JP5567796B2 - 流体噴射装置 - Google Patents

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Description

本発明は、フリップフロップ流を発生させるネットワーク流路を利用した流体噴射装置に関する。
流体機器や燃焼装置などの各種工業用機器においては、機器性能の効率を向上させるため、噴流拡散の促進を行う場合がある。
例えば、噴流の能動的制御に関して、特許文献1に示されるように、フラップ型マイクロ電磁アクチュエータを用いて噴流拡散を促進させた装置がある。その他に、受動及び能動的制御に関係したものとしては、非特許文献1に示されるように、柔らかいフィンを持つ円管から流出する噴流特性について研究されたものや、特許文献2に示されるように、自励振動を用いた流体噴射装置も見られる。
特許文献2では、方向切換用装置を用いることなく、複数の交差流路によって、一定周期で複数条の流体の噴出方向が同調して一斉に流れの方向が切り換わり、交差流れを生じる装置が開示されている(以下、この様な流体の交差流れをフリップフロップ流という)。
特開2008−100131号公報 特開平8−309249号公報
「種々の長さの柔らかいフィンをもつ円管から流出する噴流の流動特性」;中島正弘他3名;可視化情報学会論文集,Vol.27,No.12,p.105−112,2007
特許文献2に開示の流体噴射装置では、装置から噴射される個々の流脈が整然と振動するのみとなっているため、噴流拡散・攪拌等に適用した場合の効果がさほど期待できなかった。
本発明は、上記事項に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、流出部から噴射される個々の噴流の流れに変化をつけることによって、噴流拡散・攪拌効果を高めることが可能な流体噴射装置を提供することにある。
本発明に係る流体噴射装置は、流入部と流出部を有し、両天板と両側壁で囲われた管内に複数の分流壁体を介して一群の平行流路と他の一群の平行流路を同一面上で合流・分流させてフリップフロップ流を生じさせるネットワーク流路が形成された流体噴射装置であって、前記側壁の前記分流壁体が近接する位置に凹部が形成され、前記凹部は、平面視半円形状であり、前記凹部の内部に旋回渦を生じさせるためのものである、ことを特徴とする。
また、前記凹部は、前記流入部から4列目以降に配置された前記分流壁体が近接する位置に形成されていることが好ましい。
また、それぞれの前記側壁に前記凹部が対向して形成されていることが好ましい。
本発明に係る流体噴射装置は、側壁に凹部が形成されており、ネットワーク流路内に流体を流すと、この凹部にて旋回渦が発生する。そして、この旋回渦によって凹部内の圧力が下がり、圧力の低下による吸引作用によって凹部に隣接した流路を流れる流体が引き寄せられる。この結果ネットワーク流路内で発現するフリップフロップ流の変化が強まり、流出部から噴射される個々の噴流の流れに変化を生じさせることができる。
本発明の実施の形態に係る流体噴射装置の部分透視斜視図である。 図1の流体噴射装置のX−X’の断面図である。 (A)、(B)は流出部からの流体の噴射方向を示す部分断面図である。 実施例に用いた実験装置の概略構成を示す平面図(A)、及び、側面図(B)である。 流体噴射装置の流出部から流出される水の様子を示す平面写真である。 流体噴射装置の流出部から流出される水の様子を示す平面写真(A)、(B)、(C)及び側面写真(D)である。 流体噴射装置の凹部における渦の様子を示す平面写真(A)、(B)である。 流体噴射装置の流出部から流出された空気の水平断面における平均等流速分布図(A)、平均等渦度分布図(B)、流れ方向(x軸方向)の平均流速Uに関しての等dU/dxの分布図(C)、流れの横断方向(y軸方向)の平均流速Vに関しての等dV/dyの分布図(D)である。 流体噴射装置の流出部から流出された空気の水平断面における平均等流速分布図(A)、平均等渦度分布図(B)、流れ方向(x軸方向)の平均流速Uに関しての等dU/dxの分布図(C)、流れの横断方向(y軸方向)の平均流速Vに関しての等dV/dyの分布図(D)である。
本実施の形態に係る流体噴射装置1は、図1の部分透視斜視図、及び、図2の断面図に示すように、天板11a、11bと側壁12a、12bで囲まれた管内に配置された複数の分流壁体13と、複数の分流壁体13を介して一群の平行流路と他の一群の平行流路が同一平面上で交差したネットワーク流路14と、側壁12a、12bに形成された凹部15a、15b、15c、15dと、流入部16と、流出部17とから構成される。
