JP2000162317A - ドップラ周波数測定方法およびドップラソナー - Google Patents

ドップラ周波数測定方法およびドップラソナー

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JP2000162317A
JP2000162317A JP33713998A JP33713998A JP2000162317A JP 2000162317 A JP2000162317 A JP 2000162317A JP 33713998 A JP33713998 A JP 33713998A JP 33713998 A JP33713998 A JP 33713998A JP 2000162317 A JP2000162317 A JP 2000162317A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】パルスビーム方式で高精度にドップラ周波数を
測定することができるドップラ周波数測定方法およびド
ップラソナーを提供する。 【解決手段】複数のパルスビームをPRF(pulse
repetition freqency)で送受信
してそのレベルを時系列に配列することによってドップ
ラ周波数波形を再現する。ただし、ドップラ周波数がP
RF以上の場合には、この波形は、実際のドップラ周波
数スペクトルの0〜PRFの領域への写像であるため、
単発のパルスビームによって計測した粗ドップラ周波数
によって実際のドップラ周波数の帯域を推定し、写像の
ピーク周波数fpに帯域周波数n×PRFを加算するこ
とによって精ドップラ周波数を算出する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、パルス信号を用
いて高精度のドップラ周波数測定を可能にしたドップラ
周波数測定方法およびドップラソナーに関する。
【0002】
【発明が解決しようとする課題】船舶の種類によっては
非常に高精度の速度計測が必要なものがあり、また、通
常の船舶でも港内とりわけ接岸時には極めて低速の速度
制御が必要となる。しかし、通常のパルスドップラ装置
では、単発のパルスによる計測であるため1ノット程度
の速度分解能しか実現できない。これは、速度分解能
(周波数分解能)はパルス幅に比例するが、超音波パル
スビームは、パルスの先頭が対象物に反射してそのエコ
ー信号が返ってくるまでの時間以下のパルス幅でなけれ
ばビームを送信することができないからである。
【0003】したがって、対象物に接近するほど低速航
行になり、より高い速度分解能が必要になるが、このよ
うな場面ほどエコーの遅れ時間が短くなるため送信でき
るパルス幅が短くなり速度分解能が低下するという問題
点があった。
【0004】また、複数回の測定結果を平均して測定精
度を上げる技術も実用化されているが、この方式で1ヘ
ルツ以下の周波数分解能を実現するためには、極めて長
時間の積算平均処理が必要であり、上記岸壁に接近して
いる時などに適用できるものではなかった。
【0005】一方、送信用トランスデューサと受信用ト
ランスデューサを別々に設け、送信用トランスデューサ
は専ら連続波の超音波ビームを送信し、受信用トランス
デューサでは専らそのエコー信号を受信するようにし
て、長い時間幅のFFTを可能にすることにより高い周
波数分解能を実現することも考えられるが、連続波ビー
ムを送信するためには送信用トランスデューサに常時駆
動電力を印加する必要があるため、トランスデューサの
発熱や駆動回路の負荷など負担が大きく、パルス波に比
べてビーム出力を抑えざるを得ない。このため、連続波
ビームは、対象物に対して50メートル程度以内に接近
してからでなければ使用することができないという問題
点があった。
【0006】この発明は、パルスビーム方式で高精度に
ドップラ周波数を測定することができるドップラ周波数
測定方法およびドップラソナーを提供することを目的と
する。
【0007】
【課題を解決するための手段】請求項1の発明は、一定
間隔で送信された複数のパルス信号のエコー信号を受信
してサンプリングデータとし、このサンプリングデータ
を用いて離散フーリエ変換を行ってベースバンドのスペ
クトルのピーク周波数を求める手順と、パルス信号のエ
コー信号に基づいて概略のドップラ周波数を求め、この
概略のドップラ周波数に基づいて前記ベースバンドのス
ペクトルが真のスペクトルであるかまたは写像であるか
を求め、さらに、写像である場合には真のスペクトルと
の周波数差を求める手順と、前記ピーク周波数を前記周
波数差で補正することによって精ドップラ周波数を求め
る手順と、を有することを特徴とする。
【0008】請求項2の発明は、 (1) 周期信号であるパルス信号を送信して対象物で
反射したエコー信号を受信し、該エコー信号をフーリエ
変換して粗ドップラ周波数を求める (2) 周期信号であるパルス信号を送信して対象物で
反射したエコー信号を受信し、該エコー信号から前記パ
ルス信号の周波数成分を除去してドップラ周波数の波形
成分のみをサンプリング周波数PRFの複素数データ
(以下「PRFサンプリングデータ」という)として取
り出す (3) 手順(2)をパルス送信周波数PRFで繰り返
し実行する (4) 複数のPRFサンプリングデータを用いてフー
リエ変換し、ベースバンド(0Hz〜PRF)における
スペクトルのピーク周波数fdを求める (5) 手順(1)で求めた粗ドップラ周波数に基づ
き、ドップラ周波数のスペクトルの属する第n次帯域
(PRF×n〜PRF×(n+1)…n:整数)を割り
出す (6) 手順(4)で求めたfd、および、手順(5)
で求めたnを用い、fd+PRF×nの演算によって精
ドップラ周波数を求める の手順を有することを特徴とする。
