本実施の形態における電気式脱イオン水製造装置について、図13を参照にして説明する。図13は電気式脱イオン水製造装置の1例を示す模式図である。図13に示すように、カチオン交換膜3、中間イオン交換膜5及びアニオン交換膜4を離間して交互に配置し、カチオン交換膜3と中間イオン交換膜5で形成される空間内にイオン交換体8を充填して第1小脱塩室d1、d3、d5、d7を形成し、中間イオン交換膜5とアニオン交換膜4で形成される空間内にイオン交換体8を充填して第2小脱塩室d2、d4、d6、d8を形成し、第1小脱塩室d1と第2小脱塩室d2で脱塩室D1、第1小脱塩室d3と第2小脱塩室d4で脱塩室D2、第1小脱塩室d5 と第2小脱塩室d6で脱塩室D3、第1小脱塩室d7 第2小脱塩室d8で脱塩室D4とする。また、脱塩室D2、D3のそれぞれ隣に位置するアニオン交換膜4とカチオン交換膜3で形成されるイオン交換体8aを充填した部分は濃縮水を流すための濃縮室1とする。これを順次併設して図中、左より脱塩室D1、濃縮室1、脱塩室D2、濃縮室1、脱塩室D3、濃縮室1、脱塩室D4を形成する。また、脱塩室D1の左にカチオン交換膜3を経て陰極室2aを、脱塩室D4の右にアニオン交換膜4を経て陽極室2bをそれぞれ設ける。また、中間イオン交換膜5を介して隣り合う2つの小脱塩室において、第2小脱塩室の処理水流出ライン12は第1小脱塩室の被処理水流入ライン13に連接されている。
このような脱塩室は、図14に示すように、2つの枠体21、22と3つのイオン交換膜3、5、4によって形成される脱イオンモジュール20からなる。即ち、第1枠体21の一側の面にカチオン交換膜3を封着し、第1枠体21の内部空間にイオン交換体を充填し、次いで、第1枠体21の他方の面に中間イオン交換膜5を封着して第1小脱塩室を形成する。次に中間イオン交換膜5を挟み込むように第2枠体22を封着し、第2枠体22の内部空間にイオン交換体を充填し、次いで、第2枠体22の他方の面にアニオン交換膜4を封着して第2小脱塩室を形成する。第1脱塩室および第2小脱塩室に充填されるイオン交換体としては、特に制限されないが、被処理水が最初に流入する第2小脱塩室にはアニオン交換体を充填し、次いで、第2小脱塩室の流出水が流入する第1小脱塩室にはアニオン交換体とカチオン交換体の混合イオン交換体を充填することが、アニオン成分を多く含む被処理水、特に、シリカ、炭酸等の弱酸成分を多く含む被処理水を充分に処理することが出来る点で好ましい。符号23は枠体補強用のリブである。
本発明において、EDIの濃縮室1には、第1のモノリスイオン交換体又は第2のモノリスイオン交換体が充填される。本明細書中、「モノリス状有機多孔質体」を単に「モノリス」と、「モノリス状有機多孔質イオン交換体」を単に「モノリスイオン交換体」と、「モノリス状の有機多孔質中間体」を単に「モノリス中間体」とも言う。
<第1のモノリスイオン交換体の説明>
第1のモノリスイオン交換体は、モノリスにイオン交換基を導入することで得られるものであり、気泡状のマクロポア同士が重なり合い、この重なる部分が平均直径水潤状態で30〜300μm、好ましくは30〜200μm、特に35〜150μmの開口(メソポア)となる連続マクロポア構造体である。モノリスイオン交換体の開口の平均直径は、モノリスにイオン交換基を導入する際、モノリス全体が膨潤するため、モノリスの開口の平均直径よりも大となる。開口の平均直径が30μm未満であると、通水時の圧力損失が大きくなってしまうため好ましくなく、開口の平均直径が大き過ぎると、流体とモノリスイオン交換体との接触が不十分となり、その結果イオン交換特性が低下してしまうため好ましくない。なお、本発明では、乾燥状態のモノリス中間体の開口の平均直径、乾燥状態のモノリスの開口の平均直径及び乾燥状態のモノリスイオン交換体の開口の平均直径は、水銀圧入法により測定される値である。また、水潤状態のモノリスイオン交換体の開口の平均直径は、乾燥状態のモノリスイオン交換体の開口の平均直径に、膨潤率を乗じて算出される値である。具体的には、水潤状態のモノリスイオン交換体の直径がx1(mm)であり、その水潤状態のモノリスイオン交換体を乾燥させ、得られる乾燥状態のモノリスイオン交換体の直径がy1(mm)であり、この乾燥状態のモノリスイオン交換体を水銀圧入法により測定したときの開口の平均直径がz1(μm)であったとすると、水潤状態のモノリスイオン交換体の開口の平均直径(μm)は、次式「水潤状態のモノリスイオン交換体の開口の平均直径(μm)=z1×(x1/y1)」で算出される。また、イオン交換基導入前の乾燥状態のモノリスの開口の平均直径、及びその乾燥状態のモノリスにイオン交換基導入したときの乾燥状態のモノリスに対する水潤状態のモノリスイオン交換体の膨潤率がわかる場合は、乾燥状態のモノリスの開口の平均直径に、膨潤率を乗じて、モノリスイオン交換体の空孔の水潤状態の平均直径を算出することもできる。
第1のモノリスイオン交換体において、連続マクロポア構造体の切断面のSEM画像において、断面に表れる骨格部面積が、画像領域中、25〜50%、好ましくは25〜45%である。断面に表れる骨格部面積が、画像領域中、25%未満であると、細い骨格となり、体積当りのイオン交換容量が低下し、導電性が低下してしまうため好ましくなく、50%を超えると、骨格が太くなり過ぎ、イオン交換特性の均一性が失われるため好ましくない。なお、特開2002−346392公報記載のモノリスは、実際には水に対する油相部の配合比を多くして骨格部分を太くしても、共通の開口を確保するためには配合比に限界があり、断面に表れる骨格部面積の最大値は画像領域中、25%を超えることはできない。
SEM画像を得るための条件は、切断面の断面に表れる骨格部が鮮明に表れる条件であればよく、例えば倍率100〜600、写真領域が約150mm×100mmである。SEM観察は、主観を排除したモノリスの任意の切断面の任意の箇所で撮影された切断箇所や撮影箇所が異なる3枚以上、好ましくは5枚以上の画像で行なうのがよい。切断されるモノリスは、電子顕微鏡に供するため、乾燥状態のものである。SEM画像における切断面の骨格部を図1及び図5を参照して説明する。また、図5は、図1のSEM写真の断面として表れる骨格部を転写したものである。図1及び図5中、概ね不定形状で且つ断面で表れるものは本発明の「断面に表れる骨格部(符号12a)」であり、図1に表れる円形の孔は開口(メソポア)であり、また、比較的大きな曲率や曲面のものはマクロポア(図5中の符号13a)である。図5の断面に表れる骨格部面積は、矩形状の写真領域11a中、28%である。このように、骨格部は明確に判断できる。
SEM写真において、切断面の断面に表れる骨格部の面積の測定方法としては、特に制限されず、当該骨格部を公知のコンピューター処理などを行い特定した後、コンピューターなどによる自動計算又は手動計算による算出方法が挙げられる。手動計算としては、不定形状物を、四角形、三角形、円形又は台形などの集合物に置き換え、それらを積層して面積を求める方法が挙げられる。
また、第1のモノリスイオン交換体は、0.5〜5ml/g、好適には0.8〜4ml/gの全細孔容積を有するものである。全細孔容積が0.5ml/g未満であると、通水時の圧力損失が大きくなってしまうため好ましくない。一方、全細孔容積が5ml/gを超えると、体積当たりのイオン交換容量が低下してしまうため好ましくない。本発明のモノリスは、開口の平均直径及び全細孔容積が上記範囲にあり、且つ骨太の骨格であるため、これをEDIの濃縮室に充填した場合、強度が高く、通水差圧が小さく、導電性が向上する。なお、本発明では、モノリス(モノリス中間体、モノリス、モノリスイオン交換体)の全細孔容積は、水銀圧入法により測定される値である。また、モノリス(モノリス中間体、モノリス、モノリスイオン交換体)の全細孔容積は、乾燥状態でも、水潤状態でも、同じである。
なお、第1のモノリスイオン交換体に水を透過させた際の圧力損失は、多孔質体を1m充填したカラムに通水線速度(LV)1m/hで通水した際の圧力損失(以下、「差圧係数」と言う。)で示すと、0.001〜0.1MPa/m・LVの範囲、特に0.001〜0.05MPa/m・LVであることが好ましい。差圧係数および全細孔容積がこの範囲にあれば、これを電気式脱イオン水製造装置の濃縮室に用いた場合、通水時の圧力損失を抑制し、導電性を高める上に、十分な機械的強度を有しているため好ましい。
第1のモノリスイオン交換体は、水湿潤状態での体積当りのイオン交換容量が0.4〜5mg当量/mlのイオン交換容量を有する。特開2002−306976号に記載されているような本発明とは異なる連続マクロポア構造を有する従来型のモノリス状有機多孔質イオン交換体では、実用的に要求される低い圧力損失を達成するために、開口径を大きくすると、全細孔容積もそれに伴って大きくなってしまうため、体積当りのイオン交換容量が低下する、体積当りの交換容量を増加させるために全細孔容積を小さくしていくと、開口径が小さくなってしまうため圧力損失が増加するといった欠点を有していた。それに対して、本発明のモノリスイオン交換体は、開口径を更に大きくすると共に、連続マクロポア構造体の骨格を太くする(骨格の壁部を厚くする)ことができるため、透過時の圧力損失を低く押さえたままで導電性を飛躍的に大きくすることができる。体積当りのイオン交換容量が0.4mg当量/ml未満であると、導電性が低下し、電気抵抗が増大してしまうため好ましくない。なお、本発明のモノリスイオン交換体の重量当りのイオン交換容量は特に限定されないが、イオン交換基が多孔質体の表面及び骨格内部にまで均一に導入しているため、3〜5mg当量/gである。なお、イオン交換基が表面のみに導入された多孔質体のイオン交換容量は、多孔質体やイオン交換基の種類により一概には決定できないものの、せいぜい500μg当量/gである。
