以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
[説明の流れについて]
ここで、以下に記載する本発明の実施形態に関する説明の流れについて簡単に述べる。まず、図1を参照しながら、シリアル伝送方式を採用した携帯端末10の構成について簡単に説明する。次いで、図2を参照しながら、新方式に係る符号化方法、及び復号方法について簡単に説明する。
次いで、図3〜図15を参照しながら、本発明の第1実施形態に係る14B8Q変換に基づく符号化方法について詳細に説明する。次いで、図16を参照しながら、同実施形態に係る符号化方法を実現することが可能な携帯端末100の機能構成例について説明する。次いで、図16〜図29を参照しながら、本発明の第2実施形態に係る12B8Q変換に基づく符号化方法について詳細に説明する。次いで、図30を参照しながら、同実施形態に係る符号化方法を実現することが可能な携帯端末100の機能構成例について説明する。最後に、同実施形態の技術的思想について纏め、当該技術的思想から得られる作用効果について簡単に説明する。
(説明項目)
1:はじめに
1−1:シリアル伝送方式について
1−2:新方式の符号化方法について
2:第1実施形態
2−1:14B8Q変換に基づく符号化方法
2−2:携帯端末100の機能構成
3:第2実施形態
3−1:12B8Q変換に基づく符号化方法
3−2:携帯端末100の機能構成
4:まとめ
<1:はじめに>
以下で本発明の一実施形態に係る技術について詳細な説明を行うが、これに先立ち、同実施形態が解決しようとする課題について具体例を交えながら簡単に説明する。
[1−1:シリアル伝送方式について]
まず、図1を参照しながら、シリアル伝送方式を採用した携帯端末10の装置構成について簡単に説明する。図1は、シリアル伝送方式を採用した携帯端末10の装置構成の一例を示す説明図である。
図1には、携帯端末10の一例として携帯電話が模式的に描画されている。しかし、以下で説明する技術の適用範囲は携帯電話に限定されない。例えば、ノートPC等の情報処理装置や各種の携帯型電子機器にも適用可能である。また、以下の説明においては、一例として画像データが伝送されるケースについて述べるが、伝送される信号の種類はこれに限定されない。例えば、制御データや音声データ等の信号が伝送されてもよい。
図1に示すように、携帯端末10は、主に、操作部12と、ヒンジ部14と、表示部16と、を有する。操作部12は、ベースバンドプロセッサ22(BBP)と、パラレル信号ライン24と、シリアライザ26とを有する。ヒンジ部14は、シリアル信号ライン28を有する。表示部16は、主に、デシリアライザ30と、パラレル信号ライン32と、液晶部34(LCD)と、を有する。但し、LCDは、Liquid Crystal Displayの略である。
液晶部34は、表示部16に設けられている。液晶部34は、画像データを表示する表示手段の一例である。ここでは一例としてLCDを示したが、表示部16に設けられる表示手段の種類はこれに限定されない。例えば、表示部16に設けられる表示手段は、OELD(organic electroluminescent display)やPDP(Plasma Display Panel)等であってもよい。
また、ヒンジ部14は、表示部16と操作部12とを接続する部材(以下、接続部材)により形成される。この接続部材は、例えば、表示部16をZ−Y平面内で180度回転できるようにしたり、或いは、X−Z平面内で表示部16を回転できるようにしたりする可動構造を有している。また、この接続部材は、自由な方向に表示部16を配置できるような可動構造を有していてもよい。
また、ベースバンドプロセッサ22は、携帯端末10の通信制御やアプリケーションの実行機能を提供する演算処理部の一例である。ベースバンドプロセッサ22は、制御データや画像データ等をパラレル信号の形で出力する。例えば、画像データのパラレル信号は、表示部16に伝送され、液晶部34の画面表示に用いられる。このようなパラレル信号をそのまま伝送しようとすると、多数の信号線が必要になる。例えば、一般的な携帯電話の画面表示に用いられるパラレル信号線の本数は約50本である。
一般的なパラレル伝送方式を採用する折り畳み式携帯電話の場合、ヒンジ部分に約50本のパラレル信号線が配線されている。そのため、ヒンジ部分の可動範囲は、多くの場合、一方向に限られている。仮に、図1に示した携帯端末10のように、Z−Y平面内で180度回転できるようにすると、ヒンジ部分に配線された約50本のパラレル信号線に捻れや引っ張りの力が加わり、その力が強いとパラレル信号線が断線してしまう。そのため、一般的なパラレル伝送方式を採用する折り畳み式携帯電話の場合、ヒンジ部分の可動範囲が限られていた。
しかしながら、デザイン性やユーザの利便性を向上させるために、断線の危険を回避しつつ、ヒンジ部分の可動範囲を広げる工夫が求められている。こうした要求を受け、図1に示すようなシリアル伝送方式の携帯端末10が考案された。携帯端末10は、パラレル信号をシリアル信号に変換して伝送する。そのため、ヒンジ部14に配線される信号線の本数は、パラレル伝送方式の携帯電話に比べて格段に少ないという特徴を持つ。以下、携帯端末10の構成について、より詳細に説明する。
携帯端末10は、ヒンジ部14に配線されたシリアル信号ライン28を通じ、シリアル伝送方式に基づいて画像データ等のデータを伝送する。そのため、操作部12には、シリアライザ26が設けられている。シリアライザ26は、ベースバンドプロセッサ22から出力されたパラレル信号をシリアル化するものである。一方、表示部16には、デシリアライザ30が設けられている。デシリアライザ30は、シリアル信号ライン28を通じて伝送されるシリアル信号をパラレル化するものである。
ベースバンドプロセッサ22から出力されたパラレル信号は、パラレル信号ライン24を介してシリアライザ26に入力される。パラレル信号が入力されると、シリアライザ26は、入力されたパラレル信号をシリアル化してシリアル信号を生成する。シリアライザ26により生成されたシリアル信号は、シリアル信号ライン28を通じてデシリアライザ30に入力される。シリアル信号が入力されると、デシリアライザ30は、入力されたシリアル信号をパラレル化してパラレル信号を生成する。デシリアライザ30により生成されたパラレル信号は、パラレル信号ライン32を通じて液晶部34に入力される。
上記の通り、シリアル信号ライン28は、データ信号の伝送に利用される。また、シリアル信号ライン28は、データ信号とクロックとを共に伝送するために利用されてもよい。シリアル信号ライン28の配線数kは、一般的な携帯電話のヒンジ部分に配線されるパラレル信号ラインの配線数nよりも大幅に少ない(1≦k≪n)。また、シリアル信号ライン28の配線数kは、電源ラインにデータ信号及びクロックを重畳して伝送する方式(例えば、上記の新方式等)を利用した場合、1程度にまで低減される。
このように、シリアル伝送方式を採用すると、一般的な携帯電話で用いられるパラレル伝送方式を採用した場合に比べ、ヒンジ部14に配線される信号線の数を大幅に低減させることができる。ヒンジ部14に配線される信号線の本数が減ることにより、信号線の信頼性を維持しつつ、ヒンジ部14の可動範囲を大きくすることができる。例えば、信号線の本数を1本程度に減らすと、ヒンジ部14の変形に伴う信号線のねじれや引っ張り等が生じ難くなるため、信号線が断線する危険性は大幅に低くなる。
以上、携帯端末10の装置構成について簡単に説明した。シリアル伝送方式を採用した携帯端末10の構成は概ね上記の通りである。上記の通り、シリアル伝送方式を採用することにより、ヒンジ部14に配線される信号線の本数を減らすことができる。但し、信号線の本数は、シリアル信号ライン28に流れる信号の特性や伝送方法に依存する。例えば、直流成分を含まないデータ信号を電源ラインに重畳して伝送する伝送方式の場合、データラインと電源ラインとを1本に纏めることができる。
[1−2:新方式の符号化方法について]
ここで、図2を参照しながら、新方式に係る符号化方法について簡単に説明する。図2は、新方式に係る符号化方法を示す説明図である。なお、後述する各実施形態の技術は、必ずしも新方式の符号化方法と組み合わせて利用する必要はない。しかし、新方式の符号化方法を組み合わせることで付加的な効果が得られる。例えば、受信側にPLLを設けずに済む分だけ消費電力及び回路規模を低減することができるようになる。
(概要)
新方式の符号化方法は、データを符号化して直流成分を含まないシンボル列を生成し、生成したシンボル列に含まれる各シンボルの値を振幅値とするデータ信号を生成し、生成したデータ信号よりも大きな振幅を持つクロックをデータ信号に同期加算して伝送信号を生成するというものである。
直流成分を含まないシンボル列を生成することが可能な符号化方式としては、例えば、AMI符号方式、パーシャル・レスポンス符号方式、マンチェスター符号方式、CMI符号方式等がある。もちろん、これらの符号方式以外にも、様々なバイポーラ符号方式、バイフェーズ符号方式、ダイコード符号方式等が新方式の符号化方法に適用可能である。但し、CMIは、Coded Mark Inversionの略である。また、マンチェスター符号としては、例えば、PR(1,−1)、PR(1,0,−1)、PR(1,0,…,−1)等を用いることができる。
