JP5560201B2 - 骨格筋欠損症を治療および予防するための組成物および方法 - Google Patents

骨格筋欠損症を治療および予防するための組成物および方法 Download PDF

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Description

発明の詳細な説明
〔関連出願の相互参照〕
この出願は、2007年12月17日に提出された係属中の米国仮特許出願第61/014,304号に対する優先権の利益を請求し、この米国仮特許出願の内容は、参照することにより本明細書に組み込まれる。
〔連邦政府資金によって支援された研究または開発に関する記述〕
この発明は、国立衛生研究所によって与えられた助成金No.AG015434に基づく政府支援によって成された。政府は本発明において一定の権利を有している。
〔発明の属する技術分野〕
本発明は、骨格筋欠損症を治療および予防するための組成物および方法に関する。具体的には、本発明は、骨格筋の欠損および障害(injuries)(例えば、ジストロフィン−欠損骨格筋;収縮力不足(deficit)を有する骨格筋;Ca2+の不均衡を有する骨格筋;微小な裂傷を有する骨格筋)を治療および予防するために、ポロキサマー(poloxamer)(例えば、ポロキサマー188−P188)を含有している組成物および当該組成物を用いる方法を提供する。
〔発明の背景〕
デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)は、X染色体連鎖性の遺伝的疾患であり、ジストロフィン遺伝子における変異によって引き起こされる。結果として、DMDを有する患者からの筋肉は、ジストロフィンを欠いている。ジストロフィンは、427kDaのタンパク質であり、筋繊維の細胞膜、すなわち筋細胞膜の細胞質表面に局在している(例えば、Blake DJ, et al., (2002) Physiol Rev 82, 291-329を参照)。ジストロフィンは、ジストロフィンに付随した糖タンパク質複合体の集合のために必要とされる。当該糖タンパク質複合体は、筋細胞膜において埋め込まれている(例えば、Ohlendieck K & Campbell KP (1991) J Cell Biol 115, 1685-1694を参照)。ジストロフィン−糖タンパク質複合体は、アクチン細胞骨格を基底膜に連結し、筋細胞膜に対する機械的安定性を与えると考えられている(例えば、Petrof BJ (2002) Am J Phys Med Rehabil 81, S162-S174を参照)。ジストロフィンの正確な機能はまた知られていないが、ジストロフィンを欠損している若年男性の骨格筋によって実証された病状は明らかである。DMDを有する少年達は、およそ2〜5歳で開始する進行性の筋力低下を経験し、12歳までに車椅子に束縛され、そして20代半ばで、呼吸器不全または心不全が原因で死亡する(例えば、Hoffman EP, et al., (1987) Cell 51, 919-928を参照)。
ジストロフィー細胞に関連する障害と同様に、一般な組織および被験体における骨格筋の障害を治療するための新しい組成物および新しい方法の必要性、並びに(例えば、ジストロフィー被験体における場合と通常同様に)骨格筋障害を有する被験体における根本的な発症の基盤を予防および/または是正するための、新しい組成物および新しい方法の必要性がある。
〔発明の概要〕
本発明は、骨格筋欠損症を治療および予防するための組成物および方法に関する。具体的には、本発明は、骨格筋の欠損および障害(例えば、ジストロフィン−欠損骨格筋;収縮力不足を有する骨格筋;Ca2+の不均衡を有する骨格筋;微小な裂傷を有する骨格筋)を治療および予防するために、ポロキサマー(例えば、ポロキサマー188−P188)を含有している組成物および当該組成物の使用方法を提供する。
本発明のための実施形態の開発の進行の間にわたって実施された実験は、限定されないが、ジストロフィン−欠損骨格筋、収縮力不足を有する骨格筋、Ca2+の不均衡を有する骨格筋、および/または微小な裂傷を有する骨格筋を包含する骨格筋欠損症を軽減することにおいて有効であることを実証した。
従って、ある実施形態において、本発明は、骨格筋の収縮力不足を有する被験体を治療するための方法を提供する。この方法は、被験体において骨格筋の収縮力不足が改善されるような条件下で、ポロキサマーを含有している組成物を被験体に対して投与することを包含している。ある実施形態において、本発明は、ジストロフィン欠損被験体における骨格筋の収縮力不足を予防するための方法を提供する。この方法は、ポロキサマーを含有している組成物を被験体に対して投与することを包含している。ある実施形態において、本発明は、骨格筋におけるカルシウム濃度を低減させるための方法を提供する。この方法は、ポロキサマーを含有している組成物を骨格筋に対して投与することを包含している。
上記方法は、特定種のポロキサマーに限定されない。いくつかの実施形態において、ポロキサマーは、精製されたポロキサマーまたは分画されたポロキサマーである。いくつかの実施形態において、ポロキサマーは、P188、P138、P237、P288、P124、P338、および/またはP407である。いくつかの実施形態において、ポロキサミン(poloxamine)および/またはポリグリシドール(polyglycidol)は、ポロキサマーの代わりに、またはポロキサマーと一緒に用いられる。上記方法は、特定種の被験体に限定されない。いくつかの実施形態において、被験体はヒト被験体である。いくつかの実施形態において、被験体は、非ヒト被験体(例えば、マウス)である。いくつかの実施形態において、被験体は、ジストロフィン欠損被験体である。いくつかの実施形態において、被験体はデュシェンヌの筋ジストロフィーを有している。いくつかの実施形態において、被験体は、骨格筋の収縮力不足に罹患している。上記方法は特定の形態の組成物の投与に限定されない。いくつかの実施形態において、組成物は、静脈内投与を介して投与される。いくつかの実施形態において、投与は局所的(例えば、筋肉内)である。上記方法は、特定種の骨格筋を治療することに限定されない。本発明の方法を用いて治療されてもよい骨格筋の例は、限定されないが、腓腹筋、後脛骨筋、ヒラメ筋、長筋(longus)、短筋(brevis)、大殿筋、大腿二頭筋、半腱様筋、半膜様筋、腸腰筋、大腿四頭筋、臀部の内転筋、肩甲骨挙筋、僧帽筋、腹直筋、腹横筋、腹部外腹斜筋、腹部内腹斜筋、脊柱起立筋、大胸筋、上腕二頭筋、上腕三頭筋、上腕筋、円回内筋、腕橈骨筋、菱形筋、三角筋、広背筋、横隔膜、および回旋筋を包含している。
上記方法は、被験体に対するポロキサマーの投与に関して、特定の投与量レベルに限定されない。いくつかの実施形態において、((例えば、骨格筋欠損症(例えば、骨格筋欠損症(例えば、ジストロフィン−欠損骨格筋、収縮力不足を有する骨格筋;Ca2+の不均衡を有する骨格筋;微小な裂傷を有する骨格筋)を予防するまたは治療するために、被験体に対して投与された)例えば、ポロキサマーを含有している組成物の)それぞれの投与量は、治療される被験体の体重1kgあたり、0.1mg〜200mgの間(例えば、0.1から5000;0.2から4000;0.3から3000;0.4から2500;0.5から2000;0.6から1500;0.7から1000;1から800;10から500;100から450;200から400;300から350;等)のポロキサマーを含有していることが期待される。いくつかの実施形態において、それぞれの投与量は、治療される被験体の体重1kgあたり、0.46mgから500mgの間のポロキサマーを含有している。いくつかの実施形態において、それぞれの投与量は、治療される被験体の体重1kgあたり、0.46mgのポロキサマーを含有している。いくつかの実施形態において、それぞれの投与量は、治療される被験体の体重1kgあたり、200〜400mgの間のポロキサマーを含有している。いくつかの実施形態において、それぞれの投与量は、治療される被験体の体重1kgあたり、400〜500mgの間のポロキサマーを含有している。いくつかの実施形態において、それぞれの投与量は、治療される被験体の体重1kgあたり、500〜2000mgの間のポロキサマーを含有している。いくつかの実施形態において、それぞれの投与量は、治療される被験体の体重1kgあたり、100mgに満たないポロキサマーを含有している。いくつかの実施形態において、それぞれの投与量は、治療される被験体の体重1kgあたり、2000mgを超えるポロキサマーを含有している。いくつかの実施形態において、それぞれの投与量は、治療される被験体の体重1kgあたり、400〜520mgの間のポロキサマーを含有している。いくつかの実施形態において、それぞれの投与量は、治療される被験体の体重1kgあたり、425〜495mgの間のポロキサマーを含有している。いくつかの実施形態において、それぞれの投与量は、治療される被験体の体重1kgあたり、450〜470mgの間のポロキサマーを含有している。いくつかの実施形態において、それぞれの投与量は、治療される被験体の体重1kgあたり、460mgのポロキサマーを含有している。
上記方法は、被験体に対するポロキサマーの投与の特定の方法に限定されない。投与の例は、限定されないが、静脈内、動脈内、皮下、腹腔内、筋肉内の注射または注入、くも膜下腔および脳室内(intraventricular)への投与を包含している。
いくつかの実施形態において、治療および/または予防は、被験体の骨格筋に負荷をかけすぎているカルシウムに対する感受性を低下させる。いくつかの実施形態において、被験体の骨格筋に負荷をかけすぎているカルシウムに対する感受性を低下させることは、被験体の骨格筋筋細胞膜における細胞内Ca+2レベルを低下させることを含む。いくつかの実施形態において、骨格筋における細胞内Ca+2レベルを低下させることは、被験体における骨格筋組織の再構築を防ぐまたは逆転させる。