第1のモノリスイオン交換体において、連続マクロポア構造体の骨格を構成する材料は、架橋構造を有する有機ポリマー材料である。該ポリマー材料の架橋密度は特に限定されないが、ポリマー材料を構成する全構成単位に対して、0.3〜50モル%、好適には0.3〜5モル%の架橋構造単位を含んでいることが好ましい。架橋構造単位が0.3モル%未満であると、機械的強度が不足するため好ましくなく、一方、50モル%を越えると、多孔質体の脆化が進行し、柔軟性が失われるため好ましくなく、特に、イオン交換体の場合にはイオン交換基導入量が減少してしまうため好ましくない。該ポリマー材料の種類に特に制限はなく、例えば、ポリスチレン、ポリ(α-メチルスチレン)、ポリビニルトルエン、ポリビニルベンジルクロライド、ポリビニルビフェニル、ポリビニルナフタレン等の芳香族ビニルポリマー;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン;ポリ塩化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン等のポリ(ハロゲン化ポリオレフィン);ポリアクリロニトリル等のニトリル系ポリマー;ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸グリシジル、ポリアクリル酸エチル等の(メタ)アクリル系ポリマー等の架橋重合体が挙げられる。上記ポリマーは、単独のビニルモノマーと架橋剤を共重合させて得られるポリマーでも、複数のビニルモノマーと架橋剤を重合させて得られるポリマーであってもよく、また、二種類以上のポリマーがブレンドされたものであってもよい。これら有機ポリマー材料の中で、連続マクロポア構造形成の容易さ、イオン交換基導入の容易性と機械的強度の高さ、および酸・アルカリに対する安定性の高さから、芳香族ビニルポリマーの架橋重合体が好ましく、特に、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体やビニルベンジルクロライド−ジビニルベンゼン共重合体が好ましい材料として挙げられる。
第1のモノリスイオン交換体のイオン交換基としては、スルホン酸基、カルボン酸基、イミノ二酢酸基、リン酸基、リン酸エステル基等のカチオン交換基;四級アンモニウム基、三級アミノ基、二級アミノ基、一級アミノ基、ポリエチレンイミン基、第三スルホニウム基、ホスホニウム基等のアニオン交換基が挙げられる。
第1のモノリスイオン交換体において、導入されたイオン交換基は、多孔質体の表面のみならず、多孔質体の骨格内部にまで均一に分布している。ここで言う「イオン交換基が均一に分布している」とは、イオン交換基の分布が少なくともμmオーダーで表面および骨格内部に均一に分布していることを指す。イオン交換基の分布状況は、EPMA等を用いることで、比較的簡単に確認することができる。イオン交換基の分布が不均一であると、多孔質イオン交換体内のイオンや電子移動が不均一となり、電気抵抗が改善が十分でなくなるため、好ましくない。また、イオン交換基が、モノリスの表面のみならず、多孔質体の骨格内部にまで均一に分布していると、表面と内部の物理的性質及び化学的性質を均一にできるため、膨潤及び収縮に対する耐久性が向上する。
(第1のモノリスイオン交換体の製造方法)
第1のモノリスイオン交換体は、イオン交換基を含まない油溶性モノマー、界面活性剤及び水の混合物を撹拌することにより油中水滴型エマルジョンを調製し、次いで油中水滴型エマルジョンを重合させて全細孔容積が5〜16ml/gの連続マクロポア構造のモノリス状の有機多孔質中間体を得るI工程、ビニルモノマー、一分子中に少なくとも2個以上のビニル基を有する架橋剤、ビニルモノマーや架橋剤は溶解するがビニルモノマーが重合して生成するポリマーは溶解しない有機溶媒及び重合開始剤からなる混合物を調製するII工程、II工程で得られた混合物を静置下、且つ該I工程で得られたモノリス状の有機多孔質中間体の存在下に重合を行い、該有機多孔質中間体の骨格より太い骨格を有する骨太有機多孔質体を得るIII工程、該III工程で得られた骨太有機多孔質体にイオン交換基を導入するIV工程、を行なうことにより得られる。
第1のモノリスイオン交換体の製造方法において、I工程は、特開2002−306976号公報記載の方法に準拠して行なえばよい。
I工程のモノリス中間体の製造において、イオン交換基を含まない油溶性モノマーとしては、例えば、カルボン酸基、スルホン酸基、四級アンモニウム基等のイオン交換基を含まず、水に対する溶解性が低く、親油性のモノマーが挙げられる。これらモノマーの好適なものとしては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルベンジルクロライド、ジビニルベンゼン、エチレン、プロピレン、イソブテン、ブタジエン、エチレングリコールジメタクリレート等が挙げられる。これらモノマーは、1種単独又は2種以上を組み合わせて使用することができる。ただし、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクリレート等の架橋性モノマーを少なくとも油溶性モノマーの一成分として選択し、その含有量を全油溶性モノマー中、0.3〜50モル%、好ましくは0.3〜5モル%とすることが、後の工程でイオン交換基量を多く導入するに際して必要な機械的強度が得られる点で好ましい。
界面活性剤は、イオン交換基を含まない油溶性モノマーと水とを混合した際に、油中水滴型(W/O)エマルジョンを形成できるものであれば特に制限はなく、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタントリオレエート、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート等の非イオン界面活性剤;オレイン酸カリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、スルホコハク酸ジオクチルナトリウム等の陰イオン界面活性剤;ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド等の陽イオン界面活性剤;ラウリルジメチルベタイン等の両性界面活性剤を用いることができる。これら界面活性剤は1種単独又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。なお、油中水滴型エマルジョンとは、油相が連続相となり、その中に水滴が分散しているエマルジョンを言う。上記界面活性剤の添加量としては、油溶性モノマーの種類および目的とするエマルジョン粒子(マクロポア)の大きさによって大幅に変動するため一概には言えないが、油溶性モノマーと界面活性剤の合計量に対して約2〜70%の範囲で選択することができる。
また、I工程では、油中水滴型エマルジョン形成の際、必要に応じて重合開始剤を使用してもよい。重合開始剤は、熱及び光照射によりラジカルを発生する化合物が好適に用いられる。重合開始剤は水溶性であっても油溶性であってもよく、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスシクロヘキサンニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、過酸化ベンゾイル、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素−塩化第一鉄、過硫酸ナトリウム−酸性亜硫酸ナトリウム、テトラメチルチウラムジスルフィド等が挙げられる。
イオン交換基を含まない油溶性モノマー、界面活性剤、水及び重合開始剤とを混合し、油中水滴型エマルジョンを形成させる際の混合方法としては、特に制限はなく、各成分を一括して一度に混合する方法、油溶性モノマー、界面活性剤及び油溶性重合開始剤である油溶性成分と、水や水溶性重合開始剤である水溶性成分とを別々に均一溶解させた後、それぞれの成分を混合する方法などが使用できる。エマルジョンを形成させるための混合装置についても特に制限はなく、通常のミキサーやホモジナイザー、高圧ホモジナイザー等を用いることができ、目的のエマルジョン粒径を得るのに適切な装置を選択すればよい。また、混合条件についても特に制限はなく、目的のエマルジョン粒径を得ることができる攪拌回転数や攪拌時間を、任意に設定することができる。
I工程で得られるモノリス中間体は、連続マクロポア構造を有する。これを重合系に共存させると、モノリス中間体の構造を鋳型として骨太の骨格を有する多孔構造が形成される。また、モノリス中間体は、架橋構造を有する有機ポリマー材料である。該ポリマー材料の架橋密度は特に限定されないが、ポリマー材料を構成する全構成単位に対して、0.3〜50モル%、好ましくは0.3〜5モル%の架橋構造単位を含んでいることが好ましい。架橋構造単位が0.3モル%未満であると、機械的強度が不足するため好ましくない。特に、全細孔容積が10〜16ml/gと大きい場合には、連続マクロポア構造を維持するため、架橋構造単位を2モル%以上含有していることが好ましい。一方、50モル%を越えると、多孔質体の脆化が進行し、柔軟性が失われるため好ましくない。
モノリス中間体のポリマー材料の種類としては、特に制限はなく、前述のモノリスのポリマー材料と同じものが挙げられる。これにより、モノリス中間体の骨格に同様のポリマーを形成して、骨格を太らせ均一な骨格構造のモノリスを得ることができる。
モノリス中間体の全細孔容積は、5〜16ml/g、好適には6〜16ml/gである。全細孔容積が小さ過ぎると、ビニルモノマーを重合させた後で得られるモノリスの全細孔容積が小さくなりすぎ、通水時の圧力損失が大きくなるため好ましくない。一方、全細孔容積が大き過ぎると、ビニルモノマーを重合させた後で得られるモノリスの構造が連続マクロポア構造から逸脱するため好ましくない。モノリス中間体の全細孔容積を上記数値範囲とするには、モノマーと水の比を、概ね1:5〜1:20とすればよい。
また、モノリス中間体は、マクロポアとマクロポアの重なり部分である開口(メソポア)の平均直径が乾燥状態で20〜200μmである。開口の平均直径が20μm未満であると、ビニルモノマーを重合させた後で得られるモノリスの開口径が小さくなり、通水過時の圧力損失が大きくなってしまうため好ましくない。一方、200μmを超えると、ビニルモノマーを重合させた後で得られるモノリスの開口径が大きくなりすぎ、水の流路が均一に形成されにくくなるため好ましくない。モノリス中間体は、マクロポアの大きさや開口の径が揃った均一構造のものが好適であるが、これに限定されず、均一構造中、均一なマクロポアの大きさよりも大きな不均一なマクロポアが点在するものであってもよい。
