上記した特許文献1に記載の技術(引き込み充填法)では、引き込み得る充填材の量が少なく、しかも、その量にバラツキが大きい。このため、充填材の固化後においても、碍子管内における中継線との密着や、密着面積、及びそれに基づく固定力も不安定であるという課題がある。また、この技術では充填材を碍子管の先端から後方へ引き込み得る範囲も自ずと小さい。
さらに、上記した真空充填法では、減圧、真空過程におけるその開始当初の空気が碍子管上端(後端)から碍子管内に入り込んで、その先端(下端)側の隙間から排出されることになり、その排出に対応して、その先端から内部にセメントが入り込む。一方、真空引き停止時において、槽上部を大気圧に戻すと同時に、碍子管内にその上端から大気が引き込まれてしまう作用を受ける。そして、この大気の侵入により、碍子管の内部に入り込んでいたセメントは押し下げられて、その先端において排出されてしまう(吐き出されてしまう)という問題があった。このため、真空充填法でも、満足いく充填材の充填は得られず、したがって、リード線の外部からの引張り力に対し、十分に抗することはできないという問題があった。
上記したように、碍子管内、すなわち、その中継線挿通用の孔内においてのみで、中継線を充填材で強固に接着ないし固定することには限界があった。このように、上記従来技術では、センサの外部に引き出されているリード線に過大な引張り力が作用したとき、素子の電極線、及びそれと中継線との溶接部などの低強度部の断線防止策としては限界があった。本発明は、温度センサにおけるこうした問題点に鑑みてなされたもので、センサ外部からリード線に過大な引張り力が作用しても、素子の電極線や、それと中継線との溶接部等の低強度部の断線防止策として十分な効果の得られるセンサの構造を提供することをその目的とする。
前記の目的を達成するため、請求項1に記載の本発明は、先端が閉じられた金属製のチューブと、このチューブ内の先端側に配置された温度センサ素子と、このチューブ内において該温度センサ素子の後方に配置され、該温度センサ素子の電極線と接続された中継線を自身の内側に通してなる絶縁管と、この絶縁管の後端から引き出された該中継線の後端と接続されて前記チューブの後端から外部に引き出されたリード線と、該チューブの後端寄り部位の内部に配置されて該リード線を自身の内部を通して外部に引き出しているシール部材とを備える温度センサにおいて、
前記チューブ内に、前記絶縁管の後端寄り部位及び該絶縁管の後端から後方に引き出されている前記中継線の後端寄り部位を、先後に連ねて包囲するように筒状又はリング状をなす包囲部材が配置されており、しかも、該包囲部材の内周面側には、電気的絶縁性を有する充填材が充填され、該充填材によって、該包囲部材の内周面と、前記絶縁管の後端寄り部位及び前記絶縁管の後端から後方に引き出されている前記中継線の後端寄り部位の先後に連なるこの両後端寄り部位の外周面との間が接着されてなることを特徴とする。
請求項2に記載の本発明は、前記包囲部材は、その内径が、先端寄り部位が小径で、後端寄り部位が大径に形成されており、その小径の先端寄り部位で、前記絶縁管の後端寄り部位に隙間嵌めを保持して外嵌されていることを特徴とする、請求項1に記載の温度センサである。
請求項3に記載の本発明は、前記チューブの内周面と、前記絶縁管の外周面との間における、先後方向の少なくとも一部の空間が、電気的絶縁性を有する充填材で充填されていることを特徴とする請求項1又は2のいずれか1項に記載の温度センサである。
請求項4に記載の本発明は、前記チューブは、その内径が小径の小径筒部と、この後方において円環状をなし、かつ後方に向けて拡径する拡径部を介して大径をなす大径筒部を有しており、前記包囲部材は、その先端を該拡径部の後端向き面に係止させて該大径筒部内に配置されていることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の温度センサである。
請求項5に記載の発明は、請求項4において、前記包囲部材は、その先端を前記チューブにおける前記後端向き面に係止させた際において、該チューブ内における該包囲部材の先端より先方と後方との両空間の連通を保持し得る形状又は構造を有していることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の温度センサである。
請求項6に記載の本発明は、前記絶縁管の中継線挿通用の孔の少なくとも先端寄り部位に、電気的絶縁性を有する充填材が充填されていることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の温度センサである。
