以下、図面を参照しつつ、本発明の各実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同一である。したがって、それらについての詳細な説明は繰返さない。
各実施の形態では、液滴吐出装置は、液体の吐出口であるノズル毎に当該ノズルから液滴を吐出させるために供給されるべき吐出電圧値(電位)のパラメータを格納したテーブルを予め有し、複数ノズルに共用される駆動回路を有する。動作においては、複数ノズルのうちから液滴を吐出すべき1個のノズルが選択されると、選択されたノズルに対応のパラメータがテーブルから検索により読出され、駆動回路は、読出されたパラメータに応じた電圧信号を生成し、生成した電圧信号を選択されたノズルに印加する。これにより、ノズル毎に電圧信号を生成する回路が必要とされない構成が実現される。
[実施の形態1]
図1は、実施の形態1に係る液滴吐出装置が適用されるインクジェット装置1の外観構成を模式的に示す斜視図である。インクジェット装置1は、吸着盤2、主走査方向駆動部3、キャリッジ4、副走査方向駆動部5、メンテナンス部6、定盤7、およびインクジェット装置1の動作を制御するホストコンピュータ600を含む。
吸着盤2は、液滴が吐出されるべき媒体(記録媒体の場合もある)である、たとえばガラス基板20を吸着することにより保持する。主走査方向駆動部3は、吸着盤2を主走査方向8に移動させる。
キャリッジ4は、ノズルから液滴を吐出する後述のインクジェットヘッド(以下、単にヘッドという)10、吐出動作を制御するための吐出制御部41(後述する)および吐出されるべき液体を収容する図示しないタンクを内蔵する。副走査方向駆動部5は、キャリッジ4を副走査方向9に移動させるガントリ(門構造)を有する。メンテナンス部6は、キャリッジ4に内蔵されるヘッド10をメンテナンスする。定盤7は、主走査方向駆動部3、副走査方向駆動部5、およびメンテナンス部6を一つの表面上で保持する。
吸着盤2においては、ガラス基板20が載置される面に開口する複数の孔(図示せず)が予め形成される。吸着盤2には、複数の孔の開口部とは反対側に、図示しない吸引装置(たとえば配管および真空ポンプなど)が接続される。吸引装置の吸引動作によって、吸着盤2上に載置されるガラス基板20は、吸着盤2上に吸着されることにより保持される。これにより、ガラス基板20は、吸着盤2と一体化して主走査方向8に移動する。
主走査方向駆動部3は、定盤7上に平行に設けられる一対の主走査方向スライド機構31、主走査方向スライド機構31に内蔵される図示しないリニアサーボモータ、主走査方向スライド機構31に関する位置を検出する図示しないリニアエンコーダ、およびリニアサーボモータの動作を制御する図示しない主走査駆動制御部を含む。主走査方向スライド機構31のリニアサーボモータの回転動作に連動して、載置された吸着盤2は主走査方向8にスライド移動する。リニアエンコーダの出力に基づき、スライド移動する吸着盤2すなわちガラス基板20の位置および移動速度が検出される。検出結果に基づいてリニアサーボモータの回転(回転数および回転方向)が制御される。リニアエンコーダによる主走査方向8の移動に係る位置の検出精度は、最小1μmに設定可能である。
副走査方向駆動部5は、主走査方向8に直交して吸着盤2およびガラス基板20を跨ぐように設けられるガントリ51、ガントリ51の梁部51aに設けられる副走査方向スライド機構52、副走査方向スライド機構52に係合するキャリッジ4を副走査方向9に移動させる図示しないリニアサーボモータ、およびリニアサーボモータの動作を制御する図示しない副走査駆動制御部を含む。
図2は、図1に示したキャリッジ4に含まれるヘッド10の主な構成要素の組立前の外観を示す斜視図である。ヘッド10は吐出部に相当し、シェアモード型のヘッドであり、PZT(ジルコンチタン酸鉛)などの圧電材料の板状体からなる基板11、基板11の上面に載設されるカバープレート12、およびカバープレート12の上に載設されるフィルタ14を含む。さらに、基板11の前面に固定して取り付けられる、貫通孔である複数のノズル131の一列が予め形成されたノズルプレート13を有する。ノズルプレート13が基板11に取り付けられると、ノズル131それぞれは、基板11に予め形成された圧力室112のそれぞれに対向して位置する。各圧力室112には、図示しないタンクからフィルタ14およびカバープレート12に予め形成された貫通の孔部121を経由して、吐出されるべき液体が供給される。図1の状態において、ヘッド10の複数のノズル13が並んだ列が延びる方向は、副走査方向9に一致する。
