JP5587109B2 - 水性ゲル芳香剤 - Google Patents

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本発明は、水性ゲル芳香剤に関する。
水性ゲルを用いた芳香剤(以下、水性ゲル芳香剤ということもある)は、容器から液がこぼれる心配がないことや意匠性に優れるという点から据え置き型の芳香剤などに幅広く取り入れられている。特に、粉末状や球状にした吸水性樹脂(以下、当該吸水性樹脂ということもある)に香料などの芳香成分を分散した溶液を吸収させて調製する水性ゲル芳香剤は、ゲルの表面積が大きいため、芳香成分の揮発が促進され、広い空間においても十分に強い香りを充満させることができるということで非常に優れた形態である
この時、香料などの芳香成分が分散、乳化又は溶解した水(以下香料含有液状混合物という)を吸収する粉末状や球状の吸水性樹脂は、親水性ポリマーを架橋して調製された吸水性樹脂である。水性ゲル芳香剤に使用される吸水性樹脂としては、ノニオン型ポリアルキレンオキシドを含む吸水性樹脂、イソブチレン−無水マレイン酸共重合体を含む吸水性樹脂、ポリアクリル酸(塩)を含む吸水性樹脂、アクリルアミド−アクリル酸(塩)共重合体を含む吸水性樹脂などがある。
香料含有液状混合物を架橋型吸収性樹脂に吸収させて調製した水性ゲル芳香剤については、水性ゲルの意匠性や吸水性に関して検討が進められている。特許文献1、2には、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ひまし油エーテル等の界面活性剤を含有する含水ゲルが記載されている。また、特許文献3には、アミンオキシド及び香料を特定比で含有する水性ゲル芳香剤が記載されている。
特開2007−291145号公報 特開2007−291146号公報 特開2010−162327号公報
近年、使用者の嗜好性の多様化に伴い、芳香剤についても香りが異なる多様な製品への要望が高まっている。一方、芳香剤に求められる機能として香りの持続性についても要望が高まっている。香りの持続性を高めるには、蒸気圧の低い香料素材を使うか、あるいは、香料としての香り性能は低いが蒸気圧の低い素材を保留剤として併用するなどの方法がある。しかし、水系での界面活性剤による可溶化系においては香料素材単独の蒸気圧とは異なる挙動を示す。logPが1〜4の香料素材は水に溶解しやすいものが多く、水に分子溶解している場合にはヘンリーの法則が成り立つため、特に希薄系では香料素材単独での蒸気圧より水溶液での蒸気圧は低くなる。また、logPが4〜6の香料素材は水溶性が低い傾向にあるが、界面活性剤による水への可溶化系では単独での蒸気圧値が高くても、界面活性剤との相互作用の強さに応じて蒸気圧が低下する。すなわち、logPが1〜6の香料素材は単独系に比べて可溶化系での蒸気圧値は低くなる傾向があり、その順番は単独系の場合とは異なり水あるいは可溶化に使用する界面活性剤との相互作用の強さによって決まってくる。したがって、logPが1〜6の香料素材は、単独系での蒸気圧値が高くても水系又は界面活性剤による水への可溶化系では香りの持続性を高める成分となり得る。一方、logPが6を超える範囲にある香料素材は界面活性剤との相互作用が強いものの可溶化が困難なものが多く、香りのバリエーションも少ない。したがって、水系の界面活性剤による可溶化系においては、logPが1〜6の香料素材は、香りのバリエーションと香調の維持を両立しやすくなり、多様な香りの芳香剤を調製するには好適である。香り持続性の維持には香料配合量の絶対量も重要である。しかし、特にlogPが4以上の香料素材は、上記のように水への溶解度が低いものが多く、水性系では界面活性剤やハイドロトロープによりある程度安定に使用できるようになるが、それでも安定に配合できる量を十分に向上できるわけではない。可溶化が不十分な香料素材は水性ゲルに吸収されにくいため、香料を多量に配合した香りのバリエーションと香調の維持を両立できる水性ゲルタイプの芳香剤を得るためには、logPが4以上の香料素材を多量かつ安定に可溶化した香料水溶液を得なければならないという課題が生じる。また、logPが1〜6の水系又は可溶化系での蒸気圧が低い香料素材を配合した水性ゲル状芳香剤は香りの持続性は高いが、経時的に水が蒸発して、使用終盤になると水以外の液体成分が吸水性樹脂から分離し、あたかも液体がシミだしているような外観を呈するという課題があることが見い出された。特許文献1〜3の技術では、前記の課題を解決するには不十分であることが見出された。
