JP5590715B2 - 液晶配向剤および液晶表示素子 - Google Patents
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Description
このような液晶表示素子においては、液晶分子を基板面に対し所定の方向に配向させるため、基板表面に液晶配向膜を設ける必要がある。この液晶配向膜は、通常、基板表面に形成された有機膜表面をレーヨン等の布材で一方向にこする方法(ラビング法)により形成されている。しかし、液晶配向膜の形成をラビング処理により行うと、工程内でほこりや静電気が発生し易いため、配向膜表面にほこりが付着して表示不良発生の原因となるという問題があった。特にTFT(Thin Film Transistor)素子を有する基板の場合には、発生した静電気によってTFT素子の回路破壊が起こり、歩留まり低下の原因となるという問題もあった。さらに、今後ますます高精細化される液晶表示素子においては、画素の高密度化に伴い基板表面に凹凸が生じるために、均一にラビング処理を行うことが困難となりつつある。
液晶表示素子において液晶分子を配向規制する別の手段として、基板表面に形成したポリビニルシンナメート、ポリイミド、アゾベンゼン誘導体等の感光性薄膜に偏光または非偏光の放射線を照射することにより、液晶配向能を付与する光配向法が知られている。この方法によれば、静電気やほこりを発生することなく、均一な液晶配向を実現することができる(特許文献3〜13参照)。
前記光配向法は、垂直配向型の液晶表示素子において液晶分子の傾き方向を制御する方法としても有用であることが知られている。すなわち、光配向法により配向規制能およびプレチルト角発現性を付与した垂直配向性の液晶配向膜を用いることにより、電圧印加時の液晶分子の傾き方向を均一に制御できることが知られている(特許文献11〜12および14〜16参照)。
しかしながら、TN型、STN型または垂直配向型の液晶表示素子に適用される液晶配向膜を光配向法によって形成しようとした場合に、工業的に十分な程度の液晶配向規制力を安定して発現する液晶配向剤は、今のところ知られていない。特に垂直配向型の液晶表示素子に適用する場合にあっては、基板面に対して垂直方向の液晶配向規制力を発現すべく、液晶配向膜となる重合体は剛直な液晶ライクの構造を有さざるを得ず、これを含有する液晶配向剤の塗布性ないし印刷性が損なわれるとの問題があり、現在まで良好な液晶配向性と良好な塗布性とを併有する垂直配向型液晶配向剤は知られていない。
しかしながら、かかる横電界方式の液晶表示素子に適用される液晶配向膜を光配向法によって形成した場合には、液晶分子の配向規制力が十分ではないことが指摘されており、改善が求められている。
本発明の別の目的は、液晶配向規制力に優れ、表示品位に優れる液晶表示素子を提供することにある。
本発明のさらに別の目的および利点は、以下の説明から明らかになろう。
下記式(1’)および(2’)
で表される基であり、aは0〜3の整数であり、bは0〜3の整数であり、cは0または1であり、aが2または3のとき、複数存在するR2およびXは、それぞれ同一であっても相違していてもよい。)
のそれぞれで表される構造よりなる群から選択される少なくとも1種の構造を有する感放射線性重合体を含有する液晶配向剤によって達成される。
本発明の上記目的および利点は、第二に、
上記の液晶配向剤から形成された液晶配向膜を具備する液晶表示素子によって達成される。
かかる本発明の液晶配向剤から形成された液晶配向膜を具備する本発明の液晶表示素子は、高品位の表示が可能であり、しかも安価であるため、各種の表示装置として有効に適用することができる。
上記感放射線性重合体の骨格としては、例えばポリアミック酸、ポリイミド、ポリアミック酸エステル、ポリオルガノシロキサン、ポリエステル、ポリアミド、セルロースおよびその誘導体、ポリアセタール、ポリスチレンおよびその誘導体、ポリ(スチレン−フェニルマレイミド)およびその誘導体、ポリ(メタ)アクリレート等を挙げることができるが、これらのうちポリオルガノシロキサンが好ましい。すなわち、本発明の液晶配向剤が含有する感放射線性重合体としては、上記式(1’)および(2’)のそれぞれで表される基よりなる群から選択される少なくとも1種の基を有する感放射線性ポリオルガノシロキサンであることが好ましい。
本発明の液晶配向剤に好ましく含有される感放射線性ポリオルガノシロキサンは、上記式(1’)および(2’)のそれぞれで表される基よりなる群から選択される少なくとも1種の基を有するものである。
上記式(1’)および(2’)におけるR1の炭素数1〜20のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、エイコシル基等を;
炭素数1〜20のフルオロアルキル基としては、例えばトリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ノナフルオロブチル基、トリデカフルオロヘキシル基、ペンタデカフルオロヘプチル基、ヘプタデカフルオロオクチル基、ノナデカフルオロノニル基等を;
ステロイド骨格を有する1価の基としては、例えば3−コレスタニル基、3−コレステニル基等を、それぞれ挙げることができる。上記のアルキル基およびフルオロアルキル基としては、直鎖のものが好ましい。
このR1が水素原子、フッ素原子、炭素数1〜5のアルキル基または炭素数1〜5のフルオロアルキル基である場合、本発明の液晶配向剤はTN型、STN型または横電界方式の液晶表示素子に好適に適用することができ、
R1が炭素数2〜20のアルキル基もしくは炭素数2〜20のフルオロアルキル基であるか、またはステロイド骨格を有する1価の基である場合、本発明の液晶配向剤は垂直配向型の液晶表示素子に好適に適用することができる。
R2のシクロへキシレン基およびフェニレン基は、それぞれ、1,4−シクロへキシレン基および1,4−フェニレン基であることが好ましい。
Xとしては、単結合または*−COO−(ただし「*」を付した結合手がR2と結合する。)であることが好ましい。
R3のシクロへキシレン基およびフェニレン基は、それぞれ、1,4−シクロへキシレン基および1,4−フェニレン基であることが好ましく、R3が上記式(R3−1)または(R3−2)で表される基である場合にこれに含まれるシクロへキシレン基またはフェニレン基は、それぞれ、1,4−シクロへキシレン基または1,4−フェニレン基であることが好ましい。式(R3−1)および(R3−2)中のeは、それぞれ、dが0であるときには0〜4の整数であることが好ましく、dが1であるときには1〜4の整数であることが好ましい。
上記式(2’)で表される基として、例えば下記式(2’−1)〜(2’−26)
本発明の液晶配向剤に含有される感放射線性ポリオルガノシロキサンにおける上記式(1’)および(2’)のそれぞれで表される基よりなる群から選択される少なくとも1種の基の含有割合は、0.2〜6ミリモル/g−ポリマーであることが好ましく、0.3〜5ミリモル/g−ポリマーであることがより好ましい。
本発明の液晶配向剤に含有される感放射線性ポリオルガノシロキサンは、上記式(1’)および(2’)のそれぞれで表される基よりなる群から選択される少なくとも1種の基のほかに、さらにエポキシ基を有することが好ましい。この場合、感放射線性ポリオルガノシロキサンのエポキシ当量は、好ましくは150g/モル以上であり、より好ましくは200〜10,000g/モルであり、さらに好ましくは200〜2,000g/モルである。このようなエポキシ当量の感放射線性ポリオルガノシロキサンを用いることにより、本発明の液晶配向剤は、液晶配向剤の保存安定性を損なうことなく、液晶配向性により優れ、残像特性に優れる液晶配向膜を形成しうることとなり、好ましい。
本発明の液晶配向剤に含有される感放射線性ポリオルガノシロキサンにつき、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによって測定したポリスチレン換算の重量平均分子量は1,000〜200,000であることが好ましく、2,000〜100,000であることがより好ましく、特に3,000〜30,000であることが好ましい。
本発明の液晶配向剤に好ましく含有される感放射線性ポリオルガノシロキサンは、上記の如きものである限り、どのような方法によって合成されたものを用いてもよい。本発明の液晶配向剤に含有される感放射線性ポリオルガノシロキサンの合成方法としては、例えば
上記式(1’)および(2’)のそれぞれで表される基よりなる群から選択される少なくとも1種の基を有する加水分解性シラン化合物、または該加水分解性シラン化合物とその他の加水分解性シラン化合物との混合物を加水分解および縮合する方法、
エポキシ基を有するポリオルガノシロキサンと、下記式(1)および(2)
