JP5562630B2 - セメント系硬化体中の結合材の化学組成の推定方法 - Google Patents

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Description

本発明は、セメント系硬化体を構成するセメント等の結合材の化学組成の推定方法に関する。
従来、セメント系硬化体を構成するセメントの種類を推定するための方法として、セメント系硬化体から、適宜の大きさの試料を切り出した後、この試料を塩酸で処理して、試料中のセメントを溶解させ、得られた溶解物の化学組成を分析して、セメントの種類を推定する方法(以下、塩酸溶解分析法ともいう。)が知られている。
しかし、塩酸溶解分析法には、以下の問題点がある。
第一に、骨材として、塩酸に溶解するもの(例えば、石灰岩砕石)が用いられている場合、塩酸によって骨材が溶解してしまい、セメントの化学組成の分析値の精度が低下する。
第二に、混和材であるフライアッシュ及びシリカフュームは、結合材の一種として、セメントと共に化学組成の分析の対象になるべきものであるが、塩酸への溶解度が小さいため、塩酸溶解分析法によって分析することができない。つまり、塩酸溶解分析法は、フライアッシュ等の混和材を含む結合材の分析方法としては不適当である。
第三に、セメント系硬化体中のセメント水和物が、炭酸化によって、塩酸に難溶のシリカゲルに変化した場合、このシリカゲルが分析の対象から外れてしまい、セメントの化学組成の分析値の精度が低下する。
第四に、骨材が、セメント系硬化体中で経時的に変質して、塩酸に可溶の成分を含むようになることがあり、このような場合には、セメントの化学組成の分析値の精度が低下する。
第五に、以前は塩酸溶解分析法以外に有効な方法がなかったため、他の方法を併用することによって塩酸溶解分析法の分析結果の信頼性を確認することもできなかった。
このような塩酸溶解分析法の問題点を解決するために、近年、セメント系硬化体を構成するセメントの種類を、電子線マイクロアナライザーを用いて推定する方法が提案されている(特許文献1)。この方法は、セメント硬化体に用いられたセメントのクリンカ品種を電子線マイクロアナライザーを用いて推定する方法であって、前記セメント硬化体中に残存している未水和カルシウムシリケート相を選択し、この未水和カルシウムシリケート相の微小部分の組成分析を電子線マイクロアナライザーを用いて行い、この組成分析の結果に基づきセメントのクリンカ品種を推定するものである。
一方、電子線マイクロアナライザーを用いて、セメント系硬化体の断面におけるペースト部分(結合材の部分)と骨材部分を識別する技術が知られている(特許文献2)。この技術は、セメント系硬化体の空隙率の測定方法に関するものであり、具体的には、セメント系硬化体の断面を多数のピクセルに区画し、ピクセルごとにCaO濃度とSiO濃度を測定し、CaO濃度が基準値(18%)以上のピクセルをペースト部分、SiO濃度が基準値(30%)以上のピクセルを骨材部分、残余を空隙部分とし、さらにペースト部分のピクセルについて、そのCaO濃度に基づいて空隙率を求め、骨材部分及び空隙部分については空隙率を各々0体積%、100体積%とし、上記断面において空隙率の平均値を求め、この空隙率の平均値に基づいてセメント系硬化体の空隙率を定めるものである。
特開2009−80087号公報 特開2008−275637号公報
上述の特許文献1に記載された技術は、セメント硬化体中に残存している未水和カルシウムシリケート相の微小部分の化学組成の分析を、電子線マイクロアナライザーを用いて行い、この化学組成の分析の結果に基づいて、セメント硬化体に用いられたセメントのクリンカ品種を推定するものである。つまり、特許文献1に記載された技術では、フライアッシュ、シリカフューム等の混和材が含まれている可能性のあるセメント系硬化体を対象にして、これら混和材及びセメントを含む結合材全体の化学組成を、高い精度で推定することはできない。
