JP5583668B2 - メラノーマおよび胃癌の治療のためのWnt5−aペプチド誘導体の使用 - Google Patents

メラノーマおよび胃癌の治療のためのWnt5−aペプチド誘導体の使用 Download PDF

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Description

本発明は、特定のWnt5−α誘導体の特定の非分岐型カルバメート誘導体、並びにこれらWnt5−α誘導体を使用することによるメラノーマの治療に関する。
発明の背景
メラノーマはメラニン細胞の悪性腫瘍であり、主に皮膚に見られるが、腸および眼球にも見られる。それは稀なタイプの皮膚癌であるが、皮膚癌関連死の大半の原因である。それはメラニン細胞と称する色素細胞の制御されない増殖に起因するものである。多年に亘る広範な実験的研究および臨床的研究にもかかわらず、唯一の有効な治療は、1mmを超える厚さに達する前に原発性腫瘍を外科的に切除することである。
毎年、世界中ではおよそ160,000例の新たなメラノーマ症例が診断されており、男性および白人において高頻度である。それは日照の多い気候に住む白人集団において、他の群よりも一般的である。WHO報告に従えば、世界中で年間およそ48,000件のメラノーマ関連死が生じている。悪性メラノーマは、全皮膚癌関連死の75%を占める。
その治療法には腫瘍の外科的切除、アジュバント療法、化学療法および免疫療法、または放射線療法が含まれる。
メラノーマを発症するリスクは二つの群の要因に依存する。即ち、内在性因子および環境因子である。「内在性因子」は、一般には個人の家族歴および遺伝する遺伝子型であるのに対して、最も関連のある環境因子は日光露出である。疫学的研究は、紫外線(UVAおよびUVB)への露出がメラノーマ発症の主要な寄与因子の一つであることを示唆している。UV放射線は細胞のDNAに対する損傷、典型的にはチミンデモニゼーション(thymine demonization)を起こし、これが修復されないときには変異を生じる可能性がある。細胞が分裂するときに、これらの変異は新たな世代の細胞へと伝えられる。発癌遺伝子もしくは腫瘍抑制遺伝子に変異が生じると、変異を持った細胞における有糸分裂の速度が制御不能になり、腫瘍の形成を導く可能性がある。偶発的な過度の日光露出(「日焼け」を生じるような)は、メラノーマとの因果関係を有する。
リスクの決定における可能で有意な要素には、日光露出の強度および期間、日光露出が起きる年齢、並びに皮膚色素沈着の程度が含まれる。子供のときの露出は成人期の露出よりも重要なリスク因子である。これはオーストラリアにおける移住研究において見られ、その場合、人々が成人としてオーストラリアに移住すると、彼らは出生国のリスクプロファイルを保持する傾向にある。(特に人生の最初の二十年に)水泡または皮膚剥脱の日焼けを受けた個体は、メラノーマに関して有意に大きなリスクを有する。これは、日焼けがメラノーマの原因であることを意味するものではない。むしろ、それは単に統計的に相関しているに過ぎない。原因は過大なUV被曝である。日焼け止めは日焼けを防止するものの、メラノーマからは保護しないことが示されている。多くの研究者は、日焼け止めはメラノーマのリスクを増大させる可能性さえあると言っている。金髪および赤毛の人々、複数の異型母斑または形成異常の母斑を持った人達、並びに巨大な先天性メラノサイト母斑を持って生まれた人達では、リスクが増大している。
メラノーマの発生率は近年増大しているが、挙動、環境または早期検出において、どの程度の変化が含まれているのかは明らかでない。
日焼け止めがどれほど日焼けを低減し、同時にメラノーマを生じさせるのかを理解するためには、直接的なDNA損傷と間接的なDNA損傷とを区別する必要がある。遺伝子解析により、全てのメラノーマの92%が間接的DNA損傷によって生じることが示されている。家族性メラノーマは遺伝子的にはヘテロジニアスであり、また家族性メラノーマの遺伝子座が染色体アーム1p、9pおよび12q上で同定されている。
メラノーマの徴候および症状は次の通りである:
・非対称性の皮膚病巣
・病巣の境界が不規則である
・メラノーマは通常は複数の色を有する
・5mmよりも大きい黒子は、より小さい黒子よりもメラノーマである可能性が高い
黒子または病巣の進展(変化)は、該病変部が悪性になっていることの暗示である可能性がある。
皮膚における最も普通のタイプのメラノーマは下記の通りである:
・表層伝播性メラノーマ(SSM)
・結節状メラノーマ
・末端部黒子黒色腫
・悪性黒子(メラノーマ)
上記タイプの何れかはメラニンを産生し(暗色である)、または産生しない(メラニン欠乏または非黒色)。同様に、何れかのサブタイプは線維形成(神経親和性を伴う稠密な繊維性反応)を示す可能性があり、これは急速進行性挙動および局部的再発の傾向を示すマーカーである。
他の場合:
・明細胞肉腫(軟部のメラノーマ)
・粘膜メラノーマ
・ブドウ膜メラノーマ
予後に影響する特徴は、ミリメータでの腫瘍の厚さ(ブレスローの深さ)、皮膚構造に関連した深さ(クラークレベル)、メラノーマの種類、潰瘍の存在、リンパ/神経周囲浸潤の存在、腫瘍浸潤リンパ球の存在(存在すれば予後は良好になる)、病巣の場所、衛星病巣の存在、および局所的転移もしくは遠隔性転移の存在である。
ある種のメラノーマは劣悪な予後を有するが、これはその厚さによって説明される。興味深いことに、浸潤性の小さいメラノーマは、リンパ節転移を伴う場合でさえも、病期分類の時点で局部的転移のない深いメラノーマよりも良好な予後を有する。局部的再発は、これらの再発がリンパ浸潤を示す傾向があるので、それらが(段階的切除(staged excision)または穿孔/削り切除とは逆の)広い局部的切除部位にない限り、原発性のものと同様に挙動する傾向がある。
メラノーマがリンパ節にまで広がってしまったとき、最も重要な因子の一つは悪性リンパ節の数である。リンパ節内の悪性の程度もまた重要である;悪性が顕微鏡的に過ぎないミクロ転移は、マクロ転移よりも好ましい予後を有する。幾つかの症例において、ミクロ転移は特別な染色によって検出されるに過ぎず、またポリメラーゼ連鎖反応(PCR)として知られる希にしか用いられない試験によって悪性が検出可能であるだけであるならば、予後は良好である。悪性が臨床的に明らかなマクロ転移(幾つかの場合には癌が完全にリンパ節を置換する)は遙かに劣悪な予後を有し、リンパ節がマット状であれば、または余分なカプセル状の延長部があれば、予後は更に劣悪である。
遠隔性転移が存在するとき、癌は一般的に治癒不能と看做される。5年生存率は10%未満である。生存期間の中央値(median survival)は6〜12月である。治療は対症療法であり、延命および生活の質に焦点が当てられる。幾つかの症例において、患者は、転移性メラノーマを伴ってより多くの月数または年数を生きる可能性がある(治療の急速進行性に応じて)。皮膚および肺への転移は、より良好な予後を有する。脳、骨および肝臓への転移には劣悪な予後が伴う。
メラノーマは種々のステージで現れる。これらは、適切な治療を伴ったAJCCの5年生存に基づいて、ステージ0:100%の生存率を有する元の位置にあるメラノーマ、ステージI/II:5〜95%の生存率を有する浸潤性メラノーマ、ステージII:40〜85%の生存率を有する高リスクメラノーマ、ステージIII:25〜60%の生存率を有する局所的転移、ステージIV:9〜15%の生存率を有する遠隔転移と称される。
外科手術は、局在化した皮膚メラノーマのための一次選択療法である。ステージに応じて前哨リンパ節バイオプシーも同様に行われるが、この方法については臨床的証拠を巡って論争が存在する。進行した悪性メラノーマの治療は学際的なアプローチから行われている。
高リスクのメラノーマはアジュバント治療を必要とする可能性がある。合衆国において、その他の点では良好な健康状態にある殆どの患者は、1年の高投与量インターフェロン療法を開始するであろう。それは重篤な副作用を有するが、患者の予後を改善する可能性がある。この主張は、この時点で全ての研究によって支持されている訳ではなく、ヨーロッパでは、通常は臨床試験の範囲外では使用されない。
ダカルバジン(dacarbazine:DTICとも呼ばれる)を含む種々の化学療法剤、免疫療法(インターロイキン2(IL−2)またはインターフェロン(IFN))、並びに局部的灌流が、種々の医療センターで使用されている。それらは時として劇的な成功を示すが、転移メラノーマにおける全体の成功率は非常に限定される。IL−2(プロロイキン(Proleukin:登録商標))は、転移性メラノーマの治療について20年来承認された最初の新規療法である。研究によって、患者の小さいパーセンテージにおいてにしか過ぎないが、IL−2はこの疾患において完全且つ長期持続的な寛解の可能性を与えることが立証された。多くの新たな薬物および新規なアプローチが評価されている最中であり、有望性が示されている。
局部的もしくは局所的に進行したメラノーマを伴う患者、または切除不能な遠隔転移を伴う患者について、放射線療法が屡々使用される。それは、局部的再発の率を低減し得るが、生存期間を延ばすことはない。
