JP5577022B2 - センサ用複合材料および変形センサ - Google Patents

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Description

本発明は、部材の変形等を検出可能なセンサに用いられるセンサ用複合材料、およびそれを用いた変形センサに関する。
例えば、部材の変形や部材に作用する荷重の大きさ、分布を検出する手段として、感圧導電性樹脂や感圧導電性エラストマーを用いたセンサが提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。感圧導電性樹脂等は、母材となる樹脂やエラストマー中に導電性フィラーを分散させて構成されている。感圧導電性樹脂等は、変形すると電気抵抗が減少するという特性を有する。つまり、変形前は、導電性フィラー同士が離れているため電気抵抗が大きい。圧縮等により変形すると、導電性フィラー同士が接触して一次元的な導電パスが形成されるため、電気抵抗が減少する。
特開平9−5014号公報 特開平4−349301号公報
上記特許文献に記載されたセンサでは、変形時に導電性フィラーが接触して導通し電気抵抗が減少することを利用して、変形を検出している。したがって、圧縮等により、導電性フィラーがある程度の接触状態になると、電気抵抗の変化が小さくなる。このため、測定レンジが狭い。また、導電性フィラーの配合割合等によって、感度が大きく異なる。
これに対して、本発明者は、弾性変形量が増加するに従って電気抵抗が増加するという、極めて特異なエラストマー複合材料を開発した。開発したエラストマー複合材料は、エラストマーに導電性フィラーが所定の状態で充填されてなる。エラストマー複合材料では、荷重が印加されていない状態(以下、適宜「無荷重状態」と称す)、言い換えると、変形していない自然状態で、導電性フィラー同士の接触により、三次元的な導電パスが形成されている。このため、無荷重状態において高い導電性を有する。一方、エラストマー複合材料が弾性変形すると、導電性フィラー同士の接触状態が変化する。このため、弾性変形量が増加するに従って電気抵抗が増加する。
このように、上記エラストマー複合材料は、弾性変形量が増加するに従って電気抵抗が増加するという新規な材料である。しかしエラストマーを母材とするため、次のような課題を有する。すなわち、高温下では、エラストマーが熱膨張するため、導電性フィラー同士の間隔が大きくなる。このため、無荷重状態において導電性フィラーの三次元的な導電パスが形成されにくくなる。その結果、高温下では、無荷重状態におけるエラストマー複合材料の導電性が低下してしまう。また、三次元的な導電パスが減少することにより、変形に対して所望の電気抵抗の増加挙動を得にくくなり、応答感度が低下するおそれがある。
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、部材、部位の変形や荷重を検出可能なセンサに用いられると共に、温度による電気抵抗の変化が小さいセンサ用複合材料を提供することを課題とする。また、このセンサ用複合材料を用いることにより、信頼性の高い変形センサを提供することを課題とする。
(1)本発明のセンサ用複合材料は、線膨張係数が20×10−5/℃以下の熱可塑性樹脂と、該熱可塑性樹脂中に略単粒子状態でかつ高充填率で配合されている球状の導電性フィラーと、を有し、弾性変形可能であって、弾性変形量が増加するに従って電気抵抗が増加することを特徴とする(請求項1に対応)。
本発明のセンサ用複合材料において、導電性フィラーは、熱可塑性樹脂中に略単粒子状態で、かつ高充填率で配合されている。「略単粒子状態」とは、導電性フィラーの全重量を100重量%とした場合の50重量%以上が、凝集した二次粒子としてではなく、単独の一次粒子の状態で存在していることをいう。また、「高充填率」とは、導電性フィラーが最密充填に近い状態で配合されていることをいう。
本発明のセンサ用複合材料では、上述したエラストマー複合材料と同様に、導電性フィラー同士の接触により、三次元的な導電パスが形成される。したがって、本発明のセンサ用複合材料は、無荷重状態で高い導電性を有すると共に、弾性変形量が増加するに従って電気抵抗が増加する。なお、「弾性変形」には、圧縮、伸張、曲げ等による変形がすべて含まれる。このメカニズムは、次のように考えられる。図1、図2に、本発明のセンサ用複合材料の、荷重の印加前後における導電パスの変化をモデルで示す。ただし、図1、図2に示すのは、センサ用複合材料の一例であり、導電性フィラーの充填状態、形状等を何ら限定するものではない。
図1に示すように、センサ用複合材料100において、導電性フィラー102の多くは、熱可塑性樹脂101中に一次粒子の状態(略単独の状態)で存在している。また、導電性フィラー102の充填率は高く、最密充填に近い状態で配合されている。これにより、無荷重状態において、センサ用複合材料100には、導電性フィラー102による三次元的な導電パスPが形成されている。よって、無荷重状態では、センサ用複合材料100の電気抵抗は小さい。一方、図2に示すように、センサ用複合材料100に荷重が印加されると、センサ用複合材料100は弾性変形する(図2中の点線枠は、図1の無荷重状態を示している。)。ここで、導電性フィラー102は最密充填に近い状態で配合されているため、導電性フィラー102が移動できるスペースはほとんどない。よって、センサ用複合材料100が弾性変形すると、導電性フィラー102同士が反発し合い、導電性フィラー102同士の接触状態が変化する。その結果、三次元的な導電パスPが崩壊し、電気抵抗が増加する。
