JP5593289B2 - 交流雑音の除去方式及び装置 - Google Patents

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本発明は、交流雑音の除去方式及び装置に係り、特に、一過性のパルス状信号に混入する交流雑音を、適応フィルタにより有利に除去せしめ得る技術に関するものである。
従来から、商用交流電源や回転機械に起因する交流雑音(ハム若しくはハムノイズとも称される)は、微小信号の測定時に混入し、しばしば問題となっている。特に、脳波や心電、筋電等体表面に装着した電極から測定する生体電気信号の場合には、顕著である。中でも、網膜電位図(ERG)は、光刺激に対する網膜の活動電位を記録するものであり、視機能の客観的な指標とされているのであるが、応答電位が微弱であり、また商用交流電源の基本周波数(50Hz/60Hz)と十数個に及ぶ高調波をその周波数帯域に含むために、混入する交流雑音が大きな支障となる場合がある。
また、こうした交流雑音に代表されるような外来雑音は、体表面上、ほぼ同振幅、同位相(コモンモード)で現れることから、生体電気信号の測定では、通常、高い弁別比を持つ計装用作動増幅回路が用いられることとなる。しかし、各電極の装着インピーダンスの不均一性、生体内部の状態、測定環境によっては、正負入力に誘導される交流雑音の同相性が低くなり、それらの差分が増幅され、大きな雑音となって、残留する場合がある。そうした場合には、入念な皮膚の洗浄、周辺環境の改善が必要であるが、医療の現場では、時間的、空間的に、そうした対応を取ることが困難な場合も多い。
特に、角膜上に装着するコンタクトレンズ電極を用いる通常のERG検査では、麻酔薬の点眼等、付随する処置が多く、被検者、医師共に負担が大きいため、下瞼に装着する皮膚電極の可能性が検討されている。しかし、皮膚電極ではS/N比が悪く、局所ERG検査等の臨床には適さないとされてきた。もし、交流雑音を十分に除去できる方法が利用できるならば、これまで角膜への影響から困難であった、手術直後の患者や小児に対して、皮膚電極によってERG検査が可能となるのである。
こうした交流雑音除去のために、一般的に用いられるのは、ノッチフィルタであるが、これは、特定の周波数成分を除去する一方で、正確な記録の望まれる信号(以下、記録対象信号という)も歪ませてしまうために、ERG検査では用いるべきではないとされている。
また、交流雑音の周波数や振幅も、一定ではなく、揺らいでいるために、そうした変化に追従する必要がある。信号測定毎に、混入する交流雑音の周波数、位相、振幅等を推定して、これを差し引く方式として、これまで、アナログ回路による方法や、短時間の測定データに対する正弦波モデルの非線形最適化法による当てはめ法が提案されたが、実時間性や高次高調波への対処等の点で、問題を有するものであった。医師が、被検眼の応答を確認しつつ検査を進めていくERG検査においては、実時間で雑音が除去されることが望ましいのである。
ところで、非特許文献1、2に示されるLMS(Least Mean Square)や、非特許文献3に示されるRLS(Recursive Least Square)等のアルゴリズムにより駆動される適応フィルタは、そうした要請に答えられる可能性を持つ方式であるが、これまで、ERGのように、一定の時間急峻に変化し、その後は0に落ち着いていく一過性の信号(パルス状信号)に対する測定における効果に関しては、未だ、詳細な検討がなされて来ていない。
なお、本発明者は、先に、特許文献1において、適応フィルタを利用した生体電気信号中の交流電源雑音の除去方式並びに装置を提案した。そこでは、純粋なハムのみの信号を商用交流電源から直接に取得して、これを整形した上で加工せしめ、ハムに係る参照信号として用い、その参照信号におけるハムの振幅及び位相が、ハムの混入した生体電気信号より加工して得られた主入力信号におけるハムの振幅と位相に一致するように、かかる参照信号を加工し、そして主入力信号より、その加工された参照信号を差し引くことによって、ハムの除去を行なうようにしたものであって、これにより、適応的でリアルタイム性を有し、生体電気信号に極力影響を与えることのないハム除去方式及び装置を提供し得たのであるが、これによっても、除去し得ないハム成分が存在し、特に、同期加算平均回数が多くなるに従って、適応フィルタを用いない場合よりも、誤差が大きくなってしまう危険性があることが、明らかとなった。
特開2011−72725号公報
B. Widrow, J.R. Glover Jr., J.M. McCool, J. Kaunitz, C.S. Williams, R.H. Hearn, J.R. Zeidler, E. Dong Jr. and R.C. Goodlin, "Adaptive noise cancelling: principles and applications," Proc.IEEE, vol.63, pp.1692-1716, 1975. J.R. Glover Jr., "Adaptive noise canceling applied to sinusoidal interferences," IEEE Trans. Acoust., Speech & Signal Process., vol.25, no.6, pp.484-491, 1977. 鈴木他訳,S. Heikin 著, 適応フィルタ理論, 科学技術出版, 2000.
