JP5593062B2 - 計測装置、計測システム、および計測方法 - Google Patents

計測装置、計測システム、および計測方法 Download PDF

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Description

本発明は、計測装置、計測システム、および計測方法に関し、詳細には、移動体の速度やドップラーシフトした受信角周波数を高精度かつ短時間で計測可能な計測装置、計測システム、および計測方法に関するものである。
例えば、GPSやモーショントラックのように、物体の座標位置を高精度に計測する技術は工業分野で広く応用可能である。本願出願人は、物体の座標位置を高精度に計測する方法として特許文献1を提案した。かかる特許文献1によれば、位相一致法と呼ばれる高精度測距手法を使用して、極めて高精度な距離計測が可能となっている。
これと同様に、物体の速度を高精度に計測できれば、それに基づいて位置計測の補正・予測などが可能となり、ロボットの精密誘導などの高度な工業分野に応用することができる。また、移動体測位では、ドップラー効果により計測誤差が発生し,静止状態ほどの正確な測位が行えないのが現状である。受信信号のドップラーシフト量を正確に計測できれば、ドップラーシフト補償を行って、正確な移動体測位が可能となる。
速度の計測には、(1)位置計測を定期的に実行し、一定時間における移動距離から算出する方法と、(2)速度に直接関連する物理量を計測することで、位置とは独立に算出する方法とがある。速度情報を位置情報の補正に使用する場合、位置とは独立に計測した速度を得ることができれば有用である。さらに、速度の計測を、高精度で、かつ、移動速度に照らして瞬間的とみなせるほど短時間で完了できるとより有用である。
従来、ドップラーシフトを用いた速度計測としては、ミリ波電磁波によるドップラーレーダーや医療用のエコー診断機などがある。これらは、精度が計測速度範囲の1/100程度であり、また、非接触で視野内の物体の特定の1点の速度を計測することはできない。
また、空間超音波による速度計測は精密測定器では気象観測用の超音波風速計が実用になっている。その計測速度は、10〜100ミリ秒間の平均であり、歩行する人間など数メートル/秒で移動する物体と照らしても瞬間的に速度を得ているとは言い難い。
超音波をマイクロホンで受信して電気信号に変換する場合、速度検出とは、すなわち電気信号の精密な周波数計測にほかならない。電気信号の周波数計測法は各種の方法が知られている。例えば、1000分の1秒間のゲート信号を発生させ、この時間内に受信信号の波形立ち上がりゼログロスが何回発生するかを計数すれば、その値は信号の周波数をkHz単位で計測したものとなる。
しかしながら、かかる方法では、ゲート信号と受信信号の位相関係により、例えば、40.0kHzの信号について立ち上がりを40回計測する場合、41回計測する場合があり、周波数は真値40kHzに対して、−0〜+1kHzの誤差(不確定性)をもつ。これは25℃の空気中の代表音速340,000mm/sに照らして考察すれば、8500mm/s程度の速度計測誤差となり、多くの応用要求に対して不満足なものである。
ゲート時間を1000倍にして、1秒間に設定すれば、精度は1000倍すなわち8.5mm/s程度となって、多くの応用についての計測精度は満たされるが、この場合の速度はその1秒間の平均値になってしまう。運動を追跡するため特定時刻の速度(瞬時値)を知りたい場合に不充分である。
周波数計測法には、このほかに、受信信号の立ち上がりゼロクロス1〜数周期分の時間をゲート信号とし、この間に100MHzなど高い既知の周波数パルスを計数して、逆数をとることで得る方法もある。しかしながら、通常みられるように、信号にホワイトノイズ雑音の重畳している場合、微細に見た場合のゼロクロスの発生時刻は不安定で、望ましい精度でドップラーシフト計測をすることは困難である。
また、受信信号に対して局部発振周波数を掃引させて周波数混合で変換し、高精度なフィルターを介して検波し、掃引時間から周波数を知ることができる。しかしながら、鋭利なフィルターは信号の通過に長い群遅延時間を持つことから、この方法での所要計測時間が長くなる。また、高速計測のため周波数掃引を高速にすれば、それは受信信号に周波数変調をかけることになり、計測をあいまいにして精度は低下する。このように、これらの方法でも、物体速度検出のためのドップラーシフト計測を高精度かつ短時間に行うことはできない。
国際公開番号WO2006/112475
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、移動体の速度やドップラーシフトした受信角周波数を高精度かつ短時間で計測可能な計測装置、計測システム、および計測方法を提供することを目的とする。
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、送信器から出力される信号を受信して、当該送信器の速度またはその受信角周波数を計測する計測装置であって、前記送信器から出力される単周波または複数周波の信号を受信する受信手段と、前記受信手段で受信した信号を、少なくとも2つの異なる参照角周波数でそれぞれ直交検波する直交検波手段と、受信角周波数を仮定した場合の前記直交検波手段の各参照角周波数に基づく検波出力から各々算出される、受信振幅推定値または受信電力推定値の差分が目標精度となる場合の速度または角周波数を、前記送信器の速度またはその受信角周波数として推定する推定手段と、を備えたことを特徴とする。
また、本発明の好ましい態様によれば、前記推定手段は、|P(ω)|=|a(ω)−a(ω)|が閾値以下となる角周波数ωを、受信角周波数ωとして推定することが望ましい。(但し、a(ω),a(ω)は、参照角周波数Ω,Ωに基づく受信振幅推定量である。a(ω)=((I/r(ω))+(Q/i(ω))1/2であり、r(ω)=(1/2)(sinc((ω−Ω)(T/2))+sinc((ω+Ω)(T/2))),i(ω)=(1/2)(−sinc((ω−Ω)(T/2))+sinc((ω+Ω)(T/2)))、sinc(x)=sin(x)/xは標本化関数である。a(ω)=((I/r(ω))+(Q/i(ω))1/2であり、r(ω)=(1/2)(sinc((ω−Ω)(T/2))+sinc((ω+Ω)(T/2))),i(ω)=(1/2)(−sinc((ω−Ω)(T/2))+sinc((ω+Ω)(T/2)))である。I、Qは、受信波形をs(t)とした場合、I=(1/T)∫[−T/2,T/2]s(t)cosΩtdt、Q=−(1/T)∫[−T/2,T/2]s(t)sinΩtdt、I=(1/T)∫[−T/2,T/2]s(t)cosΩtdt、Q=−(1/T)∫[−T/2,T/2]s(t)sinΩtdtである。s(t)=a×sin(ωt+φ)であり、aは受信振幅、φは受信信号の位相である。)
また、本発明の好ましい態様によれば、前記受信手段は、前記送信器から出力される前記複数周波の信号を受信し、さらに、前記直交検波手段の各参照角周波数に基づく検波出力に基づいて、前記送信器の位置を計測し、前記推定手段で推定された受信角周波数に基づいて、計測した位置を補正する位置計測手段を備えることが望ましい。
また、本発明の好ましい態様によれば、前記受信手段は、前記送信器から出力された信号を、超音波、電磁波、および光のいずれか1つで受信することが望ましい。