いくつかの実施形態において、ポロキサマーを含有している組成物は、骨格筋欠損症の治療において有用な1以上の薬剤と一緒に同時投与される。そのような薬剤の例は、限定されないが、ストレプトマイシン、プレドニゾン、デフラザコート、アザチオプリン、シクロスポリン、バルプロ酸、フェニル酪酸、酪酸ナトリウム、M344、スベロイルアニリドヒドロキサム酸、およびPCT124、またはこれらの薬剤の組合せを包含している。
ある実施形態において、本発明は、ポロキサマーと骨格筋の収縮力不足の治療のために有用な薬剤とを含有している組成物を提供する。いくつかの実施形態において、上記骨格筋の収縮力不足の治療のために有用な薬剤は、ストレプトマイシン、プレドニゾン、デフラザコート、アザチオプリン、シクロスポリン、バルプロ酸、フェニル酪酸、酪酸ナトリウム、M344、スベロイルアニリドヒドロキサム酸、およびPCT124、またはこれらの薬剤の組合せからなる群から選択される。いくつかの実施形態において、上記組成物は、骨格筋の収縮力不足の治療のために有用な2以上の薬剤を含有する。上記組成物は、特定種のポロキサマーに限定されない。いくつかの実施形態において、ポロキサマーは、P188、P138、P237、P288、P124、P338、および/またはP407である。いくつかの実施形態において、ポロキサミンおよび/またはポリグリシドールは、ポロキサマーの代わりに、またはポロキサマーと一緒に用いられる。本発明の方法は、特定種の骨格筋に限定されない。骨格筋の例は、限定されないが、以下の骨格筋の少なくとも1種を包含する:腓腹筋、後脛骨筋、ヒラメ筋、長筋、短筋、大殿筋、大腿二頭筋、半腱様筋、半膜様筋、腸腰筋、大腿四頭筋、臀部の内転筋、肩甲骨挙筋、僧帽筋、腹直筋、腹横筋、外腹斜筋、腹部内腹斜筋、脊柱起立筋、大胸筋、上腕二頭筋、上腕三頭筋、上腕筋、円回内筋、腕橈骨筋、菱形筋、三角筋、広背筋、隔膜および腱板。
ある実施形態において、本発明は、収縮力不足を有する骨格筋との接触においてポロキサマーを含有している組成物を提供する。いくつかの実施形態において、上記収縮力不足を有する骨格筋は、ジストロフィン欠損被験体に由来する。上記組成物は、特定種のポロキサマーに限定されない。いくつかの実施形態において、ポロキサマーは、P188、P138、P237、P288、P124、P338、および/またはP407である。いくつかの実施形態において、ポロキサミンおよび/またはポリグリシドールは、ポロキサマーの代わりに、またはポロキサマーと一緒に用いられる。いくつかの実施形態において、骨格筋は、限定されないが、以下の骨格筋の少なくとも1種を包含する:腓腹筋、後脛骨筋、ヒラメ筋、長筋、短筋、大殿筋、大腿二頭筋、半腱様筋、半膜様筋、腸腰筋、大腿四頭筋、臀部の内転筋、肩甲骨挙筋、僧帽筋、腹直筋、腹横筋、腹部外腹斜筋、腹部内腹斜筋、脊柱起立筋、大胸筋、上腕二頭筋、上腕三頭筋、上腕筋、円回内筋、腕橈骨筋、菱形筋、三角筋、広背筋、隔膜および回旋筋。
〔図面の簡単な説明〕
図1は、(A)ポロキサマーの骨格構造、および(B)本発明の組成物および方法において有用な、市販のポロキサマーの例を示す。
図2は、本発明のための実施形態の開発の間にわたって実施された実験の内、マウスの前足の第2指からの虫様筋(lumbrical muscle)を示す。(A)筋肉は、30Gの皮下注射針のそばに示される。(B)ヘマトキシリンおよびエオシンは、等尺性収縮プロトコル前のWT虫様筋の切断面を染色した。筋肉は、通常、200〜250の線維からなり、直径がおよそ300μmである。(C)等尺性収縮プロトコル前のmdx筋。ジストロフィーの特徴は、中心核の存在および単核球の浸潤を含んでいる。(D)等尺性収縮プロトコルの10分後のmdx筋の遠位末端。全ての160の筋繊維の内、およそ10%は、暗くて肥大化している(矢印)か、細胞物質(cell matter)を欠いている(アスタリスク)ように見える。これらの異常は、過剰収縮した筋繊維を示している。(E)mdx虫様筋は、等尺性収縮プロトコル後に、その長手方向軸に沿って、in-vitroで可視化される。筋肉は、エバンスブルーダイを用いてインキュベートされ、筋繊維において、過剰収縮した領域のすぐ隣に接する空隙領域の存在を示す。
図3は、本発明のための実施形態の開発の間にわたって実施された実験の中で、WT虫様筋およびmdx虫様筋の力の生成を示す。(A)等尺性力(isometric force)の生成の記録例:(i)は、WTマウスからの虫様筋を示し、(ii)は、mdxマウスからの虫様筋を示す。明確にするために、最初の等尺性収縮(1)および最後の等尺性収縮(20)の記録のみが示される。(B)20回の等尺性収縮のプロトコルの間にわたる、WT虫様筋(黒色のバー、n=6)およびmdx虫様筋(白色のバー、n=8)の力の生成。データは、平均値±SEとして示される。片側スチューデントt−検定(Single-tailed Student’s t-test)は、第20回目の収縮においてのみ行われた。アスタリスクは、WTグループとの差異を示している(P<0.05)。
図4は、本発明のための実施形態の開発の間にわたって実施された実験の中で、20回の等尺性収縮の終わりにおけるmdx虫様筋の力の生成を示す。データは、平均値±SEとして示される。1つの方法であるANOVAが行われた後に、グループ間のスチューデント−ニューマン−クールズの対比較が続いて行われた。アスタリスクは、治療されていないmdxグループとの違いを示している(P<0.05)。
〔定義〕
本明細書で用いられる場合は、用語“骨格筋欠損症の徴候および症状”は、骨格筋欠損症に関連する徴候および症状をいう(例えば、簡単な観察によって認識され、個々の活動、年齢、および骨格筋欠損症の家族歴を併せて考えると、骨格筋欠損症に関連する障害(例えば、DMD)の正確な初期の診断につながり得る)。骨格筋欠損症の徴候および症状の例は、限定されないが、ジストロフィン−欠損骨格筋、収縮力不足を有する骨格筋、Ca2+の不均衡を有する骨格筋、および微小な裂傷を有する骨格筋を含む。用語“上記の症状が軽減される”とは、限定されないが、改善された骨格筋収縮力、軽減された骨格筋の微小な裂傷、および/または改善された骨格筋のCa2+均衡を含む、検出可能な症状における質的な軽減または量的な軽減をいう。
本明細書で用いられる場合は、用語“骨格筋欠損症の危険性がある”は、骨格筋欠損症(例えば、ジストロフィン−欠損骨格筋;収縮力不足を有する骨格筋;Ca2+の不均衡を有する骨格筋;微小な裂傷を有する骨格筋)に関して、(すなわち、平均的な被験体(例えば、ヒトまたは研究動物)に対して)増加した危険性を有している被験体(例えば、世界人口の一部、または研究動物)(例えば、DMDを有する被験体)、およびあらゆる年齢で起こり得る被験体をいう。
本明細書で用いられる場合は、用語“ポロキサマーを含有している治療学的な組成物”は、骨格筋欠損症の治療のために用いられる、1種のポロキサマー(例えば、P188)、またはポロキサマーの組合せを含有している組成物をいう。ポロキサマーを含有している治療学的な組成物は、限定されないが、ストレプトマイシン、プレドニゾン、デフラザコート、アザチオプリン、シクロスポリン、バルプロ酸、フェニル酪酸、酪酸ナトリウム、M344、スベロイルアニリドヒドロキサム酸、およびPCT124、もしくはこれらの薬剤の組合せを包含している1以上の他の化合物または薬剤、および/または他の治療学的な薬剤、生理学的に許容され得る液体、ゲル、キャリア、希釈剤、賦形剤、サリチル酸塩、免疫抑制剤、抗生物質、結合剤、フィラー、保存料、安定化剤、乳化剤、および緩衝液をも含有していてもよい。
本明細書で用いられる場合は、用語“宿主”、“被験体”および“患者”は、限定されないが、ヒトおよび非ヒト動物(例えば、げっ歯類)、非ヒト霊長類、ヒツジ、ウシ、反すう動物、ウサギ類、ブタ、ヤギ、ウマ、イヌ、ネコ等を含むあらゆる動物をいい、研究、分析、試験、診断または治療される(例えば、本発明のポロキサマーを含有している組成物を治療学的にまたは予防的に投与される)。用語“宿主”、“被験体”および“患者”は、本明細書において別の方法で示されない限り、交換可能に用いられる。
本明細書で用いられる場合は、本発明のポロキサマーを含有している組成物に関して用いられるときに、用語“治療学的に有効な量”および“有効な量”は、有益な結果または所望の結果(例えば、骨格筋欠損症の治療または予防において有効であるという結果)を達成するに十分な量(例えば、投与量レベル)をいう。有効な量は、1回以上の投与、適用または投与量において投与され得、特定の製剤または特定の投与経路に限定されることは意図されない。
本明細書で用いられる場合は、用語“投与”および“投与すること”は、被験体(例えば、被験体またはin vivo、in vitro、もしくはex vivoの細胞、組織、および器官)に対して、ドラッグ、プロドラッグ、もしくは他の薬剤、または治療学的な処置(例えば、本発明の組成物)を与える行為をいう。
本明細書で用いられる場合は、用語“同時投与”および“同時投与すること”は、少なくとも2種の薬剤(例えば、ポロキサマーを含有している組成物、および1以上の他の薬剤−例えば、プレドニゾン、ストレプトマイシン)または治療法の被験体への投与をいう。いくつかの実施形態において、2種以上の薬剤または治療法の同時投与が同時に行われる。他の実施形態において、第1の薬剤/治療法は、第2の薬剤/治療法より前に投与される。当業者は、製剤および/または用いられる種々の薬剤もしくは治療法の投与経路が異なっていてもよいことを理解する。同時投与のための適切な投与量は、当業者によって容易に決定され得る。いくつかの実施形態において、薬剤または治療法が同時投与されるとき、それぞれの薬剤または治療法は、単独で投与するための適切な投与量よりも少ない投与量で投与される。それゆえ、同時投与は、薬剤もしくは治療法の同時投与が、場合によっては有害な(例えば、毒性がある)薬剤の必要な投与量を減らす場合の実施形態、および/または、2以上の薬剤の同時投与が、他方の薬剤の同時投与によって、一方の薬剤の有益な作用に対する被験体の増感をもたらす場合の実施形態において、特に望ましい。