ここにおいて、本発明者は、上記した事情を背景にして、適応フィルタを用いた交流雑音の除去方式について種々検討した結果、適応フィルタのアルゴリズムとして、LMSやRLSを含む一般的な枠組みである、逐次的な最小二乗法による適応フィルタを対象として、これによって、記録対象信号に加わった交流雑音を除去する場合に、その記録対象信号自体の存在を打ち消そうとする成分が生じることを見出し、更に、かかる記録対象信号がパルス状信号である場合には、それを打ち消そうとする成分が交流雑音と同様の明確な振動成分となって表れ、そして、その振動成分は、同期加算平均処理では減少させられないという深刻な問題が生ずることを、見出した。ここで、かかる振動成分を自己除去成分と称することとする。
そして、そのような問題に対して、パルス状信号が持続していると考えられる区間においては、適応フィルタのフィルタ係数を更新しないマスク処理によって、上記した自己除去成分を発生させない交流雑音除去を実現し得ることを見出し、本発明を完成するに至ったのである。
従って、本発明の解決課題とするところは、パルス状信号が適応フィルタに入力された場合に、その信号自体の存在を打ち消そうとする振動成分である自己除去成分の発生を、有利に抑えることの出来る、交流雑音の除去方式及び装置を提供することにある。
そして、本発明にあっては、上記した課題を解決するために、一過性のパルス状信号を含む主入力信号に混入する交流雑音信号を、入力される信号の性質に依存して逐次適応的にフィルタ係数を変化させながら線形フィルタリング処理する適応フィルタにて除去せしめるに際し、前記パルス状信号の持続する間は、前記適応フィルタのフィルタ係数を規定する、前記交流雑音信号の自己相関及び前記主入力信号と該交流雑音信号との相互相関の更新を行なわずに、該フィルタ係数が、かかる更新停止直前の値に固定されるようにして、前記適応フィルタの動作を継続することにより、前記主入力信号から前記交流雑音信号を除去するようにしたことを特徴とする交流雑音の除去方式を、その要旨とするものである。
なお、そのような本発明に従う交流雑音の除去方式においては、前記パルス状信号の持続する間としては、例えばERGの測定においては、前記パルス状信号の発生時点から200〜300msec経過するまでの間が、有利に採用されることとなる。
また、本発明にあっては、上述の如き交流雑音の除去方式が有利に実現されるために、(a)一過性のパルス状信号に交流雑音信号が混入した電気信号を取り出して加工し、デジタル化して、主入力信号として出力する主入力信号加工部と、(b)交流雑音発生源から信号を取得して加工し、デジタル化して、交流雑音信号に係る参照信号として出力する参照信号作成部と、(c)かかる参照信号の自己相関及び前記主入力信号と該参照信号との相互相関にて規定されるフィルタ係数を、入力信号の性質に依存して逐次適応的に変化させながら、前記参照信号作成部から出力された参照信号を線形フィルタリング処理する適応フィルタ部と、(d)前記パルス状信号の発生から、それが持続している間、該適応フィルタ部における前記自己相関と相互相関の更新を停止せしめて、前記フィルタ係数が、該更新停止直前の値に固定されるようにして、前記適応フィルタ部の動作が継続されるようにするマスク信号を出力するマスク信号出力部と、(e)前記主入力信号加工部より出力される主入力信号から、前記適応フィルタ部において該マスク信号に基づいて線形フィルタリング処理された参照信号を差し引き、前記混入した交流雑音が除去された電気信号を出力する加減演算部とを、有することを特徴とする交流雑音の除去装置をも、その要旨とするものである。
そして、そのような交流雑音の除去装置においては、有利には、前記電気信号は、生体に装着された電極より取り出される、商用交流電源に起因する雑音の混入した微弱電位からなる生体電気信号であり、前記交流雑音発生源は、商用交流電源である。
さらに、そのような本発明に従う交流雑音の除去装置の好ましい一つの態様によれば、前記一過性のパルス状信号は、ERG測定におけるフラッシュ光照射にて生じた網膜の活動電位であり、また他の好ましい態様によれば、前記マスク信号出力部は、前記パルス状信号の発生の情報を直接的に又は間接的に取得して、前記マスク信号を出力するように構成されている。
このような本発明に従う交流雑音の除去方式及び装置によれば、交流雑音を適応フィルタによって除去するに際して、目的とする記録対象信号であるパルス状信号が持続する区間では、適応フィルタの相関及びフィルタ係数を更新しないマスク処理が施されているところから、かかるパルス状信号に基づくところの自己除去成分の発生を抑え、主入力信号から交流雑音信号と共に、自己除去成分も効果的に取り除き、より正確なパルス状信号を取り出し得ることとなるのである。
適応フィルタを用いた雑音除去の概念を示すブロック説明図である。 適応フィルタによるパルス状信号の交流雑音除去シミュレーション例を示す波形図である。 同期加算平均回数に対する各種雑音除去方式における誤差を示す図である。 各種雑音除去方式を用いて得られた主入力信号のパワースペクトルの対比図である。 本発明に従う交流雑音の除去方式の構成の一例を概念的に示すブロック図である。 本発明を実際のERG測定に適用して得られる波形を示す図である。 本発明を実際のERG測定に適用して得られる各信号のスペクトルを示す図である。