また、上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、送信器と、当該送信器から出力される信号を受信して、当該送信器の速度またはその受信角周波数を計測する受信器と、を備えた計測システムであって、前記送信器は、単周波または複数周波の信号を出力する送信手段を備え、前記受信器は、前記送信器から出力される信号を受信する受信手段と、前記受信手段で受信した信号を、少なくとも2つの異なる参照角周波数でそれぞれ直交検波する直交検波手段と、受信角周波数を仮定した場合の前記直交検波手段の各参照角周波数に基づく検波出力から各々算出される、受信振幅推定値または受信電力推定値の差分が目標精度となる場合の速度または角周波数を、前記送信器の速度またはその受信角周波数として推定する推定手段と、を備えたことを特徴とする。
また、本発明の好ましい態様によれば、前記推定手段は、|P(ω)|=|a(ω)−a(ω)|が閾値以下となる角周波数ωを、受信角周波数ωとして推定することが望ましい。
また、本発明の好ましい態様によれば、前記送信手段は、前記複数周波の信号を出力し、前記受信手段は、前記送信器から出力される複数周波の信号を受信し、さらに、前記直交検波手段の各参照角周波数に基づく検波出力に基づいて、前記送信器の位置を計測し、前記推定手段で推定された受信角周波数に基づいて、計測した位置を補正する位置計測手段を備えることが望ましい。
また、本発明の好ましい態様によれば、前記送信手段は、単周波または複数周波の信号を超音波、電磁波、および光のいずれか1つで出力し、前記受信手段は、前記送信器から出力された信号を、前記超音波、前記電磁波、および前記光のいずれか1つで受信することが望ましい。
また、上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、送信器から出力される信号を受信して、当該送信器の速度またはその受信角周波数を計測する計測方法であって、前記送信器から出力される単周波または複数周波の信号を受信する受信工程と、前記受信工程で受信した信号を、少なくとも2つの異なる参照角周波数でそれぞれ直交検波する直交検波工程と、受信角周波数を仮定した場合の前記直交検波工程の各参照角周波数に基づく検波出力から各々算出される、受信振幅推定値または受信電力推定値の差分が目標精度となる場合の速度または角周波数を、前記送信器の速度またはその受信角周波数として推定する推定工程と、を含み、前記推定工程では、|P(ω)|=|a(ω)−a(ω)|が閾値以下となる角周波数ωを、受信角周波数ωとして推定することを特徴とする。
また、本発明の好ましい態様によれば、前記受信工程では、前記送信器から出力される前記複数周波の信号を受信し、さらに、前記直交検波工程の各参照角周波数に基づく検波出力に基づいて、前記送信器の位置を計測し、前記推定工程で推定された受信角周波数に基づいて、計測した位置を補正する位置計測工程を含むことが望ましい。
本発明によれば、送信器から出力される信号を受信して、当該送信器の速度またはその受信角周波数を計測する計測装置であって、前記送信器から出力される単周波または複数周波の信号を受信する受信手段と、前記受信手段で受信した信号を、少なくとも2つの異なる参照角周波数でそれぞれ直交検波する直交検波手段と、受信角周波数を仮定した場合の前記直交検波手段の各参照角周波数に基づく検波出力から各々算出される、受信振幅推定値または受信電力推定値の差分が目標精度となる場合の速度または角周波数を、前記送信器の速度またはその受信角周波数として推定する推定手段と、を備えているので、移動体の速度やドップラーシフトした受信角周波数を高精度かつ短時間で計測可能な計測装置を提供することが可能になるという効果を奏する。
また、本発明によれば、|P(ω)|=|a(ω)−a(ω)|が閾値以下となる角周波数ωを、受信角周波数ωとして推定することとしたので、受信電力推定値を使用して、高精度にドップラーシフトした受信角周波数ωを推定することが可能となるという効果を奏する。
また、本発明によれば、前記受信手段は、前記送信器から出力される前記複数周波の信号を受信し、さらに、前記直交検波手段の各参照角周波数に基づく検波出力に基づいて、前記送信器の位置を計測し、前記推定手段で推定された受信角周波数に基づいて、計測した位置を補正する位置計測手段を備えているので、同一の複数周波信号を使用して、同時に、位置と速度を算出でき、高精度かつ短時間で位置と速度を検出することが可能となるという効果を奏する。
また、本発明によれば、計測装置は、送信器から送信された信号を、超音波、電磁波、光のいずれか1つで受信することとしたので、一般の線形波動で表現できるものに本発明を適用することができるという効果を奏する。
図1は、本発明にかかる計測システムの構成例を示す概念図である。 図2は、本発明にかかる周波数計測法の概略を説明するためのフローチャートである。 図3は、単周波バースト信号の一例を示す図である。 図4は、単周波バースト信号の電力による周波数(速度)推定を説明するための図である。 図5は、評価関数P(ω(V))の広範囲におけるVに対する振る舞いを示す図である。 図6は、速度推定シミュレーションの結果を示す図である。 図7は、SNRを変化させたときの標準偏差を示す図である。 図8は、図1の送信器の概略の構成例を示す図である。 図9は、図1の受信器の概略の構成例を示す図である。 図10−1は、図9の周波数推定部が送信器の速度Vを算出する処理を説明するためのフローチャートである(その1)。 図10−2は、図9の周波数推定部が送信器の速度Vを算出する処理を説明するためのフローチャートである(その2)。 図11は、位置計測と速度計測を同時に行う場合の3つのモードを説明するための図である。 図12は、図1の受信器の概略の構成例を示す図である。 図13−1は、図12の周波数推定部が送信器の速度Vを算出する処理を説明するためのフローチャートである(その1)。 図13−2は、図12の周波数推定部が送信器の速度Vを算出する処理を説明するためのフローチャートである(その2)。 図14−1は、本発明の応用例を説明するための図である。 図14−2は、本発明の応用例を説明するための図である。
以下に、本発明にかかる計測装置、計測システム、および計測方法の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。国際公開番号WO2006/112475(特願2007−528168)の時刻基準点情報伝送システムおよび受信器の内容は、参照により本明細書に組み込まれる。本発明は、超音波、電磁波、光等の一般の線形波動で表現できるものに適用可能であるが、以下では、超音波を例示して説明する。
(本発明の原理)
まず、本発明にかかる周波数検出法の原理について、図1〜図7を参照して説明する。図1は、本発明にかかる計測システムの概略構成を示す概念図、図2は、本発明にかかる周波数計測法の概略を説明するためのフローチャートである。
まず、ドップラー効果の概略を説明する。図1において、計測システム1は、超音波を送信する送信器2と、超音波を受信し、計測装置を構成する受信器3とで構成されている。送信器2と受信器3間での超音波の伝播遅延時間を計測し、空気中の音速cを乗じれば、送信器2を装着した物体と、受信器3を装着した物体間の距離を得ることができる。同様に、超音波の受信角周波数と送信角周波数の差を検出すれば、送信器2ないし受信器3の運動速度を得ることができる。例えば、空気と受信器3は静止しているものとして、送信器2のみが速度Vで運動している状態では、送信器2から送出される超音波の送信角周波数ωは、受信器3では、それとは異なる受信角周波数ωになって計測される。送信角周波数ωと受信角周波数ωは、下式(1)のような関係になる。ただし、ω=2πfである。