本発明の課題は、logPが4〜6の香料素材を一定量以上含有する香料を多量に安定に可溶化した香料水溶液をつくり、これを吸液させた水性ゲル芳香剤を得ることと、logPが1〜6の水系又は可溶化系での蒸気圧が低い香料素材を配合した液体成分の保持性能に優れた水性ゲル芳香剤を提供することにある。
本発明は、(a)下記一般式(a1)で表される非イオン界面活性剤〔以下、(a)成分という〕、(b)下記一般式(b1)で表される化合物及び一般式(b2)で表される化合物から選ばれる化合物〔以下、(b)成分という〕、(c)logPが1〜6の香料素材を30〜100質量%含有し、かつlogPが4〜6の香料素材を10〜80質量%含有する香料〔以下、(c)成分という〕、(d)吸水性樹脂〔以下、(d)成分という〕、並びに水を含有し、(a)/(b)の質量比が5/95〜55/45である、水性ゲル芳香剤に関する。
HO−[(C24O)m/(C36O)n]−H (a1)
〔式中、mは1〜30の数、nは5〜100の数であり、“/”は(C24O)と(C36O)の配列がランダムでもブロックでもよいことを意味する。〕
Figure 0005587109
(式中、R1bは炭素数7〜19の炭化水素基を表し、R2b、R3bはそれぞれ独立に炭素数1〜3のアルキル基又は炭素数1〜3ヒドロキシアルキル基から選ばれる基を表し、pは2〜5の数を表す。)
Figure 0005587109
(式中、R2b、R3bはそれぞれ独立に炭素数1〜3のアルキル基又は炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基から選ばれる基を表し、R4bは炭素数8〜20の炭化水素基を表す。)
本発明によれば、logPが4〜6の香料素材を一定量以上含有する香料を用いた水性ゲル芳香剤であって、logPが1〜6の水系又は可溶化系での蒸気圧が低い香料素材を含有した液体成分の保持性能に優れ、経時的な液体成分の分離が生じない水性ゲル芳香剤が提供される。
〔(a)成分〕
(a)成分の非イオン界面活性剤は、液保持性及び香りの持続性の観点から前記一般式(a1)で表されるものであり、香料との相溶性に優れたポリプロピレングリコールユニットを疎水基、ポリエチレングリコールユニットを親水基として有する。一般式(a1)中、(C24O)と(C36O)の配列はランダムでもブロックでも良いが、液保持性及び香りの持続性の観点から、ブロック付加型の方がランダム付加型より好ましい。具体的には、下記一般式(a2)〜(a4)から選ばれる一種以上が好ましい。
HO−(EO)a−(PO)b−(EO)c−H (a2)
HO−(PO)x−(EO)y−(PO)z−H (a3)
HO−(EO)y−(PO)b−H (a4)
〔式(a2)、(a3)、(a4)中、EOはオキシエチレン基、POはオキシプロピレン基を示し、x、z及びbはそれぞれプロピレンオキシドの平均付加モル数を示す0より大きい数であり、特定の香料素材を含有する液体成分の保持性能の点で、5≦x+z≦100、好ましくは10〜60、b≦100、好ましくは10〜60の数であり、y及びa、cはそれぞれエチレンオキシドの平均付加モル数を示し、1≦y≦30、好ましくは1〜25であり、a、cはそれぞれ0より大きい数であり、1≦a+c≦30、好ましくは1〜25の数である。〕
特定の香料素材を含有する液体成分の保持性能の点で、より好ましくは、一般式(a2)の非イオン界面活性剤及び一般式(a4)の非イオン界面活性剤から選ばれる1種以上であり、最も好ましくは、一般式(a2)の非イオン界面活性剤から選ばれる1種以上の非イオン界面活性剤である。