メラノーマの進行の分子的背景が広範に研究されてきたし、また遺伝子発現解析によって、浸潤形態のメラノーマ vs. 浸潤性の低いもしくは良性の母斑において示差的に発現される幾つかの遺伝子が同定されてきた。そのような遺伝子の一つがWnt−5aである(Bittner et al., 2000)。Wnt−5aはシステインに富む分泌されたタンパク質であり、翻訳後の糖鎖形成修飾および脂質修飾を受ける(Kurayoshi et al., 2007)。その分泌の後、Wnt−5aはその受容体に結合することにより、自己分泌またはパラ分泌の形式で作用する。悪性メラノーマにおいて、Wnt−5aはGタンパク質共役型受容体であるFrizzled−5に結合することが示されている(Weeraratna, 2002)。それは非標準のWntタンパク質と考えられており、それが主としてβカテニンシグナル伝達経路を介して作用しないことを示している。癌の進行におけるWnt−5aの重要性が、近年、種々のタイプの癌において研究されてきた。Wnt−5aは、乳癌、甲状腺癌、リンパ腫、神経芽腫、大腸癌および肝癌において腫瘍抑制活性を有することが示されてきた(Joensson 2002; Kremenevskaja 2005: Liang 2003; Blanc 2005; Dejmek 2005; Liu 2008)。しかし、悪性メラノーマおよび胃癌のような他のタイプの癌においては、Wnt−5aの増大した発現は腫瘍の進行を促進することが示されている(Bittner et al., 2000, Weeraratna, 2002; Lewis et al., 2005; Kurayoshi et al., 2006)。これらの結果に基づいて、研究者は、一定の癌ではWnt−5aの効果を模する物質が腫瘍の進行を阻害するように働き得る(Saefholm, 2006)のに対して、悪性メラノーマのような他の癌では、Wnt−5aに媒介された腫瘍進行の阻害剤が必要とされるであろうと結論した。
悪性メラノーマにおけるWnt−5aの機能的な下流への影響に関しては、限定された知識しか入手可能ではない(Weeraratna et al., 2002; Dissanayake et al., 2007)。メラノーマ組織サンプルから誘導された細胞において、Wnt−5aタンパク質の増大した発現は、増大した細胞付着、遊走および浸潤を誘導することが示されている。同じ研究において、著者等はまた、Wnt−5aの効果が、Frizzled−5受容体および下流のタンパク質キナーゼC(PKC)信号を介して媒介されることを示した(Weeraratna et al., 2002)。更に最近の論文において、この著者は更に、Wnt−5aは、E−カドヘリンのレベルの減少を導くがビメンチンのレベルを増大させるSnailのPKCに誘導された発現を介して、上皮−間充織の遷移(EMT)を誘導することを示している(Dissanayake et al., 2007)。しかし、悪性メラノーマにおけるWnt−5aの増大した発現の実際の原因に関して、問題は未だ残されている。
DNAマイクロアレイ分析に基づくHoekおよび共同研究者による最近の研究では、Wnt−5a遺伝子発現の調節において、トランスホーミング増殖因子β(TGF−β)が決定的な役割を果たすことが示唆された(Hoek et al., 2006)。充分に興味深いこととして、TGF−βスーパーファミリーのメンバー(Van Belle et al., 1996)および骨形成タンパク質(BMP;Rothhammer et al., 2005)は、悪性メラノーマにおいて増大した発現を示す。更に、TGF−βの少なくとも幾つかの機能的効果はまた、Wnt−5aのそれと重なる。より詳細に言えば、Wnt−5aについて先に述べたように、TGF−β1はEMTを誘導し、またメラノーマの細胞遊走および転移能力における増大を誘導する(Janji et al., 1999; Gouon et al., 1996)。最後に、Wnt−5aおよびTGF−β1の両者は、E−カドヘリン、一定のインテグリンおよびマトリックスメタロプロテイナーゼの細胞タンパク質レベルにおける変化を媒介する(Dissanayake et al., 2007; Janji et al., 1999)。TGF−βシグナル伝達とWnt−5a発現との間の直接的リンクを証明した、非癌系からの刊行物が存在する。例えば、ニワトリの翼芽(wing bud)間葉細胞において、TGF−β3はWnt−5a発現を増大させ、PKCαの活性化および軟骨形成分化をもたらす(Jin et al., 2006)。より最近の刊行物では、マウスにおいて、TGF−β1が哺乳類上皮細胞におけるWnt−5aの発現を増大させて、発生中の乳腺における導管延長および側方分岐の阻害を導くことが示された(Roarty and Serra, 2007)。結局、TGF−βシグナル伝達の阻害は、それによりWnt−5aに媒介された腫瘍細胞の遊走および転移が損なわれ得る潜在的に魅力的なメカニズムである可能性がある。
本発明は、メラノーマおよび胃癌の治療に使用されるべきWnt5−α誘導体、並びにメラノーマおよび胃癌を治療する方法に関する。
発明の詳細な説明
特に、本発明は一定のWnt5−αペプチドの非分岐型カルバメート誘導体、特に、N−ブトキシカルボニル誘導体、更に特定すれば、下記の1以上のペプチドの非分岐型カルバメート誘導体、特にN−ブトキシカルボニル誘導体に関する:
MDGCEL 配列番号1
GMDGCEL 配列番号2
EGMDGCEL 配列番号3
SEGMDGCEL 配列番号4
TSEGMDGCEL 配列番号5
KTSEGMDGCEL 配列番号6
NKTSEGMDGCEL 配列番号7
CNKTSEGMDGCEL 配列番号8
LCNKTSEGMDGCEL 配列番号9
RLCNKTSEGMDGCEL 配列番号10
GRLCNKTSEGMDGCEL 配列番号11
QGRLCNKTSEGMDGCEL 配列番号12
TQGRLCNKTSEGMDGCEL 配列番号13
GTQGRLCNKTSEGMDGCEL 配列番号14
LGTQGRLCNKTSEGMDGCEL 配列番号15
本発明の更なる側面は、メラノーマおよび胃癌の治療に使用するための、上記ペプチドの非分岐型カルバメート誘導体、特にN−ブトキシカルボニル誘導体に関する。
本発明の更なる側面は、メラノーマおよび胃癌の治療に使用するための、少なくとも一つの上記ペプチドの非分岐型カルバメート誘導体、特にN−ブトキシカルボニル誘導体を含有する医薬組成物に関する。
その好ましい実施形態において、該医薬組成物は局所用組成物である。
本発明の更なる側面は、治療的有効量の上記ペプチドの非分岐型カルバメート誘導体、特にN−ブトキシカルボニル誘導体を、メラノーマおよび胃癌に罹患している患者に投与することにより、メラノーマを治療するための方法に関する。
本発明の更なる側面は、治療的有効量の上記ペプチドの非分岐型カルバメート誘導体、特にN−ブトキシカルボニル誘導体を、メラノーマおよび胃癌になるリスクゾーンにいる患者に投与することによる、メラノーマの予防的治療のための方法に関する。
ここでの非分岐型カルバメート誘導体の語は、N−メチルオキシカルボニル、n−エチルオキシカルボニル、N−n−プロピルオキシカルボニル、またはN−ブチルオキシカルボニル誘導体の群の誘導体の一つを意味し、後者が好ましいであろう。
以下、実施した幾つかの実験を参照することにより本発明を説明する。
図1は、A2058およびHTB63メラノーマ細胞株の特徴付けを図示している。 A):A2058およびHTB63メラノーマ細胞におけるWnt−5a、Frizzled−2およびFrizzled−5のmRNAの存在または不存在の分析。ヒト乳癌細胞株MCF−7(M)は、これら転写物の全てについての陽性対照として、またβ−アクチンは添加対照として働いた。プラス(+RT)およびマイナス(−RT)は、逆転写酵素を用いて、または用いずに行われた反応を示している。Fzd2およびFzd5について、PCR反応はβ−アクチン対照のために使用されたcDNA量の3.5倍に対して行われる。 B):HTB63細胞におけるWnt−5a転写物の存在を更に特徴付けするために、発明者は、組換えWnt−5aを陽性対照として用い、且つβ−アクチンを添加対照として用いたウエスタンブロットによって、A2058細胞およびHTB63細胞におけるWnt−5aタンパク質の細胞レベルを決定した。発明者はまた、A2058および48時間後の細胞から回収された血清フリー培地のウエスタンブロット分析を行って、これら細胞から分泌されたWnt−5aタンパク質の存在または不存在を明らかにした。組換えWnt−5aタンパク質は陽性対照として働いた。概説された結果の各々は、独立の実験として少なくとも3回繰り返された。
図2は、メラノーマ細胞中のWnt−5aアゴニストであるFoxy5を示している。図2aはFoxy5の構造を示している(ホルミル基がマークされている)。図2bは、Foxy5(50μM)が、0、16、24、40および48時間からなる時間コースに亘ってA2058細胞の遊走を促進すること(創傷治癒試験)を示している。誤差バーはs.e.mを表している。ペアt検定;*p<0.05.