(AMI符号について)
ここでは、AMI符号方式をベースにする新方式の符号化方法について説明する。まず、図2(A)を参照しながら、AMI符号の信号波形及びAMI符号の特性について簡単に説明する。図2(A)は、AMI符号方式に基づいて符号化されたデータ信号の信号波形(デューティ100%のAMI符号)を示している。また、図2(A)に示した信号波形の上側に表示された数字0、1は、符号化前のデータを示している。
AMI符号の信号波形は、データ0を電位0で表現し、データ1を電位A又は−A(Aは任意の正数;図2(A)の例ではA=1)で表現することにより得られる。但し、電位Aでデータ1が表現された後、再びデータ1が現れた場合、再び現れたデータ1は電位−Aで表現される。つまり、電位Aと電位−Aとは交互に繰り返される。このように、電位Aと電位−Aとが交互に繰り返されるため、AMI符号に符号化されたデータのデータ信号は、ほとんど直流成分を含まない信号波形を有する。なお、以下の説明では、正負が反転することを極性反転と表現することがある。例えば、電位Aから電位−Aへと電位が変化する様子ことを電位の極性反転と呼ぶことがある。
上記の通り、AMI符号方式に基づいて生成されたデータ信号は、直流成分をほとんど含まない符号となる。しかし、データの組み合わせによっては、図2(A)に例示したデータ信号の区間T6、…、T9における電位のように、電位0が連続することがある。このように電位0が連続する区間が含まれていると、データ信号の信号波形に含まれるエッジの位置を検出してクロックを再生することが難しい。そのため、クロックを再生するためにPLLを利用する必要が生じる。
しかし、PLLを設けることにより回路規模が増大したり、消費電力が増加してしまう。そこで、このような回路規模の増大や消費電力の増加を避けるため、データ信号から、PLLを利用せずにクロックを再生することが可能な符号化方法(新方式の符号化方法)が考案された。
(詳細:符号化方法)
新方式の符号化方法において、まず、直流成分を含まないデータ信号が生成される。図2の例では、AMI符号に基づくデータ信号(図2(A))が生成される。次いで、データ信号よりも大きな振幅を有するクロック(図2(B))が生成される。図2の例では、クロックの振幅がデータ信号の2倍に設定される。次いで、生成されたデータ信号とクロックとが同期加算され、伝送信号(図2(C))が生成される。このようにして生成された伝送信号は、1つのデータを複数の振幅値で表現した多値信号となる。図2の例では、データ0が伝送信号の振幅値2、−2で表現され、データ1が伝送信号の振幅値3、1、−1、−3で表現される。
図2(C)に示すように、上記の伝送信号の振幅値は、必ずクロックの半周期毎に振幅値0のラインを交差(ゼロクロス)する。例えば、データ信号の振幅値が連続して0となる区間T6〜T9においても、上記の伝送信号は、連続して同じ振幅値を取らない。そのため、上記の伝送信号の振幅値がゼロクロスするタイミングを検出することにより、その検出結果に基づいてPLLを用いずにクロックを再生することができる。
(詳細:復号方法)
受信側において上記の伝送信号から元のデータを復号する際、まず、伝送信号からクロック成分が抽出される。上記の通り、この伝送信号は、クロックの半周期毎にゼロクロスするという特性を有している。そのため、受信側では、伝送信号の振幅値がゼロクロスするタイミングを検出し、その検出結果に基づいてクロックを再生する処理が行われる。伝送信号の振幅値がゼロクロスするタイミングは、図2(C)に示す閾値L0を用いて伝送信号の振幅値を閾値判定した結果に基づいて検出される。例えば、閾値L0を用いた閾値判定の結果が変化したタイミングを捉えることで、伝送信号の振幅値がゼロクロスのタイミングを検出することができる。
クロックが再生されると、再生されたクロックの立ち上がり又は立ち下がりエッジに同期して伝送信号の振幅値が判定される。上記の通り、この伝送信号は多値信号である。そのため、伝送信号が取る各振幅値を判定するために複数の閾値が必要になる。図2の例では、3、2、1、−1、−2、−3の6値を判定するために閾値L1〜L4が設定されている。例えば、閾値L1〜L4は、L1=2.5、L2=1.5、L3=−1.5、L4=−2.5に設定される。これら4つの閾値L1〜L4を用いて閾値判定することにより、データ1を示す振幅値A1(−1、−3、1、3)、及びデータ0を示す振幅値A2(−2、2)をそれぞれ検出することができる。そして、閾値L1〜L4に基づく振幅値A1、A2の検出結果から元のデータが復元される。
このように、直流成分を含まず、極性反転周期からクロック成分を検出することが可能な符号化方法を利用することで、受信側で行われるクロックの検出処理にPLLを用いずに済む。その結果、PLLを設けずに済む分だけ回路規模や消費電力を抑制することができる。また、図2に例示した符号化方法を用いると、直流成分を含まない伝送信号が得られるため、伝送信号を電源ラインに重畳して伝送することができる。この場合、電源ライン1本でデータ、クロック、電源を伝送することが可能になる。
以上、新方式に係る符号化方法について説明した。上記の通り、新方式に係る符号化方法を用いることにより、回路規模が抑制され、電力消費量が低減される。また、伝送信号を電源ラインに重畳して伝送することにより、ヒンジ部14の配線数を減らすことができる。しかし、上記の伝送信号は、1つのビット値を複数の振幅値で表現した多値信号であり、1つのビット値を1つの振幅値で表現したNRZ信号等に比べて冗長度が高い。また、新方式に係る符号化方法の場合、冗長度が増えても伝送速度が増加しない。
伝送速度を向上させる方法としては、例えば、クロックを高速化する方法が考えられる。しかし、クロックが高速化すると、シリアル信号ライン28を流れる伝送信号の周波数スペクトルが広帯域化し、EMIが増大してしまう。また、クロックを高速化すると消費電力が増大してしまう。こうした理由からクロックの高速化には限界があった。こうした理由から、多値信号の冗長性を利用して、EMIの影響や消費電力の増大を招かずにデータを高速伝送する方法が検討されている。
(8B6T変換)
多値信号の冗長性を利用して高速なデータ伝送を実現する方法として、例えば、IEEE802.3uで規定された8B6T変換を用いるデータ伝送方法が知られている。8B6T変換は、8ビットのビット列を6シンボルの3値シンボル列に変換する符号化方法である。3値シンボル列は、各シンボルの値を振幅値とする3値信号の形で伝送される。8B6T変換を用いると、クロックを高速化せずに伝送速度が8/6=1.33倍に向上する。但し、8B6T変換の変換則は、6シンボルのDC値(6シンボルの合計値)が0となる組み合わせと、DC値が+1となる組み合わせとを含んでいる。そのため、2値データのパターンによってはDCバランスが正値に大きく振れてしまう。DCバランスが正値に大きく振れると、DC遮断特性を持つ伝送路で伝送品質の著しい劣化が生じてしまう。
こうした理由から、DC遮断特性を持つ伝送路において伝送品質の劣化を招かず、かつ、周波数スペクトルの広帯域化を回避しながら、伝送速度を向上させる技術が求められている。
また、8B6T変換の変換則は、その数が非常に多い。例えば、8B6T変換に用いる変換則を変換テーブルの形で保持しようとすると、変換テーブルのデータ量が非常に大きくなってしまう。そのため、変換テーブルを携帯端末10の内部に保持しようとすると、携帯端末10の回路規模が大きくなってしまう。また、8B6T変換と同様の方法で伝送速度を向上させるために多値化をさらに進めると、変換則の数が増えて変換テーブルのデータ量がさらに大きくなってしまう。そこで、本件発明者は、比較的小さな変換テーブルを利用し、DC遮断特性を持つ伝送路において伝送品質の劣化を招かず、かつ、周波数スペクトルの広帯域化を回避しながら、さらに伝送速度を向上させる方法を考案した。以下、当該方法に係る実施形態について詳細に説明する。
<2:第1実施形態>
まず、本発明の第1実施形態について説明する。本実施形態は、14ビットのビット列を8シンボルの5値シンボル列に変換する14B8Q変換(14 Binary 8 Quinary Transform)に関する。
[2−1:14B8Q変換に基づく符号化方法]
以下、14B8Q変換に基づく符号化方法について詳細に説明する。
(14B8Q変換について)
まず、図3、図4を参照しながら、14B8Q変換、及び14B8Q変換に基づくデータ伝送方法について説明する。図3に示すように、14B8Q変換とは、14ビットのビット列{b0,…,b13}を8シンボルの5値シンボル列{q0,…,q7}に変換する方法である。なお、5値シンボル列に含まれる(j+1)番目のシンボルqj(j=0〜7)は、図4に示すように、5値のシンボル値(例えば、+2、+1、0、−1、−2)をとる。14B8Q変換により生成された5値シンボル列は、各シンボルのシンボル値を振幅とする伝送信号の形で伝送される。この伝送信号のアイパターンは、おおよそ図4の右側に示した形となる。