〔(b)成分〕
(b)成分は、(a)成分と(c)成分の混合体を可溶化し液保持性及び香りの持続性を高める点から、前記一般式(b1)で表される化合物及び前記一般式(b2)で表される化合物から選ばれる化合物である。
一般式(b1)中、R1bは、炭素数7〜19の炭化水素基を表す。香りの持続性の点から、好ましくは炭素数11〜15の炭化水素基、より具体的にはヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基及びノナデシル基から選ばれる基であり、好ましくはウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基及びヘプタデシル基から選ばれる基である。より好ましくはウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基及びペンタデシル基から選ばれる基である。最も好ましくはウンデシル基及び/又はトリデシル基である。pは2〜5の数であり、好ましくは3である。一般式(b1)中のR2b、R3bはメチル基又はエチル基が好ましい。
一般式(b2)中、R4bは、炭素数8〜20の炭化水素基を表す。香りの持続性の点から、好ましくは炭素数10〜16の炭化水素基、より具体的にはオクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基である。より好ましくはデシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基である。最も好ましくはドデシル基及び/又はテトラデシル基である。一般式(b2)中のR2b、R3bはメチル基が好ましい。
(b)成分は、製造時、(c)成分を香料含有液状混合物中に少ない界面活性剤量で均一に分散又は可溶化させ、且つ香料含有液状混合物を(d)吸水性樹脂に効率よく含浸させる観点、又は香りの持続性を更に高める観点から、好ましい成分である。(b)成分は、一般式(b1)で表される化合物が好ましい。
〔(c)成分〕
本発明の(c)成分である香料とは、logPが1〜6の香料素材そのもの又はこれを1種以上含有する組成物を意味する。吸水性樹脂に含浸しにくい香料を多量に含む液状混合物の含浸促進、及び水性ゲル芳香剤の香り立ちの観点から、香料中のlogPが1〜6の香料素材の含有量は、30〜100質量%であり、好ましくは40〜100質量%、より好ましくは50〜100質量%である。また、香りの持続性の点で、logPが4〜6の範囲の香料素材を10〜80質量%、好ましくは14〜70質量%、より好ましくは18〜60質量%含有する。本発明は、logPが1〜6の香料素材を30〜100質量%含有し、かつlogPが4〜6の範囲の香料素材を10〜80質量%含有する香料を用いて、香料含有液状混合物の吸水性樹脂への吸収が速やかで、且つ香りの持続性に優れた水性ゲル芳香剤が得られるため、技術的意義が大きい。
ここで、「logP」とは、化合物の1−オクタノール/水の分配係数の対数値であり、1−オクタノールと水の2液相の溶媒系に化合物が溶質として溶け込んだときの分配平衡において、それぞれの溶媒中での溶質の平衡濃度の比を意味し、底10に対する対数「logP」の形で一般的に示される。すなわち、logPは親油性(疎水性)の指標であり、この値が大きいほど疎水的であり、値が小さいほど親水的である。
logPについては、例えば、Daylight Chemical Information Systems, Inc.(Daylight CIS)等から入手し得るデータベースに掲載されているlogPを実測値として参照することができる。また、実測値がない場合には、プログラム“CLOGP”(Daylight CIS)等で計算することができ、中でもプログラム“CLOGP”により計算することが、信頼性も高く好適である。