以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、適応フィルタを用いた交流雑音の除去に際して惹起される問題とその解消策について、図面を参照しつつ、詳細に説明することとする。
先ず、適応フィルタによる交流雑音除去とその問題について検討するに、除去対象とされる交流雑音u(k)を、ある長さ以下の時間区間では、周波数や振幅を定数とみなせるとして、下記式(1)の如く定義する。
Figure 0005593289
そこで、f0 (Hz)は交流雑音の基本周波数であり、mは高調波の数である。また、u(k)を含め、以下で取り扱う信号は、fS (Hz)でサンプリングされ、離散時刻
Figure 0005593289
を持つものとする。
そして、適切なアナログ処理により、エリアシングが生じていないものとすれば、m≦[fS /2f0 ]−1である。また、Ai 、φi は、それぞれi番目の高調波の振幅と位相であり、0≦Ai 、−π≦φi <πとする。
一方、記録対象信号をs(k)とし、これに振幅や位相の変化した交流雑音
Figure 0005593289
が加わったものが、測定信号
Figure 0005593289
であると考える。
そこにおいて、交流雑音の除去は、上記式(3)の右辺第二項を0とすることである。また、参照信号として、上記式(1)で与えられる信号が得られているものとする。これに対して、時刻kに依存するフィルタ係数
Figure 0005593289
を持つ、q次のFIRフィルタをかけることで
Figure 0005593289
とした上で、測定信号として与えられる主入力信号d(k)から、上記のフィルタ出力y(k)を差し引いた残差
Figure 0005593289
を求める。そして、jを虚数単位とし、
Figure 0005593289
の離散フーリエ変換(周波数伝達関数)
Figure 0005593289
が、全ての
Figure 0005593289
に関して、下記の関係
Figure 0005593289
を満たすならば、
Figure 0005593289
とすることが出来、残差信号は記録対象信号のみとなり、交流雑音を完全に除去することが出来る。
そのためには、正弦波一つに対して、二つの係数が必要であるため、先ず、フィルタの次数qが
Figure 0005593289
である必要があり、更に前記式(7)が成立するように、フィルタ係数の値を決定する必要がある。なお、入力される信号の性質に依存して逐次適応的にフィルタ係数を変化させながら処理を行なうシステムは、一般に、適応フィルタと呼ばれており、これを用いた雑音除去の概念が、図1に示されている。その図1において、遅延素子2と乗算器4と加算器6とから、非再帰形デジタルフィルタが構成され、所定の適応アルゴリズム10によって、乗算器4が制御されるようになっている一方、その出力y(k)が、主入力信号d(k)に対して、演算器8にて加減算され、その結果、e(k)が出力されるようになっている。
そして、そのような適応フィルタにおける逐次的な最小二乗法に基づく係数決定は、以下の如くして行なわれることとなるのである。
先ず、nac(k)とy(k)とは、何れも、参照信号u(k)を線形フィルタリングしたものであるから、
Figure 0005593289
とおけば、上記の式(3)及び式(5)から、
Figure 0005593289
と書くことが出来る。ここで、過去に対して減少する重み
Figure 0005593289
を用いて、現時刻までの誤差の二乗和
Figure 0005593289
を考えることとする。そこで、w(i)は解析窓であり、その実効的な長さは、フィルタの適応時間に相当する。かかる式(12)の右辺第三項が十分に小さいと、即ち参照信号u(k)の線形フィルタリングされた信号であるv(k)と、記録対象信号s(k)との相関が、無視出来るとすれば、
Figure 0005593289
と書くことが出来る。そして、その右辺の第一項は、フィルタ係数には依存しないので、左辺の量を最小化すれば、結果的に、前記式(8)を期待することが出来る。そこで、各FIRフィルタ係数で、上記のJ(k)を偏微分して、
Figure 0005593289
とすることで、それら係数は、次式(15)のように、逐次的に求解することが出来るのである。
Figure 0005593289
ここで、Rk はu(k)の自己相関
Figure 0005593289

Figure 0005593289
の要素に持つ、次数q+1の対象行列である。また、フィルタ係数hk 及び主入力信号と参照信号の相互相関zk は、それぞれ、
Figure 0005593289
Figure 0005593289
Figure 0005593289
である。ただし、(・)t は転置を表している。
また、そこで、上記式(15)の右辺の行列、ベクトルの各要素の無限和は、インパルス応答がw(k)であるフィルタに、d(k)及びu(k)から作られる系列を入力した場合の出力を与える畳み込み演算であるため、実際には、有限の操作で実行することが出来る。
例えば、
Figure 0005593289
を考えると、指数的に過去の影響を減少させられるが、この場合、前記式(16)の
Figure 0005593289
前記式(19)の
Figure 0005593289
は、それぞれ
Figure 0005593289