【0009】請求項3の発明は、請求項2の発明におい
て、手順(1)を複数回繰り返し、求められた複数の粗
ドップラ周波数を平均した値を手順(5)の粗ドップラ
周波数として用いることを特徴とする。
【0010】請求項4の発明は、請求項2,3の発明に
おいて、手順(1)および手順(2)のうち、周期信号
であるパルス信号を送信して対象物で反射したエコー信
号を受信する手順を共通にしたことを特徴とする。
【0011】請求項5の発明は、請求項2〜4の発明に
おいて、サンプリング周波数fsがエコー信号の注目領
域の中心周波数fcに対してfs=4fc/(4k+
1)またはfs=4fc/(4k+3)、(k=0また
は正の整数)となるようなサンプリング周波数fsを用
いて該エコー信号をサンプリングし、このサンプリング
データ列に対して+1,−j,−1,+jまたは+1,
+j,−1,−jを順次乗算することによって、手順
(2)のエコー信号から前記パルス信号の周波数成分を
除去する手順を処理することを特徴とする。
【0012】請求項6の発明は、請求項1または請求項
2の発明において、送信された複数のパルス信号のエコ
ー信号を受信してサンプリングデータとし、このサンプ
リングデータを用いて離散フーリエ変換を行って得られ
る信号からMEM法やAR法などのスペクトル推定手法
を用いてベースバンドのスペクトルのピーク周波数を求
めることを特徴とする。
【0013】請求項7の発明は、送信用トランスデュー
サおよび受信用トランスデューサを別々に備え、請求項
1乃至請求項6に記載のドップラ周波数測定方法を用い
てドップラ周波数を測定するパルスモード測定手段と、
送信用トランスデューサから連続波の超音波信号を送信
してそのエコー信号を受信用トランスデューサで受信
し、このエコー信号をフーリエ変換することによってド
ップラ周波数を測定する連続波モード測定手段と、エコ
ー信号の遅延時間に基づいて対象物との距離を測定し、
その距離に応じて前記パルスモード測定手段または連続
波モード測定手段の一方を有効にする切換手段と、備え
たことを特徴とする。
【0014】請求項8の発明は、送受信兼用のトランス
デューサを用いて、所定周波数のパルス信号を送信して
対象物で反射したエコー信号を受信し、請求項1乃至請
求項6に記載のドップラ周波数測定方法を用いて該エコ
ー信号の周波数に基づいてドップラ周波数を求める単一
パルスモード測定手段を具備することを特徴とする。
【0015】≪発明の概要≫図面を参照してこの発明に
ついて説明する。パルス信号を送信して、そのエコー信
号を受信する。一般のパルスドップラ装置の場合このエ
コー信号をFFTしてピーク周波数を検出し、このピー
ク周波数と送信した超音波ビームの周波数との周波数差
をドップラ周波数として割り出す。この方式で検出した
ドップラ周波数の精度(周波数分解能)は、数十ヘルツ
〜数百ヘルツであり、これを複数回繰り返して平均化す
ることにより精度を1桁程度あげることができる。この
従来の単一パルスモードによるドップラ周波数の測定結
果をこの発明では概略のドップラ周波数である「粗ドッ
プラ周波数」として用いる。なお、上記処理は、エコー
信号を中間周波数にダウンコンバートした信号で行われ
る場合が多い。
【0016】そして、この発明では、エコー信号から元
のパルス信号の周波数成分を除去する(該周波数だけ周
波数シフトする)。パルス状のエコー信号は、極めて低
周波で波長の長いドップラ周波数の波形に対しては、図
1に示すようにその波形上の1点のサンプリングデータ
程度の時間幅である。そこで、これをPRFサンプリン
グデータとして用いる。実際には、パルス幅の中央値を
用いたり、一定区間を平均化するなどして1つのサンプ
リングデータを求める。
【0017】パルス信号を一定周波数PRF(puls
e repetition frequency)で繰
り返し送信して複数のPRFサンプリングデータを獲得
し、これを用いて離散フーリエ解析を行う。たとえば、
送信周期306ms(PRF=3.27Hz)のエコー
信号のPRFサンプリングデータを32点求めてフーリ
エ解析を行った場合には、ほぼ0.1Hzの周波数分解
能を得ることができる。このようにパルスドップラであ
りながら、極めて高い周波数分解能を得ることができる
(図1(A)参照)。
【0018】ただし、離散フーリエ解析のサンプリング
周波数はパルスの繰り返し周波数PRFであり、これは
数ヘルツ程度の低いものである(上記の例では3.27
Hzである)。このため、真のドップラ周波数がこれよ
りも高い場合があり、この場合、0ヘルツ(DC)〜P
RFのベースバンド(n=0)に現れるスペクトルは、
より高い帯域からの写像である(図1(B)参照)。そ
こで、前記粗ドップラ周波数を用いて真のドップラ周波
数がどの帯域(PRF×n〜PRF×(n+1)…n:
整数)からの写像であるかを割り出す。図2に信号の帯
域Bとサンプリング周波数fsに応じて発生する信号帯
域の写像パターンを示す。上記粗ドップラ周波数によっ
て求められた写像帯域の基底周波数n×PRFをベース
バンドスペクトルのピーク周波数fdに加算することに
よって精ドップラ周波数を求める。なお、請求項1,2
のピーク周波数は、単純なピークであってもよく、ピー
ク領域を加重平均または積分してピークの中心値を求め
てもよい。
【0019】
【発明の実施の形態】図面を参照してこの発明の実施形
態であるドップラソナーについて説明する。図3は同ド
ップラソナーの構成図、図4は同ドップラソナーの受信
部のブロック図である。このドップラソナーは、ドップ
ラ周波数の測定モードとして、単一パルスモード、連続
パルスモードの2種類のモードを備えている。
【0020】図3において、ドップラソナーは、トラン
スデューサ1、切換器2、送信部3,受信部4および制
御部5からなっている。送信部3は超音波ビームを形成
