〔第1の実施形態〕
以下、この発明の第1の実施形態に係る超音波診断装置について説明する。図1は本実施形態に係る超音波診断装置の機能を表すブロック図である。
操作者は、表示部106及び入力部107を備えたユーザインタフェース105を使用して、検査種別を入力する。ここで、検査種別とは超音波診断装置で行なう1つ又は複数の観察部位に対する検査を含む一連の検査を指す。この検査種別は本発明における「検査手順」にあたる。検査種別には、例えば、上部腹部スクリーニングなどがある。そして、上部スクリーニングは肝左葉の検査、胃/腹部大動脈の検査、膵頭部の検査、肝右葉の検査、及び総胆管の検査、といった複数の検査項目を含む一連の検査である。そのような検査種別の場合、各検査項目に係る観察部位に対する検査において超音波画像の生成を行うことになる。ここで、観察部位とは患部を発見したり患部を観察したりするなどの検査の対象となっている被検体の一部の部位であり、たとえば肝臓、胃、及び腹部などを指す。以下では、検査種別に含まれる各検査項目に係る検査、すなわち観察部位毎に行われる検査を「個別検査」という。この個別検査は具体的には対象となる観察部位を走査することで超音波画像を生成するものである。操作者は、被検体の観察部位を走査しその観察部位における超音波画像を生成するため、超音波プローブ101を被検体の所望の位置にあてる。操作者は、超音波プローブ101をあてる位置、超音波プローブ101を押す力、及び超音波プローブ101をあてる角度などを変更することで生成する超音波画像を変更することができる。そして、超音波の放出には各観察部位を走査するための適切な超音波プローブ101をあてる場所、押す力、あてる角度などが存在する。そこで、操作者は、観察部位の所望の方向に超音波が放出されるよう超音波プローブ101をあてる場所、押す力、あてる角度などを調整する必要がある。
超音波プローブ101は超音波振動子(不図示)を有する。超音波プローブ101は、送受信部102から送られてきたパルス電流を超音波振動子で超音波に変換する。超音波プローブ101は、該超音波を被検体の観察部位に向けて送信する。さらに、超音波プローブ101は、被検体内の臓器などの組織で反射した超音波(以下では、「超音波エコー」という。)を超音波振動子で受信する。超音波プローブ101は、超音波振動子で受信した超音波エコーを電気信号(以下では、「エコー信号」という。)に変換する。超音波プローブ101は超音波エコーを変換した電気信号を送受信部102へ出力する。
送受信部102は、送信部と受信部を備え、統括制御部108からの制御に基づき、各超音波振動子に所定の遅延を与えたタイミングでパルス電流を供給する。超音波の送信周波数は統括制御部108からの制御により変更が可能となっている。送受信部102は、超音波振動子から入力されたエコー信号を増幅し所定の遅延などを与えた後、画像生成部103へ出力する。この送受信部102が本発明における「送受信手段」にあたる。
画像生成部103は、送受信部102から入力されたエコー信号にBモード処理などを施し超音波画像を生成する。この画像生成部103が本発明における「超音波画像生成手段」にあたる。Bモード処理とは以下の処理である。画像生成部103は、送受信部102から入力されたエコー信号を対数増幅する。さらに、画像生成部103は、対数増幅されたエコー信号について包絡線を検波する。包絡線検波とは、超音波周波数成分を除去して振幅のみを検出するものである。さらに、画像生成部103は、検波されたエコー信号の信号強度が輝度の明るさで表現されるデータを生成する。さらに、画像生成部103が有するDSC(Degital Scan Converter)によりラスタデータであるエコー信号を通常のモニタ上で表示できるように、直交座標系のデータに変換する。これにより、エコー信号の強度を輝度により表したBモード画像が生成される。そして、画像生成部103は、生成したBモード画像(超音波画像)のデータを表示制御部104へ出力する。また、画像生成部103は、生成した画像を記憶部(不図示)に記憶させておく。
さらに、画像生成部103は、生成した超音波画像の各点(例えば、各画素毎)における輝度値を、統括制御部108を介してプローブ動作判定部109へ出力する。
統括制御部108は、各機能部の動作及びその動作のタイミングなどを統括制御する。また、各機能部間の情報のやり取りは統括制御部108を介して行われることがあるが、説明の都合上機能部間で直接情報のやり取りを行っているよう説明する場合がある。