2つの天板11a、11bは、それぞれ同一寸法の矩形の平板であり、対向配置された2つの側壁12a、12bによって接続されており、それらによって流入部16及び流出部17を有する管が形成される。
この管内には、菱形角柱状の分流壁体13が同一面上に千鳥格子状に計39個配置されている。分流壁体13は、流入部16から流出部17にかけて6列設けられており、流入部16から1列目、3列目、5列目ではそれぞれ6つ、2列目、4列目、6列目ではそれぞれ7つ、一定の間隔を空けて直線上に配置されている。流入部16から6列目の分流壁体13の流出部17側は、流体の流出を妨げないよう切除されている。それぞれの分流壁体13の上端及び下端は天板11a、11bに当接しているため、一群の平行流路と他の一群の平行流路が同一面上で交差するネットワーク流路14が形成される。
流入部16から流入した流体はネットワーク流路14内を通り、分流壁体13により分流・合流を繰り返し流出部17から排出される。一定の流速を越えるとフリップフロップ流が生じる。
そして、図3(A)、図3(B)中の矢印にて示すように、周期的に流出方向が切り換わりつつ、流出部17から流体が排出される。
ここで、フリップフロップ流について説明する。ネットワーク流路14内での流体の流れにより、分流壁体13後方側面で剥離渦が生じる。一方の後方側面で剥離渦が生じると、圧力変化を生じ、他方の後方側面でも剥離渦が生じる。分流壁体13の両後方側面では交互に剥離渦が生じ、それぞれの分流壁体13後方側面まわりでカルマン渦列振動が生じる。ネットワーク流路14は交差しているため、分流壁体13後方側面まわりではそれらの剥離渦が合体するがごとくに振動し(渦の連結振動)、主流の交差流れの方向が変化する。ネットワーク流路14の交差角が20〜60度のとき、上・下流側の二列分の分流壁体13まわりに発生するカルマン渦列振動が同調し、流脈への付着現象であるコアンダ効果の発現とともに、フリップフロップ流と呼ばれる交差流れが生じるものと推測される。
そして、それぞれの側壁12a、12bには、流入部16から4列目に配置されている分流壁体13が近接する位置に凹部15a、15cが、また、流入部16から6列目に配置されている分流壁体13が近接する位置に凹部15b、15dがそれぞれ形成されている。
ネットワーク流路14内に流体を流すと、この凹部15a、15b、15c、15dでは旋回渦が発現し、これに伴って凹部15a、15b、15c、15dでの圧力が下がる。この圧力低下による吸引作用によって、隣接する噴流が強く引き寄せられる。この凹部15a、15b、15c、15d内における旋回渦による吸引作用により、フリップフロップ流の交差流れの変化がより大きくなる結果、凹部15a、15b、15c、15dが形成されていない場合に比べ、流出部17から噴射される個々の噴流に変化を生じさせることができる。
凹部15a、15cは、流入部16から4列目以降にある分流壁体13が隣接する位置に形成されることが好ましい。流入部16から4列目の分流壁体13を起点としてフリップフロップ流が発現するためである。
また、凹部15a、15c、また、凹部15b、15dは、それぞれ対向して双方の側壁12a、12bに配置される。
また、凹部15a、15b、15c、15dの形状について、本実施の形態では矩形に形成されているが、凹部15a、15b、15c、15d内の圧力が低下し、フリップフロップ流の交差流れの変化がより大きくなる限り、特に限定されず、半円形状等、種々の形態であってもよい。
なお、流入部16と流出部17の間に、分流壁体13を4列以上設けることが好ましい。分流壁体13が2列ではフリップフロップ流が発現せず、いずれかの側壁12a、12b側に流脈が片寄ったままの流れになる。3列以上になると流脈のフリップフロップ流が現れる場合もあるが不安定であり、4列以上ではフリップフロップ流が明確に現れる。
なお、合流・分流分岐流路断面(列方向に配置された分流壁体13同士が近接する流路断面)は正方形であることが好ましい。合流・分流分岐流路断面が正方形の場合には安定してフリップフロップ流が生じるが、長方形のような縦横比が大きい場合にはフリップフロップ流の発現が不安定となる。
また、ネットワーク流路14の長さ、断面積、間隔等について特に制限はなく、流体噴射装置1の使用目的に応じて適宜選択すればよい。
