以下、本発明を実施するための形態を、図面に基づき説明する。図1〜図4は、床材及びその製造方法の第1実施形態を示す。
図1に示すように、床材1は、所定の電気機器Eを内部に収容できるように構成される。ここで、電気機器Eとは、電気を用いて所定の機能を発揮する機器を全て含む。この電気機器Eには、例えば、照明機器、冷暖房機器、音響機器、センサ、床発電基板その他の各種機能を発揮する回路基板、電子機器等が該当する。本実施形態では、電気機器Eは、直方体状のケース(筐体)に収容されている。
床材1は、上層2、下層3、電気機器Eを収容する収容部4、及び電気機器Eを保護するための保護部材5を有する。
上層2は、その表面(上面)2aが床面を構成するものであり、合成樹脂によって例えば平面視四角形状に構成される。この上層2としては、タイルカーペット(TCP)、樹脂系タイルが用いられる。上層2にタイルカーペットが利用される場合は、パイル素材としてナイロン、PP、アクリル、PET、ウール等の素材を利用したタフテッド形状、織形状、ニードルパンチ形状のものが使用される。
また、バッキング材として、PVC樹脂、ポリエステル、合成ゴム、EVA、オレフィンその他の種々の材料を使用できる。また、タイルカーペットからなる上層2は、構造上、寸法を安定させるべく、ガラス繊維、ガラスネット等の材料を含んでいてもよい。この場合の上層2の厚さは、2〜10mmが望ましく、より望ましくは、2〜7mmである。
上層2に樹脂系タイルが利用される場合は、その材料として、床材として使用可能な合成樹脂ならば何でも良いが、特にPVC樹脂、ゴム、オレフィン系の熱可塑性樹脂が耐久性、不陸追随性などの観点から好適に使用される。また、その構成として、クリア層、印刷層、中間層、基層の組み合わせを含むプリント層を有するもの、チップ散布や無地のような樹脂練り込みや散布手法等の意匠表現を利用したもの、ガラス繊維やガラスネット等を利用したものが耐久性、意匠性の観点から望ましい。
この場合の上層2の厚さは、0.5〜7mmが望ましく、より望ましくは、1〜5mmである。また、上層2にPVC樹脂が使用される場合には、その硬度はショア硬度A40〜100である。また、中間層ないしは下層にガラス繊維やガラスネット等を設けることにより、上部からの圧力に対する強度が増すので床材に収容される回路を保護する効果が増す上、タイルの温度変化に対する寸法安定性を確保することが出来る。
下層3は、その裏面3bが床材1の敷設面に接触するため、その機能として、収容部4に収容された電気機器Eを保護すること、不陸追随性、接着性等が求められる。このため、下層3は、例えば軟質PVC樹脂等の熱可塑性合成樹脂によってシート状に構成されることが望ましい。下層3は、上層2と同じように平面視四角形状に形成されている。この場合の下層3の厚さは、0.1〜3mmが望ましく、より望ましくは、0.5〜2mmである。下層3の厚さが薄すぎると電気機器Eの保護が不充分となる虞があり、厚すぎると充分な不陸追随性が得られなくなる虞がある。
下層3における可塑剤の添加量は、15〜70phr程度が望ましく、より望ましくは20〜60phrである。可塑剤の添加量が少なすぎると樹脂の柔軟性が低下して被覆加工の際に収容部を形成することが困難となる上、充分な不陸追随性が得られなくなる場合もあり、逆に添加量が多すぎると樹脂が柔らかくなり過ぎて電気機器Eの保護や防水性・防湿性が不充分となる虞がある。また、フィラーの添加量は、引裂等の機械的強度特性を考慮して、20〜300phrが望ましく、より望ましくは、50〜150phrである。フィラーの添加量が少なすぎると、寸法安定性、感温性、可撓性、機械的強度が低下する虞がある。ここで云う感温性の低下とは、床材1が低温下で硬くなりすぎて、不陸追随性が悪くなる現象を意味する。特に、機械的強度が低くなり過ぎると、電気機器Eの保護や防水性・防湿性が不充分となる虞がある。逆に添加量が多すぎると樹脂硬度が高くなり、引き裂き強度などの特性が低下して収容部の形成が困難となる上、充分な不陸追随性が得られなくなる場合がある。
また、下層3をニードルパンチ、フェルト等による不織布で構成してもよい。この場合の下層3の厚さは、0.5〜7mmが望ましく、より望ましくは、1〜3mmである。下層3を不織布で構成するか、裏面3bに凹凸(エンボス)を形成することにより、施工時の位置ずれの防止効果や、接着剤や粘着剤を用いて敷設する際に接着剤の食い付き性向上効果を得ることができる。特に、接着剤の食い付き性が向上すると、下地面との密着性が向上するので、不陸追随性をさらに高めることができる。