請求項7に記載の発明は、前記包囲部材は金属製とされ、前記チューブのうち、該包囲部材に対応する先後部位が縮径状にカシメ加工されることにより、該包囲部材が該チューブの内面にて挟圧されて保持されてなることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の温度センサである。
請求項8に記載の発明は、前記チューブの内側であって前記包囲部材の後方に、前記中継線の後端寄り部位を絶縁材を介して包囲する金属製のリング又はパイプが配置されていると共に、
該金属製のリング又はパイプは、自身の先端を前記包囲部材の後端に当接状態とされ、かつ、前記チューブのうち、該金属製のリング又はパイプに対応する先後部位が縮径状にカシメ加工されることにより、該チューブの内面にて挟圧されて保持されていることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の温度センサである。
請求項1に記載の本発明のセンサにおいて、チューブの後端から後方に引き出されているリード線に対し、後方に向けて引張り力が作用すると、その引張り力はセンサ内に位置する中継線の後端側に及ぶ。しかし、本発明では、上記構成のように、包囲部材の内周面側に充填材が充填され、該充填材によって、該包囲部材の内周面と、前記絶縁管の後端寄り部位及び前記絶縁管の後端から後方に引き出されている前記中継線の後端寄り部位の先後に連なるこの両後端寄り部位の外周面との間が接着されている。これにより、本発明のセンサでは、前記絶縁管の後端寄り部位に、該絶縁管の後端から後方に引き出されている前記中継線の後端寄り部位が固定される。このため、本発明では、リード線に対し、後方に向けて過大な引張り力が作用したとしても、その引張り力は、中継線がその後端寄り部位において充填材を介して固定されている絶縁管に及ぶことになる。すなわち、そのような引張り力がかかったとしても、中継線の後端寄り部位において固定されている絶縁管を後方に引張る(引き寄せる)ことになるに止まり、その引張り力は、中継線におけるその固定部位より先方に位置する、素子の電極線との溶接部や、素子の電極線のような低強度部には及ばない。よって本発明によれば、リード線に対し、後方に向けて過大な引張り力が作用したとしても、そのような低強度部の断線防止効果が得られる。
上記構成に示したように本発明では、その断線防止のための手段が、従来の手段である上記「引き込み充填法」、或いは上記「真空充填法」によって得られるものとは、全く異なる。すなわち、本発明は、センサの組立、製造過程において、絶縁管に中継線を通す際、或いは通した後で、その内部の孔と中継線との隙間に充填する充填材にて中継線を絶縁管に固定するという上記従来技術とは全く異なる。このため、本発明では、上記従来技術におけるような充填材の充填におけるその量のバラツキなどによる充填の不安定さ、或いは充填工程における上記した問題もない。
すなわち、詳細は後述するが、例えば、センサの組立、製造過程においては、絶縁管の先端側において、中継線の先端と素子の電極線とを溶接した後、その中継線の後端を絶縁管の後端から後方に引き出し、その後、絶縁管の後端寄り部位に包囲部材を外嵌して位置決め配置し、その状態の下で、包囲部材の内周面側にその後端側から適量の充填材を注入等して充填し、固化させればよい。このような充填作業による場合には、上記従来技術と比べると、充填における困難さもなく、したがって充填量のバラツキもないので、簡易、合理的に充填材の充填ができる。このように本発明では、その構成に基づき、中継線をその後端寄り部位において、簡易、合理的に、絶縁管に固定できる。なお、充填材は、セメントや樹脂などから、適宜に選択して使用すればよい。
包囲部材は、上記のように、前記絶縁管の後端寄り部位及び該絶縁管の後端から後方に引き出されている前記中継線の後端寄り部位を、先後に連ねて包囲するように筒状又はリング状をなすものであればよい。したがって、その内周面は先後にストレート(同内径)でもよい。しかし、請求項2に記載の構成とすることで、その充填が容易となる。しかも、包囲部材の内周面のうち、その後端寄り部位の容積を大きくできることから、中継線の後端寄り部位の固定力を高めることができる。なお、絶縁管に外嵌する先端寄り部位の内径は、充填材の接着力、固定力に基づいて適宜の隙間が得られるように設定すればよい。また、請求項3に記載の本発明のようにすることで、絶縁管はチューブの内周面との間でも固定されるため、リード線に過大な引張り力が作用しても、一層、上記断線防止効果が高められる。
請求項4に記載の本発明によれば、その構成により、センサの組立において、充填材の充填により絶縁管に固定されている包囲部材を含む素子等からなる組付け体を、チューブ内に挿入する際には、その大径筒部の先端の拡径部内の後端向き面に、包囲部材の先端を係止させることでその先後方向の位置決めができる。このため、センサの組立において、絶縁管の先端側に配置される素子がチューブの先端の正規(設計)位置になるように配置するのが容易となる。