図3は、Foxy5の修飾された類似体であるBox5の構造を示している。
図4は、メラノーマ細胞の付着および遊走に対する、Wnt−5a、および新規なN−ブトキシカルボニルヘキサペプチドであるBox5の効果を示している。 A):A2058メラノーマ細胞を示された濃度のWnt−5aで刺激し、フェルセン(Versene)で剥離し、示された濃度のWnt−5aの存在または不存在において、血清フリーの媒質中に単細胞として再懸濁させた。次いで、細胞を96ウエルのプレート中で付着させた。60分後に非付着細胞を洗い流し、付着細胞を染色してそれらの数を決定した。この数は対照刺激(Wnt−5aなし)のパーセントとして提示される。 B):A2058メラノーマ細胞を12ウエルプレート中において集密になるまで培養し、その後に各ウエルにおいて掻爬を行い、培地を、0.2μg/mLのWnt−5aを含まない(黒丸)または含む(白四角)新鮮な血清フリー培地に交換した。 C):A2058メラノーマ細胞を12ウエルプレート中において集密になるまで培養し、その後に各ウエルにおいて掻爬を行い、培地を、如何なる添加剤も含まない(黒丸)、0.2μg/mLのWnt−5aのみを含む(白四角)、または100μMのBox5と共に0.2μg/mLのWnt−5aを含む(白三角)新鮮な血清フリー培地に交換した。 D):HTB63メラノーマ細胞を12ウエルプレート中において集密になるまで培養し、その後に各ウエルにおいて掻爬を行い、培地を、新鮮な血清フリーの培地(黒丸)、慣らし培地(白四角)、または100μMのBox5を補充した慣らし培地(白三角)に交換した。遊走における変化を記録するために、パネルB〜Dにおいて、図は0、16、24、40または48時間後の同じ面積の細胞からの各掻爬/ウエルから取られ、創傷治癒は閉じられた創傷面積のパーセンテージとして表された。 E):各実験の開始に先立って、A2058細胞(左側の6本のバー)およびHTB63細胞(右側の2本のバー)が、フェルセン(Versene)を用いて脱離され、単細胞として血清フリー培地中に再懸濁された。この細胞を、100μMのBox5の存在下(塗潰しバー)または不存在(白バー)において連続的に撹拌しながら40分間予備インキュベートした。次いで、25,000個の細胞を含む該細胞懸濁液のアリコートを上部トランスウエル(Transwell)チャンバに添加し、下部チャンバには血清含有(10%)培地を満たした。示されているように、0.1μg/mlのWnt−3a、0.2ミクロンg/mlのWnt−5a、および/または100μMのBox5を上部チャンバに加えた。次いで、細胞を24時間浸潤させ、その後に膜の下面の付着細胞を計数した。結果は平均±SEM(n=5〜7)で与えられる。=p<0.05、**=p<0.01、および ***=p<0.001、ここでの値は対照と比較される。(図5D、CM vs. CM+Box5、^=p<0.05、^^=p<0.01、および^^^=p<0.001)。
図5は、Box5がA2058メラノーマ細胞の基礎遊走に対する影響をもたないが、TGFβ1に誘導された遊走を阻害できることを示している。A):100μMのBox5の存在下(白四角)または不存在下(黒丸)におけるA2058細胞の創傷治癒分析。B):100μMのBox5を用いて、または用いずに40分間予備インキュベートされ、更に指示されているように、5ng/mLのTGFβ1を用いてまたは用いずに刺激されたA2058細胞の創傷治癒試験。全ての創傷治癒データは、0、16、40および48時間後の、閉鎖された創傷面積のパーセントとして表される。
図6は、Wnt−5a/Ca2+シグナル伝達経路が、Wnt−5aに媒介されたメラノーマ細胞浸潤にとって不可欠であることを示している。A):rWnt−5a(0.1μg/L;矢印で示した添加)は、A2058細胞において迅速な細胞質ゾルCa2+信号をトリガーする。B):10μMのMAPT/AMを用いたA2058細胞の30分の予備インキュベーションは、細胞質ゾルCa2+のrWnt−5a(0.1μg/mL)刺激(矢印で示す)を無効にする。C):MAPT/AMは、Wnt−5aに誘導されたA2058細胞浸潤を無効にする。細胞を10μMのMAPT/AMと共に30分間予備インキュベートし、次いで浸潤実験の全期間を通して(24時間)、rWnt−5a(0.2μg/L)を用いて/用いずに、次いで1μMのMAPT/AMを用いて刺激し、ここで後者の治療条件は、図6Aに示した10μMのMAPT/AMで30分の場合と同じキレート効果を有していた。誤差バーはs.e.mを現す。ペアt−検定;p<0.05,***p<0.001.
図7は、Wnt−5aに誘導されたCa2+シグナル伝達およびPKC活性化に対するBox5の効果を示している。 予備インキュベート(一晩)およびBox5(100μM)の存在または不存在においてインキュベートされた、fura−2を添加したA208メラノーマ細胞からの蛍光シグナルを、Wnt−5a(0.1μg/mL)、エンドセリン−1(ET−1)(10nM)またはカルバコール(charbacol;5μM)での刺激に続いて記録した。A):Wnt−5a、エンドセリン−1またはカルバコール(後者の二つはGタンパク質受容体リガンド対照である)で刺激されたA2058細胞からの代表的なCa2+トレース。B):予備インキュベーションし且つBox5と共にインキュベーションし、次いでWnt−5aで刺激し、次いでエンドセリン−1(上部トレースの二番目の矢印)またはカルバコール(下部トレースの二番目の矢印)の何れかで再刺激したA2058メラノーマ細胞からの二つのCa2+トレース。示した全てのトレースは、少なくとも5つの別々の実験を表している。C):Box5の存在(実線バー)または不存在(破線バー)において、Wnt−5a、エンドセリン−1またはカルバコールで刺激されたA2058細胞から記録された、比の値(ピークレベルに対する基底レベル)でのΔCa2+変化の累積結果が示されている。D):Box5(100nM)と共に一晩予備インキュベーションすることは、45分後のMARCKSリン酸化またはrWnt−5a刺激(0.2μg/mL)を阻害する。1nMのPMAを、MARCHSリン酸化のための陽性指標として使用した。結果は平均±SEMで与えられる。***=p<0.001
図8は、A2058およびHTB63メラノーマ細胞における、Wnt−5aタンパク質発現に対するTGF−β1シグナル伝達の効果を示している。 A):選択的TGF−β1受容体アンタゴニストSB431542(10μM)の存在下または不存在下で、HTB63メラノーマ細胞を4日または5日間インキュベートすることによる、それらの内因性Wnt−5a発現に対する効果を示す代表的なウエスタンブロット。組換えWnt−5aは陽性対照として働き、β−アクチンは添加対照として働いた。 B):増大する濃度のTGF−β1を用いた24時間刺激のA2058細胞中でのWnt−5a発現に対する効果を示すウエスタンブロット。組換えWnt−5aは陽性対照として働き、またβアクチンは添加対照として働いた。 C):A2058細胞中でのWnt−5a発現に対する、増大する期間での5ng/mLのTGF−β1を用いた刺激の効果を示すウエスタンブロット。組換えWnt−5aは陽性対照として働き、またβアクチンは添加対照として働いた。概説した結果の各々は、少なくとも4回の独立した実験として反復された。
図9は、メラノーマ細胞の付着および遊走に対するTGF−β1およびBox5の効果を示している。 A):A2058メラノーマ細胞を、指示した濃度のTGF−β1で刺激し、フェルセンで脱離させ、単細胞として血清フリーの培地中に再懸濁させた。次いで、これらの細胞を96ウエルプレート中で付着させ、60分の後に非付着細胞を洗い流す一方、付着した細胞を染色し、それらの数を決定した。この数は、対照(TGF−β1刺激なし)のパーセンテージとして提示される。 B):HTB63メラノーマ細胞を12ウエル皿の中で集密になるまで培養し、その後に各ウエルにおいて掻爬を行い、培地を、10μMのSB431542の存在(白四角)または不存在(黒丸)の新鮮な血清フリー培地に変えた。 C):A2058メラノーマ細胞を12ウエル皿の中で集密になるまで培養し、その後に各ウエルに対して掻爬を行い、培地を、如何なる添加剤も不存在(黒丸)、または5ng/mLのTGF−β1単独の存在下(白四角)、または100μMのBox5と共に5ng/mLのTGF−β1の存在下(白三角)における新鮮な血清フリーの培地に変えた。パネルBおよびCに概説した実験において、図は0、16、24、40または48時間後の同じ領域の細胞からの各掻爬/ウエルから取られ、創傷治癒は閉じられた創傷領域のパーセントとして表された。 D):各実験の開始に先立って、A2058細胞(左側の二つのバー)およびHTB63細胞(右側の二つのバー)がフェルセンで脱離され、単一の細胞として血清フリーのRPMI培地の中に再懸濁された。次いで、25,000個の細胞を含む該細胞懸濁液のアリコートを上部トランスウエル(Transwell)チャンバに添加し、下部チャンバには血清を含有する(10%)培地を満たした。指示したように、細胞は上部チャンバにおいて、5ng/mLのTGF−β1または10μMのSB431542の存在下(塗潰しバー)もしくは不存在下(白バー)に浸潤させられた。次いで、細胞を24時間浸潤させ、その後に膜の下面も付着した細胞を計数した。 結果は、平均±SEM(n=5〜10)。=p<0.05、**=p<0.01、および ***=p<0.001
実験
<抗体およびペプチド>:
以下の一次抗体を使用した:β−アクチン・モノクローナルAC−15Ab(Sigma Aldrich, St. Louis, MO);TGF−β1ニワトリポリクローナルAb(R&D Systems Europe Ltd., Abingdon, UK)。Wnt−5aに対するポリクローナル抗体は、以前に説明したようにして(Jonsson et al., 2002)、発明者の実験室で成熟Wnt−5a分子のアミノ酸275−290に対して製造された。二次ペルオキシダーゼ共役抗ニワトリIgY(IgG)の完全分子は、シグマ・アルドリッチ社(Sigma Aldrich, St. Louis, MO)からのものであった;他の全てのペルオキシダーゼ共役IgGは、ダコパット社(Dakopatts, Glostrup, Denmark)から入手した。インビオラボス社(Inbiolabs Ltd, Tallinn, Estonia)は、二つの異なる機会に、新規なWnt−5aから誘導されたN−ブチルオキシカルボニルヘキサペプチド(Met−Asp−Gly−Cys−Glu−Leu;Box5)を合成した。このBox5ペプチドの二つのバッチは、発明者の試験において類似の結果を生じた。該合成されたBox5ペプチドのバッチ(純度>95%)は、RP−HPLCおよび質量スペクトル分析によって品質管理された。使用したホルミル化対照ペプチド:ホルミル−Nle−Leu−Phe−Nle−Tyr−Lysは、シグマ・アルドリッチ社(Sigma-Aldrich, St. Louis, MO)製であった。