ここで、母材となる熱可塑性樹脂の線膨張係数は、20×10−5/℃以下である。線膨張係数は、単位温度当たりの伸び率を示すものであり、次式(1)で算出される。
線膨張係数(/℃)=(ΔL/L)/ΔT・・・(1)
[式中、ΔTは上昇した温度、Lは初期長さ、ΔLはΔTの温度上昇による伸び量。]
熱可塑性樹脂の線膨張係数は、エラストマーのそれと比較して小さい。つまり、本発明のセンサ用複合材料によると、温度が上昇しても母材が体積膨張しにくい。よって、高温下でも、導電性フィラー間の距離が大きくなりにくく、三次元的な導電パスが維持される。したがって、無荷重状態における導電性が低下しにくい。また、温度が上昇しても、変形に対する電気抵抗の増加挙動が変わりにくい。このため、温度と、変形に対する電気抵抗変化(感度)と、の関係を把握しやすい。これにより、本発明のセンサ用複合材料を用いたセンサにおいて、出力された電気抵抗に対する温度補償を容易に行うことができる。また、本発明のセンサ用複合材料は、熱可塑性樹脂を母材とするため、成形が容易で加工性に優れる。加えて、リサイクルしやすいという利点もある。
(2)本発明の変形センサは、上記本発明のセンサ用複合材料からなるセンサ本体と、該センサ本体に接続され、該電気抵抗を出力可能な電極と、該センサ本体の少なくとも一部の弾性変形を拘束する拘束部材と、を備えてなることを特徴とする(請求項6に対応)。
本発明のセンサ用複合材料からなるセンサ本体を備えた本発明の変形センサは、電極から出力されるセンサ本体の電気抵抗の増加に基づいて、対象となる部材、部位に作用する荷重、および部材、部位の様々な変形を検出することができる。
本発明の変形センサにおいて、センサ本体は、線膨張係数が20×10−5/℃以下の熱可塑性樹脂を母材とする。このため、使用環境の温度が高い場合でも、母材は体積膨張しにくい。よって、高温下でも、導電性フィラー間の距離が大きくなりにくく、三次元的な導電パスが維持される。したがって、無荷重状態における導電性が低下しにくい。また、温度が上昇しても、変形に対する電気抵抗の増加挙動が変わりにくい。つまり、応答感度が低下しにくい。このため、本発明の変形センサの信頼性は高い。また、温度と、変形に対する電気抵抗変化(感度)と、の関係を把握しやすいため、温度補償も容易である。また、センサ本体は、熱可塑性樹脂を母材とするため、加工性に優れ、形状設計の自由度が高い。よって、部材、部位の広い領域における荷重、変形を検出することができる。
本発明の変形センサでは、センサ本体に使用する熱可塑性樹脂の種類、導電性フィラーの構成、充填率等を調整することにより、無荷重状態における電気抵抗値を所定の範囲に設定することができる。このため、検出可能な荷重、弾性変形量の範囲、つまり、検出レンジを大きくすることができる。加えて、弾性変形量に対する電気抵抗の増加挙動を調整することができるため、所望の応答感度を実現することができる。
また、本発明の変形センサは、無荷重状態において高い導電性を有する。つまり、本発明の変形センサは、無荷重状態において導電状態にある。このため、無荷重状態において、導電性の低いセンサ(例えば、従来の感圧導電性樹脂等を用いたセンサ)と比較して、作動診断が容易である。すなわち、無荷重状態において導電性の低いセンサの場合、無荷重状態のままでは、正常なのか異常なのか(例えば回路に断線等が生じているのか)判別し難い。このため、導電性が低いセンサに、敢えて、比較的高い電圧を印加して、通電させてみる必要がある。あるいは、センサを試験的に作動させて通電状態をチェックする必要がある。したがって、作動診断が煩雑である。これに対して、本発明の変形センサの場合、無荷重状態において高い導電性を有している。このため、無荷重状態のままで、正常、異常の判別がし易い。したがって、作動診断が容易である。
以下、本発明のセンサ用複合材料および変形センサについて、それぞれ詳細に説明する。
<センサ用複合材料>
本発明のセンサ用複合材料は、線膨張係数が20×10−5/℃以下の熱可塑性樹脂と、球状の導電性フィラーと、を有する。熱可塑性樹脂は、線膨張係数が20×10−5/℃以下のものであれば、特にその種類が限定されるものではない。例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリスチレン(PS)、ポリビニルアセテート(PVAc)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド(PA)、ポリアセタール(POM)、ポリカーボネート(PC)、ポリフェニレンオキシド(PPO)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等が挙げられる。