請求項5に記載の発明によれば次の効果が得られる。請求項4において、包囲部材の先端をチューブにおける前記後端向き面に係止させる場合、横断面が共に円であるとすると、チューブ内においては、包囲部材の先端より先方と後方との両空間が遮断される形となる。すなわち、包囲部材の先端より先方が閉塞空間又はそれに近い状態となりやすい。一方、センサの組立において、絶縁管に固定されている包囲部材を含む素子等からなる組付け体を、チューブ内に挿入する際には、その前に、チューブ内に適量の未固化状態の充填材を注入しておくのが好ましい。このようにしておけば、容易に請求項3の構成を得ることができるためである。しかし、その組付け体の挿入により、前記したように先端側が閉塞空間となると、その充填材の固化が妨げられる。例えば、充填材にセラミック系セメントを用いる場合、その固化過程で発生する水分が外部に放出されにくくなるから、その固化の円滑化が妨げられる。これに対し、請求項5に記載の発明によれば、そのような閉塞がなくなるから、こうした問題の発生が防止ないし緩和される。なお、請求項5において、両空間の連通を保持する形状又は構造としては、該包囲部材の外周面のうちの少なくとも先端寄り部位に、該包囲部材の先端に向けて連なる凹部、切欠き、又は面取りを形成してなるものが例示される。しかし、両空間の連通を保持できればよいため、該包囲部材の外周面が円筒面を有するものである場合、その外周面の一部を軸線に平行に平面でカットした形状としてもよい。また、包囲部材をその外周面が多角形をなす筒形状としてもよい。さらに、外周面と先端面とが連なるトンネル(貫通穴)を設けることで連通が確保されるようにしてもよい。
また、請求項6に記載の本発明のように、前記絶縁管の中継線挿通用の孔の少なくとも先端寄り部位に、前記充填材を充填したものとするとよい。こうすることで、前記絶縁管に対する中継線の固定力はさらに高められるから、上記断線防止効果も高められるためである。一方、このような充填を上記「真空充填法」によるとしても、本発明ではそれが容易に実現できる。というのは、本発明では、上記包囲部材内への充填材の充填、固化を行うことにより、絶縁管の後端は封止(気密状にシール)したものとなる。このため、このような状態の仕掛品において、上記した真空充填法を行う場合には、その後の真空引き停止時において、槽上部を大気圧に戻したとしても、絶縁管内部にその上端から大気が引き込まれることがない。すなわち、従来のように、真空引きにより絶縁管の内部に入り込んでいたセメント等の充填材(スラリー等の液)が、その先端から排出されてしまうこともないため、「真空充填法」を適用できるのである。
前記包囲部材は、セラミック製とするのがよいが、請求項7に記載の発明のように金属製(例えば、SUS製)として、チューブをカシメ加工してもよい。こうすることで、前記包囲部材をチューブ内において強固に、しかも簡易に固定できるためである。すなわち、このようにすることで、リード線に過大な引張り力が作用したとしても、より一層高い上記断線防止効果が得られるためである。また、請求項8に記載の発明のように、金属製のリング又はパイプを配置し、チューブのカシメ加工によって、これを固定して包囲部材が後方へ移動するのを防止するようにしてもよい。
本発明を具体化した温度センサの実施の形態例について、図1〜7に基づいて詳細に説明する。まず本例の温度センサの全体構成から説明する。図1中、101は温度センサであり、先端12が閉じられた金属製(例えば、SUS製)のチューブ11と、このチューブ11内の先端12側に配置された温度センサ素子21等から構成されている。チューブ11内には、素子21の後方(図1上方)に向けて、素子21から後方に延びる電極線23、電極線23を通している絶縁材からなる素子支持体31、そして、電極線23に接続された中継線(通電用線材)25を通している絶縁管(碍子管)41がそれぞれ配置されている。また、絶縁管41の後端45から後方においては、その後端45か引き出された中継線25の後端寄り部位(後端部ともいう)26が後方に突出しており、これには端子金具28を介してリード線51の先端寄り部位(芯線)53が接続されている。
また、チューブ11の後端部又は後端19寄り部位内であって、絶縁管41の後端45から間隔(空間)をおいた後方には、シール部材71が配置されている。リード線51は、その先端(寄り部位)53を、このシール部材71の先端73より先方に位置させ、それより後方の部位(絶縁樹脂層(表皮)54のある部位)をシール部材71において先後に貫通して形成された貫通孔77内に通している。シール部材71は、ゴム製で、チューブ11の後端19寄り部位17cを縮径状にカシメ加工することで同部位内において圧縮されて固定されている。