下層3の裏面3bに、滑り止めの手段として、粘着剤や、発泡体からなる吸着材、ゴム・オレフィン系エラストマー、両面粘着テープを積層してもよい。これによって、床材1を敷設面に置いたときに、これらを接触させることで、床材1を、敷設面に対して滑ることなく固定することができる。
粘着剤、吸着材、エラストマー、両面粘着テープによる敷設は、接着剤を使用した施工に比べて、一旦下地面に貼着した床材1を剥がすことは容易であり、施工時に一旦貼った床材1の位置を修正することも非常に容易である点が優れている。この為、吸着材や粘着材による敷設は、置敷きタイルやタイルカーペットなどの施工に広く用いられている。
特に、吸着材、エラストマー、両面粘着テープによる施工は、あらかじめ床材1を製造する工場で床材1裏面に貼っておき、現場で接着剤や粘着剤を塗布・乾燥する工程を省くことができる。現場での塗布・乾燥する工程を省くことができると、作業時間と工数が大幅に削減できるので、施工効率が格段に向上する。
しかしながら、粘着剤、吸着材、エラストマー、両面粘着テープによる施工は、貼着した床材1を剥がすことは容易な反面、下地に不陸や段差がある場合、床材1がその不陸に追随できないと、踏まれた時だけ一時的に凹部に付き、その後離れるといった動きを繰り返し、粘着質の不快な床鳴りの発生原因となってしまう。本発明の構成を用いると、電気機器を収容しているにも係わらず、下地の不陸への追随性を確保することが可能なので、不快な床鳴りの発生を抑えることが可能となる。
図1に示すように、下層3は、上層2の裏面2bに接合される接合部3cと、電気機器Eの側部を被覆する被覆部3dと、床材1を設置する敷設面に接触する接触部3eとを有する。下層3の接合部3cと上層2の裏面2bが接合されることによって、下層3と上層2によって電気機器Eを収容できる収容部4が形成されている。
上記接合を行う手段は特に限定されないが、例えば、溶着、接着等を挙げることができ、特に接合力が強く、床材全体の強度を強く保つことができ、防水性・防湿性にも優れる溶着が望ましい。また、溶着による加工は、不陸追随の際の床材全体が変形や、経年劣化や衝撃などの影響により剥離する虞が少ないので、剥離による防水性・防湿性の低下が生じにくく本発明に好適に利用できる。特に、溶着による接合は、長期間に渡って安定的に高い強度で密閉性を保つことができる。このため、粉塵等が多く存在する場所又は高湿度の環境などで使用する場合であっても、周囲の粉塵、液体、湿気などが床材内部に侵入せず、収容された電気機器の信頼性を低下させることなく長期間使用することができる。また、設備が安価で、高い生産性を示す点でも、溶着により接合することが好ましい。
溶着方法としては、溶剤によるものと、加熱によるものがあるが、加工が容易な上、接合強度が高い加熱方式が本発明に好適に利用できる。上記溶着としては、高周波ウェルダー装置による溶着、高圧プレス機による溶着、超音波ウェルダー装置による溶着、ヒートシール、等の局所的に可能な加熱溶着が挙げられる。このような局所的に可能な加熱溶着は、床材内部に収容された電気機器に伝わる熱を最小限に留めて損傷することなく、高い強度で接合を行うことができる。局所的に可能な加熱溶着としては、なかでも、高周波ウェルダー装置による溶着が好ましい。高周波ウェルダー装置、超音波ウェルダー装置、又はホットプレス装置等の溶着装置を用いると、押型(金型)を用いることによって、シート状の下層3から被覆部3dを形成すると共に、下層3の接合部3cと上層2の裏面2bを熱溶着によって接合することができる。このようにして、一度の加工作業で収容部4を形成することができるので、加工作業を簡略化することができる。高周波ウェルダー装置が使用される。