なかでも、弾性変形量が増加するに従って電気抵抗が増加するという特性が発現しやすいよう、後述する導電性フィラーとの関係を考慮して選択することが望ましい。例えば、熱可塑性樹脂に導電性フィラーを混合した複合材料のパーコレーションカーブにおいて、飽和体積分率(φs)が35vol%以上となるものを選択するとよい。絶縁性の熱可塑性樹脂に導電性フィラーを混合した場合、その複合材料の電気抵抗は、導電性フィラーの配合量によって変化する。図3に、熱可塑性樹脂に導電性フィラーを混合した複合材料における、導電性フィラーの配合量と電気抵抗との関係を模式的に示す。
図3に示すように、熱可塑性樹脂101に導電性フィラー102を混合していくと、複合材料の電気抵抗は、はじめは熱可塑性樹脂101の電気抵抗とほとんど変わらない。しかし、導電性フィラー102の配合量がある体積分率に達すると、電気抵抗が急激に低下して、絶縁体−導電体転移が起こる(第一変極点)。この第一変極点における導電性フィラー102の配合量を、臨界体積分率(φc)と称す。また、さらに導電性フィラー102を混合していくと、ある体積分率から、電気抵抗の変化が少なくなり電気抵抗変化が飽和する(第二変極点)。この第二変極点における導電性フィラー102の配合量を、飽和体積分率(φs)と称す。このような電気抵抗の変化は、パーコレーションカーブと呼ばれ、熱可塑性樹脂101中に導電性フィラー102による導電パスP1が形成されるためと考えられている。
例えば、導電性フィラーの粒子径が小さい、導電性フィラーと熱可塑性樹脂との相溶性が悪い等の理由により、導電性フィラーが凝集し、凝集体が形成されている場合には、一次元的な導電パスが形成され易い。このような場合には、複合材料の臨界体積分率(φc)は、20vol%程度と比較的小さくなる。同様に、飽和体積分率(φs)も比較的小さくなる。言い換えると、臨界体積分率(φc)および飽和体積分率(φs)が小さい場合には、導電性フィラーは一次粒子として存在し難く、二次粒子(凝集体)を形成し易い。よって、この場合、導電性フィラーを熱可塑性樹脂中に多量に配合することは難しい。つまり、導電性フィラーを最密充填に近い状態で配合することは難しい。また、粒子径の小さな導電性フィラーを多量に配合すると、凝集構造が三次元的に成長するため、変形に対する電気抵抗の変化が乏しくなる。
一方、導電性フィラーと熱可塑性樹脂との相溶性が良好で、複合材料の飽和体積分率(φs)が35vol%以上になると、導電性フィラーを、熱可塑性樹脂中に略単粒子状態で安定に存在させることができる。よって、熱可塑性樹脂中に導電性フィラーを高充填率で配合することができる。飽和体積分率(φs)以上の領域では、複合材料の電気抵抗は低く、安定した導電性が発現される。また、変形した際の導電体から絶縁体への電気抵抗の変化範囲が広くなる。
ところで、エラストマーを母材としたエラストマー複合材料の場合、加振周波数により、荷重印加時と除去時とにおいて、変形に対する電気抵抗の変化挙動が異なる場合があった。この場合、同じ電気抵抗値を示していても、荷重印加時と除去時とでは実際の変形量が異なるという問題が生じる。また、変形した状態が継続していても、徐々に電気抵抗値が減少してしまい(電気抵抗値の緩和)、安定性が低いという問題もあった。本発明のセンサ用複合材料において、これらの問題を低減するには、弾性率の高い熱可塑性樹脂を用いることが望ましい。熱可塑性樹脂の弾性率が高いと、導電性フィラーの拘束力が大きくなる。これにより、加振周波数による上記電気抵抗の変化挙動の違いや、電気抵抗値の緩和等が低減される。例えば、熱可塑性樹脂の弾性率は100MPa以上が望ましい。1000MPa以上がより好適である。一方、弾性変形のしやすさ、加工性、形状設計の自由度等を考慮すると、熱可塑性樹脂の弾性率は5000MPa以下が望ましい。3000MPa以下がより好適である。本明細書では、熱可塑性樹脂の弾性率として、JIS K7161に準じて測定された引張弾性率の値を採用する。
例えば、導電性フィラーとして炭素材料を用いる場合、導電性フィラーとの相溶性が良好であり、伸び等の機械的物性が良好であるという理由から、熱可塑性樹脂として、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリアセタール、ポリカーボネートから選ばれる一種以上を用いることが望ましい。
本発明のセンサ用複合材料において、導電性フィラーは、導電性を有する球状の粒子であれば、特に限定されるものではない。例えば、炭素材料、金属等の微粒子が挙げられる。これらのうち、一種を単独で、あるいは二種以上を併せて用いることができる。また、「球状」には、真球、略真球状は勿論、楕円球状、長円球状(一対の対向する半球を円柱で連結した形状)、部分球状、部分毎に半径の異なる球状、水滴形状等が含まれる。例えば、導電性フィラーのアスペクト比(短辺に対する長辺の比)は、1以上2以下の範囲が望ましい。アスペクト比が2より大きくなると、導電性フィラー同士の接触により一次元的な導電パスが形成され易いからである。これにより、上記飽和体積分率(φs)が35vol%未満となるおそれがある。特に、熱可塑性樹脂中における導電性フィラーの充填状態をより最密充填状態に近づけるという観点から、導電性フィラーとして、真球あるいは極めて真球に近い形状(略真球状)の粒子を採用するとよい。