するための超音波信号を発生する駆動回路を有し、トラ
ンスデューサ1から超音波ビームを送信する回路であ
る。受信部4は、前記トランスデューサ1が受信したエ
コー信号を受信してそのドップラ周波数を測定する。切
換器2はトランスデューサ1の接続を送信部3側または
受信部4側に切り換える回路である。制御部5は、切換
器2、送信部3、受信部4を制御する。
【0021】トランスデューサ1から送信された超音波
ビームは対象物で反射し、そのエコーが再度トランスデ
ューサ1に受信される。装置(このドップラソナーを搭
載した移動体)が対象物に対して相対的に接近している
と(または遠ざかっていると)、エコーの周波数は、送
信周波数に対して上に(または下に)ドップラシフトし
ている。このドップラ効果によるシフト量であるドップ
ラ周波数が両者の相対速度に比例する。水中では音波の
伝搬速度は約1500m/秒であるため、送信周波数が
400kHzであれば、1Hzのドップラシフトが約
0.01ノット(約0.005m/秒)の相対速度に対
応する。
【0022】また、パルスビームを送信したのちそのエ
コーを受信するまでの時間差が装置と対象物との距離に
比例する。水中であれば、約0.133秒の時間遅れが
100mの距離に対応する。
【0023】図4の受信回路において、トランスデュー
サ1は、送信した超音波ビームのエコー信号を受信して
電気信号に変換する。このエコー信号は、送信周波数と
ほぼ同じ周波数(たとえば438kHz)であるが、対
象物との相対速度に応じて0〜±1kHz程度のドップ
ラシフトを受けている。このエコー信号は、高周波アン
プ11に入力される。高周波アンプ11はこの信号を後
段の回路で処理可能なレベルまで増幅してバンドパスフ
ィルタ13は不要周波数成分を除去し、帯域制限を加え
る。
【0024】アンプ14はこの中間周波に変換されたエ
コー信号を適当なレベルまで増幅したのちA/D変換器
15に入力する。A/D変換器15は、この信号を24
kHzのサンプリング周波数でサンプリング(アンダー
サンプリング)し、量子化・符号化することによってデ
ィジタルデータに変換する。438kHzの信号を24
kHzでアンダーサンプリングすると、438kHz±
6kHzの周波数領域のスペクトルが6kHz±6kH
z(0(DC)〜12kHz)および18kHz±6k
Hz(12kHz〜24kHz)に現れる。したがっ
て、438kHz付近に生じていたエコー信号のスペク
トルは、6kHz付近および18kHz付近に現れる。
【0025】なお、このように438kHzの信号を2
4kHzでサンプリングすることにより、15ノット程
度までの相対速度を測定するのであれば、必要な周波数
帯域幅は3kHz程度であるため、上記±6kHzの周
波数領域がサンプリングされることで十分なレンジをカ
バーすることができる。なお、エリアシングを生じさせ
ないため、前記バンドパスフィルタによって帯域を十分
に絞り込んでおけばよい。
【0026】A/D変換器15のアンダーサンプリング
によって、ディジタル変換されたエコー信号はDSP1
6に入力される。超音波パルスビームの送信・エコーの
受信は一定間隔(PRF)で繰り返し行われるため、D
SP16へのディジタルエコー信号の入力も定期的に行
われる。
【0027】DSP16は、入力されたエコー信号を用
いて単一パルスモードのドップラ周波数測定を行い、こ
れを粗ドップラ周波数として、正確なドップラ周波数で
ある精ドップラ周波数の属する帯域の特定に用いる。そ
して、直前までのパルスモード送受信データを用いて精
ドップラ周波数を割り出す。
【0028】以下、図5のフローチャートおよび図6の
ベースバンドおよびn次写像バンドの図を参照してDS
P16の処理動作を説明する図5において、A/D変換
器15からエコー信号が入力されると(s1)、この反
射パルス信号を用いて従来と同様の単一パルスによるド
ップラ周波数の計測を行う(s2)。すなわち、この2
4kHzでサンプリングされた信号でFFTを実行し、
周波数分解能数十Hz程度の粗ドップラ周波数を割り出
し、これを記憶する。
【0029】つぎにこのエコー信号を6kHz下方に周
波数シフトする。ただし、サンプリングにおいてスペク
トル反転が発生する場合には、18kHz下方に周波数
シフト、または6kHz上方にシフトする。すなわち、
超音波パルスの送信周波数成分を除去し、ドップラ周波
数成分のみが現れるようにデモデュレーションする(s
4)。そして、ベースバンドのスペクトル以外を除去す
るようにフィルタリングする(s5)ことで、データを
複素数化する(s6)。デモジュレーションされたエコ
ー信号は図1に示したようにドップラ周波数波形の一部
であるため、この信号の中央部の一部区間を平均するな
どしてPRFサンプリングデータを割り出す(s7)。
s1で受け取るエコー信号はパルス繰り返し周波数PR
F毎に入力されるため、s1〜s7の処理はエコー信号
が入力される毎に繰り返し実行される。
【0030】所定数(たとえば32)のエコー信号が入
力されるごとに(s8)、s9以下の精ドップラ周波数
の算出動作に進む。または、FFTに必要な点数の一部
を更新しながら精ドップラ周波数の算出動作に進む。
【0031】s9以下では以下の動作を実行する。まず
精度がPRF以下になるように粗ドップラ周波数を平均
化する。すなわち、1回の粗ドップラ周波数の測定では
真のドップラ周波数を含む帯域(周波数PRFのn倍の
周波数にある周波数帯域幅の周波数領域)を動揺などの
外乱雑音によって絞り込むことができないため、精度が
PRF以下になるように蓄積してきた粗ドップラ周波数
のうち最新のものから必要な回数分を平均する。そして
蓄積したPRFサンプリングデータのうち最新の所定点
数(たとえば128)を用いてFFTを実行し(s1