のそれぞれで表される化合物よりなる群から選択される少なくとも1種(以下、「特定カルボン酸」という。)とを反応させる方法等によることができる。
これらのうち、原料化合物の合成の容易性、反応の容易性等の観点から、後者の方法によることが好ましい。
以下、本発明の液晶配向剤に含有される感放射線性ポリオルガノシロキサンを合成するための好ましい方法である、エポキシ基を有するポリオルガノシロキサンと、特定カルボン酸との反応方法について説明する。
エポキシ基を有するポリオルガノシロキサンにおけるエポキシ基は、酸化エチレン骨格または1,2−エポキシシクロアルカン骨格が、直接に、または途中が酸素原子によって中断されていてもよいアルキレンを介して、ケイ素原子に結合している基(エポキシ基を有する基)に含まれるものとしてポリオルガノシロキサン中に存在することが好ましい。このようなエポキシ基を有する基としては、例えば下記式(EP−1)または(EP−2)
で表される基を挙げることができる。
エポキシ基を有するポリオルガノシロキサンのエポキシ当量は、好ましくは100〜10,000g/モルであり、より好ましくは150〜1,000g/モルである。
エポキシ基を有するポリオルガノシロキサンにつき、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによって測定したポリスチレン換算の重量平均分子量は、500〜100,000であることが好ましく、1,000〜10,000であることがより好ましく、特に1,000〜5,000であることが好ましい。
このような、エポキシ基を有するポリオルガノシロキサンは、例えばエポキシ基を有するシラン化合物、またはエポキシ基を有するシラン化合物と他のシラン化合物の混合物を、好ましくは適当な有機溶媒、水および触媒の存在下において加水分解および縮合することにより合成することができる。
上記エポキシ基を有するシラン化合物としては、例えば3−グリシジロキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシジロキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシジロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシジロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシジロキシプロピルジメチルメトキシシラン、3−グリシジロキシプロピルジメチルエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン等を挙げることができる。
本発明におけるエポキシ基を有するポリオルガノシロキサンを合成するにあたっては、エポキシ基を有するシラン化合物と他のシラン化合物との使用割合を、得られるポリオルガノシロキサンのエポキシ当量が上記の好ましい範囲になるように調製して設定することが好ましい。
エポキシ基を有するポリオルガノシロキサンを合成するにあたって使用することのできる有機溶媒としては、例えば炭化水素、ケトン、エステル、エーテル、アルコール等を挙げることができる。
上記エステルとしては、例えば酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸i−アミル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−メトキシブチルアセテート、乳酸エチル等を;
上記エーテルとしては、例えばエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等を;
上記アルコールとしては、例えば1−ヘキサノール、4−メチル−2−ペンタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル等を、それぞれ挙げることができる。これらのうち非水溶性のものが好ましい。
これらの有機溶媒は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
有機溶媒の使用量は、シラン化合物の合計(エポキシ基を有するシラン化合物と任意的に用いられる他のシラン化合物との合計をいう。以下同じ。)100重量部に対して、好ましくは10〜10,000重量部であり、より好ましくは50〜1,000重量部である。
エポキシ基を有するポリオルガノシロキサンを合成する際の水の使用量は、シラン化合物の合計1モルに対して、好ましくは0.5〜100モルであり、より好ましくは1〜30モルである。
上記アルカリ金属化合物としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメトキシド、カリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムエトキシド等を挙げることができる。
上記有機塩基としては、例えばエチルアミン、ジエチルアミン、ピペラジン、ピペリジン、ピロリジン、ピロールの如き1〜2級有機アミン;トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジン、ジアザビシクロウンデセンの如き3級の有機アミン;テトラメチルアンモニウムヒドロキシドの如き4級の有機アミン等を、それぞれ挙げることができる。これらの有機塩基のうち、トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジンの如き3級の有機アミン;テトラメチルアンモニウムヒドロキシドの如き4級の有機アミンが好ましい。
触媒としては、特に有機塩基が好ましい。有機塩基の使用量は、有機塩基の種類、温度等の反応条件等により異なり、適宜に設定されるべきであるが、例えばシラン化合物の合計1モルに対して好ましくは0.01〜3モルであり、より好ましくは0.05〜1モルである。
加水分解および縮合反応の際には、加熱温度を好ましくは130℃以下、より好ましくは40〜100℃として、好ましくは0.5〜12時間、より好ましくは1〜8時間加熱することが望ましい。加熱中は、混合液を撹拌してもよいし、撹拌しなくてもよく、あるいは混合液を還流下に置いてもよい。
反応終了後、反応混合物から分離した有機溶媒層を水で洗浄することが好ましい。この洗浄に際しては、少量の塩を含む水、例えば0.2重量%程度の硝酸アンモニウム水溶液等で洗浄することにより、洗浄操作が容易になる点で好ましい。洗浄は洗浄後の水層が中性になるまで行い、その後有機溶媒層を、必要に応じて無水硫酸カルシウム、モレキュラーシーブス等の適当な乾燥剤で乾燥した後、溶媒を除去することにより、目的とするエポキシ基を有するポリオルガノシロキサンを得ることができる。
本発明においては、エポキシ基を有するポリオルガノシロキサンとして市販されているものを用いてもよい。このような市販品としては、例えばDMS−E01,DMS−E12、DMS−E21,EMS−32(以上、チッソ(株)製)等を挙げることができる。
特定カルボン酸の具体例としては、上記式(1’)および(2’)のそれぞれで表される基として上記に例示した基の結合手に水素原子を結合してなるカルボン酸を挙げることができる。
本発明の液晶配向剤に好ましく含有される感放射線性ポリオルガノシロキサンは、好ましくは上記の如きエポキシ基を有するポリオルガノシロキサンと、特定カルボン酸とを、好ましくは触媒および有機溶媒の存在下に反応させることにより、容易に得ることができる。
ここで、特定カルボン酸は、その合計が、ポリオルガノシロキサンの有するエポキシ基1モルに対して、好ましくは0.01〜5モル、より好ましくは0.05〜2モル、さらに好ましくは0.1〜0.8モルの割合で使用される。
本発明においては、本発明の効果を損なわない範囲で特定カルボン酸の一部を下記式(3)
RI−RII−COOH (3)
(式(3)中、RIは炭素数8〜20のアルキル基もしくはアルコキシル基または炭素数1〜21のフルオロアルキル基もしくはフルオロアルコキシル基であり、RIIは単結合、1,4−シクロヘキシレン基または1,4−フェニレン基である。)
で表される化合物で置き換えて使用してもよい。この場合、感放射線性ポリオルガノシロキサンの合成は、エポキシ基を有するポリオルガノシロキサンと、特定カルボン酸および式(3)で表される化合物の混合物とを反応させることにより行われる。
上記式(3)で表される化合物の好ましい例として、例えば下記式(3−1)または(3−2)
で表される化合物を挙げることができ、そのうち、下記式(3−2−1)〜(3−2−3)
上記式(3)で表される化合物は、特定カルボン酸とともにエポキシ基を有するポリオルガノシロキサンと反応し、得られる液晶配向膜にプレチルト角発現性を付与する部位となる化合物であるから、本発明の液晶配向剤を垂直配向型液晶表示素子に適用する場合に好ましく用いることができる。本明細書においては上記式(3)で表される化合物を、以下、「他のカルボン酸」という。