ω=(c/(c−V))ω・・・(1)
ただし、Vは受信器3への接近方向を正としている。
これはドップラー効果の名称でよく知られた現象であり、また、この周波数偏移をドップラーシフトという。受信器3が運動している場合または音波の媒質も運動している場合はこれとは少し異なる関係式になるが、周波数シフトの起こることは共通している。以下では、説明の簡単のため特に断らない限り、送信器2のみが運動し、音波の媒質および受信器3が静止している場合を説明する。
送信角周波数ωが既知で、受信角周波数ωを知ることができれば、送信器2の速度Vは上式(1)の関係式より、下式(2)のように表すことができる。
V=c(1−ω/ω)・・・(2)
特定の気温、湿度、気圧環境下での音速cは詳しく知られているので、上式(2)による速度計測を高精度に行うためには、受信角周波数ωを高精度で検出できればよい。ここで、運動物体の速度瞬時値を得るためには、この周波数検出はできるだけ短時間に遂行できることが望ましい。
以下、本発明にかかる周波数検出法により、受信角周波数ωを高精度かつ短時間で検出する方法を説明する。図1の計測システムの周波数検出方法を、図2のフローチャートを参照して説明する。
図2において、送信器2は、単周波バースト信号の超音波を送出する(ステップS1)。図3は、単周波バースト信号の一例を示しており、かかる単周波バースト信号は、下式(3)のように表現できる。
s(t)=a×sinωt・・・(3)
送信器2から送出される単周波バースト信号は、ドップラー効果をともなって,受信器3により下式(4)のような信号として受信される(ステップS2)。
g(t)=a×sin(ωt+φ)・・・(4)
ここで,φは信号波g(t)のt=0での位相,aは振幅,ωは送信(角)角周波数ωにドップラーシフトが加わったものである。
受信信号(式(4))を窓幅Tの矩形窓(t=0は窓中央)で切り出し,Ωの複素正弦波でIQ検波すると、下式(5)の出力を得ることができる(ステップS3)。窓幅Tは、例えば、1ms程度の短いもので十分である。
Figure 0005593062
ただし、jは虚数単位である。上式(5)のI,Qをr(ω),i(ω)で除して2乗すると、下式(6)のようになる。
(I/r(ω))=asinφ
(Q/i(ω))=acosφ・・・(6)
これらを加えると,下式(7)に示すように、a(ω)を得ることができる。
(ω)≡(I/r(ω))+(Q/i(ω))・・・(7)
=a
すなわち、a(ω)とは,ドップラーシフトを伴って受信された受信信号の角周波数がωであったと仮定した場合の,バースト部の受信電力(実効値の√2倍)の推定値である。Ωを参照角周波数とした計算に加え,それとは少し隔たった参照角周波数Ωで同様の式(8)を導く。
(I/r(ω))=asinφ
(Q/i(ω))=acosφ
(ω)≡(I/r(ω))+(Q/i(ω))・・・(8)
=a
これも受信電力,すなわちドップラー効果とは無関係であるべき物理量を表すことから,ω=ωにおいて両者は一致しなければならない。したがって、下式(9)を導出できる。
(ω)=a(ω)(ω=ω)・・・(9)
なお、目的を移動体の速度検出と考えれば,式(9)でパラメータを速度Vに置き換え,評価関数a(ω)をa(ω(V))で表記してもよい。すなわち、a(ω(V))=a(ω(V))・・・(9)’としてもよい。
より詳細に説明すると、本発明の周波数計測法は、2つの異なる参照角周波数ΩとΩの直交検波出力から推定した振幅a(ω)とa(ω)が正しい受信角周波数の推定値ω=ωで一致することを利用している。受信角周波数ωを正しく推定していれば、積和演算(直交検波)で使用した参照角周波数ΩとΩによらずに、受信信号の振幅(電力)が一致しなければならない、という性質を使用している。
参照角周波数Ωに関しては、I=r(ω)a×sinφ、Q=i(ω)a×cosφであるので、a(ω)=a×{(r(ω)/r(ω))sinφ+(i(ω)/i(ω))cosφ}1/2
同様に、参照角周波数Ωに関しては、a(ω)=a×{(r(ω)/r(ω))sinφ+(i(ω)/i(ω))cosφ}1/2である。一般に両者は異なった値をとる。ただし、ωを正しい受信角周波数ωにとれば、a(ω)=a×(sinφ+cosφ)1/2=a,a(ω)=a×(sinφ+cosφ)1/2=aとなり、両者は一致する。逆に、この一致をもたらす角周波数ωを求めることで、ドップラーシフトした受信角周波数ωを精密に推定することができる。ここでは、2つの参照角周波数Ω、Ωを使用しているが、3つ以上を使用してもよく、例えば、参照角周波数Ωを使用し、或いは更に多くの参照角周波数を使用し、受信振幅推定値の一致を確認することで、より高精度な周波数推定を行うことができる。原理的には、最低2つの参照角周波数を必要とするので、ここでは、2つの参照角周波数を使用した場合について説明する。
図4は、単周波バースト信号の電力による周波数(速度)推定を説明するための図である。より詳細には、送信器2の速度Vを変化させ,ドップラーシフトの影響を加えた場合の参照角周波数Ω、Ωによる電力推定値の変化を示しており、評価関数をa(ω(V))−a(ω(V))とした場合を示している。なお、評価関数としては受信振幅推定値の一致を確認できるものなら如何なるものでもよい。
同図において、横軸は推定速度V[m/s]、縦軸は、受信電力a(ω(V))を示しており、送信器2の速度V=1m/s、a=1とした場合である。ここでは、送信信号波としてω=2π×40kHzの2msバーストを採用し,それを受信器3で幅T=1msの積分窓で取り出した。送信器2はV=1m/sで受信器3方向に移動しているものとし,受信器3は静止しているものとする。参照角周波数Ω,Ωはそれぞれ2π×39.75kHz,2π×40.25kHzである。
縦の破線すなわち正解の速度V=1m/sにおいて,参照角周波数ΩとΩによるa(ω(V)),a(ω(V))の推定値が一致していることがわかる。この関係から速度Vないしドップラーシフトした受信角周波数ωを求めることができる。
ΩとΩによる電力推定値の差P(ω)は、式(12)のようになる。
|P(ω)|=|a(ω)-a(ω)|・・・(12)
式(12)を評価関数とし,|P(ω)|が目標精度(閾値以下)となる角周波数ωを、望ましくは、|P(ω)|=0となる角周波数ωを、ドップラーシフトした受信角周波数ωとして推定する(ステップS5)。なお、ここでは、電力推定値の差a(ω)-a(ω)を評価関数としているが、振幅推定値の差a(ω)-a(ω)を評価関数として、ドップラーシフトした受信角周波数ωを決定することにしてもよい。なお、例えば、3つの参照角周波数Ω、Ω、Ωを使用する場合は、|a(ω)-a(ω)|≦閾値th、|a(ω)-a(ω)|≦閾値th、AND |a(ω)-a(ω)|≦閾値thとなる角周波数ωを、ドップラーシフトした受信角周波数ωとして推定する。
なお、上述したように、速度が検出対象の場合は、P(ω(V))=a(ω(V))-a(ω(V))・・・(12)’として、(12)’を評価関数とし,P(ω(V))=0となる速度Vを送信器2の速度Vとして決定する。