Figure 0005593289
のように、一次のIIRフィルタで容易に実現することが出来る。
そして、w(i)として、前記式(20)を用い、更に逆行列定理を適用することで効率化したものが、前記非特許文献3に示されるRLSアルゴリズムである。なお、上記において、λは忘却係数と呼ばれている。また、
Figure 0005593289
Figure 0005593289
とした上で、最急勾配に基づき、ステップサイズパラメータを導入することで、前記非特許文献1、2に示されるLMSアルゴリズムが導かれるのである。なお、ここでは、適応アルゴリズムの基本的な性質を論ずるため、w(i)として、前記式(20)を持つ更新式(15)を取り扱うこととするが、これは、RLSアルゴリズムと等価である。
ところで、上記では、u(k)とs(k)が無相関であるという仮定を用いれば、誤差の二乗和を最小化することで、交流雑音を除去することが出来ることを指摘したが、実際には、適応性を確保するため、w(i)は無限長ではなく、有限長若しくは急減少のものが用いられ、これによって、参照側から主入力側へのクロストークが存在せず、本来無相関であるにも関わらず、s(k)の中にu(k)の成分が観測され、その除去成分が生成されることにより、問題が生じると考えられる。ここでは、先ず、そうした問題が、パルス状信号に混入する交流雑音の除去において、実際に生じている数値シミュレーション例を示し、理論的に考察することとする。
そこで、サンプリング周波数fS =1253Hzとし、指数的な重みと正弦波を組み合わせることによって、パルス状信号をs(k)として、図2の(a)のように数値的に構成した(図中、真正信号)。これに対して、図2の(b)に示すように、基本周波数50Hzの正弦波及びその高調波を含む交流雑音を加え、主入力信号d(k)を構成した(図中、主入力信号)。また、600Hzまでの全ての高調波成分を等しく持つ(m=11)参照信号u(k)も、構成している。
そして、上記のd(k)及びu(k)を入力とし、w(i)として、前記式(20)で表される指数窓(λ=0.996)を持ち、前記式(15)で与えられる適応フィルタ[図中、ADF for (b)]によって、交流雑音を除去した結果が、図2の(c)である。フィルタ次数は、前記式(9)に従って、q=23とした。なお、パルス状信号が始まるまでに、フィルタを適応させるための十分な期間が設定されている。
かかる図2に示される波形から明らかなように、大振幅の交流雑音は除去されており、その効果は大きいと考えられるが、パルス状信号の後半において、小振幅の振動成分が認められるのである。これは、交流雑音が大き過ぎることによる残留成分であるとも考えられるが、図2の(a)の波形に、交流雑音を加えないで、適応フィルタ[図中、ADF for (a)]を作用させた結果、(d)にも、全く同様の振動が認められることから、これが交流雑音の残留でないことが理解される。適応フィルタによる交流雑音除去を行なうことで、逆に交流雑音を付加してしまう結果となっているのである。
以下、かかる振動成分について理論的に検討するが、簡単のため、前記式(1)の参照信号u(k)はm=0とし、基本周波数成分のみとして、次式(25)で与えられるものとする。
Figure 0005593289
ここで、f=2π(f0 /fS )であり、
Figure 0005593289
とする。また、図2の(d)の場合を想定し、s(k)のみの影響を考察するため、
Figure 0005593289
とし、交流雑音のない状況を考える。この場合、フィルタの次数に関する条件式(9)から、q=1のFIRフィルタを用いればよい。このとき、λが十分に1に近いものとすると、フィルタ出力である前記式(4)は、
Figure 0005593289
によって、近似されることとなる。
かかる式(27)は
Figure 0005593289
をインパルス応答として持つ定係数線形フィルタの出力である。この式(28)は、指数関数的に振幅の減少する余弦波であり、(1−λ)が乗じられていることから、λが1に近い程、即ち、フィルタの適応時間が長くなる程、振幅は小さくなるが、応答時間は長くなる。従って、測定信号d(k)中の交流雑音nac(k)が0であっても、s(k)として、ERGのようなパルス状信号が与えられた場合、交流雑音周波数を持つ減衰振動波形が残差e(k)に加わる結果となる。また、前記式(27)が畳み込みであることから、パルス状信号が加えられた場合、参照信号中の交流雑音の位相に関わらず、信号開始時点を起点として位相の固定された余弦波が減算されるため、この成分は、同期加算平均処理では、原理的に減少させることが出来ない。このことは、加算回数を増やした場合、適応フィルタにより交流雑音除去処理を行う場合の方が、誤差が増大する危険性があることを意味している。ここでは、前記式(27)が、s(k)自身の存在により引き起こされたものであることから、これが自己除去成分となることとなる。
なお、s(k)からe(k)への伝達関数G(z)は、
Figure 0005593289
をそれぞれ
Figure 0005593289
のZ変換とすると、
Figure 0005593289
となる。これはノッチフィルタであることを意味している。