本発明において、特定カルボン酸で表される化合物よりなる群から選択される少なくとも1種ともに他のカルボン酸を使用する場合、特定カルボン酸および他のカルボン酸の合計の使用割合は、ポリオルガノシロキサンの有するエポキシ基1モルに対して好ましくは0.001〜1.5モル、より好ましくは0.01〜1モル、さらに好ましくは0.05〜0.9モルである。この場合、他のカルボン酸は、特定カルボン酸との合計に対して好ましくは50モル%以下、より好ましくは25モル%以下の範囲で使用される。他のカルボン酸の使用割合が50モル%を超えると、液晶表示素子をONにしたときに異常ドメインが発生する不具合を生じる場合がある。
上記有機塩基としては、例えばエチルアミン、ジエチルアミン、ピペラジン、ピペリジン、ピロリジン、ピロールの如き1〜2級有機アミン;
トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジン、ジアザビシクロウンデセンの如き3級の有機アミン;
テトラメチルアンモニウムヒドロキシドの如き4級の有機アミン等を挙げることができる。これらの有機塩基のうち、トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジンの如き3級の有機アミン;
テトラメチルアンモニウムヒドロキシドの如き4級の有機アミンが好ましい。
2−メチルイミダゾール、2−n−ヘプチルイミダゾール、2−n−ウンデシルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−メチルイミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−n−ウンデシルイミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−フェニルイミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4,5−ジ(ヒドロキシメチル)イミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−フェニル−4,5−ジ〔(2’−シアノエトキシ)メチル〕イミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−n−ウンデシルイミダゾリウムトリメリテート、1−(2−シアノエチル)−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテート、1−(2−シアノエチル)−2−エチル−4−メチルイミダゾリウムトリメリテート、2,4−ジアミノ−6−〔2’−メチルイミダゾリル−(1’)〕エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−(2’−n−ウンデシルイミダゾリル)エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−〔2’−エチル−4’−メチルイミダゾリル−(1’)〕エチル−s−トリアジン、2−メチルイミダゾールのイソシアヌル酸付加物、2−フェニルイミダゾールのイソシアヌル酸付加物、2,4−ジアミノ−6−〔2’−メチルイミダゾリル−(1’)〕エチル−s−トリアジンのイソシアヌル酸付加物の如きイミダゾール化合物;
ベンジルトリフェニルフォスフォニウムクロライド、テトラ−n−ブチルフォスフォニウムブロマイド、メチルトリフェニルフォスフォニウムブロマイド、エチルトリフェニルフォスフォニウムブロマイド、n−ブチルトリフェニルフォスフォニウムブロマイド、テトラフェニルフォスフォニウムブロマイド、エチルトリフェニルフォスフォニウムヨーダイド、エチルトリフェニルフォスフォニウムアセテート、テトラ−n−ブチルフォスフォニウム、o,o−ジエチルフォスフォロジチオネート、テトラ−n−ブチルフォスフォニウムベンゾトリアゾレート、テトラ−n−ブチルフォスフォニウムテトラフルオロボレート、テトラ−n−ブチルフォスフォニウムテトラフェニルボレート、テトラフェニルフォスフォニウムテトラフェニルボレートの如き4級フォスフォニウム塩;
1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7やその有機酸塩の如きジアザビシクロアルケン;
オクチル酸亜鉛、オクチル酸錫、アルミニウムアセチルアセトン錯体の如き有機金属化合物;
テトラエチルアンモニウムブロマイド、テトラ−n−ブチルアンモニウムブロマイド、テトラエチルアンモニウムクロライド、テトラ−n−ブチルアンモニウムクロライドの如き4級アンモニウム塩;
三フッ化ホウ素、ホウ酸トリフェニルの如きホウ素化合物;
塩化亜鉛、塩化第二錫の如き金属ハロゲン化合物;
ジシアンジアミドやアミンとエポキシ樹脂との付加物等のアミン付加型促進剤等の高融点分散型潜在性硬化促進剤;
前記イミダゾール化合物、有機リン化合物や4級フォスフォニウム塩等の硬化促進剤の表面をポリマーで被覆したマイクロカプセル型潜在性硬化促進剤;
アミン塩型潜在性硬化促進剤;
ルイス酸塩、ブレンステッド酸塩等の高温解離型の熱カチオン重合型潜在性硬化促進剤等の潜在性硬化促進剤等を挙げることができる。
触媒は、エポキシ基を有するポリオルガノシロキサン100重量部に対して好ましくは100重量部以下、より好ましくは0.01〜100重量部、さらに好ましくは0.1〜20重量部の割合で使用される。
エポキシ基を有するポリオルガノシロキサンと、特定カルボン酸との反応は、必要に応じて有機溶剤の存在下に行うことができる。かかる有機溶媒としては、例えば炭化水素、エーテル、エステル、ケトン、アミド、アルコール等を挙げることができる。これらのうち、エーテル、エステルまたはケトンが、原料および生成物の溶解性ならびに生成物の精製のし易さの観点から好ましい。溶媒は、固形分濃度(反応溶液中の溶媒以外の成分の重量が溶液の全重量に占める割合)が、好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは5〜50重量%となる割合で使用される。
反応温度は、好ましくは0〜200℃であり、より好ましくは50〜150℃である。反応時間は、好ましくは0.1〜50時間であり、より好ましくは0.5〜20時間である。
上記の如き感放射線性ポリオルガノシロキサンの合成は、エポキシ基を有するポリオルガノシロキサンの有するエポキシの開環付加によって上記式(1’)および(2’)のそれぞれで表される基よりなる群から選択される少なくとも1種の基を導入する方法である。この合成方法は簡便であり、しかも上記式(1’)および(2’)のそれぞれで表される基よりなる群から選択される少なくとも1種の基の導入率を高くすることができる点で極めて好適な方法である。
本発明の液晶配向剤は、上記の如き感放射線性重合体、好ましくは感放射線性ポリオルガノシロキサンを含有する。
本発明の液晶配向剤は、上記の如き感放射線性重合体、好ましくは感放射線性ポリオルガノシロキサンのほかに、本発明の効果を損なわない限り、さらに他の成分を含有していてもよい。このような他の成分としては、例えば感放射線性重合体以外の重合体(以下、「他の重合体」という。)、硬化剤、硬化触媒、硬化促進剤、分子内に少なくとも一つのエポキシ基を有する化合物(ただし、上記感放射線性ポリオルガオノシロキサンに該当するものを除く。以下、「エポキシ化合物」という。)、官能性シラン化合物(ただし、上記感放射線性ポリオルガオノシロキサンに該当するものを除く。)、界面活性剤等を挙げることができる。
上記他の重合体は、本発明の液晶配向剤の溶液特性および得られる液晶配向膜の電気特性をより改善するために使用することができる。かかる他の重合体は、上記式(1’)および(2’)のそれぞれで表される基のいずれをも有さない重合体であって、例えばポリアミック酸、ポリイミド;上記感放射線性ポリオルガノシロキサン以外のポリオルガノシロキサン(以下、「他のポリオルガノシロキサン」という。):ポリアミック酸エステル、ポリエステル、ポリアミド、セルロース誘導体、ポリアセタール、ポリスチレン誘導体、ポリ(スチレン−フェニルマレイミド)誘導体、ポリ(メタ)アクリレート等から選択されることが好ましく、これらのうちの1種以上を使用することができる。
本発明における他の重合体としては、ポリアミック酸およびポリイミドよりなる群から選択される少なくとも1種の重合体または他のポリオルガノシロキサンを使用することが好ましい。
上記ポリアミック酸は、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとを反応させることにより得ることができる。
