル機構9を駆動制御し、カバー着脱機構13を利用して、磁気ビーズ40を磁性体棒カバー25の先端部から取り外す。磁性ビーズ40を捕捉した状態で磁性体棒カバー25を反応部11bに挿入する工程から、磁気ビーズ40を磁性体棒カバー25の先端部から取り外す動作を図16(A)〜(D)に示す。
先ず、図16(A)に示すように、駆動制御装置10によってノズル機構9を駆動制御し、磁性体棒21及び磁性体棒カバー25を取り付けたノズル17の先端を反応部11b内部に挿入する(z軸の下方向)。次に、図16(B)に示すように、磁性体棒21及び磁性体棒カバー25を取り付けたノズル17の先端を反応部11b内部から引き上げる(z軸の上方向)。
次に、図16(c)に示すように、磁性体棒カバー25のフリンジ部26がカバー着脱機構13の上部押さえ板14及び下部押さえ板15の間に位置するまでノズル17を引き上げ、切り欠き部16に磁性体棒カバー25を嵌め込むように移動させる(y軸方向)。この移動により、磁性体棒カバー25のフリンジ部26は、上部押さえ板14及び下部押さえ板15の間に挿入されるとともに係止されることとなる。なお、切り欠き部16は、反応容器2を上方から見たときに反応部11a〜11dの開口部の内方に臨む位置に端面が位置するように形成されている。したがって、切り欠き部16に磁性体棒カバー25を嵌め込む動作において、磁性体棒カバー25の周面が反応部11bの側面に接触せず、安定して嵌め込むことができる。
次に、図16(d)に示すように、駆動制御装置10によってノズル機構9を駆動制御し、ノズル17を更に上方に引き上げる(z軸の上方向)。この引き上げ動作により、ノズル17に取り付けられた磁性体棒カバー25のフリンジ部26上面が上部押さえ板14により係止され、ノズル17から磁性体棒カバー25のみが離間することとなる。ノズル17に取り付けられた磁性体棒21は、ノズル17とともに上方に引き上げられるため、磁性体棒カバー25の先端に捕捉された磁性ビーズは先端から外れ、反応部11bの底面へと沈降していく(図15)。このように、カバー着脱機構13を使用することによって、上記磁性チップカバー25の先端部が反応部11a〜11dに挿入された状態で、ノズル17から磁性チップカバー25を取り外すとともに磁性チップカバー25を保持することができる。
以上のように、駆動制御装置10によってノズル機構9を駆動制御するだけで、反応部11a内の磁性ビーズ40を反応部11bへと移動させることができる。この動作では、反応部11aからの溶液の抜き取りといった工程が不要であり、非常に簡便に磁性ビーズ40を移動できる。
なお、図15に示した状態で、磁性ビーズ40は、反応部11bに分注された洗浄液により洗浄することができ、生物学的試料に由来するタンパク質等の不純物を磁性ビーズ40の表面から除去することができる。この段階で、洗浄効果をより高めるため反応部11b内部の洗浄液を撹拌しても良い。反応部11bの内部を撹拌するには、例えば、反応容器2の外部から磁界を周期的に印加することで磁性ビーズ40を内部で移動させる方法、又は、ノズル17に取り付けられた磁性体棒21を取り外した後、カバー着脱機構13に保持された磁性体棒カバー25をノズル17に再び装着し、磁性体棒カバー25を反応部11b内部で回転若しくは揺動させる方法を使用することができる。なお、磁性体棒カバー25をノズル17に取り付ける動作は、図16(A)〜(D)に示した一連の動作の逆の動作を実施すればよい。
次に、図17に示すように、反応部11bにて洗浄された磁性ビーズ40を再び磁性体棒カバー25の先端に捕捉する。この段階は、図13に示した段階と同様に、駆動制御装置10によってノズル機構9を駆動制御することで実施できる。
次に、磁性体棒カバー25の先端に捕捉した磁性ビーズ40を反応部11cにおいて2回目の洗浄を実施し(図示せず)、図18に示すように、磁性体棒カバー25の先端に捕捉された磁性ビーズ40を溶離液が分注された反応部11dへ移動させる。この段階は、図14に示した段階と同様に、駆動制御装置10によってノズル機構9を駆動制御することで実施できる。
次に、図19に示すように、駆動制御装置10によってノズル機構9を駆動制御し、カバー着脱機構13を利用して、磁気ビーズ40を磁性体棒カバー25の先端部から取り外す。この段階は、図15及び16に示した段階と同様に、駆動制御装置10によってノズル機構9を駆動制御することで実施できる。この段階では、磁性ビーズ40の表面に吸着した核酸成分を溶離液中に溶離させることができる。最後に、図20に示すように、溶離液中の磁性ビーズ40を、図17に示した段階と同様に、磁性ビーズ40を再び磁性体棒カバー25の先端に捕捉する。そして、駆動制御装置10による制御によりノズル機構9を廃棄物用容器8の上方に移動し、ノズル機構9又は廃棄物用容器8に取り付けられた取外し機構を作動させて、先端に磁性ビーズ40を捕捉した状態で磁性体棒カバー25及び磁性体棒21を廃棄する。