化学薬品−ベンズアミジン、ウシ血清、全種類の組織培養培地は、シグマ・アルドリッチ社(Sigma-Aldrich, St. Louis, MO)製であった。ヒト組換えWnt−5a、Wnt−3aおよびTGF−β1タンパク質は、R&Dシステムズヨーロッパ社(R&D Systems Europe Ltd, Abingdon, UK)から購入した。ヒト・ブタエンドセリン−1およびカルバコール(charbacol)は、シグマ・アルドリッチ社(St. Louis, MO)から購入した。プロテアーゼ阻害剤であるペファブロク(pefabloc)、ロイペプチン、およびアプロチニンは、ロッシュ・モレキュラーバイオケミカルズ社(Mannheim, Germany)から入手した。TGF−β1型受容体の選択的阻害剤であるアクチビン受容体様キナーゼALK5およびその類縁体ALK4、並びに7SB431542(Inman et al., 2002)は、トクリスバイオサイエンス社(Tocris Bioscience; Tocris Cookson Ltd., Bristol, UK)から購入した。増強された化学発光(ECL)検出試薬は、サンタクルツバイオテクノロジー社(Santa Cruz Biotechnology, Inc.; Stockholm, Sweden)から購入する一方、他の全ての電気泳動試薬はバイオラッド社(BioRad; Richmond, CA)から購入した。他の全ての化学薬品は分析等級であり、シグマ・アルドリッチ社(St. Louis, MO)から購入した。
<細胞培養>:
ヒト悪性メラノーマ細胞株A2058は、ハンガリー国ブダペストのセメルワイス大学病理学および実験的癌研究部(Department of Pathology and Experimental Cancer Research, Semmelweis University)のラスツロ・コッペル(Laszlo Kopper)氏の好意で授与された。該A2058細胞は、10%FBS、5U/mLのペニシリン、0.5U/mLのストレプトマイシン、および2mMのグルタミンを補充したRPMI1640中で維持された。
HTB63(HT144とも呼ばれる)ヒト悪性メラノーマ細胞株は、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC; LGC Promochem AB, Boras, Sweden)から購入し、10%FBS、5U/mLのペニシリン、0.5U/mLのストレプトマイシン、および2mMのグルタミンを補充したマッコイの5A培地(McCoy's 5A medium)中で維持した。
ヒト乳癌細胞のMCF7(Wnt−5a発現のための陽性対照)は、10%FBS、5U/mLのペニシリン、0.5U/mLのストレプトマイシン、および2mMのグルタミンを補充したDMEM中で増殖された。全ての細胞培養は、5%二酸化炭素の加湿雰囲気中において37℃で維持された。
<ウエスタンブロット>:
細胞を、DTTを含有する1×ラエムリ緩衝液(Laemmli buffer)中で直接溶解して10分間煮沸するか、または50mMのTris−HCl(pH7.5)、1%トリトンX−100、100mMのNaCl、10mMのMgCl、20%のグリセロール、1mMのNaVO、およびプロテアーゼ阻害剤(20μg/mLのアプロチニン、1μg/mLのロイペプチン、2.5mMのベンザミジン、および2mMのペファブロク(pefabloc))を含有する緩衝液中で溶解した。溶解緩衝液で処理された細胞を、4℃において15,000rpmで5分間遠心分離した。各サンプル中のタンパク質含量を決定し、各レーンにおけるタンパク質の均等負荷を保証するために調節した。その後、50mMのDTTおよび5×濃縮ラエムリ緩衝液を添加し、サンプルを5分間煮沸した。このサンプルをSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動により分離し、続いてPVDF膜に移した。免疫ブロッティングのために、該膜を、Wnt−5aについては0.2%ツイーン20および1%非脂肪ミルクを補充したPBS中において、或いは他の全ての抗体については3%非脂肪ミルクを補充したPBS中において、1時間ブロック処理した。その後、該膜は室温で1時間または4℃で一晩、指示された一次Ab(β−アクチンについては1:25,000;Wnt−5aについては1:1,000;およびTGF−β1については1:1,000)と共に、2%非脂肪ミルクまたは1.5%BSA中でインキュベートされた。0.2%ツイーンを含むPBS中で広範に洗浄した後、該膜を西洋ワサビペルオキシダーゼ共役二次Abと共に、2%非脂肪ミルクまたは1.5%BSA中で1時間インキュベートし、再度広範に洗浄した。最後に、増強化学発光を使用してAb−抗原複合体を検出した。再プロービングのために、膜をケミコンインターナショナル社(Chemicon International; Temecula, CA)から入手した再ブロット強力溶液(Reblot Strong solution)でストリップした。示されたウエスタンブロットは、少なくとも3回の独立した実験を表している。
<RT−PCR>:
インビトロゲン社から得たTRIzol(登録商標)を使用して、製造業者の説明書に従ってRNA抽出を行った。RNA濃度は、ナノドロップ分光分析機ND−1000(Bio-Rad; Hercules CA)を使用して測定した。逆転写に先立って、RNAを1U/μLのDNaseI(Invitrogen)で処理した。M−MuLV・RT(Fermentas, Helsingborg, Sweden)を使用し、フェルメンタス社(Fermentas; Helsingborg, Sweden)から入手したランダムヘキサマー、1〜2μgの全RNAを用いてcDNAを合成した。50μL容積中のPCR反応は、1×Taqポリメラーゼバッファー(75mMのTris−HCl、20mMの[NH4]SO、0.01%ツイーン20)中において、2.5mMのMgCl、200mMのdNTPs、1μMの各プライマー、および1単位のTaq・DNAポリメラーゼ(Fermentas, Helsingborg, Sweden)を加え、5μLのRT反応を使用した。PCRプライマーは次の通りであった:
・Wnt−5a順方向:
5’−GGATTGTTAAACTCAACTCTC−3’(配列番号16);
・Wnt−5a逆方向:
5’−ACACCTCTTTCCAAACAGGCC−3’(配列番号17);
・β−アクチン順方向:
5’−TTCAACACCCCAGCCATGTA−3’(配列番号18);
・β−アクチン逆方向:
5’−TTGCCAATGGTGATGACCTG−3’(配列番号19);
・Frizzled−2順方向:
5’−ACATCGCCTACAACCAGACC−3’(配列番号20)
および
・Frizzled−2逆方向:
5’−CTCGCCCAGAAACTTGTAGC−3’(配列番号21);
・Frizzled−5順方向:
5’−ACACCCGCTCTACAACAAGG−3’(配列番号22)
および
・Frizzled−5逆方向:
5’−CGTAGTGGATGTGGTTGTGC−3’(配列番号23)
図1に示したRT−PCRは、少なくとも3回の独立した実験を表している。
<細胞付着>:
細胞は下記のようにして前処理および刺激を行い、フェルセンで脱離させ、血清フリーのRPMI培地中に再懸濁させ、各治療群からの30,000個の細胞を含むサンプルを96ウエルプレートの各ウエルに加えた。
細胞を、5%二酸化炭素の加湿雰囲気中において37℃で60分間付着させ、その後に非付着細胞をPBSで洗い流した。付着した細胞を、室温において1%グルタルアルデヒド中で10分間固定し、次いで20%メタノール中において10分間、0.5%クリスタルバイオレットで染色した。最後に、各群の細胞から染料を50%酢酸中に溶解した。その後、各ウエルからの溶解された染料の量を、フルオスタープレート読取り機(BMG Lab Technologies GmbH, Offenberg, Germany)において544nmで測定した。各別々の実験からの個々のサンプルを4回分析し、蓄積されたデータは5回の別々の実験に基づいていた。その結果を図4に示す。
A):A2058メラノーマ細胞を指示された濃度のWnt−5aで刺激し、フェルセンで脱離させ、指示された濃度の組換えWnt−5aの存在下または不存在下において、血清フリーの培地中に単細胞として再懸濁させた。次いで、細胞を96ウエルプレート中で付着させた。60分後に、非付着細胞を洗い流す一方、付着細胞を染色し、それらの数を決定した。この数は対照(Wnt−5aなし)刺激のパーセンテージとして提示される(図4)。
B):A2058メラノーマ細胞を12ウエルプレート中で集密になるまで培養し、その後に各ウエルにおいて掻爬を行い、培地を0.2μg/mLのWnt−5aを含まない(黒丸)または含まない(白四角)新鮮な血清フリー培地に変えた(図4B)。
C):A2058メラノーマ細胞を12ウエルプレート中で集密になるまで培養し、その後に各ウエルにおいて掻爬を行い、培地を如何なる添加剤も含まない(黒丸)、0.2μg/mLのWnt−5aのみを含む(白四角)、または100μMのBox5と共に0.2μg/mLのWnt−5aを含む(白三角)、新鮮な血清フリー培地に交換した(図4C)。
D):HTB63メラノーマ細胞を12ウエルプレート中において集密になるまで培養し、その後に各ウエルにおいて掻爬を行い、培地を、新鮮な血清フリーの培地(黒丸)、慣らし培地(白四角)、または100μMのBox5を補充した慣らし培地(白三角)に交換した。遊走の変化を記録するために、パネルB〜Dにおける図は、0、16、24、40または48時間後の同じ面積の細胞からの各スクラッチ/ウエルから取られ、創傷治癒は閉じられた創傷面積のパーセントとして表された。
