JP5567057B2 - コンクリート微小ひび割れセンサ - Google Patents
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このようなコンクリートのひび割れ検査は、トンネルばかりでなく、橋梁など、各種のコンクリート構造物において、同様に実施されている。
特許文献1に開示された遠隔監視システムは、コンクリートのひび割れの成長を監視するために、光ファイバをひび割れ部分に装着する精密な現場工事と施工後の光ファイバの姿勢保持を必要とし、また、高度な計測器を必要とする。また、観察期間中に新しくひび割れが発現した場合などには、新しいひび割れを監視対象に含ませるためのセンサ再施工が容易でない。
このフィルムあるいはシートは、被検体表面で発生した1mm程度の変位を白化あるいは変色により表示することができるが、金属表面に現れた変位部分に対応して観察しやすい白化部分あるいは変色部分として表示するもので、実際の変位幅より大きく表示するものではない。
また、たとえば非特許文献1に記載された従来技術でも、数mm程度のひび割れ幅までしか検知できなかった。
特に、道路橋として用いられるプレストレスト・コンクリート(PC)橋では、PC鋼材により鉄筋コンクリートにプレストレスを掛けており、PC鋼材に変状が生じて進展するとPC鋼材の破断による落橋などの事故を来す場合がある。PC鋼材の初期変状はコンクリートの微小なひび割れとして現れることがあるので、PC鋼材の変状を見つけて予防保全に資するために、0.2〜0.5mm程度の微小なひび割れを検出し易くする微小ひび割れセンサが求められる。
本発明のコンクリート微小ひび割れセンサは、繊維含有プラスチックシートを接着剤で対象物表面に貼付しておいて、繊維含有プラスチックシートの白化または変色(以下、変色という)部分を観察することによりひび割れの拡大量を推定することができる。
ひび割れセンサのひび割れ拡大量に対する感度は、繊維含有プラスチックシートの弾性率、繊維基材とマトリックス樹脂の界面性状、などにより変化する。
特に、繊維含有プラスチックシートにおける繊維基材の体積含有率を35%から50%の範囲になるようにすると、ひび割れ幅が0.2mm程度のときにもセンサにおけるひび割れに当接する部分がほぼ2cm2水準の面積に亘り変色して見易く表示する。なお、繊維含有プラスチックシートの引張弾性率は1.6〜6.0GPa程度など、小さい方が変色し易くセンサの感度が高い。
図1から図8は、本発明の1実施例に係るコンクリート微小ひび割れセンサを説明する図面である。
また、繊維含有プラスチックシートの幅は、扱いやすくかつひび割れが発生したときに繊維含有プラスチックシートがひび割れに対応して伸びる程度の、たとえば20mmなど、適宜の値が選ばれる。
繊維含有プラスチックシートは、適当な幅の長いテープをコイル状に巻いた形で、あるいは、適当な長さの短冊として提供してもよい。
図1に示す通り、コンクリート2の表面を研磨し汚れを除去した上に、エポキシ樹脂系の接着剤13によりコンクリート微小ひび割れセンサ10の繊維含有プラスチックシート11を貼る。図1では、繊維含有プラスチックシート11がテープ状に形成されている。なお、エポキシ樹脂系接着剤13に黒や赤など濃い色の顔料を加えて着色しておくと、繊維含有プラスチックシート11に濃色の背景が形成されシート自体の変色部分が際だって観察しやすくなる。
PC橋3は、適宜の密度に組み上げた鉄筋32にコンクリート33を流し込んで形成する鉄筋コンクリートに緊張を与えるPC鋼材34を加えて、大きな荷重に耐えてより長い支間長を可能にしたものである。
さらに、PC橋ではPC鋼材の変状が進展すると落橋などの事故のおそれが生じるのでPC鋼材の変状把握が重要な管理事項となるが、PC鋼材の初期変状がコンクリートの微小なひび割れとして現れることがあるので、微小なひび割れを検出しかつその進展状況を監視することが望まれる。