ところで、図9に示した試料処理装置を使用した場合も、図10〜図20で説明した動作と同様な動作によって核酸抽出処理を実施することができる。具体的には、図21及び22に示すように、磁性体棒カバー25の先端に捕捉した磁性ビーズ40を反応部11bに移動し、また反応部11bから反応部11cに移動させることができる。なお、図22に示すように、反応部11a〜11dは、楕円形状の開口端を有していても良い。反応部11a〜11dの開口端を楕円形状とすることで、ディスポーザブルチップ20や磁性体棒カバー25を装着したノズル17の動作がカバー保持部30と干渉することを確実に防止できる。
また、図23及び24に示すように、図9に示した試料処理装置を使用した場合も、カバー保持部30のカバー脱着機構13を利用して、磁性体棒カバー25の先端に捕捉された磁性ビーズを取り外すことができる。
以上で説明したように、試料処理装置を用いた核酸抽出方法では、一連の処理において所定の処理から次の処理へと磁性ビーズ40を移動させるが、核酸を吸着した磁性ビーズ40はオイル41内を通過している。これにより核酸抽出に使用したカオトロピック剤、界面活性剤、洗浄液に含まれるエタノールやイソプロパノール等の薬剤を持ち込むことなく、高精製度の核酸溶液を得ることができる。これら薬剤は、PCR法や、その後に続く各種酵素反応を阻害することが知られている。上述した方法では、従来の方法と比較してこれら薬剤を確実に除去できるため、得られた核酸溶液は、例えば、PCR法やその他酵素反応にそのまま使用することが可能となる。
また、試料処理装置を用いた核酸抽出方法では、磁性ビーズ40を磁性体棒カバー25の先端に捕捉して各反応部11a〜11dへと移動させている。チップを用いて磁性ビーズ40を溶液ごと吸引及び吐出することで磁性ビーズを移動させる従来の方法では、液体吸引ラインの途中の管内に磁性ビーズを完全に吸引できない場合があり、また管内から不要な溶液を吐出する際に磁性ビーズも一緒に吐出してしまう結果、磁性ビーズをロスしてしまうといった問題があった。しかし、上述した試料処理装置を用いた核酸抽出方法では、磁性ビーズ40のロスといった問題が生ずることなく、低コストな核酸抽出処理を実現することができる。
さらに、試料処理装置では、駆動制御装置10及びノズル機構9が、生物学的試料や洗浄液等の各種溶液を分注する機能と、磁性ビーズを各反応部11a〜11dへ移動させる機能とを併せ持っている。換言すれば、生物学的試料や洗浄液等の各種溶液を分注する機構と、磁性ビーズを各反応部11a〜11dへ移動させる機構とが同じ駆動系(駆動制御装置10及びノズル機構9)を利用している。したがって、試料処理装置は、装置構成が簡略化するとともに複数の駆動系が存在することによる動作阻害といった不都合を回避することができる。
なお、上述したような磁性ビーズがオイル41内を通過することに起因する優れた効果及び各種溶液を分注する機構と磁性ビーズを移動させる機構とが同じ駆動系とすることに起因する効果は、カバー着脱機構13を備える反応容器2を配置する試料処理装置、又はカバー着脱機構13を有する試料処理装置に限定されるものではない。すなわち、例えば図25及び26に示すように、磁性体棒21の代わりに電磁石棒45を使用して、電磁石棒カバー46の先端に磁性ビーズ40を捕捉するような試料処理装置であれば、カバー着脱機構13は不要となる。図25及び26に示す試料処理装置では、図示しないが、電磁石棒45に対する電力供給のON/OFFを制御する制御装置を備えている。図25及び26に示す試料処理装置では、当該制御装置が電磁石棒45に対する電力供給をONにすることで、電磁石棒カバー46の先端に磁性ビーズ40を捕捉できる。また、図25及び26に示す試料処理装置では、当該制御装置が電磁石棒45に対する電力供給をOFFにすることで、電磁石棒カバー46の先端に捕捉された磁性ビーズ40を取り外すことができる。
このような構成の試料処理装置でも、上述したように、磁性ビーズ40がオイル41内を通過して各反応部11a〜11dへ移動することとなる。したがって、このような構成の試料処理装置であっても、PCR法やその他酵素反応にそのまま使用できる高精製度な核酸溶液を調整できる。また、このような構成の試料処理装置であっても、磁性ビーズ40のロスを防止して低コストな核酸抽出処理を実現できる。さらに、このような構成の試料処理装置であっても、装置構成が簡略化するとともに複数の駆動系が存在することによる動作阻害といった不都合を回避できる。