観察指示記憶部113は、ハードディスクやメモリなどの記憶装置である。この観察指示記憶部113が本発明における「記憶手段」にあたる。観察指示記憶部113は、予め図2に示すような検査種別とその検査種別に含まれる個別検査の順番を記載した検査種別テーブル200を記憶している。この検査種別テーブル200には、例えば一連の検査である検査種別(例えば、「上部腹部スクリーニング201」)に対して、複数の個別検査210が対応している。そして、検査種別テーブル200には、各検査種別で行われる個別検査の順番に、各検査種別に対応する各個別検査210の識別情報が記載させられている。具体的には、例えば検査種別が「上部腹部スクリーニング」201(検査種別の名称)の場合、図2に示すように、肝左葉を観察部位とする個別検査が1番目であり識別情報が「#1」、胃/腹部大動脈を観察部位とする個別検査が2番目であり識別情報が「#2」、膵頭部を対象部位とする個別検査が3番目であり識別情報が「#3」、肝右葉を観察部位とする個別検査が4番目であり識別情報が「#4」、総胆管を観察部位とする個別検査が5番目であり識別情報が「#5」、といったように、順番に各個別検査の識別情報が記載されている。ここで、観察する観察部位がわかりやすいように各個別検査のとこに観察部位も記載してもよい。また、本実施形態では、わかりやすいように個別検査の識別情報を個別検査が行われる順番と一致させているが、この識別情報は他のものと区別できるものであれば文字でも記号でもよい。
また、観察指示記憶部113は、各個別検査において被検体にあてる超音波プローブ101の適切な位置を表わす見本画像を記憶している。具体的には、見本画像は、後述するようにモデルの被検体の画像上に超音波プローブ101をあてる位置を示した画像である。各個別検査におけるさらに、観察指示記憶部113は、各個別検査において生成される典型的な超音波画像である典型画像を記憶している。
さらに、観察指示記憶部113は、図3に示すような検査種別毎の各個別検査における、観察部位301、見本画像302、典型画像303、及び留意事項304、の対応が記載された指示情報対応テーブル300を記憶している。図3は、上部腹部スクリーニングに対応する指示情報対応テーブルを表す一例の図である。留意事項とは、各個別検査において、検査の対象とする観察部位の観察において留意すべき事項やなどのデータである。
指示情報管理部110は、検査フロー管理部111及び観察指示提示部112で構成されている。指示情報管理部110は、これから行う検査に対応した各種情報、見本画像、典型画像、及び留意事項を抽出する機能部である。この指示情報管理部110が本発明における「指示情報管理手段」にあたる。
観察指示提示部112は、検査フロー管理部111から、入力された検査種別である「上部腹部スクリーニング」の識別情報及び個別検査の識別情報(本実施形態では上述の番号)の入力を受ける。観察指示提示部112は、入力された検査種別である「上部腹部スクリーニング」の識別情報を基に、観察指示記憶部113を検索し入力された検査種別に対応する指示情報対応テーブル300を抽出する。
さらに、観察指示提示部112は、入力された個別検査の識別情報を基に、抽出した指示情報対応テーブル300を検索し、入力された個別検査に対応する、観察部位301の名前、見本画像302の識別情報、典型画像303の識別情報、及び留意事項304を抽出する。例えば1つの個別検査である「肝左葉を観察部位とした検査」を表す識別情報の「#1」が入力されると、観察指示提示部112は、観察部位301として「肝左葉」、見本画像302の識別情報として「A1」、典型画像303の識別情報として「B1」、留意事項304として「肝の萎縮の有無、肝の凹凸の有無、胆嚢壁の肥厚」を抽出する。
観察指示提示部112は、抽出した見本画像302の識別情報「A1」を基に観察指示記憶部113を検索し、入力された個別検査に対応する見本画像を抽出する。
観察指示提示部112は、抽出した典型画像303の識別情報「B1」を基に観察指示記憶部113を検索し、入力された個別検査に対応する典型画像を抽出する。
観察指示提示部112は、抽出した、観察部位の名前「肝左葉」、識別情報「A1」の見本画像、識別情報「B1」の典型画像、及び留意事項「肝の萎縮の有無、肝の凹凸の有無、胆嚢壁の肥厚」を表示制御部104へ出力する。以下ではこれらの情報をまとめて「指示情報」という。
操作者が検査開始の入力を行ったときに、検査フロー管理部111は、統括制御部108から検査種別として「上部腹部スクリーニング201」の識別情報の入力を受ける。検査フロー管理部111は、入力された検査種別の識別情報を基に、観察指示記憶部113に記憶されている検査種別テーブル200を検索する。検査フロー管理部111は、検査種別テーブル200に記載されている上部腹部スクリーニング201に対応する個別検査210の中で1番目の個別検査210である肝左葉を観察部位とする個別検査210の識別情報を抽出する。ここでは、識別情報は順番を表す「#1」である。検査フロー管理部111は、抽出した識別情報「#1」を観察指示提示部112へ出力する。そして、検査フロー管理部111は、観察指示提示部112に出力した観察部位を肝左葉とする個別検査210の識別情報「#1」を記憶しておく。