そして、前記式(27)で表される自己除去成分は、λが1に近い程、即ち適応時間が長い程、小さい。しかし、交流雑音の周波数には揺らぎがあり、また実際のERG検査では、被検者の瞬目や眼球運動等により、電極の装着状態が変化することに加えて、検査の迅速化等も考慮すると、適応時間を数秒から十数秒程度に設定する必要があり、そうした状況下では、自己除去成分が無視できない大きさになると考えられる。
かかる自己除去成分は、s(k)が急峻に変化する区間で、前記式(15)の各相関を更新するために発生するものであり、もし、そうした区間の長さが交流雑音の特性変化の度合いから見て十分に短く、パルス状信号の開始直前までは、d(k)の主成分が、nac(k)であり、交流雑音の理想的に除去できるフィルタ係数となっている状況であるとするなら、その区間では、相関の更新を行なわないようにすれば、自己除去成分の発生を抑えることが出来ることとなる。
そこで、本発明では、パルス状信号の持続する間、フィルタの動作は継続するが、相関の更新を行なわない、従ってフィルタ係数の更新を行なわないマスク処理を施して、交流雑音の除去動作を実行するようにしたのである。
すなわち、マスク長をMとし、パルス状信号の開始時刻が{τ1 、τ2 、・・・、τNp}であり、各時刻の間隔は、Mに比べて十分大きいものとし、そしてマスク区間内、即ち、τi ≦k≦τi +Mとなるiが存在するようなkにおいては、前記式(15)の
Figure 0005593289

Figure 0005593289
Figure 0005593289
として更新せず、従ってフィルタ係数hk の更新も行なわないこととし、マスク区間外ならば、それぞれ、前記式(21)及び式(22)に従い、更新することとしたのである。換言すれば、パルス状信号の持続する間は、適応フィルタのフィルタ係数を規定する交流雑音信号である参照信号の自己相関及び主入力信号と参照信号との相互相関の更新を行なわずに、フィルタ係数が、かかる更新停止直前の値に固定乃至保持されるようにして、適応フィルタの動作を継続することにより、主入力信号から参照信号(交流雑音信号)を除去するようにしたのである。具体的には、図1に示される如き方式において、その適応アルゴリズム10にマスク信号を入力して、相関の更新、更にはフィルタ係数の更新をせずに、フィルタ動作を進行せしめるようにしたのである。なお、このマスク処理は、LMS、RLSアルゴリズムにおいても同様に定義することが出来る。
このように、本発明にあっては、適応フィルタに対してマスク処理を施すことにより、自己除去成分を有利に減少せしめるものであるが、その事実を、以下に、数値例により示すこととする。先ず、図2の場合と同様に、f0 =50Hz、fS =1253Hzである環境を想定する。このとき、高調波数はm=11であり、参照信号として、式(1)の各パラメータが、A0 、・・・A11=1、θ0 、・・・θ11=0で与えるものを構成する。また、図2の(a)に示した、交流雑音が加わっていないパルス状信号を、pls(k)とし、その開始時刻は、488〜512msecの範囲の一様乱数に従う間隔で、ランダムに与えるものとする。即ち、s(k)として、時刻
Figure 0005593289
から始まるpls(k−τi )の列
Figure 0005593289
を与える。前記式(2)の余弦波の各振幅をG0 =0.33、G1 ・・・G3 =0.06、G4 ・・・G6 =0.03、G7 ・・・G9 =0.012、G10=G11=0.003とし、位相θi は(−π、π)でランダムに与え、nac(k)を構成し、更に測定時の回路雑音等の不規則雑音を想定して、標準偏差σ=0.0005の正規白色雑音を加えて、主入力信号d(k)とする。
ここで、交流雑音除去の評価として、雑音除去後のe(k)に対し、各刺激時点τi から500msec分
Figure 0005593289
を切り出し、これによって、同期加算平均
Figure 0005593289
を行なった上で、誤差
Figure 0005593289
を求め、比較する。
図3には、同期加算平均回数(対数表示)に対する各方法での誤差(対数表示)が、示されている。そこで、(a)は、適応フィルタによる交流雑音除去を行なわない、同期加算平均のみ(図中、単純平均)の結果である。そこでは、加算する交流雑音の位相がランダムであるため、誤差のグラフは振動的であるが、加算回数が増加すると共に減少している。
また、図3の(b)、(c)及び(d)は、何れも、前記式(15)及び(20)を用いた適応フィルタ(q=23)(図中、ADF)によって交流雑音を除去した後の信号に対して、同期加算平均を行なった場合の誤差であり、λの値がそれぞれ0.996、0.999、0.9996で、何れも、マスク処理を行なっていないものである。そこで、加算回数が少ない場合では、適応フィルタを用いていない(a)に比べて、誤差は小さいが、(b)では数回、(c)では数10回、(d)では100回程度で、逆転或いは同等程度になってしまうことが認められる。
また、加算回数が増加しても、全く変化しないことが判る。これは、自己除去成分の大きさが、パルス状信号及びλの大きさのみに依存し、交流雑音には関係ないことを意味している。
そして、λを1に近づければ、自己除去成分による誤差は減少するが、応用分野によって、種々の制限がある。例えば、このサンプリング周波数でλ=0.9996では、過去の影響が1%以下になるような適応時間が約9秒であり、実際のERG検査では、先述せるように、この程度より長い適応時間を設定するのは好ましくないのである。