また、上述の特許文献2に記載された技術は、ペースト部分(結合材の部分)と骨材部分を識別するための技術を含むものではあるが、セメント系硬化体の空隙率を推定するためのものであり、ペースト部分(結合材の部分)の化学組成を高い精度で推定するためのものではない。
そこで、本発明は、フライアッシュ、シリカフューム等の混和材や石灰岩からなる骨材が含まれている可能性のあるセメント系硬化体であっても、結合材全体の化学組成を高い精度で簡易に推定することのできる方法を提供することを目的とする。
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、セメント系硬化体において適宜定めた特定の二次元領域に対して、電子線マイクロアナライザーを用いて、ピクセル毎に化学組成を分析した後、特定の基準によって、結合材に相当するピクセル群を定め、このピクセル群における化学組成の平均値を算出した場合に、この平均値を、セメント系硬化体の結合材の化学組成の推定値として用いることができることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下の[1]〜[5]を提供するものである。
[1](A)セメント系硬化体において適宜定めた二次元領域をピクセル単位に区画した後、電子線マイクロアナライザーを用いて、ピクセル毎に化学組成を、SiO 2 、CaO、Al 2 3 、Fe 2 3 、MgO、SO 3 、Na 2 O、K 2 O、TiO 2 の各元素(酸化物換算)の定量によって分析する工程と、(B)工程(A)で得られた分析結果に基いて、上記二次元領域内のピクセルから、特定のしきい値を基準として、結合材に相当するピクセル群を選択する工程と、(C)工程(B)で得られた、結合材に相当するピクセル群を対象として、該ピクセル群に属するピクセルの化学組成の平均値を算出することによって、セメント系硬化体中の結合材の化学組成の推定値を得る工程と、を含むことを特徴とするセメント系硬化体中の結合材の化学組成の推定方法。
[2]工程(B)において、30〜90質量%の間の特定の値であるSiO2の含有率を、上記特定のしきい値として定め、かつ、該しきい値を下回るピクセルを、上記結合材に相当するピクセル群に属するものと定める、前記[1]に記載のセメント系硬化体中の結合材の化学組成の推定方法。
[3]工程(B)において、10〜50質量%の間の特定の値であるCaOの含有率を、上記特定のしきい値として定め、かつ、該しきい値を超えるピクセルを、上記結合材に相当するピクセル群に属するものと定める、前記[1]に記載のセメント系硬化体中の結合材の化学組成の推定方法。
[4]上記ピクセルは、一辺の長さが0.1〜10μmの正方形であり、かつ、上記二次元領域は、1〜100万個のピクセルからなる、前記[1]〜[3]のいずれかに記載のセメント系硬化体中の結合材の化学組成の推定方法。
[5](D)2つ以上定めた上記二次元領域の各々について、工程(A)〜工程(C)を行って、セメント系硬化体中の結合材の化学組成の推定値を2つ以上得た後、これら2つ以上の推定値の平均値を得る工程、を含む前記[1]〜[4]のいずれかに記載のセメント系硬化体中の結合材の化学組成の推定方法。
本発明によれば、フライアッシュ、シリカフューム等の混和材や石灰岩からなる骨材が含まれている可能性のあるセメント系硬化体であっても、セメント及びフライアッシュ等の混和材を含む結合材全体の化学組成を高い精度で簡易に推定することができる。
例えば、セメント系硬化体の強度や色調等の品質が、工事前の予測とは大きく隔たったものとなり、工事仕様に定める種類のセメント及び混和材が使用されたかどうかが疑わしく、科学的に確認することが求められる場合がある。この場合に、本発明の方法を用いれば、工事仕様に定める種類のセメント及び混和材が使用されたか否かを、迅速かつ容易に確認することができる。