II工程は、ビニルモノマー、一分子中に少なくとも2個以上のビニル基を有する架橋剤、ビニルモノマーや架橋剤は溶解するがビニルモノマーが重合して生成するポリマーは溶解しない有機溶媒及び重合開始剤からなる混合物を調製する工程である。なお、I工程とII工程の順序はなく、I工程後にII工程を行ってもよく、II工程後にI工程を行ってもよい。
II工程で用いられるビニルモノマーとしては、分子中に重合可能なビニル基を含有し、有機溶媒に対する溶解性が高い親油性のビニルモノマーであれば、特に制限はないが、上記重合系に共存させるモノリス中間体と同種類もしくは類似のポリマー材料を生成するビニルモノマーを選定することが好ましい。これらビニルモノマーの具体例としては、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルベンジルクロライド、ビニルビフェニル、ビニルナフタレン等の芳香族ビニルモノマー;エチレン、プロピレン、1-ブテン、イソブテン等のα-オレフィン;ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等のジエン系モノマー;塩化ビニル、臭化ビニル、塩化ビニリデン、テトラフルオロエチレン等のハロゲン化オレフィン;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル系モノマー;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸グリシジル等の(メタ)アクリル系モノマーが挙げられる。これらモノマーは、1種単独又は2種以上を組み合わせて使用することができる。本発明で好適に用いられるビニルモノマーは、スチレン、ビニルベンジルクロライド等の芳香族ビニルモノマーである。
これらビニルモノマーの添加量は、重合時に共存させるモノリス中間体に対して、重量で3〜40倍、好ましくは4〜30倍である。ビニルモノマー添加量が多孔質体に対して3倍未満であると、生成したモノリスの骨格(モノリス骨格の壁部の厚み)を太くできず、体積当りの吸着容量やイオン交換基導入後の体積当りのイオン交換容量が小さくなってしまうため好ましくない。一方、ビニルモノマー添加量が40倍を超えると、開口径が小さくなり、通水時の圧力損失が大きくなってしまうため好ましくない。
II工程で用いられる架橋剤は、分子中に少なくとも2個の重合可能なビニル基を含有し、有機溶媒への溶解性が高いものが好適に用いられる。架橋剤の具体例としては、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、ジビニルビフェニル、エチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ブタンジオールジアクリレート等が挙げられる。これら架橋剤は、1種単独又は2種以上を組み合わせて使用することができる。好ましい架橋剤は、機械的強度の高さと加水分解に対する安定性から、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、ジビニルビフェニル等の芳香族ポリビニル化合物である。架橋剤使用量は、ビニルモノマーと架橋剤の合計量に対して0.3〜50モル%、特に0.3〜5モル%であることが好ましい。架橋剤使用量が0.3モル%未満であると、モノリスの機械的強度が不足するため好ましくない。一方、50モル%を越えると、モノリスの脆化が進行して柔軟性が失われる、イオン交換基の導入量が減少してしまうといった問題点が生じるため好ましくない。なお、上記架橋剤使用量は、ビニルモノマー/架橋剤重合時に共存させるモノリス中間体の架橋密度とほぼ等しくなるように用いることが好ましい。両者の使用量があまりに大きくかけ離れると、生成したモノリス中で架橋密度分布の偏りが生じ、イオン交換基導入反応時にクラックが生じやすくなる。
II工程で用いられる有機溶媒は、ビニルモノマーや架橋剤は溶解するがビニルモノマーが重合して生成するポリマーは溶解しない有機溶媒、言い換えると、ビニルモノマーが重合して生成するポリマーに対する貧溶媒である。該有機溶媒は、ビニルモノマーの種類によって大きく異なるため一般的な具体例を列挙することは困難であるが、例えば、ビニルモノマーがスチレンの場合、有機溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、オクタノール、2-エチルヘキサノール、デカノール、ドデカノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、グリセリン等のアルコール類;ジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、セロソルブ、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等の鎖状(ポリ)エーテル類;ヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン、デカン、ドデカン等の鎖状飽和炭化水素類;酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸セロソルブ、プロピオン酸エチル等のエステル類が挙げられる。また、ジオキサンやTHF、トルエンのようにポリスチレンの良溶媒であっても、上記貧溶媒と共に用いられ、その使用量が少ない場合には、有機溶媒として使用することができる。これら有機溶媒の使用量は、上記ビニルモノマーの濃度が30〜80重量%となるように用いることが好ましい。有機溶媒使用量が上記範囲から逸脱してビニルモノマー濃度が30重量%未満となると、重合速度が低下したり、重合後のモノリス構造が本発明の範囲から逸脱してしまうため好ましくない。一方、ビニルモノマー濃度が80重量%を超えると、重合が暴走する恐れがあるため好ましくない。
重合開始剤としては、熱及び光照射によりラジカルを発生する化合物が好適に用いられる。重合開始剤は油溶性であるほうが好ましい。本発明で用いられる重合開始剤の具体例としては、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビスイソ酪酸ジメチル、4,4’-アゾビス(4-シアノ吉草酸)、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、テトラメチルチウラムジスルフィド等が挙げられる。重合開始剤の使用量は、モノマーの種類や重合温度等によって大きく変動するが、ビニルモノマーと架橋剤の合計量に対して、約0.01〜5%の範囲で使用することができる。
III工程は、II工程で得られた混合物を静置下、且つ該I工程で得られたモノリス中間体の存在下に重合を行い、該モノリス中間体の骨格より太い骨格を有する骨太のモノリスを得る工程である。III工程で用いるモノリス中間体は、本発明の斬新な構造を有するモノリスを創出する上で、極めて重要な役割を担っている。特表平7−501140号等に開示されているように、モノリス中間体不存在下でビニルモノマーと架橋剤を特定の有機溶媒中で静置重合させると、粒子凝集型のモノリス状有機多孔質体が得られる。それに対して、本発明のように上記重合系に連続マクロポア構造のモノリス中間体を存在させると、重合後のモノリスの構造は劇的に変化し、粒子凝集構造は消失し、上述の骨太のモノリスが得られる。その理由は詳細には解明されていないが、モノリス中間体が存在しない場合は、重合により生じた架橋重合体が粒子状に析出・沈殿することで粒子凝集構造が形成されるのに対し、重合系に多孔質体(中間体)が存在すると、ビニルモノマー及び架橋剤が液相から多孔質体の骨格部に吸着又は分配され、多孔質体中で重合が進行して骨太骨格のモノリスが得られると考えられる。なお、開口径は重合の進行により狭められるが、モノリス中間体の全細孔容積が大きいため、例え骨格が骨太になっても適度な大きさの開口径が得られる。
反応容器の内容積は、モノリス中間体を反応容器中に存在させる大きさのものであれば特に制限されず、反応容器内にモノリス中間体を載置した際、平面視でモノリスの周りに隙間ができるもの、反応容器内にモノリス中間体が隙間無く入るもののいずれであってもよい。このうち、重合後の骨太のモノリスが容器内壁から押圧を受けることなく、反応容器内に隙間無く入るものが、モノリスに歪が生じることもなく、反応原料などの無駄がなく効率的である。なお、反応容器の内容積が大きく、重合後のモノリスの周りに隙間が存在する場合であっても、ビニルモノマーや架橋剤は、モノリス中間体に吸着、分配されるため、反応容器内の隙間部分に粒子凝集構造物が生成することはない。
III工程において、反応容器中、モノリス中間体は混合物(溶液)で含浸された状態に置かれる。II工程で得られた混合物とモノリス中間体の配合比は、前述の如く、モノリス中間体に対して、ビニルモノマーの添加量が重量で3〜40倍、好ましくは4〜30倍となるように配合するのが好適である。これにより、適度な開口径を有しつつ、骨太の骨格を有するモノリスを得ることができる。反応容器中、混合物中のビニルモノマーと架橋剤は、静置されたモノリス中間体の骨格に吸着、分配され、モノリス中間体の骨格内で重合が進行する。
重合条件は、モノマーの種類、開始剤の種類により様々な条件が選択できる。例えば、開始剤として2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、過硫酸カリウム等を用いたときには、不活性雰囲気下の密封容器内において、30〜100℃で1〜48時間加熱重合させればよい。加熱重合により、モノリス中間体の骨格に吸着、分配したビニルモノマーと架橋剤が該骨格内で重合し、該骨格を太らせる。重合終了後、内容物を取り出し、未反応ビニルモノマーと有機溶媒の除去を目的に、アセトン等の溶剤で抽出して骨太のモノリスを得る。