一方、λ=0.996とし、200msecのマスク処理(図中、ADF+マスク)を施したものが(e)であり、(a)に比して、全ての加算回数で誤差は極めて小さく、その効果は明らかである。
なお、図3における(f)は、(e)と同じ条件で、d(k)に加える正規白色雑音の標準偏差のみをσ=0.01とした場合の誤差の変化である。同期加算平均回数の増大と共に、直線的に誤差が減少していることが認められる。
さらに、同期加算平均回数を1とした(平均を行なわない)場合の各方法について、周波数軸上で交流雑音除去の効果を確認するならば、図4に示される通りとなる。なお、そこでは、効果を判り易くするため、先の数値シミュレーションで与えた主入力信号d(k)において、不規則雑音は加えないものとした。かかる図4の(a)は、適応フィルタを用いない場合のd(k)のパワースペクトルである。そこでは、パルス状信号の本来の周波数成分である緩やかな分布の上に、交流雑音成分を示す12本の鋭いピークが加わっていることが判る。この信号に対して、マスク処理を行わない適応フィルタ(λ=0.996、q=23)で、交流雑音除去処理を行なった場合のスペクトル(b)には、交流雑音周波数で、自己除去成分がノッチとして現れていることが確認される。一方、(c)は、本発明に従うマスク処理が施されてなる、同じλ、qを持つ適応フィルタによる除去結果のスペクトルであって、そこには、ノッチやピークは認められない。
そして、かくの如き適応フィルタのマスク処理を実行する、本発明に従う交流雑音の除去装置の一例に係るブロック図が、図5に示されている。なお、そこにおいて、検知情報は、生体に装着された電極から取り出される検知信号とし、また参照信号は、商用交流電源から取り出されるものとする。
かかる図5において、生体に装着された電極からの検知信号である検知情報は、商用交流電源に起因する雑音の混入した、微弱電位からなる生体電気信号(一過性のパルス状信号)であって、それを適切に増幅する前置増幅器12と、かかる前置増幅器12の出力のうち、有害な高周波成分を除去する低域通過フィルタ14と、デジタル信号に変換するためのA/D変換器16を通じて加工され、デジタル化されて、主入力信号d(k)として出力せしめられるようになっている。従って、ここでは、それら前置増幅器12と低域通過フィルタ14とA/D変換器16とによって、主入力信号加工部が構成されている。
また、電源コンセント等から、プローブとしてプラグを用いて、直接に商用交流電源信号が取得されるようになっており、その取得された商用交流電源信号は、必要に応じて、所要の高周波成分を十分に含む信号にすべく整形を行なう参照信号成形部を通じて処理された後、有害な高周波成分を除去する低域通過フィルタ20を通り、更に、A/D変換器22によりデジタル信号とされて、交流電源雑音(ハム)に係る参照信号u(k)として、出力せしめられるようになっている。なお、ここでは、それら低域通過フィルタ20とA/D変換器22とによって、参照信号作成部が構成されている。
さらに、かかる参照信号作成部から出力された参照信号u(k)は、デジタルフィルタ24において、RLSやLMSの如き適応アルゴリズム26に従って線形フィルタリング処理されて、フィルタ出力y(k)として出力され、そして、このフィルタ出力y(k)にて、主入力信号d(k)が、演算器18において減算されるようになっている。従って、ここでは、デジタルフィルタ24と適応アルゴリズム26にて、適応フィルタ部が構成されているのである。
そして、そのような適応フィルタ部における相関及びフィルタ係数の更新が、パルス状信号の持続する間は行なわれないようにして、フィルタ係数hk が変更停止直前の一定の値となるようにされて、フィルタ動作が継続され得るように、マスク信号出力部30が設けられている。このマスク信号出力部30には、パルス状信号の発生の情報が直接的に又は間接的に入力され、それに基づいて、パルス状信号の持続する間、例えば、パルス状信号の発生時点から200〜300msec程度経過するまでの間、適応フィルタ部における相関の更新を停止せしめ、それによって、フィルタ係数の更新も停止させて、その更新停止直前のフィルタ係数にて、適応フィルタ部における線形フィルタリング処理が進行せしめられ、以て、デジタルフィルタ24からのフィルタ出力y(k)における自己除去成分の影響が回避され得るようになっている。
なお、演算器18において、主入力信号d(k)から、自己除去成分の影響のない、デジタルフィルタ24からのフィルタ出力y(k)を減算することによって、目的とする混入交流電源雑音が除去された、正確な生体電気信号[e(k)]が得られ、それが、従来と同様な記録・表示装置において、適宜に記録・表示されることとなるのである。
このように、本発明に従う交流雑音の除去装置は、主入力信号加工部(12、14、16)と参照信号作成部(20、22)と、適応フィルタ部(24、26)と、マスク信号出力部(30)と、加減演算部(18)とから構成され、それによって、一過性のパルス状信号に混入する交流雑音を、適応フィルタによって除去するに際して、自己除去成分の発生を効果的に抑制せしめて、より正確な生体電気信号等の目的とする検出信号を、有利に得ることが出来ることとなったのである。
ところで、かくの如きマスク処理を有する適応フィルタを用いた交流雑音の除去処理が、実際のフラッシュ光刺激に対するERGの測定検査に対して、有効に機能することは、以下の検討結果からしても、明らかなところである。