図3は、図2に示した基板11の外観を示す斜視図である。基板11の上部には、ダイヤモンドブレードなどを用いた切削加工によって、隔壁111を挟んで溝状の圧力室112が複数並設して予め形成される。圧力室112に露出した隔壁111の両面には、概ね上半分に金属の電極113がスパッタリングなどによって予め形成される。各圧力室112は、背面側、つまりノズルプレート13が固定されている側の反対側において、溝の深さが浅くされており、圧力室112の底面のうち溝の深さが浅い底面部分にも電極113が形成され、隔壁111の概ね上半分に形成された同一圧力室112内の電極113に接続される。この底面部分が外部との電気的接続部となり、ワイヤボンディングなどによって、後述する駆動回路103に接続される。各圧力室112の電極113には、駆動回路103によって、駆動パルスが選択された圧力室112に対して個別に印加される。
図4は、図2に示した基板11およびカバープレート13を組立てたヘッド10の断面図である。各圧力室112は、それぞれ2つの隔壁111に挟まれて、基板11の上部に並設して形成される。基板11を構成する圧電材料は、基板11の厚み方向、たとえば図4における上方向に分極されている。電極113は、各圧力室112において、圧力室内の隔壁111の側面概ね上半分に互いに対向するように配置されおり、それらの電極113には、溝の深さが浅くなった底面の部分に形成され、それらの電極113に接続された駆動回路103の電極部分(後述の端子T1〜T5に相当)を経由して、駆動パルスが印加される。
図5には、図4に示した電極113と駆動回路103の接続が模式的に示される。図5では、説明を簡単にするために5個のノズル131を想定する。ノズル131のそれぞれに対応の圧力室112の電極113には、駆動回路103の電極部である端子T1〜T5のそれぞれがワイヤボンディングにより接続される。駆動回路103は、駆動パルスを発生するために一般的に用いられるパルス発生回路に相当する後述の電圧信号生成部13Aを有する。端子T1〜T5の入力端は電圧信号生成部13Aに接続されて、出力端は対応の圧力室112の電極113に接続される。発生したパルス信号は、選択されたノズル131に対応の圧力室112の電極113に、対応の端子を介して印加される。
駆動回路103の電圧信号生成部13Aが生成して出力する駆動パルスは電圧信号レベルとして、選択されたノズル131毎に予め決定された個別電圧値、または全ノズル131について共通して予め決定された共通電圧値を有する。駆動パルスについては後述する。
図6は、駆動パルスを用いて液滴を吐出する際の圧力室112の隔壁111の変形を説明するためのヘッド10の断面図である。基板11に形成された圧力室112のうち、連続する3つの圧力室112a〜112cに着目する。中央の圧力室112bに対応のノズル131から液滴を吐出する例を示す。図6(A)では、いずれの圧力室の電極にも駆動パルスは印加されておらず、したがって、いずれの隔壁も変形していない。
図6(B)には、圧力室112bの容積が拡大した状態が示される。図6(A)に示した状態において、圧力室112bに対応のノズル131が吐出対象のノズルとして選択されると、当該ノズル131の個別電圧値が圧力室112bの隔壁111bおよび隔壁111cの電極113bに印加される。電圧の印加により、圧力室112bを形成する隔壁111bおよび隔壁111cは互いに離れる方向に剪断変形する。これにより、圧力室112bの容積が拡大し、その結果、圧力室112b内に液体が流入する。
図6(C)には、圧力室112bの容積が縮小した状態が示される。図6(B)に示した状態において、圧力室112bの隔壁111bおよび隔壁111cの電極113への個別電圧の印加に代替して、圧力室112bに隣接する圧力室112aの電極113aおよび同様に隣接する圧力室112cの電極113cに共通電圧値の電圧が印加される。この電圧の印加により、圧力室112bを形成する隔壁111bおよび隔壁111cが互いに接近する方向に剪断変形し、圧力室112bの容積が縮小することによって、圧力室112b内の液体が対応のノズル131から液滴として吐出される。
図6によれば、選択されたノズル131に対応の個別電圧値の電圧レベルを有する駆動パルスの印加によって隔壁111に電界を付与し、生じる拡大方向の剪断変形により生じる圧力室112内の圧力波と、その後の当該駆動パルスに代替して共通電圧値の電圧レベルを有する駆動パルスが印加されることによって隔壁111に電界を付与し、生じる縮小方向の剪断変形により生じる圧力波との和によって、圧力室112内の液滴がノズル131を介して外部に吐出される。
このように、圧電体から成る隔壁111で仕切ることによって、液滴を吐出するための複数の圧力室112を形成し、その隔壁111に電界を付与することによって発生するせん断応力によって隔壁111を変形させ、液滴を吐出するエネルギー(圧力波)を圧力室112に発生させて液滴を吐出する吐出制御部41では、液滴を吐出すべき圧力室112の両側の隔壁111には、圧力室112毎に個別に対応した個別電圧値による電界を付与し、液滴を吐出すべきではない隣接の圧力室112に挟まれた隔壁111には、電界を付与しない電界制御部を有する。