次に、上記の方法によりモノリスを製造した後、イオン交換基を導入する方法が、得られるモノリスイオン交換体の多孔構造を厳密にコントロールできる点で好ましい。
上記モノリスにイオン交換基を導入する方法としては、特に制限はなく、高分子反応やグラフト重合等の公知の方法を用いることができる。例えば、スルホン酸基を導入する方法としては、モノリスがスチレン-ジビニルベンゼン共重合体等であればクロロ硫酸や濃硫酸、発煙硫酸を用いてスルホン化する方法;モノリスに均一にラジカル開始基や連鎖移動基を骨格表面及び骨格内部に導入し、スチレンスルホン酸ナトリウムやアクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸をグラフト重合する方法;同様にグリシジルメタクリレートをグラフト重合した後、官能基変換によりスルホン酸基を導入する方法等が挙げられる。また、四級アンモニウム基を導入する方法としては、モノリスがスチレン-ジビニルベンゼン共重合体等であればクロロメチルメチルエーテル等によりクロロメチル基を導入した後、三級アミンと反応させる方法;モノリスをクロロメチルスチレンとジビニルベンゼンの共重合により製造し、三級アミンと反応させる方法;モノリスに、均一にラジカル開始基や連鎖移動基を骨格表面及び骨格内部導入し、N,N,N−トリメチルアンモニウムエチルアクリレートやN,N,N−トリメチルアンモニウムプロピルアクリルアミドをグラフト重合する方法;同様にグリシジルメタクリレートをグラフト重合した後、官能基変換により四級アンモニウム基を導入する方法等が挙げられる。また、ベタインを導入する方法としては、上記の方法によりモノリスに三級アミンを導入した後、モノヨード酢酸を反応させ導入する方法等が挙げられる。これらの方法のうち、スルホン酸基を導入する方法については、クロロ硫酸を用いてスチレン-ジビニルベンゼン共重合体にスルホン酸基を導入する方法が、四級アンモニウム基を導入する方法としては、スチレン-ジビニルベンゼン共重合体にクロロメチルメチルエーテル等によりクロロメチル基を導入した後、三級アミンと反応させる方法やクロロメチルスチレンとジビニルベンゼンの共重合によりモノリスを製造し、三級アミンと反応させる方法が、イオン交換基を均一かつ定量的に導入できる点で好ましい。なお、導入するイオン交換基としては、カルボン酸基、イミノ二酢酸基、スルホン酸基、リン酸基、リン酸エステル基等のカチオン交換基;四級アンモニウム基、三級アミノ基、二級アミノ基、一級アミノ基、ポリエチレンイミン基、第三スルホニウム基、ホスホニウム基等のアニオン交換基が挙げられる。
第1のモノリスイオン交換体は、骨太のモノリスにイオン交換基が導入されるため例えば骨太モノリスの1.4〜1.9倍のように大きく膨潤する。すなわち、特開2002−306976記載の従来のモノリスにイオン交換基が導入されたものよりも膨潤度が遥かに大きい。このため、骨太モノリスの開口径が小さいものであっても、モノリスイオン交換体の開口径は概ね、上記倍率で大きくなる。また、開口径が膨潤で大きくなっても全細孔容積は変化しない。従って、第1のモノリスイオン交換体は、開口径が格段に大きいにもかかわらず、骨太骨格を有するため機械的強度が高い。
<第2のモノリスイオン交換体の説明>
第2のモノリスイオン交換体は、イオン交換基が導入された全構成単位中、架橋構造単位を0.3〜5.0モル%含有する芳香族ビニルポリマーからなる太さが1〜60μmの三次元的に連続した骨格と、その骨格間に直径が10〜100μmの三次元的に連続した空孔とからなる共連続構造体であって、全細孔容積が0.5〜5ml/gであり、水湿潤状態での体積当りのイオン交換容量が0.3〜5mg当量/mlであり、イオン交換基が該多孔質イオン交換体中に均一に分布している。
第2のモノリスイオン交換体は、イオン交換基が導入された平均太さが水潤状態で1〜60μm、好ましくは3〜58μmの三次元的に連続した骨格と、その骨格間に平均直径が水潤状態で10〜100μm、好ましくは15〜90μm、特に20〜80μmの三次元的に連続した空孔とからなる共連続構造体である。すなわち、共連続構造は図6の模式図に示すように、連続する骨格相61と連続する空孔相62とが絡み合ってそれぞれが共に3次元的に連続する構造10aである。この連続した空孔62は、従来の連続気泡型モノリスや粒子凝集型モノリスに比べて空孔の連続性が高くてその大きさに偏りがないため、極めて均一なイオンの吸着挙動が達成できる。また、骨格が太いため機械的強度が高い。
第2のモノリスイオン交換体の骨格の太さ及び空孔の直径は、モノリスにイオン交換基を導入する際、モノリス全体が膨潤するため、モノリスの骨格の太さ及び空孔の直径よりも大となる。この連続した空孔は、従来の連続気泡型モノリス状有機多孔質イオン交換体や粒子凝集型モノリス状有機多孔質イオン交換体に比べて空孔の連続性が高くてその大きさに偏りがないため、極めて均一なイオンの吸着挙動が達成できる。三次元的に連続した空孔の直径が10μm未満であると、流体通過時の圧力損失が大きくなってしまうため好ましくなく、100μmを超えると、濃縮水と有機多孔質イオン交換体との接触が不十分となり、その結果、イオン交換特性が不均一となるため好ましくない。
上記記連続構造体の空孔の水潤状態での平均直径は、公知の水銀圧入法で測定した乾燥状態のモノリスイオン交換体の空孔の平均直径に、膨潤率を乗じて算出される値である。具体的には、水潤状態のモノリスイオン交換体の直径がx2(mm)であり、その水潤状態のモノリスイオン交換体を乾燥させ、得られる乾燥状態のモノリスイオン交換体の直径がy2(mm)であり、この乾燥状態のモノリスイオン交換体を水銀圧入法により測定したときの空孔の平均直径がz2(μm)であったとすると、モノリスイオン交換体の空孔の水潤状態での平均直径(μm)は、次式「モノリスイオン交換体の空孔の水潤状態の平均直径(μm)=z2×(x2/y2)」で算出される。また、イオン交換基導入前の乾燥状態のモノリスの空孔の平均直径、及びその乾燥状態のモノリスにイオン交換基導入したときの乾燥状態のモノリスに対する水潤状態のモノリスイオン交換体の膨潤率がわかる場合は、乾燥状態のモノリスの空孔の平均直径に、膨潤率を乗じて、モノリスイオン交換体の空孔の水潤状態の平均直径を算出することもできる。また、上記記連続構造体の骨格の水潤状態での平均太さは、乾燥状態のモノリスイオン交換体のSEM観察を少なくとも3回行い、得られた画像中の骨格の太さを測定し、その平均値に、膨潤率を乗じて算出される値である。具体的には、水潤状態のモノリスイオン交換体の直径がx3(mm)であり、その水潤状態のモノリスイオン交換体を乾燥させ、得られる乾燥状態のモノリスイオン交換体の直径がy3(mm)であり、この乾燥状態のモノリスイオン交換体のSEM観察を少なくとも3回行い、得られた画像中の骨格の太さを測定し、その平均値がz3(μm)であったとすると、モノリスイオン交換体の連続構造体の骨格の水潤状態での平均太さ(μm)は、次式「モノリスイオン交換体の連続構造体の骨格の水潤状態の平均太さ(μm)=z3×(x3/y3)」で算出される。また、イオン交換基導入前の乾燥状態のモノリスの骨格の平均太さ、及びその乾燥状態のモノリスにイオン交換基導入したときの乾燥状態のモノリスに対する水潤状態のモノリスイオン交換体の膨潤率がわかる場合は、乾燥状態のモノリスの骨格の平均太さに、膨潤率を乗じて、モノリスイオン交換体の骨格の水潤状態の平均太さを算出することもできる。なお、骨格は棒状であり円形断面形状であるが、楕円断面形状等異径断面のものが含まれていてもよい。この場合の太さは短径と長径の平均である。
第2のモノリスイオン交換体は、3次元的に連続した棒状骨格の太さが10μm未満であると、体積当りのイオン交換容量が低下してしまうため好ましくなく、100μmを超えると、イオン交換特性の均一性が失われるため好ましくない。モノリスイオン交換体の壁部の定義及び測定方法などは、モノリスと同様である。
また、第2のモノリスイオン交換体は、0.5〜5ml/gの全細孔容積を有する。全細孔容積が0.5ml/g未満であると、流体透過時の圧力損失が大きくなってしまうため好ましくなく、更に、単位断面積当りの透過流体量が小さくなり、処理能力が低下してしまうため好ましくない。一方、全細孔容積が5ml/gを超えると、体積当りのイオン交換容量が低下してしまうため好ましくない。三次元的に連続した空孔の大きさ及び全細孔容積が上記範囲にあれば、流体との接触が極めて均一で接触面積も大きいため、イオン交換帯長さが短く、且つ低圧力損失となる。なお、モノリス(モノリス中間体、モノリス、モノリスイオン交換体)の全細孔容積は、乾燥状態でも、水潤状態でも、同じである。
なお、第2のモノリスイオン交換体に水を透過させた際の圧力損失は、多孔質体を1m充填したカラムに通水線速度(LV)1m/hで通水した際の圧力損失(以下、「差圧係数」と言う。)で示すと、0.001〜0.5MPa/m・LVの範囲、特に0.001〜0.1MPa/m・LVである。差圧係数および全細孔容積がこの範囲にあれば、これをEDIの濃縮室に用いた場合、通水時の圧力損失を抑制し、導電性を高める上に、十分な機械的強度を有しているため好ましい。
第2のモノリスイオン交換体において、共連続構造体の骨格を構成する材料は、全構成単位中、0.3〜5モル%、好ましくは0.5〜3.0モル%の架橋構造単位を含んでいる芳香族ビニルポリマーであり疎水性である。架橋構造単位が0.3モル%未満であると、機械的強度が不足するため好ましくなく、一方、5モル%を越えると、多孔質体の構造が共連続構造から逸脱しやすくなる。該芳香族ビニルポリマーの種類に特に制限はなく、例えば、ポリスチレン、ポリ(α-メチルスチレン)、ポリビニルトルエン、ポリビニルベンジルクロライド、ポリビニルビフェニル、ポリビニルナフタレン等が挙げられる。上記ポリマーは、単独のビニルモノマーと架橋剤を共重合させて得られるポリマーでも、複数のビニルモノマーと架橋剤を重合させて得られるポリマーであってもよく、また、二種類以上のポリマーがブレンドされたものであってもよい。これら有機ポリマー材料の中で、共連続構造形成の容易さ、イオン交換基導入の容易性と機械的強度の高さ、および酸・アルカリに対する安定性の高さから、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体やビニルベンジルクロライド−ジビニルベンゼン共重合体が好ましい。