図5は、評価関数P(ω(V))の広範囲におけるVに対する振る舞いを示す図である。図5において、横軸は推定速度V[m/s]、縦軸は評価関数P(ω(V))を示しており、V=1m/s、a=1とした場合である。図5に示すように、この評価関数P(ω(V))は広範囲の速度域(周波数域)では,正解の角周波数ω=ω(V=V)以外にも多数の零点をもつ。もとの関係式に含まれる三角関数の周期性のため,評価関数はtanxに沿ったふるまいをするためである。しかしながら、それらの零点は正解から隔たった箇所に現れ,また零点付近のふるまいも違うので、多くの場合、擬似解を容易に排除可能である。
[計測精度]
本発明にかかる周波数計測方法では、受信信号は未知ではあるが単一の周波数成分(線スペクトル)をもつものと期待している。実際には受信信号には帯域制限された白色ガウス雑音(量子化雑音含む)、他の外来雑音信号スペクトル、および受信信号自体のひずみ高調波スペクトル等が重畳しており、計測誤差になる。外来雑音や高調波スペクトルは適当なフィルター処理で除去できるので、多くの場合、白色ガウス雑音のみが誤差要因となる。
本発明にかかる周波数検出法の性能を評価するため,ノイズを含めたシミュレーションを行った。SNR=40dBとなるよう受信信号にノイズを加え,30回の試行を行った。
図6は、速度推定シミュレーションの結果を示しており、(a)は速度Vの誤差、(b)は、速度Vの標準偏差を示している。図6に示すように、−1.5m/s〜1.5m/sの速度をほぼ±2mm/sの精度で推定できており,速度検出法として高い精度であることが検証された。
実際に、送受信器2,3間の距離1m,送信器2の速度−2m/s<V<2m/s(受信器3を固定)のN/S=1/40000の環境で計測した結果、ω=2π×40kHz,T=1msで、±1mm/sの速度計測の標準偏差を得ている。これは、c=340m/sで換算して3×10−6の精度である。周波数計測として考えれば1msの計測で40kHzの周波数を±0.1Hzで決定できたことになる。
図7は、SNRを変化させたときの標準偏差を示す図である。標準偏差は−1.5m/s〜1.5m/sの設定速度範囲での平均である。図中の実線は理論曲線である。理論解析により、本発明の周波数検出法で期待される精度(速度計測ないし周波数計測の正規化標準偏差)は,信号電力をS,ノイズ電力をNとすれば,S>>Nの範囲では(N/S)1/2に比例する。
本発明の周波数検出方法によれば、受信器(計測装置)3は、送信器2から出力される単周波ビート信号の超音波を受信し、受信した信号を、2つの異なる参照角周波数でそれぞれ直交検波し、各参照角周波数に基づく検波出力から各々算出される、受信振幅推定値または受信電力推定値の差分が目標精度(望ましくは「0」)となる場合の速度または角周波数を、送信器2の速度またはその受信角周波数として推定することとしたので、移動体の速度やドップラーシフトした受信角周波数を高精度かつ短時間で計測することが可能となる。付言すると、本発明の周波数検出方法は、空間を伝播する超音波により、そのドップラーシフトを精密に計測することで物体の特定の点の速度を、非接触で、1ミリ秒程度の計測時間で、数mm/秒の精度をもって得ることができ、これは計測時間、精度において従来同様目的の計測器で実用として得られた性能を10倍程度改善するものであり、例えば、超音波風速計や流速計の性能を向上させることが可能となる。
また、本発明の周波数検出方法によれば、|P(ω)|=|a(ω)−a(ω)|が閾値以下となる角周波数ωを、受信角周波数ωとして推定することとしたので、受信電力推定値を使用して、高精度にドップラーシフトした受信角周波数ωを推定することが可能となる。
また、送信器2から送信された信号を、超音波、電磁波、光のいずれか1つで受信することとしたので、一般の線形波動で表現できるものに本発明を適用することができる。
以下、本発明にかかる周波数計測法を適用したシステムの実施の形態について説明する。本発明の構成要素は、本明細書の図面に一般に示してあるが、様々な構成で広く多様に配置し設計してもよいことは容易に理解できる。したがって、本発明の装置、システムおよび方法の実施形態についての以下のより詳細な説明は、特許請求の範囲に示す本発明の範囲を限定するものではなく、単に本発明の選択した実施形態の一例を示すものであって、本明細書の特許請求の範囲に示す本発明と矛盾無く装置、システムおよび方法についての選択した実施形態を単に示すものである。当業者は、特定の細目の1つ以上が無くても、または他の方法、部品、材料でも本発明を実現できることが理解できる。
(実施の形態1)
本発明の周波数計測法を適用した計測システムの実施の形態1について説明する。上記図1において、運動する物体に装着された送信器2は、角周波数ωの一定振幅の単周波バースト信号の超音波を、計測に必要な時間Tと同じかそれより長い時間、発生させる。典型的な設定では、ω=2π×40×10Hz,T=1×10−3秒である。この信号波は、送信器2から一定の広がりをもつ球面波として発生させ、その送信開口内に固定した受信器3を配置して信号波を検出する。
ただし、受信振幅はaであり、受信角周波数はドップラーシフトを受けてωに変化するので、信号波形s(t)は、下式(13)のようになる。
s(t)=a×sin(ωt+φ)・・・(13)
ただし、ω=(c/(c−V))ω、φは受信信号の位相、cはこの計測実行時の音速、Vは運動物体の速度ベクトルの受信器方向への成分である(送信器2の速度ベクトルをV→で表記し、送信器2から受信器3方向へとった単位長のベクトルをr→と表記すると、V=V→・r→)。ωを計測してVを知ることができる。また、Vを計測してωを算出することもできる。一般にωとcは既知量であるが、a,φ,ωは未知量である。
図8は、図1の送信器2の概略の構成例を示す図である。図8に示すように、送信器2は、波形記憶部(波形ROM)101と、D/A変換部102と、増幅部103と、超音波送信素子(超音波スピーカ)104と、を備えている。
波形記憶部101は、角周波数ω、一定振幅の単周波バースト波形s(t)のデジタル信号を記憶する。D/A変換部102は、波形記憶部101から読み出した単周波バースト波形のデジタル信号をアナログ信号に変換して、増幅部103に出力する。増幅部103はアナログ信号を増幅して、超音波送信素子104に出力する。超音波送信素子104は、アナログ信号を超音波に変換して外部に出力する。
超音波送信素子104は、具体的には市販の圧電型セラミック振動体である。ここで、素子は共振器であるため、当該素子において、通信感度や信号雑音比は良好であるが、通信帯域は狭く概ね39.0〜41.0kHzである。なお、当該通信帯域内でも振幅・位相伝搬特性は強い周波数依存性をもつ。
図9は、図1の受信器3の概略の構成例を示す図である。図9に示すように、受信器3は、超音波受信素子(超音波マイクロフォン)201と、増幅部202と、A/D変換部203と、波形記憶部(波形メモリ)204と、信号検出部205と、信号抽出部206と、参照波形記憶部207A、207Bと、直交検波部208A、208Bと、周波数推定部209と、音速補正部210と、環境センサ211とを備えており、各部は伝送路を介して接続されている。
超音波受信素子201は、送信器2から送出される超音波を受信して、アナログ信号に変換し受信信号として増幅部202に出力する。超音波受信素子201は、具体的には市販の圧電型セラミック振動体である。増幅部202は、超音波受信素子201から入力される受信信号を増幅して、A/D変換部203に出力する。