ここで、MBNQ変換(M、Nは自然数;M>N)を実現可能なM、Nの組み合わせについて考えてみたい。ここで考えるMBNQ変換は、M個のビット列{b0,…,b(M−1)}をN個の5値シンボル列{q0,…,q(N−1)}に変換する方法である。当然のことながら、M個のビット列{b0,…,b(M−1)}で表現される組み合わせの数よりも、N個の5値シンボル列{q0,…,q(N−1)}で表現される組み合わせの数が少ない場合、MBNQ変換は実現できない。M個のビット列{b0,…,b(M−1)}の組み合わせ数は2Mである。また、N個の5値シンボル列{q0,…,q(N−1)}の組み合わせ数は5Nである。そのため、MBNQ変換を実現するには、条件2M<5Nを満たす必要がある。
また、M≦Nの場合、Mビットのビット列をそのまま伝送する場合に比べて伝送速度がM/N≦1となるため、MBNQ変換を用いても伝送速度が向上しない。そこで、有効なMBNQ変換を実現するには、条件1:2M<5N、条件2:M>Nを満たすM、Nを決定することが必要になる。例えば、14B8Q変換は、M=14、N=8の場合に相当する。214=16,384、58=390,625であるから、条件1を満たす。また、M(=14)>N(=8)であるから、条件2を満たす。なお、218=262,144であるから、M=18の場合にも条件1、条件2が満たされる。14B8Q変換を利用すると、伝送速度が14/8=1.75倍に向上する。また、18B8Q変換を利用すると、伝送速度が18/8=2.25倍に向上する。
上記の条件1、条件2を満たすようにM、Nを選択することにより、MBNQ変換を実現可能なM、Nの組み合わせを決定することができる。また、M/Nが大きくなるM、Nの組み合わせを選択することにより伝送速度を向上させることができる。しかし、5値シンボル列{q0,…,q(N−1)}の組み合わせには、DC値が0でない組み合わせが多数含まれている。DC値が0でない5値シンボル列の組み合わせを用いると、伝送信号に直流成分が含まれてしまい、直流遮断の伝送路において信号品質の劣化が生じてしまう。そのため、5値シンボル列{q0,…,q(N−1)}の組み合わせの中から、DC値が0となる組み合わせを選択してMBNQ変換の変換則を定義することが望ましい。
しかし、DC値が0となる5値シンボル列の組み合わせ数はそれほど多くない。仮に、条件1を「2M<DC値が0となる5値シンボル列の組み合わせ数」に変更すると、M/Nが小さなM、Nの組み合わせしか得られなくなる。そのため、伝送速度を大きく向上させるためには、DC値が0以外となる5値シンボル列の組み合わせを利用しつつ、伝送信号の直流成分を抑圧する方法が求められる。こうした要求に対し、本件発明者は、図5に示すように、8シンボルの5値シンボル列を前半4シンボル、後半4シンボルに分け、8シンボルの5値シンボル列全体でDC値を0にする符号化方法を考案した。
図4に例示した5値シンボル列{q0,…,q7}の場合、各シンボルのシンボル値qjが−2、−1、0、+1、+2の5値をとるため、5値シンボル列{q0,…,q7}のDC値は、最大で2*8=16となる。本実施形態に係る符号化方法は、前半4シンボルのDC値がX(Xは実数)、後半4シンボルのDC値が−Xとなるように14ビットのビット列{b0,…,b13}を符号化する方法である。このように、前半4シンボルのDC値と後半4シンボルのDC値とが同じ絶対値を持ち、正負が反転した値を持つことで、8シンボルの5値シンボル列全体でDC値が0になる。
ここで、図6を参照しながら、4シンボルの5値シンボル列が取り得る組み合わせの数とDC値との関係について考えてみたい。4シンボルの5値シンボル列が取り得る組み合わせ数は625通り存在する。そのうち、DC値が0となる組み合わせは、図6に示すように、85通り存在する。また、DC値が+1となる組み合わせは80通り、DC値が−1となる組み合わせは80通り存在する。DC値が+2、+3、…、+8となる組み合わせの数、及びDC値が−2、−3、…、−8となる組み合わせの数は、図6に示した通りである。4シンボルの5値シンボル列の場合、各シンボルが−2〜+2の値となるので、この5値シンボル列のDC値は−8〜+8の整数に限られる。
さて、14B8Q変換を実現するには、前半4シンボルと後半4シンボルとを組み合わせて214通りの5値シンボル列を生成する必要がある。しかし、図6を参照すると、DC値が0の組み合わせは85通りしかない。そのため、DC値が0となる前半4シンボルと、DC値が0となる後半4シンボルとを組み合わせても、852=7225通りの5値シンボル列しか得られない。しかし、DC値が+1の前半4シンボルと、DC値が−1の後半4シンボルとを組み合わせると、802=6400通りの5値シンボル列が得られる。同様に、DC値が−1の前半4シンボルと、DC値が+1の後半4シンボルとを組み合わせると、802=6400通りの5値シンボル列が得られる。
DC値Xの前半4シンボルと、DC値−Xの前半4シンボルとの組み合わせ数は、図7に示した通りである。但し、X=+8〜−8である。これらの組み合わせ数の合計は38,165となる。つまり、DC値が0でない4シンボルの5値シンボル列を用いることにより、214通り以上の8シンボルの5値シンボル列を得ることができる。また、前半4シンボルのDC値がX、後半4シンボルのDC値が−Xであるため、8シンボルの5値シンボル列のDC値は0となる。なお、38,165>215であるから、この方法を15B8Q変換に適用することもできる。しかし、より良好な特性を持つ伝送信号を得るには、DC値の絶対値が大きい4シンボルの5値シンボル列を利用しない方が好ましい。
そこで、本実施形態に係る符号化方法では、短時間(4シンボル時間)におけるDC値変化の影響を考慮し、DC値の絶対値が3までの4シンボルの組み合わせを利用する。上記の通り、M=14の条件で、14ビットのビット列の組み合わせは16,384通り存在する。そのため、14B8Q変換又はその逆変換を実行する際、16,384通りの変換則が参照される。実際には、14B8Q変換を行う際、16,384通りの変換則が予め記録された変換テーブルが参照される。しかし、16,384通りの変換則が記録された変換テーブルはデータ量が大きい。そのため、回路規模が増大してしまう。そこで、本件発明者は、変換テーブルに記録して保持すべき変換則の数を減らす方法を考案した。
(変換テーブルの縮小方法について)
まず、4シンボルの5値シンボル列をDC値毎にグループ化する。例えば、DC値=0のグループをAグループ、DC値=+1のグループをB+グループ、DC値=−1のグループをB−グループと表現する。また、DC値=+2のグループをC+グループ、DC値=−2のグループをC−グループ、DC値=+3のグループをD+グループ、DC値=−3のグループをC−グループと表現する。
(符号反転について)
図6に示した通り、Aグループ(DC値=0)に属する4シンボルの組み合わせ(以下、シンボルパターン)は85通り存在する。このうち、{0,0,0,0}を除く84通りのシンボルパターンは、ある42通りのシンボルパターンと、これらシンボルパターンの各シンボル値を符号反転(正負を反転)させた42通りの組み合わせと、により構成されている。つまり、ある1つのシンボルパターンの各シンボル値を符号反転させた組み合わせが上記84通りのシンボルパターンに必ず1つ含まれている。例えば、シンボルパターン{2,1,−1,−2}は、Aグループに属する。そして、Aグループは、このシンボルパターンを符号反転したシンボルパターン{−2,−1,1,2}を含んでいる。
上記の通り、Aグループには、このような符号反転により表現可能なシンボルパターンが42通り存在する。そのため、Aグループに属するシンボルパターンは、42通りのシンボルパターンを用いて表現することができる。従って、14B8Q変換の際、Aグループに属するシンボルパターンは、図8に示した42通りの変換則を用いて得ることができる。その結果、変換テーブルに記録すべき変換則の数が半減される。このように、符号反転を利用することにより、変換テーブルのサイズを半分にすることができる。
また、B−グループに属するシンボルパターンは、B+グループに属するシンボルパターンを符号反転することにより得られる。さらに、C−グループに属するシンボルパターンは、C+グループに属するシンボルパターンを符号反転することにより得られる。そして、D−グループに属するシンボルパターンは、D+グループに属するシンボルパターンを符号反転することにより得られる。
そのため、B+グループ及びB−グループ(以下、Bグループ)に属するシンボルパターンは、B+又はB−グループに属する80通りのシンボルパターンにより表現できる。さらに、C+グループ及びC−グループ(以下、Cグループ)に属するシンボルパターンは、C+又はC−グループに属する68通りのシンボルパターンにより表現できる。そして、D+グループ及びD−グループ(以下、Dグループ)に属するシンボルパターンは、D+又はD−グループに属する52通りのシンボルパターンにより表現できる。
従って、14B8Q変換の際、B、C、Dグループに属するシンボルパターンは、それぞれ80通り、68通り、52通りの変換則を用いて得ることができる。その結果、変換テーブルに記録すべき変換則の数が半減される。このように、符号反転を利用することにより、変換テーブルのサイズを半分にすることができる。