第2のモノリスイオン交換体は、水湿潤状態での体積当りの陽イオン交換容量が0.3〜5mg当量/mlのイオン交換容量を有する。特開2002−306976号に記載されているような本発明とは異なる連続マクロポア構造を有する従来型のモノリス状有機多孔質イオン交換体では、実用的に要求される低い圧力損失を達成するために、開口径を大きくすると、全細孔容積もそれに伴って大きくなってしまうため、体積当りのイオン交換容量が低下する、体積当りの交換容量を増加させるために全細孔容積を小さくしていくと、開口径が小さくなってしまうため圧力損失が増加するといった欠点を有していた。それに対して、本発明のモノリスイオン交換体は、三次元的に連続した空孔の連続性や均一性が高いため、全細孔容積を低下させても圧力損失はさほど増加しない。そのため、圧力損失を低く押さえたままで体積当りのイオン交換容量を飛躍的に大きくすることができ、導電性を高め、電気抵抗を低減することができる。なお、第2のモノリスイオン交換体の乾燥状態における重量当りのイオン交換容量は特に限定されないが、イオン交換基が多孔質体の骨格表面及び骨格内部にまで均一に導入しているため、3〜5mg当量/gである。なお、イオン交換基が骨格表面のみに導入された多孔質体のイオン交換容量は、多孔質体やイオン交換基の種類により一概には決定できないものの、せいぜい500μg当量/gである。
第2のモノリスイオン交換体におけるイオン交換基としては、第1のモノリスイオン交換体におけるイオン交換基と同様であり、その説明を省略する。第2のモノリスイオン交換体において、導入されたイオン交換基は、多孔質体の表面のみならず、多孔質体の骨格内部にまで均一に分布している。均一分布の定義は、第1のモノリスイオン交換体の均一分布の定義と同じである。
(第2のモノリスイオン交換体の製造方法)
第2のモノリスイオン交換体は、イオン交換基を含まない油溶性モノマー、界面活性剤及び水の混合物を撹拌することにより油中水滴型エマルジョンを調製し、次いで油中水滴型エマルジョンを重合させて全細孔容積が16ml/gを超え、30ml/g以下の連続マクロポア構造のモノリス状の有機多孔質中間体を得るI工程、芳香族ビニルモノマー、一分子中に少なくとも2個以上のビニル基を有する全油溶性モノマー中、0.3〜5モル%の架橋剤、芳香族ビニルモノマーや架橋剤は溶解するが芳香族ビニルモノマーが重合して生成するポリマーは溶解しない有機溶媒及び重合開始剤からなる混合物を調製するII工程、II工程で得られた混合物を静置下、且つI工程で得られたモノリス状の有機多孔質中間体の存在下に重合を行い、共連続構造体を得るIII工程、該III工程で得られた共連続構造体にイオン交換基を導入するIV工程を行うことで得られる。
第2のモノリスイオン交換体におけるモノリス中間体を得るI工程は、特開2002−306976号公報記載の方法に準拠して行なえばよい。
すなわち、I工程において、イオン交換基を含まない油溶性モノマーとしては、例えば、カルボン酸基、スルホン酸基、四級アンモニウム基等のイオン交換基を含まず、水に対する溶解性が低く、親油性のモノマーが挙げられる。これらモノマーの具体例としては、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルベンジルクロライド、ビニルビフェニル、ビニルナフタレン等の芳香族ビニルモノマー;エチレン、プロピレン、1-ブテン、イソブテン等のα-オレフィン;ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等のジエン系モノマー;塩化ビニル、臭化ビニル、塩化ビニリデン、テトラフルオロエチレン等のハロゲン化オレフィン;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル系モノマー;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸グリシジル等の(メタ)アクリル系モノマーが挙げられる。これらモノマーの中で、好適なものとしては、芳香族ビニルモノマーであり、例えばスチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルベンジルクロライド、ジビニルベンゼン等が挙げられる。これらモノマーは、1種単独又は2種以上を組み合わせて使用することができる。ただし、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクリレート等の架橋性モノマーを少なくとも油溶性モノマーの一成分として選択し、その含有量を全油溶性モノマー中、0.3〜5モル%、好ましくは0.3〜3モル%とすることが、後の工程でイオン交換基量を多く導入するに際して必要な機械的強度が得られる点で好ましい。
界面活性剤は、第1のモノリスイオン交換体のI工程で使用する界面活性剤と同様であり、その説明を省略する。
また、I工程では、油中水滴型エマルジョン形成の際、必要に応じて重合開始剤を使用してもよい。重合開始剤は、熱及び光照射によりラジカルを発生する化合物が好適に用いられる。重合開始剤は水溶性であっても油溶性であってもよく、例えば、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビスイソ酪酸ジメチル、4,4’-アゾビス(4-シアノ吉草酸)、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、テトラメチルチウラムジスルフィド、過酸化水素−塩化第一鉄、過硫酸ナトリウム−酸性亜硫酸ナトリウム等が挙げられる。
イオン交換基を含まない油溶性モノマー、界面活性剤、水及び重合開始剤とを混合し、油中水滴型エマルジョンを形成させる際の混合方法としては、第1のモノリスイオン交換体のI工程における混合方法と同様であり、その説明を省略する。
第2のモノリスイオン交換体の製造方法において、I工程で得られるモノリス中間体は、架橋構造を有する有機ポリマー材料、好適には芳香族ビニルポリマーである。該ポリマー材料の架橋密度は特に限定されないが、ポリマー材料を構成する全構成単位に対して、0.3〜5モル%、好ましくは0.3〜3モル%の架橋構造単位を含んでいることが好ましい。架橋構造単位が0.3モル%未満であると、機械的強度が不足するため好ましくない。一方、5モル%を超えると、モノリスの構造が共連続構造を逸脱し易くなるため好ましくない。特に、全細孔容積が16〜20ml/gと本発明の中では小さい場合には、共連続構造を形成させるため、架橋構造単位は3モル未満とすることが好ましい。
モノリス中間体のポリマー材料の種類は、第1のモノリスイオン交換体のモノリス中間体のポリマー材料の種類と同様であり、その説明を省略する。
モノリス中間体の全細孔容積は、16ml/gを超え、30ml/g以下、好適には6〜25ml/gである。すなわち、このモノリス中間体は、基本的には連続マクロポア構造ではあるが、マクロポアとマクロポアの重なり部分である開口(メソポア)が格段に大きいため、モノリス構造を構成する骨格が二次元の壁面から一次元の棒状骨格に限りなく近い構造を有している。これを重合系に共存させると、モノリス中間体の構造を鋳型として共連続構造の多孔質体が形成される。全細孔容積が小さ過ぎると、ビニルモノマーを重合させた後で得られるモノリスの構造が共連続構造から連続マクロポア構造に変化してしまうため好ましくなく、一方、全細孔容積が大き過ぎると、ビニルモノマーを重合させた後で得られるモノリスの機械的強度が低下したり、体積当たりのイオン交換容量が低下してしまうため好ましくない。モノリス中間体の全細孔容積を第2のモノリスイオン交換体の特定の範囲とするには、モノマーと水の比を、概ね1:20〜1:40とすればよい。
また、モノリス中間体は、マクロポアとマクロポアの重なり部分である開口(メソポア)の平均直径が乾燥状態で5〜100μmである。開口の平均直径が5μm未満であると、ビニルモノマーを重合させた後で得られるモノリスの開口径が小さくなり、通水時の圧力損失が大きくなってしまうため好ましくない。一方、100μmを超えると、ビニルモノマーを重合させた後で得られるモノリスの開口径が大きくなりすぎ、流体とモノリスイオン交換体との接触が不十分となり、その結果、イオン交換特性が低下してしまうため好ましくない。モノリス中間体は、マクロポアの大きさや開口の径が揃った均一構造のものが好適であるが、これに限定されず、均一構造中、均一なマクロポアの大きさよりも大きな不均一なマクロポアが点在するものであってもよい。
第2のモノリスイオン交換体の製造方法において、II工程は、芳香族ビニルモノマー、一分子中に少なくとも2個以上のビニル基を有する全油溶性モノマー中、0.3〜5モル%の架橋剤、芳香族ビニルモノマーや架橋剤は溶解するが芳香族ビニルモノマーが重合して生成するポリマーは溶解しない有機溶媒及び重合開始剤からなる混合物を調製する工程である。なお、I工程とII工程の順序はなく、I工程後にII工程を行ってもよく、II工程後にI工程を行ってもよい。
第2のモノリスイオン交換体の製造方法において、II工程で用いられる芳香族ビニルモノマーとしては、分子中に重合可能なビニル基を含有し、有機溶媒に対する溶解性が高い親油性の芳香族ビニルモノマーであれば、特に制限はないが、上記重合系に共存させるモノリス中間体と同種類もしくは類似のポリマー材料を生成するビニルモノマーを選定することが好ましい。これらビニルモノマーの具体例としては、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルベンジルクロライド、ビニルビフェニル、ビニルナフタレン等が挙げられる。これらモノマーは、1種単独又は2種以上を組み合わせて使用することができる。本発明で好適に用いられる芳香族ビニルモノマーは、スチレン、ビニルベンジルクロライド等である。