一般に、暗順応下におけるフラッシュ光ERGは、光刺激の後,数msecから負方向への急峻な電位変化(a波)の後、正方向への比較的緩やかな変化(b波)と、それらに重なるように4から6個の小振幅の波(律動様小波)が存在するパルス状信号であることは、よく知られているところである。そして、それぞれの成分の大きさは、フラッシュ光刺激の強度によって種々変化するが、全体での持続時間は、概ね200〜300msec程度である。更に、振幅は、角膜上で数百μVp-p 以下であり、下瞼皮膚では、更にその数分の1以下である。
このように、ERG検査において、対象となる信号は微弱な電位である上に、商用交流電源に起因する交流雑音の他、脳波や筋電、心電といった、他の生体信号も雑音として測定値に加わるようになるため、通常、ERGでは、複数回のフラッシュ光刺激に対する同期加算平均処理が行なわれることとなるが、ここでは、単発のERGに関して、マスクの効果を確認することとする。
先ず、図6の(a)は、交流雑音(基本周波数60Hz)が大きく混入する環境下において、50代男性の角膜にコンタクトレンズ電極を装着し、暗順応下での強いフラッシュ光刺激(時刻0msec)に対する応答電位を測定したもの(図中、測定信号)である。測定においては、−80dB/Octのローパスフィルタ(カットオフ周波数500Hz)をかけた後、サンプリング周波数fS =1253Hzで記録された。振幅の大きな交流雑音に埋もれて、ERGは確認出来ないことがわかる。図7(a)に、このERG応答区間を含む16384点(約13秒間)を切り出した信号のスペクトル(ピリオドグラム)が示されているが、そのスペクトル上、交流雑音は、60Hzとその奇数倍の周波数に鋭いライン状の成分として顕著に現れていることが認められる。これを、主入力信号d(k)とする。
また、商用交流電源から直接取得した信号に対し、負から正へのゼロクロス点でアナログ的に短いパルスとし、直流分を除去した上で、主入力信号と同じ特性のローパスフィルタをかけた後、サンプリングし、参照信号u(k)とした。図7の(b)は、そのスペクトルである。そこでは、若干折り返しのピークが認められるが、基本周波数及び高調波の成分は、回路ノイズの連続スペクトルの上部から70dB以上の振幅があり、ほぼ均等である。
そして、それらd(k)とu(k)に対して、前記式(15)及び(20)を用いた適応フィルタ(q=21、λ=0.996)によって交流雑音を除去した結果が、図6の(b)に示されている。そこでは、ERGの特徴であるa波、b波及び律動様小波が確認できる程、交流雑音は除かれているが、また、そこには、応答の後も長く続く振動成分の存在も認めることが出来る。この振動成分が、ERGの一部であるのか、或いは他の雑音であるのか、このままでは、判別が困難である。この信号のスペクトルが、図7の(c)であるが、そこでは、60Hzと120Hzにノッチが認められるため、その振動成分は、ERGの存在に起因する自己除去成分であると考えられる。このERGの例においては、急峻な変化の続く区間は、フラッシュ光刺激から200msecで、ほぼ収まっており、その間に交流雑音の特性が変化するとは考え難いからである。
そこで、ここでは、フラッシュ光刺激パルス時点から200msecまでの時間をマスク区間として持つ適応フィルタ(λ=0.996)で、交流雑音の除去を試みて得られた結果が、図6(c)に示されている。そして、そこでは、図6の(b)にあった振動成分はなくなっていることが、認められるのである。更に、この点を明確にするために、図6の(d)として、(b)の信号から(c)を差し引いた信号が示されている。かかる(d)には、ERGが始まる時点から基本周波数60Hzの振動が抽出されており、これが、本発明で対象とされるマスク処理によって分離除去された自己除去成分となるものである。また、マスク処理を施した結果の信号[図6(c)]のスペクトルが、図7の(c)に示されているが、そのスペクトル上でも、ノッチは認められない。これを更に明確にするために、スペクトル上でも(c)から(d)を差し引き、(e)として、図7に示すが、そこには、180Hz以上の高調波上でも、(c)のスペクトルには、ノッチが存在していた事を確認することが出来、自己除去成分が効果的に除かれていることを認めることが出来るのである。
以上、本発明について具体的に説明してきたが、その説明のために用いられた形態は、あくまでも、例示に過ぎないものであって、本発明が、そのような例示の形態に係る具体的な記述によって、何等限定的に解釈されるものでは決してないことが、理解されるべきである。
例えば、図5に例示のブロック図においては、演算器18からの出力e(k)が、適応アルゴリズム26にも入力されるようになっていることにより、マスク信号出力部30からのマスク信号の入力によって自己相関及び相互相関の更新を停止せしめ、以てフィルタ係数の更新を停止せしめるに際して、主入力信号d(k)と参照信号u(k)との相互相関が行なわれ得るようになっているが、そのような演算器18からの出力e(k)に代えて、演算器18に入力される前の主入力信号d(k)を、直接に、適応アルゴリズム26に入力せしめて、適応フィルタ部の相互相関の更新に用いるようにすることも、勿論、可能である。