電界制御部は、液滴を吐出すべき圧力室112の両側の隔壁111に、その圧力室112の容積を拡大させる電界を付与した後、引続いて、その圧力室112の容積を縮小させる電界を付与する。そして、液滴を吐出すべき圧力室112の両側の隔壁111に、その圧力室112の容積を縮小させる電界を付与した後、引続いて、その圧力室112の容積を拡大させる電界を付与する。
図7には、本実施の形態1に係る液滴吐出装置の概略ハードウェア構成が示される。液滴吐出装置は、ホストコンピュータ600と吐出制御部41を含む。図8には、本実施の形態1に適用されるホストコンピュータ600のハードウェア構成が示される。
図8を参照してホストコンピュータ600は、CRT(陰極線管)または液晶などからなるディスプレイ610、キーボード650およびマウス660を有する入力部700、該コンピュータ自体を集中的に制御するためのCPU(中央処理装置の略)622、ROM(Read Only Memory)またはRAM(Random Access Memory)を含んで構成されるメモリ624、ハードディスクに相当の固定ディスク626、FD(Flexible Disk)632が着脱自在に装着されて、装着されたFD632をアクセスするFD駆動装置630、CD−ROM(Compact Disc Read Only Memory)642が着脱自在に装着されて、装着されたCD−ROM642をアクセスするCD−ROM駆動装置640、インターネットなどの各種の通信回線を指す通信回線300と、該ホストコンピュータ600とを通信接続するための通信インターフェィス680、プリンタ690および吐出制御部41と通信するための外部I/F(Interface)を含む。これらの各部はバスを介して通信接続される。
図7にはホストコンピュータ600の構成部分のうち、ノズル131からの液滴吐出制御に関連する部分のみが示される。ホストコンピュータ600のCPU622は、固定ディスク626の予め格納された電圧テーブル627とノズル指定情報628を検索し、検索結果に基づく信号を生成して、外部I/F691に与える。外部I/F691は、入力したデジタル信号をアナログ信号に変換して吐出制御部41に出力する。
吐出制御部41は、ホストコンピュータ600から与えられる信号を入力するI/F回路101、制御回路102、ヘッド駆動回路103およびヘッド10を含む。
図9には、本実施の形態1に係るホストコンピュータ600の液滴吐出制御の機能構成が示される。図9を参照して、ホストコンピュータ600は、外部から与えられるデータを入力するための入力部700に対応するデータ入力部601、固定ディスク626に格納されたノズル指定情報628を検索し、検索結果に基づきノズル情報を取得するノズル情報取得部602、固定ディスク626に格納された電圧テーブル627を検索し電圧パラメータを取得する電圧パラメータ取得部603、ノズル情報取得部602および電圧パラメータ取得部603で取得された情報に基づき後述の吐出コマンド606およびパラメータ情報607を生成するコマンド生成部604、および外部I/F691と通信インターフェィス680の機能に対応する通信処理部605を備える。これらの部分の全部または一部は、プログラムにより構成される。プログラムは、メモリ624に予め格納されており、CPU622がメモリ624からプログラムの命令を読出し、実行することにより各部の機能が実現される。
図10を参照して、電圧記憶部に相当する電圧テーブル627には、ノズル131のそれぞれについて、当該ノズル131を識別するノズル番号のデータD1と、データD1のそれぞれに対応して、当該ノズル131から液滴を吐出するために電極113に印加される吐出電圧値(V)を指示するパラメータD2が格納される。
図11(A)と(B)には、本実施の形態1に係るコマンドおよび情報のフォーマット例が示される。図11(A)と(B)を参照して吐出コマンド606およびパラメータ情報607は、フィールドF1〜F4を含むパケットの構成を有する。図11(A)の吐出コマンド606のフィールドF1には、当該パケットを識別するIDデータが格納され、フィールドF2には、コマンドCDが格納され、フィールドF3には、吐出対象として選択されたノズル131を識別する情報であるノズル番号が格納され、フィールドF4には、選択されたノズル131から吐出されるべき液滴数の情報が格納される。