高周波ウェルダー装置による加熱溶着加工とは、材料を電極間に配置して高周波電圧を加えて、分子同士の激しい摩擦によって生ずる発熱を利用して材料を加熱、押圧するものである。高周波ウェルダー装置を用いると、多様な装置が市販されているために、溶着の範囲や強度等様々な形態の溶着に対応することが容易であり、また、溶着を行いたい箇所のみを集中的に加熱することができるために、製造時に内部の電気機器が損傷することを抑制することができる。高周波ウェルダー装置としては、KW−4000T(精電舎電子工業株式会社製)、LW5500−APH(クインライト電子精工株式会社製)、VW5000(山本ビニター株式会社製)などが例示される。かかる高周波ウェルダー装置は、シート載置台の上方に、昇降可能な細長いバーを有するものである。シート載置台の上に、被溶着物であるシートを重ね合わせ、その上に、貼り合わせたい部分の形に応じた形の押型又は切型をバーに付けて、シートの下に絶縁体(シート下敷)を載置して、バーを降ろして金型にシートを接触させ、一定出力の特定周波数の高周波電流を印加して誘電溶着を行う。溶着する部分の端を切り落としたい場合は、下方外側が、一般に使われる空気物の刃(型)よりもやや鋭角になっている切り刃(型)の切型を用い、溶着のみで切断を同時に行わない場合は下方が平坦になっている押型を用いる。
加工における温度、圧力、押圧時間、周波数などの条件等は,予備試験を行って所望の強度が得られるように適宜決定すればよいが、本発明では、内部の電気装置の損傷を避けつつ所望の溶着強度を得るために、130〜160℃の温度範囲、1〜100kg/cm2の圧力範囲内の乾熱範囲で、3〜12秒熱間溶着加工を行うのが好ましい。また、電極間に高周波電圧を加える際の周波数は、10〜50MHzの範囲の周波数を用いることが好ましい。10MHz未満では、十分に加熱されず、軟化が不十分となり、50MHzを超える場合は、高周波を発振する発振機が複雑かつ大型になって装置コストが非常に高くなるので経済的に不利となる。
加えて、表面材にタイルカーペットを用いる場合、高周波ウェルダー加工と超音波ウェルダー加工を用いると溶着箇所のパイル糸の繊維形態を残して溶融し、前記溶融により生じた溶融接着層の表面に凹凸状に柄をつけ、基布に含浸させて縁部処理することも可能である。特に、高周波ウェルダー装置を用いると、高周波誘電加熱により絶縁体自体を内部発熱させることができるので好適である。パイル糸の繊維形態を残すためには、平滑な床材基板と、その上方に配置され、凹凸面で形成された金型との間に、パイル糸を有する表皮層とバッキング層とを積層したカーペットを挟んで熱溶着加工を行う。前記床材基板と、前記凹凸面で形成された金型の両方に高周波ウェルダー装置の電極を接続し、前記電極間に高周波電圧を加えると、高周波誘電加熱により表皮層のパイル糸が軟化させた後に冷却することで、カーペット表面に凹凸面で形成される立体柄を形成できる。
接合部3cは、図1、図2に示すように、下層3の周縁部に所定幅を有して形成される。接合部3cは、上層2の裏面2bに熱溶着によって接合されている。接合部3cが所定幅を有して上層2の裏面2bに接合されることで、この接合部3cの下方であって被覆部3dの外側に空間(隙間)が生じる。この空間は、床材1を施工する場合に、電気機器の配線10を収容する配線収容部12となる。
上層2の裏面2bと下層3の接合部3cは、容易に溶着できるように、同じ材料かお互いが相溶性の良い材料によって構成されるのが望ましい。そのような樹脂材料としては、例えば、アクリル系樹脂、ナイロン樹脂、ABS樹脂、ポリエステル樹脂等が選択される。また、例えば、上層2と接合部3cとの間に、接着層としてEVA系、ポリアミド系、ポリウレタン系等のホットメルト樹脂を別途用いて溶着してもよく、この場合には、接着層によって相溶性の差を緩和することができるので、上層2と下層3とを相溶性の低い異なる樹脂材料によって構成してもよい。
被覆部3dは、接合部3cと接触部3eの間の位置に形成される。この被覆部3dは、前述のように下層3を上層2に接合する際に、下層3の一部が熱によって変形することで、電気機器Eの側部を被覆するように構成することができる。この被覆部3dにより、上層2と下層3の接触部3eは、上下方向において所定の間隔で離間され、離間された空間に収容部4が形成されている。また、被覆部3dは、電気機器の側部を全周にわたって被覆できるように環状に構成されている。被覆部3dは、図1に示すように、その内面が電気機器Eに接触している。
図2は、床材1を裏面(接触部3e側)から見た底面図である。被覆部3d及び接合部3cには、配線口11が形成されている。配線口11は、被覆部3d及び接合部3cの一部を切除して設けられた開口部で、床材1の収容部4と外部が連通する構成となっている。電気機器Eに接続された配線10は、配線口11を介して床材1の内外に通過させることができる。図2に示す配線口11は、下層3の縁部に設けられた凹部であるが、このような凹部に限らず、被覆部3dを貫通する貫通孔であってもよい。貫通孔は、予め下層3に形成する他、上層2と下層3の接合した後に、被覆部3dの一部を切除することにより、形成してもよい。