本実施例のコンクリート微小ひび割れセンサ10は、ひび割れ発生が見込まれる部分やひび割れが発生すると問題が生じる位置に掛かるように、長尺の繊維含有プラスチックシートを貼付して、目視で微小ひび割れの発生を検知し、さらに見つけた微小ひび割れの程度を記録しておいてひび割れ幅の進展を監視することにより、プレストレスト・コンクリートにおける異常を早期に発見して予防的な保全を実施することができる。
本実施例のコンクリート微小ひび割れセンサ10は、たとえば、箱桁35の内壁36におけるひび割れが発生し易い部分やひび割れが危険をもたらす部分などに貼付することが好ましい。
微小なひび割れに感度を持たせるためには、繊維基材とマトリックス樹脂の間で伸び特性が異なりかつ適度な接合性を持っていて、剥離しやすくまた剥離により白化しやすい組み合わせを選択することが肝要である。
この試験方法は、引張試験機を用いてひび割れを形成させることにより、コンクリート表面に貼付したコンクリート微小ひび割れセンサのひび割れの発生とひび割れ幅の拡大に伴う変色状況を再現させるものである。
供試体40を、モルタル板41にコンクリート微小ひび割れセンサ10の繊維含有プラスチックシートを貼付して作製し、供試体40の両端部を引張試験機のチャック45で把持して引っ張ることにより、モルタル板41に正確な寸法のひび割れを生成させて、ひび割れ幅の拡大に伴うセンサの変色状況を観察する。
引張試験機の引張速度を0.05mm/min程度の低速にして、モルタル板41の伸びに応じたセンサの変色状況を観察する。
モルタル板41に貼付したコンクリート微小ひび割れセンサ10は、引張試験機で引っ張ることにより切り欠き42の部分に発生したひび割れ43が所定の大きさに達すると、ひび割れ43を挟んだ領域に白化あるいは変色した変色部分15を生成する。
なお、変色部分15の面積は、ひび割れ43の拡大幅に応じて広がる傾向があり、経験的にひび割れの拡大幅と変色部分の面積を対応させることにより、変色部分15を観察してひび割れ幅の進展状況を推定することも可能である。
図6(a)に示すように、ひび割れが進展していないモルタル板の表面に貼付したコンクリート微小ひび割れセンサ10は、変色部分が全く現れない。
しかし、ひび割れ46の幅が拡大すると、ひび割れ46を挟んだモルタル板表面に変位が生じるので、この変位がエポキシ樹脂系接着剤を介してコンクリート微小ひび割れセンサ10の繊維含有プラスチックシートに伝搬して、マトリックス樹脂と繊維基材に引張り応力が印加される。引張り応力が印加されると、引張弾性率が異なる繊維基材とマトリックス樹脂が接合面で剥がれて断層面や細かい傷を生成するため入射光が乱反射して、いわゆる変色現象が発生する。
図6(b)は、引張試験機で供試体を引っ張ることにより、切り欠き部分に0.2mm幅のひび割れ46が発生して、ひび割れを挟んで変色部分15が生じたところを示す。
図6(c)は、引張試験機で供試体を引っ張って、ひび割れ46の幅が0.5mmになるまで拡げたときに、ひび割れの幅拡大量に対応して変色部分15の領域が広がった状況を示す。変色部分15の大きさからひび割れ幅の進展状況が容易に把握できる。
このように、PC橋などにコンクリート微小ひび割れセンサ10を貼付して監視することにより、プレストレスト・コンクリートにおいて荷重が解除された後でも最大荷重時におけるひび割れ開度を推定することができる。なお、地震など一過性の負荷の影響についても、本実施例のコンクリート微小ひび割れセンサ10の履歴保存性能を利用して推定することができる。
コンクリート微小ひび割れセンサの変色は、センサを構成する繊維基材とマトリックス樹脂の界面の破壊により進行すると考えられる。このため、センサの弾性率と検知感度の間に相関性があると推定される。そこで、各種組み合わせにおいて、モルタル板にセンサを貼付した供試体を静的引張試験に掛けて応力−変位相関図を作製して、センサの弾性率を算出し、これと検出感度との関係についても確認した。