一方、チューブ11の内部において、絶縁管41の後端寄り部位47には、本発明の要部をなすところの、筒状又はリング状をなす包囲部材81が、絶縁管41の後端45を先後に挟む(跨ぐ)配置で外嵌されて配置されている。これにより、この包囲部材81は、絶縁管41の後端寄り部位47、及びその後端45から引き出されている中継線25の後端寄り部位26を包囲している。ただし、包囲部材81は、本例ではセラミック製(例えば、アルミナ製)とされ、その内径が後端側が大径をなす異径のものとされている。そして、この包囲部材81は、その先端82側の内径の小さい先端寄り部位(小内径部)において絶縁管41の後端寄り部位47に隙間嵌めで外嵌されている。また、その後端83側の内径の大きい後端寄り部位(大内径部)において、絶縁管41の後端45から後方に引き出されている中継線25の後端部寄り部位26を包囲している。そして、この包囲部材81の内径の大きい後端83側の内周面84と中継線25の後端寄り部位26の外周面との間、および、内径の小さい先端82側の内周面85と、絶縁管41の後端寄り部位47の外周面46との隙間には、先後に連なる形で、電気的絶縁性及び接着力のあるアルミナを主成分とするセラミック系セメントからなる充填材90が、ダブルハッチングで示したように充填され、固化したものとされている。詳細は後述するが、これにより、包囲部材81の内周面84,85と、中継線25及び絶縁管41の各後端寄り部位26,47における外周面との間(隙間)は接着され、固定されている。
また、本例センサ101では、中継線25の後端部26、及びリード線51の先端寄り部位53、そして、この両者を接続している端子金具28を含む配線部位が、包囲部材81の後端83と、シール部材71の先端73との間に位置するように設定されている。そして、この各配線(金属線)部位には、絶縁確保のため、それぞれ絶縁材から成るパイプ95が外嵌されている。このような本例のセンサ101は、チューブ11に外嵌、固定された取付金具61を介して排気マニホルド等の取付け対象部位に取り付けられるよう構成されている。次に、上記センサの各部位の詳細について説明する。
まず、チューブ11について説明する。本例では、図1等に示したように、先端12から後端(図1上端)19に向けて、三段階で順次、大径をなす同心異径の円筒状に形成されている。具体的には、その先端寄り部位であって、先端12から後方に向かう所定範囲が小径の素子収容部13をなしている。そして、この素子収容部13に続く後方には拡径部を介してそれより大径の直管部からなり、その内側に、絶縁管41の先端寄り部位を微小な隙間を保持して同心状に配置可能の絶縁管先端寄り部位収容部14を有している。
このようなチューブ11における絶縁管先端寄り部位収容部14の後方には、拡径部を介して、該収容部14より大径の直管部15が連続して形成されている。この直管部15は、上記した取付金具61を同心状に外嵌させる取付金具取り付け部(以下、取付金具取り付け部15)をなしている。そして、チューブ11におけるこの取付金具取り付け部15の後方には、円環状をなし、かつ後方に向けて拡径する拡径部16を介して相対的に大径をなす大径筒部(以下、後端側大径筒部)17を有している。この後端側大径筒部17は、内部に絶縁管41の後端寄り部位47、包囲部材81、及びシール部材71等を配置させ得るよう形成されている。
一方、絶縁管41は、内部に軸線Gに沿って貫通状に形成された、中継線挿通用の2つの孔48を有し、外径(横断面)が一定の細長い円管である。そして、その先端43に、本例では絶縁部材である素子支持体(セラミック部材)31を介して、ガラスでコーティングされたセンサ素子21がその後端を押付けるようにして配置されている。なお、絶縁材からなる素子支持体31は、絶縁管41より小径で、センサ素子21の後端より大径の円筒状をなしている。また、この素子21から後方に延びる2本の電極(電極線)23は、それぞれが素子支持体31中を通され、絶縁管41の各孔48を通されて後方に延び、中継線25の先端寄りの所定部位(接続部25w)において溶接されている。このように、素子収容部13内には、先端側からセンサ素子21、素子支持体31が位置しており、絶縁管41がその先端寄り部位を絶縁管先端寄り部位収容部14内に位置するようにして、それぞれチューブ11内に同心状に配置されている。また、絶縁管41の後端45は、取付金具取り付け部15の後方の後端側大径筒部17内の先端寄り部位に位置している。なお、本例では、チューブ11における取付金具取り付け部15の後端より、チューブ11の先端12までの内周面と、絶縁管41、支持体31、及びセンサ素子21の各外周面との隙間に、図中、ダブルハッチングで示したようにアルミナを主成分とするセラミック系セメントからなる充填材(以下、第2充填材という)190が充填され、これにより素子21等が固定されている。
