JP5565546B2 - 親油性分子で表面修飾された温度応答性磁性微粒子および該微粒子と両親媒性分子を含むリポソーム様構造体を形成する組成物 - Google Patents
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体液(血液など)には、さまざまな病態を反映する分子マーカーが存在するが、その存在量は微量で、体液中の脂質成分と結合している可能性がある。
また、神経細胞障害の指標となる分子マーカーは神経細胞から分泌後、血液脳関門を通過して血管に出現することが予想されている。一般に疎水性タンパク質は、血液脳関門を通過しやすく、脂質との相互作用を有する可能性も高いことから、脂質と疎水性タンパク質とが結合した脂質結合物質を解析することは、疾病の発見のために有効と考えられる。
このように、脂質結合物質の解析は重要であるが、体液中の脂質結合物質は解析が難しく、選択的に血漿などに含まれる微量の脂質結合物質を安定かつ効果的に濃縮するための方法が要望されていた。
また、MLVではない単層膜リポソーム(SUV、LUV)は、保存過程で融合やMLV形成を起こしうる不安定さを持っている。
水溶液の状態で下限臨界溶液温度(以下「LCST」と記述する。)を示すポリイソプロピルアクリルアミドや上限臨界溶液温度(以下「UCST」と記述する。)を示すポリグリシンアミドなどの温度応答性高分子を、粒径が100〜200nm程度のデキストランなどの多価アルコールとマグネタイトを主成分とした磁性微粒子に固定した温度応答性磁性微粒子が知られている(例えば、特許文献1、非特許文献1および2参照)。
そして、前記温度応答性磁性微粒子に抗体、抗原などを固定化した温度応答性磁性微粒子を用い、種々の生体分子や微生物の分離を行う試みがなされており、ミクロンサイズの粒子と比較して、より高い結合容量や反応性を示すことが知られている(例えば、特許文献2参照)。
しかしながら、ここで開示されているのは主に水溶性の物質の検出であり、脂質結合物質の検出に関しては開示されていない。
また、ここで開示されているのは主にカチオン性官能基を介してウィルス等のリン脂質ベシクルを分離する方法であって、脂質二重膜を利用して脂質結合物質の検出や分離を行うことは開示されていない。
一方、有機溶媒に分散する磁性微粒子を任意の脂質と混合し、その後、有機溶媒を乾燥し、次に再び、水系の溶媒に分散する過程で磁性微粒子の表面上に脂質ドメインを構築するような磁性微粒子単体は存在せず、脂質結合物質を効率よく検出する方法はほとんど知られていない。
(1)鉄酸化物とポリアルキレンイミンとの複合体からなる磁性微粒子であり、該磁性微粒子の表面が温度応答性高分子および親油性分子で修飾された、磁性微粒子(以下、本発明の磁性微粒子ともよぶ)。
(2)前記鉄酸化物が、マグネタイト、フェライト、ヘマタイトおよびゲーサイトから選
択される少なくとも一種類である、(1)の磁性微粒子。
(3)ポリアルキレンイミンがポリエチレンイミンである、(1)または(2)の磁性微粒子。
(4)前記温度応答性高分子が、下限臨界溶液温度または上限臨界溶液温度を有する高分子である、(1)〜(3)のいずれかの磁性微粒子。
(5)前記温度応答性高分子が、N−イソプロピルアクリルアミドとN−t−ブチルアクリルアミドとの共重合体である、(1)〜(3)のいずれかの磁性微粒子。
(6)前記親油性分子が、炭化水素またはコレステロールである、(1)〜(5)のいずれかの磁性微粒子。
(7)(1)〜(6)のいずれかの磁性微粒子と両親媒性分子を含む組成物であり、水系溶媒中でリポソーム様構造体を形成する組成物。
(8)前記両親媒性分子が、リン脂質、糖脂質、コレステロールから選ばれる一種またはそれ以上である、(7)の組成物。
(9)(1)〜(6)のいずれかの磁性微粒子と両親媒性分子を含むキットであり、水系溶媒中でリポソーム様構造体を形成させるためのキット。
(10)前記両親媒性分子が、リン脂質、糖脂質、コレステロールから選ばれる一種またはそれ以上である、(9)のキット。