0)、ベースバンドに変換してピーク周波数fdを検出
する(s11)。このピーク周波数fdは、単純なピー
クであってもよく、ピーク領域を加重平均または積分し
てピークの中心値を求めてもよい。ただし、実際のドッ
プラ周波数はベースバンドよりも高い周波数または低い
周波数である可能性があるため、前記s9で算出された
平均の粗ドップラ周波数に基づいて真のドップラ周波数
がどの写像帯域(第n写像帯域:n×PRF〜(n+
1)×PRF)にあるかを割り出す(s12)。図6の
場合にはn=5の写像帯域を示しているとする。そし
て、前記ピーク周波数fdにn×PRFを加算して精ド
ップラ周波数を算出する(s13)。
【0032】なお、上記では粗ドップラ周波数の検出に
おいて平均処理を用いた例を示したが、粗ドップラ周波
数の検出において、FFTによって求めた周波数範囲を
さらに狭い範囲に納めてより周波数精度をあげるため
に、MEM(最大エントロピー法やAR法(自己回帰
法)などのスペクトル推定手法をFFT結果に組み合わ
せる。これによって、PRFが低いときに精度の高い周
波数範囲を決定することができる。
【0033】MEM等のスペクトル推定法では、少ない
データ点数においても、鋭いピーク周波数を検出するこ
とができるという特徴を有するが、正しいピーク以外に
誤ピークも多く発生させるため、スペクトル推定法で検
出された複数のピークのうち、FFTによって求められ
たブロードなピーク周波数の近傍のものを選択すること
によって正確に鋭いピークを選択することが可能にな
る。
【0034】ただし、粗ドップラ周波数を用いてスペク
トル折返し写像の帯域番号nを求める場合、ドップラ周
波数(ピーク周波数)fdがPRFの整数倍の場合に
は、この周波数がどの写像に属するものかは上記方法で
は求めることができなくなる。特にfd=PRFの場合
にはドップラ周波数成分が離散周波数0の上に折り返さ
れるためDC成分と区別がつかなくなる。このため、こ
のような場合には、再サンプリングした元のデータを直
接調べるなどの別の方法で求める。
【0035】なお、PRFは常に一定ではなく、対象物
との距離に応じて決定される。すなわち、対象物との距
離が長いとエコーの遅延時間が長いためPRFは小さく
なり(その変わりパルス幅が長くなる)、対象物との距
離が短いとエコーの遅延時間が短いためPRFを大きく
することができる。
【0036】このように単一のトランスデューサ1を用
いたドップラソナーで1Hz以下の周波数分解能を得る
ことができるため、従来より船舶等に搭載されているド
ップラソナーの処理アルゴリズムを変更するのみで計測
精度を著しく向上させることも可能である。たとえば、
岸壁に接岸する場合などは、微速航行となりドップラ周
波数も小さくなり、岸壁との距離も短くなるためPRF
を10Hz(1秒間に10回パルスビームを送受信)程
度にあげることができるため、極めて有効にこの方式を
適用することができる。
【0037】図7〜図10は、上記方式でドップラ周波
数を算出するシミュレーション結果を示す図である。図
7,図8は、0〜PRF(Hz)の基本範囲(n=0)
に真のドップラ周波数が存在する場合(図1(A)参
照)をシミュレートしたものである。このシミュレーシ
ョンは基本周波数438kHz、ドップラ周波数=1.
2Hzのパルス信号をPRF=5.8594Hzで繰り
返し受信し、24kHzでサプリングしたとして実行し
た。図7(A)は連続した送信パルスに対するエコー信
号を示す図、図7(B)は同図(A)に示したもののう
ち先頭のエコー信号を時間軸方向に拡大した図である。
また、図7(C)は同図(B)の波形をFFT解析した
結果を示すスペクトル波形であり、6kHz付近と18
kHz付近にエコー信号のスペクトルのピークが存在し
ている。図7(D)は同図(C)のエコー信号をデモジ
ュレーションした結果であり、6kHz付近にあったス
ペクトルのピークが0Hz付近に移動している。このの
ち、12kHz近傍の周波数成分をフィルタリングによ
って除去し、複素数の信号を形成する。
【0038】図8(A)は、ローパスのフィルタリング
の後に出力される複素ドップラ信号の実数部を示してい
る。このシミュレーションでは図8(A)の信号の前後
に現れる不連続点におけるリンギングを避けるため、同
図(B)のようにその中央の一部分のみを用いて平均
し、1つの受信波信号に対するサンプル値を求めてい
る。図8(C)は図7(A)に示す複数の受信波信号に
対する実数部のサンプル値を時系列に表示したものであ
る。すなわち、復調されたエコー信号をサンプリング周
波数PRFによって再サンプリングした信号波形を表し
ている。そして、図8(D)が同図(C)の信号をFF
T解析した結果を示し、このパワースペクトルのピーク
周波数から求めたドップラ周波数は、1.2016Hz
であり、0.016Hzの誤差でドップラ周波数を求め
ることができた。なお、図8(C)のサンプル点数は8
点であるがゼロデータを末尾に追加して(補間はしてい
ない)1024点でFFTを行った。
【0039】図9は、真のドップラ周波数がPRFより
も高い場合(図1(B)参照)をシミュレートしたもの
である。このシミュレーションは基本周波数438kH
z、ドップラ周波数=15.0Hzのパルス信号をPR
F=2.9297Hzで繰り返し受信し、24kHzで
サプリングしたとして実行した。同図(A)は受信した
信号を直接FFTした結果を示す図である。複数のパワ
ースペクトルから平均粗ドップラ周波数を計算すると1
4.65Hzが得られる。これによると、ドップラ周波
数fdに対して、 |fd|≧n・PRF を満足する最大整数nは5になる。ただし、より精度を
上げるためには、粗ドップラ周波数の計算はデモジュレ
ーション、フィルタリング後の複素ドップラ信号から求
