JP5570888B2 - 空気入りタイヤ - Google Patents

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Description

本発明は空気入りタイヤ(以下、単に「タイヤ」とも称する)に関し、詳しくは、ランフラット走行が可能なランフラットタイヤとして使用される空気入りタイヤに関する。
従来より、パンク等によりタイヤの内圧が低下した状態でも、タイヤが荷重支持能力を失うことなくある程度の距離を安全に走行することが可能なタイヤ、いわゆるランフラットタイヤとして、タイヤのサイドウォール部のカーカスの内面に、比較的モジュラスが高い断面三日月状のサイド補強ゴム層を配置してサイドウォール部の剛性を向上させ、内圧低下時にサイドウォール部の撓み変形を極端に増加させることなく荷重を負担できるようにしたタイヤや、サイドウォール部を各種補強部材で補強したタイヤ等のサイド補強タイプのランフラットタイヤが各種提案されている。
しかし、従来のサイド補強タイプのランフラットタイヤは、ランフラット走行時のタイヤの撓みが大きく、また、ランフラット走行中にはサイドウォール部が高温になり、ゴムの軟化によりサイドウォール部の剛性が低下して撓みが更に大きくなるため、ランフラット走行末期の故障の主因は、上記断面三日月状のサイド補強ゴム層の割れによるものであった。そのため、従来のサイド補強タイプのランフラットタイヤには、ランフラット走行での耐久距離が短いという問題があった。
これに対し、タイヤの内圧低下時、いわゆるランフラット走行時の耐久距離を延ばすために、サイド補強ゴム層のゲージを厚くするなどしてサイドウォール部を補強すると、タイヤ重量が増加したり、通常走行時のタイヤの縦バネが上昇したりしてしまい、通常走行時の乗り心地が悪化するという問題があった。
ランフラット走行時における耐久性を向上するための技術としては、例えば、特許文献1に、ゴム成分100質量部に対してカーボンブラックを55質量部以上含み、かつ加硫ゴム物性において、100%伸張時弾性率(M100)が10MPa以上および正接損失tanδの28〜150℃におけるΣ値が6.0以下であるゴム組成物を用い、カーカス層を構成するコードを、ポリエチレンナフタレート繊維コードとした空気入りタイヤが開示されている。
特開2010−089680号公報(特許請求の範囲等)
上述のように、ランフラットタイヤに関しては、従来より種々検討がなされてきているが、近年のさらなる性能向上の要請に伴い、ランフラット耐久性と乗り心地性とを、より高度に両立させることのできる技術の確立が求められていた。
そこで本発明の目的は、上記問題を解消して、ランフラット耐久性と乗り心地性とを、より高度に両立させた空気入りタイヤを提供することにある。
本発明者らは鋭意検討した結果、サイド補強ゴム層および/またはビードフィラーに、特定の物性値を有するゴム組成物を適用するとともに、カーカスプライ、または、ベルト層の端部からビードフィラーまでの間の特定の領域のうちの少なくとも一部に特定のコード角度で配置された補強コード層に、ポリエステル繊維コードを適用することで、上記課題が解決できることを見出して、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の空気入りタイヤは、トレッド部と、該トレッド部のタイヤ幅方向両端部に連なる一対のバットレス部と、該一対のバットレス部に連なる一対のサイドウォール部およびビード部とからなり、前記一対のビード部にそれぞれ埋設された一対のビードコア間にトロイド状に延在する1枚以上のカーカスプライからなるカーカス層と、該カーカス層のクラウン部のタイヤ径方向外側に配置されたベルト層と、前記バットレス部からサイドウォール部にかけて前記カーカス層の内面に沿って配置された断面三日月状のサイド補強ゴム層と、前記ビードコアのタイヤ径方向外側に配置されたビードフィラーと、を備える空気入りタイヤにおいて、
前記サイド補強ゴム層およびビードフィラーのうちのいずれか一方または双方が、ゴム成分100質量部に対し充填材50質量部以下を含み、加硫ゴム物性としての、動歪1%、25℃における動的貯蔵弾性率E’が10MPa以下であって、かつ、損失正接tanδの28〜150℃におけるΣ値が5.0以下であるゴム組成物からなり、
前記カーカスプライ、または、前記ベルト層の端部からタイヤサイド部の最大幅部までの領域Aおよび前記ビードコア近傍から前記ビードフィラーまでの領域Bのうちの少なくとも一部にタイヤ径方向に対するコード角度が0〜85°となるよう配置された補強コード層に、ポリエステル繊維コードを用い、かつ、前記充填材が、カーボンブラックであることを特徴とするものである。
本発明においては、コードの撚り係数Rが下記式、
R=N×(0.125×D/ρ)1/2×10−3
(式中、Nはコードの撚り数(回/10cm)、Dはコードの総デシテックス数、ρはコードの密度を表す)で定義されるとき、前記ポリエステル繊維コードの撚り係数Rが0.70〜0.85であることが好ましい。
また、本発明においては、前記ポリエステル繊維コードが、繊度1200〜1800dtexのポリエステル繊維からなるフィラメント束を2本または3本撚り合わせてなることが好ましく、前記ポリエステル繊維コードが、繊度3000〜4000dtexのポリエステル繊維からなるフィラメント束を片撚りしてなることも好ましい。さらに、前記ポリエステル繊維コードの、50±5℃における1.4gf/d荷重下での伸びが2.7%以下であり、かつ、170±5℃における1.4gf/d荷重下での伸びが1.5〜6.0%であることが好ましい。
また、本発明においては、前記ベルト層のタイヤ径方向外側に、少なくとも1枚のベルト補強層が、該ベルト層の全体を覆うように配置されていることが好ましい。さらに、本発明において、前記ポリエステル繊維コードの打ち込み本数は、好適には30〜60本/50mmであり、前記ポリエステル繊維コードは、好適にはポリエチレンナフタレート(PEN)からなるものとする。
また、本発明において、前記充填材は、好適には、FEF級グレード、FF級グレード、HAF級グレード、ISAF級グレード、GPF級グレード、および、SAF級グレードからなる群から選択される少なくとも一種からなるカーボンブラックであり、より好適には、前記カーボンブラックがFEF級グレードである。
また、本発明においては、前記ゴム成分が、アミン変性共役ジエン系重合体を含むことが好ましく、前記アミン変性共役ジエン系重合体は、プロトン性アミン変性共役ジエン系重合体であることが好ましく、一級アミン変性共役ジエン系重合体であることも好ましい。さらに、前記一級アミン変性共役ジエン系重合体は、好適には、共役ジエン系重合体の活性末端に、保護化一級アミン化合物を反応させて得られたものである。さらにまた、前記共役ジエン系重合体としては、有機アルカリ金属化合物を開始剤とし、有機溶媒中で共役ジエン化合物単独、または、共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物とをアニオン重合させて得られたものであることが好ましく、この場合、前記共役ジエン系重合体としてはポリブタジエンが好適である。さらにまた、前記保護化一級アミン化合物は、好適には、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジエトキシシランである。
本発明によれば、上記構成としたことにより、ランフラット耐久性と乗り心地性とを、より高度に両立させた空気入りタイヤを実現することが可能となった。
本発明の空気入りタイヤの一例を示す幅方向断面図である。 本発明の空気入りタイヤの他の例を示す幅方向断面図である。 本発明の空気入りタイヤのさらに他の例を示す幅方向断面図である。 本発明の空気入りタイヤのさらに他の例を示す幅方向断面図である。 本発明の空気入りタイヤのさらに他の例を示す幅方向断面図である。 温度とtanδとの関係を示すグラフである。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1は、本発明の空気入りタイヤの一実施形態を示す幅方向片側断面図である。図示する本発明の空気入りタイヤは、トレッド部11と、そのタイヤ幅方向両端部に連なる一対のバットレス部12と、これに連なる一対のサイドウォール部13およびビード部14とからなる。また、図示する本発明のタイヤは、一対のビード部14にそれぞれ埋設された一対のビードコア1間にトロイド状に延在する1枚のカーカスプライからなるカーカス層2と、そのクラウン部のタイヤ径方向外側に配置された2枚のベルトからなるベルト層3と、バットレス部12からサイドウォール部13にかけてカーカス層2の内面に沿って配置された断面三日月状のサイド補強ゴム層4と、ビードコア1のタイヤ径方向外側に配置されたビードフィラー5と、を備えている。