これら芳香族ビニルモノマーの添加量は、重合時に共存させるモノリス中間体に対して、重量で5〜50倍、好ましくは5〜40倍である。芳香族ビニルモノマー添加量が多孔質体に対して5倍未満であると、棒状骨格を太くできず、イオン交換基導入後の体積当りのイオン交換容量が小さくなって、導電性を高めることができなくなる。
II工程で用いられる架橋剤は、分子中に少なくとも2個の重合可能なビニル基を含有し、有機溶媒への溶解性が高いものが好適に用いられる。架橋剤の具体例としては、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、ジビニルビフェニル、エチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ブタンジオールジアクリレート等が挙げられる。これら架橋剤は、1種単独又は2種以上を組み合わせて使用することができる。好ましい架橋剤は、機械的強度の高さと加水分解に対する安定性から、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、ジビニルビフェニル等の芳香族ポリビニル化合物である。架橋剤使用量は、ビニルモノマーと架橋剤の合計量(全油溶性モノマー)に対して0.3〜5モル%、特に0.3〜3モル%である。架橋剤使用量が0.3モル%未満であると、モノリスの機械的強度が不足するため好ましくなく、一方、多過ぎると、モノリスの脆化が進行して柔軟性が失われる、イオン交換基の導入量が減少してしまうといった問題点が生じるため好ましくない。なお、上記架橋剤使用量は、ビニルモノマー/架橋剤重合時に共存させるモノリス中間体の架橋密度とほぼ等しくなるように用いることが好ましい。両者の使用量があまりに大きくかけ離れると、生成したモノリス中で架橋密度分布の偏りが生じ、イオン交換基導入反応時にクラックが生じやすくなる。
II工程で用いられる有機溶媒は、芳香族ビニルモノマーや架橋剤は溶解するが芳香族ビニルモノマーが重合して生成するポリマーは溶解しない有機溶媒、言い換えると、芳香族ビニルモノマーが重合して生成するポリマーに対する貧溶媒である。該有機溶媒は、芳香族ビニルモノマーの種類によって大きく異なるため一般的な具体例を列挙することは困難であるが、例えば、芳香族ビニルモノマーがスチレンの場合、有機溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、オクタノール、2-エチルヘキサノール、デカノール、ドデカノール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール等のアルコール類;ジエチルエーテル、ブチルセロソルブ、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等の鎖状(ポリ)エーテル類;ヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン、デカン、ドデカン等の鎖状飽和炭化水素類;酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸セロソルブ、プロピオン酸エチル等のエステル類が挙げられる。また、ジオキサンやTHF、トルエンのようにポリスチレンの良溶媒であっても、上記貧溶媒と共に用いられ、その使用量が少ない場合には、有機溶媒として使用することができる。これら有機溶媒の使用量は、上記芳香族ビニルモノマーの濃度が30〜80重量%となるように用いることが好ましい。有機溶媒使用量が上記範囲から逸脱して芳香族ビニルモノマー濃度が30重量%未満となると、重合速度が低下したり、重合後のモノリス構造が本発明の範囲から逸脱してしまうため好ましくない。一方、芳香族ビニルモノマー濃度が80重量%を超えると、重合が暴走する恐れがあるため好ましくない。
重合開始剤は、第1のモノリスイオン交換体のII工程で用いる重合開始剤と同様であり、その説明を省略する。
第2のモノリスイオン交換体の製造方法において、III工程は、II工程で得られた混合物を静置下、且つ該I工程で得られたモノリス中間体の存在下に重合を行い、該モノリス中間体の連続マクロポア構造を共連続構造に変化させ、骨太骨格のモノリスを得る工程である。III工程で用いるモノリス中間体は、本発明の斬新な構造を有するモノリスを創出する上で、極めて重要な役割を担っている。特表平7−501140号等に開示されているように、モノリス中間体不存在下でビニルモノマーと架橋剤を特定の有機溶媒中で静置重合させると、粒子凝集型のモノリス状有機多孔質体が得られる。それに対して、本発明の第2のモノリスのように上記重合系に特定の連続マクロポア構造のモノリス中間体を存在させると、重合後のモノリスの構造は劇的に変化し、粒子凝集構造は消失し、上述の共連続構造のモノリスが得られる。その理由は詳細には解明されていないが、モノリス中間体が存在しない場合は、重合により生じた架橋重合体が粒子状に析出・沈殿することで粒子凝集構造が形成されるのに対し、重合系に全細孔容積が大きな多孔質体(中間体)が存在すると、ビニルモノマー及び架橋剤が液相から多孔質体の骨格部に吸着又は分配され、多孔質体中で重合が進行し、モノリス構造を構成する骨格が二次元の壁面から一次元の棒状骨格に変化して共連続構造を有するモノリス状有機多孔質体が形成されると考えられる。
反応容器の内容積は、第1のモノリスイオン交換体の反応容器の内容積の説明と同様であり、その説明を省略する。
III工程において、反応容器中、モノリス中間体は混合物(溶液)で含浸された状態に置かれる。II工程で得られた混合物とモノリス中間体の配合比は、前述の如く、モノリス中間体に対して、芳香族ビニルモノマーの添加量が重量で5〜50倍、好ましくは5〜40倍となるように配合するのが好適である。これにより、適度な大きさの空孔が三次元的に連続し、且つ骨太の骨格が3次元的に連続する共連続構造のモノリスを得ることができる。反応容器中、混合物中の芳香族ビニルモノマーと架橋剤は、静置されたモノリス中間体の骨格に吸着、分配され、モノリス中間体の骨格内で重合が進行する。
共連続構造を有するモノリスの基本構造は、平均太さが乾燥状態で0.8〜40μmの三次元的に連続した骨格と、その骨格間に直径が8〜80μmの三次元的に連続した空孔が配置された構造である。上記三次元的に連続した空孔の平均直径は、水銀圧入法により細孔分布曲線を測定し、細孔分布曲線の極大値として得ることができる。モノリスの骨格の太さは、SEM観察を少なくとも3回行い、得られた画像中の骨格の平均太さを測定して算出すればよい。また、共連続構造を有するモノリスは、0.5〜5ml/gの全細孔容積を有する。
重合条件は、第1のモノリスイオン交換体のIII工程の重合条件の説明と同様であり、その説明を省略する。
IV工程において、共連続構造を有するモノリスにイオン交換基を導入する方法は、第1のモノリスイオン交換体における、モノリスにイオン交換基を導入する方法と同様であり、その説明を省略する。
第2のモノリスイオン交換体は、共連続構造のモノリスにイオン交換基が導入されるため、例えばモノリスの1.4〜1.9倍に大きく膨潤する。また、空孔径が膨潤で大きくなっても全細孔容積は変化しない。従って、第2のモノリスイオン交換体は、3次元的に連続する空孔の大きさが格段に大きいにもかかわらず、骨太骨格を有するため機械的強度が高い。また、骨格が太いため、水湿潤状態での体積当りのイオン交換容量を大きくでき、濃縮水の通水差圧を低く抑えつつ、優れた電気抵抗低減効果を発揮することができる。
前記の第1のモノリスイオン交換体及び第2のモノリスイオン交換体(以下、単に「有機多孔質イオン交換体」とも言う。)の濃縮室への充填方法としては、特に制限されず、陰イオン交換体単床、陽イオン交換体単床、陰イオン交換体単床および陽イオン交換体単床が濃縮水流入方向に対して交互に2床以上積層される複床、および陰イオン交換体単床と陽イオン交換体単床が濃縮水流入方向に直交する方向に対して交互に積層される列状床などを例示することができ、このうち、陰イオン交換体単床および陽イオン交換体単床が濃縮水流入方向に対して交互に2床以上積層される複床が、後述するように、スケールが発生し難い構造となる点で好ましい。図14に示される濃縮室1は、1側のアニオン交換膜4と、他側のカチオン交換膜3で、定型寸法に切断された有機多孔質イオン交換体81、82を挟み込んで作製される。図14では、有機多孔質イオン交換体は、上側の有機多孔質陰イオン交換体81と下側の有機多孔質陽イオン交換体82の2床の積層床8aからなる。すなわち、平板積層型の電気式脱イオン水製造装置の濃縮室内に、1枚の有機多孔質陽イオン交換体81と有機多孔質陽イオン交換体81と同じ大きさの1枚の有機多孔質陰イオン体82の2床を積層充填する場合、2床で形成される有機多孔質イオン交換体の縦横寸法は略両側のイオン交換膜3、4と同じであり、厚み寸法wが濃縮室内の厚みとなる。また、有機多孔質イオン交換体の充填形態が複床の場合、濃縮室の流出入方向に対して積層充填される有機多孔質イオン交換体の順序としては、特に制限されず、濃縮水入口側から有機多孔質陽イオン交換体、有機多孔質陰イオン交換体の順序でも、その逆でも、いずれでもよい。また、異なるイオン交換体同士の端面部分は、大きな隙間が生じない限りは、端面同士が当接あるいは近接させて、積層充填される。このように、濃縮室内に、有機多孔質イオン交換体を均質に積層充填すれば、当該濃縮室を区画する両側のイオン交換膜同士の電気的導通が得られ、イオンの移動が行われ、濃縮水中のイオン濃度勾配を低減することができる。また、これら有機多孔質イオン交換体の形状としては、上記の板状物に制限されず、ブロック状物および不定形状物を1または2以上組合せたものが使用できる。このうち、板状物またはブロック状物が、低電気抵抗を確実に達成できるとともに、製作が容易となる点で好ましい。