E):各実験の開始に先立って、A2058細胞(左側の6本のバー)およびHTB63細胞(右側の2本のバー)が、フェルセン(Versene)を用いて脱離され、単細胞として血清フリー培地中に再懸濁された。この細胞を、100μMのBox5の存在下(塗潰しバー)または不存在(白バー)において、連続的に撹拌しながら40分間予備インキュベートした。次いで、25,000個の細胞を含む該細胞懸濁液のアリコートを上部トランスウエル(Transwell)チャンバに添加し、下部チャンバには血清含有(10%)培地を満たした。示されているように、0.1μg/mlのWnt−3a、0.2ミクロンg/mlのWnt−5a、および/または100μMのBox5を上部チャンバに加えた。次いで、細胞を24時間浸潤させ、その後に膜の下面の付着細胞を計数した。結果は平均±SEM(n=5〜7)で与えられる。
=p<0.05、**=p<0.01、および ***=p<0.001、ここでの値は対照と比較される。(図4D、CM vs. CM+Box5、^=p<0.05、^^=p<0.01、および^^^=p<0.001)。
<創傷治癒試験>:
12ウエルプレート中に細胞を播種し、完全RPMI培地(A2058細胞について)または完全McCoyの5A培地(HTB63細胞について)中で集密層にまで増殖させた。指示したように、細胞はBox5ペプチド(100μM)または対照溶媒と共に、連続的に撹拌しながら40分間予備インキュベートされた。次いで、ピペットの先端で細胞の集密層を通して掻爬することにより、創傷が加えられた。試験の遊走期間の間に、細胞は血清フリー培地中において、またはHTB63細胞の場合には48時間培養された細胞から採取されて採取後2日以内に使用されるそれら自身の血清フリー慣らし培地中でインキュベートされた。各実験の正確な条件は上記で説明した。活性のロスを回避するために、24時間後に細胞培地を交換した。各掻爬についての図は、0、16、24、40および48時間の時点での同じ面積の細胞において取られ、創傷治癒は閉じた創傷面積のパーセンテージとして測定された。各実験条件について創傷治癒は三回分析された。全てのデータは、指示したように3〜8回の別々の実験に基づいていた。
<細胞浸潤>:
細胞浸潤は、BDマトリゲル(登録商標)浸潤チャンバ試験(BD Biosciences, Bedford, MA)を使用して解析された。各実験の開始に先立って、フェルセンを用いて細胞を脱離させ、単細胞として血清フリーRPMI培地中に再懸濁させた。指示したように、細胞はBox5ペプチド(100μM)または対照溶媒と共に、連続的に撹拌しながら40分間予備インキュベートされた。次いで、25,000個の細胞および100μMのBox5または対照溶媒を含む細胞懸濁液のアリコートを、上部トランスウエルチャンバに加え、また下部チャンバには血清含有(10%)培地を満たした。同時に、図7に示したように、Wnt−5a、Wnt−3aまたはTGF−β1阻害剤のSB431542を上部チャンバに加えた。懸濁液中での細胞の均一な分布、およびその後の膜表面全体に亘る均一な分布を保証するために、浸潤チャンバを5分間水平に振盪した。細胞を、5%COの加湿雰囲気中において37℃で示された時間に亘って浸潤させた。培地を廃棄し、細胞を4%パラホルムアルデヒド中で10分間固定した。20%メタノール中の0.5%クリスタルバイオレットで10分間細胞を染色し、先端に綿を付けたアプリケータを用いて膜の内側の非浸潤細胞を除去した。該膜を小刀の刃でチャンバから切り取り、膜の下部チャンバ側にある染色細胞を計数した。
<細胞質ゾルフリーカルシウムレベルの決定>:
ガラスカバースリップ上で増殖された細胞を、4μMのfura−2/AMと共に37℃の培地中で30分間インキュベートした(Dejmek et al., 2006)。該細胞のfura−2添加の後に、カバースリップを洗浄し、特別に設計されたチャンバに搭載し、該チャンバにはカルシウム含有培地(136mMのNaCl、4.7mMのKCl、1.2mMのMgSO、1.1mMのCaCl、1.2KHPO、5mMのNaHCO、5.5mMのグルコースおよび20mMのHepes、pH7.4)を加えた。次いで、チャンバを、フォトンテクノロジーインターナショナル(PTI)撮像システムに接続されたニコンDiaphot顕微鏡からなるシステムの中に配置した。細胞は、何らかの刺激が行われる前に、最初に10分間静置した。次いで、(図8の脚注に示したように)Wnt−5a、エンドセリン−1またはカルバコールでの刺激の前後において、340nmおよび380nmの間で迅速に交互する励起波長を使用する一方、発光波長は510nmに設定して、細胞からfura−2蛍光を連続的に記録した。
その後、PTI画像マスターソフトウエアを使用して蛍光強度比率(340/380nm)を計算および解析した。
統計的解析−独立サンプルについてのスチューデントt検定を使用して、実験における差を解析した。ここで、=p<0.05、**=p<0.01、***=p<0.001である。
<A2058およびHTB63メラノーマ細胞株の特徴付け>:
メラノーマ細胞におけるWnt−5a発現およびシグナル伝達の効果を更に研究するために、二つの異なるヒト・メラノーマ細胞株であるA2058およびHTB63を使用することが決定された。A2058およびHTB63メラノーマ細胞の両者は、Frizzled−5受容体、即ち、メラノーマ細胞における提案されたWnt−5a受容体(Weeraratna 2002)を発現する(図1A)。対照的に、Frizzled−2の遙かに弱い発現が細胞株において観察された。更なる特徴付けによって、A2058細胞では、Wnt−5aのmRNAおよびタンパク質の内因性発現がないのに対して、これとは対照的に、HTB63細胞はWnt−5aのmRNA(図1A)およびタンパク質(図1B)の充実した内因性発現を示すことが明らかになった。
HTB63細胞において発言された内因性Wnt−5aが実際に分泌されることを確認するために、Wnt−5aの存在について、その中で細胞が増殖された培地をウエスタンブロットにより分析した。図1Bの下方のブロットは、HTB63細胞がWnt−5aを発現するだけでなく分泌することを明瞭に示している。Wnt−5aおよびFrizzled−5を発現するMCR−7乳癌細胞および組換えWnt−5aを、これら実験における陽性対照として使用した。これらのデータは、該細胞株におけるWnt−5aの発現が転写レベルで調節されることを示唆しており、これはそれが翻訳レベルで調節される乳癌組織および細胞(Dejmek, Leandersson)とは対照的である。今日まで、メラノーマ細胞においてWnt−5a転写を調節する因子は知られていない。
<Wnt−5aアンタゴニストペプチドの発生>:
以前、発明者は、Wnt−5aシグナル伝達のアゴニストとして機能するWnt−5a由来のN−ホルミル化ヘキサペプチド(Foxy5;図2A)を同定した。このペプチドは、乳癌細胞株においてWnt−5aによく似た作用を有し、インビボにおいて抗腫瘍原機能を有している。Foxy5はまた、A2058メラノーマ細胞においてWnt−5aの遊走促進作用によく似た作用をも有することが見出され(図2B)、このペプチドが多様な細胞タイプにおいてWnt−5aアゴニストとして機能することを示唆した。興味深いことに、ホルミル化された細菌由来の化学走性ペプチド(ホルミル−Met−Leu−Phe)の特異的修飾が、該分子をアゴニストからアンタゴニスト類似体へと変換させることが以前に示された。今回、Foxy5のこのような修飾もまた、そのWnt−5aアゴニスト機能をアンタゴニスト機能へと変化させ得ることが示された。このt−boc−Met−Asp−Gly−Cys−Glu−Leuペプチドは、Box5と称されている(図3)。
<細胞の付着および遊走に対するWnt−5aおよびN−ブチルオキシカルボニルヘキサペプチドBox5の効果>:
Wnt−5aの効果が、A2058メラノーマ細胞の付着に対して試験された。Wnt−5aはA2058メラノーマ細胞の付着能力を高め、0.2μg/mLでの刺激の後に最大の効果が得られた(図4A)。次いで、これらの発見に基づき、創傷治癒試験において、この濃度の組換えWnt−5aがどれほどA2058細胞の遊走に影響するかが探索された。図4Bに概説された結果は、実験の開始時におけるWnt−5aの添加(0.2μg/mL)が、A2058メラノーマ細胞の遊走を増大させたことを明瞭に示している。このWnt−5aに誘導されたメラノーマ細胞の遊走を特異的に阻害するために、新規なN−ブチルオキシカルボニル修飾されたペプチドが開発され、試験された。以前から、Wnt−5aに誘導されたホルミル化ヘキサペプチドがインビトロでの乳癌細胞遊走に対するWnt−5aの阻害効果を模倣できること(Saefholm 2006)、およびこのペプチドがマウスモデルでの乳癌転移を阻害すること(Saefholm, 2008)が示されている。ここでは、Wnt−5aシグナル伝達の阻害を得るために、該ヘキサペプチドのN−末端メチオニン残基にブチルオキシカルボニル基を追加することの可能性が試験された。この操作の基礎は、細菌由来の化学走性ペプチド(ホルミル−Met−Leu−Phe)が、該ペプチドの作用をアゴニストからアンタゴニストに変化させることが報告されていることである(Derian, 1996)。このブチルオキシカルボニル修飾されたヘキサペプチド(以下ではBox5と言う)が、創傷治癒試験においてA2058およびHTB63メラノーマ細胞の両者の遊走を阻止する能力を試験した。Box5は、Wnt−5aに誘導されたA2058細胞の遊走を無効にしたが(図4C)、内因性発現を欠くこれら細胞の本来の遊走に対しては効果がなかった(図5A)。また、A2058細胞のTGF1βに媒介された遊走が、Box5との予備インキュベーションによってブロックされ得ることも示された(図5B)。これらのデータはまた、Box5は、馴化培地(分泌されたWnt−5aを含有する)を新鮮な血清フリー培地(Wnt−5aを欠く)に変えるのと同じ程度にHTB63細胞の遊走を阻害するが、ホルミル化された対照ヘキサペプチド(データは示さず)はそれを阻害しないという発見によっても支持される(図4D)。この創傷治癒試験は、多くの細胞−細胞相互作用を特徴とする単層中に存在する細胞の遊走を研究する。しかし、それは腫瘍細胞が細胞外マトリックスに浸潤せざるを得ないインビボでの状況を反映していない。従って、次に浸潤試験において同様の実験を行った。
転移プロセスの間に、腫瘍細胞は細胞外マトリックスの中に浸潤する必要があり、そこで三次元細胞培養モデルにいて細胞浸潤をブロックするBox5の効率を試験した。Box5の添加はWnt−5aに誘導されたA2058の浸潤を無効にし、細胞が正準のWntリガンド、即ちWnt−3aで刺激されたときには効果が見られなかった(図4E)。Box5はまた、内因性Wnt−5aの効果を中和することによって、HTB63細胞の浸潤を阻害する能力を有していた。全体的に、これらデータは、Box5がWnt−5aに媒介されたメラノーマ細胞の遊走および浸潤(両者共に転移プロセスの必須要素である)の強力なアンタゴニストであることを示している。