本明細書で用いられる場合は、用語“治療”もしくは文法上同等なものは、骨格筋欠損症の症状の改善および/または好転を含む。本発明のスクリーニング方法において用いられるときに、疾患に関連するあらゆる要因において改善をもたらす薬剤は、その結果、治療学的な化合物であるといってもよい。用語“治療”は、治療学的な治療および予防的手段もしくは予防手段の両方をいう。例えば、本発明の組成物および方法を用いる治療から利益を得る被験体は、(例えば、本発明の予防的治療を用いて)疾患および/または機能不全(dysfunction)が予防される被験体と同様に、疾患および/または機能不全(例えば、筋肉の損傷(injury)、DMDおよび/または骨格筋欠損症)を既に有する被験体も含む。
本明細書で用いられる場合は、用語“疾患または機能不全の危険性がある”とは、特定の疾患または機能不全を経験する傾向がある被験体(例えば、ヒト)をいう。この傾向は、遺伝学的(例えば、遺伝性の障害等の疾患を経験する特定の遺伝学的傾向)であってもよく、または他の要因(例えば、環境条件、高血圧、活動レベル、メタボリックシンドローム等)に起因していてもよい。それゆえ、本発明は、いかなる特定の危険性に限定されることも意図されず、骨格筋欠損症(例えば、DMD)に関連したいかなる特定種の障害または機能不全に限定されることも意図されない。
本明細書で用いられる場合は、用語“疾患または機能不全に罹患すること”は、特定の疾患または機能不全を経験している被験体(例えば、ヒト)をいう。本発明は、いかなる特定の徴候もしくは症状、または疾患に限定されることも意図されない。それゆえ、本発明は、あらゆる範囲の疾患または機能不全を経験している被験体を包含することが意図される。この場合、上記被験体は、特定の疾患または機能不全に関連する、少なくともいくつかのしるし(例えば、徴候および症状)を示している。
用語“化合物”および“薬剤”は、任意の化学物質、調合薬、ドラッグ等をいい、疾患、疾病、病気、または身体の機能の障害を治療するもしくは予防するために用いられ得る。化合物は、公知の治療学的な化合物および可能性のある治療学的な化合物の両方を包含する。“公知の治療学的な化合物”は、(例えば、動物実験またはヒトに対する投与の従前の経験を通して、)上記の治療において有効であることが示されている治療学的な化合物をいう。いいかえれば、公知の治療学的な化合物は、疾患または機能不全の治療において有効な化合物に限定されない。
〔発明の詳細な説明〕
骨格筋は、横紋筋の一種であり、通常、骨格に付着している。骨格筋は、骨および関節に対して力を加えることによって;収縮を介して、運動を生み出すために使われる。骨格筋は、反射神経を通じて不随意に収縮し得るが、通常、(体性神経刺激を介して)随意的に収縮する。
筋細胞(筋繊維とも呼ばれる)は、伸長した円柱状の形状を有し、(脊椎動物およびハエにおいて)多核である。これらの筋肉の核は、細胞の末梢側において、細胞膜の真下に局在し、筋原線維のために、筋繊維の中央部分を空けている。
骨格筋は、体軸の中心の近くの骨に付着する一方の末端(“起源”)を有し、これは、いつもではないが多くの場合に、比較的固定された骨(例えば、肩甲骨等)であり、他方の末端(“挿入”)は、関節を横切って、体軸から離れた他の骨(例えば、上腕骨等)に対して付着している。筋肉の収縮は、関節の周囲に骨を回転させ、骨同士を互いに関連して動かす(例えば、本明細書で上述した起源と挿入の場合における上腕の持ち上げ等)。
ベッカー型筋ジストロフィー(BMD)は、あまり一般的ではなく、30,000人の男性毎におよそ1人が罹患しているのに対して、3500人の男性毎におよそ1人が、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)に罹患している。これらの疾患の両方は、X染色体に局在している遺伝子における変異、つまり、ジストロフィンをコードするXp21.1における変異の結果である。BMDにおいては、ジストロフィンは、減少しているかサイズにおける異常があるのに対して、DMDにおいては、ジストロフィンは、欠失している。ジストロフィンは、筋細胞における細胞の組織化に加わる構造タンパク質であり、筋原線維(myofibrillular)および筋細胞膜(筋肉の細胞膜)の両方の安定性を促進する(例えば、Kaprielian and Severs, 2000 Heart Failure Reviews 5: 221-238を参照)。
mdxマウスが、ジストロフィンを欠失し、ジストロフィン欠損の影響を研究するための重要なモデルであることは、1984年に発見された(例えば、Bulfield G, et al., (1984) Proc Natl Acad Sci U S A 81, 1189-1192を参照)。mdxマウスからの筋組織において実施された研究は、構造および機能における機能障害(impairment)を実証した(例えば、Lynch GS, et al., (2001) J Physiol 535, 591-600; Head SI, et al., (1992) Proc Biol Sci 248, 163-169を参照)。この、機能障害は、長期収縮に関連した収縮誘発性の力不足に対する高度の感受性を含む(例えば、Li S, et al., (2006) Hum Mol Genet 15, 1610-1622を参照)。筋繊維の種類および損傷を引き起こすプロトコルの厳しさに応じて、ジストロフィー骨格筋は、同じ長期収縮プロトコルに曝された野生型(WT)マウスの筋肉よりも2倍〜7倍の力の損失を示す(例えば、Li S, et al., (2006) Hum Mol Genet 15, 1610-1622を参照)。さらに、ジストロフィー筋は、細胞外のイオンに対してより透過性であり、染料を透過しない膜である筋細胞膜を有している(例えば、Yeung EW, et al., (2005) J Physiol 562, 367-380; Vandebrouck C, et al., (2002) J Cell Biol 158, 1089-1096; Petrof BJ (2002) Am J Phys Med Rehabil 81, S162-S174を参照)。電位経路は、微小な膜の裂傷を含んでいるジストロフィー筋肉繊維に対して正常に排除された細胞外の構成物質が流入することを可能にし(例えば、Petrof BJ (2002) Am J Phys Med Rehabil 81, S162-S174を参照)、イオンチャネルを正常に機能させない原因となる(例えば、Yeung EW, et al., (2005) J Physiol 562, 367-380; Vandebrouck C, et al., (2002) J Cell Biol 158, 1089-1096を参照)。これらの経路は、細胞内のカルシウムが筋繊維に流入することを可能にし、カルシウムの細胞内濃度を上昇させる結果をもたらす。カルシウム濃度の上昇は、筋肉の構造および種々のカルシウム依存性の機構を介する機能に対して有害である(例えば、Lamb GD, et al., (1995) J Physiol 489 ( Pt 2), 349-362; Verburg E, et al., (2005) J Physiol 564, 775-790を参照)。ジストロフィー骨格筋の膜は、WTマウスの膜よりも“漏出性”であると一般的に受け取られているにもかかわらず(例えば、Yeung EW, et al., (2005) J Physiol 562, 367-380; Vandebrouck C, et al., (2002) J Cell Biol 158, 1089-1096; Petrof BJ (2002) Am J Phys Med Rehabil 81, S162-S174を参照)、収縮誘発性の力不足に対して、微小膜の裂傷および正常に機能しないイオンチャネルが相対的に寄与することは、立証されていない。
ストレプトマイシンは、伸展活性化チャネル(stretch-activated channels)(SAC)の阻害剤であり(例えば、Sokabe M, et al., (1993) Ann N Y Acad Sci 707, 417-420を参照)、ジストロフィー筋において収縮誘発性の損傷の規模を低減させる(例えば、Yeung EW, et al., (2005) J Physiol 562, 367-380を参照)。ポロキサマー188(P188)は、8.4kDaの両親媒性ポリマーであり、ニューロン(例えば、Marks JD, et al., (2001) FASEB J 15, 1107-1109を参照)および心筋細胞(例えば、Yasuda S, et al., (2005) Nature 436, 1025-1029を参照)において、崩壊した膜を効率的に繋ぎ合わせる。P188は、種々の損傷誘導性プロトコルからの、骨格筋(例えば、Lee RC, et al., (1992) Proc Natl Acad Sci U S A 89, 4524-4528を参照)、繊維芽細胞(例えば、Merchant FA, et al., (1998) J Surg Res 74, 131-140を参照)および脊髄(例えば、Borgens RB, et al., (2004) J Neurosci Res 76, 141-154を参照)の回復も促進する。