A/D変換部203は、増幅部202から入力される受信信号をA/D変換して、波形記憶部204に出力する。A/D変換部203では、例えば、サンプリング速度1×10回/秒、量子化長14ビット(直線量子化)とすることができる。サンプリング速度は、サンプリング定理より受信角周波数40kHzの2倍を超える必要があるが、直交検波を高精度に行うためには、高いサンプリング周波数を採用するのが望ましい。波形記憶部204は、A/D変換された受信信号を記憶する。波形記憶部204は、例えば、所定量以上の容量を有するリングバッファで構成することができ、新しいデータを古いデータに上書きしていく。
信号検出部205は、波形記憶部204を常時、監視しており、ノイズレベルを超えるTsec以上(Tは窓関数の時間幅)の継続時間の信号到来を検出した場合に、周波数検出工程を起動するための起動信号を信号抽出出部206、直交検波器208A、Bおよびくり返し制御部224に出力して、周波数検出工程を実行させる。
信号抽出部20は、起動信号が入力されると、波形記憶部204から正確にT秒の有効な受信信号を読み出し、後段の直交検波器208Aおよび直交検波器208Bに出力する。
直交検波器208Aは、T秒の受信波形に、ωから僅かに離れた参照角周波数Ω(たとえば、2π×40.250×10Hz)のcos波形および−sin波形を乗じると共に、受信波形を積分して検波出力I、Qを得て、振幅推定部221Aに出力する。
具体的には、I、Qは、受信波形をs(t)とすると、下式(14)のようになる。
=(1/T)∫[−T/2,T/2]s(t)cosΩtdt
=−(1/T)∫[−T/2,T/2]s(t)sinΩtdt・・・(14)
上式(14)において、t=0の時刻原点はT秒間の受信波形の中央にとっている。cosΩt,−sinΩtは、予め波形記憶部207Aに記憶されており、直交検波器208Aは、波形記憶部207AからcosΩt,−sinΩtを読み出して、検波出力I、Qを算出する。
かかる検波出力I、Qは、サンプルされた離散時間の受信波形に対し積和計算により得ることができる。ただし、数学的には連続時間関数の積分を離散時間の信号サンプル値から近似する数値積分であるので、計算精度を高めるため、必要に応じ高次の積分近似、例えば、台形則やシンプソン則を併用することにしてもよい。この場合も予め係数をcosΩt,−sinΩtの数表に掛け合わせておけば、単純な積和計算の中で行うことができる。本実施の形態では、シンプソン則を使用している。
直交検波器208Bは、直交検波器208Aと同様の処理を別の参照角周波数Q(例えば、2π×39.750×10Hz)について行い、検波出力I,Qを得て、振幅推定部221Bに出力する。cosΩt,−sinΩtは、予め波形記憶部207Bに記憶されており、直交検波器208Bは、波形記憶部207BからcosΩt,−sinΩtを読み出して、検波出力I、Qを算出する。
周波数推定部209は、検波出力I、Qに基づく受信振幅推定量a(ω(V))と、I、Qに基づく受信振幅推定量a(ω(V))との一致を求めることで、送信器2の速度Vを推定して、推定した速度Vを音速補正部210に出力する。周波数推定部209は、振幅推定部221Aと、振幅推定部221Bと、減算器222と、くり返し制御部224とを備えている。
振幅推定部221Aは、I,Qに基づいて受信振幅推定量a(ω(V))を算出し、その2乗であるa(ω(V))を減算器222に出力する。受信振幅推定量a(ω(V))は、下式(15)により算出することができる。
(ω(V))=
{(I/r(ω(V)))+(Q/i(ω(V)))1/2・・(15)
ここで、r(ω(V))=(1/2)(sinc((ω(V)−Ω)(T/2))+sinc((ω(V)+Ω)(T/2))),i(ω(V))=(1/2)(−sinc((ω(V)−Ω)(T/2))+sinc((ω(V)+Ω)(T/2)))、sinc(x)=sin(x)/xは標本化関数である。
振幅推定部222Bは、I,Qに基づいて受信振幅推定量a(ω(V))を算出し、その2乗であるa(ω(V))を減算器222に出力する。受信振幅推定量a(ω(V))は、下式(16)により算出することができる。
(ω(V))=
{(I/r(ω(V)))+(Q/i(ω(V)))1/2・・(16)
ここで、r(ω(V))=(1/2)(sinc((ω(V)−Ω)(T/2))+sinc((ω(V)+Ω)(T/2))),i(ω(V))=(1/2)(−sinc((ω(V)−Ω)(T/2))+sinc((ω(V)+Ω)(T/2)))
減算器222は、P(ω(V))=a(ω(V))−a(ω(V))を算出して、P(ω(V))をくり返し制御部224に出力する。くり返し制御部224は、|P(ω(V))|が目標精度(閾値以下)であるか判断し、|P(ω(V))|が目標精度となる速度Vを、送信器2の速度Vとして音速補正部210に出力する。くり返し制御部224は、|P(ω(V))|が目標精度でない場合には、振幅推定部221A,Bに、ω(V)を変更させて、|P(ω(V))|が目標精度となるまで繰り返し処理を実行する。
音速補正部210には、温度センサ211A、湿度センサ211B、および気圧センサ211C等の環境センサ211で検出される環境情報(温度情報、湿度情報、および気圧情報等)が入力される。音速補正部210は、環境情報で算出される音速cで、周波数推定部209で推定された速度Vを補正して、補正した速度Vを出力する。
図10−1および図10−2は、周波数推定部209が送信器2の速度Vの算出する処理の一例を説明するためのフローチャートである。同図に示すフローチャートは、2分法を使用して、必要な精度で、P(ω(V))=0、すなわち振幅推定量の一致、a(ω(V))=a(ω(V))を得て、速度Vを算出するものである。
図10−1および図10−2において、周波数推定部209は、まず、音速cを仮定する(ステップS21)。例えば、c=340m/sとすることができる。つぎに、検出速度の下限Vおよび上限Vを設定する(ステップS22)。例えば、V=−1.0m/s、V=1.0m/sとすることができる。
つぎに、|V−V|≦閾値(目標精度)であるか否かを判断する(ステップS23)。|V−V|≦閾値(目標精度)の場合には(ステップS23の「Yes」)、V=V or V=Vとする(ステップS32)。
他方、|V−V|≦閾値(目標精度)でない場合には(ステップS23の「No」)、(V+V)/2をVと設定し(ステップS24)、ω={c/(c−V)}ω、ω={c/(c−V)}ω、ω={c/(c−V)}ωを算出する(ステップS25)。上式(15)、(16)より、振幅a(ω)、a(ω)、a(ω)、a(ω)、a(ω)、a(ω)を推定する(ステップS26)。
つぎに、a(ω−a(ω>0 and a(ω−a(ω<0であるか否かを判断する(ステップS27)。a(ω−a(ω>0 and a(ω−a(ω<0である場合には(ステップS27の「Yes」)、a(ω−a(ω>0であるか否かを判断する(ステップS28)。a(ω−a(ω>0である場合には(ステップS28の「Yes」)、ωをωと設定し(ステップS30)、a(ω−a(ω>0でない場合には(ステップS28の「No」)、ωをωと設定して(ステップS31)、ステップS23に戻る。
他方、ステップS27において、a(ω−a(ω>0 and a(ω−a(ω<0でない場合には(ステップS27の「No」)、a(ω−a(ω>0であるか否かを判断する(ステップS29)。a(ω−a(ω>0である場合には(ステップS29の「Yes」)、ωをωと設定し(ステップS31)、a(ω−a(ω>0でない場合には(ステップS29の「No」)、ωをωと設定して(ステップS30)、ステップS23に戻る。