めることも可能である。同図(B)は図8(C)に対応
する図であり、サンプリング周波数PRFによって再サ
ンプリングしたドップラ信号の実数部を表している。同
図(C)は(B)のFFT解析結果を示している。
【0040】(C)のパワースペクトルのピーク周波数
0.3519Hzにn・PRF、すなわち、n=5であ
るため、2.9297×5=14.6485Hzを加算
すると、精ドップラ周波数15.0004Hzが求ま
る。(D)は(C)の信号に折り返し分に相当するゼロ
データを挿入し折り返しスペクトルを生成している。右
端のスペクトルピークが所望のドップラ周波数であり、
左端のスペクトルが(C)に示している再サンプリング
後に得られるスペクトルに相当している。
【0041】以上は、ドップラ周波数がプラスの場合、
すなわち、装置が対象物に接近している場合について検
討したが、ここではドップラ周波数がマイナスの場合に
ついて検討する。すなわち、図10(A)に示すように
デモジュレーション・フィルタリング後の複素ドップラ
信号周波数fdが、たとえば−2fsよりも低い場合を
想定する。この信号をfs(=PRF)で再サンプリン
グすると、同図(B)の離散周波数スペクトルが得られ
る。このディジタル信号をFFTすると、(C)の離散
的周波数スペクトルが得られる。この場合には|fd|
≧n・PRFを満足する最大整数nは2になるが、マイ
ナス周波数の場合には−(n+1)を用いるため、属す
る写像帯域は第−3帯域である。したがって、(C)の
離散周波数kdから求まる連続時間での換算周波数に−
3・PRFを加算する。
【0042】図11は上記ドップラ周波数がマイナスの
場合のシミュレーションを示す図である。このシミュレ
ーションではドップラ周波数=−6.6Hz、PRF=
2.9297Hzの場合を示している。同図(A)は1
回の送信に対して受信した信号を直接FFTした結果を
示す図である。同図(B)は図8(C)に対応する図で
あり、サンプリング周波数PRFによって再サンプリン
グしたドップラ信号の実数部を表している。同図(C)
は(B)のFFT解析結果を示している。
【0043】同図(A)のFFT結果に基づき、複数の
パワースペクトルから平均粗ドップラ周波数を計算す
る。また、(C)のパワースペクトルから求まるピーク
周波数は2.1887Hzであり、これに粗ドップラ周
波数より求めたn=2に基づき、−(n+1)・PRF
を加算する、すなわち、2.9297×(−3)=−
8.7891Hzを加算すると、精ドップラ周波数−
6.6004Hzが求まる。(D)はCの信号に折り返
し分に相当するゼロデータを挿入し折り返しスペクトル
を生成している。ただし、ドップラ周波数が負値である
ため、(D)のスペクトルが全体的にn・FPF=3P
RFだけ左にシフトしたスペクトルになっている。
【0044】以上のシミュレーションで明らかなよう
に、粗ドップラ周波数が得られる平均処理以降では精ド
ップラ周波数の計算に数秒間の測定データを用いること
で可能である。つまり、数秒前からの測定データを基に
計算するため、計測ドップラ周波数の時間分解能が飛躍
的に向上することが判る。
【0045】なお、図9(D)に示しているように、直
接補間によっても所望ピーク周波数を決定できる。この
ため、補間法を用いる方法も可能である。また、このシ
ミュレーションではカウンタ回路を想定しているため、
サンプリング周波数24kHzの基準周波数から波形す
る周波数PRFを用いているが、PRFは任意である。
【0046】なお、DSP16のデモジュレーション処
理は、サンプリングデータ例に対して+1,−j,−
1,+jを順次乗算するのみでよい。以下、この簡略化
された演算処理方式について説明する。なお、この処理
を可能にするために、A/D変換器15のサンプリング
周波数を24kHzに設定し、438kHz付近にスペ
クトルが展開しているエコー信号をアンダーサンプリン
グした。
【0047】デモジュレーションは、エコー信号のスペ
クトルが展開している注目領域の中心周波数をゼロ周波
数(DC)にシフトする処理、すなわち、周波数軸に対
してスペクトルを並行移動する処理である。ここで、A
/D変換器15から入力されるエコー信号のサンプリン
グデータ列をx(n)と表す。このサンプリングデータ
列x(n)は、上記のようにサンプリング周波数fs
(=24kHz)でサンプリングされ、中心周波数fc
(=6kHz)の離散時間信号となったものである。こ
れに対して、以下のような離散複数指数関数列c(n)
を乗算する。
【0048】
【数1】 このc(n)をx(n)の各項に乗算することによって
中心周波数fcが0(DC)になるように周波数スペク
トルをシフトすることができる。すなわち、データ列x
(n)のDFT変換から求まる周波数スペクトルが、
【数2】 であるのに対し、データ数列x(n)に離散複素指数関
数c(n)を乗算したデータ列の周波数スペクトルXs
hift(k)が、
【数3】 となることから、この乗算によりデータ列の周波数スペ
クトルX(k)が周波数軸に沿ってシフトされているこ
とが分かる。すなわち、
【数4】 によってスペクトルの注目領域の中心周波数fcを周波
数ゼロとするように、スペクトル全体を周波数軸に沿っ
てシフトすることができる。
【0049】また、前記c(n)の指数部(−jΩ
c n)のnを、自然数Mを加算することによって(n+
M)に置き換えた場合、すなわち,離散複素指数関数を
M個シフトしてデータ数列に乗算した場合でも、
【数5】 で明らかなように、周波数パワースペクトルはこのずれ
に影響されることなく同様にシフトされる。
【0050】ここで、サンプリング周波数fsと注目領
域の中心周波数fcは、上述したように fs=4fc/(4k+1) ,k=0,1,2,… となるような関係に設定されている。このため、上記、
