JP5559450B2 - コンベヤベルト - Google Patents

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本発明は、コンベヤベルトに関し、さらに詳しくは、繰り返し屈曲による帆布層の縦糸の座屈を防止して耐座屈性を向上したコンベヤベルトに関するものである。
コンベヤベルトは、一般的にゴム層の間に平織構造の帆布層やスチールコード層からなる芯材を挟んで構成されている。芯材は、コンベヤベルトに対する要求性能により複数の帆布層を積層して構成することがある。このような複数の帆布層が積層されたコンベヤベルトでは、稼動中にプーリまわりを通過して屈曲する際に、内周側に積層された帆布層が中立面よりも内周側になる。そのため、内周側の帆布層には屈曲する度に繰り返し圧縮応力が発生し、この帆布層を構成する縦糸が圧縮応力により座屈して破断に至ることがある。縦糸が座屈したままコンベヤベルトを稼動し続けると帆布層の大きな損傷に発展してコンベヤベルトが稼動できなくなるという問題が発生する。
この対策のため、複数の帆布層を積層した芯材を有するコンベヤベルトでは、帆布層をシームレスの織布により構成して特殊な補強層を積層するなど、帆布層の材質や構成が種々提案されている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、従来の提案では縦糸の座屈を十分に防ぐことができず、コンベヤベルトの耐座屈性の更なる向上が求められていた。
特開平8−81029号公報
本発明の目的は、繰り返し屈曲による帆布層の縦糸の座屈を防止して耐座屈性を向上したコンベヤベルトを提供することにある。
上記目的を達成するため本発明のコンベヤベルトは、上下のゴム層の間に、コンベヤベルトの長手方向に延設された縦糸とコンベヤベルトの幅方向に延設された横糸とが1本ごとに浮き沈みして交錯する平織構造の帆布層を複数積層して埋設し、これら帆布層を芯材としたコンベヤベルトであって、前記複数の帆布層のうち、少なくともコンベヤベルトの最も内周側に積層される帆布層について、縦糸の材質がポリエステル、横糸の材質がナイロンであるとともに、コンベヤベルトの成型、加硫後の該帆布層のゲージ厚Hと、縦糸のゲージ厚hと、横糸の配列ピッチPとで下記(1)式により算出される縦糸クリンプ率Cを2.9%以上、かつ該帆布層の縦糸のカバーファクタK1と横糸のカバーファクタK2の合計値Kを4200以上5500以下としたことを特徴とするものである。
C=(((H−h)2+P21/2/P−1)×100(%) ・・・(1)
ここで、K1=d1×(A1/b1) 1/2 、K2=d2×(A2/b2) 1/2 であり、d1、d2はそれぞれ縦糸、横糸の糸密度(本/50mm)、A1、A2はそれぞれ縦糸、横糸の繊度(dtex)、b1、b2はそれぞれ縦糸、横糸の糸比重(g/cm 3 )である。
本発明のコンベヤベルトによれば、コンベヤベルトが稼動してプーリ等のまわりを通過する度に繰り返し屈曲する際に中立面の内周側となって最も大きな圧縮応力が生じる最内周側に積層される帆布層について、コンベヤベルトの成型、加硫後の上記(1)式により算出した縦糸クリンプ率Cを2.9%以上にすることにより、横糸の配列ピッチP間における縦糸の織構造の湾曲具合を大きくしている。これにより、屈曲による縦糸に生じる圧縮応力を分散させて座屈の発生を防止することができる。
更に、最内周側に積層される帆布層の縦糸と横糸のカバーファクタの合計値Kを4200以上5500以下として、縦糸と横糸の目の詰まり具合を設定している。これにより、コンベヤベルトの製造時の加熱による帆布層の収縮を抑制して、縦糸の大きな湾曲具合を維持することができるので、コンベヤベルトの耐座屈性を向上することが可能になる。
以下、本発明のコンベヤベルトを図に示した実施形態に基づいて説明する。
図1に例示するように、本発明のコンベヤベルト1は、ゴム層2、2の間に介挿した芯材3が、4層の帆布層3a、3b、3c、3d(以下帆布層3a〜3dとする)を積層して構成されている。これら帆布層3a〜3dは平織構造で、すべて同仕様になっている。帆布層3a〜3dの積層数はコンベヤベルト1に対する要求性能(剛性、伸び等)により決定され、4層に限定されず2層以上であればよい。
このコンベヤベルト1は、駆動プーリと遊動プーリとの間に張架され、駆動プーリが回転駆動して稼動することにより、図2に例示するようにプーリ6まわりを通過する度に繰り返し屈曲される。プーリ6まわりを回転移動するコンベヤベルト1には、二点鎖線で示す中立面Nを境にして中立面Nの外周側の範囲には引張応力が発生し、内周側の範囲には圧縮応力が発生する。
中立面Nの位置は、コンベヤベルト1の厚さ、帆布層3a〜3dの数や位置等により変化するが、図2では内周側に積層された2層の帆布層3a、3bが中立面よりも内周側に位置することになって繰り返し圧縮応力が発生し、外周側に積層された2層の帆布層3c、3dには引張応力が繰り返し発生する。帆布層3a〜3dを構成する縦糸4や横糸5は引張応力に対してはある程度剛性を有しているが、圧縮応力に対しては剛性が極めて低い。
平織構造の帆布層3aは、図3に例示するように縦糸4と横糸5とが1本ごとに浮き沈みして交錯する織構造になっており、横糸5の配列ピッチP間で縦糸4が上下に湾曲し、横糸5も縦糸4の配列ピッチ間で上下に湾曲している。尚、4層の帆布層3a〜3dはすべて同仕様なので、図3では代表して帆布層3aを図示している。
縦糸4は、コンベヤベルト1の長手方向に延設され、横糸5はコンベヤベルト1の幅方向に延設されているため、コンベヤベルト1がプーリ6まわりで屈曲しても横糸5には圧縮応力がほとんど発生しないが、縦糸4には大きな圧縮応力が発生する。
そのため、コンベヤベルト1が稼動してプーリ6等のまわりを通過する度に繰り返し屈曲して圧縮応力が発生する帆布層3a、3bについては、屈曲により縦糸4が座屈しないようにして、帆布層3a、3bの大きな損傷に発展する縦糸4の破断を防止する必要がある。特に、最も大きな圧縮応力が発生する最内周側に積層された帆布層3aについて、縦糸4の座屈を防止する必要がある。
縦糸4の織構造の湾曲具合は、屈曲による座屈の発生に大きく影響し、湾曲具合が小さくて横糸5と直線的に交錯していると、容易に変形することができず、ある点に圧縮応力が集中して折れ曲がって座屈が発生する。一方、縦糸4が上下に大きく湾曲している織構造であれば、広範囲にわたり容易に変形することができるので圧縮応力が分散して座屈する危険性が小さくなる。
そこで、本発明では、図3に示すように、コンベヤベルト1の成型、加硫後の帆布層3a〜3dの横糸5の配列ピッチPと、横糸5の配列ピッチP間における縦糸4の長さLとの比に基づいて、縦糸4の織構造の湾曲具合を規定している。即ち、L/P値が大きい程、縦糸4が大きく湾曲していて座屈しにくい構造といえる。
横糸5の配列ピッチP間における縦糸4の長さLは、厳密には図3に二点鎖線で示したような直線ではなく、縦糸4の湾曲形状に沿った曲線となるが、図示した二点鎖線の直線として近似することにより、容易に縦糸4の長さLを算出することができる。例えば、図3に示したように、横糸5の配列ピッチPと帆布層3a〜3dのゲージ厚Hと縦糸4のゲージ厚hとを用いて直角三角形の斜辺の長さを求めるようして式L=((H−h)+P1/2により長さLを算出することができる。
例えば、この長さLの算出式を用いた下記の(1)式により算出する縦糸クリンプ率Cを、縦糸4の織構造の湾曲具合を示す指標として用いることができる。
C=(((H−h)+P1/2/P−1)×100(%) ・・・(1)
この縦糸クリンプ率Cにより帆布層3a、3bの座屈し易さ、即ち、コンベヤベルト1の耐座屈性を評価することができ、縦糸クリンプ率Cの値が大きい程、繰り返し圧縮応力が生じる帆布層3a、3bの縦糸4が座屈しにくくなる。コンベヤベルト1が十分な耐座屈性を有するためには、縦糸クリンプ率Cが2.9%以上であることが好ましい。縦糸クリンプ率Cが2.9%未満であると、縦糸4の織構造の湾曲具合が小さく直線的となり、座屈し易くなって十分な耐座屈性を得ることができない。
尚、縦糸ゲージ厚hは実測する他に、例えば、式h=(縦糸総繊度a1(dtex)÷10000÷縦糸比重b1(g/cm)÷π)1/2×2×αにより算出することができる。ここで、α値は縦糸4の扁平係数であり経験値として約0.74程度となる。また、横糸5の配列ピッチPは実測する他に、例えば、式P=50÷横糸密度(本/50mm)により算出することができる。
帆布層3a〜3dの縦糸4および横糸5はポリエステル、アラミド、ビニロン、ナイロンなど種々の材質を使用することができるが、縦糸4には伸びが大きく座屈しにくい材質、例えばナイロンを用いることが特に好ましい。縦糸4の材質を剛性の高いポリエステル等にする場合は、座屈し易くなるので、縦糸クリンプ率Cを2.9%以上にすることで耐座屈性の大幅な向上が期待できる。尚、屈曲時に圧縮応力が生じる帆布層3a、3bのみ或いは帆布層3aのみについて、縦糸4の材質をナイロンにするようにしてもよい。