ステップS23では、再び、|V−V|≦閾値(目標精度)であるか否かを判断し、|V−V|≦閾値(目標精度)となるまで同じ処理を繰り返し実行する(ステップS23〜S31)。
(実施の形態2)
本願出願人は、国際公開番号WO2006/112475において、高精度な位置(距離)計測法を提案した。実施の形態2では、上記国際公開番号WO2006/112475の位置計測と本発明の周波数検出法に基づく速度計測を同時に行う場合について説明する。
国際公開番号WO2006/112475の超音波測位システムでは、極座標上の3m,20°の静止状態での測位において,標準偏差0.18mm,0.1°と極めて高精度な計測が可能であることが確認されている。しかしながら、移動体測位ではドップラー効果により計測誤差が発生し,静止状態ほどの正確な測位が行えないことが判明している。実施の形態2では、本発明の周波数推定法を使用して、受信信号のドップラーシフト量の推定とドップラーシフト補償を行い、高精度かつ短時間に速度および位置を計測する方法について説明する。また、後述するように、本発明の周波数計測法は、単周波信号のみならず、複数周波信号にも適用可能である。
位置計測と速度計測を同時に行う方法として、例えば、以下の3つのモードが考えられる。図11は、3つのモードを説明するための図であり、(A)はモード1,(B)はモード2,(C)はモード3の信号波の一例を示している。
図11(A)において、モード1では、ビート(2周波ビート信号)とバースト(単周波バースト信号)を送信器2から送出する。受信器3では、前半のビートで国際公開番号WO2006/112475と同じ方法で位置を計測し、後半のバーストで本発明の周波数推定方法を使用して速度を計測する。この場合、位置計測結果を、速度計測の結果を使用してドップラー補償する。
図11(B)において、モード2では、バースト(単周波バースト信号)を2度、送信器2から送出する。受信器3では、2度のバーストで本発明の周波数推定方法を使用してそれぞれ速度計測し、このとき一緒にバーストの位相を計算しておく。そして、後半のバーストを移動させ、前半に重ねてビートを再現することで、位置計測を行う。モード1と同様に、位置計測結果を、速度計測の結果を使用してドップラー補償する。
図11(C)において、モード3では、距離計測で使用するビート(2周波ビート信号)と同じ波形を使用し、ビートの2つのキャリアの位相、振幅、周波数偏移を決定し、位置と速度を同時に計測する。モード1と同様に、位置計測結果を、速度計測の結果を使用してドップラー補償する。
上記各モードのうち、モード3が計測に必要な信号幅が最も短く、瞬時の位置と速度を計測可能である。以下、モード3を実現するための計測システムの構成および動作を説明する。
モード3では、2つの近接した周波数の波形を合成した2周波ビート信号を使用する。2周波ビート信号は、下式(18)のように表すことができる。
s(t)=asin(ωt+φ)+aIIsin(ωIIt+φII)・・・(18)
ここでa、aII,ω,ωII、φ、φIIはそれぞれ信号の振幅,角周波数,初期位相である。例えば、ω=2π×39.750kHz、ωII=2π×40.250kHzとすることができる。ビート(うなり)の節から節までの時間は差周波数により決まり、この例では、1/(40.250−39.750)=2ミリ秒である。送信器2は、この節から節までの波形、もしくはその一部を単発の波束として送出する。この2周波ビート信号は、epochと呼ばれるもとの2つキャリアの位相差ゼロ点を1つ持ち,これが距離計測で使用される受信時刻の基準点となる。その詳細は、国際公開番号WO2006/112475に記載されているので、詳細な説明を省略する。
図12は、受信器3の概略の構成例を示す図である。図12において、図9と同等の機能を有する部位には同一符号を付して、共通する部分の説明を省略する。実施の形態2にかかる受信器3は、位置検出部301と、音速補正部302とを更に備えている。
受信器3での受信波形は、送信器2の速度Vによりドップラーシフトを受け、ωはωに、ωIIはωに移行し、下式(19)に示すような信号になる。
u(t)=a_psin(ωt+φ)+a_qsin(ωt+φ)・・(19)
ただし、a_p,a_q,ω,ωはVの関数なので、a_p(V),a_q(V),ω(V),ω(V)と表記してもよい。
a_p,a_qは受信振幅であり、送信時は等しく揃えていても、受信素子の周波数特性により一般には異なった値となる。ω,ωは送信角周波数がドップラーシフトを受けたものであり、これを精密に計測できれば、送信器2の精密な速度計測値を得ることができる。φ,φは受信位相であり、受信器3の時刻設定と受信素子の位相周波数特性により付加される。
直交検波器208A,Bは、2種の参照角周波数Ω,Ωで直交検波して、(I,Q),(I,Q)の2セットの検波出力を周波数推定部209および位置検出部301に出力する。参照角周波数Ω,Ωには、例えば、Ω=2π×39.750kHz,Ω=2π×40.250kHzを使用することができる。
周波数推定部209は、検波出力I、Qに基づく受信振幅推定量a_p(ω(V)、ω(V))と、I、Qに基づく受信振幅推定量a_p(ω(V)、ω(V))との一致を求めることで、速度Vを推定して、推定した速度Vを音速補正部210に出力する。また、周波数推定部209は、上式(1)を使用して、推定した速度Vからドップラーシフトした受信角周波数ωを算出し、算出した受信角周波数ωをドップラー補正情報として位置検出部301に出力する。
検波出力(I,Q),(I,Q)は、下式(20)のように表すことができる。
=r(ω)a_psinφ+r(ω)a_qsinφ
=i(ω)a_pcosφ+i(ω)a_qcosφ
=r(ω)a_psinφ+r(ω)a_qsinφ
=i(ω)a_pcosφ+i(ω)a_qcosφ・・(20)
a_p,a_q,φ,φは、参照角周波数Ω,Ωのとり方によらない量であり、上記の4本の式を連立方程式と見なすことで、下式(21)のように表すことができる。
a_pexp(jφ)=(i(ω)Q−i(ω)Q)/(i(ω)i(ω)−i(ω)i(ω))+j(r(ω)I−r(ω)I)/(r(ω)r(ω)−r(ω)r(ω
a_qexp(jφ)=(−i(ω)Q+i(ω)Q)/(i(ω)i(ω)−i(ω)i(ω))+j(−r(ω)I+r(ω)I)/(r(ω)r(ω)−r(ω)r(ω)・・・(21)
一般に受信信号の振幅a_p,a_qは未知数であるが、もとの送信信号で振幅aI、aIIを等しくしておけば、その比η(V)=a_p/a_qは受信素子の個体の周波数特性と送信器2の速度Vで決まる関数である。そのため、速度の小さい領域では、多くの受信素子で、η(V)は速度によってあまり変化せず、η(V)=ηなる定数とみなしてよいことが実験的にわかっている。
η(V)を定数とすれば、正しい速度推定値Vにおいて、P(ω(V),ω(V))=|a_pexp(jφ)|−η|a_qexp(jφ)|=0となるので、P(ω(V),ω(V))を評価関数として送信器2の速度Vを求めることができる。
η(V)の速度による変動が無視できない場合は、まず、V=0と仮定して、η0=η(0)を使用して上記2分法を使用して速度推定値Vを求める。次に、η1=η(V)を使用して速度推定値Vを求め、これを繰り返し、速度推定値の変化|V_n−V_(n−1)|が十分小さくなるまでこの手順を反復することで、より精度の高い速度推定値を得ることができる。