カーカス層2を構成するカーカスプライは、図示例では1枚であるが、2枚以上であってもよく、また、その構造も特に限定されるものではない。図示するカーカスプライは、ビードコア1間にトロイド状に延在する本体部と、ビードコア1の周りでタイヤ幅方向内側から外側に向けてタイヤ径方向外方に巻上げた折り返し部とを有しており、ビードフィラー5は、このカーカスプライの本体部と折返し部との間に配置されている。
本発明においては、ベルト層3を構成するベルトの枚数についても特に制限はなく、少なくとも1枚、好適には2枚以上で配置する。ここで、ベルト層3は、通常、タイヤ赤道面に対して傾斜して延びるコードのゴム引き層、好ましくは、スチールコードのゴム引き層からなり、2枚のベルトは、各ベルトを構成するコードが互いにタイヤ赤道面を挟んで交差するように積層されてベルト層3を構成する。
また、図示する例では、ベルト層3のタイヤ径方向外側に、ベルト層3の全体を覆う1枚のベルト補強層6Aと、ベルト層3の両端部のみを覆う一対のベルト補強層6Bとが配置されている。かかるベルト補強層6A,6Bは、通常、タイヤ周方向に対し実質的に平行に配列したコードのゴム引き層からなり、いずれか一方を単独で配置しても、図示するように双方を組み合わせて配置してもよく、それぞれのベルト補強層の配置枚数についても、特に制限はない。本発明においては、ベルト補強層6A,6Bの配設は必須ではなく、他の構造および層数のベルト補強層を配設することもできる。
さらに、図示するタイヤにおいては、バットレス部12からサイドウォール部13にわたる領域のカーカス層2の外側に、補強コード層8が配置されている。本発明において、かかる補強コード層8は、ベルト層3の端部からタイヤサイド部の最大幅部までの領域A、および、ビードコア1の近傍からビードフィラー5までの領域Bのうちの少なくとも一部に、タイヤ径方向に対するコード角度が0〜85°となるよう配置することができる。
本発明において、かかる補強コード層8は、図2〜5に示すように、上記領域Aおよび領域Bのうちの適宜部分にそれぞれ別個で配置しても、領域Aおよび領域B間で延在させて配置してもよく、また、2層以上で配置しても、領域Aおよび領域B以外の部分まで延在させて配置してもよい。すなわち、本発明のタイヤとしては、例えば、補強コード層8が、ベルト層3の端部からカーカス層2の折り返し部の端部までの領域のカーカス層2の外側に配置された態様(図2)、補強コード層8が、ベルト層3の端部からカーカス層2の外側に沿って、カーカス層2の本体部とビードフィラー5との間を経てビード部14まで延在し、ビードコア1の周りで折り返され係止された態様(図3)、補強コード層8が、ベルト層3の端部からカーカス層2の外側に沿って、カーカス層2の本体部とビードフィラー5との間を経てビードコア1の近傍まで延在した態様(図4)、補強コード層8が、ベルト層3の端部からカーカス層2の折り返し部の端部までの領域のカーカス層2の外側、および、カーカス層2の本体部とビードフィラー5との間とにそれぞれ配置された態様(図5)も好適である。なお、本発明においては、補強コード層8の配設は必須ではない。
さらに、図示例のタイヤは、サイドウォール部13からビード部14にわたる領域のカーカス層2の折り返し部のタイヤ幅方向外側に断面略三角形状のリムガード7を備えるが、本発明においては、リムガード7の配設も必須ではなく、他の形状のリムガードを配設することもできる。なお、本発明において、タイヤサイド部の最大幅部とは、リムガード7がない場合のタイヤサイド部の最大幅部を意味する。
本発明の空気入りタイヤにおいては、サイド補強ゴム層4およびビードフィラー5のうちのいずれか一方または双方が、ゴム成分100質量部に対し充填材50質量部以下を含み、加硫ゴム物性としての、動歪1%、25℃における動的貯蔵弾性率E’が10MPa以下であって、かつ、損失正接tanδの28〜150℃におけるΣ値が5.0以下であるゴム組成物からなる点が重要である。本発明においては、サイド補強ゴム層4およびビードフィラー5のうちのいずれか一方または双方に、上記ゴム組成物を用いるものとしたことで、後述するようにカーカスプライまたは補強コード層8にポリエステル繊維コードを用いるものとしたことと併せて、ランフラット耐久性と乗り心地性とを高度に両立させたタイヤとすることが可能となった。
本発明に用いるゴム組成物のゴム成分としては、天然ゴム(NR)およびジエン系合成ゴムが挙げられる。ジエン系合成ゴムとしては、例えば、スチレン−ブタジエン共重合体(SBR)、ポリブタジエン(BR)、ポリイソプレン(IR)、スチレン−イソプレン共重合体(SIR)、ブチルゴム(IIR)、ハロゲン化ブチルゴム、エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体(EPDM)およびこれらの混合物が挙げられる。また、ジエン系合成ゴムの一部または全てが、多官能型変性剤、例えば、四塩化スズのような変性剤を用いることにより分岐構造を有するものとなったジエン系変性ゴムであることが、より好ましい。
本発明に係るゴム組成物においては、ゴム成分として、共役ジエン系重合体をアミン変性したアミン変性共役ジエン系重合体を含むものを好ましく用いることができる。具体的には例えば、ゴム成分中に、このようなアミン変性共役ジエン系重合体を30質量%以上、特には50質量%以上の割合で含むものが好適である。ゴム成分としてアミン変性共役ジエン系重合体を30質量部以上含むものとすることで、得られるゴム組成物が低発熱化して、タイヤに適用した際に、ランフラット走行耐久性を良好に向上することができるものとなる。
上記アミン変性共役ジエン系重合体としては、分子内に、変性用官能基として、アミン系官能基であるプロトン性アミノ基および/または脱離可能基で保護されたアミノ基を導入したものが好ましく、さらに、ケイ素原子を含む官能基を導入したものが好ましい。ケイ素原子を含む官能基としては、ケイ素原子にヒドロカルビルオキシ基および/またはヒドロキシ基が結合してなるシラン基を挙げることができる。このような変性用官能基は、共役ジエン系重合体の重合開始末端、側鎖および重合活性末端のいずれかに存在すればよいが、本発明においては、好ましくは重合末端、より好ましくは同一重合活性末端に、プロトン性アミノ基および/または脱離可能基で保護されたアミノ基と、ヒドロカルビルオキシ基および/またはヒドロキシ基が結合したケイ素原子、特に好ましくは、1または2個のヒドロカルビルオキシ基および/またはヒドロキシ基が結合したケイ素原子と、を有するものである。
上記プロトン性アミノ基としては、一級アミノ基、二級アミノ基およびそれらの塩の中から選ばれる少なくとも1種を挙げることができる。また、脱離可能基で保護されたアミノ基としては、例えば、N,N−ビス(トリヒドロカルビルシリル)アミノ基およびN−(トリヒドロカルビルシリル)イミノ基を挙げることができ、充填材の分散が良好になる観点より、好ましくはヒドロカルビル基が炭素数1〜10のアルキル基であるトリアルキルシリル基を挙げることができ、より好ましくはトリメチルシリル基を挙げることができる。脱離可能基で保護された一級アミノ基(保護化一級アミノ基ともいう)の例としては、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノ基を挙げることができ、脱離可能基で保護された二級アミノ基の例としては、N−(トリメチルシリル)イミノ基を挙げることができる。このN−(トリメチルシリル)イミノ基含有基としては、非環状イミン残基および環状イミン残基のいずれであってもよい。
上記したアミン変性共役ジエン系重合体のうち、一級アミノ基で変性された一級アミン変性共役ジエン系重合体としては、共役ジエン系重合体の活性末端に、保護化一級アミン化合物を反応させて得られた、保護化一級アミノ基で変性された一級アミン変性共役ジエン系重合体が好適である。