識別情報が「#1」の個別検査である肝左葉の検査の見本画像が表示され、実際に操作者が被検体に超音波プローブ101をあて、画像が生成された後、検査フロー管理部111は、プローブ動作判定部109から入力された「#1」の肝左葉の検査終了の通知を受ける(ここで個別検査終了とは、特定の観察部位に対する検査が終わり次の観察部位に対する走査に移っていることを意味する。)と、検査種別テーブル200を検索し上部腹部スクリーニングの次の個別検査210の識別情報を抽出する。例えば、一つ前に観察指示提示部112へ観察部位を肝左葉とする個別検査210の識別情報「#1」を入力している場合、検査フロー管理部111は次の個別検査である観察部位を胃/腹部大動脈とする個別検査210の識別情報「#2」を抽出する。検査フロー管理部111は、抽出した識別情報「#2」を観察指示提示部112に出力する。ここで、本実施形態では、検査種別テーブル200に個別検査が行われる順に記載されているため、検査フロー管理部111は、現在記憶している個別検査210の識別情報を基に検査種別テーブル200を参照し記憶している個別検査210の一つ下の個別検査210を次の個別検査210と判断している。こうすることで、例えば途中の個別検査210が削除された場合にも、その削除された個別検査210を飛ばして次の個別検査210を抽出することができる。ただし、これは、他の方法でも良く、例えば識別情報が連番になっており途中の走査が削除されることがない場合などは、単に記憶している番号に1を加えた番号を次の番号としてもよい。
プローブ動作判定部109はメモリなどの記憶部を有する。プローブ動作判定部109は、検査項目毎に取得された超音波のデータに基づいて画像生成部103が生成した超音波画像の所定点(例えば、ドット毎)における輝度値の入力を受ける。本実施形態では超音波画像上のすべての点について輝度値を取得する。これは、比較可能な部分であれば超音波画像の一部でもよい。プローブ動作判定部109は1フレーム毎に各点の輝度値を記憶する。ここで、1フレームとは1回の走査によって生成される超音波画像のことを指し、画像生成部103は数十枚の超音波画像、即ち数十フレームの超音波画像を生成することができる。この一秒間に生成されるフレーム数をフレームレートという。本実施形態では20フレーム/秒のフレームレートとする。
プローブ動作判定部109は、記憶したフレームの超音波画像の各点の数を輝度値毎に集計し、図4(A)に示すグラフ401のような、縦軸を画素頻度(集計した画素の数)とし、横軸を最大輝度が1となるように規格化した輝度値とした輝度情報グラフを作成する。この画素頻度が本発明における「輝度値の分布」にあたる。図4(A)は輝度情報グラフの一例の図であり、図4(B)は輝度情報グラフの他の例の図である。プローブ動作判定部109は作成した輝度情報グラフを記憶していく。
プローブ動作判定部109は、現在のフレームに対応する輝度情報グラフと10フレーム前の輝度情報グラフを比較する。ここで、比較とは現在のフレームに対応する輝度情報グラフの各輝度値での画素頻度と対応する10フレーム前の輝度情報グラフの各輝度値での画素頻度との差を計算することを指す。プローブ動作判定部109は、まだ10フレーム前の超音波画像が存在しない場合、すなわち超音波画像の生成が開始されてから1フレームから10フレームまでの間は比較を行わない。ここで、近接する時間のフレームを比較した場合差が小さいため違いを判定することが困難となり、また、乖離した時間のフレームを比較した場合当然に違ってしまうことが多くなり類似を判定することが困難になってしまう。そこで、超音波プローブ101が大きく移動した場合、10フレームの時間があれば輝度情報グラフの違いが十分に現れると考えられるため。本実施形態では10フレーム前としているが、このフレーム数は使用環境に合わせて設定することが好ましい。次に輝度情報グラフの比較方法を具体的に説明する。
プローブ動作判定部109は、現在のフレームに対応する輝度情報グラフと10フレーム前の輝度情報グラフとの各輝度における画像頻度の閾値として30(単位は画素の数)を記憶している。さらに、プローブ動作判定部109は、輝度情報グラフにおける輝度値のうちの閾値を超えた輝度値が占める割合の閾値として30%を記憶している。プローブ動作判定部109はこの画像頻度の閾値及び割合の閾値により超音波プローブ101が特定の観察部位を走査中か次の観察部位に向けて移動しているかを判断する。さらに、プローブ動作判定部109は、内部にタイマーを持っている。そして、プローブ動作判定部109は、時間の閾値として10秒を記憶している。プローブ動作判定部109は、この時間の閾値により特定の観察部位の走査、すなわち特定の個別検査を開始したか否かを判断する。