一方、位置検出部301は、国際公開番号WO2006/112475の方法を使用して、送信器2の位置を算出し、音速補正部302に出力する。その際、位置をドップラー補正情報を使用して補正する。送信器2の位置を算出する方法は、国際公開番号WO2006/112475で詳細に記載されているので、その詳細な説明は省略する。
音速補正部302には、温度センサ211A、湿度センサ211B、および気圧センサ211C等の環境センサ211で検出される環境情報(温度情報、湿度情報、および気圧情報等)が入力される。音速補正部302は、環境情報で算出される音速cで、位置検出部301で算出された位置を補正して、補正した位置(x、y、z)を出力する。
図13−1および図13−2は、周波数推定部209で送信器2の速度Vを算出する処理を説明するためのフローチャートである。実施の形態1と同様に2分法を使用している。
図13−1および図13−2において、まず、音速cを仮定する(ステップS41)。例えば、c=340m/sとすることができる。つぎに、検出速度の下限Vおよび上限Vを設定する(ステップS42)。例えば、V=−1.0m/s、V=1.0m/sとすることができる。
つぎに、|V−V|≦閾値(目標精度)であるか否かを判断する(ステップS43)。|V−V|≦閾値(目標精度)の場合には(ステップS43の「Yes」)、V=V or V=Vとする(ステップS42)。
他方、|V−V|≦閾値(目標精度)でない場合には(ステップS43の「No」)、(V+V)/2をVと設定する(ステップS44)。(ωp1,ωq1)={c/(c−V)}(ω,ω)、(ωp2,ωq2)={c/(c−V)}(ω,ω)、(ωp3,ωq3)={c/(c−V)}(ω,ω)を算出する(ステップS45)。上式(21)より、振幅{a(ωp1、ωq1)、a(ωp1、ωq1)}、{a(ωp2、ωq2)、a(ωp2、ωq2)}、{a(ωp3、ωq3)、a(ωp3、ωq3)}を推定する(ステップS46)。
この後、a(ωp1、ωq1−η×a(ωp1、ωq1>0 and a(ωp2、ωq2−η×a(ωp2、ωq2<0であるか否かを判断する(ステップS47)。ここで、ηは受信素子の周波数特性に基づく感度補正値である。a(ωp1、ωq1−a(ωp1、ωq1>0 and a(ωp2、ωq2−η×a(ωp2、ωq2<0である場合には(ステップS47の「Yes」)、a(ωp3、ωq3−η×a(ωp3、ωq3>0であるか否かを判断する(ステップS48)。
(ωp3、ωq3−η×a(ωp3、ωq3>0である場合には(ステップS48の「Yes」)、VをVと設定し(ステップS50)、a(ωp3、ωq3−η×a(ωp3、ωq3>0でない場合には(ステップS48の「No」)、VをVと設定して(ステップS51)、ステップS43に戻る。
他方、ステップS47において、a(ωp1、ωq1−η×a(ωp1、ωq1>0 and a(ωp2、ωq2−η×a(ωp2、ωq2<0でない場合には(ステップS47の「No」)、a(ωp3、ωq3−η×a(ωp3、ωq3>0であるか否かを判断する(ステップS49)。a(ωp3、ωq3−η×a(ωp3、ωq3>0である場合には(ステップS49の「Yes」)、VをVに設定し(ステップS51)、a(ωp3、ωq3−η×a(ωp3、ωq3>0でない場合には(ステップS49の「No」)、VをVと設定して(ステップS50)、ステップS43に戻る。
ステップS43では、再び、|V−V|≦閾値(目標精度)であるか否かを判断し、|V−V|≦閾値(目標精度)となるまで同じ処理を繰り返し実行する(ステップS43〜S51)。
実施の形態2によれば、位置計測に使用する複数周波信号だけを使用して、速度を計測することができ、特に新要素をつけ加えることなく位置と速度の同時計測を高精度かつ短時間で行うことが可能となる。ここでは、2周波信号を使用した場合について説明したが、3周波数以上の信号を使用することにしてもよい。
なお、複数周波信号を使用して位置と速度を同時計測する方法は、信号の振幅比も誤差要因に加わるため、一般に単周波信号で速度を計測する方法より精度は悪化するが、受信素子に周波数特性のよい広帯域素子を使用するなどして、ほぼ単周波信号を使用した場合に匹敵する速度検出精度を確認している。
(本発明の応用)
上記説明では、送信器2のみが移動し、音の媒質である空気や受信器3は固定しているものとして説明したが、それらの動いている場合のドップラーシフトについても関係式を導くことができる。送信器2の速度をV,受信器3の速度をV,媒質の速度をVとすれば、送信角周波数ωは、受信角周波数ω=((c−V+V)/(c−V+V))ωになって受信器3で受信される。したがって、受信器3が移動している場合、ないし媒質が移動している場合も、受信角周波数ωを決定し、その量を知ることができる。例えば、送信器2、受信器3を固定すれば、これは媒質の速度すなわち風速の計測法として使用することができる。
上記説明では、図14−1に示すように、移動体4に送信機1を装着し、1台の受信器3で一次元的な速度測定について説明したが、2次元的および3次元的な速度測定も可能である。
超音波の送信器2および受信器3は一定の有効開口を有しており、その中に複数台を設置できる。例えば、図14−2に示すように、3次元的移動を行う移動体4に装着した一台の送信器2の有効開口内に、3台の受信器3を設置すれば、送信器2の速度ベクトルV→の各方向X、Y、Zの速度成分を知ることができ、別途、送受信器の位置関係が分かっていれば、そこから速度ベクトルV→をT=1msなどと求めることができる。これにより、運動物体の空間における瞬間的な移動方向を精密に計測することができる。
また、送信器2から発せられた超音波を受信器3で受信して、送信器2の速度および/またはその受信周波数を計測する場合について説明したが、受信器(計測装置)3が超音波を発し、移動体からのその反射波を受信して、移動体4の速度および/またはその受信周波数を計測することにしてもよい。
本発明にかかる計測装置、計測システム、および計測方法は、例えば、超音波風速計や流速計に好適に利用できる。また、仮想現実感のモーショントラックや工作機械の誘導、ロボットの誘導に好適に利用でき、この場合、位置計測と相俟ってそれとは独立に得た各点の速度情報があれば、位置を含めた方程式を解くことで、より高精度な制御が可能となる。
本発明にかかる計測装置、計測システム、および計測方法は、超音波風速計、流速計仮想現実感のモーショントラック、工作機械の誘導、ロボットの誘導等に広く利用可能である。
1 計測システム
2 送信器
3 受信器
4 移動体
101 波形記憶部(波形ROM)
102 D/A変換部
103 増幅部
104 超音波送信素子(超音波スピーカ)
201 超音波受信素子(超音波マイクロフォン)
202 増幅部
203 A/D変換部
204 波形記憶部(波形メモリ)
205 信号検出部
206 信号抽出部
207A、207B 直交検波部
208A、208B 参照波形記憶部
209、209A、209B 周波数推定部
210、302 音速補正部
211 環境センサ
221、221A、221B 振幅推定部
222 減算部
224 くり返し制御部
301 位置検出部

Claims (7)

  1. 送信器から出力される信号を受信して、当該送信器の速度またはその受信角周波数を計測する計測装置であって、
    前記送信器から出力される単周波または複数周波の信号を受信する受信手段と、