本発明におけるポリアミック酸を合成するために用いられるテトラカルボン酸二無水物としては、例えば脂肪族テトラカルボン酸二無水物、脂環式テトラカルボン酸二無水物、芳香族テトラカルボン酸二無水物等を挙げることができる。これらの具体例としては、脂肪族テトラカルボン酸二無水物として、例えばブタンテトラカルボン酸二無水物等を;
脂環式テトラカルボン酸二無水物として、例えば1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−8−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、3−オキサビシクロ[3.2.1]オクタン−2,4−ジオン−6−スピロ−3’−(テトラヒドロフラン−2’,5’−ジオン)、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロ−3−フラニル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、3,5,6−トリカルボキシ−2−カルボキシメチルノルボルナン−2:3,5:6−二無水物、2,4,6,8−テトラカルボキシビシクロ[3.3.0]オクタン−2:4,6:8−二無水物、4,9−ジオキサトリシクロ[5.3.1.02,6]ウンデカン−3,5,8,10−テトラオン等を;
芳香族テトラカルボン酸二無水物として、例えばピロメリット酸二無水物等を、それぞれ挙げることができるほか、
特開2010−097188号公報(特許文献19)に記載のテトラカルボン酸二無水物を用いることができる。
前記ポリアミック酸を合成するために用いられるテトラカルボン酸二無水物としては、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物および1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物よりなる群から選択される少なくとも1種を、全テトラカルボン酸二無水物に対して、10モル%以上含むものであることが好ましく、20モル%以上含むものであることがより好ましく、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物および1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物よりなる群から選択される少なくとも1種のみからなるものであることが、最も好ましい。
脂環式ジアミンとして、例えば1,4−ジアミノシクロヘキサン、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン等を;
芳香族ジアミンとして、例えばp−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、1,5−ジアミノナフタレン、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−ジアミノ−2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル、2,7−ジアミノフルオレン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,4’−(p−フェニレンジイソプロピリデン)ビスアニリン、4,4’−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ビスアニリン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、2,6−ジアミノピリジン、3,4−ジアミノピリジン、2,4−ジアミノピリミジン、3,6−ジアミノアクリジン、3,6−ジアミノカルバゾール、N−メチル−3,6−ジアミノカルバゾール、N−エチル−3,6−ジアミノカルバゾール、N−フェニル−3,6−ジアミノカルバゾール、N,N’−ビス(4−アミノフェニル)−ベンジジン、N,N’−ビス(4−アミノフェニル)−N,N’−ジメチルベンジジン、1,4−ビス−(4−アミノフェニル)−ピペラジン、3,5−ジアミノ安息香酸、コレスタニルオキシ−3,5−ジアミノベンゼン、コレステニルオキシ−3,5−ジアミノベンゼン、コレスタニルオキシ−2,4−ジアミノベンゼン、コレステニルオキシ−2,4−ジアミノベンゼン、3,5−ジアミノ安息香酸コレスタニル、3,5−ジアミノ安息香酸コレステニル、3,5−ジアミノ安息香酸ラノスタニル、3,6−ビス(4−アミノベンゾイルオキシ)コレスタン、3,6−ビス(4−アミノフェノキシ)コレスタン、4−(4’−トリフルオロメトキシベンゾイロキシ)シクロヘキシル−3,5−ジアミノベンゾエート、4−(4’−トリフルオロメチルベンゾイロキシ)シクロヘキシル−3,5−ジアミノベンゾエート、1,1−ビス(4−((アミノフェニル)メチル)フェニル)−4−ブチルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−((アミノフェニル)メチル)フェニル)−4−ヘプチルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−((アミノフェノキシ)メチル)フェニル)−4−ヘプチルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−((アミノフェニル)メチル)フェニル)−4−(4−ヘプチルシクロヘキシル)シクロヘキサンおよび下記式(D−1)
で表される化合物等を;
ジアミノオルガノシロキサンとして、例えば1,3−ビス(3−アミノプロピル)−テトラメチルジシロキサン等を、それぞれ挙げることができるほか、
特開2010−097188号公報(特許文献19)に記載のジアミンを用いることができる。
上記式(D−1)におけるXIは炭素数1〜3のアルキル基、*−O−または*−COO−(ただし、「*」を付した結合手がジアミノフェニル基と結合する。)であることが好ましい。基CpH2p+1−の具体例としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、n−ノナデシル基、n−エイコシル基等を挙げることができる。ジアミノフェニル基における2つのアミノ基は、他の基に対して2,4−位または3,5−位にあることが好ましい。
上記式(D−1)で表される化合物の具体例としては、例えばドデカノキシ−2,4−ジアミノベンゼン、テトラデカノキシ−2,4−ジアミノベンゼン、ペンタデカノキシ−2,4−ジアミノベンゼン、ヘキサデカノキシ−2,4−ジアミノベンゼン、ドデカノキシ−2,5−ジアミノベンゼン、テトラデカノキシ−2,5−ジアミノベンゼン、ペンタデカノキシ−2,5−ジアミノベンゼン、ヘキサデカノキシ−2,5−ジアミノベンゼン、オクタデカノキシ−2,5−ジアミノベンゼン、下記式(D−1−1)〜(D−1−4)
上記式(D−1)において、mおよびnは同時には0にならないことが好ましい。
これらジアミンは単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
ポリアミック酸の合成反応に供されるテトラカルボン酸二無水物とジアミンの使用割合は、ジアミン化合物に含まれるアミノ基1当量に対して、テトラカルボン酸二無水物の酸無水物基が0.2〜2当量となる割合が好ましく、さらに好ましくは0.3〜1.2当量となる割合である。
ポリアミック酸の合成反応は、好ましくは有機溶媒中において、好ましくは−20〜150℃、より好ましくは0〜100℃の温度条件下において、好ましくは0.5〜24時間、より好ましくは2〜10時間行われる。ここで、有機溶媒としては、合成されるポリアミック酸を溶解できるものであれば特に制限はなく、例えばN−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルイミダゾリジノン、ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン、テトラメチル尿素、ヘキサメチルホスホルトリアミド等の非プロトン系極性溶媒;
m−クレゾール、キシレノール、フェノール、ハロゲン化フェノール等のフェノール系溶媒等を挙げることができる。有機溶媒の使用量(a)は、テトラカルボン酸二無水物およびジアミン化合物の総量(b)が反応溶液の全量(a+b)に対して好ましくは0.1〜50重量%、より好ましくは5〜30重量%となるような量である。
ポリアミック酸を脱水閉環してポリイミドとする場合には、上記反応溶液をそのまま脱水閉環反応に供してもよく、反応溶液中に含まれるポリアミック酸を単離したうえで脱水閉環反応に供してもよく、または単離したポリアミック酸を精製したうえで脱水閉環反応に供してもよい。