プログラム“CLOGP”においては、Hansch, Leoのフラグメントアプローチにより算出される「計算logP(ClogP)」の値が、logPの実測値がある場合にはそれと共に出力される。フラグメントアプローチは化合物の化学構造に基づいており、原子の数及び化学結合のタイプを考慮している(A.Leo, Comprehensive Medicinal Chemistry, Vol.4, C.Hansch, P.G.Sammens, J.B.Taylor and C.A.Ramsden,Eds., p.295, Pergamon Press, 1990)。このClogPは現在最も一般的で信頼できる推定値であるため、化合物の選択に際してlogPの実測値がない場合に、ClogPを代わりに用いることが好適である。本発明においては、logPの実測値、又はプログラム“CLOGP”により計算したClogPのいずれを用いてもよいが、実測値がある場合には実測値を用いることが好ましい。
特に限定されるものではないが、ClogPが1〜4未満の香料素材の具体例を以下に示す。( )内の数字はClogPの値である。
ラズベリーケトン(1.1)、ヘリオトロピン(1.1)、フルクトン(1.1)、2−フェニルエチルアルコール(1.2)、バニリン(1.3)、ヘリオナール(1.4)、シンナミックアルコール(1.4)、クマリン(1.4)、アニスアルデヒド(1.8)、カロン(1.8)、エチルバニリン(1.8)、インドール(2.1)、酢酸フェニルエチル(2.1)、スチラリルアセテート(2.3)、メチルジヒドロジャスモネート(2.4)、オイゲノール(2.4)、イソオイゲノール(2.6)、シス−ジャスモン(2.6)、ゲラニオール(2.6)、リナロール(2.6)、ネロール(2.8)、酢酸ヘキシル(2.8)、ジヒドロミルセノール(3.0)、シトラール(3.1)、シトロネロール(3.3)、リナリルアセテート(3.5)、ネリルアセテート(3.6)、テトラヒドロゲラニオール(3.7)、アンブリノール(3.8)、アルデヒド C−14ピーチ(3.8)、リリアール(3.9)、テトラヒドロムゴール(3.5)、β−ヨノン(3.8)、酢酸ゲラニル(3.7)、3−メチル−3−フェニルグリシド酸エチル(2.7)、δ−ダマスコン(3.6)、ヘプタン酸アリル(3.4)、δ−ウンデカラクトン(3.8)、酢酸フェニルエチルフェニル(3.8)。
特に限定されるものではないが、ClogPが4〜6の香料素材の具体例を以下に示す。( )内の数字はClogPの値である。
酢酸p−t−ブチルシクロヘキシル(4.0)、アミルシンナミックアルデヒドジメチルアセタール(4.0)、5−(2,6,6−トリメチル−2−シクロヘキセン−1−イル)−3−メチル−3−ブテン−2−オン(4.0)、安息香酸2−フェニルエチル(4.1)、ジフェニルメタン(4.1)、γ−ウンデカラクトン(4.1)、酢酸o−t−ブチルシクロヘキシル(4.1)、p−メチル−イソプロピルベンゼン(4.1)、イソブチルキノリン(4.2)、ゲラニルアントラニレート(4.2)、オーランチオール(4.2)4−(2,2,5,6−テトラメチル−2−シクロヘキセン−1−イル)−3−ブテン−2−オン(4.2)、ヒドロキシシトロネラールメチルアントラニレート(4.2)、ジフェニルオキシド(4.2)、アセチルセドレン(4.2)、酢酸シトロネリル(4.2)、γ−n−メチルヨノン(4.3)、アミルシンナミックアルデヒド(4.3)、ダマセノン(4.3)、10−オキサデカノリド(4.3)、11−オキサデカノリド(4.3)、γ−ドデカラクトン(4.4)、リモネン(4.4)、サリチル酸ベンジル(4.4)、γ−ターピネン(4.4)、p−メンタ−1,8−ジエン(4.4)、シトロネリルニトリル(4.4)、2,2,5−トリメチル−5−ペンチルシクロペンタノン(4.5)、フロラマット(4.5)、セドロール(4.5)、パチョリアルコール(4.5)、サリチル酸イソアミル(4.6)、エチレンブラシレート(4.6)、ネロリドール(4.6)、7−アセチル−1,2,3,4,5,6,7,8−オクタヒドロ−1,1,6,7−テトラメチルナフタレン(4.7)、サリチル酸ヘキセニル(4.7)、ビサボロール(4.7)、1−(2,6,6−トリメチル−1−シクロヘキセン−1−イル)−2−ブテン−1−オン(4.7)、β−ダマスコン(4.7)、3,7,11−トリメチル−2,6,10−ドデカトリエン−12−オール(4.8)、メチルジヒドロジャスモン(4.8)、p−シメン(4.9)、ウンデシレン酸エチル(4.9)、酢酸ベチベリル(4.9)、酢酸ミラディル(4.9)、ギ酸セドリル(5.1)、セドリルメチルエーテル(5.1)、安息香酸リナリル(5.2)、ゲラニルフェニルアセテート(5.2)、3α,6,6,9α−テトラメチルドデカヒドロナフト[2,1−b]フラン(5.3)、サリチル酸ヘキシル(5.3)、サリチル酸シクロヘキシル(5.3)、アンブロキサン(5.3)、酢酸セドリル(5.4)、ムスクインダノン(5.5)、ヘキシルシンナミックアルデヒド(5.5)、桂皮酸シンナミル(5.5)、ガラキソリド(5.5)、6−アセチル−1,1,2,3,3,5−ヘキサメチルインダン(5.7)、1−(2,2,6−トリメチルシクロヘキシル)−3−ヘキサノール(5.9)、ファントリド(6.0)。
〔(d)成分〕
(d)成分の吸水性樹脂は、20℃の環境条件下において、該吸水性樹脂1gあたり、20℃のイオン交換水の吸水量が10〜300g、好ましくは10〜250g、より好ましくは20〜200gであるものが好適である。この吸水量が10g以上であれば、製造時、吸水性樹脂が香料含有液状混合物を吸収、膨潤して得られる水性ゲル芳香剤の意匠性がより良好となり、また、300g以下であれば水性ゲル芳香剤の強度がより充分になる。
(d)成分としては、カルボン酸基及び/又はカルボン酸塩基を構成単位として含む重合体を含む吸水性樹脂が好ましく、例えば、デンプン−アクリロニトリルグラフト共重合体の加水分解物、デンプン−アクリル酸エステル共重合体の(部分)中和物、酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体のケン化物及び部分ケン化物、アクリロニトリル共重合体もしくはアクリルアミド共重合体の加水分解物、ポリビニルアルコール変性物、部分中和ポリアクリル酸塩、イソブチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリアクリル酸塩架橋体、アクリル酸(塩)−アクリルアミド共重合物架橋体、イソブチレン−無水マレイン酸共重合物架橋体等が挙げられ、使用に際しては、単独又は2種以上の混合物として用いることができる。なお、アクリル酸(塩)は、アクリル酸及び/又はアクリル酸塩を意味する。
好ましい吸水性樹脂は、ポリアクリル酸塩架橋体、アクリル酸(塩)−アクリルアミド共重合物架橋体、イソブチレン−無水マレイン酸共重合物架橋体であり、特に離水性の点、及び香りの持続性の点からアクリル酸(塩)−アクリルアミド共重合物架橋体が好適である。
ポリアクリル酸塩架橋体としては、例えば特開平8−337726号公報、特開平8−127725号公報などに記載されているものを用いることができる。また、イソブチレン−無水マレイン酸共重合物架橋体は例えば、特開2000−212354号公報、特開2006−167202号公報に記載されている吸水性樹脂を用いることができる。更に、アクリル酸(塩)−アクリルアミド共重合物架橋体としては特開2007−291145号公報、特開2007−291146号公報、特開2007−270100号公報に記載の吸水性樹脂を用いることができる。
(d)成分の形態は球状が好ましい。該吸水性樹脂が容器につめられた場合、球状であれば、樹脂同士で密着する面積が少なく間隙が多くなるため、空気との接触面積が大きくなり匂い立ちの点から良好となる。また、製造時、香料含有液状混合物を接触させる前の乾燥状態での平均粒子径は500〜4,000μmが好適である。平均粒子径は、JIS試験用ふるい規格のふるい〔例えばNo.5〜No.35(公称目開きで4mm〜500μm)〕を用いたふるい分けにより測定することができる。