創傷治癒試験において得られた結果は、A2058メラノーマ細胞の浸潤を刺激するWnt−5aの能力に関する浸潤試験において確認された。更に、メラノーマ細胞浸潤に対するWnt−5aのこの効果は、細胞が正準リガンドWnt−3aで刺激されたときには見られなかった。ここでも、Box5ペプチドの添加は、Wnt−5aに誘導されたA2058メラノーマ細胞の浸潤を無効にしたが、それらの基礎浸潤には影響がなかった。加えて、Box5はまた、Wnt−5aの内因性発現および分泌を有するHTB63メラノーマ細胞の浸潤を阻害することができた。
<Wnt/Ca2+シグナル伝達経路は、Wnt−5aに媒介されたメラノーマ細胞の浸潤にとって不可欠である>:
Box5のアンタゴニスト機能についての分子的基礎を同定するために、Wnt−5aに誘導されたメラノーマ細胞浸潤に不可欠なシグナル伝達経路を検討した。Wnt−5aはA2058細胞における迅速な細胞ゾルCa2+信号を刺激し(図6A)、これは細胞間Ca2+キレータMAPT/AMを使用することにより阻害され得る(図6B)ことが見出された。
MAPT/AM・Ca2+キレータを使用して、Wnt−5a・Ca2+に誘導されたシグナル伝達の不存在におけるメラノーマ細胞の浸潤能力が評価された。A2058細胞に対するWnt−5aの浸潤促進効果は、MAPT/AMによって完全に無効にされた。これによって、Wnt−5a刺激のCa2+シグナル伝達要素がメラノーマ細胞浸潤を媒介するために不可欠であることが示された。
<Wnt−5aに誘導されたシグナル伝達に対するN−ブチルオキシカルボニルヘキサペプチドBox5の効果>:
Box5ヘキサペプチドの性質およびそのWnt−5a受容体との選択的相互作用を更に研究するために、Wnt−5aに誘導された即時的受容体シグナル伝達に対するその効果が分析された。Wnt−5aは、甲状腺細胞(Kremenevskaja, 2005)において、および乳癌細胞において(Dejmek, 2006)、細胞質ゾルフリーCa2+の迅速な増大をトリガーすることが以前に示されている。データは、Wnt−5aもまた二つの他のGタンパク質共役型制御受容体リガンド、即ちエンドセリンー1およびカルバコールにより誘導された迅速な応答(図7A)と同様、A2058メラノーマ細胞において迅速な細胞質ゾルCa2+シグナル伝達をトリガーすること(図7A)を示している。なお、三つのリガンド全部について概ね類似のCa2+応答を得るために、この実験シリーズにおいては、Wnt−5a濃度を0.2〜0.1μg/mLまで低下させた。
次いで、Box5の効果は、Wnt−5aで最初に刺激され、続いてエンドセリン−1またはカルバコールで刺激された細胞に対して試験された(図7B)。これらの実験により、A2058メラノーマ細胞において、Box5はWnt−5aに誘導された細胞内Ca2+シグナルを選択的に阻害するが、エンドセリン−1またはカルバコールで刺激された細胞内Ca2+シグナルを阻害しないことが明らかになった。Nox5が如何にしてWnt−5aに誘導されたCa2+シグナルに影響するかについての蓄積された結果によって、Box5の不存在下におけるCa2+シグナルのピーク値に比較したときに、70%を越える阻害が存在することが明らかになった(図7C)。Box5の存在下または不存在下において細胞をエンドセリン−1またはカルバコールで刺激した同様のCa2+実験は、このペプチドがCa2+シグナル伝達に対して有意な効果を持たないことを明らかにした(図7C)。
メラノーマ細胞におけるWnt−5aシグナル伝達の下流効果の一つは、PKC活性化である。A2050細胞のWnt−5a刺激は、MARCKSおよび内因性PKC基質の増大したリン酸化をもたらし、これはBox5ペプチドの存在において阻害された(図7D)。これらのデータは、Box5が、Wnt−5aに刺激されたCa2+およびPKCシグナル伝達と直接的に拮抗して、Wnt−5aに媒介された細胞浸潤の下流阻害をもたらすことにより、メラノーマ細胞浸潤を阻止するように機能することを示唆している。
細胞内Ca2+の変化を記録することは、Gタンパク質共役型受容体シグナル伝達の調節を研究するための非常に鋭敏な試験であるが、それはメラノーマ細胞の運動性に直接関連付けられてはいなかった。しかしながら、以前の研究により、メラノーマ細胞遊走の調節に対する、Wnt−5aに誘導されたPKC活性化の下流効果が立証されている(Weeraratna et al., 2002, Dissanayake et al., 2007)。
PKCの自己リン酸化のレベル(Weeraratna et al., 2002, Dissanayake et al., 2007)は、そのPKCキナーゼ活性に対する関連が不明確であるため、今回の研究では評価されなかった。その代りに、内因性PKC基質MARCKSのリン酸化に対するWnt−5aおよびBox5の効果が、メラノーマ細胞におけるPKCの活性レベルを評価する直接的な手段として分析された。メラノーマ細胞のWnt−5a刺激は、9〜15分にピークをもったMARCKSリン酸化における明確な増大をもたらす(図7A)。Wnt−5aのこの効果は、Box5ペプチドによって無効にされた(図7B)。これらの結果は再度、メラノーマ細胞の遊走および浸潤に対するBox5の選択的効果を確認し(図4C〜D)、更に、Box5がWnt−5a選択的ペプチドアンタゴニストであるとの仮説を支持する。
<HTB63およびA2058細胞におけるWnt−5aタンパク質発現に対するSB431542およびTGF−βの効果>:
現時点で、メラノーマ細胞におけるWnt−5a転写の調節は不明である。他の細胞タイプにおいては、発生中の管状乳腺上皮細胞において最近立証されたことであるが(Roarty and Serra, 2007)、TGF−β1が転写レベルでWnt−5a発現を調節する原因であることが見出された。メラノーマ細胞にも同様の機構が存在する可能性を探るために、選択的TGF−β1タイプI受容体阻害剤であるSB431542および組換えTGF−β1が、細胞内においてWnt−5a発現に影響する能力を直接的に試験した。図7Cに概説したデータは、HTB63細胞(内因性Wnt−5a発現を有する)が10μMのSB431542を補充した完全McCoyの5A培地中で4〜5日維持されたときに、内因性Wnt−5aタンパク質の発現は4日間のインキュベーションの後には顕著に低減され、また5日間のインキュベーションの後には殆ど無効にされたことを示している。A2058細胞(内因性Wnt−5a発現を欠く)を異なる濃度のTGF−β1で36時間に亘って刺激することは、Wnt−5aタンパク質の増大した発現をもたらした(図8B)。これらのデータは、5ng/mLのTGF−β1で刺激したときにほぼ最大のWnt−5a発現が達成されること(図8B)、および5ng/mLのTGF−β1でA2058細胞を刺激することは、Wnt−5aタンパク質発現において明瞭に検出可能な増大をもたらすために36時間の刺激を必要とすること(図8C)を明らかにしている。これらの結果は、少なくともこの研究で用いた二つの悪性メラノーマ細胞株において、TGF−β1がWnt−5a発現を調節することを確認している。このことは、Wnt−5aに媒介されたメラノーマ細胞の遊走が、これら細胞におけるTGF−β1シグナル伝達を阻止することによって、間接的に拮抗され得る可能性を生じさせる。
<メラノーマ細胞の付着、遊走および浸潤に対するTGF−β1、SB431542およびBox5の影響>
Wnt−5aが実際にTGF−β1に誘導された細胞遊走の下流調節因子であるかどうかを調べるために、最初に、A2058メラノーマ細胞の付着に対するTGF−β1の効果を試験した。TGF−β1はA2058メラノーマ細胞の付着能力を刺激すること、および最大の効果は5ng/mLでの刺激の後に得られること(図9A)が分かった。次いで、これらの発見に基づき、創傷治癒試験において、これら濃度の組換えTGF−β1がどのようにA2058細胞の遊走に影響するのかを調べた。図9Bにおいて概説された結果は、実験の開始時におけるTGF−β1(5ng/mL)の添加が、A2058メラノーマ細胞の遊走を増大させたことを明瞭に示している。これらの結果との良好な一致において、10μMのSB431542(TGF−βI型受容体の阻害剤)が、HTB63細胞の遊走を阻害することが分かった(図9C)。次いで、創傷治癒試験においてA2058の遊走を阻害するBox5の能力が試験された。Box5は、二次元創傷治癒試験において、TGF−β1に誘導された遊走を無効にした(図9D)。Box5は、A2058メラノーマ細胞の基礎遊走に対して影響しなかった(データは示さず)。しかし、より複雑な遊走試験での遊走に対するTGF−β1(5ng/mL)の効果が試験されたときには、相反する結果が得られた。浸潤試験において、TGF−β1はA2058細胞の遊走を阻害し、またSB431542はHTB63細胞の遊走を刺激した(図9E)。従って、TGF−β1は、おそらくはその複数の下流効果に起因したWnt−5a依存性のメラノーマ細胞遊走を阻止するための予測できない標的であると結論された。
本研究において、修飾されたWnt−5a由来のヘキサペプチドであるBox5は、メラノーマ細胞におけるWnt−5aに誘導されたシグナル伝達を選択的に阻害し、また創傷治癒および浸潤試験の両者において、これら細胞のWnt−5aに媒介された遊走を阻止する。Box5の設計のための基礎は以前の研究に由来するものであり、その研究ではPHD法(Rost, 1996)に従って二次/溶媒アクセス可能な表面予測(surface predictions)が行われ、次いで、Wnt−5aの内因性発現のない乳房腫瘍細胞に対するWnt−5aの効果を再構築する能力を備えた、Wnt−5a由来の小ペプチド(Saerndahl, 2006)についてスクリーニングされた。当該研究において、Met−Asp−Gly−Cys−Glu−Leuヘキサペプチドが特徴付けされ、これはN−末端Metのホルミル化の後に(Foxy5と称される)、シグナル伝達および乳癌細胞遊走の阻止に関してWnt−5aの効果を模倣することができた(Saerndahl, 2006)。これらFoxy5の効果は、細胞を以前に記載(Sen 2001; Weeraratna 2002)のブロッキング抗Frizzled−5抗体と共にインキュベートすると喪失され、Foxy5がGタンパク質共役型受容体Frizzled−5を介して乳癌細胞に対するその効果を媒介することを示唆した(Saefholm 2006)。同じFrizzled受容体は、メラノーマ細胞に対するWnt−5aのシグナル伝達および機能的効果の原因であることが示唆されている(Weeraratna 2002 and Dissanayake 2007)。