(順序反転について)
上記の通り、符号反転を利用することにより変換テーブルのサイズを半減することができる。しかし、14B8Q変換の際に参照すべき変換則の数は、42+80+68+52=242通りも存在する。
そこで、本件発明者は、B+グループに属する80通りのシンボルパターンは、ある40通りのシンボルパターンと、これらシンボルパターンに含まれるシンボルの並び順を左右反転(以下、順序反転)した40通りのシンボルパターンとで構成されることに注目した。例えば、B+グループには、シンボルパターン{−2,0,1,2}と、このシンボルパターンを順序反転したシンボルパターン{2,1,0,−2}とが含まれている。
このように、B+グループには、順序反転により表現可能なシンボルパターンの組が40通り存在する。そのため、B+グループに属するシンボルパターンは、40通りのシンボルパターンを用いて表現することができる。従って、14B8Q変換の際、Bグループに属するシンボルパターンは、40通りの変換則を用いて得られる。同様に、D+グループにも順序反転により表現可能なシンボルパターンの組が26通り含まれている。
そのため、Dグループに属するシンボルパターンは、26通りの変換則を用いて得られる。その結果、B、Dグループに関し、変換テーブルに記録すべき変換則の数が半減される。また、C+グループにも左右対称なシンボルパターンの組が存在するため、順序反転を利用することにより変換則の数を低減することができる。このように、順序反転を利用することにより、変換テーブルのサイズを低減可能になる。
(変換テーブルの一例)
先に述べた通り、514のシンボルパターンを全て利用せずとも14ビットを表現することができる。そのため、14B8Q変換に利用するシンボルパターンを必要な数だけ選択して利用することにより、変換テーブルに記録すべき変換則の数を減らすことができる。例えば、Aグループから32通り(図8を参照)、Bグループから32通り(図9を参照)、Cグループから16通り(図10を参照)、Dグループから16通り(図11を参照)のシンボルパターンを選択して利用する。なお、14B8Q変換に利用しないシンボルパターンは、同期用のシンボルパターン等として利用することができる。
但し、図8は、所定のビット列(以下、Aグループテーブル番号)をAグループに属するシンボルパターンに変換するための変換テーブル(以下、Aテーブル)である。例えば、Aテーブルには、Aグループテーブル番号{00001}をシンボルパターン{−2,−1,2,1}に変換する変換則が記録されている。また、図9は、所定のビット列(以下、Bグループテーブル番号)をBグループに属するシンボルパターンに変換するための変換テーブル(以下、Bテーブル)である。例えば、Bテーブルには、Bグループテーブル番号{00001}をシンボルパターン{−2,0,2,1}に変換する変換則が記録されている。
図10は、所定のビット列(以下、Cグループテーブル番号)をCグループに属するシンボルパターンに変換するための変換テーブル(以下、Cテーブル)である。例えば、Cテーブルには、Cグループテーブル番号{00001}をシンボルパターン{−1,0,2,1}に変換する変換則が記録されている。また、図11は、所定のビット列(以下、Dグループテーブル番号)をDグループに属するシンボルパターンに変換するための変換テーブル(以下、Dテーブル)である。例えば、Dテーブルには、Dグループテーブル番号{10001}をシンボルパターン{−2,2,2,1}に変換する変換則が記録されている。
(具体的な符号化方法について)
次に、図12〜図14を参照しながら、14B8Q変換に基づく具体的な符号化方法について説明する。図12は、Aテーブルを利用した符号化方法を示す説明図である。図13は、Bテーブルを利用した符号化方法を示す説明図である。図14は、Cテーブル、Dテーブルを利用した符号化方法を示す説明図である。
(Aテーブルによる14B8Q変換について)
まず、図12を参照しながら、Aテーブルによる14B8Q変換について説明する。14ビットのビット列{b13,…,b1,b0}が入力されると、上位2ビット{b13,b12}が参照される。そして、上位2ビットが{00}の場合、Aテーブルによる14B8Q変換が実行される。
図12に示すように、4〜8ビット目(以下、前半)のビット列{b10,…,b6}、及び、10〜14ビット目(以下、後半)のビット列{b4,…,b0}は、Aテーブルに基づいてシンボルパターンに変換される。例えば、前半のビット列が{00011}である場合、まず、Aテーブルの中から、このビット列に一致するAグループテーブル番号{00011}が参照される。そして、Aグループテーブル番号{00011}に対応するシンボルパターン{−2,0,2,0}が読み出され、前半のビット列{00011}がシンボルパターン{−2,0,2,0}に変換される。後半のビット列についても同様である。
また、3ビット目のビット値b11が1の場合、前半のビット列を変換して得られたシンボルパターンは符号反転される。一方、3ビット目のビット値b11が0の場合、前半のビット列を変換して得られたシンボルパターンは符号反転されない。同様に、9ビット目のビット値b5が1の場合、後半のビット列を変換して得られたシンボルパターンは符号反転される。一方、9ビット目のビット値b5が0の場合、後半のビット列を変換して得られたシンボルパターンは符号反転されない。
このようにして14ビットのビット列は、前半4シンボルのシンボルパターン、及び後半4シンボルのシンボルパターンに変換される。AグループのシンボルパターンはDC値が0である。そのため、前半4シンボルと後半4シンボルとを結合して得られる8シンボルのシンボルパターンのDC値は0になる。
(Bテーブルによる14B8Q変換について)
次に、図13を参照しながら、Bテーブルによる14B8Q変換について説明する。14ビットのビット列{b13,…,b1,b0}が入力されると、上位2ビット{b13,b12}が参照される。そして、上位2ビットが{01}又は{10}の場合、Bテーブルによる14B8Q変換が実行される。
図13に示すように、4〜8ビット目(以下、前半)のビット列{b10,…,b6}、及び、10〜14ビット目(以下、後半)のビット列{b4,…,b0}は、Bテーブルに基づいてシンボルパターンに変換される。例えば、前半のビット列が{00011}である場合、まず、Bテーブルの中から、このビット列に一致するBグループテーブル番号{00011}が参照される。そして、Bグループテーブル番号{00011}に対応するシンボルパターン{−2,1,2,0}が読み出され、前半のビット列{00011}がシンボルパターン{−2,1,2,0}に変換される。後半のビット列についても同様である。
また、上記2ビットのビット列{b13,b12}が{10}の場合、前半のビット列を変換して得られたシンボルパターンが符号反転される。一方、上記2ビットのビット列{b13,b12}が{01}の場合、後半のビット列を変換して得られたシンボルパターンが符号反転される。
また、3ビット目のビット値b11が1の場合、前半のビット列を変換して得られたシンボルパターンは順序反転される。一方、3ビット目のビット値b11が0の場合、前半のビット列を変換して得られたシンボルパターンは順序反転されない。同様に、9ビット目のビット値b5が1の場合、後半のビット列を変換して得られたシンボルパターンは順序反転される。一方、9ビット目のビット値b5が0の場合、後半のビット列を変換して得られたシンボルパターンは順序反転されない。
このようにして14ビットのビット列は、前半4シンボルのシンボルパターン、及び後半4シンボルのシンボルパターンに変換される。BグループのシンボルパターンはDC値の絶対値が1である。図13の例では、BテーブルがB+グループに属するシンボルパターンにより構成されているため、DC値は+1である。しかし、前半4シンボル又は後半4シンボルが符号反転されるため、前半4シンボルと後半4シンボルとを結合して得られる8シンボルのシンボルパターンのDC値は0になる。
(C、Dテーブルによる14B8Q変換について)
次に、図14を参照しながら、C、Dテーブルによる14B8Q変換について説明する。14ビットのビット列{b13,…,b1,b0}が入力されると、上位2ビット{b13,b12}が参照される。そして、上位2ビットが{11}の場合、C、Dテーブルによる14B8Q変換が実行される。
図14に示すように、6〜9ビット目(以下、前半)のビット列{b8,…,b5}、及び、11〜14ビット目(以下、後半)のビット列{b3,…,b0}は、C、Dテーブルに基づいてシンボルパターンに変換される。但し、Cテーブルを用いるか、Dテーブルを用いるか、の選択は、4ビット目のビット値b10に基づいて行われる。ビット値b10が0の場合、Cテーブルが用いられる。一方、ビット値b10が1の場合、Dテーブルが用いられる。