第1のモノリスイオン交換体には、前記マクロポアと前記開口(メソポア)で形成される連続気泡とは異なる別途の流路を更に設け、濃縮室の通水差圧を低減させることもできる。また、第2のモノリスイオン交換体には、共連続構造とは異なる別途の流路を更に設け、濃縮室の通水差圧を低減させることもできる。該別途の流路としては、特に制限されないが、例えば、濃縮水流入方向に平行して形成される1以上の貫通穴状の流路、濃縮水流入方向に平行または直行する連続溝で形成される櫛状の流路、濃縮水が濃縮室内を蛇行するように配慮した方向性のないジグザグ状の流路、およびメッシュ状の流路などが挙げられる。これらの流路は、濃縮水流入口から濃縮水流出口まで連続するものであっても、不連続のものであってもよい。これらの流路は、連続気泡構造を形成する重合時に容器形状を選択することにより形成でき、また、重合後の連続気泡構造を加工して形成することもできる。流路の径または隙間寸法は、通常、1〜5mm程度である。更に、別途の流路、すなわち、隙間を確保し、かつ連続気泡構造を有する有機多孔質イオン交換体の物理的強度を補強するために、ポリオレフィン系高分子の斜交網などを有機多孔質イオン交換体と共存させて充填してもよい。
濃縮室の厚みは、0.2〜15mm、好ましくは0.5〜12mm、さらに好ましくは、3〜10mmとすることが好ましい。従来つまり濃縮室にイオン交換体無充填の場合、濃縮室の厚みは、電気抵抗が大きくなるため、大きくは採れず、その上限値はせいぜい2〜3mmであったところ、本発明においては、その数倍もの厚みを採ることができるため、スケールの発生は確実に抑制できる。濃縮室の厚みが0.2mm未満であると、例え、連続気泡構造を有する有機多孔質イオン交換体の陰イオン交換体単床とメッシュ状の陽イオン交換体単床を充填しても、スケール発生防止効果が得られ難くなり、通水差圧も上昇しやすい。また、15mmを超えると、装置全体の厚みが大きくなり好ましくない。
前記電気式脱イオン水製造装置は、通常以下のように運転される。すなわち、陰極6と陽極7間に直流電流を通じ、また被処理水流入ライン11から被処理水が流入するとともに、濃縮水流入ライン15から濃縮水が流入し、かつ陰極水流入ライン17a、陽極水流入ライン17bからそれぞれ陰極水、陽極水が流入する。被処理水流入ライン11から流入した被処理水は第2小脱塩室d2、d4、d6、d8を流下し、イオン交換体8の充填層を通過する際に不純物イオンが除去される。更に、第2小脱塩室の処理水流入ライン12を通った流出水は、第1小脱塩室の被処理水流入ライン13を通って第1小脱塩室d1d3d5d7流下し、ここでもイオン交換体8の充填層を通過する際に不純物イオンが除去され脱イオン水が脱イオン水流出ライン14から得られる。また、濃縮水流入ライン15から流入した濃縮水は各濃縮室1を上昇し、カチオン交換膜3及びアニオン交換膜4を介して移動してくる不純物イオン、更には後述するように、濃縮室内の有機多孔質イオン体を介して移動してくる不純物イオンを受け取り、不純物イオンを濃縮した濃縮水として濃縮室流出ライン16から流出され、更に陰極水流入ライン17aから流入した陰極水は陰極水流出ライン18aから流出され、陽極水流入ライン17bから流入した陽極水は、陽極水流出ライン18bから流出される。上述の操作によって、被処理水中の不純物イオンは電気的に除去される。
次に、本発明の電気式脱イオン水製造装置の濃縮室におけるスケール発生防止作用を、図15〜図17を参照して説明する。図15は図13の電気式脱イオン水製造装置を更に簡略的に示した図、図16及び図17は図15の電気式脱イオン水製造装置の濃縮室における不純物イオンの移動を説明する図をそれぞれ示す。図15において、被処理水が最初に流入する第2小脱塩室d2、d4、d6にはアニオン交換体(A)を充填し、第2小脱塩室の流出水が流入する第1小脱塩室d1、d3、d5にはカチオン交換体とアニオン交換体の混合イオン交換体(M)を充填し、4つの濃縮室1には濃縮室の流出入方向に沿って、流出側から流入側へ順に、3次元網目状の連続気泡構造を有する有機多孔質陰イオン交換体単床(A)と同じ連続気泡構造の有機多孔質陽イオン交換体単床(C)を交互に4床充填してある。
図16において、濃縮室1の多孔質陰イオン交換体単床領域1aでは、アニオン交換膜aを透過した炭酸イオンなどのアニオンは、濃縮水中に移動せず、導電性の高い有機多孔質陰イオン交換体Aを通り、カチオン交換膜cまで移動し、有機多孔質陰イオン交換体Aとカチオン交換膜cの当接部分101において初めて濃縮水中に移動する(図16中、右向き矢印)。このため、炭酸イオンなどのアニオンは、カチオン交換膜cに電気的に引き寄せられた状態で、濃縮室1から排出される。すなわち、有機多孔質陰イオン交換体単床領域1aにおける炭酸イオンなどのアニオンについて、濃縮水中の濃度勾配は図17のように分布する。一方、有機多孔質陰イオン交換体単床領域1aにおいて、カチオン交換膜cを透過したカルシウムイオンなどのカチオンは、濃縮水中を移動する。このため、カルシウムイオン濃度が最も高くなる部分において、スケールを形成する対イオンである炭酸イオンは、有機多孔質陰イオン交換体単床部分を移動するため、スケールを発生し難い。
同様に、濃縮室1の有機多孔質陽イオン交換体単床領域1bでは、カチオン交換膜cを透過したカルシウムイオンなどのカチオンは濃縮水中に移動せず、導電性の高い有機多孔質陽イオン交換体Cを通り、アニオン交換膜aまで移動し、有機多孔質陽イオン交換体Cとアニオン交換膜aの当接部分102において、初めて濃縮水中に移動する(図16中、左向き矢印)。このため、カルシウムイオンなどのカチオンは、アニオン交換膜aに電気的に引き寄せられた状態で、濃縮室1から排出される。すなわち、有機多孔質陽イオン交換体単床領域1bにおけるカルシウムイオンなどのカチオンについて、濃縮水中の濃度は図17のように分布する。一方、アニオン交換膜aを透過した炭酸イオンなどのアニオンは、濃縮水中を移動する。このため、炭酸イオンの濃度が最も高くなる部分において、スケールを形成する対イオンであるカルシウムイオンは、有機多孔質陽イオン交換体単床部分を移動するため、スケールを発生し難い。このようなイオン移動は、マグネシウムイオン、水素イオン、水酸化物イオンにおいても同様である。また、濃縮室内部に有機多孔質陰イオン交換体単床領域1aと有機多孔質陽イオン交換体単床領域1bを積層することによって、有機多孔質陽イオン交換体が充填された部分に移動してきたアニオンは、導電性の低い濃縮水を移動するよりも、導電性の高いアニオン交換膜を伝わり、有機多孔質陰イオン交換体1aまで達し、ここで導電性の高い有機多孔質陰イオン交換体を移動する。このイオンの移動形態は、カチオンについても同様である。すなわち、濃縮水中を通って対面のイオン交換膜付近に移動するイオンは、ほとんどなく、ほとんどのイオンは有機多孔質陽イオン交換体、有機多孔質陰イオン交換体を通って対面のイオン交換膜付近まで移動する。
従来つまり濃縮室にイオン交換体無充填の場合の電気式脱イオン水製造装置では、イオン交換体を再生する目的で印加している電流が水の電気分解を促進し、イオン交換体無充填の濃縮室のイオン交換膜表面でpHシフトを引き起こし、アニオン交換膜近傍ではpHが高く、カチオン交換膜近傍ではpHが低くなり、かつ図18に示すように炭酸イオンとカルシウムイオンがともに、高い濃度勾配で接することから、濃縮室側のアニオン交換膜表面でスケールが発生し易くなっていた。しかしながら、本例では、前述のごとく、濃縮水中のカチオン濃度が最も高いと思われるアニオン交換膜a表面近傍の濃縮水中には、高い濃度の炭酸イオンなどのアニオンが存在しないから、濃縮室内において、炭酸イオンとカルシウムイオンが結合して炭酸カルシウムを生成することがない(図17参照)。従って、本例の電気式脱イオン水製造装置を長時間連続運転しても、濃縮室にスケールが発生することはない。また、濃縮室1は密度の高いイオン交換基を充填層全体に均質に有する有機多孔質イオン交換体が充填されているので、導電性が高まり、運転電圧を低減して消費電力を節約できる。
本発明において、被処理水の第1小脱塩室及び第2小脱塩室での流れ方向は、特に制限されず、上記実施の形態の他、第1小脱塩室と第2小脱塩室での流れ方向が異なっていても良い。また、被処理水が流入する小脱塩室は、上記実施の形態の他、まず、被処理水を第1小脱塩室に流入させ、流下した後、第1小脱塩室の流出水を第2小脱塩室に流入させても良い。また、濃縮水の流れ方向も適宜決定される。
本発明の実施の形態における他の電気式脱イオン水製造装置を図19を参照して説明する。図19の電気式脱イオン水製造装置100は、図13に示される改良型電気式脱イオン水製造装置10における中間イオン交換膜のない従前型EDIであり、脱塩室内における被処理水の流れが1パスである。即ち、電気式脱イオン水製造装置100において、一側のカチオン交換膜101、及び他側のアニオン交換膜102で区画される室にイオン交換体103を充填して脱塩室104を構成し、カチオン交換膜101、アニオン交換膜102を介して脱塩室104の両側に濃縮室105を設け、これらの脱塩室104および濃縮室105を陽極110を備えた陽極室と陰極109を備えた陰極室の間に配置し、電圧を印加しながら脱塩室104に被処理水を流入し、次いで、濃縮室105に濃縮水を流入して被処理水中の不純物イオンを除去し、脱イオン水を得る方法において、濃縮室105は、上記実施の形態例と同様の構成を採ることにより、同様の作用効果を奏する。尚、符号111は被処理水流入ライン、114は脱イオン水流出ライン、115は濃縮水流入ライン、116は濃縮水流出ライン、117は電極水流入ライン、118は電極水流出ラインをそれぞれ示す。また、本発明の電気式脱イオン水製造装置の形態としては、特に制限されず、スパイラル型、同心円筒型および平板積層型などのものが挙げられる。
本発明の脱イオン水製造方法に用いる被処理水としては、特に制限されず、例えば、井水、水道水、下水、工業用水、河川水、半導体製造工場の半導体デバイスなどの洗浄排水または濃縮室からの回収水などを逆浸透膜処理した透過水、また、半導体製造工場等のユースポイントで使用された回収水であって、逆浸透膜処理がされていない水が挙げられる。このようにして供給される被処理水の一部を濃縮水としても使用する場合、脱塩室に供給される被処理水及び濃縮室に供給される濃縮水を軟化後、使用することがスケール発生を更に抑制できる点で好ましい。軟化の方法は、特に制限されないが、ナトリウム形のイオン交換樹脂等を用いた軟化器が好適である。