また、導電性フィラーの充填率は、センサ用複合材料の全体の体積を100vol%とした場合の30vol%以上であることが望ましい。30vol%未満の場合には、導電性フィラーが最密充填に近い状態で配合されにくく、所望の導電性が発現しない。また、センサ用複合材料の弾性変形に対する電気抵抗の変化が緩慢になり、電気抵抗の増加挙動を制御することが難しくなる。35vol%以上であるとより好適である。反対に、導電性フィラーの充填率は、センサ用複合材料の全体の体積を100vol%とした場合の65vol%以下であることが望ましい。65vol%を超えると、熱可塑性樹脂への混合が困難となり、成形加工性が低下する。また、センサ用複合材料が弾性変形しにくくなる。55vol%以下であるとより好適である。
導電性フィラーは、できるだけ凝集せず、一次粒子の状態で存在することが望ましい。よって、導電性フィラーを選択する際には、平均粒子径や熱可塑性樹脂との相溶性等を考慮するとよい。例えば、一次粒子の状態で存在する導電性フィラーの平均粒子径は、0.05μm以上100μm以下であることが望ましい。0.05μm未満の場合には、凝集して二次粒子を形成し易い。また、上記飽和体積分率(φs)が35vol%未満となるおそれがある。0.5μm以上、さらには1μm以上であると好適である。反対に、平均粒子径が100μmを超えると、弾性変形による導電性フィラーの並進運動(平行運動)が、粒子径に比べて相対的に小さくなり、弾性変形に対する電気抵抗の変化が緩慢となる。60μm以下、さらには30μm以下であると好適である。なお、平均粒子径としては、導電性フィラーの累積粒度曲線において積算重量が50%となる粒子径(D50)を採用する。
また、導電性フィラーの粒度分布は狭い方が望ましい。例えば、D90/D10の値が1以上30以下であることが望ましい。D90/D10の値が10以下であるとより好適である。ここで、D90は、累積粒度曲線において積算重量が90%となる粒子径であり、D10は、同積算重量が10%となる粒子径である。D90/D10の値が30を超えると、粒度分布がブロードになるため、弾性変形量に対する電気抵抗の増加挙動が不安定になりやすい。
導電性フィラーとしては、例えば、カーボンビーズが好適である。具体的には、大阪ガスケミカル社製のメソカーボンマイクロビーズ[MCMB6−28(平均粒子径約6μm)、MCMB10−28(平均粒子径約10μm)、MCMB25−28(平均粒子径約25μm)]、日本カーボン社製のカーボンマイクロビーズ:ニカビーズ(登録商標)ICB、ニカビーズPC、ニカビーズMC、ニカビーズMSB[ICB0320(平均粒子径約3μm)、ICB0520(平均粒子径約5μm)、ICB1020(平均粒子径約10μm)、PC0720(平均粒子径約7μm)、MC0520(平均粒子径約5μm)]、日清紡社製のカーボンビーズ(平均粒子径約10μm)等が挙げられる。
本発明のセンサ用複合材料は、上記熱可塑性樹脂、導電性フィラーに加え、各種添加剤が配合されていてもよい。添加剤としては、例えば、老化防止剤、可塑剤、軟化剤、着色剤等が挙げられる。本発明のセンサ用複合材料は、例えば、加熱溶融した熱可塑性樹脂に導電性フィラーを加えて混合した後、所定の条件下でプレス成形、射出成形等を行い製造すればよい。
<変形センサ>
上記本発明のセンサ用複合材料を用いて、変形センサを構成することができる。以下、本発明のセンサ用複合材料を用いた変形センサ、すなわち本発明の変形センサの一実施形態について説明する。
まず、本実施形態の変形センサの構成について説明する。図4に、変形センサの正面図を示す。図5に、図4のV−V断面図を示す。なお、図5では、説明の便宜上、導線を省略して示す。図4、図5に示すように、変形センサ2は、電極フィルム部20とセンサ本体21とを備えている。
電極フィルム部20は、基材フィルム200とカバーフィルム201とを備えている。基材フィルム200は、ポリイミド製であって、左右方向に延びる帯状を呈している。基材フィルム200は、基材900の表面に固定されている。基材フィルム200の右端には、コネクタ23が取り付けられている。カバーフィルム201は、アクリルゴム製であって、左右方向に延びる帯状を呈している。カバーフィルム201は、基材フィルム200およびセンサ本体21の表面を覆っている。基材フィルム200およびカバーフィルム部201は、本発明における拘束部材に含まれる。
センサ本体21は、左右方向に延びる長尺板状を呈している。センサ本体21は、表面をカバーフィルム201により覆われた状態で、基材フィルム200の表面に固定されている。センサ本体21は、ポリプロピレンにカーボンビーズ(導電性フィラー)が略単粒子状態でかつ高充填率で配合されたセンサ用複合材料からなる。カーボンビーズの充填率は、センサ本体21の体積を100vol%とした場合の約49vol%である。
センサ本体21の左端には電極Aが、右端には電極Bが、各々取り付けられている。詳しく説明すると、電極A、Bは、共に、上下に延びる短冊状を呈しており、センサ本体21と基材フィルム200との間、およびカバーフィルム201と基材フィルム200との間に、介装されている。電極Aとコネクタ23とは導線24Aにより、電極Bとコネクタ23とは導線24Bにより、各々、結線されている。