ポリアミック酸の単離は、上記反応溶液を大量の貧溶媒中に注いで析出物を得、この析出物を減圧下乾燥する方法、あるいは、反応溶液中の有機溶媒をエバポレーターで減圧留去する方法等により行うことができる。また、このポリアミック酸を再び有機溶媒に溶解し、次いで貧溶媒で析出させる方法、あるいは、ポリアミック酸を再び有機溶媒に溶解して得た溶液を洗浄し、該溶液中の有機溶媒をエバポレーターで減圧留去する工程を1回または数回行う方法等により、ポリアミック酸を精製することができる。
上記ポリイミドは、上記の如くして得られたポリアミック酸の有するアミック酸構造を脱水閉環することにより合成することができる。このとき、アミック酸構造の全部を脱水閉環して完全にイミド化してもよく、あるいはアミック酸構造のうちの一部のみを脱水閉環してアミック酸構造とイミド構造とが併存する部分イミド化物としてもよい。
ポリアミック酸の脱水閉環は、(i)ポリアミック酸を加熱する方法により、または(ii)ポリアミック酸を有機溶媒に溶解し、この溶液中に脱水剤および脱水閉環触媒を添加し必要に応じて加熱する方法により行うことができる。
上記(i)のポリアミック酸を加熱する方法における反応温度は、好ましくは50〜200℃であり、より好ましくは60〜170℃である。反応温度が50℃未満では脱水閉環反応が十分に進行せず、反応温度が200℃を超えると得られるポリイミドの分子量が低下する場合がある。ポリアミック酸を加熱する方法における反応時間は、好ましくは0.5〜48時間であり、より好ましくは2〜20時間である。
一方、上記(ii)のポリアミック酸の溶液中に脱水剤および脱水閉環触媒を添加する方法において、脱水剤としては、例えば無水酢酸、無水プロピオン酸、無水トリフルオロ酢酸等の酸無水物を用いることができる。脱水剤の使用量は、ポリアミック酸構造単位の1モルに対して0.01〜20モルとすることが好ましい。また、脱水閉環触媒としては、例えばピリジン、コリジン、ルチジン、トリエチルアミン等の3級アミンを用いることができる。しかし、これらに限定されるものではない。脱水閉環触媒の使用量は、使用する脱水剤1モルに対して0.01〜10モルとすることが好ましい。脱水閉環反応に用いられる有機溶媒としては、ポリアミック酸の合成に用いられるものとして例示した有機溶媒を挙げることができる。脱水閉環反応の反応温度は好ましくは0〜180℃、より好ましくは10〜150℃であり、反応時間は好ましくは0.5〜20時間であり、より好ましくは1〜8時間である。
本発明における他のポリオルガノシロキサンは、上記の感放射線性ポリオルガノシロキサン以外のポリオルガノシロキサンである。かかる他のポリオルガノシロキサンは、例えばアルコキシシラン化合物およびハロゲン化シラン化合物よりなる群から選択される少なくとも1種のシラン化合物(以下、「原料シラン化合物」ともいう。)を、好ましくは適当な有機溶媒中で、水および触媒の存在下において加水分解および縮合することにより合成することができる。
ここで使用される原料シラン化合物としては、例えばテトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラ−iso−プロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシラン、テトラ−sec−ブトキシシラン、テトラ−tert−ブトキシシラン、テトラクロロシラン;メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリ−n−プロポキシシラン、メチルトリ−iso−プロポキシシラン、メチルトリ−n−ブトキシシラン、メチルトリ−sec−ブトキシシラン、メチルトリ−tert−ブトキシシラン、メチルトリフェノキシシラン、メチルトリクロロシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリ−n−プロポキシシラン、エチルトリ−iso−プロポキシシラン、エチルトリ−n−ブトキシシラン、エチルトリ−sec−ブトキシシラン、エチルトリ−tert−ブトキシシラン、エチルトリクロロシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリクロロシラン;ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジクロロシラン;トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリメチルクロロシラン等を挙げることができ、これらのうちの1種以上を使用することが好ましく、特にテトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、トリメチルメトキシシランおよびトリメチルエトキシシランよりなる群から選択される少なくとも1種を使用することが好ましい。
本発明における他のポリオルガノシロキサンは、上記の如き原料シラン化合物を使用するほかは、エポキシ基を有するポリオルガノシロキサンの合成方法として上記したところと同様にして合成することができる。
他のポリオルガノシロキサンにつき、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによって測定したポリスチレン換算の重量平均分子量は、1,000〜100,000であることが好ましく、5,000〜50,000であることがより好ましい。
本発明の液晶配向剤が、前述の感放射線性重合体とともに他の重合体を含有するものである場合、他の重合体の使用割合としては、感放射線性重合体100重量部に対して10,000重量部以下であることが好ましい。他の重合体のより好ましい使用割合は、本発明の液晶配向剤に含有される重合体の種類によって異なる。
本発明の液晶配向剤が、感放射線性ポリオルガノシロキサンならびにポリアミック酸およびポリイミドよりなる群から選択される少なくとも1種の重合体を含有するものである場合における両者のより好ましい使用割合は、感放射線性ポリオルガノシロキサン100重量部に対するポリアミック酸およびポリイミドの合計量100〜5,000重量部であり、さらに200〜2,000重量部であることが好ましい。
一方、本発明の液晶配向剤が、感放射線性ポリオルガノシロキサンおよび他のポリオルガノシロキサンを含有するものである場合における両者のより好ましい使用割合は、感放射線性ポリオルガノシロキサン100重量部に対する他のポリオルガノシロキサンの量として100〜2,000重量部である。
本発明の液晶配向剤が、感放射線性重合体とともに他の重合体を含有するものである場合、他の重合体の種類としては、ポリアミック酸およびポリイミドよりなる群から選択される少なくとも1種の重合体もしくは他のポリオルガノシロキサンまたはこれらの双方であることが好ましい。
上記硬化剤および硬化触媒は感放射線性重合体、好ましくは感放射線性ポリオルガノシロキサンの架橋反応をより強固にする目的で本発明の液晶配向剤に含有されることができ、上記硬化促進剤は硬化剤の司る硬化反応を促進する目的で本発明の液晶配向剤に含有されることができる。
上記硬化剤としては、エポキシ基を有する硬化性化合物またはエポキシ基を有する化合物を含有する硬化性組成物の硬化に一般に用いられている硬化剤を用いることができ、例えば多価アミン、多価カルボン酸無水物、多価カルボン酸を例示することができる。
上記多価カルボン酸無水物としては、例えばシクロヘキサントリカルボン酸の無水物およびその他の多価カルボン酸無水物を挙げることができる。
シクロヘキサントリカルボン酸無水物の具体例としては、例えばシクロヘキサン−1,3,4−トリカルボン酸−3,4−無水物、シクロヘキサン−1,3,5−トリカルボン酸−3,5−無水物、シクロヘキサン−1,2,3−トリカルボン酸−2,3−酸無水物等を挙げることができ、その他の多価カルボン酸無水物としては、例えば4−メチルテトラヒドロフタル酸無水物、メチルナジック酸無水物、ドデセニルコハク酸無水物、無水こはく酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、無水トリメリット酸、下記式(CA−1)
で表される化合物およびポリアミック酸の合成に一般に用いられるテトラカルボン酸二無水物のほか、α−テルピネン、アロオシメン等の共役二重結合を有する脂環式化合物と無水マレイン酸とのディールス・アルダー反応生成物およびこれらの水素添加物等を挙げることができる。
上記硬化触媒としては、例えば6フッ化アンチモン化合物、6フッ化リン化合物、アルミニウムトリスアセチルアセトナート等を用いることができる。これらの触媒は加熱によりエポキシ基のカチオン重合を触媒することができる。
上記硬化促進剤としては、例えばイミダゾール化合物;
4級リン化合物;
4級アミン化合物;
1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7やその有機酸塩の如きジアザビシクロアルケン;
オクチル酸亜鉛、オクチル酸錫、アルミニウムアセチルアセトン錯体の如き有機金属化合物;