プローブ動作判定部109は、現在のフレームに対応する輝度情報グラフと10フレーム前の輝度情報グラフとの各輝度における画像頻度を比較していく。そして、プローブ動作判定部109は、各輝度値において記憶している画像頻度の閾値である30を超えているか否かを判定する。そして、それぞれの輝度における判断を終えた後、プローブ動作判定部109は、閾値を超えた輝度値が全体に占める割合を算出する。
プローブ動作判定部109は、算出した閾値を超えた輝度値が全体に占める割合が記憶している割合の閾値である30%を超えているか否かを判断する。操作者は、検査を開始して最初の観察部位の観察を始める場合及び現在観察している観察部位から次の観察部位の観察に移る場合、超音波プローブ101を目的の観察部位まで超音波プローブ101を移動させる必要がある。そして、超音波プローブ101が移動している場合は、超音波を放出する方向が現在のフレームと10フレーム前とでは異なるため超音波が反射する位置が異なる。そのため、超音波プローブ101が移動している場合には、現在の輝度情報グラフと10フレーム前の輝度情報グラフが大きく異なる。例えば、現在のフレームに対応する輝度情報グラフが図4(A)で示されるグラフ401のようなグラフであり、10フレーム前の輝度情報グラフが図4(B)で示されるグラフ402であるような場合である。そして、現在の輝度情報グラフがグラフ401であり、10フレーム前の輝度情報グラフがグラフ402である場合のように、現在の輝度情報グラフと10フレーム前の輝度情報グラフを比較して、画素頻度の閾値を超える輝度値が全体の30%以上において発生している場合、超音波プローブ101が移動していると判断できる。
これに対し、操作者は、個別検査における所定の位置まで超音波プローブ101を移動させた後、観察部位の走査を行う場合には、超音波プローブ101の位置を固定させて所望の観察部位の走査を行う。そして、超音波プローブ101の位置が固定されている場合は、超音波を放出する方向が10フレーム前とほぼ同じであり、現在のフレームに対応する輝度情報グラフと10フレーム前の輝度情報グラフがほぼ同じものになる。具体的には、例えば、現在のフレームに対応する輝度情報グラフ及び10フレーム前の輝度情報グラフがともにグラフ401に近似した輝度情報グラフになるような場合である。そして、現在のフレームに対応する輝度情報グラフと10フレーム前の輝度情報グラフを比較して、閾値を超える輝度値が全体の30%以内に収まる場合、超音波プローブ101の位置が固定されていると判断できる。
そして、現在のフレームに対応する輝度所法グラフと10フレーム前の輝度情報グラフとを比較したときのプローブ動作判定部109の動作は以下のようになる。
プローブ動作判定部109は、算出した閾値を超えた輝度値が全体に占める割合が30%以内と判定した場合、直前のフレームの比較結果における算出した割合が30%を超えていたか否かを確認する。直前のフレームの比較結果における算出した割合が30%を超えている場合には、プローブ動作判定部109は自己の有するタイマーによる時間の計測を開始させる。また、直前のフレームの比較結果における算出した割合が30%以内の場合には、すでに開始しているタイマーによる時間の計測を継続する。そして、プローブ動作判定部109は、算出した割合が30%以内のフレームが10秒以上続くか否かを判断する。ここで、本実施形態では10秒以上続いたか否かの判定は、プローブ動作判定部109の内部のタイマーによる計測時間を参照することで行える。ただしこれは他の方法でもよく例えば、フレーム数などを用いることもできる。例えばフレームレートが毎秒20フレームの場合、200フレーム連続して算出した割合が30%以内のフレームが続くことで、プローブ動作判定部109は算出した割合が30%以内のフレームが10秒以上続いたと判断できる。プローブ動作判定部109は、算出した割合が30%以内のフレームが10秒以上続いた場合には走査開始のフラグを記憶する。
また、プローブ動作判定部109は、算出した割合が30%を超えていると判定した場合、直前のフレームの比較結果における算出した割合が30%を超えていたか否かを確認する。直前のフレームの比較結果が30%以内の場合には、プローブ動作判定部109は自己の有するタイマーによる時間の計測を終了する。さらに、プローブ動作判定部109は、走査開始のフラグを記憶しているか否かを確認する。プローブ動作判定部109は、走査開始のフラグを記憶している場合、超音波プローブ101が次の観察部位に移動しているという通知、すなわち個別検査終了という通知を検査フロー管理部111へ出力する。そして、プローブ動作判定部109は、走査開始のフラグを消去する。また、直前のフレームの比較結果における算出した割合が30%を超えている場合には、そのまま次のフレームの比較に移る。