(11)(1)〜(6)のいずれかの磁性微粒子と両親媒性分子を用いて水系溶媒中でリポソーム様構造体を形成させる工程、該リポソーム様構造体と試料を混合して該リポソーム様構造体上の両親媒性分子に試料中の両親媒性分子結合物質を結合させる工程、リポソーム様構造体を磁集する工程、および該結合物質を検出する工程、を含む、両親媒性分子結合物質の検出方法。
(12)前記両親媒性分子がリン脂質であり、前記結合物質がアポE(ApoE)またはアネキシン(Annexin)である、(11)の方法。
本発明の磁性微粒子は鉄酸化物とポリアルキレンイミンとの複合体からなるため、凍結乾燥処理後も、溶媒への分散性を維持しており、温度応答機能を失うことはない。したがって、再利用が可能である。
鉄酸化物としては、マグネタイト、フェライト、ヘマタイトおよびゲーサイトなどが挙げられ、マグネタイトがより好ましい。
ポリアルキレンイミンとしては、ポリエチレンイミンやポリプロピレンイミンなどが挙げられ、ポリエチレンイミンがより好ましい。ポリアルキレンイミンの数平均分子量は好ましくは600〜70,000である。
鉄酸化物とポリアルキレンイミンとの複合体は、水中で鉄酸化物とポリアルキレンイミンを混合することによって得ることができる。pH3〜6で複合体を形成することが好ましく、pH4〜5であることがより好ましい。
チロニトリル等のアゾ系開始剤、過酸化ベンゾイル等の過酸化物、水系であれば過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)等の重合開始剤を添加し、攪拌下加熱を続けることにより得ることができる。その後、貧溶媒中で再沈殿を行い、析出したポリマーをろ取したり、ポリマーを凝集させる温度変化刺激を与えて凝集させ、遠心によりポリマーを分離する等の手法で、製造したポリマーを精製することができる。
ここで、炭化水素は飽和炭化水素でもよいし、不飽和炭化水素でもよい。炭化水素の長さは好ましくは炭素数5〜25である。炭化水素を磁性微粒子の表面に導入する方法としては、例えば、脂肪酸を用い、該脂肪酸のカルボキシル基と磁性微粒子を構成するポリアルキレンイミンのイミノ基を反応させてアミド基を形成させることにより導入する方法が挙げられる。脂肪酸としては、任意に選択することができるが、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸が例示される。
コレステロールを導入する方法としては、コレステロールの水酸基を1,1’−カルボニルジイミダゾールを用いて活性化し、ポリアルキレンイミンのイミノ基と反応させる方法、水酸基にカルボキシル基を導入し、このカルボキシル基とポリアルキレンイミンのイミノ基を反応させてアミド基を形成させることにより導入方法、または、水酸基をアミノ基に置換し、ポリアルキレンイミンのイミノ基と架橋するという方法が挙げられる。コレステロールの水酸基にカルボキシル基を導入する方法としては、無水コハク酸と反応させる方法または、水酸基をアミノ基に置換し、無水コハク酸を反応させカルボキシル基を導入する方法がある。
ここで、両親媒性分子は、疎水性基と親水性基の両方を含む物質であればよいが、リン脂質、コレステロール、糖脂質、およびこれらの組み合わせが挙げられる。
リポソーム様構造体は、図1に示すように、磁性微粒子からなるコア、コアに結合した親油性分子からなる内側の膜、および、親油性分子側に疎水性基、水相側に親水性基が来るように配置された両親媒性分子からなる外側の膜によって構成される。
例えば、両親媒性分子としてリン脂質を結合させた場合、本発明の磁性微粒子はリン脂質結合物質を検出したり、単離したりするために使用することができる。検出対象に応じて、リン脂質を構成する脂質の種類や組成を変化させることもできる。
また、両親媒性分子としてコレステロールを結合させた場合、本発明の磁性微粒子はコレステロール結合物質を検出したり、単離したりするために使用することができる。また、両親媒性分子として糖脂質を結合させた場合、本発明の磁性微粒子は糖脂質結合物質を検出したり、単離したりするために使用することができる。