例えば、ビット値b10が0であり、前半のビット列が{0011}である場合、まず、Cテーブルの中から、このビット列に一致するCグループテーブル番号{0011}が参照される。そして、Cグループテーブル番号{0011}に対応するシンボルパターン{−1,1,2,0}が読み出され、前半のビット列{0011}がシンボルパターン{−1,1,2,0}に変換される。後半のビット列についても同様である。
また、3ビット目のビット値b11が1の場合、前半のビット列を変換して得られたシンボルパターンが符号反転される。一方、3ビット目のビット値b11が0の場合、後半のビット列を変換して得られたシンボルパターンが符号反転される。
また、5ビット目のビット値b9が1の場合、前半のビット列を変換して得られたシンボルパターンは順序反転される。一方、5ビット目のビット値b9が0の場合、前半のビット列を変換して得られたシンボルパターンは順序反転されない。同様に、10ビット目のビット値b4が1の場合、後半のビット列を変換して得られたシンボルパターンは順序反転される。一方、10ビット目のビット値b4が0の場合、後半のビット列を変換して得られたシンボルパターンは順序反転されない。
このようにして14ビットのビット列は、前半4シンボルのシンボルパターン、及び後半4シンボルのシンボルパターンに変換される。CグループのシンボルパターンはDC値の絶対値が2である。また、DグループのシンボルパターンはDC値の絶対値が3である。図14の例では、C、DテーブルがそれぞれC+、D+グループに属するシンボルパターンにより構成されているため、DC値はそれぞれ+2、+3である。しかし、前半4シンボル又は後半4シンボルが符号反転されるため、前半4シンボルと後半4シンボルとを結合して得られる8シンボルのシンボルパターンのDC値は0になる。
以上、本実施形態の14B8Q変換に基づく符号化方法ついて説明した。上記の符号化方法を利用すると、サイズの小さい変換テーブルを利用してDC値が0の5値8シンボルのシンボルパターンを得ることができる。上記の符号化方法を利用することにより、同じクロックで伝送されるデータ量が増えるため、伝送速度が向上する。例えば、14ビットのビット列を100%デューティのAMI符号に符号化して伝送する場合に比べ、1.75倍の伝送速度が得られる。また、伝送信号がDCフリーになるため、直流遮断の伝送路において伝送品質の劣化が生じない。さらに、変換テーブルのサイズが小さくて済むため、8B6T変換を利用する場合に比べ回路規模を大幅に小さくすることができる。
[2−2:携帯端末100の機能構成]
次に、図15を参照しながら、上記の符号化方法を実現可能な携帯端末100の機能構成について説明する。図15は、本実施形態に係る携帯端末100の機能構成例を示す説明図である。なお、図15の例では、本実施形態の符号化方法と新方式の符号化方法とを組み合わせて利用している。なお、本実施形態の符号化方法を単独で用いる場合には、受信部130のクロック抽出部136にPLLを設け、PLLを利用してクロックを再生するように変形すればよい。
図15に示すように、携帯端末100は、送信部110(例えば、シリアライザ26の一部機能に相当)、及び受信部130(例えば、デシリアライザ30の一部機能に相当)により構成される。また、送信部110と受信部130とは、同軸ケーブル120により電気的に接続されている。
送信部110は、主に、14B8Q変換部112と、符号化部114と、ドライバ116と、重畳部118と、を有する。そして、受信部130は、主に、分離部132と、レシーバ134と、クロック抽出部136と、復号部138と、14B8Q逆変換部140と、を有する。但し、送信部110、受信部130には、図示しない記憶部が設けられている。なお、図15の例においては、伝送信号を直流電源に重畳して伝送する構成が示されているが、本実施形態の適用範囲はこれに限定されない。
まず、送信部110には、送信データ、及び送信クロックが入力される。送信データは14B8Q変換部112に入力される。また、送信クロックは、14B8Q変換部112、及び符号化部114に入力される。14B8Q変換部112は、図8〜図11に例示したAテーブル〜Dテーブルを利用して送信データを14B8Q変換し、8シンボルの5値シンボル列で構成される符号化データを生成する。このとき、14B8Q変換部112は、図12〜図14に示した符号化方法に則って符号化データを生成する。14B8Q変換部112により生成された符号化データは、符号化部114に入力される。
符号化データが入力されると、符号化部114は、多値の伝送信号を生成する。そして、符号化部114により生成された多値の伝送信号は、ドライバ116に入力されて適切な振幅レベルに変換される。
ドライバ116でレベル変換が施された伝送信号は、重畳部118に入力される。伝送信号が入力されると、重畳部118は、伝送信号に直流電源から供給される電力信号を重畳して重畳信号を生成する。上記の通り、送信部110で生成される多値の伝送信号には直流成分がほとんど含まれない。そのため、伝送信号を電力信号に重畳したとしても、各種のフィルタを用いて容易に伝送信号と電力信号とを分離することができる。このように、伝送信号を電力信号に重畳することにより、1本の同軸ケーブル120だけで両信号を伝送できるようになる。その結果、シリアル信号ラインの配線数を減らすことができる。
さて、重畳部118により生成された重畳信号は、同軸ケーブル120を通じて受信部130に伝送される。そして、同軸ケーブル120を通じて伝送された重畳信号は、分離部132に入力される。重畳信号が入力されると、分離部132は、重畳信号から伝送信号と電力信号とを分離する。分離部132により分離された電力信号は、受信部130の各構成要素に電源として供給される。一方、分離部132により分離された伝送信号は、レシーバ134で受信され、クロック抽出部136、及び復号部138に入力される。
伝送信号が入力されると、クロック抽出部136は、PLLを用いてクロックを再生する。再生されたクロック成分は、受信クロックとして復号部138に入力される。また、この受信クロックは、受信部130の外部に出力される。
さて、受信クロックが入力されると、復号部138は、入力された受信クロックを利用して所定の閾値を基準に伝送信号の振幅値を判定する。そして、復号部138は、判定結果に基づいて8シンボルの5値シンボル列により構成される符号化データを再生する。復号部138により再生された符号化データは、14B8Q逆変換部140に入力される。符号化データが入力されると、14B8Q逆変換部140は、符号化データに含まれる5値シンボルを8シンボル単位で抽出し、図12〜図14に示した符号化方法の逆処理を行って送信データを復元する。
このとき、14B8Q逆変換部140は、Aテーブル〜Dテーブルを参照し、8シンボルのシンボルパターンから14ビットのビット列を復元する。例えば、8シンボルのシンボルパターン{−1,0,0,1,2,1,−2,−1}が入力された場合、14B8Q逆変換部140は、前半4シンボルのDC値を算出する。この例ではDC値が0であるため、14B8Q逆変換部140は、Aテーブルを利用してビット列への逆変換を試みる。また、この段階で、14B8Q逆変換部140は、ビット列の上位2ビットを{00}に決定する。
次に、14B8Q逆変換部140は、前半4シンボルのシンボルパターン{−1,0,0,1}をAテーブルから検索する。シンボルパターン{−1,0,0,1}は、Aテーブルに含まれており、Aグループテーブル番号{01111}に対応付けられている。そのため、14B8Q逆変換部140は、前半4シンボルに符号反転が施されていないこと、及び対応するAグループテーブル番号が{01111}であると認識する。そして、14B8Q逆変換部140は、3ビット目のビット値を0に決定し、4〜8ビット目のビット列を{01111}に決定する。
次に、14B8Q逆変換部140は、後半4シンボルのシンボルパターン{2,1,−2,−1}をAテーブルから検索する。しかし、シンボルパターン{2,1,−2,−1}は、Aテーブルに含まれていない。そこで、14B8Q逆変換部140は、後半4シンボルのシンボルパターンを符号反転したシンボルパターン{−2,−1,2,1}をAテーブルから検索する。シンボルパターン{−2,−1,2,1}は、Aテーブルに存在し、Aグループテーブル番号{00001}に対応付けられている。そのため、14B8Q逆変換部140は、後半4シンボルに符号反転が施されていること、及び対応するAグループテーブル番号が{00001}であると認識する。そして、14B8Q逆変換部140は、9ビット目のビット値を1に決定し、10〜14ビット目のビット列を{00001}に決定する。
以上の方法により、14B8Q逆変換部140は、8シンボルのシンボルパターン{−1,0,0,1,2,1,−2,−1}から14ビットのビット列{00001111100001}を復元する。同様に、B、C、Dテーブルを利用して14B8Q変換されたシンボルパターンも、B、C、Dテーブルを利用して元のビット列に復元可能である。但し、B、C、Dテーブルを利用する場合には、符号反転を判別する操作に加え、順序反転を判別する操作が必要になる。この場合、そのままのシンボルパターン、符号反転したシンボルパターン、順序反転したシンボルパターンを順次、変換テーブル内で検索することにより、符号反転の有無、順序反転の有無を検出することが可能である。また、どのテーブルを利用しているかは、上記Aテーブルの場合と同様、DC値により判別できる。