さらに、プローブ動作判定部109は、画像生成部103からフレーム毎の超音波画像の各点の輝度情報を取得するので、現在のフレームのフレーム番号を取得できる。フレーム番号とは、その検査で最初に生成されたフレームから現在のフレームまで数えたときのフレームの数である。そこで、プローブ動作判定部109は、各個別検査が開始されたフレームのフレーム番号、及び各個別検査が終了したフレームのフレーム番号を超音波診断装置の記憶部におくり、画像生成部103が生成した超音波画像と共に記憶させておくという構成も可能である。これにより、操作者はフレーム番号を指定することで、各個別検査の頭出しなどを容易に行うことが可能となる。
以上で説明したプローブ動作判定部109が本発明における「プローブ動作判定手段」にあたる。
図5は上部腹部スクリーニングの1番目の個別検査を行っている時の表示画面の一例の図である。表示制御部104は、図5に示すような超音波診断用の表示画面のフォーマットを記憶している。表示制御部104はこの記憶しているフォーマットに基づいて、表示画面を表示部106に表示させる。この表示制御部104が本発明における「表示制御手段」にあたる。
そこで、具体的な表示画面の一例を説明する。以下では図5に表示されている各画像及び文字の位置に従って説明する。ただし、この配置は一例であり、実際にはどの位置にどの情報が表示されてもよい。表示制御部104は、表示画面の左上の部分に統括制御部108から入力された操作者名501、患者名502、性別503、及び年齢504を表示する。また、表示制御部104は、画像生成部103から入力された超音波画像505を表示画面の左下に表示する。上述のようにこの画像は、診察のために現在生成されている画像(リアルタイム画像)である。また、表示制御部104は、表示画面の右上に観察指示提示部112から入力された検査種別506、ここでは「上部腹部スクリーニング」、及び現在走査している観察部位である現観察部位507とその個別検査の番号、ここでは「1.肝左葉」表示する。さらにその下に、表示制御部104は、観察指示提示部112から入力された見本画像510を表示する。見本画像510は、上述のように、現在行っている個別検査において被検体上の超音波プローブ101をあてる位置を表す画像である。具体的には、見本画像510は図5に示すように、被検体のモデルの上に、現在行われている検査種別に含まれる各個別検査における超音波プローブ101をあてる位置511が表示されており、さらにその表示されている超音波プローブ101をあてる位置511の上に各個別検査の番号512が表示されている。さらに、見本画像510には、現在行われている個別検査における超音波プローブ101のあてる位置511をわかりやすくするために、矢印513でその位置が強調されている。さらに、表示制御部104は、該見本画像510の下に典型画像509を表示させる。上述のように典型画像509とは、現在の観察部位を走査した時に得られるべき画像の典型例の画像である。
さらに、次の個別検査に移った場合に、はその個別検査に対応する指示情報が表示画面に表示される。例えば、上部腹部スクリーニングにおける2番目の個別検査を行っている場合には図6に示すような表示画面が表示される。図6は上部腹部スクリーニングの2番目の個別検査を行っている時の表示画面の一例の図である。図6に示すように、この2番目の個別検査に対応する見本画像510が表示される。この場合の見本画面では、2番目の個別検査で超音波プローブ101をあてる位置が、矢印513で強調されている。
次に、図7を参照して本実施形態にかかる超音波診断装置における表示画面の作成及び表示の流れを説明する。図7は、本実施形態にかかる超音波診断装置における表示画面の作成及び表示のフローチャートの図である。
ステップS001:操作者は、ユーザインタフェース105を使用して検査種別を入力し、さらに、検査開始の命令を入力する。
ステップS002:検査フロー管理部111は、統括制御部108を介して入力された検査種別を基に、観察指示記憶部113に記憶されている検査種別テーブルを検索し、入力された検索種別に含まれる個別検査のうち、最初の個別検査の識別情報を取得する。
ステップS003:観察指示提示部112は、検査フロー管理部111から入力された個別検査の識別情報を基に、観察指示記憶部113に記憶されている指示情報対応テーブルを検索し、観察部位、見本画像のID、典型画像のID、及び留意事項を取得する。
ステップS004:観察指示提示部112は、見本画像のID及び典型画像のIDを基に、観察指示記憶部113を検索し、見本画像及び典型画像を取得する。
ステップS005:観察指示提示部112は、取得した観察部位、見本画像、典型画像、及び留意事項などの指示情報を、統括制御部108を介して表示制御部104に送信する。