2次元電気泳動やSDS−PAGEなどの電気泳動で検出してもよく、電気泳動と抗体
検出を組み合わせて検出してもよい。
本発明の磁性微粒子とリン脂質から形成されるリポソーム様構造体を用いてヒト血漿中のApoEタンパク質を特異的に吸着して解析し、そのアイソフォームを判別することにより、アルツハイマー病の診断に有用なデータを得ることができる。
本発明の修飾磁性微粒子とリン脂質とから形成されるリポソーム様構造体を用いてヒト血漿中のAnnexin A5を特異的に吸着して定量することにより、認知症の診断に有用なデータを得ることができる。
10重量%マグネタイト水溶液10mlとポリエチレンイミン(数平均分子量600)5gを混合し、超音波処理をしながら、氷浴中で1時間分散処理をした。磁気分離により、過剰なポリエチレンイミンを除去した。10mlの水を添加し再分散後、1mM 塩酸水溶液で分散液のpHを4にすることで、粒子径が約70nmのマグネタイト−ポリエチレンイミン複合体を得た。
200mlの三口フラスコに、N−イソプロピルアクリルアミド0.75g、N−t−ブチルアクリルアミド0.28gおよびアクリル酸15mgを精製水(ミリポア社製純水
製造装置「Direct−QTM」によって精製された導電率18MΩcmの水であり、MillQ水と呼ばれることもある。)100mlに溶解し、30分間窒素置換した。その後、テトラメチルエチレンジアミン0.1mlおよびペルオキソ二硫酸アンモニウム150mgを加えることにより重合反応を行った。3時間の反応の後、分画分子量10,000の透析膜により精製を行い、凍結乾燥によりポリ−N−イソプロピルアクリルアミド−co−N−ビオチニル−N’−メタクロイルトリメチレンアミド−co−アクリル酸共重合体0.89gを得た。
マグネタイト−ポリエチレンイミン複合体300mgを100mM MESバッファー(MES:2-(N-Morpholino)ethanesulfonic Acid、pH4.75)30mlに分散した(分散液)。この分散液を超音波により粒子径約70nmに分散させた。また、一方でポリ−N−イソプロピルアクリルアミド−co−N−ビオチニル−N’−メタクロイルトリメチレンアミド−co−アクリル酸共重合体100mgを、100mM MESバッファー10mlに溶解し、そこへ、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDAC:1-Ethyl-3-(3-dimethylaminopropyl)carbodiimide, hydrochloride) 100mgを添加し、30分反応させた(ポリマー液)。その後、分散液とポリマー液とを溶解し、6時間の反応の後、水により2回洗浄を行い温度応答性磁性微粒子を得た。得られた温度応答性磁性微粒子の平均粒径は、大塚電子株式会社社製レーザーゼーター電位計ELS−8000で測定したところ、約105nmであった。得られた温度応答性磁性微粒子をEYELA社製凍結乾燥機により凍結乾燥を行った。
ミリスチン酸2gをクロロホルム10mlに溶解した。一方で、N−ヒドロキシスクシンイミド1.5gとジシクロヘキシルカルボジイミド2.7gとをジメチルホルムアミド5mlに溶解した。これらのクロロホルム溶液とジメチルホルムアミド溶液を混合し、5時間反応させた。発生したジシクロヘキシルウレア(DCウレア)をろ過により除去し、ろ液を減圧濃縮することでスクシンイミドエステル化ミリスチン酸を得た。
凍結乾燥した温度応答性磁性微粒子10mgを分取し、ジメチルスルホキシド1mlに分散し、ここにミリスチン酸スクシンイミドエステル0.5gを含むクロロホルム溶液0.5mlを加え12時間反応させた。反応液を15000rpmで遠心分離し、沈降物をクロロホルムに分散した。さらに15000rpmで遠心分離し、クロロホルム:メタノール(容量比で2:1)混合溶媒に分散し、有機溶媒に分散する磁性微粒子を得た。得られた温度応答性磁性微粒子の平均粒径は、大塚電子株式会社社製レーザーゼーター電位計ELS−8000で測定したところ、約143nmであった。