三フッ化ホウ素、ホウ酸トリフェニルの如きホウ素化合物;塩化亜鉛、塩化第二錫の如き金属ハロゲン化合物;
ジシアンジアミド、アミンとエポキシ樹脂との付加物の如きアミン付加型促進剤等の高融点分散型潜在性硬化促進剤;
4級フォスフォニウム塩等の表面をポリマーで被覆したマイクロカプセル型潜在性硬化促進剤;
アミン塩型潜在性硬化促進剤;
ルイス酸塩、ブレンステッド酸塩の如き高温解離型の熱カチオン重合型潜在性硬化促進剤、等を挙げることができる。
上記エポキシ化合物は、形成される液晶配向膜の基板表面に対する接着性を向上させる観点から本発明の液晶配向剤に含有されることができる。
かかるエポキシ化合物としては、例えばエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、2,2−ジブロモネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,3,5,6−テトラグリシジル−2,4−ヘキサンジオール、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、N,N−ジグリシジル−ベンジルアミン、N,N−ジグリシジル−アミノメチルシクロヘキサン等を、好ましいものとして挙げることができる。
本発明の液晶配向剤がエポキシ化合物を含有する場合、その含有割合としては、上記の感放射線重合体と任意的に使用される他の重合体との合計100重量部に対して、好ましくは40重量部以下であり、より好ましくは0.1〜30重量部である。
なお、本発明の液晶配向剤がエポキシ化合物を含有する場合、その架橋反応を効率良く起こす目的で、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール等の塩基触媒を併用してもよい。
上記官能性シラン化合物は、得られる液晶配向膜の基板との接着性を向上する目的で使用することができる。官能性シラン化合物としては、例えば3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、2−アミノプロピルトリメトキシシラン、2−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、N−エトキシカルボニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−エトキシカルボニル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−トリエトキシシリルプロピルトリエチレントリアミン、N−トリメトキシシリルプロピルトリエチレントリアミン、10−トリメトキシシリル−1,4,7−トリアザデカン、10−トリエトキシシリル−1,4,7−トリアザデカン、9−トリメトキシシリル−3,6−ジアザノニルアセテート、9−トリエトキシシリル−3,6−ジアザノニルアセテート、N−ベンジル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−ベンジル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−ビス(オキシエチレン)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−ビス(オキシエチレン)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−グリシジロキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等を挙げることができ、さらに特許文献18(特開昭63−291922号公報)に記載されている如き、テトラカルボン酸二無水物とアミノ基を有するシラン化合物との反応物等を使用することができる。
本発明の液晶配向剤が官能性シラン化合物を含有する場合、その含有割合としては、上記の感放射線性重合体と任意的に使用される他の重合体との合計100重量部に対して、好ましくは50重量部以下であり、より好ましくは20重量部以下である。
上記界面活性剤としては、例えばノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、シリコーン界面活性剤、ポリアルキレンオキシド界面活性剤、含フッ素界面活性剤等を挙げることができる。
本発明の液晶配向剤が界面活性剤を含有する場合、その含有割合としては、液晶配向剤の全体100重量部に対して、好ましくは10重量部以下であり、より好ましくは1重量部以下である。
本発明の液晶配向剤は、上述の通り、感放射線性重合体を必須成分として含有し、そのほかに必要に応じて他の成分を含有するものであるが、好ましくは各成分が有機溶媒に溶解された溶液状の組成物として調製される。
本発明の液晶配向剤を調製するために使用することのできる有機溶媒としては、感放射線性重合体および任意的に使用される他の成分を溶解し、これらと反応しないものが好ましい。
本発明の液晶配向剤に好ましく使用することのできる有機溶媒は、本発明の液晶配向剤が含有する重合体の種類により異なる。
本発明の液晶配向剤が感放射線性ポリオルガノシロキサンならびにポリアミック酸およびポリイミドよりなる群から選択される少なくとも1種の重合体を含有するものである場合、ならびに感放射線性ポリオルガノシロキサンならびにポリアミック酸およびポリイミドよりなる群から選択される少なくとも1種の重合体のほかにさらに他のポリオルガノシロキサンを含有するものである場合における好ましい有機溶剤としては、ポリアミック酸の合成に用いられるものとして上記に例示した有機溶媒を挙げることができる。これら有機溶媒は、単独でまたは2種以上組み合わせて使用することができる。
本発明の液晶配向剤の固形分濃度、すなわち液晶配向剤中の溶媒以外の全成分の重量が液晶配向剤の全重量に占める割合は、粘性、揮発性等を考慮して選択されるが、好ましくは1〜10重量%の範囲である。本発明の液晶配向剤は、基板表面に塗布され、液晶配向膜となる塗膜を形成するが、固形分濃度が1重量%未満である場合には、この塗膜の膜厚が過小となって良好な液晶配向膜を得難い場合がある。一方、固形分濃度が10重量%を超える場合には、塗膜の膜厚が過大となって良好な液晶配向膜を得難く、また、液晶配向剤の粘性が増大して塗布特性が不足する場合がある。特に好ましい固形分濃度の範囲は、基板に液晶配向剤を塗布する際に採用する方法によって異なる。例えばスピンナー法による場合には1.5〜4.5重量%の範囲が特に好ましい。印刷法による場合には、固形分濃度を3〜9重量%の範囲とし、それによって溶液粘度を12〜50mPa・sの範囲とするのが特に好ましい。インクジェット法による場合には、固形分濃度を1〜5重量%の範囲とし、それによって溶液粘度を3〜15mPa・sの範囲とすることが特に好ましい。
本発明の液晶配向剤を調製する際の温度は、好ましくは、0℃〜200℃であり、より好ましくは0℃〜40℃である。
本発明の液晶配向剤は、光配向法によりTN型、STN型、横電界方式(IPS型)またはVA型の液晶表示素子に用いられる液晶配向膜を形成するために好適に使用することができる。本発明の液晶配向剤は、TN型、STN型または横電界方式の液晶表示素子に適用したとき、特に横電界方式の液晶表示素子に適用したときに、本発明の効果が最大限に発揮されることとなり、好ましい。
本発明の液晶配向剤を用いて液晶配向膜を形成するには、基板上に、本発明の液晶配向剤を塗布して塗膜を形成し、該塗膜に放射線を照射する工程を経る方法によることができる。
ここで、本発明の液晶配向剤を、TN型、STN型またはVA型の液晶表示素子に適用する場合、パターニングされた透明導電膜が設けられている基板2枚を一対として、その各透明性導電膜形成面上に、本発明の液晶配向剤を塗布して塗膜を形成する。一方、本発明の液晶配向剤を、横電界方式の液晶表示素子に適用する場合には、片面に透明導電膜または金属膜が櫛歯状にパターニングされた電極を有する基板と、電極が設けられていない対向基板とを一対とし、櫛歯状電極の形成面と、対向基板の片面とに、それぞれ本発明の液晶配向剤を塗布して塗膜を形成する。
いずれの場合も、上記の基板としては、例えばフロートガラス、ソーダガラスの如きガラス、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネートの如きプラスチックからなる透明基板等を用いることができる。上記透明導電膜としては、例えばIn2O3−SnO2からなるITO膜、SnO2からなるNESA(登録商標)膜等を用いることができる。上記金属膜としては、例えばクロム等の金属からなる膜を使用することができる。透明導電膜および金属膜のパターニングには、例えばパターンなし透明導電膜を形成した後にフォト・エッチング法、スパッタ法等によりパターンを形成する方法、透明導電膜を形成する際に所望のパターンを有するマスクを用いる方法等によることができる。