そして、前記もしたように、絶縁管41の後端寄り部位47は、包囲部材81が、絶縁管41の後端45を先後に挟む(跨ぐ)配置と成るようにして外嵌されている。これにより包囲部材81は、絶縁管41の後端45から引き出されている中継線25の後端寄り部位26を包囲している。ただし、包囲部材81は、その内径が、先端寄り部位が小径で、後端寄り部位が大径に形成されており、その小径の先端寄り部位(小内径部)で、絶縁管41の後端寄り部位47に隙間を保持して外嵌されている。本例では、絶縁管41等がチューブ11内に組み付けられる前の組立工程で、その先端側の内径の小さい小内径部において絶縁管41の後端寄り部位47に隙間嵌めで外嵌され、絶縁管41の後端45から中継線25が設計寸法通りに後方に引き出されている状態において、後端側の内径の大きい大内径部の内側に、その後方から電気的絶縁性及び接着力のある充填材90が充填され、固化したものとされている。なお、充填材90は、包囲部材81の後端83から若干盛り上がるように充填されている。
これにより、充填材90は、包囲部材81の大内径部の内周面84と中継線25の後端寄り部位との間、及び包囲部材81の小内径部の内周面85と、それが隙間嵌めされている絶縁管41の後端寄り部位47の外周面46との間(隙間)を接着して固定している。しかも、包囲部材81の内側に、その後方から充填材90を充填する際には、充填材は絶縁管41の後端45の面にも接着される上、そこおいて開口する各孔48と、そこに通されている中継線25との隙間にも、先方に向けてある程度の量が充填されている。これにより、その孔48の中においても、中継線25を絶縁管41に接着する形で固定している。このように、本例では、中継線25の後端部寄り部位26は、絶縁管41の後端寄り部位47に、充填材90を介して固定されており、充填材90は包囲部材81の内周面84,85にも接着されていることから、これら3者は絶縁管41の後端寄り部位47において一体化(固定)されている。なお、本例では包囲部材81として、大内径部と小内径部を有するものとし、大内径部と小内径部の境界に位置する後端向き面87が絶縁管41の後端45と一致させられて、両者を位置決めしている(図2参照)。ただし、この後端向き面87は、絶縁管41の後端45より先端側に位置させてもよいし、後端側に位置させてもよい。また、包囲部材81の内周面は先後にストレートとしてもよいなど、その構造に限定はない。
また本例では、包囲部材81の先端82における外周縁が、チューブ11における取付金具取り付け部15の後端と、後端側大径筒部17の先端との境界に位置する円環状の拡径部16における後端向き面16aに係止されて配置されている。本例における包囲部材81においては、その先端寄り部位の外周面86と、先端82とのなす角に、図2中、破線で示したように、周方向において1又は複数所の切り込み88を形成しておくとよい。すなわち、この切り込み(溝)88により、チューブ11内における包囲部材81の先端82より先方の空間と、後方の空間とを、包囲部材81の外周面86とチューブ11の内周面との隙間を介して連通するように形成しておくとよい。詳細は後述する。
また、チューブ11の後端側大径筒部17内に配置されたシール部材71は、本例では概略円柱状をなしている。そして、包囲部材81の内側に充填された充填材90にて固定された中継線25の後端寄り部位26は、包囲部材81及び充填材90の後端より後方に突出させられており、その端には外側に張出した張出し部26aを有している(図2参照)。一方、外部に引き出されている各リード線51における先端寄り部位(芯線)53は、シール部材71の先端73より先方に位置しており、これに端子金具28の圧着部29が圧着されている。そして、この圧着部29の先端の接続片28aが、中継線25の後端部26における張出し部26aに溶接により接続(固定)されている。また、上記もしたように、包囲部材81の後端83と、シール部材71の先端73との間において位置する、各中継線25の後端寄り部位26とリード線51の先端との接続部を含む先後の配線部位には絶縁材から成るパイプ95が外嵌されて、電気的絶縁が確保されている。