次に、変形センサ2の動きについて説明する。荷重が基材900側から変形センサ2の左右方向中央付近に加わると、基材900は、後方に撓むように変形する。基材900の変形は、基材フィルム200を介して、センサ本体21に伝達される。このため、センサ本体21も、前方に開口するC字状に、弾性的に湾曲する。無荷重状態においては、前出図1に示すように、導電性フィラー102は、最密充填に近い状態で充填されている。このため、多数の導電パスPが形成されている。したがって、検出される電極A、B間の電気抵抗値は、比較的小さい。これに対して、荷重が加わった後においては、前出図2に示すように、導電性フィラー102同士が反発し合う。このため、導電パスPが崩壊してしまう。したがって、検出される電極A、B間の電気抵抗値は、無荷重状態に対して、大きくなる。
加えて、センサ本体21の表面(後面)は、カバーフィルム201で覆われている。このため、センサ本体21後面付近の伸長変形は、カバーフィルム201により拘束される。すなわち、カバーフィルム201により、センサ本体21後面付近の伸長変形は規制され、センサ本体21は剪断変形する。このように、センサ本体21の両面を拘束することによって、大きな歪み集中を誘起でき、より一層、電極A、B間の電気抵抗値は大きくなる。
次に、本実施形態の変形センサ2の作用効果について説明する。本実施形態の変形センサ2では、センサ本体21が弾性変形すると、電気抵抗が増加する。このため、電極A、Bから出力されるセンサ本体21の電気抵抗の増加に基づいて、基材900に作用する荷重、および圧縮、曲げ等の変形を容易に検出することができる。
また、センサ本体21は、ポリプロピレンを母材とするため、加工性に優れている。このため、配置場所の自由度も高い。ここで、ポリプロピレンの線膨張係数は13×10−5/℃である。線膨張係数がエラストマーよりも小さいため、温度が上昇しても母材が体積膨張しにくい。したがって、無荷重状態における導電性が低下しにくい。加えて、高温下でも変形に対する電気抵抗の増加挙動が変わりにくい。また、弾性率がエラストマーよりも高いため、導電性フィラーの拘束力が大きい。これにより、加振周波数による電気抵抗の変化挙動の違いや、電気抵抗値の緩和等が低減される。
また、熱可塑性樹脂の種類、導電性フィラーの構成、充填率等を調整することにより、無荷重状態における電気抵抗値を所定の範囲に設定することができる。このため、検出可能な荷重、弾性変形量の範囲、つまり、検出レンジを大きくすることができる。加えて、弾性変形量に対する電気抵抗の増加挙動を調整することができるため、所望の応答感度を実現することができる。
また、本実施形態の変形センサ2は、変形していない自然状態で、導電状態にある。よって、変形センサ2が組み込まれている回路に電流を流すことにより、変形センサ2が作動可能か否かの自己診断を容易に行うことができる。
なお、本発明の変形センサの実施形態は上記形態に限定されるものではない。当業者が行いうる種々の変形的形態、改良的形態で実施することも可能である。例えば、センサ本体21を、基材フィルム200を介することなく、直接、基材900の表面に固定してもよい。また、センサ本体21の表面には、カバーフィルム201を配置しなくてもよい。この場合、基材900が拘束部材となる。また、基材900側からではなく、センサ本体21の表面から、直接、荷重が入力されてもよい。また、本発明の変形センサにおいても、上記本発明のセンサ用複合材料の好適な態様を採用することが望ましい。
まず、母材の異なる二種類のセンサ用複合材料を製造した。次に、製造したセンサ用複合材料を用いて変形センサを製造し、変形に対する応答性、温度依存性等を評価した。以下、順に説明する。
<センサ用複合材料および変形センサの製造>
まず、ポリプロピレン(住友化学社製「住友ノーブレン(登録商標)H501」、線膨張係数:13×10−5/℃)100重量部を、プラストミル(東洋精機製作所製「ラボプラストミル」)中で約180℃に加熱して溶融した。その後、カーボンビーズ(日本カーボン社製「ニカビーズICB0520」、平均粒子径約5μm、粒度分布におけるD90/D10=3.2)120重量部を添加して、約10分間混合した。これを、縦80mm、横40mm、厚さ0.5mmの金型に充填し、約200℃で3分間プレス成形した後、横5mmに切り出して、センサ用複合材料を得た。得られたセンサ用複合材料を、実施例1の複合材料とした。実施例1の複合材料におけるカーボンビーズの充填率は、同複合材料の体積を100vol%とした場合の約49vol%であった。
次に、ポリアミド(宇部興産社製「UBEナイロン(登録商標)1013NU2」、線膨張係数:9×10−5/℃)100重量部を、プラストミル(同上)中で約260℃に加熱して溶融した。その後、カーボンビーズ(同上)150重量部を添加して、約10分間混合した。これを、金型(同上)に充填し、約260℃で3分間プレス成形して、センサ用複合材料を得た。得られたセンサ用複合材料を、実施例2の複合材料とした。実施例2の複合材料におけるカーボンビーズの充填率は、同複合材料の体積を100vol%とした場合の約55vol%であった。