基板上への液晶配向剤の塗布は、好ましくはオフセット印刷法、スピンコート法、ロールコーター法、インクジェット印刷法等の適宜の塗布方法により行うことができ、次いで、塗布面を予備加熱(プレベーク)し、次いで焼成(ポストベーク)することにより塗膜を形成する。プレベーク条件は、例えば40〜120℃において0.1〜5分であり、ポストベーク条件は、好ましくは120〜300℃、より好ましくは150〜250℃において、好ましくは5〜200分、より好ましくは10〜100分である。ポストベーク後の塗膜の膜厚は、好ましくは0.001〜1μmであり、より好ましくは0.005〜0.5μmである。
このようにして形成された塗膜に、直線偏光もしくは部分偏光された放射線または無偏光の放射線を照射することにより、液晶配向能を付与する。ここで、放射線としては、例えば150〜800nmの波長の光を含む紫外線および可視光線を用いることができるが、300〜400nmの波長の光を含む紫外線が好ましい。用いる放射線が直線偏光または部分偏光している場合には、照射は基板面に垂直の方向から行っても、プレチルト角を付与するために斜め方向から行ってもよく、また、これらを組み合わせて行ってもよい。無偏光の放射線を照射する場合には、照射の方向は斜め方向である必要がある。
放射線の照射量としては、好ましくは1J/m2以上10,000J/m2未満であり、より好ましくは10〜3,000J/m2である。なお、従来知られている液晶配向剤から形成された塗膜に光配向法により液晶配向能を付与する場合、10,000J/m2以上の放射線照射量が必要であった。しかし本発明の液晶配向剤を用いると、光配向法の際の放射線照射量が3,000J/m2以下、さらに1,000J/m2以下であっても良好な液晶配向能を付与することができ、液晶表示素子の生産性向上と製造コストの削減に資する。
本発明の液晶配向剤を用いて形成される液晶表示素子は、例えば以下のようにして製造することができる。
先ず、上記のようにして液晶配向膜が形成された一対の基板を準備し、この一対の基板間に液晶が狭持された構成の液晶セルを製造する。液晶セルを製造するには、例えば以下の2つの方法が挙げられる。
第一の方法は、従来から知られている方法である。先ず、それぞれの液晶配向膜が対向するように間隙(セルギャップ)を介して2枚の基板を対向配置し、2枚の基板の周辺部をシール剤を用いて貼り合わせ、基板表面およびシール剤により区画されたセルギャップ内に液晶を注入充填した後、注入孔を封止することにより、液晶セルを製造することができる。
第二の方法は、ODF(One Drop Fill)方式と呼ばれる手法である。液晶配向膜を形成した2枚の基板のうちの一方の基板上の所定の場所に例えば紫外光硬化性のシール材を塗布し、さらに液晶配向膜面上に液晶を滴下した後、液晶配向膜が対向するように他方の基板を貼り合わせ、次いで基板の全面に紫外光を照射してシール剤を硬化することにより、液晶セルを製造することができる。
いずれの方法による場合でも、次いで、液晶セルを、用いた液晶が等方相をとる温度まで加熱した後、室温まで徐冷することにより、液晶充填時の流動配向を除去することが望ましい。
そして、液晶セルの外側表面に偏光板を貼り合わせることにより、本発明の液晶表示素子を得ることができる。ここで、液晶配向膜が形成された2枚の基板における、照射した直線偏光放射線の偏光方向のなす角度およびそれぞれの基板と偏光板との角度を適当に調整することにより、所望の液晶表示素子を得ることができる。
前記液晶としては、例えばネマティック型液晶、スメクティック型液晶等を用いることができる。ネマティック型液晶を形成する正の誘電異方性を有するものが好ましく、例えばビフェニル系液晶、フェニルシクロヘキサン系液晶、エステル系液晶、ターフェニル系液晶、ビフェニルシクロヘキサン系液晶、ピリミジン系液晶、ジオキサン系液晶、ビシクロオクタン系液晶、キュバン系液晶等が用いられる。また前記液晶に、例えばコレスチルクロライド、コレステリルノナエート、コレステリルカーボネート等のコレステリック液晶;
商品名「C−15」、「CB−15」(以上、メルク社製)として販売されているようなカイラル剤;
p−デシロキシベンジリデン−p−アミノ−2−メチルブチルシンナメート等の強誘電性液晶等を、さらに添加して使用してもよい。
液晶セルの外側に使用される偏光板としては、ポリビニルアルコールを延伸配向させながらヨウ素を吸収させた「H膜」と呼ばれる偏光膜を酢酸セルロース保護膜で挟んだ偏光板、またはH膜そのものからなる偏光板等を挙げることができる。
かくして製造された本発明の液晶表示素子は液晶分子の配向規制力に優れるから表示特性に優れるものである。
以下の合成例における重量平均分子量Mwは、それぞれ下記の条件のゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定したポリスチレン換算値である。
カラム:東ソー(株)製、TSKgelGRCXLII
溶剤:テトラヒドロフラン
温度:40℃
圧力:68kgf/cm2
なお、以下の合成例においては、原料化合物および重合体の合成を下記の合成スケールで必要に応じて繰り返すことにより、以降の実施例における必要量を確保した。
合成例ES1
撹拌機、温度計、滴下漏斗および還流冷却管を備えた反応容器に、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン100.0g、メチルイソブチルケトン500gおよびトリエチルアミン10.0gを仕込み、室温で混合した。
次いで、脱イオン水100gを滴下漏斗から30分かけて滴下した後、還流下で混合しつつ、80℃で6時間反応を行った。反応終了後、有機層を取り出し、これを0.2重量%硝酸アンモニウム水溶液により洗浄後の水が中性になるまで洗浄した後、減圧下で溶媒および水を留去することにより、エポキシ基を有するポリオルガノシロキサン(ES−1)を粘調な透明液体として得た。
このエポキシ基を有するポリオルガノシロキサンについて、1H−NMR分析を行なったところ、化学シフト(δ)=3.2ppm付近にエポキシ基に基づくピークが理論強度どおりに得られ、反応中にエポキシ基の副反応が起こっていないことが確認された。
このエポキシ基を有するポリオルガノシロキサン(ES−1)の粘度、Mwおよびエポキシ当量を表1に示した。
合成例ES2〜3
仕込み原料を表1に示すとおりとした以外は、合成例1と同様にしてエポキシ基を有するポリオルガノシロキサン(ES−2)および(ES−3)を、それぞれ粘調な透明液体として得た。
これらのエポキシ基を有するポリオルガノシロキサンのMwおよびエポキシ当量を表1に示した。
なお、表1において、原料シラン化合物の略称は、それぞれ以下の意味である。
ECETS:2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン
MTMS:メチルトリメトキシシラン
PTMS:フェニルトリメトキシシラン
下記スキーム1
以下の合成操作は不活性雰囲気中で行った。
冷却管および滴下ロートを備えた300mLの三口フラスコに、無水マレイン酸9.8g、脱水塩化メチレン100mLおよび塩化アルミニウム32gを仕込んで混合し、ここにベンゾトリフルオリド14.6gを溶解した塩化メチレン溶液50mLを滴下した。滴下終了後、2時間撹拌下に反応を継続した。反応終了後、反応混合物を、氷浴で冷却した希塩酸400mL中に投入し、撹拌した。ここに酢酸エチル200mLを加えて抽出した。得られた有機層を純水100mLで3回洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した後、溶媒を留去して得られた固体をエタノールから再結晶することにより、化合物(1−1)を8.5g得た。
合成例(1)−2および(1)−3
上記合成例(1)−1において、ベンゾトリフルオリドの代わりにシクロヘキシルベンゼン16g(合成例(3)−2)およびn−オクチルベンゼン19g(合成例(3)−3)をそれぞれ用いたほかは合成例(1)−1と同様に実施して、化合物(1−2)14.2gおよび化合物(1−3)12gをそれぞれ得た。
合成例R−1
下記スキーム2
200mLの三口フラスコに、4−ヒドロキシカルコン11.21g、ブロモ酢酸エチル8.35g、炭酸カリウム13.8gおよびジメチルアセトアミド100mLを仕込み、120℃で7時間撹拌下に反応を行った。反応終了後、反応溶液を室温まで冷却した後、酢酸エチル100mLを加えた。有機層を水洗した後、減圧にて溶媒を除去して得られた固体につき、エタノールおよび水からなる混合溶媒(エタノール:水=4:1(容積比))から再結晶を行い、中間体である化合物(R−1a)11.4gを得た。