ステップS006:検査フロー管理部111は、プローブ動作判定部109から個別検査終了の通知を受信しているか否かを判断する。受信している場合にはステップS007に進む。受信していない場合には、個別検査終了の通知を受信するまで待機する。
ステップS007:検査フロー管理部111は、記憶している検査種別及び現在の所定部位検査の識別情報を基に、観察指示記憶部113に記憶されている検査種別テーブルを検索し、次の個別検査の有無を判断する。次の個別検査があればステップS008に進む。次の個別検査がなければすべての個別検査が終了したとして、指示情報の取得および送信を終了する。
ステップS008:検査フロー管理部111は、記憶している検査種別及び現在の所定部位検査の識別情報を基に、観察指示記憶部113に記憶されている検査種別テーブルを検索し、次の個別検査の識別情報を取得する。
ステップS009:検査開始の入力を受けて、送受信部102は、超音波プローブ101を介して超音波の送受信を行う。
ステップS0010:画像生成部103は、送受信部102から入力された超音波エコーのデータを基に、超音波画像を生成する。
ステップS0011:表示制御部104は、記憶しているフォーマットに基づいて、画像生成部103で生成された超音波画像、及び観察指示提示部112から入力された指示情報を使用して表示画面を作成する。
ステップS012:表示制御部104は、作成した表示画面を表示部106に表示させる。
次に、図8を参照して本実施形態にかかる超音波診断装置におけるプローブ動作の判定の流れを説明する。ここで、図8は本実施形態にかかる超音波診断装置におけるプローブ動作の判定のフローチャートの図である。
ステップS101:画像生成部103は、送受信部102から入力された超音波エコーのデータを基に、超音波画像を生成する。(このステップは図7のステップS001と同様のステップである。)
ステップS102:プローブ動作判定部109は、画像生成部103から生成した超音波画像の各点における輝度値の情報を取得する。
ステップS103:プローブ動作判定部109は、取得した超音波画像の各点における輝度値を基に、該超音波画像に対応する輝度情報グラフを作成し記憶する。
ステップS104:プローブ動作判定部109は、10フレーム前の超音波画像の輝度情報グラフと現在の超音波画像の輝度情報グラフの輝度値毎の画素頻度を比較する。プローブ動作判定部109は、全部の輝度値のうち閾値を超えた輝度値の割合を算出する。
ステップS105:プローブ動作判定部109は、算出した割合が、割合の閾値を超えているか否かを判断する。割合の閾値以下の場合にはステップS106に進む。割合の閾値を超えている場合にはステップSステップS108に進む。
ステップS106:プローブ動作判定部109は、直前のフレームで行われた比較において閾値を超えた輝度値の割合が、割合の閾値を超えていたか否かを確認する。割合の閾値を超えていた場合にはステップS107に進む。割合の閾値以下の場合にはステップS101に戻る。
ステップS107:プローブ動作判定部109は、自己が有するタイマーによって時間計測を開始する。ステップS101に戻る。
ステップS108:プローブ動作判定部109は、直前のフレームで行われた比較において閾値を超えた輝度値の割合が、割合の閾値を超えていたか否かを確認する。割合の閾値を超えていた場合にはステップS109に進む。割合の閾値以下の場合にはステップS101に戻る。
ステップS109:プローブ動作判定部109は、自己が有するタイマーによる時間の計測を終了する。
ステップS110:プローブ動作判定部109は、計測した時間が、時間の閾値を超えているかを判断する。時間の閾値を超えている場合にはステップS111に進む。時間の閾値以下の場合にはステップS101に戻る。
ステップS111:プローブ動作判定部109は、検査フロー管理部111に個別検査終了の通知を行う。図7のステップS006おいて、検査フロー管理部111はこのステップS111で発せられた通知を受信したか否かを判断する。
ここで、本実施形態ではより容易に所望の超音波画像を取得するため、典型画像を超音波画像と共に表示しているが、個別検査における超音波プローブをあてる大まかな位置を把握だけであれば典型画像を表示しなくてもよい。
また、本実施形態では、検査をより効率よく行うため、現在の観察部位、患者の情報、留意事項などを超音波画像と共に表示しているが、それらの情報は表示しなくてもよい。
以上で説明したように、本実施形態にかかる超音波診断装置においては、現在行っている個別検査に対応する見本画像を、現在生成されている超音波画像と共に表示画面に表示することができる。そのため、操作者は観察部位の走査を行うときに見本画像により被検体のどの位置に超音波プローブをあてればよいかという大まかな位置を把握できる。そして、操作者はその位置に超音波プローブをあてることで容易に典型画像に近い超音波画像を取得することができる。