図11(B)のパラメータ情報607のフィールドF1に当該パケットを識別するIDデータが格納され、フィールドF2のデータは不定であり、フィールドF3には吐出対象として選択されたノズル131を識別する情報であるノズル番号が格納され、フィールドF4には選択されたノズル131に対応の圧力室112の電極113に印加されるべき駆動パルスの電圧信号レベルを指す電圧値パラメータが格納される。ノズル131が選択されると、選択されたノズル131について吐出コマンド606とパラメータ情報607が生成される。ノズル131が選択される毎に生成される吐出コマンド606とパラメータ情報607のフィルードF3とF1の値は共通している。
図12を参照して、吐出制御部41の機能構成を説明する。制御回路102は、電圧決定部12Aおよび吐出情報定義部12Bを含む。駆動回路103は、電圧信号生成部13A、電圧信号出力部に相当する端子決定部13B、およびノズル131の圧力室112の電極113に接続される複数の端子を含む。ここでは、説明を簡単にするために5個の端子T1〜T5を示す。
動作において、吐出制御部41のI/F回路101はホストコンピュータ600からアナログ信号の吐出コマンド606とパラメータ情報607の入力を待つ。フィルードF1のIDデータが一致する吐出コマンド606とパラメータ情報607を入力したことを検知すると、入力した吐出コマンド606とパラメータ情報607をデジタル信号(情報)に変換し、変換後の情報を制御回路102に出力する。
制御回路102の電圧決定部12Aは、与えられるパラメータ情報607が指す電圧値パラメータに基づき個別電圧値と共通電圧値を生成し、生成した個別電圧値と共通電圧値を出力する。また、吐出情報定義部12Bは、与えられる吐出コマンド606のコマンドCDに基づき、パラメータ情報607のフィルードF3のノズル番号と駆動パルスのON/OFFの間隔を規定するタイミングデータとからなる吐出情報を生成して出力する。
駆動回路103の電圧信号生成部13Aは、入力した個別電圧値および共通電圧値ならびに吐出情報に基づき、タイミングデータが指すON期間のみ個別電圧値のレベルを有し、タイミングデータが指すOFF期間はゼロレベルの駆動パルスPS1を生成するとともに、タイミングデータが指すON期間は共通電圧値のレベルを有し、タイミングデータが指すOFF期間はゼロレベルの駆動パルスPS2を生成して、これら駆動パルスPS1とPS2を出力する。
端子決定部13Bは、吐出コマンド606またはパラメータ情報607のフィルードF3のノズル番号のデータに基づき、端子T1〜T5のうち、吐出対象として選択されたノズル131に対応する圧力室112の電極113に接続される端子と、当該圧力室112の両側に隣接する2つの圧力室112の電極113に接続される端子を決定する。駆動回路103は、選択されたノズル131に対応の決定された端子には駆動パルスPS1を印加し、隣接する2つの圧力室112に対応の決定された端子それぞれには、駆動パルスPS2を印加する。端子決定部13Bは、論理ゲートを含むマルチプレクサ回路を用いて構成されてもよい。
図13(A)と(B)には、電圧信号生成部13Aが生成する駆動パルスPS1とPS2の電圧波形が例示される。電圧信号生成部13Aは、IC回路を内蔵したパルス発生回路に相当する。ここでは、端子T1〜T5に対応する圧力室112を圧力室CH1〜CH2と称する。図13(A)を参照して、圧力室CH2に対応のノズル131が選択された場合には、生成される駆動パルスPS1の1周期は時間Tに相当する。駆動パルスPS1は、1周期の開始時刻tsから時刻t1までは電圧レベルはゼロであり、時刻t1になるとゼロから個別電圧値VT2に変化し、時間AL経過後の時刻t2において個別電圧値VT2からゼロに変化し、当該周期の終端teになるまでゼロの電圧レベルを維持する。圧力室CH2の電極113への駆動パルスPS1の印加と同時に、圧力室CH2に隣接する圧力室CH1とCH3の電極113には駆動パルスPS2が印加される。駆動パルスPS2は、開始時刻tsから時刻t2までは電圧レベルはゼロであるが、時刻t2になると共通電圧値VT2に変化し、時間A2L経過後の時刻t3に、共通電圧値VT2からゼロの電圧レベルに変化する。駆動パルスPS1とPS2の電圧信号レベルとパルス波のデューティ比を決定する周期Tと時刻ti(i=s、1,2,3、e)は、電圧信号生成部13AのIC回路により、個別電圧値および共通電圧値、ならびに吐出情報のタイミングデータに基づき決定される。