Ωc は、 Ωc =2π(fc/fs)=2πk+π/2 となり、前記離散複素指数関数c(n)は、
【数6】 となる。したがって、任意の整数値nに対して、
【数7】 となり、+1,−j,−1,+jの4種類の値のみを取
ることが分かる。
【0051】したがって、x(n)に対するc(n)の
乗算は、x(n)に対して+1,−j,−1,+jを順
次乗算するのみでよい。また、この順序が維持されてい
れば、〔数5〕で証明されたように、x(n)の各デー
タと+1,−j,−1,+jとの対応は任意である。
【0052】上記の例では6kHz付近に展開している
エコー信号のスペクトルを用いているが、18kHz付
近に展開しているスペクトルを用いることも可能であ
る。この場合、注目領域の中心周波数fc=18kHz
となり、 fs=4fc/(4k+3) ,k=0,1,2,… となるため、 Ωc =2π(fc/fs)=3π/2 となり、Ωc =π/2の場合と逆回りの+1,+j,−
1,−jをx(n)に乗算することで18kHzを0H
zにシフトすることができる。
【0053】しかし、実際に乗算を行う必要はなく、乗
算した場合に合わせて正負符号制御および実数虚数制御
をするだけでよい。すなわち、c(n)がマイナス符号
の場合には符号反転計算のみを行い、c(n)が実数の
場合はx(n)の値を全て実数部として処理し、c
(n)が虚数の場合はx(n)の値を全て虚数部として
処理すればよい。
【0054】このように、 fs=4fc/(4k+1) ,k=0,1,2,… となるようなサンプリング周波数fsでサンプリングす
ることにより、サンプリングデータのサンプリング番号
に基づいて符号制御および実数部,虚数部に割り振るの
みの処理で周波数スペクトルのシフトを行うことがで
き、上記指数関数を実際に乗算して演算する必要がなく
なるため、処理を大幅に簡略化することができる。
【0055】そして、図12のようなレジスタの転記を
行うことによって、x(n)の周波数スペクトルをシフ
トすると同時に、実数値としてサンプリングされたデー
タ列x(n)を複素数に変換することができる。ここ
で、A/D変換器15から入力されたデータ列x(n)
を記憶するA/Dデータバッファをx(n)で表し、複
素数バッファをX(n)で表す。
【0056】この図において、x(0)はそのままX
(0)の実数部に転記され、X(0)の虚数部には0が
書き込まれる。x(1)は正負の符号を反転されたのち
X(1)の虚数部に転記され、X(1)の実数部には0
が書き込まれる。x(2)は正負の符号を反転されたの
ちX(2)の実数部に転記され、X(2)の虚数部には
0が書き込まれる。x(3)はそのままX(3)の虚数
部に転記され、X(3)の実数部には0が書き込まれ
る。このように、離散複素指数関数の演算結果を複素単
位乗数データ列(+1、−j、−1、+jの任意の値か
ら開始する数列)の値にしたがって順次符号反転および
転記を繰り返すのみでこの周波数シフトを行うことがで
き、指数関数を実際に乗算して演算する必要がなくな
り、処理を大幅に簡略化することができる。
【0057】さらに、前記複素数バッファX(n)の実
数部Real(n)、Imaginary(n)のうち
一方は必ず0であるため、上記規則に基づいて0になる
側が分かっていれば0を記憶するバッファを省略してバ
ッファの記憶領域を実質的に半分にすることも可能であ
る。
【0058】なお、図4に示す受信部はアンダーサンプ
リングを利用するためのサンプリング周波数fsと注目
領域の中心周波数fcとの関係をfs=4fc/(4k
+1)としているが、送信する超音波パルスの周波数を
任意に設定できない場合には、一旦中間周波数にダウン
コンバートし、上記関係式を満足する周波数としてサン
プリングすることも可能である。また、アンダーサンプ
リングを用いない従来方式のパルスドップラ法において
も同様に処理可能である。
【0059】図13に受信したエコー信号を一旦中間周
波信号にダウンコンバートし、この信号を通常のサンプ
リングによってA/D変換する構成の受信部を示してお
く。この図において図4の受信部と同様の回路は同一番
号を付す。この例ではトランスデューサ1が送信する超
音波パルスの周波数は440kHzである。このエコー
信号を一旦12.5kHzの中間周波信号に変換するた
め、ミキサ12で442.5kHzの信号とミキシング
し、バンドパスフィルタ13で高域の信号を除去する。
このバンドパスフィルタ13はローパスフィルタでもよ
い。こののち、この12.5kHzを中心に展開してい
るエコー信号を50kHzのサンプリング周波数でサン
プリングする。これにより、サンプリング周波数fsと
注目領域の中心周波数fcとの関係をfs=4fsにす
ることができる。
【0060】ここで、パルス波でドップラ周波数(速
度)を測定するパルスモードと連続波でドップラ周波数
を測定する連続波モードの両モードによる測定が可能な
ドップラソナーにこの発明を適用した場合について説明
する。連続波モードは、対象物との距離が数十メートル
以下になったとき連続波を送受信して0.1Hz程度の
極めて高精度の周波数分解能を実現するモードである。
ただし、連続波はトランスデューサや駆動回路への負担
が大きいため高出力にすることができず、使用可能範囲
は上記のように数十メートルの範囲に限定される。
【0061】図14は、パルスモード・連続波モードの
切り換えが可能なドップラソナーの概略ブロック図であ
る。このドップラソナーは、送信用トランスデューサ2
1、受信用トランスデューサ22、送信部23、受信部
24および制御部25からなっている。このようにこの
ドップラソナーは連続波モードの動作を可能にするた
め、送信用トランスデューサ21と受信用トランスデュ