変性に用いる共役ジエン系重合体は、共役ジエン化合物単独重合体であってもよく、共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物との共重合体であってもよい。共役ジエン化合物としては、例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−フェニル−1,3−ブタジエン、1,3−ヘキサジエン等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、二種以上組み合わせて用いてもよいが、これらの中でも、1,3−ブタジエンが特に好ましい。また、共役ジエン化合物との共重合に用いられる芳香族ビニル化合物としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、1−ビニルナフタレン、3−ビニルトルエン、エチルビニルベンゼン、ジビニルベンゼン、4−シクロへキシルスチレン、2,4,6−トリメチルスチレン等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよいが、これらの中でも、スチレンが特に好ましい。共役ジエン系重合体としては、ポリブタジエンまたはスチレン−ブタジエン共重合体が好ましく、ポリブタジエンが特に好ましい。
共役ジエン系重合体の活性末端に、保護化一級アミンを反応させて変性させるためには、かかる共役ジエン系重合体としては、少なくとも10%のポリマー鎖がリビング性または擬似リビング性を有するものが好ましい。このようなリビング性を有する重合反応としては、有機アルカリ金属化合物を開始剤として、有機溶媒中で共役ジエン化合物単独、または、共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物とをアニオン重合させる反応か、あるいは、有機溶媒中でランタン系列希土類元素化合物を含む触媒により共役ジエン化合物単独、または、共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物とを配位アニオン重合させる反応が挙げられる。前者は、後者に比較して共役ジエン部のビニル結合含有量の高いものを得ることができるので好ましい。ビニル結合量を高くすることによって、耐熱性を向上させることができる。
上述のアニオン重合開始剤として用いられる有機アルカリ金属化合物としては、有機リチウム化合物が好ましい。有機リチウム化合物としては、特に制限はないが、ヒドロカルビルリチウムおよびリチウムアミド化合物が好ましく用いられる。このうちヒドロカルビルリチウムを用いる場合には、重合開始末端にヒドロカルビル基を有し、かつ、他方の末端が重合活性部位である共役ジエン系重合体が得られる。また、リチウムアミド化合物を用いる場合には、重合開始末端に窒素含有基を有し、他方の末端が重合活性部位である共役ジエン系重合体が得られる。
上記ヒドロカルビルリチウムとしては、炭素数2〜20のヒドロカルビル基を有するものが好ましく、例えば、エチルリチウム、n−プロピルリチウム、イソプロピルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−オクチルリチウム、n−デシルリチウム、フェニルリチウム、2−ナフチルリチウム、2−ブチルフェニルリチウム、4−フェニルブチルリチウム、シクロへキシルリチウム、シクロベンチルリチウム、ジイソプロペニルベンゼンとブチルリチウムとの反応生成物等が挙げられるが、これらの中でも、特にn−ブチルリチウムが好適である。
一方、リチウムアミド化合物としては、例えば、リチウムヘキサメチレンイミド、リチウムピロリジド、リチウムピぺリジド、リチウムへプタメチレンイミド、リチウムドデカメチレンイミド、リチウムジメチルアミド、リチウムジエチルアミド、リチウムジブチルアミド、リチウムジプロピルアミド、リチウムジへプチルアミド、リチウムジへキシルアミド、リチウムジオクチルアミド、リチウムジ−2−エチルへキシルアミド、リチウムジデシルアミド、リチウム−N−メチルピベラジド、リチウムエチルプロピルアミド、リチウムエチルブチルアミド、リチウムエチルベンジルアミド、リチウムメチルフェネチルアミド等が挙げられる。これらの中で、カーボンブラックに対する相互作用効果および重合開始能の点から、リチウムヘキサメチレンイミド、リチウムピロリジド、リチウムピぺリジド、リチウムへプタメチレンイミド、リチウムドデカメチレンイミド等の環状リチウムアミドが好ましく、特に、リチウムヘキサメチレンイミドおよびリチウムピロリジドが好適である。これらのリチウムアミド化合物は、一般に、二級アミンとリチウム化合物とから、あらかじめ調製したものを重合に使用することができるが、重合系中(in−Situ)で調製することもできる。また、この重合開始剤の使用量は、好ましくは単量体100g当たり、0.2〜20ミリモルの範囲で選定される。
上記有機リチウム化合物を重合開始剤として用い、アニオン重合によって共役ジエン系重合体を製造する方法としては、特に制限はなく、従来公知の方法を用いることができる。具体的には、反応に不活性な有機溶剤、例えば、脂肪族、脂環族、芳香族炭化水素化合物等の炭化水素系溶剤中において、共役ジエン化合物または共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物とを、リチウム化合物を重合開始剤として、所望に応じ用いられるランダマイザーの存在下でアニオン重合させることにより、目的の活性末端を有する共役ジエン系重合体が得られる。有機リチウム化合物を重合開始剤として用いた場合には、前述のランタン系列希土類元素化合物を含む触媒を用いた場合に比べ、活性末端を有する共役ジエン系重合体のみならず、活性末端を有する共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物との共重合体も効率よく得ることができる。
上記炭化水素系溶剤としては、炭素数3〜8のものが好ましく、例えば、プロパン、n−ブタン、イソブタン、n−ペンタン、イソペンタン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、プロペン、1−ブテン、イソブテン、トランス−2−ブテン、シス−2−ブテン、1−ペンテン、2−ペンテン、1−へキセン、2−へキセン、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等を挙げることができる。これらは単独で用いてもよく、二種以上を混合して用いてもよい。また、溶媒中の単量体濃度は、好ましくは5〜50質量%、より好ましくは10〜30質量%である。なお、共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物とを用いて共重合を行う場合、仕込み単量体混合物中の芳香族ビニル化合物の含量は55質量%以下の範囲が好ましい。
また、所望に応じ用いられるランダマイザーとは、共役ジエン系重合体のミクロ構造の制御、例えば、ブタジエン−スチレン共重合体におけるブタジエン部分の1,2結合、イソプレンにおける3,4結合の増加等、あるいは、共役ジエン化合物−芳香族ビニル化合物共重合体における単量体単位の組成分布の制御、例えば、ブタジエン−スチレン共重合体におけるブタジエン単位、スチレン単位のランダム化等の作用を有する化合物のことである。このランダマイザーとしては、特に制限はなく、従来ランダマイザーとして一般に使用されている公知の化合物の中から任意のものを適宜選択して用いることができる。具体的には、ジメトキシベンゼン、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、オキソラニルプロパンオリゴマー類(特に、2,2−ビス(2−テトラヒドロフリル)−プロパンを含むもの等)、トリエチルアミン、ピリジン、N−メチルモルホリン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、1,2−ジピぺリジノエタン等のエーテル類および三級アミン類等を挙げることができる。また、カリウムtert−アミレート、カリウムtert−ブトキシド等のカリウム塩類、ナトリウムtert−アミレート等のナトリウム塩類も用いることができる。これらのランダマイザーは、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。また、その使用量は、リチウム化合物1モル当たり、好ましくは0.01〜1000モル当量の範囲で選択される。
この重合反応における温度は、好ましくは0〜150℃、より好ましくは20〜130℃の範囲で選定される。重合反応は、発生圧力下で行うことができるが、通常は、単量体を実質的に液相に保つために十分な圧力で操作することが望ましい。すなわち、圧力としては、重合される個々の物質や、用いる重合媒体および重合温度にもよるが、所望に応じ、より高い圧力を用いることができ、このような圧力は、重合反応に関して不活性なガスで反応器を加圧する等の適切な方法で得られる。