図6に戻り、図13(A)に示した駆動パルスPS1とPS2を用いて液滴を吐出する際の隔壁の変形を説明する。図6(A)において、圧力室CH2の端子T2に駆動パルスPS1が印加開始されて、また隣接する圧力室CH1とCH3の端子T1とT3には図13(B)の駆動パルスPS2が印加開始される。印加開始後の時刻t1になると個別電圧値が印加されて図6(B)のように圧力室CH2の容積が拡大する。容積が拡大した状態は個別電圧値の印加時間ALの期間だけ持続する。印加時間ALが経過して時刻t2になると、駆動パルスPS1の電圧レベルはゼロになるので、圧力室CH2の容積は元に戻ろうとするが、このとき、隣接する圧力室CH1とCH3の電極113に印加されている駆動パルスPS2の電圧レベルはゼロから共通電圧値VT2に変化する。したがって、図6(C)のように圧力室CH2の容積は縮小する。図6(C)の状態は、駆動パルスP2の共通電圧値VT2の印加時間A2L(時刻t2から時刻t3までの期間)だけ継続する。
このように、選択されたノズル131に対応の圧力室CH2には駆動パルスPS1を印加し、隣接する圧力室CH1とCH3には駆動パルスPS2を印加することにより、圧力室CH2の容積が拡大/縮小し、その結果、圧力室CH2の内部に生じる圧力波により圧力室CH2内の液体がノズル131から液滴として吐出される。
駆動パルスPS1による個別電圧値の印加時間ALは、容積が拡大した圧力室CH2に液体が流入することによる圧力波が、圧力室CH2の全域を伝播してノズル131に達するまでの時間である。印加時間ALは、圧力室CH2の長さ、つまり孔部121に対応する液体の流入口からノズル131までの長さを液体中の音速で除することによって求められる。長さと音速は予め検出されている。駆動パルスPS1の印加時間ALをこのように設定することによって、液体の流入によって生じた圧力波を液滴の吐出に効率的に活用することができる。駆動パルスPS2の印加時間A2Lは、圧力室CH2の容積が縮小した際に発生する圧力波が圧力室CH2内を往復伝播する時間に相当する。この往復伝播時間は、予め実験により検出される。駆動パルスPS2の印加時間A2Lを往復伝播時間により決定することによって、収縮した圧力室CH2の容積が復元する際の負圧によって液滴吐出後の残留振動を効率的にキャンセルすることができる。さらに、駆動パルスPS2の立ち上がりのタイミング(時刻t2)を駆動パルスPS1の立ち下がりタイミングに一致させることによって、圧力室CH2が収縮した際に発生する圧力波を液滴の吐出に効率的に活用できる。
図13(B)のように圧力室CH3に対応のノズル131が選択された場合には、個別電圧値および共通電圧値が、選択されたノズル131のデータD2のパラメータが指示する電圧レベルVT3になるだけであり、図13(A)で示す場合と同様な吐出制御が可能となる。
実施の形態1によれば、駆動回路103の電圧信号生成部13Aを、複数のノズル131について液滴吐出のための電圧信号生成回路として共用できる。これにより、ノズル131毎に電圧信号回路を備える必要はなく、装置の小型化が可能になる。
図14には実施の形態1に係る吐出制御のフローチャートが示される。フローチャートに従うプログラムはメモリ624に予め格納されて、CPU622がメモリ624からプログラムを読出し実行する。
まず、ノズル情報取得部602は、ノズル情報を入力する(ステップS101)。つまり、ノズル指定情報628を検索して液滴を吐出するべき1個のノズル131を指示するノズル番号と滴下する液滴数の情報を読出す。なお、ノズル番号と液滴数の情報は、データ入力部601を介して外部から入力するようにしてもよい。
次に、電圧パラメータ取得部603は、ステップS101で取得したノズル番号に基づき電圧テーブル627を検索して、当該ノズル番号を指すデータD1に対応のデータD2を読出す。これにより読出されたデータD2が指示する吐出電圧値のパラメータを取得する(ステップS103)。取得されたパラメータが指す吐出電圧値は、個別電圧値と共通電圧値を指示する。
コマンド生成部604は、取得されたノズル番号と液滴数の情報とデータD2の吐出電圧値のパラメータに基づき吐出コマンド606とパラメータ情報607を生成し、吐出制御部41に出力する(ステップS105、S109)。
その後、ノズル情報取得部602は、ノズル指定情報628を検索し、検索結果に基づき、次に液体を吐出するべきノズルの番号が指示されているかを判定する(ステップS111)。指示されていると判定すると(ステップS111でYES)、処理はステップS101に戻り、次のノズル131について以降の処理が同様に行われるが、指示されていないと判定すると(ステップS11でNO)、処理は終了する。
本実施の形態1によれば、吐出制御部41は、選択されたノズル131に対応したパラメータ情報607による電圧値パラメータがノズル131が選択される都度、ホストコンピュータ600から送信されるので、ノズル毎に駆動パルスの電圧値パラメータを決定または生成する専用回路を設ける必要がない。
このように複数ノズルから選択されたノズルを使って吐出する液滴吐出装置において、ノズル間の吐出ばらつき抑制を専用の回路構成を用いることなく、吐出対象となるノズルの電圧を制御することで、吐出ばらつきを削減できる。