上記ミリスチン酸修飾温度応答性磁性微粒子とリン脂質(容量比でクロロホルム:メタノール=2:1に溶解したもの)を混合し、窒素ガスでエバポレートした。溶媒(50mM Hepes (pH7.5), 0.15M NaCl)を加えて、超音波処理(20分を3回)を行い分散させた。分散液を室温にし、室温で10分間、ネオジウム磁石により磁気分離した。分離物に溶媒(50mM Hepes (pH7.5), 0.15M NaCl)を加えて軽く、ボルテックスミキサーで攪拌後、氷中で5分磁気分離し、その後さらに10分間室温で磁気分離を行った。分離物に溶媒(50mM Hepes (pH7.5), 0.15M NaCl)を加えて軽く、ボルテックスミキサーで攪拌し、ミリスチン酸修飾温度応答性磁性微粒子とリン脂質からなるリポソーム様構造体を調製した。これを4℃保存した。
上記ミリスチン酸修飾温度応答性磁性微粒子1ml(10mg/ml)にホスファチジルセリンのクロロホルム溶液(10mg/ml)を任意の量添加していき、窒素ガスにより乾燥し、溶媒(50mM Hepes (pH7.5), 0.15M NaCl)にて再分散を行った。分散液を室温にて磁気分離し、上清の350nmおよび660nmの吸光度を測定した(図3)。その結果、図3中、矢印は、ミリスチン酸修飾温度応答性磁性微粒子とホスファチジルセリン重量比が1:1を示している。ホスファチジルセリン添加量がこの量までは、濁度の変化は認められず、すなわちほとんどが磁性微粒子にコートされたと考えられる。一方、ホスファチジルセリン添加量をさらに増大させていくと濁度が上昇し始めた。これは余剰PLの増加によるものと推測された。以上の結果から重量比約1:1でミリスチン酸修飾温度応答性磁性微粒子とPLが結合すると算出された。
(検量線の作成)
ホスファチジルコリン(PC)またはホスファチジルセリン(PS)を各0, 2, 5, 10,
20μgを取り、減圧乾燥した。10N H2SO4(0.25ml)を加え、インキュベートした(150℃、3時間)。2.3ml Ammonium Molybdate、0.1ml ANSA(1-amino-2-naphthol-4-sufonate)を加え、830nmの吸光度を測定し、検量線を作成した(図4)。
上記のようにして作製したリポソーム様構造体(脂質はPC または PS)を1mg/mlの濃度に調整した後、10μlを取り、検量線作成と同様の方法で吸光度測定を行った。なお、リポソーム様構造体の作製は、ミリスチン酸修飾温度応答性磁性微粒子:PLの重量比が、1:1.5、1:3、1:5で行った。
その結果、リポソーム様構造体−PC(1:1.5)は、20μg:5.44μg; リポソーム様構造体−PC(1:3)は、20μg:8.22μg; リポソーム様構造体−PC(1:5)は、20μg:6.38μgと見積もられ、リポソーム様構造体−PS(1:1.5)は、20μg:9.75μg; リポソーム様構造体−PC(1:3)は、20μg:4.05μg; リポソーム様構造体−PC(1:5)は、20μg:7.33μgと見積もられた。
以上の結果より、温度応答性磁性微粒子にコートされるPLは、ばらつきが認められるが(温度応答性磁性微粒子:PC⇒1:0.33;温度応答性磁性微粒子:PS⇒1:0.35)、重量比は約1:0.35(磁性微粒子:PL)で結合すると考えられた。
(Ca2+/リン脂質(PL)結合タンパク質Annexin(リコンビナントタンパク質)を用いた検討)(タンパク質:リコンビナントアネキシン(rAnnexin A1, rAnnexin A4, rAnnexin A5, およびBSA (fatty acid free)のリポソーム様構造体への結合)
方法 (図5):