本発明のための実施形態の開発の進行の間にわたって行われた実験は、例えば、ストレプトマイシンおよびポロキサマーの使用、並びに機械受容チャネル(mechanosensitive channels)および微小膜の裂傷が、収縮誘発性の損傷に対するジストロフィー筋の感受性を増加させる原因となる程度、を調査した。例えば、虫様(LMB)筋は、ストレプトマイシンまたはポロキサマー188を用いて処理され、その後、ジストロフィー筋における力不足を生み出す等尺性収縮プロトコルをin vitroで施された。これによって、全てのmdx骨格筋における収縮誘発性の力不足を軽減することにおいて、ポロキサマーが有効であることが示された。例えば、ポロキサマーの機構とは異なる機構を介しているようであるが、ストレプトマイシンを用いたmdx筋の治療は、収縮誘発性の力不足を軽減することにおいて、同様に有効であることが示された。これらの結果は、予期しないことであった。実際に、以前の研究は、ポロキサマーは、mdx骨格筋繊維における細胞膜の崩壊の誘発を予防することができないことを示していた(例えば、Quinlan, J.G., et al., (2006) Neuromuscul. Disord. 16(12) 855-864を参照)。
従って、本発明は、骨格筋障害(例えば、DMD、および関連する障害)の発症機序に対する新しい知見と、骨格筋障害の治療および予防並びに研究に使用するための組成物および方法とを提供する。いくつかの実施形態において、本発明は、(例えば、DMDによって引き起こされる、運動誘導性の損傷によって引き起こされる、または他の原因によって引き起こされる)例えば、ジストロフィン−欠損骨格筋、収縮力不足を有する骨格筋、Ca2+の不均衡を有する骨格筋、および/または微小な裂傷を有する骨格筋を、膜封止剤ポロキサマー(例えば、ポロキサマー188−P188)を用いて治療する方法を提供する。いくつかの実施形態において、ポロキサマー(例えば、P188)を用いた治療は、ジストロフィン−欠損骨格筋における骨格筋の収縮力不足を好転させる(例えば、実施例IおよびIIを参照)。いくつかの実施形態において、ポロキサマーを用いた治療は、DMDの治療において用いられる。いくつかの実施形態において、本発明は、被験体に対するポロキサマー(例えば、P188)の投与を介して、ジストロフィン−欠損骨格筋、収縮力不足を有する骨格筋、Ca2+の不均衡を有する骨格筋、および/または微小な裂傷を有する骨格筋の進行から骨格筋細胞および被験体(例えば、ヒト、非ヒト動物等)を守る方法を提供する。さらなる実施形態において、本発明は、被験体に対するポロキサマー(例えば、P188)を含有している組成物の投与(例えば、静脈内(IV)投与)を包含する、被験体におけるジストロフィン欠損障害(例えば、DMD)のための治療を提供する。いくつかの実施形態において、被験体は、損傷がある骨格筋を有しているか、骨格筋が損傷を受け易いあらゆる被験体である。本発明を実施するために、機構の理解は必要ではなく、本発明は、いかなる特定の作用機構にも限定されないが、いくつかの実施形態において、ポロキサマー(例えば、P188)を含有している組成物の投与は、例えば、筋繊維への細胞外カルシウムの流入を防ぐように骨格筋の微小膜の裂傷を封止する結果として、骨格筋の機能(例えば、骨格筋の収縮力)における(例えば、速やかなおよび/または持続した)改善を提供する。
DMDのための現在の治療学的なパラダイムは、切断型ジストロフィンのエキソンの飛び越しもしくは短縮型ジストロフィンのウイルスの形質導入を介した、ジストロフィンの発現、またはジストロフィン欠損症の結果を限定する他の遺伝子(例えば、ユートロフィンまたはジスフェリン)の発現に焦点が当てられている(例えば、Gregorevic, et al., Nat Med 10, 828-34 (2004); Squire et al., Hum Mol Genet 11, 3333-44 (2002); Torrente et al., J Clin Invest 114, 182-95 (2004); Goyenvalle et al., Science 306, 1796-9 (2004)を参照)。これらのストラテジーは、体における全ての横紋筋を標的とすることが必要であるために、挑戦的であるが、前途有望である。本発明は、DMDを有する被験体に対してポロキサマーを含有している組成物を投与することを包含している、DMDの治療のための比較的簡単な化学に基づく代替法を提供する。本発明を実施するために、機構の理解は必要ではなく、本発明は、いかなる特定の作用機構にも限定されないが、いくつかの実施形態において、ポロキサマーの投与は、急速な膜の安定化および/または修復の結果をもたらす。
本明細書において実証されたように(例えば、DMDのマウスモデルにおいて;実施例IおよびIIを参照)、ポロキサマーの投与は、即時の速やかな骨格筋の改善をもたらす。現在、P188は、鎌状赤血球貧血患者における脈管−閉塞性の局面を治療するための第III相臨床試験にあり、ヒトにおけるP188の安全性および非毒性が最近実証されている(例えば、Adams-Graves et al., Blood 90, 2041-6 (1997)を参照)。しかし、鎌状赤血球貧血の一過性の経過とは違って、DMDは進行性の疾患であり、有効なポロキサマー治療は、いくつかの実施形態において、慢性的な血管内投与を利用する。それゆえ、本発明は、DMDに対する進行性の損傷を予防または制限するための新しい種類の治療学的な薬剤、および骨格筋欠損症(例えば、ジストロフィン−欠損骨格筋;収縮力不足を有する骨格筋;Ca2+の不均衡を有する骨格筋;微小な裂傷を有する骨格筋)を治療するための新しい種類の治療学的な薬剤に相当する、膜封止性ポロキサマーを利用する。
本発明は、被験体における骨格筋の膜の安定化(例えば、その結果、細胞の整合性(cellular compliance)を高め、骨格筋の機能を改善する)においての使用に関して、いかなる特定のポロキサマーにも限定されない。いくつかの好ましい実施形態において、P188は、(例えば、本発明の組成物(例えば、薬学的組成物)において)用いられる。本発明は、P188の使用に限定されない。実際に、P188と同様の特性および特徴(例えば、生物学的な作用)を有するあらゆるポロキサマーは、本発明における使用を見出す。そのようなポロキサマーは、限定されないが、P138、P237、P288、P124、P338、およびP407を包含している。
P188は、1950年代に、当初はBASFとして開発された、ポロキサマー分子のファミリーの1種である。P188は、ポリ(エチレンオキシド)80−ポリ(プロピレンオキシド)30−ポリ(エチレンオキシド)80からなる、非イオンのトリブロック共重合体(分子量≒8.4Kda)である。その分子は、PLURONIC F68、RheothRx、およびFLOCORを含む数個の名称を有している。
ポロキサマー(PLURONICブロックポリマーとも称される、BASF Corp., Wyandotte, MIから入手可能)は、基本的なA−B−A構造:EO−PO−EOにおいて配置されたエチレンオキシド(EO)ブロックおよびプロピレンオキシド(PO)ブロックを一般的に含んでいる。この配置は、両親媒性の共重合体をもたらす。両親媒性の共重合体においては、親水性のEO(x)単位の数および疎水性のPO(y)単位の数は変更され得る(例えば、Reeve, pgs. 231-249, in Handbook of Biodegradable Polymers, Harwood Academic Pub., Eds. Domb et al., (1997)を参照)。種々のポロキサマーの骨格構造は、図1Aにおいて示される。BASF Corpから入手可能な選択されたPLURONIC共重合体の表は、図1Bに示される。種々のx値およびy値を有する共重合体は、明確な親水性−親油性バランス(HLB)によって特徴付けられる。ポロキサマーは、例えば、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウム等のアルカリ系触媒の存在下において、PO単量体およびEO単量体の逐次的な付加によって合成され得る(例えば、Schmolka, J. Am. Oil Chem. Soc. 54 (1977) 110-116を参照)。この反応は、POブロックの重合によって開始され、POブロックの両端において、EO鎖の成長が続く。陰イオン性の重合は、通常、比較的低い多分散性指数(M/M)を有する重合体を生産する。
いくつかの実施形態において、本発明のポロキサマーを含有している組成物は、精製されたポロキサマーおよび/または分画された(例えば、ゲルろ過またはクロマトグラフィー分画を用いて精製されたおよび/または分画された)ポロキサマーを含有している(例えば、Emanuele et al., Expert Opin Investig drugs. 1998; 7:1193-20,米国特許第6,977,045号明細書および第6,761,824号明細書を参照)。いくつかの実施形態において、混合物(例えば、POホモ重合体および/またはブロック共重合体の混合物)が取り除かれたポロキサマーが用いられる。いくつかの実施形態において、生物学的な活性を改善するために最適化されたポロキサマー(例えば、ポリオキシプロピレン/ポリオキシエチレン共重合体)が用いられる(例えば、米国特許第6,747,064号明細書を参照)。いくつかの実施形態において、本発明の組成物および方法において、1以上の、化学的に修飾されたポロキサマーの形態が利用される。ポロキサマーの化学的な修飾は、限定されないが、放射標識、アセチル化、ビオチン化、フルオロフォアの付加、および他の化学的修飾を含む。