本発明においては、上記のようにして得られた活性末端を有する共役ジエン系重合体の活性末端に、変性剤として、保護化一級アミンを反応させることにより、一級アミン変性共役ジエン系重合体を製造することができる。かかる保護化一級アミン化合物としては、保護化一級アミノ基を有するアルコキシシラン化合物が好適である。変性剤として用いられる保護化一級アミノ基を有するアルコキシシラン化合物としては、例えばN,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、1−トリメチルシリル−2,2−ジメトキシ−1−アザ−2−シラシクロペンタン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルトリメトキシシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルトリエトキシシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノエチルトリメトキシシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノエチルトリエトキシシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノエチルメチルジメトキシシランおよびN,N−ビス(トリメチルシリル)アミノエチルメチルジエトキシシラン等を挙げることができ、好ましくは、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジエトキシシラン、または、1−トリメチルシリル−2,2−ジメトキシ−1−アザ−2−シラシクロペンタンである。
また、変性剤としては、N−メチル−N−トリメチルシリルアミノプロピル(メチル)ジメトキシシラン、N−メチル−N−トリメチルシリルアミノプロピル(メチル)ジエトキシシラン、N−トリメチルシリル(ヘキサメチレンイミン−2−イル)プロピル(メチル)ジメトキシシラン、N−トリメチルシリル(ヘキサメチレンイミン−2−イル)プロピル(メチル)ジエトキシシラン、N−トリメチルシリル(ピロリジン−2−イル)プロピル(メチル)ジメトキシシラン、N−トリメチルシリル(ピロリジン−2−イル)プロピル(メチル)ジエトキシシラン、N−トリメチルシリル(ピペリジン−2−イル)プロピル(メチル)ジメトキシシラン、N−トリメチルシリル(ピペリジン−2−イル)プロピル(メチル)ジエトキシシラン、N−トリメチルシリル(イミダゾール−2−イル)プロピル(メチル)ジメトキシシラン、N−トリメチルシリル(イミダゾール−2−イル)プロピル(メチル)ジエトキシシラン、N−トリメチルシリル(4,5−ジヒドロイミダゾール−5−イル)プロピル(メチル)ジメトキシシラン、N−トリメチルシリル(4,5−ジヒドロイミダゾール−5−イル)プロピル(メチル)ジエトキシシランなどの保護化二級アミノ基を有するアルコキシシラン化合物;N−(1,3−ジメチルブチリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン、N−(1−メチルエチリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン、N−エチリデン−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン、N−(1−メチルプロピリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン、N−(4−N,N−ジメチルアミノベンジリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン、N−(シクロヘキシリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミンなどのイミノ基を有するアルコキシシラン化合物;3−ジメチルアミノプロピル(トリエトキシ)シラン、3−ジメチルアミノプロピル(トリメトキシ)シラン、3−ジエチルアミノプロピル(トリエトキシ)シラン、3−ジエチルアミノプロピル(トリメトキシ)シラン、2−ジメチルアミノエチル(トリエトキシ)シラン、2−ジメチルアミノエチル(トリメトキシ)シラン、3−ジメチルアミノプロピル(ジエトキシ)メチルシラン、3−ジブチルアミノプロピル(トリエトキシ)シランなどのアミノ基を有するアルコキシシラン化合物なども挙げられる。
これらの変性剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。また、この変性剤は部分縮合物であってもよい。ここで、部分縮合物とは、変性剤のSiORの一部(全部ではない)が縮合によりSiOSi結合したものをいう。
上記変性剤による変性反応において、変性剤の使用量は、好ましくは0.5〜200mmol/kg・共役ジエン系重合体であり、より好ましくは1〜100mmol/kg・共役ジエン系重合体であり、特に好ましくは2〜50mmol/kg・共役ジエン系重合体である。ここで、共役ジエン系重合体とは、製造時または製造後に、添加される老化防止剤等の添加剤を含まないポリマーのみの質量を意味する。変性剤の使用量を上記範囲にすることによって、充填材、特に、カーボンブラックの分散性に優れるとともに、加硫後の耐破壊特性および低発熱性が改良されたゴム組成物を得ることができる。なお、変性剤の添加方法は、特に制限されず、一括して添加する方法、分割して添加する方法、あるいは、連続的に添加する方法等が挙げられるが、一括して添加する方法が好ましい。また、変性剤は、重合開始末端や重合終了末端以外に、重合体主鎖や側鎖のいずれに結合させることもできるが、重合体末端からエネルギー消失を抑制して低発熱性を改良しうる点から、重合開始末端あるいは重合終了末端に導入されていることが好ましい。
本発明においては、変性剤として用いられる保護化一級アミノ基を有するアルコキシシラン化合物が関与する縮合反応を促進するために、縮合促進剤を用いることが好ましい。このような縮合促進剤としては、第三級アミノ基を含有する化合物、または周期律表(長周期型)の3族、4族、5族、12族、13族、14族および15族のうちのいずれかに属する元素を一種以上含有する有機化合物を用いることができる。また、縮合促進剤として、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ビスマス(Bi)、アルミニウム(Al)、およびスズ(Sn)からなる群から選択される少なくとも一種以上の金属を含有する、アルコキシド、カルボン酸塩、またはアセチルアセトナート錯塩を用いることが好ましい。
ここで用いる縮合促進剤は、変性反応前に添加することもできるが、変性反応の途中および/または終了後に変性反応系に添加することが好ましい。変性反応前に添加した場合、活性末端との直接反応が起こり、活性末端に保護された第一アミノ基を有するヒドロカルビロキシ基が導入されない場合がある。縮合促進剤の添加時期としては、通常、変性反応開始5分〜5時間後、好ましくは変性反応開始15分〜1時間後である。
縮合促進剤としては、具体的には、テトラメトキシチタニウム、テトラエトキシチタニウム、テトラ−n−プロポキシチタニウム、テトライソプロポキシチタニウム、テトラ−n−ブトキシチタニウム、テトラ−n−ブトキシチタニウムオリゴマー、テトラ−sec−ブトキシチタニウム、テトラ−tert−ブトキシチタニウム、テトラ(2−エチルヘキシル)チタニウム、ビス(オクタンジオレート)ビス(2−エチルヘキシル)チタニウム、テトラ(オクタンジオレート)チタニウム、チタニウムラクテート、チタニウムジプロポキシビス(トリエタノールアミネート)、チタニウムジブトキシビス(トリエタノールアミネート)、チタニウムトリブトキシステアレート、チタニウムトリプロポキシステアレート、チタニウムエチルヘキシルジオレート、チタニウムトリプロポキシアセチルアセトネート、チタニウムジプロポキシビス(アセチルアセトネート)、チタニウムトリプロポキシエチルアセトアセテート、チタニウムプロポキシアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、チタニウムトリブトキシアセチルアセトネート、チタニウムトリブトキシビス(アセチルアセトネート)、チタニウムトリブトキシエチルアセテート、チタニウムブトキシアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、チタニウムテトラキス(アセチルアセトネート)、チタニウムジアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、ビス(2−エチルヘキサノエート)チタニウムオキサイド、ビス(ラウレート)チタニウムオキサイド、ビス(ナフテネート)チタニウムオキサイド、ビス(ステアレート)チタニウムオキサイド、ビス(オレエート)チタニウムオキサイド、ビス(リノレート)チタニウムオキサイド、テトラキス(2−エチルヘキシル)チタニウム、テトラキス(ラウレート)チタニウム、テトラキス(ナフテネート)チタニウム、テトラキス(ステアレート)チタニウム、チタニウム(オレエート)チタニウム、テトラキス(リノレート)チタニウム等のチタニウムを含む化合物を挙げることができる。