また、本発明は、図5に示される如きブロック図にて構成される装置の他にも、一過性のパルス状信号に混入する交流雑音を適応フィルタによって除去する装置の何れにも、適用することが出来、例えば、先に特許文献1として指摘した特開2011−72725号公報に開示の生体電気信号中の交流電源雑音の除去方式並びに装置にも、有利に適用することが可能である。そこでは、ハム周波数推定/振幅比・位相差検出部と振幅位相変更情報生成部と振幅位相変更部とから、適応フィルタ部が構成されているところから、この適応フィルタ部に対して、マスク信号出力部(30)から出力されたマスク信号が入力せしめられて、本発明に従う、自己除去成分の混入を阻止した交流雑音除去を行なうことが可能である。
さらに、マスク信号の出力のために、マスク信号出力部30に入力せしめられる一過性のパルス状信号発生情報は、例示のERG測定の如く、ERG信号を発生せしめるフラッシュ光刺激のパルスをトリガとして利用する、パルス状信号の発生の情報を間接的に取得する手法の他、発生したパルス状信号を、そのまま、トリガとして利用して、パルス状信号の発生情報を直接的に取得する手法も、採用可能である。
加えて、上記では、本発明に従うマスク処理の適用例として、ERGが用いられているのであるが、その他にも、各種の分野における適応フィルタを用いた交流雑音の除去に適用することが可能である。例えば、誘発脳波の解析や、伝送系等のインパルス応答の測定においての適用が可能であり、また、情報機器のディスプレイやポンプ類等の回転機械に起因する交流雑音の除去にも、本発明を適用することが可能である。
なお、上記の説明において、文章中のアルファベット記号と数式中のアルファベット記号とが、異なる書体にて示されており、前者が主としてローマン体にて示される一方、後者がイタリック体にて示されているが、本明細書では、それらは、同一の意味において用いられているものと、認識されたい。
その他、一々列挙はしないが、本発明は、当業者の知識に基づいて、種々なる変更、修正、改良等を加えた態様において実施され得るものであり、そして、そのような実施態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、何れも、本発明の範疇に属するものであることは、言うまでもないところである。
2 遅延素子 4 乗算器
6 加算器 8 演算器
12 前置増幅器 14 低域通過フィルタ
16 A/D変換器 18 演算器
20 低域通過フィルタ 22 A/D変換器
24 デジタルフィルタ 26 適応アルゴリズム
30 マスク信号出力部

Claims (6)

  1. 一過性のパルス状信号を含む主入力信号に混入する交流雑音信号を、入力される信号の性質に依存して逐次適応的にフィルタ係数を変化させながら線形フィルタリング処理する適応フィルタにて除去せしめるに際し、
    前記パルス状信号の持続する間は、前記適応フィルタのフィルタ係数を規定する、前記交流雑音信号の自己相関及び前記主入力信号と該交流雑音信号との相互相関の更新を行なわずに、該フィルタ係数が、かかる更新停止直前の値に固定されるようにして、前記適応フィルタの動作を継続することにより、前記主入力信号から前記交流雑音信号を除去するようにしたことを特徴とする交流雑音の除去方式。
  2. 前記パルス状信号の持続する間が、該パルス状信号の発生時点から200〜300msec経過するまでの間である請求項1に記載の交流雑音の除去方式。
  3. 一過性のパルス状信号に交流雑音信号が混入した電気信号を取り出して加工し、デジタル化して、主入力信号として出力する主入力信号加工部と、
    交流雑音発生源から信号を取得して加工し、デジタル化して、交流雑音信号に係る参照信号として出力する参照信号作成部と、
    かかる参照信号の自己相関及び前記主入力信号と該参照信号との相互相関にて規定されるフィルタ係数を、入力信号の性質に依存して逐次適応的に変化させながら、前記参照信号作成部から出力された参照信号を線形フィルタリング処理する適応フィルタ部と、
    前記パルス状信号の発生から、それが持続している間、該適応フィルタ部における前記自己相関と相互相関の更新を停止せしめて、前記フィルタ係数が、該更新停止直前の値に固定されるようにして、前記適応フィルタ部の動作が継続されるようにするマスク信号を出力するマスク信号出力部と、
    前記主入力信号加工部より出力される主入力信号から、前記適応フィルタ部において該マスク信号に基づいて線形フィルタリング処理された参照信号を差し引き、前記混入した交流雑音が除去された電気信号を出力する加減演算部とを、
    有することを特徴とする交流雑音の除去装置。
  4. 前記電気信号が、生体に装着された電極より取り出される、商用交流電源に起因する雑音の混入した微弱電位からなる生体電気信号であり、前記交流雑音発生源が、商用交流電源である請求項3に記載の交流雑音の除去装置。
  5. 前記一過性のパルス状信号が、網膜電位図測定におけるフラッシュ光照射にて生じた網膜の活動電位である請求項3又は請求項4に記載の交流雑音の除去装置。
  6. 前記マスク信号出力部が、前記パルス状信号の発生の情報を直接的に又は間接的に取得して、前記マスク信号を出力する請求項3乃至請求項5の何れか1項に記載の交流雑音の除去装置。
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