(例えば、図1bに開示された特性に基づいて)P188と同様の特性および特徴(例えば、生物学的な作用)を有する種々のポロキサマーは、本発明において(例えば、ポロキサマーを含有している組成物において)用いられ得る。これらのポロキサマーは、限定されないが、P138、P237、P288、P124、P338、およびP407を包含している。いくつかの実施形態において、5000ダルトンから9000ダルトンの分子量を有するポロキサマーが、(例えば、本発明の組成物(例えば、薬学的組成物)において)用いられる。いくつかの実施形態において、9000ダルトンから12000ダルトンの分子量を有するポロキサマーが、(例えば、本発明の組成物(例えば、薬学的組成物)において)用いられる。いくつかの実施形態において、12000ダルトンから15000ダルトンの分子量を有するポロキサマーが、(例えば、本発明の組成物(例えば、薬学的組成物)において)用いられる。いくつかの実施形態において、5000ダルトンに満たない分子量を有するポロキサマーまたは15000ダルトンより大きい分子量を有するポロキサマーは、本発明(例えば、本発明の組成物(例えば、薬学的組成物)において)における使用を見出してもよい。
いくつかの実施形態において、ポリオキシエチレン含有量が50%よりも多いポロキサマーが(例えば、本発明の組成物(例えば、薬学的組成物)において)用いられる。いくつかの実施形態において、ポリオキシエチレン含有量が50%から60%のポロキサマーが(例えば、本発明の組成物(例えば、薬学的組成物)において)用いられる。いくつかの実施形態において、ポリオキシエチレン含有量が60%から70%のポロキサマーが(例えば、本発明の組成物(例えば、薬学的組成物)において)用いられる。ポリオキシエチレン含有量が50%に満たないポロキサマーおよびポリオキシエチレン含有量が70%を超えるポロキサマーは、本発明(例えば、本発明の組成物(例えば、薬学的組成物))における使用を見出してもよい。
P188のいくつかの共通の生物学的な使用は、数個の市販の下剤における便の軟化薬としての使用、化粧品における成分としての使用、および医薬品のための乳化剤としての使用を包含している。P188は、強力な界面活性剤である。P188は、脂質単分子層に対して挿入されることが示されている(例えば、Maskarinec et al., 2002 Biophys. J. 82: 1453-1459を参照)。化学療法に対して腫瘍を感作させるために(例えば、Kabanov et al., Adv drug Deliv Rev 2002, 54, 759-779を参照)、特に、遺伝子療法の送達のために、制御された薬剤の送達において、P188は、電気的に損傷を受けた細胞膜の修復を含む、in vivoの多くの生物学的な作用を有している(例えば、Lee et al., (1992) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89: 4524-4528を参照)。さらに、P188は、血小板の接着性と同様に、血流および血液の粘性における作用を有していることが示された(例えば、Grover et al., (1969) Circ. 39 and 40: I249, (Suppl. I)を参照)。P188は、Glaxo WelcomeによってRheothRxの名称もとで治療学的な薬剤として開発され(例えば、Adams-Graves et al., (1997), Blood 90: 2041-2046を参照)、鎌状赤血球病における脈管−閉塞性の局面のために、FLOCORの名称のもとでCytRxによって、治療学的な薬剤として開発され、第III相臨床試験にある(例えば、Emanuele, (1998) Expert Opin. Investig. drugs 7:1193-1200を参照)。P188は、様々な結果で、急性の心筋梗塞(MI)(CORE)を有する患者における血栓溶解活性を評価するための第III相の臨床試験にもあった(Schaer et al., (1996) Circ. 94: 298-307; Chareonthaitawe et al., (2000) Heart 84: 142-148)。P188は、急性のMIのための初期の経皮的経管冠動脈形成術に対する補助剤として第II相臨床試験にある(例えば、O’Keefe, et al., 1996 Am. J. Cardiol. 78: 747-750を参照)。それゆえ、本発明は、(例えば、骨格筋欠損症(例えば、ジストロフィン−欠損骨格筋;収縮力不足を有する骨格筋;Ca2+の不均衡を有する骨格筋;微小な裂傷を有する骨格筋)を治療および/または予防するための)P188と同様の特性および生物学的な作用を享受するポロキサマー類(例えば、P138、P237およびP288)の使用を意図する。
P188は、実際に、最大で72時間にわたって与えられたときに安全であり(例えば、Adams-Graves et al., (1997), Blood 90: 2041-2046を参照)、反復曝露に関して子供および成人において十分に許容されている(例えば、Gibbs and Hagemann, 2004 Ann. Pharmacother. 38: 320-324を参照)。RheothRxを用いた研究における最も重大な副作用は、腎臓の機能不全であった。しかし、これは、より高度に精製された形態であるFLOCORを用いた場合には認められなかった。最も高頻繁に経験された副作用は、痛み、注射部位の異常および吐き気であった。P188は、げっ歯類において7.5時間の細胞質における半減期を有し、ヒト被験体において18時間の細胞質における半減期を有している。薬物動態的研究は、<5%の精製されたポロキサマーが代謝されることを示した。より高分子量でクリアランスがより遅い、単一の代謝産物が検出された(例えば、ibbs and Hagemann, 2004 Ann. Pharmacother. 38: 320-324を参照)。腎クリアランスは、排出の主要な経路である。
本発明は、骨格筋欠損症(例えば、ジストロフィン−欠損骨格筋;収縮力不足を有する骨格筋;Ca2+の不均衡を有する骨格筋;微小な裂傷を有する骨格筋)のための、分野で最初の(first in class)治療法として用いられ得る、ポロキサマーを含有している組成物を提供する。いくつかの実施形態において、現在、DMDを治療するために用いられている1以上の組成物(例えば、調合薬,ドラッグ等)(例えば、ストレプトマイシン)(例えば、プレドニゾン、デフラザコート、アザチオプリン、シクロスポリン、バルプロ酸、フェニル酪酸、酪酸ナトリウム、M344、スベロイルアニリドヒドロキサム酸、およびPCT124)と一緒に投与されたときに、ポロキサマー(例えば、P188)を含有している組成物は、付加的な利益または相乗的な利益をもたらす。
いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、例えば、骨格筋の微小膜における裂傷の封止を介して、細胞外のカルシウムの骨格筋への流入を予防するために用いられる。例えば、いくつかの実施形態において、本発明のポロキサマーを含有している組成物は、細胞の整合性を高め、細胞内のCa2+を減少させて不安定な骨格筋におけるレベルを制御するために用いられ得る。本発明を実施するために、機構の理解は必要ではなく、本発明は、いかなる特定の作用機構にも限定されないが、いくつかの実施形態において、本発明のポロキサマーを含有している組成物を用いて、不安定な骨格筋を治療すること(例えば、ポロキサマーを含有している組成物を骨格筋に対して投与すること)は、筋細胞膜における小さな裂傷を修正する(例えば、有害な作用を中和する、および/または再構築する(例えば、修繕する))。
本発明は、治療される骨格筋欠損症の種類(例えば、ジストロフィン−欠損骨格筋;収縮力不足を有する骨格筋;Ca2+の不均衡を有する骨格筋;微小な裂傷を有する骨格筋)によって限定されない。実際、例えば、筋細胞膜における小さな裂傷を介した、骨格筋への細胞外カルシウムの望まれない流入を含めたあらゆる骨格筋は、本発明の組成物および方法を用いて治療され得る。いくつかの実施形態において、筋細胞膜における小さな裂傷は、ジストロフィン欠損に起因する。
本発明は、本発明の組成物が投与される被験体の種類によって限定されない。実際、多種多様の被験体が、本発明の組成物の投与から利益を受けることが意図される。好ましい実施形態において、被験体は、ヒトである。いくつかの実施形態において、ヒト被験体は、骨格筋欠損症(例えば、ジストロフィン−欠損骨格筋;収縮力不足を有する骨格筋;Ca2+の不均衡を有する骨格筋;微小な裂傷を有する骨格筋)に罹患している、またはその可能性がある、あらゆる年齢(例えば、成人、子供、幼児等)のヒト被験体(例えば、DMDを有する被験体)である。いくつかの実施形態において、被験体は、非ヒト動物(例えば、ブタ、ウシ、ヤギ、ウマ、ヒツジ、もしくは他の家畜;またはマウス、ラット、ウサギもしくは研究環境において一般に用いられる他の動物)である。
本発明は、本発明の組成物を用いて治療される特定種の骨格筋に限定さない。ヒトの体には、およそ639種の骨格筋が存在し(例えば、Gray's Anatomy: The Anatomical Basis of Clinical Practice, 39th edition (2004)を参照)、それぞれが本発明の組成物を用いて治療されてもよい。本発明の組成物を用いて治療されてもよい欠損(例えば、ジストロフィン−欠損骨格筋;収縮力不足を有する骨格筋;Ca2+の不均衡を有する骨格筋;微小な裂傷を有する骨格筋)を有している骨格筋の例は、限定されないが、以下の骨格筋の少なくとも1つを含む:腓腹筋、後脛骨筋、ヒラメ筋、長筋、短筋、大殿筋、大腿二頭筋、半腱様筋、半膜様筋、腸腰筋、大腿四頭筋、臀部の内転筋、肩甲骨挙筋、僧帽筋、腹直筋、腹横筋、腹部外腹斜筋、腹部内腹斜筋、脊柱起立筋、大胸筋、上腕二頭筋、上腕三頭筋、上腕筋、円回内筋、腕橈骨筋、菱形筋、三角筋、広背筋、および回旋筋。