また、縮合促進剤としては、例えば、トリス(2−エチルヘキサノエート)ビスマス、トリス(ラウレート)ビスマス、トリス(ナフテネート)ビスマス、トリス(ステアレート)ビスマス、トリス(オレエート)ビスマス、トリス(リノレート)ビスマス、テトラエトキシジルコニウム、テトラ−n−プロポキシジルコニウム、テトライソプロポキシジルコニウム、テトラ−n−ブトキシジルコニウム、テトラ−sec−ブトキシジルコニウム、テトラ−tert−ブトキシジルコニウム、テトラ(2−エチルヘキシル)ジルコニウム、ジルコニウムトリブトキシステアレート、ジルコニウムトリブトキシアセチルアセトネート、ジルコニウムジブトキシビス(アセチルアセトネート)、ジルコニウムトリブトキシエチルアセトアセテート、ジルコニウムブトキシアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、ジルコニウムテトラキス(アセチルアセトネート)、ジルコニウムジアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、ビス(2−エチルヘキサノエート)ジルコニウムオキサイド、ビス(ラウレート)ジルコニウムオキサイド、ビス(ナフテネート)ジルコニウムオキサイド、ビス(ステアレート)ジルコニウムオキサイド、ビス(オレエート)ジルコニウムオキサイド、ビス(リノレート)ジルコニウムオキサイド、テトラキス(2−エチルヘキシル)ジルコニウム、テトラキス(ラウレート)ジルコニウム、テトラキス(ナフテネート)ジルコニウム、テトラキス(ステアレート)ジルコニウム、テトラキス(オレエート)ジルコニウム、テトラキス(リノレート)ジルコニウム等を挙げることができる。
また、トリエトキシアルミニウム、トリ−n−プロポキシアルミニウム、トリイソプロポキシアルミニウム、トリ−n−ブトキシアルミニウム、トリ−sec−ブトキシアルミニウム、トリ−tert−ブトキシアルミニウム、トリ(2−エチルヘキシル)アルミニウム、アルミニウムジブトキシステアレート、アルミニウムジブトキシアセチルアセトネート、アルミニウムブトキシビス(アセチルアセトネート)、アルミニウムジブトキシエチルアセトアセテート、アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、トリス(2−エチルヘキサノエート)アルミニウム、トリス(ラウレート)アルミニウム、トリス(ナフテネート)アルミニウム、トリス(ステアレート)アルミニウム、トリス(オレエート)アルミニウム、トリス(リノレート)アルミニウム等を挙げることができる。
上述の縮合促進剤のうちでも、チタン化合物が好ましく、チタン金属のアルコキシド、チタン金属のカルボン酸塩、またはチタン金属のアセチルアセトナート錯塩が特に好ましい。この縮合促進剤の使用量としては、上記化合物のモル数が、反応系内に存在するヒドロカルビロキシ基総量に対するモル比として、0.1〜10となることが好ましく、0.5〜5となることがより好ましい。縮合促進剤の使用量を上記範囲にすることによって、縮合反応が効率よく進行するものとなる。
本発明における縮合反応は、上述の縮合促進剤と、水蒸気または水の存在下で進行する。水蒸気の存在下の場合として、スチームストリッピングによる脱溶媒処理が挙げられ、スチームストリッピング中に縮合反応が進行する。また、縮合反応を水溶液中で行ってもよく、縮合反応温度は85〜180℃が好ましく、より好ましくは100〜170℃、特に好ましくは110〜150℃である。縮合反応時の温度を上記範囲にすることによって、縮合反応を効率よく進行、完結させることができ、得られる変性共役ジエン系重合体の経時変化によるポリマーの老化反応等に起因する品質の低下等を抑えることができる。
なお、縮合反応時間は、通常、5分〜10時間、好ましくは15分〜5時間程度である。また、縮合反応時の反応系の圧力は、通常、0.01〜20MPa、好ましくは0.05〜10MPaである。縮合反応を水溶液中で行う場合の形式については特に制限はなく、バッチ式反応器を用いても、多段連続式反応器等の装置を用いて連続式で行ってもよい。また、この縮合反応と脱溶媒を同時に行ってもよい。
本発明に係る変性共役ジエン系重合体の変性剤由来の一級アミノ基は、上述のように脱保護処理を行うことによって生成する。上述したスチームストリッピング等の水蒸気を用いる脱溶媒処理以外の脱保護処理の好適な具体例を以下に詳述する。すなわち、まず、一級アミノ基上の保護基を加水分解することによって、遊離した一級アミノ基に変換する。これを脱溶媒処理することにより、一級アミノ基を有する変性共役ジエン系重合体を得ることができる。なお、この縮合処理を含む段階から、脱溶媒して乾燥ポリマーとするまでのいずれかの段階において、必要に応じて変性剤由来の保護された一級アミノ基の脱保護処理を行うことができる。
このようにして得られたアミン変性共役ジエン系重合体は、ムーニー粘度(ML1+4,100℃)が、好ましくは10〜150、より好ましくは15〜100である。ムーニー粘度が、10未満である場合は耐破壊特性を始めとするゴム物性が十分に得られず、150を超える場合は作業性が悪く、配合剤とともに混練することが困難となる。また、上記アミン変性共役ジエン系重合体を配合した未加硫ゴム組成物のムーニ−粘度(ML1+4,130℃)は、好ましくは10〜150、より好ましくは30〜100である。
また、上記アミン変性共役ジエン系重合体は、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)、すなわち、分子量分布(Mw/Mn)が、1〜3であることが好ましく、1.1〜2.7であることがより好ましい。アミン変性共役ジエン系重合体の分子量分布(Mw/Mn)を上記範囲内にすることで、アミン変性共役ジエン系重合体をゴム組成物に配合しても、ゴム組成物の作業性を低下させることがなく、混練が容易となって、ゴム組成物の物性を十分に向上させることができる。
さらに、上記アミン変性共役ジエン系重合体は、数平均分子量(Mn)が100,000〜500,000であることが好ましく、150,000〜300,000であることがより好ましい。アミン変性共役ジエン系重合体の数平均分子量を上記範囲内にすることで、加硫物の弾性率の低下やヒステリシスロスの上昇を抑えて、優れた耐破壊特性が得られるとともに、アミン変性共役ジエン系重合体を含むゴム組成物の優れた混練作業性が得られる。なお、上記アミン変性共役ジエン系重合体は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明に係るゴム組成物においては、充填材を、上述のゴム成分100質量部に対し、50質量部以下の割合で配合する。充填材の量が50質量部を超えると、充分な低発熱性および低弾性等の効果が発揮されず、得られるゴム組成物の加硫ゴム物性において、動歪1%、25℃における動的貯蔵弾性率E’が10MPa以下とならない場合がある。また、充填材の量が多すぎると、得られるゴム組成物の加硫ゴム物性において、正接損失tanδの28℃〜150℃におけるΣ値が5.0以下とならない場合がある。したがって、充填材の好ましい量は50〜30質量部であり、より好ましくは45〜40質量部である。充填材の量が30質量部以下になると、ゴムの破壊強度が低下して、ランフラット耐久性が損なわれるおそれがある。
上記充填材としては、カーボンブラック、シリカ、および、下記一般式(I)、
nM・xSiO・zHO (I)
(式中、Mは、アルミニウム、マグネシウム、チタン、カルシウムおよびジルコニウムから選ばれる金属、これらの金属の酸化物または水酸化物、それらの水和物、および、これらの金属の炭酸塩の中から選ばれる少なくとも一種であり、n、x、yおよびzは、それぞれ1〜5の整数、0〜10の整数、2〜5の整数および0〜10の整数である)で表される無機充填材の中から選ばれる少なくとも一種を好適に用いることができる。中でも、充填材としては、カーボンブラックおよびシリカが好ましく、特にカーボンブラックが好ましい。