このようにして14B8Q逆変換部140により復元された送信データは、受信部130の外部に出力される。例えば、14B8Q逆変換部140により復元された送信データは、例えば、画像を表示するための表示部に向けて出力される。なお、本実施形態の技術的範囲を逸脱しない範囲内において上記構成を適宜変形することもできる。例えば、ここでは説明の都合上、送信部110と受信部130とが1つの機器内に設けられているものと仮定したが、送信部110と受信部130とが別機器に搭載されていてもよい。
以上、本発明の第1実施形態について説明した。ここでは14B8Q変換を例に挙げたが、上記説明した方法によりM、Nを適切に選択することで、本実施形態と同様に他のMBNQ変換による有効な符号化方法を実現することができる。もちろん、このような有効な符号化方法が本実施形態の技術的範囲に含まれることは言うまでもない。
<3:第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態は、12ビットのビット列を8シンボルの4値シンボル列に変換する12B8Q変換(14 Binary 8 Quaternary Transform)に関する。
[3−1:12B8Q変換に基づく符号化方法]
以下、12B8Q変換に基づく符号化方法について詳細に説明する。
(14B8Q変換について)
まず、図16、図17を参照しながら、12B8Q変換、及び12B8Q変換に基づくデータ伝送方法について説明する。図16に示すように、12B8Q変換とは、12ビットのビット列{b0,…,b11}を8シンボルの4値シンボル列{q0,…,q7}に変換する方法である。なお、4値シンボル列に含まれる(j+1)番目のシンボルqj(j=0〜7)は、図17に示すように、4値のシンボル値(例えば、+1.5、+0.5、−0.5、−1.5)をとる。12B8Q変換により生成された4値シンボル列は、各シンボルのシンボル値を振幅とする伝送信号の形で伝送される。この伝送信号のアイパターンは、おおよそ図17の右側に示した形となる。
ここで、再びMBNQ変換(M、Nは自然数;M>N)を実現可能なM、Nの組み合わせについて考えてみたい。ここで考えるMBNQ変換は、M個のビット列{b0,…,b(M−1)}をN個の4値シンボル列{q0,…,q(N−1)}に変換する方法である。当然のことながら、M個のビット列{b0,…,b(M−1)}で表現される組み合わせの数よりも、N個の4値シンボル列{q0,…,q(N−1)}で表現される組み合わせの数が少ない場合、MBNQ変換は実現できない。M個のビット列{b0,…,b(M−1)}の組み合わせ数は2Mである。また、N個の4値シンボル列{q0,…,q(N−1)}の組み合わせ数は4Nである。そのため、MBNQ変換を実現するには、条件2M<4Nを満たす必要がある。
また、M≦Nの場合、Mビットのビット列をそのまま伝送する場合に比べて伝送速度がM/N≦1となるため、MBNQ変換を用いても伝送速度が向上しない。そこで、有効なMBNQ変換を実現するには、条件1:2M<4N、条件2:M>Nを満たすM、Nを決定することが必要になる。例えば、12B8Q変換は、M=12、N=8の場合に相当する。212=4,096、48=65,536であるから、条件1を満たす。また、M(=12)>N(=8)であるから、条件2を満たす。なお、12B8Q変換を利用すると、伝送速度が12/8=1.5倍に向上する。
上記の条件1、条件2を満たすようにM、Nを選択することにより、MBNQ変換を実現可能なM、Nの組み合わせを決定することができる。また、M/Nが大きくなるM、Nの組み合わせを選択することにより伝送速度を向上させることができる。しかし、4値シンボル列{q0,…,q(N−1)}の組み合わせには、DC値が0でない組み合わせが多数含まれている。DC値が0でない4値シンボル列の組み合わせを用いると、伝送信号に直流成分が含まれてしまい、直流遮断の伝送路において信号品質の劣化が生じてしまう。そのため、4値シンボル列{q0,…,q(N−1)}の組み合わせの中から、DC値が0となる組み合わせを選択してMBNQ変換の変換則を定義することが望ましい。
しかし、DC値が0となる4値シンボル列の組み合わせ数はそれほど多くない。仮に、条件1を「2M<DC値が0となる4値シンボル列の組み合わせ数」に変更すると、M/Nが小さなM、Nの組み合わせしか得られなくなる。そのため、伝送速度を大きく向上させるためには、DC値が0以外となる4値シンボル列の組み合わせを利用しつつ、伝送信号の直流成分を抑圧する方法が求められる。こうした要求に対し、本件発明者は、図18に示すように、8シンボルの4値シンボル列を前半4シンボル、後半4シンボルに分け、8シンボルの4値シンボル列全体でDC値を0にする符号化方法を考案した。
図17に例示した4値シンボル列{q0,…,q7}の場合、各シンボルのシンボル値qjが−1.5、−0.5、+0.5、+1.5の4値をとるため、4値シンボル列{q0,…,q7}のDC値は、最大で1.5*8=14となる。本実施形態に係る符号化方法は、前半4シンボルのDC値がX(Xは実数)、後半4シンボルのDC値が−Xとなるように12ビットのビット列{b0,…,b11}を符号化する方法である。このように、前半4シンボルのDC値と後半4シンボルのDC値とが同じ絶対値を持ち、正負が反転した値を持つことで、8シンボルの4値シンボル列全体でDC値が0になる。なお、本実施形態に係る符号化方法では、短時間(4シンボル時間)におけるDC値変化の影響をも考慮し、4シンボルのDC値の絶対値が3までの組み合わせを利用する。
まず、4シンボルの4値シンボル列をDC値毎にグループ化する。例えば、DC値=0のグループをAグループ、DC値=+1のグループをB+グループ、DC値=−1のグループをB−グループと表現する。また、DC値=+2のグループをC+グループ、DC値=−2のグループをC−グループ、DC値=+3のグループをD+グループ、DC値=−3のグループをC−グループと表現する。なお、本実施形態においても、上記の第1実施形態と同様に、符号反転、及び順序反転を利用して変換テーブルのサイズを縮小する。
図19〜図20は、符号反転、又は符号反転と順序反転との組み合わせによりサイズが縮小された変換テーブルの一例である。
図19は、所定のビット列(以下、Aグループテーブル番号)をAグループに属するシンボルパターンに変換するための変換テーブル(以下、Aテーブル)である。例えば、Aテーブルには、Aグループテーブル番号{0001}をシンボルパターン{−1.5,0.5,1.5,−0.5}に変換する変換則が記録されている。また、図20は、所定のビット列(以下、Bグループテーブル番号)をBグループに属するシンボルパターンに変換するための変換テーブル(以下、Bテーブル)である。例えば、Bテーブルには、Bグループテーブル番号{0001}をシンボルパターン{−1.5,1.5,−0.5,1.5}に変換する変換則が記録されている。
図21は、所定のビット列(以下、Cグループテーブル番号)をCグループに属するシンボルパターンに変換するための変換テーブル(以下、Cテーブル)である。例えば、Cテーブルには、Cグループテーブル番号{0001}をシンボルパターン{−0.5,1.5,−0.5,1.5}に変換する変換則が記録されている。また、図22は、所定のビット列(以下、Dグループテーブル番号)をDグループに属するシンボルパターンに変換するための変換テーブル(以下、Dテーブル)である。例えば、Dテーブルには、Dグループテーブル番号{0001}をシンボルパターン{−0.5,0.5,1.5,1.5}に変換する変換則が記録されている。
なお、参考までに図23〜図26に、符号反転の前後、順序反転の前後におけるA〜Dテーブルの構成を例示した。また、図23〜図26には、実際には変換則に利用しないシンボルパターン(未使用欄に「*」が付いているもの)も示した。図23〜図26に示すように、Aテーブルは、符号反転によりシンボルパターンの数が半分に抑制される。また、符号反転によりB+又はB−テーブル、C+又はC−テーブル、D+又はD−テーブルを省略することができる。さらに、B、C、Dテーブルは、順序反転により大幅にシンボルパターンの数を低減することができる。そして、必要な数だけシンボルパターンを抽出して用いることにより、図19〜図21に示すようなサイズの小さい変換テーブルが得られる。
(具体的な符号化方法について)
次に、図27〜図29を参照しながら、12B8Q変換に基づく具体的な符号化方法について説明する。図27は、Aテーブルを利用した符号化方法を示す説明図である。図28は、Bテーブルを利用した符号化方法を示す説明図である。図29は、Cテーブル、Dテーブルを利用した符号化方法を示す説明図である。
(Aテーブルによる12B8B変換について)
まず、図27を参照しながら、Aテーブルによる12B8Q変換について説明する。12ビットのビット列{b11,…,b1,b0}が入力されると、上位2ビット{b11,b10}が参照される。そして、上位2ビットが{00}の場合、Aテーブルによる12B8Q変換が実行される。