(d)成分の市販品としては、特に制限されるものではないが、例えばアクリル酸(塩)架橋体としては日本触媒製のアクアリックCA、住友精化製のアクアキープ、三洋化成製のサンフレッシュ、アクアパール、アクリルアミド−アクリル酸(塩)共重合架橋体としてはAK Chemtech Co., Ltd.製のHISOBEAD、イソブチレン−無水マレイン酸共重合架橋体としてはクラレケミカル製のアクアビーズ、ポリオキシアルキレンオキシド架橋体としては住友精化製のアクアコークなどが挙げられる。
〔その他の成分〕
本発明においては、任意ではあるがlogPが1〜6の香料素材以外の香料素材を使用することができる。例えば、エチルアセテート(0.71)、エチルアセトアセテート(0.33)、エチルマルトール(0.47)、マルトール(−0.062)、ガラクソリド(6.1)、チベトリド(6.2)、イランゲン(6.3)、ペンタリド(6.3)、アンブレットリド(6.3)、β−カリオフィレン(6.3)、ヘキサデカノリド(6.8)、カジネン(7.3)などが挙げられる。( )内の数字はClogPの値である。
また、本発明の水性ゲル芳香剤は、その他の成分として、据え置き型水性ゲル芳香剤等に一般的に添加される溶剤、油剤、硫酸ナトリウムやN,N,N−トリメチルグリシン等の塩、pH調整剤、酸化防止剤、キレート剤、防腐剤、殺菌剤・抗菌剤、色素、紫外線吸収剤等を含有することができる。
〔水性ゲル芳香剤〕
本発明の水性ゲル芳香剤は、液体成分の保持性能の観点から、(a)/(b)の質量比が5/95〜55/45であり、好ましくは10/90〜50/50、より好ましくは20/80〜49/51である。
また、香り持続性の観点から、(a)成分と(c)成分の質量比は、(a)成分/(c)成分=80/20〜16/84が好ましく、より好ましくは75/25〜20/80、更に好ましくは67/33〜25/75、最も好ましくは50/50〜33/67である。
また、本発明の水性ゲル芳香剤は、(a)成分を0.1〜20質量%、更に0.2〜10質量%、(b)成分を0.2〜30質量%、更に0.2〜25質量%、更に0.5〜15質量%、(c)成分を1〜10質量%、更に1〜8質量%、(d)成分を2〜12質量%、更に3〜8質量%含有することが香りの持続性の点から好ましい。また、水の含有量は、30〜96質量%、更に50〜95質量%、より更に70〜94質量%が好ましい。
本発明の水性ゲル芳香剤は、(a)成分を0.1〜20質量%、(b)成分を0.2〜25質量%、(c)成分を1〜10質量%及び水を含む香料含有液状混合物〔以下、香料含有液状混合物(A)という〕と(d)成分の吸水性樹脂とを接触させ、前記香料含有液状混合物を前記(d)成分の吸水性樹脂に含浸させてなるものが香りの持続性の点から好ましい。
香料含有液状混合物(A)は(a)成分、(b)成分、(c)成分及び水を含有する組成物、更に水溶液の形態が水性ゲル芳香剤の製造の容易性の点から好ましい。水は、水中に存在する金属を除去したイオン交換水を用いることが好ましい。
香料含有液状混合物(A)中の(a)成分の含有量は、0.1〜20質量%が好ましく、0.2〜15質量%がより好ましく、0.5〜10質量%が更に好ましく、0.8〜5質量%が特に好ましい。また、香料含有液状混合物(A)中の(b)成分の含有量は、0.2〜25質量%が好ましく、0.5〜15質量%がより好ましく、0.8〜10質量%が更に好ましく、1〜8質量%が特に好ましい。また、香料含有液状混合物(A)中の(c)成分の含有量は、1〜10質量%が好ましく、1〜8質量%がより好ましく、1〜6質量%が更に好ましく、1〜4質量%が特に好ましい。
香料含有液状混合物(A)の20℃におけるpHは、好ましくは3〜8、特に好ましくは4〜7であり、このようなpHで高い香りの持続性を得ることができる。