ここでは、選択されたノズル131毎に予め設定(指定)された液滴数情報に基づき駆動パルスPS1とPS2の周期Tと時刻ti(i=s、1,2,3、e)を決定したが、全てのノズル131について、これらの周期と時刻tiが固定の場合には、電圧信号生成部13Aのパルス発生回路に相当のIC回路に、この固定値を与えるようにすれば、液滴数情報の取得を省略できる。
[実施の形態2]
本実施の形態2の液滴吐出装置は、駆動パルスPS1とPS2の個別電圧値および共通電圧値を決定するためにノズル131のそれぞれに対応した電圧パラメータを格納したテーブルを2種類備える。一方の種類のテーブルは、吐出される液滴量を一定にするための電圧パラメータが格納された液適量一定電圧テーブル627Aであり、他の種類のテーブルは、吐出速度を一定にするための電圧パラメータが格納された吐出速度一定電圧テーブル627Bである。
液滴の滴下位置を優先して制御する場合には吐出速度一定電圧テーブル627Bが参照されて、滴下された液滴により形成される膜厚を優先して制御する場合には液滴量一定電圧テーブル627Aが参照される。このような使い分けを指示するための選択情報は、テーブル選択情報629により指示される。
図15には、実施の形態2に係る液滴吐出装置の概略ハードウェア構成が示される。図7と図15の構成を比較して異なる点は、図15の固定ディスク626に、図7の電圧テーブル627に代替して、液適量一定電圧テーブル627A、吐出速度一定電圧テーブル627Bおよびテーブル選択情報629を格納する点にある。他の構成は図7に示したものと同様であり説明は略す。液適量一定電圧テーブル627Aと吐出速度一定電圧テーブル627Bは、電圧テーブル627と同様のテーブル構成を有するが、データD1毎に対応して格納されるデータD2としては、液適量を一定にする、または吐出速度を一定にするとの目的を達成するために予め実験により得られた吐出電圧値のパラメータ値を指す。
図16には、実施の形態2に係るコンピュータの液滴吐出制御の機能構成が示される。図9と図16の構成を比較して異なる点は、図16の固定ディスク626に、図7の電圧テーブル627に代替して、液適量一定電圧テーブル627A、吐出速度一定電圧テーブル627Bおよびテーブル選択情報629を格納する点、およびテーブル選択情報629を読出し、選択情報を取得するテーブル選択情報取得部606を備える点にある。他の構成は図9に示したものと同様であり説明は略す。
図17には実施の形態2に係る吐出制御のフローチャートが示される。フローチャートに従うプログラムはメモリ624に予め格納されて、CPU622がメモリ624からプログラムを読出し実行する。
まず、テーブル選択情報取得部606は、テーブル選択情報629を読出し、読出した情報を電圧パラメータ取得部603に出力する(ステップS201)。
ノズル情報取得部602は、ノズル指定情報628を検索し液滴を吐出するべき1個のノズル131を指示するノズル番号と滴下する液滴数の情報を指すノズル情報を読出す(ステップS203)。
電圧パラメータ取得部603は、テーブル選択情報取得部606から入力した情報に基づき、液適量一定電圧テーブル627Aを検索するべきか判定する(ステップS205)。具体的には、テーブル選択情報取得部606から、吐出した液体により形成される膜厚の制御を優先する情報が入力された場合には、液滴量一定電圧テーブル627Aを検索すべきテーブルとして選択し(ステップS205でYES)、液滴の吐出精度を優先する情報が入力された場合には、液適量一定電圧テーブル627Aではない、すなわち吐出速度一定電圧テーブル672Bを検索すべきテーブルとして選択する(ステップS205でNO)。
液滴量一定電圧テーブル627Aが選択された場合には(ステップS205でYES)、電圧パラメータ取得部603は、ステップS203で取得したノズル番号に基づき液滴量一定電圧テーブル627Aを検索し、当該ノズル番号を指すデータD1に対応のデータD2を読出す。これにより読出されたデータD2が指示する吐出電圧値のパラメータを取得する(ステップS207)。一方、吐出速度一定電圧テーブル672Bが選択された場合には(ステップS205でNO)、電圧パラメータ取得部603は、ステップS203で取得したノズル番号に基づき吐出速度一定電圧テーブル672Bを検索し、当該ノズル番号を指すデータD1に対応のデータD2を読出す。これにより読出されたデータD2が指示する吐出電圧値のパラメータを取得する(ステップS209)。
このようにして取得されたパラメータが指す吐出電圧値は、個別電圧値と共通電圧値を指示する。
コマンド生成部604は、取得されたノズル番号と液滴数の情報とデータD2の吐出電圧値のパラメータに基づき吐出コマンド606とパラメータ情報607を生成し、吐出制御部41に出力する(ステップS211、S213)。