本発明は、(例えば、本願明細書において記載されたポロキサマーを含有している)薬学的組成物をさらに提供する。本発明のポロキサマーを含有している組成物は、(例えば、収縮力不足を有する骨格筋;Ca2+の不均衡を有する骨格筋;微小な裂傷を有する骨格筋を是正するために)治療学的に用いられ得るか、または(例えば、収縮力不足を有する骨格筋;Ca2+の不均衡を有する骨格筋;微小な裂傷を有する骨格筋を予防するための)予防的な組成物として用いられ得る。本発明のポロキサマーを含有している組成物は、多くの異なる送達経路および方法を介して、被験体に対して投与され得る。
好ましい実施形態において、本発明のポロキサマーを含有している組成物は、静脈内(IV)投与を介して投与される。いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、数日間にわたって、1日に1回以上投与されてもよい。いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、1週間より長い期間に渡って、1日1回以上投与されてもよい。いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、2週間以上にわたって、1日1回以上投与されてもよい。いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、1ヶ月以上、2ヶ月以上、4ヶ月以上、8ヶ月以上、または1年より長い期間にわたって、1日1回以上投与されてもよい。好ましい実施形態において、本発明の組成物は(例えば、慢性的な投与を介して)投与され((例えば、数週間、数ヶ月または数年の期間を超える)持続期間に渡って、診療所において、1週間に1回以上、1週間に2回以上、または1週間に3回以上投与され)、(例えば、骨格筋のカルシウムレベルを低くし、正常レベルに維持することによって)骨格筋収縮を改善するためは十分である。本発明は、静脈内投与に限定されない。実際に、本発明の組成物を脈管構造に対して導入するあらゆる投与方法が、送達手段として有用であることが意図される。例えば、いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、非経口投与を介して投与される。非経口投与の例は、静脈内、動脈内、皮下、腹腔内、筋肉内の注射または注入、くも膜下腔または脳室内の投与を包含している。
非経口投与、IV投与、または他の経路の投与のための組成物および製剤は、無菌の水溶液を含んでいてもよく、この無菌の水溶液は、緩衝液、希釈剤、および、限定されないが、例えば、浸透促進剤、キャリア化合物および他の薬学的に許容され得るキャリアもしくは賦形剤等の他の好適な添加剤をも含有していてもよい。
本発明の組成物は、例えば、静脈内経路、または本明細書において記載されたほかの経路等の、あらゆる経路よる投与のために考案されてもよい。いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、無菌の水溶液を含んでいてもよい。許容され得る媒体および溶媒は、限定されないが、水、リンガー溶液、リン酸緩衝生理食塩水および生理食塩水を含む。さらに、無菌の不揮発性油(fixed oil)は、従来、溶媒または懸濁化剤として採用される。この目的のために、合成モノ−グリセリドまたはジ−グリセリド(mono-ordi-glycerides)を含むあらゆる無刺激性の不揮発性ミネラルオイルまたは非ミネラルオイルが採用されてもよい。さらに、例えば、オレイン酸等の脂肪酸は、注射剤の調製における使用を見出す。IV投与、非経口投与、粘膜投与、皮下投与、筋肉内投与、腹腔内投与、静脈内投与、(例えば、摂取を介する)経口投与または他の経路を介する投与に好適なキャリア製剤は、レミントン(Remington: The Science and Practice of Pharmacy, Mack Publishing Company, Easton, Pa., 19th edition, 1995)において見出されてもよい。
さらに好ましい実施形態において、本発明の組成物は、(例えば、骨格筋カルシウムレベルを低下させ正常レベルに維持することによって)骨格筋収縮を改善するために十分な量(例えば、投与量)において投与される。本発明は、いかなる特定の投与量にも限定されない。実際、所望の投与量は、治療される被験体(例えば、年齢、健康状態、治療される骨格筋欠損症の種類および/または程度)に応じて変わってもよい。
いくつかの実施形態において、それぞれの投与量(例えば、骨格筋欠損症((例えば、ジストロフィン−欠損骨格筋;収縮力不足を有する骨格筋;Ca2+の不均衡を有する骨格筋;微小な裂傷を有する骨格筋)を予防するまたは治療するために被験体に対して投与される)ポロキサマーを含有している組成物の投与量)は、治療される被験体の体重1kgあたり、100mg〜200mgの間のポロキサマーを含有することが期待される。いくつかの実施形態において、それぞれの投与量は、治療される被験体の体重1kgあたり、200mg〜400mgの間のポロキサマーを含有する。いくつかの実施形態において、それぞれの投与量は、治療される被験体の体重1kgあたり、400mg〜500mgの間のポロキサマーを含有する。いくつかの実施形態において、それぞれの投与量は、治療される被験体の体重1kgあたり、500mg〜2000mgの間のポロキサマーを含有する。いくつかの実施形態において、それぞれの投与量は、治療される被験体の体重1kgあたり、100mgより少ないポロキサマーを含有する。いくつかの実施形態において、それぞれの投与量は、治療される被験体の体重1kgあたり、2000mgよりも多いポロキサマーを含有する。いくつかの実施形態において、それぞれの投与量は、治療される被験体の体重1kgあたり、400mg〜520mgの間のポロキサマーを含有する。いくつかの実施形態において、それぞれの投与量は、治療される被験体の体重1kgあたり、425mg〜495mgの間のポロキサマーを含有する。いくつかの実施形態において、それぞれの投与量は、治療される被験体の体重1kgあたり、450mg〜470mgの間のポロキサマーを含有する。いくつかの実施形態において、それぞれの投与量は、治療される被験体の体重1kgあたり、460mgのポロキサマーを含有する。特定の投与のための適切な量は、被験体における弛緩作用および他の生物学的な反応(例えば、血中酸素飽和度)の観察を含む、標準的な研究によって確かめられ得る。
いくつかの実施形態において、それぞれの投与量(例えば、被験体(例えば、ヒト被験体)に対して投与される、ポロキサマーを含有している組成物の投与量)は、30重量%までのポロキサマーであることが期待される。しかし、1投与量は、この量のポロキサマーよりも多いまたは少ないポロキサマーを含有していてもよい。例えば、いくつかの実施形態において、1投与量は、30重量%〜40重量%の間のポロキサマーを含んでいてもよい。いくつかの実施形態において、1投与量は、40%w/w〜50%w/wの間のポロキサマーを含んでいてもよい。いくつかの実施形態において、1投与量は、50%w/w〜60%w/wの間のポロキサマーを含んでいてもよい。いくつかの実施形態において、1投与量は、60重量%より多いポロキサマーを含んでいてもよい。
いくつかの実施形態において、ポロキサマーを含有している薬学的製剤は、投与の容易さおよび投与量の均一性のために、投与量単位形態(dosage unit form)において考案される。投与量単位形態は、本明細書で用いられる場合は、治療(例えば、本発明の組成物の投与)を経験する被験体に適した薬学的製剤の、物理的に個別の単位をいう。それぞれの投与量は、所望の反応(例えば、骨格筋機能の改善)を起こすように計算された量の、ポロキサマーを含有している組成物を含むべきである。適切な投与量単位を決定するための手段は、本明細書で記載された手段に加えて、当業者に周知である。
投与量単位は、限定されないが、被験体の体重、年齢、および健康状態を含む、数個の要因に基づいて、比例的に増減されてもよい。さらに、投与量単位は、治療に対する被験体の反応(例えば、骨格筋の収縮力不足の量)に基づいて、増減されてもよい。
本発明のある実施形態において、組成物は、さらに1以上のアルコール、亜鉛含有化合物、皮膚軟化剤、保湿剤、増粘剤および/またはゲル化剤、中和剤、および界面活性剤を含んでいてもよい。製剤において用いられる水は、中性のpHを有する脱イオン水であることが好ましい。
本発明の組成物は、薬学的組成物において従来見出されている他の補助的な成分をさらに含んでいてもよい。それゆえ、例えば、組成物は、例えば、かゆみ止め薬、収斂剤、局部麻酔薬または抗炎症性薬等の、付加的な、互換性のある、薬学的に活性のある材料を含んでいてもよく、本発明の組成物の種々の投薬形態を物理的に設計することにおいて有用な、付加的な材料、例えば、染料、保存料、酸化防止剤、乳白剤、増粘剤および安定化剤等を含んでいてもよい。しかし、そのような物質は、添加されるときに、本発明の組成物の成分の生物学的な活性を極度に妨げないことが好ましい。製剤は、無菌化され得、もし望まれるなら、製剤のポロキサマーに有害な影響を与えない助剤(例えば、潤滑財、保存料、安定化剤、湿潤剤、乳化剤、浸透圧に影響を与えるための塩、緩衝液、着色剤、香味料および/または芳香剤等)と一緒に混合され得る。