ここで、カーボンブラックとしては、得られるゴム組成物の加硫ゴム物性が、上記本発明に係る条件を満たすために、例えば、FEF級グレード、FF級グレード、HAF級グレード、ISAF級グレード、GPF級グレード、および、SAF級グレードなどの種々のグレードのカーボンブラックを、単独で、または、適宜混合して使用することができる。特に、低発熱を達成する上で、FEF級グレードが好適である。また、シリカとしては、特に限定されないが、湿式シリカ、乾式シリカ、コロイダルシリカが好ましい。これらは、単独で、または適宜混合して使用することができる。
上記一般式(I)で表される無機充填材は、具体的には、γ−アルミナ、α−アルミ
ナ等のアルミナ(Al)、ベーマイト、ダイアスポア等のアルミナ一水和物(Al・HO)、ギブサイト、バイヤライト等の水酸化アルミニウム[Al(OH)]、炭酸アルミニウム[Al(CO]、水酸化マグネシウム[Mg(OH)]、酸化マグネシウム(MgO)、炭酸マグネシウム(MgCO)、タルク(3MgO・4SiO・HO)、アタパルジャイト(5MgO・8SiO・9HO)、チタン白(TiO)、チタン黒(TiO2n−1)、酸化カルシウム(CaO)、水酸化カルシウム[Ca(OH)]、酸化アルミニウムマグネシウム(MgO・Al)、クレー(Al・2SiO)、カオリン(Al・2SiO・2HO)、パイロフィライト(Al・4SiO・HO)、ベントナイト(Al・4SiO・2HO)、ケイ酸アルミニウム(AlSiO、Al・3SiO・5HO等)、ケイ酸マグネシウム(MgSiO、MgSiO等)、ケイ酸カルシウム(Ca・SiO等)、ケイ酸アルミニウムカルシウム(Al・CaO・2SiO等)、ケイ酸マグネシウムカルシウム(CaMgSiO)、炭酸カルシウム(CaCO)、酸化ジルコニウム(ZrO)、水酸化ジルコニウム[ZrO(OH)・nHO]、炭酸ジルコニウム[Zr(CO]、各種ゼオライトのように電荷を補正する水素、アルカリ金属またはアルカリ土類金属を含む結晶性アルミノケイ酸塩などが使用できる。また、一般式(I)で表される無機充填材としては、Mがアルミニウム金属、アルミニウムの酸化物または水酸化物、それらの水和物、および、アルミニウムの炭酸塩から選ばれる少なくとも一種のものが好ましい。
また、本発明に係るゴム組成物には、本発明の効果が損なわれない範囲で、所望に応じ、通常ゴム工業界で用いられる各種薬品、例えば、加硫剤、加硫促進剤、プロセス油、老化防止剤、スコーチ防止剤、亜鉛華、ステアリン酸などを含有させることができる。
加硫剤としては、硫黄等が挙げられ、その使用量は、ゴム成分100質量部に対し、硫黄分として0.1〜10.0質量部が好ましく、より好ましくは1.0〜5.0質量部である。加硫剤の使用量が、0.1質量部未満では加硫ゴムの破壊強度、耐摩耗性、低発熱性が低下するおそれがあり、一方、10.0質量部を超えるとゴム弾性が失われる原因となる。
加硫促進剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、M(2−メルカプトベンゾチアゾール)、DM(ジベンゾチアジルジスルフィド)、CZ(N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド)等のチアゾール系、DPG(ジフェニルグアニジン)等のグアニジン系、あるいはTOT(テトラキス(2−エチルへキシル)チウラムジスルフィド)等のチウラム系の加硫促進剤等を挙げることができ、その使用量は、ゴム成分100質量部に対し、0.1〜5.0質量部が好ましく、より好ましくは0.2〜3.0質量部である。
軟化剤として用いられるプロセス油としては、例えば、パラフィン系、ナフテン系、アロマチック系等を挙げることができる。このうち、引張強度、耐摩耗性を重視する用途にはアロマチック系が、ヒステリシスロス、低温特性を重視する用途にはナフテン系またはパラフィン系が用いられる。その使用量は、ゴム成分100質量部に対し、0〜100質量部が好ましく、100質量部以下であれば、加硫ゴムの引張強度や低発熱性(低燃費性)が悪化することを抑制できる。
老化防止剤としては、例えば、3C(N−イソプロピル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、6C(N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン)、AW(6−エトキシ−2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン)、ジフェニルアミンとアセトンとの高温縮合物等を挙げることができる。その使用量は、ゴム成分100質量部に対し、0.1〜5.0質量部が好ましく、より好ましくは0.3〜3.0質量部である。
本発明に係るゴム組成物は、加硫ゴム物性として、動歪1%、25℃における動的貯蔵弾性率E’が10MPa以下であることを要する。この動的貯蔵弾性率E’が10MPaを超えると、通常走行時においてタイヤが撓みにくくなり、乗り心地性が低下する。上記動的貯蔵弾性率E’は、好適には8MPa以上であり、その上限には特に制限はない。なお、上記動的貯蔵弾性率E’は、下記の方法で測定した値である。
<動的貯蔵弾性率E’の測定方法>
ゴム組成物を、160℃、12分間の条件で加硫して得られた厚さ2mmのスラブシートから、幅5mmおよび長さ40mmのシートを切り出し、試料とする。この試料について、上島製作所(株)製のスペクトロメーターを用い、チャック間距離10mm、初期歪200μm、動的歪1%、周波数52Hz、測定温度25℃の条件で測定する。
また、本発明に係るゴム組成物は、加硫ゴム物性として、正接損失tanδの28℃〜150℃におけるΣ値(Σtanδ(28〜150℃))が5.0以下であることを要する。このtanδのΣ値が5.0を超えると、ランフラット走行時のタイヤの発熱が大きく、タイヤのランフラット走行耐久性が低下する。Σtanδ(28〜150℃)の下限には特に制限はないが、通常、3程度である。なお、上記Σtanδ(28〜150℃)は、下記の方法で測定した値である。
<Σtanδ(28〜150℃)の測定方法>
ゴム組成物を、160℃、12分間の条件で加硫処理して得られた厚さ2mmのスラブシートから、幅5mm、長さ40mmのシートを切り出し、試料とする。この試料について、上島製作所(株)製のスペクトロメーターを用い、チャック間距離10mm、初期歪200μm、動的歪1%、周波数52Hz、測定開始温度25〜200℃の測定条件にて正接損失tanδを測定し、図6に示すように、温度とtanδとの関係をグラフ化し、斜線部分の面積を求め、その値をΣtanδ(28〜150℃)とする。
本発明に係るゴム組成物は、上記配合処方により、バンバリーミキサー、ロール、インターナルミキサー等の混練機を用いて混練りすることによって得られ、成形加工後、加硫を行って、本発明のタイヤのサイド補強層4および/またはビードフィラー5として用いられる。
本発明のタイヤにおいては、上記ゴム組成物に係る条件に加えて、カーカスプライ、または、前述の領域Aおよび領域Bのうちの少なくとも一部に配置される補強コード層8に、ポリエステル繊維コードを用いることが必要であり、これにより、本発明の所期の効果を得ることができるものである。ポリエステル繊維コードを構成するポリエステル繊維としては、例えば、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)等が挙げられ、好適には、PENを用いる。
本発明においては、上記ポリエステル繊維コードとして、繊度1200〜1800dtexのポリエステル繊維からなるフィラメント束を2本または3本、特には2本撚り合わせてなるものを用いることが好ましい。例えば、ポリエステル繊維からなるフィラメント束に下撚りをかけ、次いで、これを複数本合わせて、逆方向に上撚りをかけることで、双撚り構造の撚糸コードとして得ることができる。ポリエステル繊維コードに用いるフィラメント束の繊度が1200dtex未満では、弾性率および熱収縮応力ともに不十分であり、1800dtexを超えると、コード径が太くなって、打ち込みを密にできない。
また、上記ポリエステル繊維コードとしては、繊度3000〜4000dtexのポリエステル繊維からなるフィラメント束を片撚りしてなるものを用いることも好ましい。例えば、ポリエステル繊維からなるフィラメント束1本に下撚りまたは上撚りをかけることで、片撚り構造の撚糸コードとして得ることができる。ポリエステル繊維コードに用いるフィラメント束の繊度が3000dtex未満では、弾性率および熱収縮応力ともに不十分であり、4000dtexを超えると、コード径が太くなって、打ち込みを密にできない。