ーサ22を別々に備えている。ただし、受信部24のハ
ードウェア構成は図3に示したものと同じでよい。
【0062】図15は同受信部24のDSPの動作を示
すフローチャートである。まず、超音波パルスを送受信
し(s21)、距離を測定する(s22)。これはエコ
ーの伝搬時間遅れによって測定する。この距離に基づい
てパルスモード(s24以下)または連続波モード(s
40以下)を選択する(s23)。
【0063】測定された距離が50メートル以上でパル
スモードが選択されたとき、まず単一パルスモードで速
度を測定する(s24〜27)。すなわち、パルスを送
受信し(s24)、受信信号をFFTして(s26)、
そのピークから粗ドップラ周波数fdを求める(s2
7)。このとき同時に距離データもアップデートしてお
く(s25)。これは精度は悪いものであるがどのよう
な場合でも問題なく速度が得られる。なお、ここではデ
ータは複素数として処理する。
【0064】つぎにfdがPRFの何倍かを調べる。す
なわち、|fd|≧n×PRFを満足する最大整数nを
求める(s28)。受信したエコー信号からこのエコー
信号の代表値を再サンプリングデータとして求める(s
29)。たとえば平均値、エコー信号の中心点の値等を
再サンプリングデータとする。この処理は継続的に実行
されており、再サンプリングデータは過去から蓄積され
ているものとする。
【0065】蓄積されている再サンプリングデータから
FFTに必要な点数(32,64,128点等)だけ集
め、FFT処理前に窓関数を乗算する(s30)。窓関
数の乗算は省略してもよい。そしてFFT演算を行い
(s31)、ドップラ周波数を求めるために、周波数パ
ワースペクトルの最大ピークを求める(s32)。この
とき補間法によって分解能をあげることもできる。補間
法としては、田部井・上田法(電子情報通信学会論文誌
A,vol.J70−A,pp.798−805,19
87)を用いればよい。このピーク周波数にn・PRF
を加算して所望ドップラ周波数を求め(s33)、この
値を出力する(s34)。fdが負の場合には−(n+
1)・PRFを加算する。
【0066】距離が50メートル以下で連続波モードが
選択された場合には、送信用トランスデューサから連続
波を送信し、このエコー信号を受信してこの信号を連続
パルスモード時と同様にデモジュレーションするととも
に、少ないサンプル点数で周波数分解能を上げるために
デシメーションを行い(s42)、1024点程度のサ
ンプル点数でs30以下のFFT処理を実行する。この
ように少ないサンプル点数を用いても10秒程度の時間
幅のエコー信号をFFTすることができるため、連続波
モードでは0.1Hz程度の極めて高精度の周波数分解
能を得ることができる。そして、連続波モードの場合で
も一時的にパルスモードに復帰して(s40→s4
3)、距離を測定する。この距離が連続波モードを維持
できる範囲内の距離であれば、このパルスエコー信号を
連続波のエコー信号と結合してs41にもどる。距離が
連続波モードを維持できないほど離れた場合にはパルス
モードに移行するためs24に進む。
【0067】このようにこのドップラソナーでは、距離
に応じて連続波モードとパルスモード(連続パルスモー
ド)とを切り換えることができるため、対象物との距離
に応じた最も精度の高い速度測定(ドップラ周波数測
定)をすることができる。なお、連続波モードとパルス
モードとを切り換える距離にはヒステリシスを持たせて
もよい。
【0068】なお、上記実施形態では超音波を用いたド
ップラソナーについて説明したが、この発明は超音波以
外でも電磁波など波動信号のドップラ周波数を測定する
場合に広く適用できるものである。さらに、測定された
ドップラ周波数に基づいて割り出される変量も速度に限
定されない。
【0069】
【発明の効果】この発明によれば、一定周期で送信され
るパルス信号に起因するエコー信号のそれぞれを1つの
(再)サンプリングデータとして用いることにより、短
時間でのフーリエ解析が可能になり、高い周波数分解能
でドップラ周波数を求めることができる。
【0070】この場合に、エコー信号(パルス信号)の
繰り返し周波数PRFよりもドップラ周波数が高い場合
には、上記フーリエ解析で得られるドップラ周波数は基
本帯域への写像周波数になるが、単一パルスをフーリエ
解析して求めた粗ドップラ周波数により真のドップラ周
波数の属する帯域が求められるため、この帯域の基底周
波数(n×PRF)を前記写像周波数に加算することに
よって正確なドップラ周波数を求めることができる。
【0071】このようにこの発明によれば、ドップラ周
波数の帯域にかかわらず高い周波数分解能を得ることが
できるうえ、必要な周波数分解能を得るための時間幅や
ドップラ周波数の属する帯域を特定するための粗ドップ
ラ周波数平均回数は大きくないため、短時間での測定が
可能であり、時間分解能も向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明のドップラ周波数の割り出しの方式を
説明する図である。
【図2】この発明のドップラ周波数の割り出しで生じる
写像を説明する図である。
【図3】この発明の実施形態であるドップラソナーの概
略構成図である。
【図4】同ドップラソナーの受信部の構成を示す図であ
る。
【図5】同ドップラソナーのDSPの動作を示すフロー
チャートである。
【図6】同DSPでPRFで再サンプリングした場合に
形成される写像を示す例である。
【図7】この発明の方式によるドップラ周波数計測のシ
ミュレーションを示す図である。
【図8】この発明の方式によるドップラ周波数計測のシ
ミュレーションを示す図である。
【図9】この発明の方式によるドップラ周波数計測のシ
ミュレーションを示す図である。
【図10】この発明の方式によるドップラ周波数計測の