コンベヤベルト1の製造では、帆布層3a〜3dにRFL接着剤を塗布して、それを乾燥・熱延伸する工程があり、その際に帆布層3a〜3dの幅が多少収縮する。この収縮率は、帆布層3a〜3dの縦糸4と横糸5の目の詰まり具合に大きく影響を受け、縦糸4の湾曲具合に変化をもたらす。そこで、本発明では、この目の詰まり具合を示す縦糸4と横糸5のカバーファクタの合計値Kについても適切な範囲を規定している。
縦糸4、横糸5のそれぞれのカバーファクタK1、K2は、下記(2)、(3)式により算出される。
K1=d1×(A1/b1)1/2・・・(2)
K2=d2×(A2/b2)1/2・・・(3)
ここで、d1、d2はそれぞれ縦糸4、横糸5の糸密度(本/50mm)、A1、A2はそれぞれ縦糸4、横糸5の繊度(dtex)、b1、b2はそれぞれ縦糸4、横糸5の糸比重(g/cm)である。
このカバーファクタの合計値K(K1+K2)は、4200以上5500以下とすることが好ましい。この合計値Kが4200未満であると、コンベヤベルト1の製造工程での加熱により横糸5の収縮が大きくなり、この影響で縦糸4の湾曲具合が小さくなって座屈を防止するための十分な湾曲具合を確保することが困難になる。一方、カバーファクタの合計値Kが5500超であると帆布層3a〜3dの柔軟性が低下するとともに、製造が困難になる。
実施形態では、すべての帆布層3a〜3dを同一仕様にしているが、コンベヤベルト1の稼動による屈曲により圧縮応力が生じる帆布層3a、3bについてのみ、或いは最内周側に積層される帆布層3aについてのみ、上述した縦糸クリンプ率Cを2.9%以上とし、かつ縦糸4と横糸5のカバーファクタの合計値Kを4200以上5500以下に設定するようにしてもよい。
図1に例示したように、上ゴム層3mm、下ゴム層2mmの間に所定の厚みのゴムをコートした平織構造の同仕様の帆布層を4層積層した芯材を介挿した厚さ約9mmの所定長さの試験サンプルを作製し、帆布層の縦糸の材質をポリエステル、横糸の材質をナイロンとして共通にして、上記した(1)式により算出される縦糸クリンプ率Cおよび縦糸と横糸のカバーファクタの合計値Kのみを変化させた6種類の試験サンプル(実施例1、2、比較例1〜4)を用いて耐座屈性を評価した。
耐座屈性の評価は、各試験サンプルを直径200mmのプーリに180°巻き付けた際の最も内周側に積層した帆布層の状態を確認したもので、その結果を表1に示す。表1では、最内周側の帆布層がプーリの周面に沿って追従した場合を○、追従せずに波打って縦糸が座屈し易い状態になった場合を×として耐座屈性を示している。
Figure 0005559450
表1の結果より、本発明で指標とした縦糸クリンプ率Cの範囲(2.9%以上)およびカバーファクタの合計値Kの範囲(4200以上5500以下)を満たす帆布層を用いることにより、最も内周側に積層された帆布層においても、波打つことなく剛性の高いポリエステル製の縦糸の座屈を防止できることが確認できた。
本発明のコンベヤベルトの内部構造を例示する断面図である。 図1のコンベヤベルトの屈曲状態を示す説明図である。 図1の最内周側に積層された帆布層の拡大断面図である。
符号の説明
1 コンベヤベルト
2 ゴム層
3 芯材 3a〜3d 帆布層
4 縦糸
5 横糸
6 プーリ

Claims (1)

  1. 上下のゴム層の間に、コンベヤベルトの長手方向に延設された縦糸とコンベヤベルトの幅方向に延設された横糸とが1本ごとに浮き沈みして交錯する平織構造の帆布層を複数積層して埋設し、これら帆布層を芯材としたコンベヤベルトであって、前記複数の帆布層のうち、少なくともコンベヤベルトの最も内周側に積層される帆布層について、縦糸の材質がポリエステル、横糸の材質がナイロンであるとともに、コンベヤベルトの成型、加硫後の該帆布層のゲージ厚Hと、縦糸のゲージ厚hと、横糸の配列ピッチPとで下記(1)式により算出される縦糸クリンプ率Cを2.9%以上、かつ該帆布層の縦糸のカバーファクタK1と横糸のカバーファクタK2の合計値Kを4200以上5500以下としたコンベヤベルト。
    C=(((H−h)2+P21/2/P−1)×100(%) ・・・(1)
    ここで、K1=d1×(A1/b1) 1/2 、K2=d2×(A2/b2) 1/2 であり、d1、d2はそれぞれ縦糸、横糸の糸密度(本/50mm)、A1、A2はそれぞれ縦糸、横糸の繊度(dtex)、b1、b2はそれぞれ縦糸、横糸の糸比重(g/cm 3 )である。
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