また、ポルトランドセメントの化学組成は、明治初期のセメント産業草創期から昭和初期にかけて、時代とともに変遷している。本発明の方法によって、当時のセメント系硬化体を分析し、結合材の化学組成を求めることは、このような史実を実証することになり、学術上の意義がある。さらに、造られた年代が不明なセメント系硬化体であっても、本発明の方法を用いて結合材の化学組成を推定することによって、例えば明治時代のものか大正時代のものかを判定できる可能性がある。
本発明のセメント系硬化体中の結合材の化学組成の推定方法は、(A)セメント系硬化体において適宜定めた二次元領域をピクセル単位に区画した後、電子線マイクロアナライザーを用いて、ピクセル毎に化学組成を、SiO 2 、CaO、Al 2 3 、Fe 2 3 、MgO、SO 3 、Na 2 O、K 2 O、TiO 2 の各元素(酸化物換算)の定量によって分析する工程と、(B)工程(A)で得られた分析結果に基いて、上記二次元領域内のピクセルから、特定のしきい値を基準として、結合材に相当するピクセル群を選択する工程と、(C)工程(B)で得られた、結合材に相当するピクセル群を対象として、該ピクセル群に属するピクセルの化学組成の平均値を算出することによって、セメント系硬化体の結合材の化学組成の推定値を得る工程と、を含むものである。
以下、工程毎に詳しく説明する。
[工程(A)]
工程(A)は、セメント系硬化体において適宜定めた二次元領域をピクセル単位に区画した後、電子線マイクロアナライザーを用いて、ピクセル毎に化学組成を、SiO 2 、CaO、Al 2 3 、Fe 2 3 、MgO、SO 3 、Na 2 O、K 2 O、TiO 2 の各元素(酸化物換算)の定量によって分析する工程である。
本発明において、「セメント系硬化体」とは、セメント、水、及び、他の任意成分(混和材、減水剤、粗骨材、細骨材等)からなる水硬性組成物の硬化体をいい、具体的には、コンクリート硬化体、モルタル硬化体、またはペースト硬化体を意味する。
セメント系硬化体を構成するセメントの種類は、特に限定されず、例えば、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、耐硫酸塩ポルトランドセメント、高炉セメント(A、B、C種)、シリカセメント(A、B、C種)、フライアッシュセメント(A、B、C種)等が挙げられる。
混和材の種類は、特に限定されず、例えば、フライアッシュ、シリカフューム、高炉スラグ微粉末、その他ポゾラン物質等が挙げられる。
「セメント系硬化体において適宜定めた二次元領域」とは、平坦な表面を有するセメント系硬化体における当該平坦な表面の中の適宜定めた一部の領域、または、セメント系硬化体を適宜の位置で切断した場合における平坦な切断面の中の適宜定めた一部の領域を意味する。
二次元領域は、電子顕微鏡等による拡大観察によって、粗骨材が存在せずかつ細骨材がなるべく少ない領域を選択して定めることが望ましい。
ピクセルとは、電子線マイクロアナライザーを用いてセメント系硬化体の化学組成を測定するための測定単位(1回の測定操作で測定される対象)である微小な領域をいう。
ピクセルは、特に形状が限定されるものではないが、通常、一辺が特定の寸法を有する正方形の領域である。
ピクセルの一辺の寸法は、好ましくは0.1〜10μm、より好ましくは0.3〜5μm、特に好ましくは0.6〜2μmである。該値が0.1μm未満では、非常に高性能の電子線マイクロアナライザーが必要となり、測定装置のコストの面からも実用的でない。該値が10μmを超えると、化学組成の推定の精度が低下する可能性がある。
化学組成の分析の対象である二次元領域を構成するピクセルの数は、好ましくは1〜100万個、より好ましくは5〜50万個、さらに好ましくは10〜30万個、特に好ましくは15〜25万個である。該値が1万個未満では、化学組成の推定の精度が低下する可能性がある。該値が100万個を超えると、ピクセルの数を増大させることによる化学組成の推定の精度の向上が頭打ちとなるばかりか、電子線マイクロアナライザーを用いた測定に多くの時間を要するなど、作業の負担が過大になる。