接触部3eは、平面視における電気機器Eの投影面積よりも若干大きな面積で構成される。この接触部3eは、下層3の中央位置近傍に形成されている。また、この接触部3eは、その裏面が敷設面に接触し、その上面(内面)が保護部材5を介して収容部4に収容される電気機器Eを支持している。
収容部4は、上層2と下層3と被覆部3dとによって囲まれた空間である。より具体的には、下層3を上層2に接合することによって、上層2の裏面2bと、下層3の被覆部3dの内面と、接触部3eの上面(内面)とによって囲まれるようにして形成される床材1の内部空間である。
保護部材5は、電気機器Eと下層3との間に設けられ、電気機器Eに加わる衝撃を吸収する緩衝部材(クッション部材)として機能する。この保護部材5は、例えば、ウレタン、PVC樹脂、PE等の合成樹脂よる発泡体、またはニードルパンチ、フェルト等の不織布によって構成される。また、この保護部材5は、例えば電気機器Eが暖房機器のような場合に、断熱材としても機能することが可能である。
なお、電気機器Eの種類によっては、下層3によって支持されることなく、上層2に電気機器Eが固定されて支持される場合がある。この場合には、保護部材5を電気機器Eと下層3との間に設けなくともよい。この場合には、上層2に固定される電気機器Eと下層3との間には隙間を設けることが望ましい。
以下、本実施形態に係る床材1の製造方法について説明する。なお、床材1の製造方法については、上層2と下層3を熱溶着によって接合する場合を例示する。本実施形態の床材1の製造には、高周波ウェルダー装置、超音波ウェルダー装置、又はホットプレス装置等の溶着装置が使用される。溶着装置は、図3に示すように、下層3を上層2に押圧して、下層3の接合部3cを上層2に接合するための押型17を有している。この押型17は、下層3の接合部3cを押圧するとともにこの接合部3cを加熱して上層2に溶着させる溶着部18を有する。
床材1を製造するには、まず、溶着装置によって下層3を上層2に熱溶着する。上層2に下層3を接合するには、まず、図3(a)に示すように、上層2と下層3の上下位置を逆転させ、より具体的には、上層2を裏返して裏面2bを上向きにし、溶着装置の所定位置に配置する。
その後、上向きとなった上層2の裏面2bの中央部に電気機器Eを接着剤等によって固定する。このとき、電気機器Eの配線10も、下層3の配線口11を確実に通るように、配線口11に対応する上層2の裏面2bの位置に固定しておくとよい。そして、電気機器Eのケース上に保護部材5を載せる。
次に、上層2の上方に、下層3の裏面3bが上向きになるように裏返して、接触部3eに相当する部分が、上層2に載せられた電気機器Eのケースに接触するように載置する。この状態で、押型17を下降させ、押型17によって下層3の接合部3cを上層2の接合部2cに当接させる。
さらに押型17を下降させ、図3(b)に示すように、押型17の溶着部18によって下層3の接合部3cを押圧しながら加熱し、これによって接合部3cを上層2の裏面2bに熱溶着させる。下層3は、押型17によって加熱されることによって熱変形し、これによって接合部3c、被覆部3d、及び接触部3eが形成される。また、被覆部3dは、接触部3e及び接合部3cに対して所定の角度を為すように形成される。尚、被覆部3dの角度や高さなどの形状は、押型17の形状を変更することで変更することができる。
接合部3cの熱溶着が終わると、上層2と下層3が一体となり、上層2、下層3の被覆部3d及び接触部3eによって収容部4が内部に形成された床材1が形成される。
その後、配線口11はコーキング等の閉塞手段によって閉塞される。この閉塞手段としては、コーキングの他にパッキン等を使用してもよい。配線口11を閉鎖することによって、電気機器Eが密閉されるので、外部から水などの液体や湿気、埃などが浸入して悪影響を及ぼすことを防止できる。このとき、閉塞手段によって、配線口11を閉塞したときに、床材1の内部の収容部4が気密状態に維持されることが望ましい。気密状態とすることによって、収容部4に空気が密閉される。密閉された空気は、床材1上面が踏まれた際に内部から圧力に抗する作用を及ぼし、床材1の中央部の変形を軽減することができる。
以上によって内部に電気機器Eを収容した床材1が完成する。