他方、シール部材71には、その先端73と後端72との間において軸線Gを挟んで平行に貫通、形成された貫通孔77内が設けられており、リード線51は、ここを通されている。しかして、このようなシール部材71は、チューブ11の後端側大径筒部17の後端寄り部位17cが縮径状にカシメ加工されることで、その内部に固定されている。これにより、その後端側大径筒部17の内周面とシール部材71の外周面との間のシールと共に、貫通孔77の内周面と、そこに通されている各リード線51の表皮である絶縁樹脂層54の外周面との間のシールが保持され、そして、リード線51を固定している。
なお、本形態のセンサ101では、上記もしたようにチューブ11における中間部の取付金具取り付け部15に、取付金具61が同心状に外嵌されて固定されている。この取付金具61は、センサ101を排気マニホールド部位の取り付け穴(ネジ穴)に、直接、ねじ込み方式で固定する構造のものである。このため、外周面にネジ60を備えた円筒状のねじ筒部63を備えており、その内周面67と取付金具取り付け部15の外周面との隙間は、ロウ付けされている。この取付金具61の後端側には、一体で外方に突出状に設けられたねじ込み用多角形部66を備えている。なお、このねじ込み用多角形部66の先端面と、ねじ筒部63の外周面(ネジ60の基端)には、シール保持用の環状ワッシャ69が配置されている。
また、充填材90及び第2充填材190に関しては、同一硬度を有するように形成されていても、それぞれ異なる硬度を有するように形成されていてもよい。上記例のセンサ101では、充填材90及び第2充填材190として、アルミナを主成分とするセラミック系セメントを用いているが、これらを固化する前の充填材スラリーの含水量や分散材の量等を適宜、調整し、固化後において充填材90の方が第2充填材190に対して高硬度とされている。なお、充填材90、第2充填材190としては、材質が異なるセラミック系セメントを用いてもよく、また、セラミック系セメントに限られず温度センサの使用温度環境に応じて樹脂を用いるようにしてもよい。
さて次に、上記の構成を有する本例のセンサ101の効果について説明する。本例のセンサ101においては、上記したようにして中継線25の後端寄り部位26が、絶縁管41の後端寄り部位47に、充填材90により固定されている。このため、リード線51が外部から過大な力で引張られて、中継線25の後端寄り部位26に引張り力が及ぶとしても、中継線25は絶縁管41に対し相対的な動きを生じない。かくして、本例センサ101では、その引張り力が中継線25の先方における素子21の電極線23との接続部(溶接部)25wや、その電極線23自体のような低強度部に及ぶことがない。これにより、従来におけるようなそれらの箇所での断線防止が図られる。
しかも、絶縁管41に対して中継線25を固定する充填材90は、絶縁管41の後端寄り部位47、及びそれより後方において、すなわち、絶縁管41の後端45を先後に挟む包囲部材81の内側に充填されている。このため、従来技術における充填材の充填におけるような絶縁管41の孔の内面とそこに通されている中継線25との微小な隙間に充填することに基づく充填作業上の問題もなく、その充填ができる。また、上記例では、包囲部材81は後端寄り部位の内周面84が大径に形成されているため、充填材90を充填し易いという作業上の効果もある。
そして、上記例のセンサ101では、チューブ11の内周面と、絶縁管41の外周面との間における、先後方向の所定部位の空間にも、電気的絶縁性及び接着力のある第2充填材190が充填されている。このため、絶縁管41はチューブ11に対して高い固定力で固定されているから、外力や振動に対しても高い安定性を有している。
また、上記例では、チューブ11内において、包囲部材81を、その先端82の外周縁が、拡径部16の後端向き面16aに係止させられて配置されている。このため、この係止でもって、チューブ11内への包囲部材81等の組み付けにおけるその位置決めを行うことができるという、製造組立上の効果もある。なお、上記例では、チューブ11の内周面と、絶縁管41の外周面46との間における、先後方向の所定部位の空間に第2充填材190が充填されているところ、上記したように、包囲部材81の外周面86の先端寄り部位と、先端82とのなす角に、切り込み88を形成した場合には、包囲部材81の先端82より先方の空間は閉塞空間とならない。このため、チューブ11の内周面と、絶縁管41の外周面との間の第2充填材190の固化の円滑化が図られる。
ところで、上記例のセンサ101では、絶縁管41の後端寄り部位47に、包囲部材81を充填材90の充填により固定した後の段階においては、上記した「真空充填法」を用いることもできる。したがって、絶縁管41内の孔48の内周面と中継線25との微小な隙間も、充填材を充填しておくのが好ましい。この点については後述する。