図27に示すように、4〜7ビット目(以下、前半)のビット列{b8,…,b5}、及び、9〜12ビット目(以下、後半)のビット列{b3,…,b0}は、Aテーブルに基づいてシンボルパターンに変換される。例えば、前半のビット列が{0011}である場合、まず、Aテーブルの中から、このビット列に一致するAグループテーブル番号{0011}が参照される。そして、Aグループテーブル番号{0011}に対応するシンボルパターン{−1.5,1.5,−0.5,0.5}が読み出され、前半のビット列{0011}がシンボルパターン{−1.5,1.5,−0.5,0.5}に変換される。後半のビット列についても同様である。
また、3ビット目のビット値b9が1の場合、前半のビット列を変換して得られたシンボルパターンは符号反転される。一方、3ビット目のビット値b9が0の場合、前半のビット列を変換して得られたシンボルパターンは符号反転されない。同様に、8ビット目のビット値b4が1の場合、後半のビット列を変換して得られたシンボルパターンは符号反転される。一方、8ビット目のビット値b4が0の場合、後半のビット列を変換して得られたシンボルパターンは符号反転されない。
このようにして12ビットのビット列は、前半4シンボルのシンボルパターン、及び後半4シンボルのシンボルパターンに変換される。AグループのシンボルパターンはDC値が0である。そのため、前半4シンボルと後半4シンボルとを結合して得られる8シンボルのシンボルパターンのDC値は0になる。
(Bテーブルによる12B8Q変換について)
次に、図28を参照しながら、Bテーブルによる12B8Q変換について説明する。12ビットのビット列{b11,…,b1,b0}が入力されると、上位2ビット{b11,b10}が参照される。そして、上位2ビットが{01}又は{10}の場合、Bテーブルによる12B8Q変換が実行される。
図28に示すように、4〜7ビット目(以下、前半)のビット列{b8,…,b5}、及び、10〜12ビット目(以下、後半)のビット列{b3,…,b0}は、Bテーブルに基づいてシンボルパターンに変換される。例えば、前半のビット列が{0011}である場合、まず、Bテーブルの中から、このビット列に一致するBグループテーブル番号{0011}が参照される。そして、Bグループテーブル番号{0011}に対応するシンボルパターン{−0.5,−1.5,1.5,1.5}が読み出され、前半のビット列{0011}がシンボルパターン{−0.5,−1.5,1.5,1.5}に変換される。後半のビット列についても同様である。
また、上記2ビットのビット列{b11,b10}が{10}の場合、前半のビット列を変換して得られたシンボルパターンが符号反転される。一方、上記2ビットのビット列{b11,b10}が{01}の場合、後半のビット列を変換して得られたシンボルパターンが符号反転される。
また、3ビット目のビット値b9が1の場合、前半のビット列を変換して得られたシンボルパターンは順序反転される。一方、3ビット目のビット値b9が0の場合、前半のビット列を変換して得られたシンボルパターンは順序反転されない。同様に、8ビット目のビット値b4が1の場合、後半のビット列を変換して得られたシンボルパターンは順序反転される。一方、8ビット目のビット値b4が0の場合、後半のビット列を変換して得られたシンボルパターンは順序反転されない。
このようにして12ビットのビット列は、前半4シンボルのシンボルパターン、及び後半4シンボルのシンボルパターンに変換される。BグループのシンボルパターンはDC値の絶対値が1である。図28の例では、BテーブルがB+グループに属するシンボルパターンにより構成されているため、DC値は+1である。しかし、前半4シンボル又は後半4シンボルが符号反転されるため、前半4シンボルと後半4シンボルとを結合して得られる8シンボルのシンボルパターンのDC値は0になる。
(C、Dテーブルによる12B8Q変換について)
次に、図29を参照しながら、C、Dテーブルによる12B8Q変換について説明する。12ビットのビット列{b11,…,b1,b0}が入力されると、上位2ビット{b11,b10}が参照される。そして、上位2ビットが{11}の場合、C、Dテーブルによる12B8Q変換が実行される。
図29に示すように、6〜8ビット目(以下、前半)のビット列{b6,…,b4}、及び、9〜12ビット目(以下、後半)のビット列{b2,…,b0}は、C、Dテーブルに基づいてシンボルパターンに変換される。但し、Cテーブルを用いるか、Dテーブルを用いるか、の選択は、4ビット目のビット値b8に基づいて行われる。ビット値b8が0の場合、Cテーブルが用いられる。一方、ビット値b8が1の場合、Dテーブルが用いられる。
例えば、ビット値b8が0であり、前半のビット列が{011}である場合、まず、Cテーブルの中から、このビット列に一致するCグループテーブル番号{011}が参照される。そして、Cグループテーブル番号{011}に対応するシンボルパターン{0.5,−0.5,0.5,1.5}が読み出され、前半のビット列{011}がシンボルパターン{0.5,−0.5,0.5,1.5}に変換される。後半のビット列についても同様である。
また、3ビット目のビット値b9が1の場合、前半のビット列を変換して得られたシンボルパターンが符号反転される。一方、3ビット目のビット値b9が0の場合、後半のビット列を変換して得られたシンボルパターンが符号反転される。
また、5ビット目のビット値b7が1の場合、前半のビット列を変換して得られたシンボルパターンは順序反転される。一方、5ビット目のビット値b7が0の場合、前半のビット列を変換して得られたシンボルパターンは順序反転されない。同様に、9ビット目のビット値b3が1の場合、後半のビット列を変換して得られたシンボルパターンは順序反転される。一方、9ビット目のビット値b3が0の場合、後半のビット列を変換して得られたシンボルパターンは順序反転されない。
このようにして12ビットのビット列は、前半4シンボルのシンボルパターン、及び後半4シンボルのシンボルパターンに変換される。CグループのシンボルパターンはDC値の絶対値が2である。また、DグループのシンボルパターンはDC値の絶対値が3である。図29の例では、C、DテーブルがそれぞれC+、D+グループに属するシンボルパターンにより構成されているため、DC値はそれぞれ+2、+3である。しかし、前半4シンボル又は後半4シンボルが符号反転されるため、前半4シンボルと後半4シンボルとを結合して得られる8シンボルのシンボルパターンのDC値は0になる。
以上、本実施形態の12B8Q変換に基づく符号化方法ついて説明した。上記の符号化方法を利用すると、サイズの小さい変換テーブルを利用してDC値が0の4値8シンボルのシンボルパターンを得ることができる。上記の符号化方法を利用することにより、同じクロックで伝送されるデータ量が増えるため、伝送速度が向上する。例えば、12ビットのビット列を100%デューティのAMI符号に符号化して伝送する場合に比べ、1.5倍の伝送速度が得られる。また、伝送信号がDCフリーになるため、直流遮断の伝送路において伝送品質の劣化が生じない。さらに、変換テーブルのサイズが小さくて済むため、8B6T変換を利用する場合に比べ回路規模を大幅に小さくすることができる。
[3−2:携帯端末100の機能構成]
次に、図30を参照しながら、上記の符号化方法を実現可能な携帯端末100の機能構成について説明する。図30は、本実施形態に係る携帯端末100の機能構成例を示す説明図である。なお、図30の例では、本実施形態の符号化方法と新方式の符号化方法とを組み合わせて利用している。なお、本実施形態の符号化方法を単独で用いる場合には、受信部130のクロック抽出部136にPLLを設け、PLLを利用してクロックを再生するように変形すればよい。
図30に示すように、携帯端末100は、送信部110(例えば、シリアライザ26の一部機能に相当)、及び受信部130(例えば、デシリアライザ30の一部機能に相当)により構成される。また、送信部110と受信部130とは、同軸ケーブル120により電気的に接続されている。
送信部110は、主に、12B8Q変換部152と、符号化部114と、ドライバ116と、重畳部118と、を有する。そして、受信部130は、主に、分離部132と、レシーバ134と、クロック抽出部136と、復号部138と、12B8Q逆変換部154と、を有する。但し、送信部110、受信部130には、図示しない記憶部が設けられている。なお、図30の例においては、伝送信号を直流電源に重畳して伝送する構成が示されているが、本実施形態の適用範囲はこれに限定されない。
まず、送信部110には、送信データ、及び送信クロックが入力される。送信データは12B8Q変換部152に入力される。また、送信クロックは、12B8Q変換部152、及び符号化部114に入力される。12B8Q変換部152は、図19〜図22に例示したAテーブル〜Dテーブルを利用して送信データを12B8Q変換し、8シンボルの4値シンボル列で構成される符号化データを生成する。このとき、12B8Q変換部152は、図27〜図29に示した符号化方法に則って符号化データを生成する。12B8Q変換部152により生成された符号化データは、符号化部114に入力される。