10ml の1mg/ml リポソーム様構造体(PC100は、PCが100重量%であることを示す。PC90PS10は、PCが90重量%であり、PSが10重量%である混合物を示す。PC80PS20は、PCが80重量%であり、PSが20重量%である混合物を示す。PC50PS50は、PCが50重量%であり、PSが50重量%である混合物を示す。PS100は、PSが100重量%であることを示す。これらの一種をリポソーム様構造体として使用する。以下、PCとPSの重量%については、同様に表記することができる。)と、各タンパク質 (1μg)に、10mM になるようにCaCl2を加え、氷上で1時間インキュベートした。その後、室温にし、10分間磁気分離した。上清を除去し、20mM Hepes (pH7.5)(0.1M NaCl, 2mM CaCl2)に分散し、5分間氷上でインキュベートした。室温で10分間磁気分離をした後、同様の洗浄操作を再度行った。10mM EGTA/10mM Hepes (pH7.5)に分散し、氷上で3分間インキュベートした。5分間室温で磁気分離した後
、上清を回収し、SDS−PAGEを行った。
rAnnexin A1,rAnnexin A4, またはrAnnexin A5を用いた結果(インキュベート1時間)を図6に示す。rAnnexin A1,rAnnexin A4, またはrAnnexin A5と、BSA の混合物 (各1μg) 用いた結果(インキュベート1時間)を図7に示す。その結果、異なるPL種(PCとPS)で異なる脂質結合タンパク質を分画できることがわかり、その結果、図8のようなプロファイルが推察できた。
また、rAnnexin A5 と BSA の混合物(各1μg)と、10ml (1mg/ml) ミリスチン酸修飾温度応答性磁性微粒子とPS100を用いて、結合のtime courseをSDS-PAGEにより解析した。その結果を図9に示す。rAnnexin A5は即座に結合したのに対し、BSAは1時間以下のインキュベートでは結合はわずかであるが、3時間以上のインキュベートで結合するようになった。すなわち、アルブミンとの結合親和性はAnnexinに比べて弱いことが分かった。
血漿(100μl)とPBS(865μl),リポソーム様構造体(PC100は、PCが100重量%であることを示す。PC90PS10は、PCが90重量%であり、PSが10重量%である混合物を示す。PC50PS50は、PCが50重量%であり、PSが50重量%である混合物を示す。または、PS100は、PSが100重量%であることを示す。これらの一種をリポソーム様構造体として使用する。)25μl (10mg/ml)に、10mMになるようにCaCl2を加え、氷上で1時間インキュベートした。その後、室温にし、10分間磁気分離した。上清を除去し、20mM Hepes (pH7.5)(0.1M NaCl,
2mM CaCl2)に分散し、5分間氷上でインキュベートした。室温で10分間磁気分離をした後、同様の洗浄操作を再度行った。10mM EGTA/10mM Hepes (pH7.5)に分散し、氷上で3分間インキュベートした。5分間室温で磁気分離した後、上清を回収し、2次元電気泳動(タンパク質Apply量が、リポソーム様構造体-PC100は13.6μgであり、リポソーム様構造体-PC90PS10は11.9μgであり、リポソーム様構造体-PC50PS50は13.1μgであり、リポソーム様構造体-PS100は17.5μgである。)を行った。その結果を図10に示す。PS含量が多いほど捉えられるアルブミン量は減少した。また、PS含量が多いほど見えるスポット(マイナースポット)が多くなった。
上記ミリスチン酸修飾温度応答性磁性微粒子0.1ml(1mg)とクロロホルム/メタノール(容量比で2:1)混合溶媒に溶かしたフォスファチジルセリン0.15mgとフォスファチジルコリン1.35mgとを混合し、窒素ガスで乾固した。水系溶媒A(50mM Hepes (pH7.5), 0.15M NaCl) 1mlを加えて、超音波処理(バスソニケーション、20分を3回)を行い分散した。この分散液を室温にし、室温で10分間磁気分離した。上清を除き、再び溶媒Aを1ml加えて軽く、ボルテックスミキサーで攪拌した後、氷中で5分インキュベートし分散した。その後、10分間室温で磁気分離し、上清を除き、再び溶媒Aを1ml加えて軽く、ボルテックスミキサーで攪拌した後、これをリポソーム様構造体として用いた。使用まで4℃保存した。