なお、床材1は、施工場所の敷設面に並設されることで所定面積の床面を構成することができる。複数の床材1を敷設面に並設する場合には、例えば図1に示すように、配線10を収容可能な配線収容部材21に収容した状態で、この配線収容部材21を下層3の被覆部3dと接合部3cとの間に形成される配線収容部12に収容して配線作業を行う。また、並設される床材1の間、具体的には、配線収容部12の上方位置に排水部材22を設け、並設されている床材1の上層2の間に入る水を排水するように施工することも可能である。また、配線収容部12に配線を設けない場合には、図1に示すように、配線収容部12に補強のための支持枠体23を設けてもよい。
図4は、複数の床材1を並設して床面を構成した場合の平面図を示す。図4に示すように、複数(図例では4つ)の床材1が敷設面に並設されている。各床材1は、上層2の側部が他の床材1の上層2の側部と接触している。収容部4に収容される電気機器Eの側部には、配線10を接続可能なコネクタ14が設けられており、このコネクタ14及び配線10によって各床材1が直列に接続されている。また、各床材1は、配線10を介して電源15に接続されている。
以上説明した本実施形態に係る床材1及びその製造方法によれば、下層を上層2に熱溶着によって接合するだけでよいので、部品点数を極力少なくして容易に床材1を製造できるようになる。
特に、アルミニウムなどの金属製や木製の床材と本発明に係る床材1とを比較すると、金属製や木製の床材の場合には、内部に電気機器Eを収容する収容部4を形成するために、金属や木材を切削加工する必要が生じる。これに対し、本発明に係る床材1は、構成要素である上層2、下層3を合成樹脂によって構成し、しかも熱溶着による接合によってこれらを一体に成形することができるので、生産サイクルが短く、生産性が優れたものとなる。また、本発明に係る床材1は、全ての材料を同一種類の樹脂で形成することが可能なので、収容した電気機器Eを取り出しさえすればリサイクルも容易である。
また、下層3を合成樹脂によって構成することで、厚さ、硬度を適宜設定することにより、敷設面の不陸を吸収する不陸追随性に優れた床材1を容易に製造できるようになる。
また、上層2、及び、下層3によって電気機器Eを一体的に被覆することで、優れた防水性・防湿性を示し、内部の電気機器を長期にわたって保護することができるようになる。
また、床材1は、電気機器Eの配線10を収容する配線収容部12を有しているので、複数の床材1を並設して所定の施工場所に床を構成する際、各床材1の配線10が邪魔にならずに、床材1の設置及び配線作業を行うことができる。
また、収容部4には、電気機器Eを保護するための保護部材5が設けられていることから、電気機器Eに加わる衝撃を低減して、電気機器Eの破損等を防止し、長期かつ確実に電気機器Eの機能を発揮させることができる。
また、上層2と下層3とを接合した後に、配線口11を閉塞手段によって閉塞し、床材1の収容部4を気密状態に維持することによって、例えば、上層2に衝撃が加わったときに、収容部4に充満する空気がその衝撃を吸収する。このエアクッション効果により、床材1の振動や衝撃を低減し、収容部4の電気機器Eの振動の伝達を防止して保護することができる。加えて、内部に密閉した空気による断熱性、防音性も合わせて有することができる。
また、上層2、下層3を合成樹脂によって床材1を構成することにより、他の材料で構成した場合と比較して、耐摩耗性、耐衝撃、耐水性、意匠性、施工性において優れた床材1を製造でき、住宅ユースのみならず、土足によって土砂が入り込むような、オフィス、店舗、学校、病院その他の非住宅ユースの環境においても適したものとなる。
また、下層3の厚さが0.1〜3mmとすることによって、この下層3にカッター等の刃物で切れ込みを入れて下層3を容易に剥がすことができる。これによって床材1の内部の取り出した電気機器Eを収容部4から取り外して再利用することが可能になる。また、下層3に添加される可塑剤の添加量を、15〜70phrとすることにより、下層3は、刃物によって切れ込みを入れやすい状態になり、この点においても有用である。
また、上層2の厚さと、下層3の被覆部3dの上下方向の長さを調節することにより、本実施形態に係る床材1全体の厚さを既設の床材の厚さ(例えば5mm、12mm)と同じにすることができる。既設の床材の厚さと合わせることにより、既存の床面(床)の一部又は全部を本実施形態に係る床材1と交換することができ、例えば既設住宅のリフォーム等の際に特に有用である。