本発明では、香料含有液状混合物(A)と(d)成分の吸水性樹脂とを接触させて、香料含有液状混合物(A)を(d)成分に含浸させる。接触時の(d)成分の水分含有率は20質量%以下が好ましく、10質量%以下が香りの持続性が高い水性ゲル芳香剤が得られる点でより好ましい。香料含有液状混合物(A)と(d)成分とを接触させる際、香料含有液状混合物(A)又は(d)成分の温度は、それぞれ0〜40℃の範囲が好適である。香料含有液状混合物(A)と(d)成分を接触させる時は、静置してもよく、吸水性樹脂が損傷しないように、弱い攪拌を加えても良い。製造の簡便性の点から静置しておくだけでも通常は十分香料含有液状混合物(A)が該吸水性樹脂の内部に浸透、保持できる点で本発明の製造方法は好適である。この製造方法で、香料含有液状混合物(A)中の(c)成分を(d)成分に担持させた水性ゲル芳香剤が得られる。香料含有液状混合物(A)と(d)成分の混合比率は、(d)成分の吸水能にもよるが、質量比で、香料含有液状混合物(A)/(d)成分=100/1〜5/1、更に50/1〜10/1の条件下で製造できる。
上記方法により製造された水性ゲル芳香剤は、(a)成分、(b)成分、(c)成分、(d)成分、及び水を含有する。
本発明の水性ゲル芳香剤はそのまま芳香剤として使用することもできるが、当該水性ゲル芳香剤を含んで構成される据え置き型芳香剤とすることができる。例えば、自立可能な容器等に収容して据え置き型芳香剤とすることもできる。
上記水性ゲル芳香剤が収容される容器は、水性ゲル芳香剤を収容可能であって、開放部を有し、この開放部から水性ゲル芳香剤中の芳香成分〔(c)成分〕を揮散させ得るものであれば、その形状や構造に特に制限はなく、開放部が上部にあるものの他、側部など他部にあるものも使用可能である。
上記容器としては、プラスチック、ガラス、金属などを用いることができるが、ゲル状成型物の収縮を目視できる、透明又は半透明な材質や、スリットや開口部から内部を視認できるものが使用できる。更には、従来から芳香・消臭剤に用いられているプラスチック容器、具体的にはポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレンなどの容器が使用される。
本発明の水性ゲル芳香剤を容器内に収容、設置する際、設置量は特に限定されず、使用する場所や使用期間、容器形状などの特性に応じて適宜選定することができ、また、同一容器に互いに異なる色調及び/又は香調を有する水性ゲル芳香剤を収容、設置してもよい。
<香料含有液状混合物の外観>
表1の香料組成物を用いて調製した表2の香料含有液状混合物(A)を各80g調製し、広口規格ビン(PS−No.11)に入れ25℃条件下で6時間静置したものを観察し、外観を評価した。「透明」はほぼ完全に可溶化し、肉眼では濁りを認知できない状態、「微濁」は可溶化が不十分だが、ビン内の溶液を通して新聞紙面の15字15段組みの文字が読める状態、「白濁」は可溶化が不十分で、ビン内の溶液を通して新聞紙面の15字15段組み文字が読めない状態、「分離」は可溶化が不十分で油成分が分離した状態を示す。
<ゲル状芳香剤の調製>
表1の香料組成物を用いて調製した表2の香料含有液状混合物(A)2.85gと吸水性樹脂0.15gとを、広口規格ビン(PS−No.6)に入れフタを閉め、香料含有液状混合物(A)を吸水性樹脂に含浸し、24時間静置したものをゲル状芳香剤とし、液保持性及び香り立ち(初期及び持続性)評価に用いた。
<使用終盤での液保持性の評価>
ゲル状芳香剤の使用終盤での液保持性について、ゲル−ゲル間及びゲルとガラス規格ビンの内壁との間に保持できない液があるかを判断し、以下の基準により評価した。判定は、上記で調製したゲル状芳香剤の規格ビンのビン口を開放し、40℃−50RHの恒温槽で7日間保存した後、再びフタを閉めてから行った。この条件は、室温程度であれば20〜40日程度使用した後の条件に相当し、使用終盤の状態を再現するものである。判定値は3名の平均値である。
* 液保持性判定基準
3:ゲルのビン底接触部、ゲルのビン側壁接触部、及びゲル−ゲル間を含め、容器内部で液の分離が認められない。
2:ゲルのビン底接触部、ゲルのビン側壁接触部、及びゲル−ゲル間の少なくとも何れかで液が分離しているが、ビンを90度傾けて1時間静置しても液が垂れない。
1:ゲルのビン底接触部、ゲルのビン側壁接触部、及びゲル−ゲル間の少なくとも何れかで液が分離しており、且つビンを90度傾けて1時間静置すると液が垂れる。
<香り立ち(初期の香り強度)と香り持続性の評価>