    前記受信手段でドップラー効果を伴って受信した信号を、所定の時間幅を有する矩形窓で切り出し、少なくとも2つの異なる参照角周波数でそれぞれ直交検波する直交検波手段と、
    前記ドップラー効果を伴って受信した信号の受信角周波数がωであったと仮定した場合に、前記直交検波手段の前記少なくとも2つの異なる参照角周波数毎に、検波出力の複素成分I,Qを、それぞれ、前記矩形窓の所定の時間幅に基づく補正成分r(ω)、i(ω)で補正したものを2乗して加えることで受信電力推定値をそれぞれ算出し、算出した前記少なくとも2つの異なる参照角周波数の受信電力推定値の差分を示す評価関数が閾値以下となる場合の速度または角周波数を、前記送信器の速度またはその受信角周波数として推定する推定手段と、
    を備えたことを特徴とする計測装置。
  2. 前記評価関数は、|P(ω)|=|a(ω)−a(ω)|であり、前記推定手段は、|P(ω)|=|a(ω)−a(ω)|が閾値以下となる角周波数ωを、受信角周波数ωとして推定することを特徴とする請求項1に記載の計測装置。
    (但し、a(ω),a(ω)は、参照角周波数Ω,Ωに基づく受信振幅推定量である。a(ω)=((I/r(ω))+(Q/i(ω))1/2であり、r(ω)=(1/2)(sinc((ω−Ω)(T/2))+sinc((ω+Ω)(T/2))),i(ω)=(1/2)(−sinc((ω−Ω)(T/2))+sinc((ω+Ω)(T/2)))、sinc(x)=sin(x)/xは標本化関数である。a(ω)=((I/r(ω))+(Q/i(ω))1/2であり、r(ω)=(1/2)(sinc((ω−Ω)(T/2))+sinc((ω+Ω)(T/2))),i(ω)=(1/2)(−sinc((ω−Ω)(T/2))+sinc((ω+Ω)(T/2)))である。I、Qは、受信波形をs(t)とした場合、I=(1/T)∫[−T/2,T/2]s(t)cosΩtdt、Q=−(1/T)∫[−T/2,T/2]s(t)sinΩtdt、I=(1/T)∫[−T/2,T/2]s(t)cosΩtdt、Q=−(1/T)∫[−T/2,T/2]s(t)sinΩtdtである。s(t)=a×sin(ωt+φ)であり、aは受信振幅、φは受信信号の位相である。)
  3. 前記受信手段は、前記送信器から出力された信号を、超音波、電磁波、および光のいずれか1つで受信することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の計測装置。
  4. 送信器と、当該送信器から出力される信号を受信して、当該送信器の速度またはその受信角周波数を計測する受信器と、を備えた計測システムであって、
    前記送信器は、単周波または複数周波の信号を出力する送信手段を備え、
    前記受信器は、
    前記送信器から出力される信号を受信する受信手段と、
    前記受信手段でドップラー効果を伴って受信した信号を、所定の時間幅を有する矩形窓で切り出し、少なくとも2つの異なる参照角周波数でそれぞれ直交検波する直交検波手段と、
    前記ドップラー効果を伴って受信した信号の受信角周波数がωであったと仮定した場合に、前記直交検波手段の前記少なくとも2つの異なる参照角周波数毎に、検波出力の複素成分I,Qを、それぞれ、前記矩形窓の所定の時間幅に基づく補正成分r(ω)、i(ω)で補正したものを2乗して加えることで受信電力推定値をそれぞれ算出し、算出した前記少なくとも2つの異なる参照角周波数の受信電力推定値の差分を示す評価関数が閾値以下となる場合の速度または角周波数を、前記送信器の速度またはその受信角周波数として推定する推定手段と、
    を備えたことを特徴とする計測システム。
  5. 前記評価関数は、|P(ω)|=|a(ω)−a(ω)|であり、前記推定手段は、|P(ω)|=|a(ω)−a(ω)|が閾値以下となる角周波数ωを、受信角周波数ωとして推定することを特徴とする請求項4に記載の計測システム。
    (但し、a(ω),a(ω)は、参照角周波数Ω,Ωに基づく受信振幅推定量である。a(ω)=((I/r(ω))+(Q/i(ω))1/2であり、r(ω)=(1/2)(sinc((ω−Ω)(T/2))+sinc((ω+Ω)(T/2))),i(ω)=(1/2)(−sinc((ω−Ω)(T/2))+sinc((ω+Ω)(T/2)))、sinc(x)=sin(x)/xは標本化関数である。a(ω)=((I/r(ω))+(Q/i(ω))1/2であり、r(ω)=(1/2)(sinc((ω−Ω)(T/2))+sinc((ω+Ω)(T/2))),i(ω)=(1/2)(−sinc((ω−Ω)(T/2))+sinc((ω+Ω)(T/2)))である。I、Qは、受信波形をs(t)とした場合、I=(1/T)∫[−T/2,T/2]s(t)cosΩtdt、Q=−(1/T)∫[−T/2,T/2]s(t)sinΩtdt、I=(1/T)∫[−T/2,T/2]s(t)cosΩtdt、Q=−(1/T)∫[−T/2,T/2]s(t)sinΩtdtである。s(t)=a×sin(ωt+φ)であり、aは受信振幅、φは受信信号の位相である。)
  6. 前記送信手段は、単周波または複数周波の信号を超音波、電磁波、および光のいずれか1つで出力し、
    前記受信手段は、前記送信器から出力された信号を、前記超音波、前記電磁波、および前記光のいずれか1つで受信することを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の計測システム。
  7. 送信器から出力される信号を受信して、当該送信器の速度またはその受信角周波数を計測する計測方法であって、
    前記送信器から出力される単周波または複数周波の信号を受信する受信工程と、
    前記受信工程で受信した信号を、少なくとも2つの異なる参照角周波数でそれぞれ直交検波する直交検波工程と、
    受信角周波数を仮定した場合の前記直交検波工程の各参照角周波数に基づく検波出力から各々算出される、受信振幅推定値または受信電力推定値の差分が目標精度となる場合の速度または角周波数を、前記送信器の速度またはその受信角周波数として推定する推定工程と、
    を含み、
    前記推定工程では、|P(ω)|=|a(ω)−a(ω)|が閾値以下となる角周波数ωを、受信角周波数ωとして推定することを特徴とする計測方法。
    (但し、a(ω),a(ω)は、参照角周波数Ω,Ωに基づく受信振幅推定量である。a(ω)=((I/r(ω))+(Q/i(ω))1/2であり、r(ω)=(1/2)(sinc((ω−Ω)(T/2))+sinc((ω+Ω)(T/2))),i(ω)=(1/2)(−sinc((ω−Ω)(T/2))+sinc((ω+Ω)(T/2)))、sinc(x)=sin(x)/xは標本化関数である。a(ω)=((I/r(ω))+(Q/i(ω))1/2であり、r(ω)=(1/2)(sinc((ω−Ω)(T/2))+sinc((ω+Ω)(T/2))),i(ω)=(1/2)(−sinc((ω−Ω)(T/2))+sinc((ω+Ω)(T/2)))である。I、Qは、受信波形をs(t)とした場合、I=(1/T)∫[−T/2,T/2]s(t)cosΩtdt、Q=−(1/T)∫[−T/2,T/2]s(t)sinΩtdt、I=(1/T)∫[−T/2,T/2]s(t)cosΩtdt、Q=−(1/T)∫[−T/2,T/2]s(t)sinΩtdtである。s(t)=a×sin(ωt+φ)であり、aは受信振幅、φは受信信号の位相である。)
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