血漿 100μlを865μlのPBSで希釈し、25μl(1mg/ml) リポソーム様構造体と10μlの1M CaCl2を加え、4℃で一晩インキュベートした。その後、室温にし、10分間磁気分離した。上清を除去し、20mM Hepes (pH7.5)(0.1M NaCl, 2mM CaCl2)に分散し、5分間氷上でインキュベートした。再び室温で10分間磁気分離をした後、同様の洗浄操作を再度行った。リン脂質結合画分抽出のために、100μl の10mM EGTA/10mM Hepes (pH7.5)を加え分散させ、氷上で3分間インキュベートした。5分間室温で磁気分離した後、上清を回収した。次にこの抽出液の2次元電気泳動を行った。
その結果(図11)、左上の血漿中にはApoEのアイソフォームであるApoE2とApoE3に由
来するスポット、左下には、ApoE3とApoE4に由来するスポット、右上図にはApoE2およびApoE4に由来するスポット、右下図にはApoE4のみに由来するスポットが得られた。以上より、ミリスチン酸修飾温度応答性磁性微粒子とリン脂質からなるリポソーム様構造体を用い、2次元電気泳動を行うことより、血漿中からApoEのアイソフォームを分離同定できるとこができた。さらに、質量分析、ELISAなどでより容易にApoEのアイソフォームを同定することができた。
Claims (12)
- 鉄酸化物とポリアルキレンイミンとの複合体からなる磁性微粒子であり、該磁性微粒子の表面が温度応答性高分子および親油性分子で修飾された、有機溶媒に分散し、温度に応答して凝集して磁気による回収が可能な温度応答性磁性微粒子。
- 前記鉄酸化物が、マグネタイト、フェライト、ヘマタイトおよびゲーサイトから選択される少なくとも一種類である、請求項1に記載の磁性微粒子。
- ポリアルキレンイミンがポリエチレンイミンである、請求項1または2に記載の磁性微粒子。
- 前記温度応答性高分子が、下限臨界溶液温度または上限臨界溶液温度を有する高分子である、請求項1〜3のいずれかに記載の磁性微粒子。
- 前記温度応答性高分子が、N−イソプロピルアクリルアミドとN−t−ブチルアクリルアミドとの共重合体である、請求項1〜3のいずれかに記載の磁性微粒子。
- 前記親油性分子が、炭化水素またはコレステロールである、請求項1〜5のいずれかに記載の磁性微粒子。
- 請求項1〜6のいずれかに記載の磁性微粒子と両親媒性分子を含む組成物であり、水系溶媒中でリポソーム様構造体を形成する組成物。
- 前記両親媒性分子が、リン脂質、糖脂質、コレステロールから選ばれる一種またはそれ以上である、請求項7に記載の組成物。
- 請求項1〜6のいずれかに記載の磁性微粒子と両親媒性分子を含むキットであり、水系溶媒中でリポソーム様構造体を形成させるためのキット。
- 前記両親媒性分子が、リン脂質、糖脂質、コレステロールから選ばれる一種またはそれ以上である、請求項9に記載のキット。
- 請求項1〜6のいずれかに記載の磁性微粒子と両親媒性分子を用いて水系溶媒中でリポソーム様構造体を形成させる工程、該リポソーム様構造体と試料を混合して該リポソーム様構造体上の両親媒性分子に試料中の両親媒性分子結合物質を結合させる工程、リポソーム様構造体を磁集する工程、および該結合物質を検出する工程、を含む、両親媒性分子結合物質の検出方法。
- 前記両親媒性分子がリン脂質であり、前記結合物質がアポE(ApoE)またはアネキシン(Annexin)である、請求項11に記載の方法。
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