また、コードの撚り係数Rを下記式、
R=N×(0.125×D/ρ)1/2×10−3
(式中、Nはコードの撚り数(回/10cm)、Dはコードの総デシテックス数、ρはコードの密度を表す)で定義するとき、上記ポリエステル繊維コードの撚り係数Rが0.70〜0.85であることが、高弾性率と高温接着性とを達成する点で好ましい。撚り係数Rが0.70未満では、弾性率を向上させることができる反面、接着性が低下するため、ランフラット耐久性に劣るおそれがある。一方、撚り係数Rが0.85を超えると、接着性には有利に働くものの、弾性率が低下してしまうため、タイヤのサイドウォールのたわみが大きくなり、ランフラット耐久性が悪化するおそれがある。
さらに、上記ポリエステル繊維コードとしては、50±5℃における1.4gf/d荷重下での伸びが2.7%以下であって、かつ、170±5℃における1.4gf/d荷重下での伸びが1.5〜6.0%であるものを用いることが好ましい。本発明のタイヤにおいては、サイドウォール部内側に高硬度のサイド補強ゴム層4を配置しているので、タイヤ全体の剛性がサイド補強ゴム層4を備えないタイヤに比べて高くなり、通常走行時において突起等を乗り越した場合にロードノイズの点から好ましくない。そこで、上記のように弾性率が比較的大きい物性を有するコードを用いることによって、ロードノイズを改良することができる。
さらにまた、上記ポリエステル繊維コードの打ち込み本数は、30〜60本/50mmとすることが好ましい。打ち込み本数が、30本/50mm未満であると、有機繊維コード量が少なくなって、作業性が悪化し、60本/50mmを超えると、有機繊維コード間の距離が短くなって、コード接触の可能性が生じ、いずれも好ましくない。
本発明の空気入りタイヤは、上記ゴム組成物をサイド補強ゴム層4および/またはビードフィラー5に用いるとともに、カーカスプライまたは補強コード層8に上記ポリエステル繊維コードを適用して、常法に従い製造することができる。なお、本発明の空気入りタイヤにおいて、タイヤ内に充填する気体としては、通常の或いは酸素分圧を変えた空気、又は窒素等の不活性ガスを用いることができる。
以下、本発明を、実施例を用いてより詳細に説明する。
<製造例1:一級アミン変性ポリブタジエン>
(1)ポリブタジエンの製造
窒素置換された5Lオートクレーブに、窒素下、シクロヘキサン1.4kg、1,3−ブタジエン250g、2,2−ジテトラヒドロフリルプロパン(0.0285mmol)シクロヘキサン溶液として注入し、これに2.85mmolのn−ブチルリチウム(BuLi)を加えた後、攪拌装置を備えた50℃温水浴中で4.5時間重合を行った。1,3−ブタジエンの反応転化率は、ほぼ100%であった。この重合体溶液を、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール1.3gを含むメタノール溶液に抜き取り重合を停止させた後、スチームストリッピングにより脱溶媒し、110℃のロールで乾燥して、ポリブタジエンを得た。得られたポリブタジエンについてミクロ構造(ビニル結合量)、重量平均分子量(Mw)および分子量分布(Mw/Mn)を測定した。その結果、ビニル結合量は14%、Mwは150、000、Mw/Mnは1.1であった。
(2)一級アミン変性ポリブタジエンの製造
上記(1)で得られた重合体溶液を、重合触媒を失活させることなく、温度50℃に保ち、一級アミノ基が保護されたN,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジエトキシシラン1129mg(3.364mmol)を加えて、変性反応を15分間行った。最後に、反応後の重合体溶液に、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾールを添加した。次いで、スチームストリッピングにより脱溶媒および保護された一級アミノ基の脱保護を行い、110℃に調温された熱ロールによりゴムを乾燥し、一級アミン変性ポリブタジエンを得た。得られた変性ポリブタジエンについて、ミクロ構造(ビニル結合量)、重量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn)および第一アミノ基含有量を測定した。その結果、ビニル結合量は14%、Mwは150、000、Mw/Mnは1.2、一級アミノ基含有量は4.0mmol/kgであった。
<製造例2:二級アミン変性ポリブタジエンの製造>
変性剤として、二級アミンであるN−メチル−N−(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジエトキシシランを用いて、上記(2)に基づいて変性反応を行い、二級アミン変性ポリブタジエンを得た。
<製造例3:三級アミン変性ポリブタジエンの製造>
変性剤として、DMAPES:3−ジメチルアミノプロピル(ジエトキシ)メチルシランを用いて上記(2)に基づいて変性反応を行い、三級アミン変性ポリブタジエンを得た。
<製造例4:スズ変性ポリブタジエンの製造>
乾燥し、窒素置換された800ミリリットルの耐圧ガラス容器に、ブタジエンのシクロヘキサン溶液(16%)をブタジエン単量体50gとなるように注入し、これにジテトラヒドロフリルプロパン0.44ミリモルを加え、さらにn−ブチルリチウム(BuLi)0.48ミリモルを加えた後、50℃で1.5時間重合を行った。重合転化率はほぼ100%であった。この重合系に四塩化スズを0.43ミリモルを加えた後、さらに50℃で30分間変性反応を行った。この後、重合系に、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール(BHT)のイソプロパノール5重量%溶液0.5ミリリットルを加えて反応の停止を行い、さらに、常法に従い乾燥することにより、四塩化スズ変性ポリブタジエンゴムを得た。変性後のWnは570,000であった。
なお、上記諸特性は下記の方法に従って測定した。
<ミクロ構造の分析法>
赤外法(モレロ法)により、ビニル結合含有量(%)を測定した。
<数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)および分子量分布(Mw/Mn)の測定>
GPC(東ソー製、HLC−8020)により、検出器として屈折計を用いて測定し、単分散ポリスチレンを標準としたポリスチレン換算で示した。なお、カラムはGMHXL(東ソー製)で、溶離液はテトラヒドロフランである。
<一級アミノ基含有量(mmol/kg)の測定>
まず、重合体をトルエンに溶解した後、大量のメタノール中で沈殿させることにより重合体に結合していないアミノ基含有化合物をゴムから分離した後、乾燥した。本処理を施した重合体を試料として、JIS K 7237に記載された「全アミン価試験方法」により全アミノ基含有量を定量した。続いて、前記処理を施した重合体を試料として「アセチルアセトンブロックド法」により二級アミノ基および三級アミノ基の含有量を定量した。試料を溶解させる溶媒には、o−ニトロトルエンを使用、アセチルアセトンを添加し、過塩素酢酸溶液で電位差滴定を行った。全アミノ基含有量から二級アミノ基および三級アミノ基の含有量を引いて一級アミノ基含有量(mmol)を求め、分析に使用したポリマー質量で割ることにより、重合体に結合した一級アミノ基含有量(mmol/kg)を求めた。
<実施例1〜9および比較例1〜7>
下記の表1中に示す配合組成を有するゴム組成物を調製し、それぞれ加硫ゴム物性性としての、動的貯蔵弾性率E’および正接損失tanδの28℃〜150℃におけるΣ値(Σtanδ(28〜150℃)を、前述した方法に従って測定した。
Figure 0005570888
1)天然ゴム:TSR20
2)未変性ポリブタジエン:製造例1(1)ポリブタジエンの製造で得られたもの
3)一級アミン変性ポリブタジエン:製造例1で得られたもの
4)二級アミン変性ポリブタジエン:製造例2で得られたもの
5)三級アミン変性ポリブタジエン:製造例3で得られたもの
6)スズ変性ポリブタジエン:製造例4で得られたもの
7)カーボンブラック:FEF(N550)、旭カーボン社製「旭#60」
8)プロセスオイル:アロマティックオイル、富士興産社製「アロマックス#3」
9)老化防止剤6C:N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、大内新興化学工業社製「ノクラック6C」
10)加硫促進剤DZ:N,N’−ジシクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド、大内新興化学工業社製「ノクセラーDZ」