次いで、冷却管を備えた500mLの三口フラスコに、上記化合物(R−1a)6.2g、水酸化ナトリウム2g、エタノール200mLおよび水50mLを仕込み、還流下で3時間撹拌しつつ反応を行った。反応終了後、反応混合物を冷却後、希塩酸を加えて酸性とした後、酢酸エチルを500mL加えて分液抽出を行った。得られた有機層を水洗した後、減圧下で溶媒を除去することにより、化合物(R−1)4.1gを得た。
合成例S−1
100mLの三口フラスコに、上記合成例ES−1で得たエポキシ基を有するポリオルガノシロキサン(ES−1)9.3g、メチルイソブチルケトン26g、上記合成例(1)−1で得た化合物(1−1)6.10gおよびUCAT 18X(商品名。サンアプロ(株)製の4級アミン塩である。)0.10gを仕込み、80℃で12時間撹拌下に反応を行った。反応終了後、反応混合物にメタノールを加えて生成した沈殿物を回収し、これを酢酸エチルに溶解して得た溶液を3回水洗した後、溶剤を留去することにより、感放射線性ポリオルガノシロキサン(S−1)を白色粉末として9.5g得た。感放射線性ポリオルガノシロキサン(S−1)の重量平均分子量Mwは7,100であった。
合成例S−2およびS−3
上記合成例S−1において、エポキシ基を有するポリオルガノシロキサンおよびカルボン酸(上記式(1)で表される化合物)の種類および使用量を、それぞれ表2に記載のとおりしたほかは合成例S−1と同様にして、感放射線性ポリオルガノシロキサン(S−2)および(S−3)をそれぞれ得た。これらの感放射線性ポリオルガノシロキサンの重量平均分子量Mwを、表2に合わせて示した。
合成例RS−1
上記合成例S−1において、化合物(1−1)の代わりに上記合成例R−1で得た化合物(R−1)3.52gを使用したほかは合成例S−1と同様にして、感放射線性ポリオルガノシロキサン(RS−1)を得た。感放射線性ポリオルガノシロキサン(RS−1)の重量平均分子量Mwを表2に示した。
[ポリアミック酸の合成例]
合成例PA−1
シクロブタンテトラカルボン酸二無水物19.61g(0.1モル)と4,4’−ジアミノ−2,2’−ジメチルビフェニル21.23g(0.1モル)とをN−メチル−2−ピロリドン367.6gに溶解し、室温で6時間反応を行った。次いで、反応混合物を大過剰のメタノール中に注ぎ、反応生成物を沈澱させた。沈殿物を回収してメタノールで洗浄し、減圧下40℃で15時間乾燥することにより、ポリアミック酸(PA−1)を35g得た。
合成例PA−2
2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物22.4g(0.1モル)とシクロヘキサンビス(メチルアミン)14.23g(0.1モル)とをN−メチル−2−ピロリドン329.3gに溶解し、60℃で6時間反応を行った。次いで、反応混合物を大過剰のメタノール中に注ぎ、反応生成物を沈澱させた。沈殿物をメタノールで洗浄し、減圧下40℃で15時間乾燥することにより、ポリアミック酸(PA−2)を32g得た。
このポリアミック酸(PA−2)は、その一部を後述の実施例において液晶配向剤の調製に供し、残余の部分を下記のポリイミドの合成に供した。
合成例PI−1
上記合成例PA−2で得たポリアミック酸(PA−2)を17.5gとり、これにN−メチル−2−ピロリドン232.5g、ピリジン3.8gおよび無水酢酸4.9gを添加して120℃において4時間イミド化反応を行った。得られた反応混合物を大過剰のメタノール中に注ぎ、反応生成物を沈澱させた。沈殿物をメタノールで洗浄し、減圧下で15時間乾燥することにより、ポリイミド(PI−1)を15g得た。
<液晶配向剤の調製>
上記実施例S−1で得た感放射線性ポリオルガノシロキサン(S−1)100重量部および他の重合体として上記合成例PA−1で得たポリアミック酸(PA−1)1,000重量部を、N−メチル−2−ピロリドンおよびブチルセロソルブからなる混合溶媒(N−メチル−2−ピロリドン:ブチルセロソルブ=50:50(重量比))に溶解し、固形分濃度が3.0重量%の溶液とした。この溶液を孔径1μmのフィルターで濾過することにより、液晶配向剤を調製した。
<液晶表示素子の製造>
櫛歯状にパターニングされたクロム製金属電極を有するガラス基板の電極形成面と、電極が設けられていない対向ガラス基板の一面とに、上記で調製した液晶配向剤をスピンナーを用いてそれぞれ塗布し、80℃のホットプレートで1分間プレベークを行った後、庫内を窒素置換したオーブン中で200℃で1時間ポストベークして膜厚0.1μmの塗膜を形成した。次いでこの塗膜表面に、Hg−Xeランプおよびグランテーラープリズムを用いて313nmの輝線を含む偏光紫外線600J/m2を基板の法線方向からそれぞれ照射して液晶配向膜を有する一対の基板を得た。
上記一対の基板のうちのクロム製金属電極を有する基板の液晶配向膜を形成した面の外周に、直径5.5μmの酸化アルミニウム球入りエポキシ樹脂接着剤をスクリーン印刷により塗布した後、1対の基板の液晶配向膜面を対向させ、各基板の紫外線照射時の方向が互いに逆方向となるように圧着し、150℃で1時間加熱して接着剤を熱硬化した。次いで、液晶注入口より基板間の間隙に、メルク社製液晶、MLC−7028を充填した後、エポキシ系接着剤で液晶注入口を封止した。さらに、液晶注入時の流動配向を除くために、これを150℃で加熱してから室温まで徐冷した。次に基板の外側両面に、偏光板を、その偏光方向が互いに直交し、かつ、液晶配向膜の紫外線の光軸の基板面への射影方向と直交するように貼り合わせることにより、横電界方式の液晶表示素子を製造した。
この液晶表示素子につき、以下の方法により評価した。評価結果は表3に示した。
(1)液晶配向性の評価
上記で製造した液晶表示素子につき、5Vの電圧をON・OFF(印加・解除)したときの明暗の変化における異常ドメインの有無を光学顕微鏡により観察し、異常ドメインが観察されなかった場合を液晶配向性「良」とし、異常ドメインが観察された場合を液晶配向性「不良」として評価した。
(2)電圧保持率の評価
上記で製造した液晶表示素子に、60℃において5Vの電圧を60マイクロ秒の印加時間、167ミリ秒のスパンで印加した後、印加解除から167ミリ秒後の電圧保持率を測定した。測定装置は(株)東陽テクニカ製、VHR−1を使用した。
上記実施例1において、感放射線性ポリオルガノシロキサンの種類ならびに他の重合体の種類および量をそれぞれ表3に記載のように変更したほかは実施例1と同様にして液晶表示素子を調製し、液晶表示素子を製造して評価した。評価結果は表3に示した。
なお、比較例1においては、液晶表示素子製造時の偏光紫外線照射量を1,000J/m2とした。
Claims (10)
- 下記式(1’)
で表される基であり、aは0〜3の整数であり、bは0〜3の整数であり、cは0または1であり、aが2または3のとき、複数存在するR2およびXは、それぞれ同一であっても相違していてもよい。)
のそれぞれで表される構造よりなる群から選択される少なくとも1種の構造を有する感放射線性重合体を含有することを特徴とする、液晶配向剤。 - 上記感放射線性重合体が、上記式(1’)で表される構造を有する感放射線性ポリオルガノシロキサンである、請求項1に記載の液晶配向剤。
- さらに、ポリアミック酸およびポリイミドよりなる群から選択される少なくとも1種の重合体、ただしこの重合体は上記式(1’)で表される構造を有さない、を含有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の液晶配向剤。
- さらに、ポリオルガノシロキサン、ただしこのポリオルガノシロキサンは上記式(1’)および(2’)のそれぞれで表される構造のうちのいずれの構造をも有さない、を含有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の液晶配向剤。
- 基板上に、請求項1〜5のいずれか一項に記載の液晶配向剤を塗布して塗膜を形成し、該塗膜に放射線を照射する工程を経ることを特徴とする、液晶配向膜の形成方法。
- 請求項1〜5のいずれか一項に記載の液晶配向剤から形成された液晶配向膜を具備することを特徴とする、液晶表示素子。
- 上記式(1’)における基R1が、水素原子、フッ素原子、炭素数1〜5のアルキル基または炭素数1〜5のフルオロアルキル基であり、液晶表示素子がTN型、STN型または横電界方式の液晶表示素子である、請求項7に記載の液晶表示素子。
- 液晶表示素子が横電界方式の液晶表示素子である、請求項8に記載の液晶表示素子。
- 上記式(1’)における基R1が、炭素数5〜20のアルキル基もしくは炭素数5〜20のフルオロアルキル基であるか、またはステロイド骨格を有する1価の基であり、液晶表示素子が垂直配向型の液晶表示素子である、請求項7に記載の液晶表示素子。
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