図5は、床材1の第2実施形態を示す概略断面図である。上述した第1実施形態では、下層3の被覆部3dが電気機器Eに接触した例を示したが、本実施形態では、被覆部3dの内面と電気機器Eの側部との間に隙間31を設けている。この隙間31により、電気機器Eの熱による寸法変動が大きい場合や、寸法誤差が大きい場合であっても、電気機器Eや被覆部3dに不要な応力が生じることなく、長期かつ確実に電気機器Eを収容することができる。なお、この隙間(間隔)31は、0.5〜5mmが望ましく、より望ましくは、0.5〜3mmである。
本実施形態のその他の構成、及びその製造方法は、第1実施形態と同様であり、本実施形態と第1実施形態とで共通する要素には共通符号を付してその説明を割愛する。本実施形態においても第1実施形態と同様の作用効果を奏する。
図6、図7は床材1の第3実施形態を示す。本実施形態は、床材1の収容部4に、補強のための枠材6が電気機器Eとともに収容されており、この点が第1実施形態と異なる。枠材6は、図7に示すように、平面視において四角形状の環状に構成されている。
この枠材6は、上層2及び下層3の両方、または一方に接合されている。接合の方法は、接合強度に優れる溶着、特に熱溶着が好ましい。そのため、溶着できるように、上層2及び下層3と同じ材料か、又は上層2及び下層3と相溶性の良い材料によって構成されるのが望ましい。枠材6の材料としては、例えば、PVC樹脂、アクリル系樹脂、ナイロン樹脂、ABS樹脂、ポリエステル樹脂等が使用される。
枠材6の厚さ(図7において符号tで示す)は、上層2に加わる荷重を支持するために十分な強度を確保できるように、そして、床材1内の電気機器Eが十分な機能を発揮できるように、3〜50mmとされるのが望ましく、より望ましくは、5〜30mm、最も望ましくは10〜25mmとされるのがよい。また、枠材6の厚みが厚すぎると不陸追随性も低下する虞があるので好ましくない。
図7に示すように、四角形状の枠材6の一辺には、収容部4に収容される電気機器Eに接続される配線10を床材1の内外に通過させるための通過口7が形成されている。この通過口7は、枠材6の上下方向における一端部(上端部)から所定の深さに形成される凹部である。通過口7は、この凹部に限らず、枠材6の厚さ方向に貫通する貫通孔であってもよい。また、通過口7は、枠材6の一辺を分断して形成される隙間であってもよい。
通過口7は、下層3の被覆部3dに形成される配線口11に電気機器Eの配線10を容易に通すことができるように、床材1を側面からみたときに、配線口11とほぼ一致するように、枠材6の一辺の長手方向の中途部に形成されている。
枠材6は、断面視四角形状に構成されるとともに、その上下方向の一端面(上面)が上層2に接合される接合面(以下「第1接合面」という)6aとなっている。また、枠材6は、その上下方向の他端面(下面)が下層3に接合される接合面(以下「第2接合面」という)6bとなっている。第1接合面6aは、溶着によって上層2の裏面2bに接合され、第2溶着面4cは、溶着によって下層3の表面(上面)3aに接合される。上層2、枠材6、及び下層3が溶着によって接合加工されることによって、一体の箱状の樹脂構造体となるので、上下方向からの圧力にも潰れにくいが、一体で変形するので一定範囲の不陸追随も可能となる。
以下、本実施形態に係る床材1の製造方法について説明する。本実施形態に係る床材1を製造するには、上述の第1実施形態と同様に、溶着装置を使用し、上層2、下層3、枠材6を熱溶着によって接合する。
具体的には、第1実施形態と同様に、上層2を裏返して、溶接装置の所定位置に配置するとともに、この上層2の裏面2bに電気機器Eを接着剤等によって固定する。
次に、枠材6を上下反転させて第1接合面6aが下向きとなるようにし、上層2の裏面2bに載せ、第1接合面6aを上層2の裏面2bに接触させる。このとき、枠材6の通過口7に電気機器Eの配線10を通過させておく。そして、溶着装置によって、枠材6の第1接合面6aを上層2の裏面2bに熱溶着させて接合する。