さて次に、上記温度センサ101を製造する(組立てる)主要な工程について、図5〜図7に基づいて説明する。ただし、上記において既に説明済みのところは、適宜、その説明を省略する。図5−Aに示したように、絶縁管41の先端43に、素子21、及び支持体31を配置し、素子21の電極線23に、先端を接続(溶接)した中継線25を絶縁管41内に通し、その後端45から引きだしておく。なお、溶接は、中継線25の先端を絶縁管41の先端43から引き出した状態で行えばよい。
次に図5−Bに示したように、絶縁管41の後端寄り部位47に、包囲部材81を外嵌して位置決め保持した状態で、絶縁管41を立てる。その後、図5−Cに示したように、包囲部材81の後端(図示上端)側からその内側に充填材90を注入して充填し、固化させる。この充填材90により、中継線25はその後端寄り部位26において絶縁管41に固定されるのは上記した通りである。
その後、図6−Aに示したように、中継線25の後端部26に端子金具28を溶接し、その圧着部29にて、リード線51の先端寄り部位(芯線)53を圧着して接続する。なお、この接続前、リード線51は、シール部材71の貫通孔77に通しておくと共に、絶縁用のパイプ95を外嵌しておく。そして、これらを、図6−Bに示したように設定位置にスライドして位置決めした組付け体を得る。
その後はこの組付け体を、先端の素子21から、図7−Aに示した取付金具61が外嵌、固定されたチューブ11内に、図7−Bに示したように挿入する。ただし、この挿入前のチューブ11内には、本例では、図7−Aに示したように、固化前の第2充填材190を適量入れておく。そして、その挿入においては、図7−Bに示したように、包囲部材81の先端82の外周縁を、チューブ11における拡径部16の後端向き面16aに係止させて、その位置決めをする。このとき、後端側大径筒部17の設定位置にシール部材71を位置させる。その後、チューブ11内の充填材90を固化させる。これにより、絶縁管41を含むそれより先方に位置する部材が、チューブ11内において固定される。
かくして、その固定後は、チューブ11の後端側大径筒部17の後端寄り部位17cを例えば全周、縮径状に丸カシメ加工し、シール部材71を径方向に圧縮する。こうすることで、チューブ11の後端におけるシールが確保されると共に、リード線51が固定され、図1に示した温度センサ101が得られる。
このようなセンサ101の組立においては、包囲部材81の先端82の外周縁を、チューブ11における拡径部16の後端向き面16aに係止させることで、その位置決めができるため、組み付けの簡易化が図られる。なお、包囲部材81の先端82をこのように係止させる場合において、チューブ11の内周面と、絶縁管41の外周面46との間における、先後方向の所定部位の空間に、上記したように第2充填材190を充填する場合には、チューブ11内における包囲部材81の先端82より先方の空間が閉塞空間とならないように、切り込み88を設けるなどして、その先後の空間が連通するようにするのがよいことは上記したとおりである。次に、このような連通を確保する手段を具体化したセンサの改良例について、図8、図9に基づいて説明する。なお、この例では、その連通確保手段(包囲部材の形状、構造)のみが、上記例のセンサ101と相違するだけであるから、その相違点のみ説明する。
図8は図2に対応する部位の図である。図8に示したように、本例では包囲部材81は、その外周面86の先端寄り部位に、先後に沿って先端82に連なる凹溝をなす切り込み88が、例えば、周方向において3箇所、形成されている(図9参照)。しかして、本例では、この切り込み(凹溝)88により、チューブ11内における包囲部材81の先端82より先方の空間と、後方の空間とが、包囲部材81の外周面86とチューブ11の内周面との隙間を介して連通するものとされている。すなわち、このような連通確保手段は、包囲部材81を適宜の形状、構造とすることで得られることは明らかである。図10は、その変形例を示したもので、Aは、包囲部材81を外周面86を円筒としたものにおいて、対向する2面を平面でカットしたものである。また、図10−Bは、包囲部材81を外周面86が多角形としたものである。いずれも、外周面における平面の先端が、図8における拡径部16の後端向き面16aとの間において隙間ができるため、包囲部材81の先端において、その先後の空間が連通するため、その先端より先方の空間が閉塞空間とならないようにすることができる。
なお、上記もしたように、包囲部材81の内周面側に充填した充填材90により中継線25を、その後端寄り部位26において絶縁管41に固定した後(図5−C参照)においては、絶縁管41の孔48の内周面と中継線25との微小な隙間に、先端43側から真空充填法により充填材を充填することができる。このため、要すれば、「真空充填法」により、その充填を行えばよい。なお、絶縁管41の孔48の内周面と中継線25との隙間に充填される充填材は、充填材90と同材質であることに限定されるものではない。ここで図11に基づいて、「真空充填法」を説明する。