さらに、本実施形態に係る超音波診断装置では超音波画像と共に典型画像が表示されているため、操作者は見本画像が示す位置で大まかな超音波プローブの大まかな位置を把握した後に、典型画像に近づけるように超音波プローブの位置の調整を行うことで、より一層典型画像に近い画像、すなわちその検査で必要とされる画像を取得することが可能となる。
〔第2の実施形態〕
以下、この発明の第2の実施形態に係る超音波診断装置について説明する。本実施形態に係る超音波診断装置は、個別検査終了の判断方法が第1の実施形態と異なるものである。そこで、以下ではプローブ動作判定部による個別検査終了の判断について主に説明する。本実施形態に係る超音波診断装置の構成も図1に示すブロック図と同様の構成である。
プローブ動作判定部109は、輝度値の閾値として30、割合の閾値として30%、時間の閾値として10秒、を記憶している。
さらに、プローブ動作判定部109は、超音波画像の中で輝度重心が移動する画像領域の範囲の閾値として半径5cmの円と記憶している。これは、後で説明するように輝度重心の移動領域を規定する閾値である。
プローブ動作判定部109は、画像生成部103から現在表示されている超音波画像の各点の輝度値の入力を受ける。プローブ動作判定部109は、入力された各点の輝度値の閾値を記憶する。
プローブ動作判定部109は、各点の輝度値を基に、入力された超音波画像に対応する輝度情報グラフを作成する。
さらに、プローブ動作判定部109は、各点の輝度値を基に、入力された超音波画像における輝度重心を算出する。
プローブ動作判定部109は、フレーム毎に超音波画像の輝度重心を算出し、記憶していく。
プローブ動作判定部109は、10フレーム前の画素頻度と現在の画素頻度を比較して閾値を超える輝度値が全体の30%以下のフレームが10秒以上続くと、個別検査が開始されていると判断する。
プローブ動作判定部109は、個別検査が開始されたと判断した後、記憶している輝度重心を参照し、該個別検査で取得される超音波画像の輝度重心のうちいずれかを基準の輝度重心とする。本実施形態では、閾値を超える輝度値が全体の30%以下のフレームが続く時間計測のタイマーが開始された時の超音波画像の輝度重心を基準の輝度重心とする。これは、例えばタイマーが開始されてから10秒後、すなわち個別検査が開始されていると判断できるときのフレームの超音波画像の輝度重心を基準の輝度重心とするなどしてもよい。
そして、個別検査が開始されたと判断した後、10フレーム前の画素頻度と現在の画素頻度を比較して閾値を超える輝度値が全体の30%を超えた場合、プローブ動作判定部109は、現在の輝度重心を基準の輝度重心と比較する。そして、プローブ動作判定部109は、現在の輝度重心と基準の輝度重心との距離が上述の輝度重心が移動する画像領域の範囲の閾値である5cmを超えている場合、個別検査の終了を検査フロー管理部111へ出力する。
次に、図9を参照して 、本実施形態に係るプローブ動作判定部109における個別検査終了の判断の流れを説明する。図9は本実施形態に係るプローブ動作判定部109における個別検査終了の判断のフローチャートの図である。
ステップS201:画像生成部103は、送受信部102から入力された超音波エコーのデータを基に、超音波画像を生成する。(このステップは図7のステップS001と同様のステップである。)
ステップS202:プローブ動作判定部109は、画像生成部103から生成した超音波画像の各点における輝度値の情報を取得する。
ステップS203:プローブ動作判定部109は、取得した超音波画像の各点における輝度値を基に、該超音波画像に対応する輝度情報グラフを作成し記憶する。
ステップS204:プローブ動作判定部109は、取得した超音波画像の各点における輝度値を基に、該超音波画像に対応する輝度重心を算出し記憶する。
ステップS205:プローブ動作判定部109は、10フレーム前の超音波画像の輝度情報グラフと現在の超音波画像の輝度情報グラフの輝度値毎の画素頻度を比較する。プローブ動作判定部109は、全部の輝度値のうち閾値を超えた輝度値の割合を算出する。
ステップS206:プローブ動作判定部109は、算出した割合が、割合の閾値を超えているか否かを判断する。割合の閾値以下の場合にはステップS207に進む。割合の閾値を超えている場合にはステップSステップS209に進む。
ステップS207:プローブ動作判定部109は、直前のフレームで行われた比較において閾値を超えた輝度値の割合が、割合の閾値を超えていたか否かを確認する。割合の閾値を超えていた場合にはステップS208に進む。割合の閾値以下の場合にはステップS209に進む。