また、本実施の形態において、菱形角柱状の分流壁体13を用いているが、これに限定されるものではなく、フリップフロップ流が発現する限り、円柱等、他の形態であってもよい。
また、流体として、種々の液体や気体を用いることができる。
このように、流体噴射装置1は、流出部17から噴射される個々の噴流に変化が生じるので、液体や気体等の混合、攪拌、拡散、伝熱、洗浄等に関する装置等に応用することが可能である。また、機械的可動部がないので、動力源を必要とする流体等の混合・拡散装置等に比して簡素な構成を実現している。
図1及び図2に示す流体噴射装置(以下、流体噴射装置A1と記す)を作製し、フリップフロップ流の変化について検証した。
作製した流体噴射装置A1の寸法等は以下の通りである。流体噴射装置A1の流入部16から流出部17までが112mm、側壁12aと側壁12bとの間隔は80mmである。分流壁体13は、対称軸の一方の長さが18.7mm、他方の長さが5mm、高さが5mmの菱形角柱である。流入部16から1列目、3列目、5列目に配置された分流壁体13は、それぞれ直線上に6個、流入部16から2列目、4列目、6列目に配置された分流壁体13は、それぞれ直線上に7個、5mm間隔を開けて配置されている。
流体噴射装置A1を用い、図4(A)の平面図、図4(B)の側面図に示すように実験装置を構成した。流入部16に流入させる水の流速を一定にするために助走管路21を取り付け、ポンプ22から助走管路21を通じて流体噴射装置A1の流入部16に水を流入し、フリップフロップ流を発現させた。
また、参考例として、凹部を設けなかった以外、全て上記の流体噴射装置A1と同寸法の流体噴射装置(以下、流体噴射装置B1と記す)を作製して、同様に水を流入し、フリップフロップ流を発現させた。
そして、それぞれの流体噴射装置A1、B1の流出部から噴射される水の様子を撮影した。図5は、流体噴射装置B1の流出部から噴射された水の様子を示す平面写真である。また、図6(A)〜(C)は、流体噴射装置A1の流出部から噴射された水の様子を示す平面写真、図6(D)は、側面写真である。
側壁に凹部が形成されていない流体噴射装置B1では、図5に示すように、流脈が左右に振動するとともに、流れの捻りを伴って横断方向の中央部に集まるような形状になっていることが観察された。
一方、側壁に凹部が形成されている流体噴射装置A1では、図6(A)〜(D)に示すように、流脈の分布が流体噴射装置B1に比べて、大きく異なっている。図6(A)では、y軸方向の両端付近の流脈がはっきりと分かれる場合が見られ、中央部付近では、個々の噴流の水しぶきが分散され、飛び散ったような形の流脈の広がりが見られる。また、図6(B)、(C)では、中央部付近やy軸方向の両端付近に流脈分布の切れ目も見られる。その他、図6(D)の側面から撮影した図では、流脈のx軸方向へのねじりも大きくなっていることがわかる。
このように、流体噴射装置A1では、フリップフロップ流の振動とともに、側壁に形成された凹部の作用によって、流体噴射装置B1よりも左右への噴流の分散が大きく現れており、噴流のねじりと乱れが大きくなっていると考えられる。
続いて、流体噴射装置A1の流入部から、粒径200〜350μm程度のハイポーラス・ポリマー粒子を混入した水を流入して、凹部付近の流跡を上面から撮影した。
撮影した一部の写真を図7(A)、(B)に示す。図7(A)、(B)には、それぞれの凹部付近の流跡が示され、噴流方向も流跡から確認でき、分流壁体の剥離領域やリアエッジ付近に渦の形成が見られる。また、図7(B)における凹部では、写真ではやや不鮮明ながら旋回渦が見られ、この旋回渦よって凹部での圧力が下がり、ネットワーク流路の交差部における吸引作用が凹部にも発生し、凹部に隣接する噴流が凹部寄りに引きつけられていることが考えられる。
このように凹部での吸引作用の発生により、流出噴流の流れの変化をつけることができ、流出噴流場の分散や乱れが大きくなった流れの変化も生じさせることができていると考えられる。
続いて、上記の装置にて、水の代わりに空気を流入して流出部から噴射される空気について、以下の検証を行った。流体噴射装置A1、B1の流入部から送風機で空気を流入し、側壁に形成された凹部の有無による流出噴流の流れの変化を計測した。
図8に、凹部が形成された流体噴射装置A1の流出部から流出された空気の水平断面における平均等流速分布図(図8(A))、平均等渦度分布図(図8(B))、流れ方向(x軸方向)の平均流速Uに関しての等dU/dxの分布図(図8(C))、流れの横断方向(y軸方向)の平均流速Vに関しての等dV/dyの分布図(図8(D))を示す。