本発明は、1以上の付加的な活性化剤(例えば、骨格筋欠損症を治療または予防するための、この分野で公知の薬剤)と共に、ポロキサマーを含有している組成物を同時投与することを含む方法も包含している。実際、それは、本発明の組成物を同時投与することによって、従来技術の治療方法および/または薬学的組成物を増強する方法を提供するための、この発明のさらなる側面である。同時投与の手段において、薬剤は、同時にまたは逐次的に投与されてもよい。一実施形態において、本明細書中に記載された組成物は、他の活性化剤より前に投与される。薬学的製剤および投与の様式は、本発明に記載された薬学的製剤および投与の様式のいずれかであってもよい。さらに、2以上の同時投与された薬剤は、異なる様式(例えば、経路)または異なる製剤を用いてそれぞれが投与されてもよい。同時投与される付加的な薬剤は、この分野における周知の薬剤のいずれかで有り得、限定されないが、現在、臨床用途にある薬剤を含む。
ポロキサマーを含有している組成物の投与は、骨格筋欠損症を治療するための1以上の公知の治療学的な薬剤と同時投与されてもよいことが意図される。例えば、骨格筋欠損症(例えば、ジストロフィン−欠損骨格筋;収縮力不足を有する骨格筋;Ca2+の不均衡を有する骨格筋;微小な裂傷を有する骨格筋)を治療するための、この分野において公知である薬剤は、限定されないが、ストレプトマイシン、コルチコステロイド(例えば、プレドニゾン、デフラザコート)、免疫抑制剤(例えば、アザチオプリン、シクロスポリン)、バルプロ酸、フェニル酪酸、酪酸ナトリウム、M344(ベンズアミドおよびヒストン脱アセチル化酵素[HDAC]阻害剤)、スベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA)、およびPTC124(PTC therapeutics, Inc, South Plainfield, NJ)。PCT124は、オキサジアゾール化合物である。オキサジアゾール化合物は、経口で摂取されたときに、産生されるタンパク質が全長タンパク質となるように、ジストロフィン遺伝子変異によって誘導されるナンセンスストップ翻訳シグナルを無効にし得る。(例えば、Hamed SA (2006) drugs Nov; 9(11): 783-9を参照)(PTC124は、現在、デュシェンヌ型MDおよび嚢胞性線維症を有する患者のための第II相臨床試験にある)。
〔実験例〕
特定の好ましい実施形態および本発明の側面を実証しさらに説明するために、以下の実施例が提供される。以下の実施例は、その範囲を限定すると解釈されない。
動物
特定病原体除去の(Specific-pathogen-free)2〜3月齢のオスのmdxマウス(C57BL/10ScSn-mdx stock #001801)および2〜5月齢の野生型(WT)C57BL/10マウスを、Jackson Laboratory(Bar Harbor, ME)から取得した。マウスを、特定病原体除去のバリア施設において飼育した。全ての実験的な手段を、実験動物の管理および使用のための指針(guide for the Care and Use of Laboratory Animals)[DHHS Publication No. 85-23 (NIH), Revised 1985, Office of Science and Health Reports, Bethesda, MD 20892]に一致させた。
手術方法
マウスを、アバーティン(トリブロモエタノール 400mg/kg)の腹腔内注射を用いて麻酔した。接触刺激に対してマウスが反応しない状態を維持することが求められているので、アバーティンの追加投与量を投与した。マウスの前足を切断し、LMB筋を、第2指を含まないように解剖した。非常に小さいサイズであり、外部から適用した化合物に対して、全ての線維が確実に到達可能であるため、LMB筋を選択した。体の寸法に基づいて、LNB筋肉が、およそ0.7mgであると推測した。137mM NaCl、11.9mM NaHCO、5.0mM KCl、1.8mM CaCl、0.5mM MgCl、0.4mM NaHPOにおける組成物である、冷却した浸漬液中で解剖を行った。分離したLMB筋を、10−0単一繊維のナイロン製縫合糸からなるひもによって、遠位の腱を力変換器 (Aurora Scientific, Inc., modified Model 400A)に取り付け、近位の腱をサーボモーター(Aurora Scientific, Inc., Model 318B)に取り付けた状態で、オーダーメイドで作られた容器の中に、水平に置いた。浴温を、25℃に維持し、95%/5% O/CO混合を用いて泡立てることによってpH7.3に維持したタイロード溶液(121mM NaCl、24mM NaHCO、5.0mM KCl、1.8mM CaCl、0.5mM MgCl、0.4mM NaHPOにおける組成物)を用いて、連続して容器をかん流した。
損傷を誘発するためのプロトコル
筋肉を、2つの白金電極の間を通過する電流によって電気的に刺激した。定電流の刺激パルスは、持続時間が0.5msであり、その大きさを、最大の単収縮反応を引き起こすように調整した。最大の単収縮力が達成されるまで長さを調整することによって、筋肉の最適な長さ(L)決定した。最大の等尺性テタニー性収縮を達成するために、筋肉を、1秒あたり220パルスの周波数における一連のパルスを用いて、交互パルス極性で刺激した。力不足を誘発するために用いたプロトコルは、20回の等尺性収縮からなり、それぞれの持続する1秒間が、1分間で隔てられている。疲労を最小限にし、20回の収縮の最中や20回の収縮の後に筋肉の機能を生み出す力におけるあらゆる減少が、収縮誘発性の損傷に起因することを裏付けるために、収縮と収縮との間の1分間の休息期間が必要であった。質量が異なる筋肉のグループ間の比較を助けるために、20回の収縮プロトコルの間に筋肉によって生成された最大の等尺性力(P)に対して、それぞれの収縮の間の筋肉の絶対的な等尺性力を規格化した。
治療群
WTマウスからのLMB筋を、WT筋と称し、2つの群に分けた。一方の群を、標準タイロード溶液に対して曝露し、他方の群を、カルシウムを含まないタイロード溶液に対して曝露した。mdxマウスからの筋肉を、mdx筋と称し、(1)P188、(2)ストレプトマイシン、(3)P188およびストレプトマイシン、(4)カルシウムを含まないタイロード、または(5)標準タイロードを用いた治療に従って、5つの群に分けた。タイロード溶液におけるP188(Bayer, NJ)およびストレプトマイシン(Sigma, #S1277)の濃度は、それぞれ、1mMおよび200μMであった。全ての治療のために、収縮プロトコルの開始に先立って、筋肉を、容器内で15分間にわたってインキュベートすることができた。P188(1mM)またはストレプトマイシン(200μM)に対して曝露されたWT筋において実施した試験的な実験は、これらの化合物が、上記濃度で用いたときに、筋肉に対して毒性がないことを示した。カルシウムを含まない実験のために、CaClを、タイロード溶液から除き、2価イオンの濃度を維持するために、MgClを、2.3mMまで増やした。
カルシウムを含まない実験から起こる力不足は、例えば、2つの可能性のある起源を有している:それは、非生理学的な環境に対して筋肉を長期に渡って曝露することによって引き起こされた“環境的な”力不足と同様に、収縮誘発性の力不足でもある。収縮誘発性の力不足から環境的な力不足を分けるために、カルシウムを含まない環境が、WT筋およびmdx筋の両方に対して、等しく有害な作用を有すると仮定し、その結果として、カルシウムを含まない環境におけるmdx筋の力反応を、同じカルシウムを含まない環境におけるWT筋の力反応に対して規格化した。収縮プロトコルの終わりに、Pのパーセンテージとして表されるmdx筋の等尺性のテタニー性の力を、Pのパーセンテージとしても表されるWT筋の等尺性のテタニー性の力によって除した。この規格化手順によって、収縮誘発性の力不足を分離し、カルシウムを含まない環境におけるmdx筋と標準環境におけるmdx筋とを比較することが可能となった。
統計
データは、平均値±SEとして表した。統計分析は、スチューデント t−検定、または演繹的(a priori)にP<0.05に設定した有意性のレベルでの一元配置分散分析(one way analysis of variance)(ANOVA)を用いて実施した。ANOVAを用い、有意性を検出したときに、対差異(pairwise difference)を評価するために、スチューデント−ニューマン−クールズのポストホック比較(Student-Newman-Keuls post hoc comparison)を用いた。
実施例II
この実施例は、全mdx骨格筋における収縮誘発性の力不足の軽減におけるP188の有効性と、伸展活性化チャネル阻害剤であるストレプトマイシンを用いたmdx筋の治療が、P188の機構とは異なる機構を介するようであるが、収縮誘発性の力不足の軽減において同等に有効であることを実証する。