実施例1、2の複合材料の長手方向両端に、一対の電極を接着してセンサ素子とした。さらに、センサ素子の一方の表面に拘束板を固定して、変形センサを製造した。製造した変形センサを、使用したセンサ用複合材料の番号に対応させて実施例1、2の変形センサとした。図6に、製造した変形センサの正面図を示す。
図6に示すように、変形センサ3は、センサ素子30と拘束板32とを備えている。拘束板32は、ポリイミド製の薄膜とポリプロピレン製の薄膜との積層体であって、縦120mm、横10mm、厚さ0.4mmの帯状を呈している。センサ素子30は、拘束板32の表面に固定されている。センサ素子30の両端には電極31a、31bが各々固定されている。電極31a、31bは、共に短冊状を呈しており、センサ素子30と拘束板32との間に、介装されている。電極31a、31bには、各々導線(図略)が接続されている。
一方、比較のため、エラストマーを母材とするエラストマー複合材料により変形センサを製造した。まず、油展EPDM(住友化学社製「エスプレン(登録商標)301」)80重量部と、油展EPDM(住友化学社製「エスプレン400」)40重量部と、酸化亜鉛二種(白水化学工業社製)5重量部と、ステアリン酸(花王社製「ルナック(登録商標)S30」)0.5重量部と、パラフィン系プロセスオイル(出光興産社製「ダイアナ(登録商標)プロセスオイルPW−380」)26重量部と、をロール練り機にて素練りした。次に、上記実施例1と同様のカーボンビーズ280重量部を添加して、ロール練り機にて混合し、分散させた。さらに、架橋剤として、ジクミルパーオキサイド(日本油脂社製「パークミル(登録商標)D−40」)14重量部と、エチレングリコールジメタクリレート(精工化学社製「ハイクロスED−P」)6重量部と、を添加、混合して、エラストマー組成物を調製した。次に、調製したエラストマー組成物を、縦80mm、横5mm、厚さ2mmの長尺板状に成形して成形体とした。この成形体を金型に充填し、長手方向両端に一対の電極を配置して、約170℃で20分間プレス架橋することにより、一対の電極が取り付けられたエラストマー複合材料(センサ素子)を得た。エラストマー複合材料におけるカーボンビーズの充填率は、同エラストマー複合材料の体積を100vol%とした場合の約47vol%であった。得られたセンサ素子の一方の表面に拘束板を固定して、比較例の変形センサとした。
<変形センサの評価>
(1)温度依存性
(1−a)まず、製造した実施例1、2および比較例の各変形センサについて、無荷重状態における電気抵抗の温度依存性を調べた。各変形センサを、種々の温度に制御可能な恒温槽中に入れ、−20〜120℃の所定の温度下で、無荷重状態における電気抵抗を測定した。そして、0℃における電気抵抗値(R0℃)に対する、各温度(T℃)における電気抵抗値(RT℃)の変化割合を算出して、抵抗変化率とした[抵抗変化率(%)=(RT℃−R0℃)/R0℃×100]。同時に、各温度におけるセンサ素子の体積も測定し、次式(2)により体積膨張率を算出した。
体積膨張率(%)=(VT℃−V0℃)/V0℃×100・・・(2)
[式中、VT℃は各温度におけるセンサ素子の体積、V0℃は0℃におけるセンサ素子の体積。]図7に、各変形センサにおける抵抗変化率および体積膨張率の測定結果を示す。図7中、抵抗変化率は白色記号で、体積膨張率は黒色記号で示す。なお、体積膨張率は線膨張係数の三乗に相当する。
図7に示すように、エラストマーを母材とした比較例の変形センサ(丸印)では、温度の上昇と共に抵抗変化率が大きくなった。特に、60℃以上の高温下において、抵抗変化率の増加が大きくなった。また、温度に対する抵抗変化率の変化は、体積膨張率の変化と一致した。一方、エラストマーより線膨張係数が小さい熱可塑性樹脂を母材とした実施例1の変形センサ(四角印)、実施例2の変形センサ(三角印)では、温度が上昇しても、抵抗変化率、体積膨張率はほとんど変化しなかった。これより、本発明のセンサ用複合材料によると、温度上昇による体積膨張が小さく、無荷重状態の電気抵抗変化が低減されることが確認された。
(1−b)次に、実施例1および比較例の変形センサについて、種々の温度下での変形に対する電気抵抗の変化を調べた。電気抵抗の測定は次のようにして行った。まず、各々の変形センサを、種々の温度に制御可能な恒温槽中に長手方向を上下にして配置した。変形センサの上方には、上下方向に往復動可能な押圧ジグを配置した。押圧ジグを下方に移動させると、変形センサは湾曲変形する。20℃、50℃、80℃、120℃の各温度下で、押圧ジグを30秒ごとに1mmずつ下方へ移動して変形センサを湾曲変形させ、電気抵抗の変化を測定した。押圧ジグの変位量は0〜5mmとした。実施例1の変形センサにおける電気抵抗の測定結果を図8に示す。また、図8に示した各グラフの傾きを求め、その傾きを各温度におけるセンサ感度とした。図9に、実施例1の変形センサにおける温度とセンサ感度との関係を示す。同様に、比較例の変形センサにおける電気抵抗の測定結果を図10に示す。図11に、比較例の変形センサにおける温度とセンサ感度との関係を示す。