また、図9に、凹部が形成されていない流体噴射装置B1の流出部から流出された空気の水平断面における平均等流速分布図(図9(A))、平均等渦度分布図(図9(B))、流れ方向(x軸方向)の平均流速Uに関しての等dU/dxの分布図(図9(C))、流れの横断方向(y軸方向)の平均流速Vに関しての等dV/dyの分布図(図9(D))を示す。
まず、図8(A)、(B)と図9(A)、(B)に示す水平断面での結果においては、凹部の有無に関係なく、フリップフロップ流の発現によって流出噴流場の中央縦断線(y=0)を軸として大凡対称な流れを示している。
しかし、凹部の有無によって、以下のように流れが大きく異なることが明らかとなっている。すなわち、凹部が形成されていない流体噴射装置B1では、y軸方向の位置での流速差や渦度値の違いは小さくなっているのに対して、流体噴射装置A1では、中央部の流速に比べてy軸方向に向かうほど流速が早くなり、それに伴って渦度もy軸方向に正負の値が現れ、流れの回転性がはっきりと見られるのが明らかとなっている。
また、流体噴射装置A1では、流れに向かった縦断方向での流速値の減衰が大きく、流速勾配が大きくなった流れの形となっている。そのことにも関係し、dU/dxやdV/dyによって示されている流れ方向(x軸方向)及びその横断方向(y軸方向)での流速の変化率の結果を見てみると、流体噴射装置B1に比して流体噴射装置A1の流速の変化率の値が大きくなっている。
特に、流体噴射装置A1でのdV/dyで示される流れの横断方向での流速の変化については、同じ箇所で比較をすると、上流側(流出部付近)では、流体噴射装置A1は流体噴射装置B1よりも3倍以上、またx=60mm付近の中央部でも2倍程度も大きくなっている。
これらの結果からも、側壁に凹部が形成されている場合の流れの変化が大きくなっていることが理解できる。
以上の実験結果から、水を流入させた場合に関しては、流体噴射装置の側壁に設けた凹部内には、旋回渦による吸引作用が発生し、その流出噴流流脈では、フリップフロップ流れの振動とともに、流出部から流出する噴流は、側壁側への分散が大きく現れ、噴流のねじりと乱れが大きくなっている。
また、空気噴流に関しては、凹部が形成された場合の方が流れの変化が大きいこと、渦度値の変化も大きくなっていること、及び扁平な流れの回転を示していることがわかる。
このように流体として水及び空気を通じた結果から、凹部が形成された場合の分流壁体を介するネットワーク流路からの流出噴流場における流れの変化が大きく現れることを示すことができ、さらに個々の噴流の乱れ及び分散等を大きくすることができることを立証した。
これらの結果を混合・撹拌や洗浄などに関係する流体工学機器、例えばマナーブースなどによる花粉の飛散等を抑制する機器等へ応用することによって、効果的な機器の開発につながる。
また、化粧品・食品加工ライン、樹脂・溶剤混合ライン、塗料加工ライン、農業用灌水ライン、風呂用炭酸ガス混合装置、廃油・排水のエマルジョン化装置、水に気泡と洗剤を溶解した水洗トイレ等のあらゆる流体の混合作業が必要な箇所での応用も期待される。
1 流体噴射装置
A1 流体噴射装置
B1 流体噴射装置
11a 天板
11b 天板
12a 側壁
12b 側壁
13 分流壁体
14 ネットワーク流路
15a 凹部
15b 凹部
15c 凹部
15d 凹部
16 流入部
17 流出部
21 助走管路
22 ポンプ

Claims (3)

  1. 流入部と流出部を有し、両天板と両側壁で囲われた管内に複数の分流壁体を介して一群の平行流路と他の一群の平行流路を同一面上で合流・分流させてフリップフロップ流を生じさせるネットワーク流路が形成された流体噴射装置であって、
    前記側壁の前記分流壁体が近接する位置に凹部が形成され、
    前記凹部は、平面視半円形状であり、前記凹部の内部に旋回渦を生じさせるためのものである、ことを特徴とする流体噴射装置。
  2. 前記凹部は、前記流入部から4列目以降に配置された前記分流壁体が近接する位置に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の流体噴射装置。
  3. それぞれの前記側壁に前記凹部が対向して形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の流体噴射装置。
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