筋肉の副標本の組織像に基づくと、LMB筋は、直径がおよそ300μmであり、200〜250の線維から構成されていた(図2A、Bを参照)。mdx筋からの断面は、典型的なジストロフィーの特徴を示し(例えば、Brooks, SV (1998) J Muscle Res Cell Mot 19, 179-187を参照)、単核細胞浸潤の領域を含み、中央に角を有する細胞が存在していた(図2Cを参照)。未治療のWT筋のP(14.8±0.9mN、n=6)は、未治療のmdx筋のP(10.8±0.4mM、n=8)よりも大きかった(P<0.05)。等尺性収縮プロトコルの終わりに、WT筋は、力不足を示さなかった。これに対して、未治療のmdx筋によって生成された力は、20回の等尺性収縮プロトコルの終わりまでに、Pの69%まで減少した(図3を参照)。この値は、10分間の回復期間の後に変化せず、このことから、疲労が要因ではないことが示された。等尺性収縮プロトコルの後で、mdx筋の組織像によって、繊維の長さに沿って不可逆に過剰収縮した領域の結果として、拡大し、暗く染色された線維の存在が明らかになった(図2Eを参照)。筋肉の所定の横断面において、筋繊維の過剰収縮によって、細胞物質が欠失している散発性の領域がもたらされる(図2Dを参照)。所定の横断面における線維の損傷の程度は、例えば、全筋肉における線維の損傷を低く見積もる可能性がある;横断面において正常に見える繊維は、その軸に沿った他の領域において損傷を受けているかもしれない。
ストレプトマイシン、もしくはP188のみ、またはストレプトマイシンおよびP188の両方を同時に用いたmdx筋の治療は、絶対的なPに影響を与えなかった。絶対的なPは、治療によって影響を受けなかったが、治療された筋肉は、プロトコル後の力不足の大きさにおける低下を示した。未治療のmdx筋と比較して、ストレプトマイシンまたはP188を用いて治療されたmdx筋は、収縮プロトコルの終わりに、力を生成する能力の増加を示し、それぞれ、Pの69%〜84%およびPの69%〜85%までの増加を伴っていた(図4を参照)。mdx筋を、ストレプトマイシンおよびP188を同時に用いて処理したときに、プロトコル後の規格化されたPは、P188単独またはストレプトマイシン単独のどちらかを用いた治療と相違なかった(P>0.05)(図4を参照)。
カルシウムを含まないタイロード溶液において、WT筋およびmdx筋の両方の絶対的なPは、それぞれ、10.8±0.5mN(n=3)および7.2±1.3mN(n=4)に対して、およそ30%まで減少した。WT筋およびmdx筋の両方の絶対的なPにおける減少は、非生理学的なカルシウムを含まない細胞外環境に原因があるようだった。カルシウムを含まない環境におけるWT筋に対して規格化したときに、カルシウムを含まない環境におけるmdx筋は、Pの92%の力を生成した。この値は、ストレプトマイシンおよび/またはP188を用いて治療された筋肉と相違なかった(P<0.05)(図4を参照)。
別々にまたは同時にP188およびストレプトマイシンを用いてmdx筋を治療することによって、未治療のmdx筋と比較して、力不足が軽減することが観察された。カルシウムを含まない環境において等尺性収縮プロトコルが実行されたときに、mdx筋は、再び、力不足の軽減を示した。この結果は、同様の収縮プロトコルの間にわたるmdxマウスのLMB筋に対するカルシウムの流入が直接観察されることに加えて、例えば、細胞外のカルシウムの流入が、微小膜の裂傷およびSACを介して起こり、mdx筋におけるプロトコル後の力不足において重要な役割を担っていることを示唆している。例えば、mdx筋繊維への細胞外のカルシウムの流入が、過剰収縮の塊と線維の破壊とを結果的にもたらす、持続した局所的な活性を引き起こしたときに、この力不足は発生するようである。
本明細書において述べられた全ての刊行物および特許は、本明細書において参考文献として組み込まれる。本発明の記載された方法の種々の改変や変形は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で当業者にとって明らかである。本発明は、特に好ましい実施形態との関係において記載されるが、請求の範囲に記載されている発明は、そのような特定の実施形態に不当に限定されるべきではない。実際、本発明を実行するために記載された様式の種々の改変は、関連分野における当業者にとって明らかであり、発明の範囲内であることが意図される。
図1は、(A)ポロキサマーの骨格構造、および(B)本発明の組成物および方法において有用な、市販のポロキサマーの例を示す。 図2は、本発明のための実施形態の開発の間にわたって実施された実験の内、マウスの前足の第2指からの虫様筋を示す。(A)筋肉は、30Gの皮下注射針のそばに示される。(B)ヘマトキシリンおよびエオシンは、等尺性収縮プロトコル前のWT虫様筋の切断面を染色した。筋肉は、通常、200〜250の線維からなり、直径がおよそ300μmである。(C)等尺性収縮プロトコル前のmdx筋。ジストロフィーの特徴は、中心核の存在および単核球の浸潤を含んでいる。(D)等尺性収縮プロトコルの10分後のmdx筋の遠位末端。全ての160の筋繊維の内、およそ10%は、暗くて肥大化している(矢印)か、細胞物質を欠いている(アスタリスク)ように見える。これらの異常は、過剰収縮した筋繊維を示している。(E)mdx虫様筋は、等尺性収縮プロトコル後に、その長手方向軸に沿って、in-vitroで可視化される。筋肉は、エバンスブルーダイを用いてインキュベートされ、筋繊維において、過剰収縮した領域のすぐ隣に接する空隙領域の存在を示す。 図3は、本発明のための実施形態の開発の間にわたって実施された実験の中で、WT虫様筋およびmdx虫様筋の力の生成を示す。(A)等尺性力の生成の記録例:(i)は、WTマウスからの虫様筋を示し、(ii)は、mdxマウスからの虫様筋を示す。明確にするために、最初の等尺性収縮(1)および最後の等尺性収縮(20)の記録のみが示される。(B)20回の等尺性収縮のプロトコルの間にわたる、WT虫様筋(黒色のバー、n=6)およびmdx虫様筋(白色のバー、n=8)の力の生成。データは、平均値±SEとして示される。片側スチューデントt−検定は、第20回目の収縮においてのみ行われた。アスタリスクは、WTグループとの差異を示している(P<0.05)。 図4は、本発明のための実施形態の開発の間にわたって実施された実験の中で、20回の等尺性収縮の終わりにおけるmdx虫様筋の力の生成を示す。データは、平均値±SEとして示される。1つの方法であるANOVAが行われた後に、グループ間のスチューデント−ニューマン−クールズの対比較が続いて行われた。アスタリスクは、治療されていないmdxグループとの違いを示している(P<0.05)。

Claims (18)

  1. 運動によって誘発された微細な裂傷を有している骨格筋の損傷または骨格筋の欠損を予防するまたは軽減するために被験体を治療するための、ポロキサマーを含有している組成物であり、
    当該欠損は、ジストロフィン欠損または収縮力不足であることを特徴とする組成物。
  2. 上記骨格筋の欠損は、骨格筋の収縮力不足である、請求項1に記載の組成物。
  3. 上記ポロキサマーは、精製されたポロキサマーまたは分画されたポロキサマーである、請求項1に記載の組成物。
  4. 上記被験体は、ヒト被験体である、請求項1に記載の組成物。
  5. 上記組成物は、静脈内投与用に処方されている、請求項1に記載の組成物。
  6. 上記被験体は、ジストロフィン欠損被験体である、請求項1に記載の組成物。
  7. 上記被験体は、デュシェンヌ型筋ジストロフィーを有する、請求項6に記載の組成物。
  8. 上記ポロキサマーはP188である、請求項1に記載の組成物。
  9. 上記ポロキサマーは、上記被験体の体重1kgあたり、420〜500mgの間の投与量レベルにおいて投与されるように処方されている、請求項1に記載の組成物。
  10. 上記投与量レベルは、上記被験体の体重1kgあたり、460mgである、請求項9に記載の組成物。
  11. ポロキサマーを含有している上記組成物は、ストレプトマイシン、プレドニゾン、デフラザコート、アザチオプリン、シクロスポリン、バルプロ酸、フェニル酪酸、酪酸ナトリウム、M344、スベロイルアニリドヒドロキサム酸、およびPCT124からなる群から選択される1以上の薬剤と同時投与される、請求項1に記載の組成物。
  12. 上記骨格筋は、腓腹筋、後脛骨筋、ヒラメ筋、長筋、短筋、大殿筋、大腿二頭筋、半腱様筋、半膜様筋、腸腰筋、大腿四頭筋、臀部の内転筋、肩甲骨挙筋、僧帽筋、腹直筋、腹横筋、腹部外腹斜筋、腹部内腹斜筋、脊柱起立筋、大胸筋、上腕二頭筋、上腕三頭筋、上腕筋、円回内筋、腕橈骨筋、菱形筋、三角筋、広背筋、回旋筋、および虫様筋からなる群から選択される少なくとも1種の骨格筋を含んでいる、請求項1に記載の組成物。
  13. 骨格筋の収縮力不足の治療のために有用な第2の薬剤を含有し
    上記骨格筋の収縮力不足の治療のために有用な上記薬剤は、ストレプトマイシン、プレドニゾン、デフラザコート、アザチオプリン、シクロスポリン、バルプロ酸、フェニル酪酸、酪酸ナトリウム、M344、スベロイルアニリドヒドロキサム酸、およびPCT124からなる群から選択される、またはこれらの薬剤の組合せである、請求項2に記載の組成物。
  14. 上記ポロキサマーは、P188である、請求項13に記載の組成物。
  15. 上記ポロキサマーは、P138、P237、P288、P124、P338、およびP407からなる群から選択される、請求項13に記載の組成物。
  16. 上記骨格筋は、虫様筋を含んでいる、請求項13に記載の組成物。
  17. 上記骨格筋は、腓腹筋、後脛骨筋、ヒラメ筋、長筋、短筋、大殿筋、大腿二頭筋、半腱様筋、半膜様筋、腸腰筋、大腿四頭筋、臀部の内転筋、肩甲骨挙筋、僧帽筋、腹直筋、腹横筋、腹部外腹斜筋、腹部内腹斜筋、脊柱起立筋、大胸筋、上腕二頭筋、上腕三頭筋、上腕筋、円回内筋、腕橈骨筋、菱形筋、三角筋、広背筋、および回旋筋からなる群から選択される少なくとも1種の骨格筋を含んでいる、請求項13に記載の組成物。
  18. 上記ポロキサマーは、P138、P237、P288、P124、P338、およびP407からなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
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