11)加硫促進剤TOT:テトラキス(2−エチルへキシル)チウラムジスルフィド、大内新興化学工業社製「ノクセラーTOT−N」
12)サイド補強ゴム層の最大厚みを示す。
これらのゴム組成物をサイド補強ゴム層4およびビードフィラー5に適用するとともに、下記表2〜4中に示す条件に従い補強コード層8にポリエステル繊維コードを適用して、タイヤサイズ215/45ZR17の乗用車用ラジアルタイヤを常法に従って製造した。各ポリエステル繊維コードの条件を、下記の表5中に示す。カーカスプライには、セルロース系繊維のレーヨンからなるコードを用いた。また、ベルト層3は、タイヤ赤道面に対し±25度で傾斜して延びる2枚の交錯スチールコードのゴム引き層からなるものとした。さらに、ベルト層3のタイヤ径方向外側には、ベルト補強層として、ベルト層3の全体を覆う1枚のベルト補強層6Aと、ベルト層3の両端部のみを覆う一対のベルト補強層6Bとを配置した。ベルト補強層6A,6Bはいずれも、タイヤ周方向に対し実質的に平行に配列した有機繊維からなるコードのゴム引き層からなるものとした。
得られた各供試タイヤについて、以下に従いランフラット耐久性および乗り心地性を評価した。それらの結果を、下記表2〜4中に併せて示す。
<ランフラット耐久性>
各供試タイヤを常圧でリム組みし、内圧230kPaを封入してから38℃の室内中に24時間放置後、バルブのコアを抜き、内圧を大気圧として、荷重4.17kN(425kg)、速度89km/h、室内温度38℃の条件でドラム走行テストを行った。各供試タイヤの故障発生までの走行距離を測定し、比較例1の走行距離を100として、以下の式に基づき、指数表示した。指数が大きい程、ランフラット耐久性が良好である。
ランフラット耐久性(指数)=(供試タイヤの走行距離/比較例1のタイヤの走行距離)×100
<乗り心地性>
各供試タイヤを乗用車に装着し、専門のドライバー2名により乗り心地性のフィーリングテストを行い、1−10の評点をつけ、その平均値を求めた。その値が大きいほど乗り心地性は良好である。なお、乗り心地の合格ラインは7以上とした。
Figure 0005570888
Figure 0005570888
Figure 0005570888
Figure 0005570888
上記表中に示すように、サイド補強ゴム層およびビードフィラーに特定の物性を満足するゴム組成物を適用するとともに、補強コード層にポリエステル繊維コードを用いた各実施例の供試タイヤにおいては、比較例に比して、乗り心地性とランフラット耐久性とがいずれも向上されていることが確かめられた。
<実施例10〜18および比較例8〜14>
下記表6〜8中に示す条件に従いカーカスプライにポリエステル繊維コードを適用した以外は実施例1等と同様にして、タイヤサイズ215/45ZR17の乗用車用ラジアルタイヤを常法に従って製造した。補強コード層は設けなかった。
得られた各供試タイヤについて、実施例1等と同様にしてランフラット耐久性および乗り心地性を評価した。指数表示の基準には、比較例8を用いた。その結果を、下記表6〜8中に併せて示す。
Figure 0005570888
Figure 0005570888
Figure 0005570888
上記表中に示すように、サイド補強ゴム層およびビードフィラーに特定の物性を満足するゴム組成物を適用するとともに、カーカスプライにポリエステル繊維コードを用いた各実施例の供試タイヤにおいては、比較例に比して、乗り心地性とランフラット耐久性とがいずれも向上されていることが確かめられた。
1 ビードコア
2 カーカス層
3 ベルト層
4 サイド補強ゴム層
5 ビードフィラー
6A,6B ベルト補強層
7 リムガード
8 補強コード層
11 トレッド部
12 バットレス部
13 サイドウォール部
14 ビード部

Claims (17)

  1. トレッド部と、該トレッド部のタイヤ幅方向両端部に連なる一対のバットレス部と、該一対のバットレス部に連なる一対のサイドウォール部およびビード部とからなり、前記一対のビード部にそれぞれ埋設された一対のビードコア間にトロイド状に延在する1枚以上のカーカスプライからなるカーカス層と、該カーカス層のクラウン部のタイヤ径方向外側に配置されたベルト層と、前記バットレス部からサイドウォール部にかけて前記カーカス層の内面に沿って配置された断面三日月状のサイド補強ゴム層と、前記ビードコアのタイヤ径方向外側に配置されたビードフィラーと、を備える空気入りタイヤにおいて、
    前記サイド補強ゴム層およびビードフィラーのうちのいずれか一方または双方が、ゴム成分100質量部に対し充填材50質量部以下を含み、加硫ゴム物性としての、動歪1%、25℃における動的貯蔵弾性率E’が10MPa以下であって、かつ、損失正接tanδの28〜150℃におけるΣ値が5.0以下であるゴム組成物からなり、
    前記カーカスプライ、または、前記ベルト層の端部からタイヤサイド部の最大幅部までの領域Aおよび前記ビードコア近傍から前記ビードフィラーまでの領域Bのうちの少なくとも一部にタイヤ径方向に対するコード角度が0〜85°となるよう配置された補強コード層に、ポリエステル繊維コードを用い、かつ、前記充填材がカーボンブラックであることを特徴とする空気入りタイヤ。
  2. コードの撚り係数Rが下記式、
    R=N×(0.125×D/ρ)1/2×10−3
    (式中、Nはコードの撚り数(回/10cm)、Dはコードの総デシテックス数、ρはコードの密度を表す)で定義されるとき、前記ポリエステル繊維コードの撚り係数Rが0.70〜0.85である請求項1記載の空気入りタイヤ。
  3. 前記ポリエステル繊維コードが、繊度1200〜1800dtexのポリエステル繊維からなるフィラメント束を2本または3本撚り合わせてなる請求項1または2記載の空気入りタイヤ。
  4. 前記ポリエステル繊維コードが、繊度3000〜4000dtexのポリエステル繊維からなるフィラメント束を片撚りしてなる請求項1または2記載の空気入りタイヤ。
  5. 前記ポリエステル繊維コードの、50±5℃における1.4gf/d荷重下での伸びが2.7%以下であり、かつ、170±5℃における1.4gf/d荷重下での伸びが1.5〜6.0%である請求項1〜4のうちいずれか一項記載の空気入りタイヤ。
  6. 前記ベルト層のタイヤ径方向外側に、少なくとも1枚のベルト補強層が、該ベルト層の全体を覆うように配置されている請求項1〜5のうちいずれか一項記載の空気入りタイヤ。
  7. 前記ポリエステル繊維コードの打ち込み本数が、30〜60本/50mmである請求項1〜6のうちいずれか一項記載の空気入りタイヤ。
  8. 前記ポリエステル繊維コードが、ポリエチレンナフタレートからなる請求項1〜7のうちいずれか一項記載の空気入りタイヤ。
  9. 前記充填材が、FEF級グレード、FF級グレード、HAF級グレード、ISAF級グレード、GPF級グレード、および、SAF級グレードからなる群から選択される少なくとも一種からなるカーボンブラックである請求項1〜8のうちいずれか一項記載の空気入りタイヤ。
  10. 前記カーボンブラックがFEF級グレードである請求項9記載の空気入りタイヤ。
  11. 前記ゴム成分が、アミン変性共役ジエン系重合体を含む請求項1〜10のうちいずれか一項記載の空気入りタイヤ。
  12. 前記アミン変性共役ジエン系重合体が、プロトン性アミン変性共役ジエン系重合体である請求項11記載の空気入りタイヤ。
  13. 前記アミン変性共役ジエン系重合体が、一級アミン変性共役ジエン系重合体である請求項11または12記載の空気入りタイヤ。
  14. 前記一級アミン変性共役ジエン系重合体が、共役ジエン系重合体の活性末端に、保護化一級アミン化合物を反応させて得られたものである請求項13記載の空気入りタイヤ。
  15. 前記共役ジエン系重合体が、有機アルカリ金属化合物を開始剤とし、有機溶媒中で共役ジエン化合物単独、または、共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物とをアニオン重合させて得られたものである請求項14記載の空気入りタイヤ。
  16. 前記共役ジエン系重合体がポリブタジエンである請求項15記載の空気入りタイヤ。
  17. 前記保護化一級アミン化合物が、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジエトキシシランである請求項14〜16のうちいずれか一項記載の空気入りタイヤ。
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