電子線マイクロアナライザーを用いたピクセルの化学組成の測定はセメント等の結合材を構成する主な9つの元素である、SiO2、CaO、Al23、Fe23、MgO、SO3、Na2O、K2O、TiO2の各元素(酸化物換算)の定量として行われる。
[工程(B)]
工程(B)は、工程(A)で得られた分析結果に基いて、上記二次元領域内のピクセルから、特定のしきい値を基準として、結合材に相当するピクセル群を選択する工程である。
ピクセル群を選択するための二次元領域内のピクセルは、二次元領域内のピクセルの中から適宜選択した一部(例えば、全ピクセルの半分)でもよいが、好ましくは、二次元領域内のピクセルのすべてである。
特定のしきい値としては、含有率が結合材と骨材において明らかに差異のある元素を選定し、その含有率についての特定の値を設定する。例えば、SiO2の含有率についての特定の値、または、CaOの含有率についての特定の値が挙げられる。
特定のしきい値を基準にして、結合材に相当するピクセル群を選択する方法の例としては、(i)30〜90質量%(好ましくは30〜60質量%)の間の特定の値(例えば、35質量%)であるSiO2の含有率を、特定のしきい値として定め、かつ、該しきい値を下回るピクセルを、結合材に相当するピクセル群に属するものと定める方法、(ii)10〜50質量%(好ましくは20〜50質量%)の間の特定の値(例えば、40質量%)であるCaOの含有率を、特定のしきい値として定め、かつ、該しきい値を超えるピクセルを、結合材に相当するピクセル群に属するものと定めること、等が挙げられる。
本発明においては、前記の(i)と(ii)のいずれか一方のみを採用した場合でも、高い精度で、セメント系硬化体の化学組成の推定値を得ることができる。ただし、前記の(i)と(ii)の両方を採用して、これら両方の結果に基づいて、(i)で得られた値と(ii)で得られた値の平均値を算出しても、一方のみ採用した場合と同等の精度で、セメント系硬化体の化学組成の推定値を得ることができる。
結合材に相当するピクセルは、セメント(水和、未水和)、フライアッシュ、シリカフューム、高炉スラグ等の存在を示す。
結合材に相当するピクセル以外のピクセルは、結合材と骨材の混在物に相当するピクセル、または、骨材に相当するピクセルである。
結合材に相当するピクセル以外のピクセルは、本発明における化学組成の推定の精度を低下させるので、工程(B)における除外の対象となる。
骨材に相当するピクセルは、砂利、砂、砕石、石灰岩等からなる天然骨材または人工骨材等の存在を示す。
[工程(C)]
工程(C)は、工程(B)で得られた、結合材に相当するピクセル群を対象として、該ピクセル群に属するピクセルの化学組成の平均値を算出することによって、セメント系硬化体中の結合材の化学組成の推定値を得る工程である。
電子線マイクロアナライザーを用いた測定の対象であるピクセルは、非常に微小な面積を有するものである。そのため、結合材に相当するピクセル群に属するピクセルの相互間であっても、化学組成のばらつきは大きい。そこで、工程(C)では、結合材に相当するピクセル群に属する非常に多数のピクセルの化学組成の平均値を算出することによって、高い精度で、セメント系硬化体の結合材の化学組成の推定値を得ようとするものである。
[工程(D)]
本発明の方法は、(D)2つ以上定めた上記二次元領域の各々について、工程(A)〜工程(C)を行って、セメント系硬化体中の結合材の化学組成の推定値を2つ以上得た後、これら2つ以上の推定値の平均値を得る工程、を含むことができる。
工程(A)〜工程(C)は、非常に多数のピクセルにおける化学組成の値の平均値を算出するものとは言え、非常に小さな面積(例えば、0.1〜0.3mm2)を有する二次元領域内での測定に留まるものである。工程(D)を含むことによって、位置の異なる2つ以上の二次元領域を対象にして得られた、2つ以上の化学組成の推定値に基いて、推定値の平均値を算出し、より高い精度で、セメント系硬化体中の結合材の化学組成の推定値を得ることができる。