異なる受容体を特異的に活性化できるペプチドリガンドの幾つかの例が存在する;これらには、インテグリン受容体リガンドとして機能するトリペプチドArg−Gly−Asp(Pierschbacher and Rouslahti, 1984)、Gタンパク質共役型プロテアーゼで活性化される受容体1および4を特異的に活性化させる二つのヘキサペプチド(Andersen, 1999)、およびトロンビンのためのGタンパク質共役型受容体を結合する拮抗性セプタペプチド(Pakala 2000)が含まれる。しかしながら、本研究にとって最も興味深いペプチドリガンドは、細菌由来のホルミル化されたMet−leu−Pheトリペプチドであり、該ペプチドはこれら細胞上のGタンパク質共役型ホルミルペプチド受容体に対して高い親和性で結合することにより、白血球を活性化させる(Le, 2002)。このペプチドのホルミル基がブチルオキシカルボニル基と交換されれば、このトリペプチドはやはり同じ受容体に結合するが、アゴニストとして作用する代わりに、このブチルオキシカルボニル化されたトリペプチドは今やアンタゴニストとして作用する(Derian 1996)。Met−Asp−Gly−Cys−Glu−Leuヘキサペプチドの同じ修飾は、ここに示すように、それをメラノーマ細胞におけるWnt−5a選択的アンタゴニストペプチドへと明らかに変化させる。
データは、創傷治癒試験または浸潤試験の何れが使用されても、Wnt−5aシグナル伝達がA2058およびHTB63メラノーマ細胞の両者において遊走を一貫して刺激すること、およびこれら全ての状況において、Box5はメラノーマ細胞のWnt−5aに依存した遊走を阻止することを明瞭に示している。TGF−β1はA2058およびHTB63メラノーマ細胞株の両者においてWnt−5aの転写を調節するということ、およびWnt−5aの添加が常にメラノーマ細胞の遊走を刺激するということの今回の実証にもかかわらず、TGR−β1でメラノーマ細胞を刺激したときに非常に相反する効果が注目された。得られた効果は、細胞遊走を研究するために使用された試験のタイプに関連すると思われる。最もあり得ることは、メラノーマ細胞遊走に対するTGF−β1のこれらの異なる効果が、十分に文献に記載されたその腫瘍細胞に対する効果に関連することである。なお、TGF−β1がメラノーマ細胞の遊走を刺激する状況では、Box5は遊走に対するその効果を有効に阻害することに留意すべきである。結局、該データは、Box5のような化合物によるWnt−5aシグナル伝達での間接的な介入は、悪性メラノーマ転移を選択的に阻害するための効果的で新規な治療的アプローチであり得るであろう事を支持するように思える。
使用される略語は次の通りである:
BMP:骨形成タンパク質
EMT:上皮−間葉の移行
PKC:タンパク質キナーゼC
TGF−β:トランスフォーミング成長因子β
<医薬製剤>
医薬として用いられるとき、本発明の化合物は通常は医薬組成物の形態で投与される。これらの化合物は、経口および直腸を含む種々の経路で投与することができる。これらの化合物は経口組成物として効果的である。このような組成物は、医薬技術において周知の方法で調製され、少なくとも一つの活性化合物を含有する。
本発明はまた、医薬的に許容可能なキャリアと共に、ここに記載した化合物を活性成分として含有する医薬組成物をも包含する。本発明の組成物を製造する際、活性成分は通常は賦形剤と混合され、賦形剤により希釈され、またはカプセル、薬袋、紙もしくは他の容器の形態であり得るキャリア内に封入される。賦形剤が希釈剤として働くとき、それは活性成分のための担体、キャリアもしくは媒質として作用する固体、半固体または液体の材料であることができる。従って、該組成物は錠剤、ピル、粉末、ロゼンジ、薬袋、錠剤、エリキジール剤、懸濁液、エマルジョン、溶液、シロップ、軟質および硬質ゼラチンカプセル、座薬、並びに包装された粉末の形態であることができる。
製剤を調製する場合、他の成分と混合する前に、化合物を粉砕して適切な粒子サイズを与えることが必要であるかもしれない。化合物が実質的に不溶性であるならば、通常、それは200メッシュ未満の粒子サイズに粉砕される。該化合物が実質的に水溶性であれば、通常、製剤中で実質的に均一な分布を与えるように、粉砕により粒子サイズが調節される(例えば約40メッシュ)。
適切な賦形剤の幾つかの例には、乳糖、デキストロース、蔗糖、ソルビトール、マンニトール、澱粉、アカシアガム、リン酸カルシウム、アルギン酸塩、トラガカンス、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微結晶セルロース、ポリビニルビロリドン、セルロース、滅菌水、シロップ、およびメチルセルロースが含まれる。該製剤は追加的に下記を含むことができる:タルク、ステアリン酸マグネシウム、および鉱物油のような潤滑剤;湿潤剤;乳化剤および懸濁剤;ヒドロキシ安息香酸メチルおよびプロピルのような保存剤;甘味剤;および香味料。本発明の組成物は、当該技術において知られた方法を用いることにより、患者に投与した後に活性成分の迅速な、持続性または遅延性の放出を提供するように処方することができる。
該組成物は好ましくは単位投薬形態で処方される。「単位投薬形態」とは、ヒト患者および他の動物のための単位投与として適した物理的に分離された単位であって、各単位が適切な薬学的賦形剤と共に、望ましい治療効果を生じるように計算された予め定めら得た量の活性物質を含有するものを言う。好ましくは、上記式(I)の化合物は、当該医薬組成物の約20重量%以下、より好ましくは約15重量%以下で用いられ、残部は医薬的に不活性なキャリアである。
活性化合物は広範な投与量範囲に亘って有効であり、一般には医薬的有効量で投与される。例えば、薬物が経口経路を介して投与されるとき、各1回投与量は約1mg〜約1000mg、好ましくは約2mg〜500mg、より好ましくは5mg〜100mg、更に好ましくは約5mg〜約60mgの活性成分を含有する。しかし、実際に投与される化合物の量は、治療すべき症状、選択された投与経路、投与される実際の化合物、およびその相対的活性、個々の患者の年齢、体重および応答性、患者の症状の重篤度等を含む関連状況を考慮して、医師によって決定されるであろう。原理的な視点から、製剤は食物摂取と同時に投与されるべきであり、また脂質の充分な阻害を提供する量で投与されるべきである。従って、身体は栄養的視点から幾つかの脂質を必要とする可能性があり、これは投与される本発明の化合物を阻害する量に影響するかもしれない。本発明の化合物の効果は小腸において生じ、従って、該化合物の可能な代謝物の効果を除き、それ自体から得られる更なる効果は存在しない。
錠剤のような固体組成物を調製するために、主要な活性成分は医薬的賦形剤と混合され、本発明の化合物の均一な混合物を含有する固体の予備処方組成物が形成される。これらの予備処方組成物を均一と言うときには、活性成分が組成物全体に均一に分散されていて、該組成物が錠剤、ピルおよびカプセルのような等しく有効な単位投薬形態に容易に細分割され得ることを意味する。この固形の予備処方剤は、次いで、本発明の活性成分を含有する上記タイプの単位投薬形態に細分割される。
本発明の錠剤、ピルまたは顆粒は、長期作用の利点を与える投薬形態を提供するように、コーティングまたは調合されてよい。例えば、錠剤またはピルは内部投薬成分および外部投薬成分を含むことができ、後者は前者を覆う外被の形態である。この二つの成分を腸溶層によって分離することができ、該腸溶層は胃での崩壊に抵抗して内部成分が無傷で十二指腸へと通過することを可能にし、または放出を遅らせるように働く。このような腸溶性の層またはコーティングのために種々の材料を使用することができ、斯かる材料には多くのポリマー酸、およびポリマー酸とセラック、セチルアルコール、および酢酸セルロースのような材料との混合物が含まれる。
本発明の錠剤、ピルまたは顆粒は、膵臓での放出を可能にする持続放出コーティングで被覆されてよく、この場合、膵臓リパーゼは腸へと解放される。このような持続放出コーティングは、胃では少量の放出(あったとしても)を可能にし、小腸の上部において全量の放出を可能にする。例えば、錠剤は圧縮またはモールドにより調製されてよい。圧縮された錠剤は、任意にバインダ、潤滑剤、不活性希釈剤、およびまたは表面活性剤もしくは分散剤と混合された粉末または顆粒のような自由流動性の本発明の組成物を、適切な機械で圧縮することにより調製されてよい。モールドされた錠剤は、不活性な液体希釈剤で加湿された粉末化合物の混合物を、適切な機械の中でモールドすることによって製造されてよい。
好ましい実施形態において、少なくとも一つの医薬的に許容可能な賦形剤はバインダ、充填剤、またはそれらの混合物である。適切な賦形剤には、潤滑剤、崩壊剤、およびそれらの混合物が含まれる。好ましい賦形剤には、乳糖、クロスカルメロース、微結晶セルロース、α化澱粉、およびステアリン酸マグネシウムが含まれるが、これらに限定されない。
本発明の医薬組成物の投薬処方を調製するために適切なバインダには、コーン澱粉、ポテト澱粉、または他の澱粉、ゼラチン、天然および合成のガム(例えばアカシア、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸、他のアルギン酸塩、粉末トラガカンス、グアーガム)、セルロースおよびその誘導体(例えばエチルセルロース、酢酸セルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム)、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、α化澱粉、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(例えば、番号2298、2906、2910)、微結晶セルロースおよびそれらの混合物が含まれるが、これらに限定されない。
適切な形態の微結晶セルロースには、例えば、AVICEL−PH−101、AVICEL−PH−103、およびAVICEL−PH−105として販売されている材料(FMCコーポレーション、Marcus・Hook,Pa.のアメリカ部門)が含まれる。特に適切なバインダは、FMCコーポレーション社がAVICEL・RC−581として販売している微結晶セルロースおよびカルボキシメチルセルロースの混合物である。