ステップS208:プローブ動作判定部109は、自己が有するタイマーによって時間の計測を開始する。このステップの後ステップS201に戻る。
ステップS209:プローブ動作判定部109は、自己が有するタイマーによって計測されている時間が時間の閾値を超えているかを判断する。時間の閾値を超えている場合にはステップS210に進む。時間の閾値以下の場合にはステップS201に戻る。
ステップS210:プローブ動作判定部109は、既に基準の輝度重心を設定しているか否かを判断する。未だ決定していない場合にはステップS211に進む。すでに設定している場合にはステップS201に戻る。
ステップS211:プローブ動作判定部109は、自己が記憶している輝度重心を参照し、タイマーが時間計測を開始した時の超音波画像における輝度重心を基準の輝度重心と設定する。
ステップS212:プローブ動作判定部109は、直前のフレームで行われた比較において閾値を超えた輝度値の割合が、割合の閾値を超えていたか否かを確認する。時間の閾値を超えていた場合にはステップS213に進む。時間の閾値以内の場合にはステップS201に戻る。
ステップS213:プローブ動作判定部109は、自己が有するタイマーによる時間計測を終了する。
ステップS214:プローブ動作判定部109は、計測した時間が、時間の閾値を超えているかを判断する。時間の閾値を超えている場合にはステップS215に進む。時間の閾値以下の場合にはステップS201に戻る。
ステップS215:プローブ動作判定部109は、現在の輝度重心と基準の輝度重心との距離が閾値を超えているかを判断する。閾値を超えている場合にはステップS216に進む。時間の閾値以下の場合にはステップS201に戻る。
ステップS216:プローブ動作判定部109は、検査フロー管理部111に個別検査終了の通知を行う。
以上で説明したように、本実施形態に係る超音波診断装置においては、プローブ動作判定部は画素頻度が閾値を超える輝度値が全体の所定の割合を超えるとともに、その超音波画像における輝度重心が所定の閾値を超えた時に、個別検査が終了したと判断する。
〔第3の実施形態〕
以下、この発明の第3の実施形態に係る超音波診断装置について説明する。本実施形態に係る超音波診断装置は、周期的な運動を行う心臓などの臓器を検査するためのものであり、輝度情報グラフの比較方法が第1及び第2の実施形態と異なるものである。そこで、以下ではプローブ動作判定部による輝度情報グラフの比較について主に説明する。本実施形態に係る超音波診断装置の構成も図1に示すブロック図と同様の構成である。
心臓のような周期的な運動を行う臓器の場合、生成される超音波画像は刻々と変化し、同じ位置を走査していれば1周期の後、ほぼ同様の超音波画像が生成されることになる。そこで、本実施形態に係るプローブ動作判定部109では、現在のフレームに対応する輝度情報グラフと1周期前のフレームに対応する輝度情報グラフとを比較する。以下具体的に説明する。
プローブ動作判定部109は、画像生成部103からフレーム毎に超音波画像の各点における輝度値の入力を受ける。
プローブ動作判定部109は、外部の心電計などから心拍を受け取る。プローブ動作判定部109は、心電波形のR波から現在のフレームまでのフレーム数をカウントし該フレーム数を取得する。プローブ動作判定部109は、現在のフレームに対応する輝度情報グラフを記憶するとともに、取得したR波から現在のフレームまでのフレーム数を記憶する。
プローブ動作判定部109は、記憶している1つ前の周期における各フレームのR波からのフレーム数を検索し、R波から現在のフレームまでのフレーム数と同じフレーム数を有する1周期前のフレームの輝度情報グラフ(以下では、「1周期前の輝度情報グラフ」という。)を取得する。
プローブ動作判定部109は、現在のフレームに対応する輝度情報グラフと1周期前の輝度情報グラフを比較する。
プローブ動作判定部109は、閾値を超える輝度値が占める割合が30%以内のフレームが10秒続くと個別検査が開始されていると判断する。
プローブ動作判定部109は、閾値を超える輝度値が占める割合が30%以内のフレームが10秒以上続いた後、閾値を超える輝度値が占める割合が30%を超えるフレームが現れると、個別検査が終了した通知を観察指示提示部112へ出力する。
また、本実施形態に係るプローブ動作判定部109においても、第2の実施形態と同様に輝度重心を用いた判定を併用して超音波プローブ101の動作の判定を行ってもよい。
以上で説明したように、本実施形態に係る超音波診断装置では、1周期前のフレームと現在のフレームとの輝度情報グラフを比較して所定部位走査の開始や終了を判断する。これにより、心臓のように周期的な動きを有する臓器に対する検査においても超音波プローブの動作を判定することが可能となる。