以下、実施例に基いて本発明を説明する。なお、本発明は、特許請求の範囲の記載によって規定されるものであって、以下の実施例に限定して解釈されるべきではない。
[実施例1]
(1)モルタル硬化体の作製
JIS R 5201(セメントの物理試験方法)にしたがい、水/セメントの質量比を0.5、砂/セメントの質量比を3として、モルタルを練り混ぜた後、型枠内にモルタルを充填させて、40mm×40mm×160mmの直方体に成形した。24時間放置した後、型枠を取り外し、モルタル硬化体を得た。また、成形時から28日経過時まで20℃の水に浸漬した。
なお、セメントとしては、普通ポルトランドセメントを用いた。骨材としては、珪砂(SiO2の含有率:約90質量%)を用いた。
蛍光X線分析法により求めたセメントの化学組成の実測値(酸化物換算;質量%)を、表1に示す。
Figure 0005562630
(2)電子線マイクロアナライザーによる各ピクセルの化学組成の分析
練り混ぜから28日経過後に、モルタル硬化体をその長軸に直交する方向に切断し、厚さ10mmの小片を得た。この小片を2日間アセトンに浸漬した後、室温で乾燥させることにより、モルタル硬化体の内部の自由水を除去した。次いで、この小片を切断して、15mm×15mm×10mmの小片を得た。この小片の周囲をエポキシ樹脂で固化した後、その一面を最小で0.05μmの粒子径を有する粒子からなる研磨剤を用いて鏡面状になるまで研磨した。次に、研磨した面に導電性物質として炭素を蒸着させた。
その後、炭素を蒸着させた面の中の適宜定めた二次元領域(以下、「領域1」ともいう。)に対し、電子線マイクロアナライザー(EPMA)を用いて、ピクセル毎に化学組成の分析を行った。この際、EPMA装置としては、日本電子社製のX線マイクロアナライザーJXA−8200を使用した。ピクセルは、一辺の長さが1μmの正方形とした。ピクセルの数は、縦横方向に各々400個、総数で160,000個とした。つまり、測定対象の二次元領域は、400μm×400μmの正方形とした。
各ピクセルで得られた各元素の定量分析値を、元素間の相対的な比率を保ったまま、全9種の元素の酸化物換算の含有率の合計が97質量%になるように換算した。10個のピクセル(No.1〜10)の化学組成の例を表2に示す。なお、表2中、左側の「化学組成の測定値」の欄は、換算前の定量分析値(合計が97質量%でないもの)を示し、右側の「9元素の合計を97質量%とした場合の換算値」は、換算後の定量分析値を示す。
表2中、No.1〜8は、CaOの含有率が大きいため、結合材に相当するピクセルであると考えられる。しかし、No.1〜8の相互間において、化学組成のばらつきは大きい。一方、No.9〜10は、SiO2の含有率が大きく、CaOの含有率が小さいため、骨材に相当するピクセルであると考えられる。
前記の炭素を蒸着させた面において、領域1とは位置が異なる二次元領域(以下、「領域2」ともいう。)を適宜定めて、領域1と同様の操作を行なった。
Figure 0005562630
(3)しきい値の決定、及び、化学組成の平均値の算出
本実施例の場合、骨材と結合材とで含有率の差の大きい元素は、SiO2とCaOである。骨材では、SiO2の含有率が非常に大きく、CaOの含有率が非常に小さい。逆に、セメント等の結合材では、例えば表1に示すように、SiO2の含有率が小さく、CaOの含有率が大きい。そこで、SiO2については上限値を定め、CaOについては下限値を定めることにした。
表3は、領域1及び領域2の各々について、SiO2の上限値(しきい値)を10質量%刻みに20〜100質量%の間で設定して、結合材に相当するピクセル群を定めた場合の、該ピクセル群に属する全ピクセルの化学組成の平均値を示したものである。
なお、表3の最下欄に、表1の実測値を示した。表3の最も右側の欄は、設定した特定のしきい値で得られた、結合材に相当するピクセル群に属するピクセルの数(n)を示す。