その後、ノズル情報取得部602は、ノズル指定情報628を検索し、検索結果に基づき、次に液体を吐出するべきノズルの番号が指示されているかを判定する(ステップS111)。指示されていると判定すると(ステップS111でYES)、処理はステップS101に戻り、次のノズル131について以降の処理が同様に行われるが、指示されていないと判定すると(ステップS11でNO)、処理は終了する。
本実施の形態2によれば、膜厚の一定制御および滴下位置制御の目的別に応じて、当該目的を達成するための駆動パルスPS1とPS2の個別電圧値および共通電圧値を決定する電圧値パラメータを取得することが可能となる。これにより、オペレータが意図した吐出条件(制御目的)の選定が可能になる。さらには、液滴吐出装置内に複数の制御モードに対応した電圧制御回路を設ける必要はなく、装置の小型化および費電力の低減が可能になる。
[実施の形態3]
本実施の形態3の液滴吐出装置は、吐出対象であるノズル131を所定の優先順序に従って決定する。そして、決定したノズル131について、吐出コマンド606およびパラメータ情報607を取得するに際し、吐出が許可されているか否かを検出し、許可されている場合には、当該ノズル131について駆動パルスPS1とPS2の個別電圧値と共通電圧値を決定する電圧パラメータを検出し、吐出コマンド606とパラメータ情報607を取得する。
図18には、実施の形態3に係る液滴吐出装置の概略ハードウェア構成が示される。図7と図18の構成を比較して異なる点は、図18の固定ディスク626に、電圧テーブル627およびノズル指定情報628に追加して、吐出順序指定情報630および不吐出情報631を格納する点にある。他の構成は図7に示したものと同様であり説明は略す。
図19には、実施の形態3に係るコンピュータの液滴吐出制御の機能構成が示される。図9と図19の構成を比較して異なる点は、図19の固定ディスク626に、図7の電圧テーブル627およびノズル指定情報628に追加して、吐出順序指定情報630および不吐出情報631を格納する点、および不吐出情報取得部607ならびに吐出順序取得部608を追加して備える点にある。他の構成は図9に示したものと同様であり説明は略す。
吐出順序取得部608は吐出順序指定情報630を読出し、読出した情報に基づき吐出対象のノズル131を選択するに際しての優先順序を決定する。不吐出情報取得部607は、選択されたノズル131について不吐出情報631に基づき、吐出が許可されるか否かの情報を取得する。
図20と図21には、本実施の形態に係る吐出順序指定情報630と不吐出情報631が示される。図20を参照して吐出順序指定情報630は、ノズル131のそれぞれについてノズル番号のデータD1と、データD1のそれぞれに対応して当該ノズル131の吐出の優先順序を指すデータD3をテーブル形式で格納する。図21を参照して不吐出情報631は、ノズル131のそれぞれについてノズル番号のデータD1と、データD1のそれぞれに対応して当該ノズル131から液滴を吐出することを許可するか否か(OK/NG)を指定する不吐出情報D4をテーブル形式で格納する。
図22には実施の形態3に係る吐出制御のフローチャートが示される。フローチャートに従うプログラムはメモリ624に予め格納されて、CPU622がメモリ624からプログラムを読出し実行する。
先ず、吐出順序取得部608は、吐出優先順序に従って吐出するべきノズル131を決定するための一時変数TNに、値1を設定する(ステップS301)。不吐出情報取得部607は、たとえばデータ入力部601から与えられる所定情報に基づき、不吐出情報631を作成し、作成した不吐出情報631を固定ディスク626に格納する(ステップS303)。そして、吐出順序取得部608は変数TNの値に基づき、吐出優先順序630を検索し、検索結果に基づき、変数TNの値に一致する値を指すデータD3に対応のノズル番号の値を指すデータD1を読出す。そして、読出したデータD1に基づきステップS303で作成された不吐出情報631を検索する。検索結果に基づき変数TNの値により指示される優先順序に対応のノズル131は吐出が許可されているか否かを判定する(ステップS305)。具体的には、データD1の値に対応して格納されたデータD4が指すOK/NGの情報を読出し、読出したデータD4に基づきOK(吐出許可)と判定されると(ステップS305でYES)、ステップS308の処理に移行するが、NG(不許可)と判定されると(ステップS305でNO)、ステップS307の処理に移行する。ステップS307では、吐出順序取得部608は変数TNの値を1インクリメントする。その後、処理はステップS303に戻り、次位の優先順序に対応したノズル131について、以降の処理が同様に行われる。