図8、図10に示すように、実施例1、比較例のいずれの変形センサにおいても、温度によらず、変形量の増加と共に電気抵抗は増加した。ここで、実施例1の変形センサにおいては、図9に示すように、温度に対してセンサ感度が線形に変化している。つまり温度によるセンサ感度のばらつきが小さい。一方、図11に示すように、比較例の変形センサにおいては、温度によるセンサ感度のばらつきが大きい。これより、実施例1の変形センサの方が、電気抵抗に対する温度補償を行いやすいことがわかる。なお、この点については、各温度、各変形量における電気抵抗の理論値と実測値との比較においても確認された。図12に、実施例1の変形センサにおける電気抵抗の理論値と実測値との関係を示す。図13に、比較例の変形センサにおける電気抵抗の理論値と実測値との関係を示す。図12、図13を比較して明らかなように、実施例1の変形センサでは、電気抵抗の理論値と実測値との差が小さく、プロットが線形近似された直線上にある。このように、本発明のセンサ用複合材料では、温度が上昇しても、変形に対する電気抵抗の増加挙動が変わりにくい。したがって、温度とセンサ感度との関係に基づいて、容易に温度補償を行うことができる。
(2)周波数依存性
実施例1および比較例の変形センサについて、応答性の加振周波数依存性を調べるため、以下の加振試験を行った。図14に、試験装置の模式図を示す。図14に示すように、試験装置4は、上端ホルダ40と下端ホルダ41と加振ジグ42とレーザ変位計43を備えている。上端ホルダ40は、不動であり、変形センサ3の長手方向一端(上端)を把持している。下端ホルダ41は、上端ホルダ40に対して、下方に離間して配置されている。下端ホルダ41は、加振ジグ42に固定されている。加振ジグ42は、上下方向に繰り返し移動可能である。下端ホルダ41は、変形センサ3の長手方向他端(下端)を把持している。
加振ジグ42を上下方向に動かすと、上端ホルダ40〜下端ホルダ41間の間隔が収縮、拡大する。これにより、変形センサ3は湾曲変形する。下端ホルダ41の変位量は、レーザ変位計43により測定される。本試験では、下端ホルダ41の変位量を、変形センサ3の変形量とした。また、変形センサ3の電気抵抗値は、電極31a、31b等から外部回路(図略)に出力される。変形センサ3に対して、0.1Hz、10Hzの二種類の周波数による周期的な曲げ変形を加えて、電気抵抗の変化を測定した。実施例1および比較例の各変形センサにおける、変形量(ε)に対する電気抵抗変化量(ΔR)を、図15、図16にそれぞれ示す。
図15に示すように、実施例1の変形センサによると、周波数が変わっても、変形量に対する電気抵抗変化量の変化曲線(ε−ΔRループ)は、略重なった。すなわち、周波数が変わっても、変形に対する電気抵抗変化の挙動は、略同じであった。また、いずれの周波数の場合でも、ε−ΔRループで囲まれた面積は小さかった。すなわち、曲げ印加時と曲げ除去時とにおいて、変形量に対する電気抵抗変化量があまり変わらなかった。これに対して、比較例の変形センサによると、図16に示すように、周波数によりε−ΔRループの形が大きく変化した。すなわち、周波数が10Hzの場合には、0.1Hzの場合と比較して、ε−ΔRループで囲まれた面積が大きくなった。これは、曲げ印加時と曲げ除去時とにおいて、変形量に対する電気抵抗変化量が大きく異なることを意味する。つまり、同じ電気抵抗変化量であっても、曲げ印加時と曲げ除去時とでは変形量が大きく異なってしまう。
また、図15、図16に示された加振周波数によるε−ΔRループの違いを、ヒステリシスロス率により比較した。ここでは、ヒステリシスロス率を次のように定義する。図17に、ε−ΔRループのモデル図を示す。図17に示すように、曲げ印加時には、電気抵抗変化量はA→D→Cのように増加する。反対に、曲げ除去時には、電気抵抗変化量はC→D’→Aのように減少する。ここで、曲線ADCと横軸(変形量)とで囲まれる面積(ADCB)を曲げ印加時の面積S1とし、曲線AD’Cと横軸とで囲まれる面積(AD’CB)を曲げ除去時の面積S2とする。ヒステリシスロス率は、次式(3)により算出された値とする。
ヒステリシスロス率(%)=|S1−S2|/S1×100・・・(3)
図18に、実施例1および比較例の変形センサについて、0.1Hz、10Hzの各周波数におけるヒステリシスロス率を示す。図18に示すように、実施例1の変形センサでは、周波数によるヒステリシスロス率の違いはほとんどなかった。また、いずれの周波数においてもヒステリシスロス率は小さかった。一方、比較例の変形センサでは、周波数が10Hzの場合に、0.1Hzの場合と比較してヒステリシスロス率が非常に大きくなった。以上より、比較例の変形センサの応答性は加振周波数に依存するのに対し、本発明の変形センサの応答性は加振周波数に依存しにくく、信頼性が高いことが確認された。
(3)応答安定性
実施例1、2および比較例の変形センサについて、変形した状態が維持されている時に、電気抵抗値がどの程度減少するか(電気抵抗値の緩和率)を測定した。まず、上記(1−b)と同様に、各々の変形センサの上方に押圧ジグを配置した。押圧ジグを30秒ごとに1mmずつ下方へ移動して変形センサを湾曲変形させ、その間の電気抵抗の経時変化を測定した。測定は室温下で行い、押圧ジグの変位量は0〜5mmとした。また、変位量5mmの状態が維持された30秒間における、電気抵抗値の緩和率を算出した。電気抵抗値の緩和率の算出方法は次の通りである。