表3から、SiO2の上限値(しきい値)を30〜90質量%の間に定めれば、実測値に近い化学組成の推定値が得られることがわかる。
表4は、領域1及び領域2の各々について、CaOの下限値(しきい値)を10質量%刻みに0〜60質量%の間で設定して、結合材に相当するピクセル群を定めた場合の、該ピクセル群に属する全ピクセルの化学組成の平均値を示したものである。
なお、表4の最下欄に、表1の実測値を示した。表4の最も右側の欄は、設定した特定のしきい値で得られた、結合材に相当するピクセル群に属するピクセルの数(n)を示す。
表4から、CaOの下限値(しきい値)を10〜50質量%の間に定めれば、実測値に近い化学組成の推定値が得られることがわかる。また、表3及び表4から、SiO2の上限値をしきい値として定めた場合(表3)と、CaOの下限値をしきい値として定めた場合(表4)とでは、結合材の化学組成の推定値に大きな差はないことがわかる。
Figure 0005562630
Figure 0005562630
[比較例1]
実施例1における領域1及び領域2の各々の全ピクセル160,000個の化学組成の平均値を算出したところ、領域1では、SiO2の含有率が26.1質量%、CaOの含有率が59.3質量%であり、領域2では、SiO2の含有率が36.3質量%、CaOの含有率が50.3質量%であるなど、表1に示す実測値(SiO2の含有率:19.33質量%、CaOの含有率:63.94質量%)と大きく隔たっていた。その理由は、骨材に相当するピクセルの化学組成を含めて、平均値を算出していることによると考えられる。このことから、結合材の化学組成を高い精度で求めるためには、実施例1のように、骨材に相当するピクセルを除外する必要があることがわかる。

Claims (5)

  1. (A)セメント系硬化体において適宜定めた二次元領域をピクセル単位に区画した後、電子線マイクロアナライザーを用いて、ピクセル毎に化学組成を、SiO 2 、CaO、Al 2 3 、Fe 2 3 、MgO、SO 3 、Na 2 O、K 2 O、TiO 2 の各元素(酸化物換算)の定量によって分析する工程と、
    (B)工程(A)で得られた分析結果に基いて、上記二次元領域内のピクセルから、特定のしきい値を基準として、結合材に相当するピクセル群を選択する工程と、
    (C)工程(B)で得られた、結合材に相当するピクセル群を対象として、該ピクセル群に属するピクセルの化学組成の平均値を算出することによって、セメント系硬化体中の結合材の化学組成の推定値を得る工程と、
    を含むことを特徴とするセメント系硬化体中の結合材の化学組成の推定方法。
  2. 工程(B)において、30〜90質量%の間の特定の値であるSiO2の含有率を、上記特定のしきい値として定め、かつ、該しきい値を下回るピクセルを、上記結合材に相当するピクセル群に属するものと定める、請求項1に記載のセメント系硬化体中の結合材の化学組成の推定方法。
  3. 工程(B)において、10〜50質量%の間の特定の値であるCaOの含有率を、上記特定のしきい値として定め、かつ、該しきい値を超えるピクセルを、上記結合材に相当するピクセル群に属するものと定める、請求項1に記載のセメント系硬化体中の結合材の化学組成の推定方法。
  4. 上記ピクセルは、一辺の長さが0.1〜10μmの正方形であり、かつ、上記二次元領域は、1〜100万個のピクセルからなる、請求項1〜3のいずれか1項に記載のセメント系硬化体中の結合材の化学組成の推定方法。
  5. (D)2つ以上定めた上記二次元領域の各々について、工程(A)〜工程(C)を行って、セメント系硬化体中の結合材の化学組成の推定値を2つ以上得た後、これら2つ以上の推定値の平均値を得る工程、を含む請求項1〜4のいずれか1項に記載のセメント系硬化体中の結合材の化学組成の推定方法。
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