次に、上向きとなっている枠材6の第2接合面6bに接触するように、下層3を載せる。そして、この下層3を溶着装置の押型17によって、上層2及び枠材6に熱溶着させる。具体的には、溶着装置の押型17は、下層3の接合部3cを溶着する第1の溶着部18の他に、下層の接触部3eを枠材6の第2接合面6bに溶着する第2の溶着部を備えている。押型17は、加熱によって下層3を変形させつつ、各溶着部によって下層3を押圧することで、下層3の接合部3cを上層2の裏面2bに熱溶着し、下層3の接触部3eの一部を枠材6の第2接合面6bに熱溶着する。この熱溶着が完了した後、配線口11をコーキング等の閉塞手段によって閉塞する。
以上によって本実施形態に係る床材1が完成する。
また、上記の製造方法の他に、上層2に対する枠材6の溶着と、上層2及び枠材6に対する下層3の溶着を同時に行って、床材1を製造することも可能である。このように同時に溶着を行うと、さらに作業時間を短縮することが可能となる。
以上説明した本実施形態に係る床材及びその製造方法によれば、部品点数を極力少なくして簡易な構成にできるだけでなく、枠材6によってその強度を高めることができ、接合部3c分の強度を高め、重量物の重さに耐えることができる高強度の床材1を容易に製造することができるようになる。
本実施形態に係る床材1のその他の構成は、第1実施形態と同様であり、本実施形態と第1実施形態とで共通する要素には共通符号を付してその説明を割愛する。本実施形態においても第1実施形態と同様の作用効果を奏する。
図8は床材1の第4実施形態を示す。上述した第1実施形態では、下層3を上層2に接合して電気機器Eの側部を構成した例を示したが、本実施形態では、上層2を下層3に接合することにより床材1を構成しており、この点が第1実施形態と異なる。
具体的には、上層2は、下層3に接合される接合部2c、電気機器Eの側部を被覆する被覆部2d、及び床材1の床面を構成するための床面部2eを有する。この上層2の接合部2c及び被覆部2dは、第1実施形態における下層3の接合部3c及び被覆部3dとほぼ同じ機能及び作用を有する。また、上層2は、第1実施形態の下層3の配線口11と同様な配線口(図示略)を有する。なお、本実施形態における上層2の厚さは、タイルカーペットの場合には、2〜10mmが望ましく、より望ましくは、2〜7mmである。また、樹脂系タイルを上層2とする場合は、その厚さは、0.5〜5mmが望ましく、より望ましくは、0.5〜3mmである。本実施形態では、上層2を変形して被覆部2dを形成する必要があるので、上層2の厚さを第1の実施例と比較して薄くする必要がある。
本実施形態では、図8に示すように、接合部2cは、下層3の表面3aに熱溶着によって接合されており、上層2の周縁部に所定幅の外縁部2fを有して形成される。この外縁部2fの上方であって、被覆部2dの外側に空間(隙間)が生じる。この空間には、目地棒7を施工することができる。上記空間に目地棒7を施工することにより、床材1が敷設面に施工されて形成される床面を、全体的に溝がない平面とすることができる。また、敷設面に並設された複数の床材1を相互に強く固定することができる上、床材1の伸縮を抑制することができる。更に、上記空間を、電気機器の配線を収容する配線収容部としてもよい。
以下、本実施形態に係る床材1の製造方法について説明する。本実施形態に係る床材1を製造するには、接着剤等によって下層3の上面3aに電気機器Eを固定し、その上に、上層2を載せる。そして、溶着装置の押型17によって上層2を押圧するとともに、加熱によって上層2を変形させつつ、押型17の溶着部18を介して上層2の接合部2cを下層3の表面(上面)3aに熱溶着によって接合する。上層2を下層3に接合した後、被覆部2dの配線口をコーキング等の閉塞手段によって閉塞し、以上によって床材1が完成する。
本実施形態に係る床材1のその他の構成は、第1実施形態と同様であり、本実施形態と第1実施形態とが共通する要素には、共通符号を付してその説明を割愛する。本実施形態においても第1実施形態と同様の作用効果を奏する。
なお、本発明に係る床材1及びその製造方法は上記の実施形態に限らず、種々の変更・変形が可能である。
例えば、上記の第3実施形態では、枠材6が四角形状の環状に形成された例を示したが、これに限らず、三角形状その他の多角形状、円形、楕円形、異形形状の環状に構成することができる。
また、本発明における枠材6の「環状」とは、図7に示すように、予め無端状かつ連続状に繋がっている状態のみならず、枠材6が接合される前にその中途部が配線口11を介して分断されていても、枠材6が上層2及び下層3に接合され、配線口11が閉塞手段によって閉じられた後で環状(連続状)に接合される場合も含まれる。