図11に示したように、真空ポンプVPが取り付けられ、充填材(固化前のスラリー等の液)90が入れられた槽200を含む真空装置210を用い、包囲部材81を固定した図示の組付け体を、その槽200内において、絶縁管41の先端43寄り部位が充填材(スラリー等の液)90中に液没するようにする。この状態で、槽200内部の上の空間220を減圧するよう真空引きする。これにより、絶縁管41の先端(下端)43における隙間から、絶縁管41の孔48内の空気が抜かれて液中に泡となって放出されて浮上し、真空ポンプVPで外部に排出される。同時に、絶縁管41の孔48内には充填材90が空気と入れ替わる形で入り込む。本例では、絶縁管41の後端45は充填材90で閉塞されている。このため、その後、真空ポンプVPを停止して大気圧に戻しても、従来のように絶縁管41の後端側の孔から空気を吸い込むことがない。このように、本例では、絶縁管41内の孔48の内周面と中継線25との微小な隙間に真空充填法により充填材を充填することができる。これにより、中継線25を絶縁管41により強固に固定できるから、絶縁管41の中継線挿通用の孔48の少なくとも先端寄り部位にも、電気的絶縁性及び接着力のある充填材90を充填しておくとよい。
さて、本発明に係る温度センサの別例について図12に基づいて説明する。ただし、このものは、上記実施形態例において包囲部材に、セラミックではなく金属製(例えばSUS製)のものを用いた改良例とでもいうべきもので、上記例との相違点は、この点を含む2点のみである。このため、同一の部位には同一の符号を付してその説明を省略し、相違点のみについて説明する。すなわち、本例では、包囲部材81を例えばSUS製とし、この外周面86に対応するチューブ11における部位を、図示したように縮径状にカシメ加工を行って、包囲部材81がチューブ11の内面にて挟圧されて保持されてなるものとした、というものである。これにより、包囲部材81はチューブ11内において強固に固定されるため、振動等の外力により、リード線51に引張り力が作用したとしても、より一層高い上記断線防止効果が得られる。
また、本発明に係る温度センサの別例について図13に基づいて説明する。ただし、このものも、上記実施形態例の改良例とでもいうべきもので、上記例との相違点は次ぎの2点のみである。このため、同一の部位には同一の符号を付してその説明を省略し、相違点のみについて説明する。すなわち、このものは、チューブ11の内側であって前記包囲部材81の後方に、中継線25の後端寄り部位26を包囲する形で、絶縁材(本例では樹脂等の絶縁材からなるパイプ95)を介して、SUS製の筒状体(円筒体)である金属製パイプ110が、チューブ11の内面に微小な隙間を保持して同心状に配置されている。そして、金属製パイプ110は、自身の先端113を包囲部材81の後端83に当接又は近接状態としており、この状態において、チューブ11における該金属パイプ110に対応する先後部位を縮径状にカシメ加工したものである。すなわち、このカシメ加工により、該チューブ11の内面にて、金属パイプ110を径方向に変形させ、挟圧して保持するようにしたものである。このように金属パイプ110を配置して、チューブ11のカシメ加工により、これを固定することによっても、その金属パイプ110の先端113にて、包囲部材81の後方への移動を防止できるため、より一層高い上記断線防止効果が得られる。
本発明の温度センサは、上記したものに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、適宜に変更して具体化できる。上記例では、包囲部材は内径が異径の円筒状のものとしたが、本発明においては、これに限定されるものでないことは上記したとおりである。すなわち、上記の説明から明らかであるが、本発明においては、包囲部材の内周面側に充填される充填材にて、中継線の後端寄り部位を絶縁管の後端寄り部位に固定できればよい。すなわち、包囲部材は、充填材が、中継線の後端寄り部位と、絶縁管の後端寄り部位とを、言わば、一体的にくるんで固定できるものであればよいといえる。したがって本発明における包囲部材は、前記絶縁管の後端寄り部位及び該絶縁管の後端から後方に引き出されている前記中継線の後端寄り部位を、先後に連ねて包囲できる筒状又はリング状をなすものであれば、適宜の形状、構造のものとして具体化できることは明らかである。なお、本発明の温度センサは、排気ガスの温度測定用のものに限定されるものでもなく、他の用途に使用されるものにも広く適用できる。