調製直後のゲル状芳香剤が入った広口規格ビンのフタを開け、25℃で24時間経過後にビン口の香り立ちを評価し、これを初期の香り立ちとする。次にフタを空けた状態のまま、25℃で静置16日後にビン口の香り立ちを評価し、香りの持続性を評価した。
初期の香り立ちの評価は、ゲル状芳香剤の香り強度を、実施例、比較例、それぞれに対応するゲル状芳香剤に用いた香料含有液状混合物を水で段階的に希釈した水溶液の香り強度と対比し、下記の香り強度の評価基準で香り立ちのレベルを相対比較した。何れも調香の業務に5年以上従事した判定者5人の結果の平均値で評価した。
* 香り強度の評価基準
5:50%水溶液と同等以上の強さ
4:25%水溶液と同等の強さ
3:5%水溶液と同等の強さ
2:1%水溶液と同等の強さ
1:0.25%水溶液と同等の強さ
0:0.25%水溶液より弱い
また、香りの持続性の評価基準は以下の通りであり、何れも調香の業務に5年以上従事した判定者5人の結果の平均値で評価した。
* 香りの持続性の評価基準
5:初期(25℃、24時間経過後)と同等の強さ
4:初期(25℃、24時間経過後)よりやや弱い
3:初期(25℃、24時間経過後)より弱い
2:初期(25℃、24時間経過後)よりかなり弱い
1:ほとんど香りがない
表1に香料組成物を示す。また、結果を表2に示す。
Figure 0005587109
Figure 0005587109
(注)表2中の成分は以下のものである。
・a−1:アデカプルロニックL−61、一般式(a2)中、a+c=5、b=30の非イオン界面活性剤(EO/PO/EOのブロック付加物)
・a−2:アデカプルロニックL−71、一般式(a2)中、a+c=5、b=35の非イオン界面活性剤(EO/PO/EOのブロック付加物)
・a’−1:ポリオキシエチレンドデシルエーテル(エチレンオキシド平均付加モル数8)〔(a)成分でない非イオン界面活性剤〕
・b−1:ラウロイルアミドプロピルジメチルアミンオキサイド
・c−1:表1の香料組成物c−1
・c−2:表1の香料組成物c−2
・d−1:AK Chemtech Co., Ltd.製の「Hisobead」、アクリルアミド−アクリル酸(塩)共重合体の架橋型吸水性樹脂(含水率5質量%)

Claims (3)

  1. (a)下記一般式(a1)で表される非イオン界面活性剤、(b)下記一般式(b1)で表される化合物及び一般式(b2)で表される化合物から選ばれる化合物、(c)logPが1〜6の香料素材を30〜100質量%含有し、かつlogPが4〜6の香料素材を10〜80質量%含有する香料、(d)吸水性樹脂、及び水を含有し、(a)/(b)の質量比が5/95〜55/45である、水性ゲル芳香剤。
    HO−[(C24O)m/(C36O)n]−H (a1)
    〔式中、mは1〜30の数、nは5〜100の数であり、“/”は(C24O)と(C36O)の配列がランダムでもブロックでもよいことを意味する。〕
    Figure 0005587109

    (式中、R1bは炭素数7〜19の炭化水素基を表し、R2b、R3bはそれぞれ独立に炭素数1〜3のアルキル基又は炭素数1〜3ヒドロキシアルキル基から選ばれる基を表し、pは2〜5の数を表す。)
    Figure 0005587109

    (式中、R2b、R3bはそれぞれ独立に炭素数1〜3のアルキル基又は炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基から選ばれる基を表し、R4bは炭素数8〜20の炭化水素基を表す。)
  2. (d)吸水性樹脂が、カルボン酸基及び/又はカルボン酸塩基を構成単位として含む重合体を含む請求項1記載の水性ゲル芳香剤。
  3. (a)を0.1〜20質量%、(b)を0.2〜30質量%、(c)を1〜10質量%及び水を含む香料含有液状混合物と(d)吸水性樹脂とを接触させ、前記香料含有液状混合物を前記(d)吸水性樹脂に含浸させてなる、請求項1又は2記載の水性ゲル芳香剤。
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