したがって、例えば、四角形状の枠材6の一辺を他の三辺と別体に構成し、先に、三辺を上層2及び/又は下層3に接合した後で、残りの一辺を三辺と上層2と下層3とに接合することで、枠材6を環状に構成することも可能である。当然に、四角形状の枠材6の一辺ずつを別体にし、又は二辺ずつを別体にしてこれらを相互に接合して環状に構成するとともに、上層2及び下層3に接合することで床材1を製造してもよい。また、別体にした枠材6の一部分を上層2に接合し、他の部分を下層3に接合した後で、枠材6の部分同士を相互に接合して環状に構成するようにしてもよい。
また、上記の実施形態では、下層3の配線口11が凹部である場合を例示したが、これに限らず、この配線口11にコネクタを設けておき、床材1が構成された後に、このコネクタを介して配線作業を行うようにしてもよい。
上記の実施形態では、枠材6に1つの通過口7が形成された例を示したが、これに限らず、枠材6に枠材6の各辺に複数の通過口7を形成し、または枠材6の一辺に複数の通過口7を形成することも可能である。
上記実施形態では、配線口11を閉塞手段によって閉塞することで、収容部4を気密にした例を示したが、これに限らず、防水性が確保できれば、必ずしも気密にする必要はない。例えば、防水通気フィルムも用いて密閉加工するなどの方法も可能である。
その反対に、収容部4に圧縮空気を封入して上述したエアクッション効果をさらに向上させてもよい。このようにエアクッション効果を高めることによって、構成する材料をさらに軽量化することも可能となる。
上層2は、収容部4に収容される電気機器Eが例えば照明機器である場合には、その光を透過させるべく全体若しくは一部が透明、または半透明の透光性に優れた素材で構成されていることが望ましい。また、収容された光源がLEDなどの輝度の高いものである場合は、不透明の樹脂の場合でも一定以上の透光性が確保できていれば使用可能である。
上記の実施形態では、複数の床材1が電源15と直列に接続された例を示したが、これに限らず、用途や施工環境に応じて種々の接続手法を採用できる。
上記の実施形態では、上層2と下層3、またはこれらと枠材6を熱溶着によって一体に接合した例を示したが、これに限らず、例えば、接着剤によって、上層2と下層3、上層2と枠材6、及び枠材6と下層3と接着することでこれらを接合するようにしてもよい。
以下、本発明の実施例を示す。ただし、本発明は、下記実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
ガラス不織布層を有するナイロン製パイルで、厚さ6.5mmのタイルカーペットを上層2として用意した。これを裏返しにして、その中央部に厚さ7mmのヒーター装置を電気機器Eとして接着剤によって固定し、厚さ1.2mm、可塑剤部数40phr、フィラー量50phrの軟質PVC樹脂シートからなる下層3を上層2に載せ、出力15kWスケールの高周波ウェルダー装置を用いて、その押型17によって下層3を上層2に溶着した。
高周波ウェルダー装置の加工条件は、電流値0.2〜0.9A、溶着時間6秒、冷却20秒、プレス最大荷重49×104Pa(5kgf/cm2)である。
下層3を上層2に溶着した後、上層2の端部からはみでた下層3の部分を切除した。その後、被覆部3dの一部を切除して配線口11を形成し、電気機器Eの配線10を、配線口11を介して内外に通し、コーキング処理によって配線口11を閉塞し、以上によって実施例1に係る床材1を製造した。このようにして製造した実施例1の床材1をモルタル下地面に敷設したところ、不陸に対する追随性は良好であった。また、床材1上を歩行しても収容されたヒーター装置が破損することはなかった。
(実施例2)
上層2として、内部にガラス織布層を積層した樹脂系置き敷きフロアを用いた。この上層2は、クリア層0.3mm、プリント層0.1mm、中間層(ガラス織物を含む)1.2mm、基層1.4mmの各層より構成されており、厚さは合計3mmである。
下層3をポリエステル製で、厚さ1.2mm、綿密度150g/m2のニードルパンチ不織布により構成した。下層3の接合部3cと上層2の裏面2bとの間にEVA製ホットメルトフィルムを介在させ、これによって上層2に下層3を溶着した。このようにして製造した実施例2の床材1をモルタル下地面に敷設したところ、不陸に対する追随性は良好であった。また、床材1上を歩行しても収容されたヒーター装置が破損することはなかった。