シミュレーションを示す図である。
【図11】この発明の方式によるドップラ周波数計測の
シミュレーションを示す図である。
【図12】前記DSPにおけるデモジュレーション処理
を説明する図である。
【図13】この発明の他の実施形態であるドップラソナ
ーの概略ブロック図である。
【図14】この発明の他の実施形態であるドップラソナ
ーの概略ブロック図である。
【図15】同ドップラソナーのDSPの動作を示すフロ
ーチャートである。
【符号の説明】
1…トランスデューサ、2…切換器、3…送信部、4…
受信部、5…制御部、15…A/D変換器、16…DS
P 21…送信用トランスデューサ、22…受信用トランス
デューサ、23…送信部、24…受信部、25…制御部

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 一定間隔で送信された複数のパルス信号
    のエコー信号を受信してサンプリングデータとし、この
    サンプリングデータを用いて離散フーリエ変換を行って
    ベースバンドのスペクトルのピーク周波数を求める手順
    と、 パルス信号のエコー信号に基づいて概略のドップラ周波
    数を求め、この概略のドップラ周波数に基づいて前記ベ
    ースバンドのスペクトルが真のスペクトルであるかまた
    は写像であるかを求め、さらに、写像である場合には真
    のスペクトルとの周波数差を求める手順と、 前記ピーク周波数を前記周波数差で補正することによっ
    て精ドップラ周波数を求める手順と、 を有するドップラ周波数測定方法。
  2. 【請求項2】(1) 周期信号であるパルス信号を送信
    して対象物で反射したエコー信号を受信し、該エコー信
    号をフーリエ変換して粗ドップラ周波数を求める (2) 周期信号であるパルス信号を送信して対象物で
    反射したエコー信号を受信し、該エコー信号から前記パ
    ルス信号の周波数成分を除去してドップラ周波数の波形
    成分のみをサンプリング周波数PRFの複素数データ
    (以下「PRFサンプリングデータ」という)として取
    り出す (3) 手順(2)をパルス送信周波数PRFで繰り返
    し実行する (4) 複数のPRFサンプリングデータを用いてフー
    リエ変換し、ベースバンド(0Hz〜PRF)における
    スペクトルのピーク周波数fdを求める (5) 手順(1)で求めた粗ドップラ周波数に基づ
    き、ドップラ周波数のスペクトルの属する第n次帯域
    (PRF×n〜PRF×(n+1)…n:整数)を割り
    出す (6) 手順(4)で求めたfd、および、手順(5)
    で求めたnを用い、fd+PRF×nの演算によって精
    ドップラ周波数を求める の手順を有するドップラ周波数測定方法。
  3. 【請求項3】 手順(1)を複数回繰り返し、求められ
    た複数の粗ドップラ周波数を平均した値を手順(5)の
    粗ドップラ周波数として用いる請求項2に記載のドップ
    ラ周波数測定方法。
  4. 【請求項4】 手順(1)および手順(2)のうち、周
    期信号であるパルス信号を送信して対象物で反射したエ
    コー信号を受信する手順を共通にした請求項1または請
    求項3に記載のドップラ周波数測定方法。
  5. 【請求項5】 サンプリング周波数fsがエコー信号の
    注目領域の中心周波数fcに対して fs=4fc/(4k+1) ,k=0,1,2,… または fs=4fc/(4k+3) ,k=0,1,2,… となるようなサンプリング周波数fsを用いて該エコー
    信号をサンプリングし、このサンプリングデータ列に対
    して+1,−j,−1,+jまたは+1,+j,−1,
    −jを順次乗算することによって、手順(2)のエコー
    信号から前記パルス信号の周波数成分を除去する手順を
    処理する請求項2、請求項3または請求項4に記載のド
    ップラ周波数測定方法。
  6. 【請求項6】 送信された複数のパルス信号のエコー信
    号を受信してサンプリングデータとし、このサンプリン
    グデータを用いて離散フーリエ変換を行って得られる信
    号からMEM法やAR法などのスペクトル推定手法を用
    いてベースバンドのスペクトルのピーク周波数を求める
    ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のドッ
    プラ周波数測定方法。
  7. 【請求項7】 送信用トランスデューサおよび受信用ト
    ランスデューサを別々に備え、 請求項1乃至請求項6に記載のドップラ周波数測定方法
    を用いてドップラ周波数を測定するパルスモード測定手
    段と、 送信用トランスデューサから連続波の超音波信号を送信
    してそのエコー信号を受信用トランスデューサで受信
    し、このエコー信号をフーリエ変換することによってド
    ップラ周波数を測定する連続波モード測定手段と、 エコー信号の遅延時間に基づいて対象物との距離を測定
    し、その距離に応じて前記パルスモード測定手段または
    連続波モード測定手段の一方を有効にする切換手段と、 備えたドップラソナー。
  8. 【請求項8】 送受信兼用のトランスデューサを用い
    て、所定周波数のパルス信号を送信して対象物で反射し
    たエコー信号を受信し、請求項1乃至請求項6に記載の
    ドップラ周波数測定方法を用いて該エコー信号の周波数
    に基づいてドップラ周波数を求める単一パルスモード測
    定手段を具備することを特徴とするドップラソナー。
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