本発明の化合物の投薬形態と共に使用するための適切な充填剤の例には、タルク、炭酸カルシウム(例えば顆粒または粉末)、微結晶セルロース、粉末セルロース、デキストレート(dextrates)、カオリン、マンニトール、サリチル酸、ソルビトール、澱粉、α化澱粉、およびそれらの混合物が含まれるが、これらに限定されない。
典型的には、本発明の固形投薬形態の約50〜約99重量%がバインダおよび/または充填剤である。
水性環境に露出されたとき錠剤を崩壊させるために、崩壊剤が使用される。崩壊剤が多すぎると、大気中の水分のためにボトルの中で崩壊し得る錠剤が製造されるであろう;少なすぎる崩壊剤は崩壊を起こさせるために不十分であり、従って投薬形態からの本発明の化合物の放出程度が変化する可能性がある。こうして、本発明の固形投薬形態を形成するためには、薬物の放出を有害に変化させるほどには少な過ぎず且つ多過ぎない十分な量の崩壊剤を使用すべきである。使用する崩壊剤の量は、製剤のタイプおよび投与経路に基づいて変化し、当業者が容易に識別可能である。
典型的には約05〜約15重量パーセントの崩壊剤、好ましくは約1〜約5重量パーセントの崩壊剤が、当該医薬組成物において使用されてよい。
固形投薬形態を形成するために使用され得る適切な崩壊剤には、寒天、アルギン酸、炭酸カルシウム、微結晶セルロース、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、ポラクリリンカリウム、澱粉グリコール酸ナトリウム、ポテトもしくはタピオカ澱粉、他の澱粉類、α化澱粉、他の澱粉類、粘土、他のアルギン類、他のセルロース類、ガム類、およびそれらの混合物が含まれるが、これらに限定されない。
固形投薬形態と共に使用するための適切な潤滑剤には、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、鉱油、軽鉱油、グリセリン、ソルビトール、マンニトール、ポリエチレングリコール、他のグリコール類、ステアリン酸、ラウリル硫酸ナトリウム、タルク、水素化植物油(例えばピーナッツ油、綿実油、ひまわり油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油、および大豆油)、ステアリン酸亜鉛、オレイン酸エチル、ラウリン酸エチル、寒天、およびそれらの混合物が含まれるが、これらに限定されない。追加の潤滑剤には、例えば、シロイドシリカゲル(syloid;W.R. Grace Co. of Baltimore, Md.が製造するエアロシル200)、合成シリカの凝固エアロゾル(Degussa Co. of Plano, Tex.が販売)、CAB−O−SIL(Cabot Co. of Boston, Mass.が販売する焼成二酸化ケイ素)、およびそれらの混合物が含まれる。典型的には医薬組成物の約1重量パーセント未満の量で、任意に潤滑剤を添加してもよい。
好ましくは、各固形投薬形態が約5mg〜約3000mgの本発明の化合物を含有する。好ましくは、各固形投薬形態は約5mg、約25mg、約100mg、約200mg、約250mg、または約500mgの本発明の化合物を含有する。経口投与に適した固形投薬形態は、好ましくは約5mg〜約200mgの本発明の化合物を含有する。
本発明の新規組成物が経口投与のために組込まれてよい液体形態には、水溶液、適切に風味付加されたシロップ、トウモロコシ油、綿の実油、ゴマ油、ココナツ油またはピーナッツ油のような食用油との風味付加された水性エマルジョン、並びにエリキシールおよび類似の医薬担体が含まれる。液体製剤はまた吸入投与のために使用されてもよく、その場合、活性成分は鼻ディスペンサーを使用して投与されるべき液体中に懸濁される。それにより活性成分は鼻路内の粘膜により吸収され、または肺によって吸収されてよい。
他の鼻内投与組成物は乾燥組成物として存在し、これは該乾燥組成物を鼻路および/または肺へと駆動するための噴射ガスを使用する。
更に、1以上の本発明の化合物を含有する医薬組成物は、何れか他の適切な薬物、例えば胃腸疾患の治療に適した薬物と組み合わせて投与されることができる。併用療法が用いられるとき、本発明の化合物を含有する医薬組成物および第二の薬物は同時に、逐次的に、または別々に投与されてよい。併用療法において使用される各成分は、その意図する目的のために十分な量で用いられる。例えば、第二の薬物は、インビボにおいて問題の症状を低減する十分な量で用いられる。
本発明の化合物の投与量範囲は、1回投与当たり約1mg〜約1000mg、より好ましくは約2mg〜約500mg、更に好ましくは約5mg〜約100mg、なお更に好ましくは約5mg〜約60mgである。ここでも、使用される特定の投与量は、患者(年齢、体重等)および疾患の程度(軽い、中程度、重篤)に依存するであろう。最後に、2種類の活性成分を含有する医薬組成物は、これら薬物を同時に投与するためにも調製することができる。
リパーゼ−コリパーゼが消化のために解放され、また十二指腸よりも下で最適な阻害が得られるときには、通常、本発明の薬物の投与は食物摂取と関連して行われるであろう。
以下の製剤および実施例は、当業者が本発明をより明確に理解し、且つ実施することを可能にするために与えられるものである。それは本発明の範囲を限定するものと看做されるべきではなく、単にその例証および代表にすぎないと看做されるべきである。
製剤例
実施例1
以下の成分を含有する硬質ゼラチンカプセルが調製された:
<成分> <量(mg/カプセル)>
活性成分 30.0
澱粉 305.0
ステアリン酸マグネシウム 5.0
上記成分を混合し、340mg量で硬質ゼラチンカプセルに充填した。
実施例2
下記の成分を使用して錠剤を調製した:
<成分> <量(mg/錠)>
活性成分 25.0
微結晶セルロース 200.0
コロイド状二酸化ケイ素 10.0
ステアリン酸 5.0
これら成分を混合および圧縮し、各々が240mgの錠剤を形成する。
実施例3
各々が30mgの活性成分を含有する錠剤を、次のようにして調製した:
<成分> <量(mg/錠)>
活性成分 30.0mg
澱粉 45.0mg
微結晶セルロース 35.0mg
ポリビニルピロリドン 4.0mg
(滅菌水中の10%溶液として)
カルボキシメチル澱粉ナトリウム 4.5mg
ステアリン酸マグネシウム 0.5mg
タルク 1.0mg
合計 120.0mg
活性成分、澱粉およびセルロースをNO:20のU.S.篩に通し、完全に混合する。得られた粉末にポリビニルピロリドンの溶液を混合し、次いで、これを16メッシュのU.S.篩に通す。こうして製造された顆粒を50〜60℃で乾燥し、16メッシュのU.S篩に通す。この顆粒に対して、先にN:30メッシュのU.S.篩に通したカルボキシメチル澱粉ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、およびタルクを加え、これを混合した後に打錠機で圧縮して、各々が120mgの重さの錠剤を得る。
実施例4
各々が40mgの医薬を含有するカプセルを、次のようにして製造した:
<成分> <量(mg/錠)>
活性成分 40.0mg
澱粉 109.0mg
ステアリン酸マグネシウム 1.0mg
合計 150.0mg
活性成分、澱粉、およびステアリン酸マグネシウムを混合し、NO:20メッシュのU.S.篩に通し、150mg量で硬質ゼラチンカプセルに充填した。
実施例5
各々が25mgの活性成分を含有する座薬を、次のようにして製造した:
<成分> <量>
活性成分 25mg
飽和脂肪酸グリセリド 2000mgになるまで
活性成分をNO:60メッシュのU.S.篩に通し、必要な最小の熱を使用して予め溶融された飽和脂肪酸グリセリド中に懸濁させた。次いで、この混合物を公称2.0g容量の座薬モールドの中に投入し、冷却させた。
実施例6
各々が5.0mL投薬当たり50mgの医薬を含有する座薬を、次のようにして製造した:
<成分> <量>
活性成分 50.0mg
キサンタンガム 4.0mg
カルボキシメチルセルロースナトリウム(11%)
微結晶セルロース 50.0mg
蔗糖 1.75g
安息香酸ナトリウム 10.0mg
香味料および着色剤 適量
純水 5.0mLになるまで
活性成分、蔗糖およびキサンタンガムを混合し、NO:10メッシュのU.S.篩に通し、次いで先に作製した微結晶セルロースおよびカルボキシメチルセルロースナトリウムの水溶液と混合する。安息香酸ナトリウム、香味料、および着色剤をいくらかの水で希釈し、撹拌しながら添加する。次いで十分な水を加えて、必要な容積にする。
実施例7
次のようにして製剤を調製した:
<成分> <量(mg/カプセル>
活性成分 15.0mg
澱粉 407.0mg
ステアリン酸マグネシウム 3.0mg
合計 425.0mg
活性成分、澱粉およびステアリン酸マグネシウムを混合し、NO:20メッシュのU.S.篩に通し、425.0mgの量で硬質ゼラチンカプセルの中に充填する。
本発明において使用するための他の適切な製剤は、イー.ダブリュー.マーチン(E. W. Martin)編によるレミングトンの薬学(Remington's Pharmaceutical Sciences)(Mack Publishing Company, 18th ed., 1990)に見ることができる。

Claims (7)

  1. 配列番号1から成るWnt5−αペプチドの非分岐型カルバメート誘導体。
  2. 請求項1に記載の非分岐型カルバメート誘導体であって、前記誘導体は、N−メチルオキシカルボニル誘導体、n−エチルオキシカルボニル誘導体、N−n−プロピルオキシカルボニル誘導体およびN−ブチルオキシカルボニル誘導体からなる群から選択される非分岐型カルバメート誘導体。
  3. メラノーマおよび胃癌の治療に使用するための、請求項1または2に記載のWnt5−αペプチドの非分岐型カルバメート誘導体。
  4. 配列番号1から成るWnt5−αペプチドの非分岐型カルバメート誘導体を、1以上の医薬的に許容可能な不活性賦形剤および/またはアジュバントと共に含有する医薬組成物。
  5. 請求項に記載の医薬組成物であって、非分岐型カルバメート誘導体が、N−メチルオキシカルボニル、n−エチルオキシカルボニル、N−n−プロピルオキシカルボニル、またはN−ブチルオキシカルボニル誘導体の群の一つである医薬組成物。
  6. 請求項またはに記載の医薬組成物であって、局所用組成物として処方される医薬組成物。
  7. 請求項またはに記載の医薬組成物であって、注射用組成物として処方される医薬組成物。
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