図に抜粋して示したセンサの構成は、繊維含有プラスチックシートの繊維基材としてガラス繊維、ビニロン、高強度ポリエチレンの3種から、また、マトリックス樹脂として弾性率の高い(ハード)不飽和ポリエステルと弾性率の低い(ソフト)不飽和ポリエステルの2種から選んで組み合わせたものである。
また、マトリックス樹脂として用いた不飽和ポリエステル樹脂は、非特許文献1においても可用性が高いと評価されたものである。
なお、モルタル板と繊維含有プラスチックシートの接着にはエポキシ樹脂系接着剤を使用している。
さらに、右欄のグラフは、横軸にセンサの弾性率を取ってプロットしたものであるが、プロット点の形を、ひび割れが0.5mm拡大した時に繊維含有プラスチックシートにおける変色部分が広範囲に明確に変色した場合◎と、大きな範囲でないが変色が明確に認められた場合○と、変色がわずかに観察できた場合△とに分けて、ひび割れ幅拡大現象の見やすさを段階的に表現したものである。
また、このような微小なひび割れに対して好適に使用できるセンサの繊維含有プラスチックシートは、弾性率が6.0GPaと1.6GPaの間にあって、13.3GPaから15.1GPaの値を示す繊維含有プラスチックシートは余りよい性能を示さなかった。
したがって、本実施例のコンクリート微小ひび割れセンサにおける繊維含有プラスチックシートについても、繊維基材の含有量によりひび割れ進展状態の検知感度が変化する可能性がある。
試験では、ビニロン樹脂の体積含有率(Vf)をパラメータとして上記と同じ形態の供試体を作製し、引張試験機に掛けて引張速度0.05mm/minで引張力を加えて変色し始めたときのひび割れ幅を見て、ひび割れ幅拡大に対するセンサの感度を確認した。
試験結果を見ると、体積含有率(Vf)が小さいものではひび割れ拡大量が比較的大きくないと変色が生じないが、Vfが大きいほど検出感度が向上し、35%で0.3mm程度のひび割れ拡大量を検知し、Vfが45%程度になると0.2mm程度のひび割れ幅拡大量で十分見易い大きさの変色部分が発生する。
このように、0.2mm程度のひび割れ幅拡大を検出したいというセンサの検出感度に対する要求は、繊維基材であるビニロン樹脂の体積含有率(Vf)が35%から50%の範囲であるときに満たされることが分かった。
特に、プレストレスト・コンクリートを用いたPC橋などの構造物において、荷重が掛かった状態におけるひび割れの拡大幅を記憶するので、これを観察して予防保全に役立たせることが可能である。
3 PC橋
10 コンクリート微小ひび割れセンサ
11 繊維含有プラスチックシート
13 エポキシ樹脂系接着剤
15 変色部分
17 コンクリート微小ひび割れセンサ
21 ひび割れ
31 路面
32 鉄筋
33 コンクリート
34 PC鋼材
35 箱桁
36 内壁
37 外壁
40 供試体
41 モルタル板
42 切り欠き
43 ひび割れ
45 チャック
46 ひび割れ
Claims (3)
- 繊維方向をセンサ軸に対し30°から60°傾けて引き揃えて配置した複数本の連続繊維をシート状に保形した高強度ポリエチレンまたはビニロンを繊維基材とし不飽和ポリエステルをマトリックスとして薄板状に形成する繊維含有プラスチックシートであって前記繊維基材の体積含有率が35%から50%の範囲にある繊維含有プラスチックシートと、該繊維含有プラスチックシートを測定対象のコンクリート表面に貼付するエポキシ樹脂系接着剤とで構成し、コンクリートのひび割れ幅の拡大に対応して前記繊維含有プラスチックシートが伸張するときに前記繊維基材と前記マトリックス樹脂の伸びが相違することにより生じる白化部分の面積に基づいて該ひび割れの成長を検出するようにしたことを特徴とするコンクリート微小ひび割れセンサ。
- 前記繊維含有プラスチックシートの引張弾性率が1.6〜6.0GPaの範囲であることを特徴とする請求項1記載のコンクリート微小ひび割れセンサ。
- 前記接着剤は着色して前記繊維含有プラスチックシートにおける変色を目立たせるようにしたことを特徴とする請求項1または2記載のコンクリート微小ひび割れセンサ。
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