符号化データが入力されると、符号化部114は、多値の伝送信号を生成する。そして、符号化部114により生成された多値の伝送信号は、ドライバ116に入力されて適切な振幅レベルに変換される。
ドライバ116でレベル変換が施された伝送信号は、重畳部118に入力される。伝送信号が入力されると、重畳部118は、伝送信号に直流電源から供給される電力信号を重畳して重畳信号を生成する。上記の通り、送信部110で生成される多値の伝送信号には直流成分がほとんど含まれない。そのため、伝送信号を電力信号に重畳したとしても、各種のフィルタを用いて容易に伝送信号と電力信号とを分離することができる。このように、伝送信号を電力信号に重畳することにより、1本の同軸ケーブル120だけで両信号を伝送できるようになる。その結果、シリアル信号ラインの配線数を減らすことができる。
さて、重畳部118により生成された重畳信号は、同軸ケーブル120を通じて受信部130に伝送される。そして、同軸ケーブル120を通じて伝送された重畳信号は、分離部132に入力される。重畳信号が入力されると、分離部132は、重畳信号から伝送信号と電力信号とを分離する。分離部132により分離された電力信号は、受信部130の各構成要素に電源として供給される。一方、分離部132により分離された伝送信号は、レシーバ134で受信され、クロック抽出部136、及び復号部138に入力される。
伝送信号が入力されると、クロック抽出部136は、PLLを用いてクロックを再生する。再生されたクロック成分は、受信クロックとして復号部138に入力される。また、この受信クロックは、受信部130の外部に出力される。
さて、受信クロックが入力されると、復号部138は、入力された受信クロックを利用して所定の閾値を基準に伝送信号の振幅値を判定する。そして、復号部138は、判定結果に基づいて8シンボルの4値シンボル列により構成される符号化データを再生する。復号部138により再生された符号化データは、12B8Q逆変換部154に入力される。符号化データが入力されると、12B8Q逆変換部154は、符号化データに含まれる4値シンボルを8シンボル単位で抽出し、図27〜図29に示した符号化方法の逆処理を行って送信データを復元する。
このとき、12B8Q逆変換部154は、Aテーブル〜Dテーブルを参照し、8シンボルのシンボルパターンから12ビットのビット列を復元する。例えば、8シンボルのシンボルパターン{−0.5,1.5,0.5,−1.5,0.5,0.5,−0.5,−0.5}が入力された場合、12B8Q逆変換部154は、前半4シンボルのDC値を算出する。この例ではDC値が0であるため、12B8Q逆変換部154は、Aテーブルを利用してビット列への逆変換を試みる。また、この段階で、12B8Q逆変換部154は、ビット列の上位2ビットを{00}に決定する。
次に、12B8Q逆変換部154は、前半4シンボルのシンボルパターン{−0.5,1.5,0.5,−1.5}をAテーブルから検索する。シンボルパターン{−0.5,1.5,0.5,−1.5}は、Aテーブルに含まれており、Aグループテーブル番号{1111}に対応付けられている。この段階で、12B8Q逆変換部154は、前半4シンボルに符号反転が施されていないこと、及び対応するAグループテーブル番号が{1111}であると認識する。そして、12B8Q逆変換部154は、3ビット目のビット値を0に決定し、4〜7ビット目のビット列を{1111}に決定する。
次に、12B8Q逆変換部154は、後半4シンボルのシンボルパターン{0.5,0.5,−0.5,−0.5}をAテーブルから検索する。しかし、シンボルパターン{0.5,0.5,−0.5,−0.5}は、Aテーブルに含まれていない。そこで、12B8Q逆変換部154は、後半4シンボルのシンボルパターンを符号反転したシンボルパターン{−0.5,−0.5,0.5,0.5}をAテーブルから検索する。
シンボルパターン{−0.5,−0.5,0.5,0.5}は、Aテーブルに存在し、Aグループテーブル番号{1000}に対応付けられている。そのため、12B8Q逆変換部154は、後半4シンボルに符号反転が施されていること、及び対応するAグループテーブル番号が{1000}であると認識する。そして、12B8Q逆変換部154は、8ビット目のビット値を1に決定し、9〜12ビット目のビット列を{1000}に決定する。
以上の方法により、12B8Q逆変換部154は、8シンボルのシンボルパターン{−0.5,1.5,0.5,−1.5,0.5,0.5,−0.5,−0.5}から12ビットのビット列{000111111000}を復元する。同様に、B、C、Dテーブルを利用して12B8Q変換されたシンボルパターンも、B、C、Dテーブルを利用して元のビット列に復元可能である。
但し、B、C、Dテーブルを利用する場合には、符号反転を判別する操作に加え、順序反転を判別する操作が必要になる。この場合、そのままのシンボルパターン、符号反転したシンボルパターン、順序反転したシンボルパターンを順次、変換テーブル内で検索することにより、符号反転の有無、順序反転の有無を検出することが可能である。また、どのテーブルを利用しているかは、上記Aテーブルの場合と同様、DC値により判別できる。
このようにして12B8Q逆変換部154により復元された送信データは、受信部130の外部に出力される。例えば、12B8Q逆変換部154により復元された送信データは、例えば、画像を表示するための表示部に向けて出力される。なお、本実施形態の技術的範囲を逸脱しない範囲内において上記構成を適宜変形することもできる。例えば、ここでは説明の都合上、送信部110と受信部130とが1つの機器内に設けられているものと仮定したが、送信部110と受信部130とが別機器に搭載されていてもよい。
以上、本発明の第2実施形態について説明した。ここでは12B8Q変換を例に挙げたが、上記説明した方法によりM、Nを適切に選択することで、本実施形態と同様に他のMBNQ変換による有効な符号化方法を実現することができる。もちろん、このような有効な符号化方法が本実施形態の技術的範囲に含まれることは言うまでもない。
<4:まとめ>
最後に、本発明の実施形態に係る技術内容について簡単に纏める。ここで述べる技術内容は、例えば、PC、携帯電話、携帯ゲーム機、携帯情報端末、情報家電、カーナビゲーションシステム等、種々の情報処理装置に対して適用することができる。
上記の情報処理装置の機能構成は次のように表現することができる。当該情報処理装置は、次のような符号化部を有する。当該符号化部は、Lビットのビット列をN/2シンボルのK値シンボル列(K>2)に変換する変換則群のうち、前記K値シンボル列の合計値がXとなる第1変換則群と、前記K値シンボル列の合計値が−Xとなる第2変換則群と、に基づいて、Mビット(M≧2*L)のビット列をNシンボルの前記K値シンボル列に変換する。特に、前記符号化部は、前記Mビットのビット列を前記NシンボルのK値シンボル列に変換する際、前半N/2シンボルを前記1変換則群に基づいて変換し、後半N/2シンボルを前記第2変換則群に基づいて変換する。
上記のように、本実施形態に係る情報処理装置は、Mビットのビット列をNシンボルのシンボル列に変換する際、前半N/2シンボルのシンボル列が合計値Xをとり、後半N/2シンボルのシンボル列が合計値−Xをとるように変換する。その結果、Nシンボルのシンボル列全体でシンボル値の合計がX+(−X)=0となる。また、Mビットのビット列がNシンボルのK値シンボル列に変換されることによりビットレートが向上する。
つまり、この変換方法を用いることにより伝送効率の高いDCフリーの伝送信号が得られる。DCフリーの伝送信号は、直流遮断の伝送路において信号の劣化が生じない。そのため、この伝送信号は、直流電源に重畳して伝送することができる。また、前半N/2シンボルと後半N/2シンボルとを分けて変換処理を行うことにより、直流成分を含むシンボル列が得られる変換則を利用してDCフリーの伝送信号を生成することができる。つまり、変換則の有効利用が可能になる。
(備考)
上記の14B8Q変換部112、12B8Q変換部152は、符号化部、変換則決定部、変換処理部の一例である。上記の14B8Q変換部112、12B8Q変換部152に設けられる記憶部は、変換則記憶部の一例である。上記の携帯端末100の構成を上記の携帯端末10に適用してもよい。この場合、上記のベースバンドプロセッサ22は、携帯端末100における演算処理部の一例である。上記の符号化部114、ドライバ116は、データ伝送部の一例である。上記の復号部138、14B8Q逆変換部140、12B8Q逆変換部154は、復元部の一例である。
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
例えば、上記の第1実施形態では14B8Q変換を例に挙げ、上記の第2実施形態では12B8Q変換を例に挙げた。しかし、上記第1実施形態の技術は、X=14、Y=8、Z=5以外の他のX、Y、Zの組み合わせについて、Xビットのビット列をYシンボルのZ値シンボル列に変換する変換則に拡張できる。さらに、上記第2実施形態の技術は、X=12、Y=8、Z=4以外の他のX、Y、Zの組み合わせについて、Xビットのビット列をYシンボルのZ値シンボル列に変換する変換則に拡張できる。