図19に、変形状態における電気抵抗値の経時変化のモデル図を示す。図19に示すように、無荷重状態で最低値であった電気抵抗は、変形により急激に増加する。そのまま維持された変形状態において、電気抵抗は時間と共に減少する。変形が除去されると電気抵抗は元の値に戻る。この時の電気抵抗の最大変化量をΔR、変形状態における電気抵抗の減少量をΔRとして、電気抵抗値の緩和率を次式(4)により算出した。
電気抵抗値の緩和率(%)=ΔR/ΔR×100・・・(4)
図20に、各変形センサにおける抵抗変化率の経時変化を示す。ここで、抵抗変化率は、初期(変位量0mm)の電気抵抗値(R)に対する、各変位量における電気抵抗値(R)の変化割合である[抵抗変化率(%)=(R−R)/R×100]。また、図21に、各変形センサにおける電気抵抗値の緩和率を示す。まず、図20に示すように、いずれの変形センサにおいても、変形量が大きくなるに従って、抵抗変化率は階段状に増加した。ここで、実施例1、2の変形センサは、エラストマーより弾性率が高い熱可塑性樹脂を母材とする。よって、比較例の変形センサと比較して変形量が小さい。このため、抵抗増加率が小さくなった。しかし、母材の弾性率が高い分、導電性フィラーの拘束力は大きい。よって、図21に示すように、実施例1、2の変形センサにおける電気抵抗値の緩和率は小さくなった。このように、本発明のセンサ用複合材料によると、電気抵抗値の緩和を低減することができ、安定性の高い変形センサを構成することができる。
本発明のセンサ用複合材料の荷重印加前の導電パスを示す模式図である。 同センサ用複合材料の荷重印加後の導電パスを示す模式図である。 熱可塑性樹脂に導電性フィラーを混合した複合材料におけるパーコレーションカーブの模式図である。 本発明の一実施形態の変形センサの正面図である。 図4のV−V断面図である。 実施例で使用した変形センサの正面図である。 実施例1、2および比較例の変形センサにおける抵抗変化率および体積膨張率の測定結果を示すグラフである。 実施例1の変形センサにおける種々の温度下での電気抵抗の測定結果を示すグラフである。 実施例1の変形センサにおける温度とセンサ感度との関係を示すグラフである。 比較例の変形センサにおける種々の温度下での電気抵抗の測定結果を示すグラフである。 比較例の変形センサにおける温度とセンサ感度との関係を示すグラフである。 実施例1の変形センサにおける電気抵抗の理論値と実測値との関係を示すグラフである。 比較例の変形センサにおける電気抵抗の理論値と実測値との関係を示すグラフである。 実施例における加振試験の試験装置の模式図である。 実施例1の変形センサにおける変形量に対する電気抵抗変化量を示すグラフである(加振周波数0.1Hz、10Hz)。 比較例の変形センサにおける変形量に対する電気抵抗変化量を示すグラフである(加振周波数0.1Hz、10Hz)。 ヒステリシスロス率の算出方法を説明するための、ε−ΔRループのモデル図である。 実施例1および比較例の変形センサのヒステリシスロス率を示すグラフである(加振周波数0.1Hz、10Hz)。 電気抵抗値の緩和率の算出方法を説明するための、変形状態における電気抵抗値の経時変化のモデル図である。 実施例1、2および比較例の変形センサにおける抵抗変化率の経時変化を示すグラフである。 実施例1、2および比較例の変形センサにおける電気抵抗値の緩和率を示すグラフである。
符号の説明
2:変形センサ 20:電極フィルム部 200:基材フィルム
201:カバーフィルム 21:センサ本体 23:コネクタ 24A、24B:導線
900:基材
3:変形センサ 30:センサ素子 31a、31b:電極 32:拘束板
4:試験装置 40:上端ホルダ 41:下端ホルダ 42:加振ジグ
43:レーザ変位計
100:センサ用複合材料 101:熱可塑性樹脂 102:導電性フィラー
A:電極 B:電極 P:導電パス P1:導電パス

Claims (3)

  1. 線膨張係数が20×10−5/℃以下であり、弾性率が100MPa以上5000MPa以下の熱可塑性樹脂と、
    該熱可塑性樹脂中に略単粒子状態で、かつ、センサ用複合材料の全体の体積を100vol%とした場合の49vol%以上55vol%以下の充填率で配合され、平均粒子径がμm以上25μm以下のカーボンビーズからなる球状の導電性フィラーと、
    を有し、
    弾性変形可能であって、一対の電極を接続し該電極間において湾曲変形させた場合に、変形量が増加するに従って該電極間の電気抵抗が増加することを特徴とするセンサ用複合材料。
  2. 前記熱可塑性樹脂は、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリアセタール、ポリカーボネートから選ばれる一種以上である請求項1に記載のセンサ用複合材料。
  3. 請求項1または請求項2に記載のセンサ用複合材料からなるセンサ本体と、
    該センサ本体に接続され、電気抵抗を出力可能な電極と、
    該センサ本体の少なくとも一部の弾性変形を拘束する拘束部材と、
    を備えてなる変形センサ。
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