ステップS308では、ノズル情報取得部602は、ノズル情報を入力する。具体的には、ステップS305で吐出優先順序630から読出したデータD1のノズル番号の値に基づき、ノズル指定情報628を検索して当該ノズル13が滴下する液滴数の情報を読出す。
次に、電圧パラメータ取得部603は、ステップS305で取得したデータD1のノズル番号に基づき電圧テーブル627を検索して、当該ノズル番号を指すデータD1に対応のデータD2を読出す。これにより読出されたデータD2が指示する吐出電圧値のパラメータを取得する(ステップS309)。取得されたパラメータが指す吐出電圧値は、個別電圧値と共通電圧値を指示する。
コマンド生成部604は、取得されたノズル番号と液滴数の情報とデータD2の吐出電圧値のパラメータに基づき吐出コマンド606とパラメータ情報607を生成し、吐出制御部41に出力する(ステップS311、S315)。
その後、不吐出情報取得部607は変数TNの値が所定値(たとえば、図20の吐出順序指定情報630のデータD3が指す最大値)以上であるか否かに基づき、次に液体を吐出するべきノズルが指定されているかを判定する(ステップS317)。変数TNの値がデータD3が指す最大値未満であると判定すると(ステップS317でYES)、変数TNの値が1インクリメントされて(ステップS319)、処理はステップS303に戻り、次のノズル131について以降の処理が同様に行われるが、変数TNの値がデータD3が指す最大値以上であると判定すると(ステップS317でNO)、処理は終了する。
本実施の形態によれば、実施の形態2と同様に装置の小型化と低消費電力化が可能となり、さらに、所定の優先順序に従った順番で液体を吐出するべきノズル131を決定することができる。また、吐出するべきノズル131が選択される都度、全ノズル131について吐出を許可するか否かを指示する不吐出情報631が更新されるので、常に、最新の吐出許可情報に基づき吐出を制御できる。
なお、ステップS303では、作成した不吐出情報631を固定ディスク626に格納するとしたが、メモリ624に格納するようにしてもよい。
[実施の形態4]
以上説明した各実施の形態の処理機能を実現するソフトウェアのプログラムコードはコンピュータで読取可能な記録媒体に格納される。
本実施の形態では、この記録媒体として、図8に示されているホストコンピュータ600で処理が行なわれるために必要なメモリ、たとえばメモリ624または固定ディスク626がプログラムメディアであってもよいし、また外部記憶装置としてCD−ROM駆動装置640、FD駆動装置630などのプログラム読取装置が設けられ、そこに記憶媒体であるCD−ROM642、FD632が挿入されることで読取可能なプログラムメディアであってもよい。いずれの場合においても、格納されているプログラムはCPU622がアクセスして実行させる構成であってもよいし、あるいはいずれの場合もプログラムが一旦読出されて、読出されたプログラムは、図8のホストコンピュータ600の所定のプログラム記憶エリア、たとえばメモリ624のプログラム記憶エリアにロードされて、CPU622により読出されて実行される方式であってもよい。プログラムの実行時には、ホストコンピュータ600上で稼働しているオペレーティングシステム(OS)などが実際の処理の一部を行う場合も含まれることは言うまでもない。なお、ロード用のプログラムは、予めホストコンピュータ600内に格納されているものとする。
ここで、上述したプログラムメディアはホストコンピュータ600本体と分離可能に構成される記録媒体であり、磁気テープやカセットテープなどのテープ系、MO(Magnetic Optical Disc)/MD(Mini Disc)/DVD(Digital Versatile Disc)などの光ディスクのディスク系、ICカード(メモリカードを含む)/光カードなどのカード系、あるいはマスクROM、EPROM(Erasable and Programmable ROM)、EEPROM(Electrically EPROM)、フラッシュROMなどによる半導体メモリを含めた固定的にプログラムを担持する媒体であってもよい。
ホストコンピュータ600はインターネットを含む通信回線300と接続可能な構成が採用されているから、通信回線300からプログラムがダウンロードされて流動的にプログラムを担持する媒体であってもよい。通信回線300からプログラムがダウンロードされる場合には、ダウンロード用プログラムは予めホストコンピュータ600内に格納しておくか、あるいは別の記録媒体から予めホストコンピュータ600にインストールされるものであってよい。
上述した記録媒体には、各実施の形態のフローチャートに対応するプログラムコードが格納される。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。