(実施例)
次に、実施例を挙げて、本発明を更に具体的に説明するが、これは単に例示であって本発明を制限するものではない。
<第1のモノリスイオン交換体の製造(参考例1)>
(I工程;モノリス中間体の製造)
スチレン19.2g、ジビニルベンゼン1.0g、ソルビタンモノオレエート(以下SMOと略す)1.0gおよび2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)0.26gを混合し、均一に溶解させた。次に,当該スチレン/ジビニルベンゼン/SMO/2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)混合物をTHF1.8mlを含有する180gの純水に添加し、遊星式撹拌装置である真空撹拌脱泡ミキサー(イーエムイー社製)を用いて5〜20℃の温度範囲において減圧下撹拌して、油中水滴型エマルションを得た。このエマルションを反応容器に速やかに移し、密封後静置下で60℃、24時間重合させた。重合終了後、内容物を取り出し、イソプロパノールで抽出した後、減圧乾燥して、連続マクロポア構造を有するモノリス中間体を製造した。水銀圧入法により測定した該モノリス中間体のマクロポアとマクロポアが重なる部分の開口(メソポア)の平均直径は56μm、全細孔容積は7.5ml/gであった。
(モノリスの製造)
次いで、スチレン49.0g、ジビニルベンゼン1.0g、1-デカノール50g、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)0.5gを混合し、均一に溶解させた(II工程)。次に上記モノリス中間体を外径70mm、厚さ約20mmの円盤状に切断して、7.6g分取した。分取したモノリス中間体を内径90mmの反応容器に入れ、当該スチレン/ジビニルベンゼン/1-デカノール/2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)混合物に浸漬させ、減圧チャンバー中で脱泡した後、反応容器を密封し、静置下60℃で24時間重合させた。重合終了後、厚さ約30mmのモノリス状の内容物を取り出し、アセトンでソックスレー抽出した後、85℃で一夜減圧乾燥した(III工程)。
このようにして得られたスチレン/ジビニルベンゼン共重合体よりなる架橋成分を1.3モル%含有したモノリス(乾燥体)の内部構造を、SEMにより観察した結果を図1に示す。図1のSEM画像は、モノリスを任意の位置で切断して得た切断面の任意の位置における画像である。図1から明らかなように、当該モノリスは連続マクロポア構造を有しており、連続マクロポア構造体を構成する骨格が比較例の図12のものと比べて遥かに太く、また、骨格を構成する壁部の厚みが厚いものであった。
次ぎに、得られたモノリスを主観を排除して上記位置とは異なる位置で切断して得たSEM画像2点、都合3点から壁部の厚みと断面に表れる骨格部面積を測定した。壁部の厚みは1つのSEM写真から得た8点の平均であり、骨格部面積は画像解析により求めた。なお、壁部は前述の定義のものである。また、骨格部面積は3つのSEM画像の平均で示した。この結果、壁部の平均厚みは30μm、断面で表れる骨格部面積はSEM画像中28%であった。また、水銀圧入法により測定した当該モノリスの開口の平均直径は31μm、全細孔容積は2.2ml/gであった。結果を表1及び表2にまとめて示す。表1中、仕込み欄は左から順に、II工程で用いたビニルモノマー、架橋剤、I工程で得られたモノリス中間体、II工程で用いた有機溶媒を示す。
(モノリスカチオン交換体の製造)
上記の方法で製造したモノリスを、外径70mm、厚み約15mmの円盤状に切断した。モノリスの重量は27gであった。これにジクロロメタン1500mlを加え、35℃で1時間加熱した後、10℃以下まで冷却し、クロロ硫酸145gを徐々に加え、昇温して35℃で24時間反応させた。その後、メタノールを加え、残存するクロロ硫酸をクエンチした後、メタノールで洗浄してジクロロメタンを除き、更に純水で洗浄して連続マクロポア構造を有するモノリスカチオン交換体を得た。
得られたカチオン交換体の反応前後の膨潤率は1.7倍であり、体積当りのイオン交換容量は、水湿潤状態で0.67mg当量/mlであった。水湿潤状態での有機多孔質イオン交換体の開口の平均直径を、有機多孔質体の値と水湿潤状態のカチオン交換体の膨潤率から見積もったところ54μmであり、モノリスと同様の方法で求めた骨格を構成する壁部の平均厚みは50μm、骨格部面積はSEM写真の写真領域中28%、全細孔容積は2.2ml/gであった。該モノリスカチオン交換体のナトリウムイオンに関するイオン交換帯長さは、LV=20m/hにおいて22mmであった。また、水を透過させた際の圧力損失の指標である差圧係数は、0.016MPa/m・LVであった。その結果を表2にまとめて示す。
次に、モノリスカチオン交換体中のスルホン酸基の分布状態を確認するため、EPMAにより硫黄原子の分布状態を観察した。結果を図2及び図3に示す。図2は硫黄原子のカチオン交換体の表面における分布状態を示したものであり、図3は硫黄原子のカチオン交換体の断面(厚み)方向における分布状態を示したものである。図2及び図3より、スルホン酸基はカチオン交換体の骨格表面及び骨格内部(断面方向)にそれぞれ均一に導入されていることがわかる。
<第1のモノリスイオン交換体の製造(参考例2〜11)>
(モノリスの製造)
スチレンの使用量、架橋剤の種類と使用量、有機溶媒の種類と使用量、スチレン及びジビニルベンゼン含浸重合時に共存させるモノリス中間体の多孔構造、架橋密度および使用量を表1に示す配合量に変更した以外は、参考例1と同様の方法でモノリスを製造した。その結果を表1及び表2に示す。なお、参考例2〜11のSEM画像(不図示)及び表2から、参考例2〜11のモノリスの開口の平均直径は22〜70μmと大きく、骨格を構成する壁部の平均厚みも25〜50μmと厚く、骨格部面積はSEM画像領域中26〜44%と骨太のモノリスであった。
(モノリスカチオン交換体の製造)
上記の方法で製造したモノリスを、それぞれ参考例1と同様の方法でクロロ硫酸と反応させ、連続マクロポア構造を有するモノリスカチオン交換体を製造した。その結果を表2に示す。参考例2〜11のモノリスカチオン交換体の開口の平均直径は46〜138μmであり、骨格を構成する壁部の平均厚みも45〜110μmと厚く、骨格部面積はSEM画像領域中26〜44%である。イオン交換帯長さも従来のものよりも短く、差圧係数も低い値を示した。また、参考例8のモノリスカチオン交換体については、機械的特性の評価も行なった。
(モノリスカチオン交換体の機械的特性評価)
参考例8で得られたモノリスカチオン交換体を、水湿潤状態で4mm×5mm×10mmの短冊状に切り出し、引張強度試験の試験片とした。この試験片を引張試験機に取り付け、ヘッドスピードを0.5mm/分に設定し、水中、25℃にて試験を行った。その結果、引張強度、引張弾性率はそれぞれ45kPa、50kPaであり、従来のモノリスカチオン交換体に比べて格段に大きな値を示した。また、引張破断伸びは25%であり、従来のモノリスカチオン交換体よりも大きな値であった。
参考例12及び13
(モノリスの製造)
スチレンの使用量、架橋剤の使用量、有機溶媒の使用量を表1に示す配合量に変更した以外は、参考例1と同様の方法で参考例4と同じ組成・構造のモノリスを製造した。なお、参考例13は内径75mmの反応容器に代えて、内径110mmの反応容器を用いた以外は、参考例12と同様の方法で行ったものである。その結果を表1及び表2に示す。
(モノリスアニオン交換体の製造)
上記の方法で製造したモノリスを、外径70mm、厚み約15mmの円盤状に切断した。これにジメトキシメタン1400ml、四塩化スズ20mlを加え、氷冷下クロロ硫酸560mlを滴下した。滴下終了後、昇温して35℃、5時間反応させ、クロロメチル基を導入した。反応終了後、母液をサイフォンで抜き出し、THF/水=2/1の混合溶媒で洗浄した後、更にTHFで洗浄した。このクロロメチル化モノリス状有機多孔質体にTHF1000mlとトリメチルアミン30%水溶液600mlを加え、60℃、6時間反応させた。反応終了後、生成物をメタノール/水混合溶媒で洗浄し、次いで純水で洗浄して
単離した。
参考例12及び参考例13のアニオン交換体の体積当りのイオン交換容量、水湿潤状態での有機多孔質イオン交換体の開口の平均直径、モノリスと同様の方法で求めた骨格を構成する壁部の平均厚み、骨格部面積(SEM写真の写真領域中に占める割合)、全細孔容積、イオン交換帯長さ及び差圧係数などを表2にまとめて示した。
次に、多孔質アニオン交換体中の四級アンモニウム基の分布状態を確認するため、アニオン交換体を塩酸水溶液で処理して塩化物型とした後、EPMAにより塩素原子の分布状態を観察した。その結果、塩素原子はアニオン交換体の骨格表面のみならず、骨格内部にも均一に分布しており、四級アンモニウム基がアニオン交換体中に均一に導入されていることが確認できた。
<第2のモノリスイオン交換体の製造(参考例14)>
(I工程;モノリス中間体の製造)
スチレン5.4g、ジビニルベンゼン0.17g、ソルビタンモノオレエート(以下SMOと略す)1.4gおよび2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)0.26gを混合し、均一に溶解させた。次に、当該スチレン/ジビニルベンゼン/SMO/2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)混合物を180gの純水に添加し、遊星式撹拌装置である真空撹拌脱泡ミキサー(イーエムイー社製)を用いて5〜20℃の温度範囲において減圧下撹拌して、油中水滴型エマルションを得た。このエマルションを速やかに反応容器に移し、密封後静置下で60℃、24時間重合させた。重合終了後、内容物を取り出し、メタノールで抽出した後、減圧乾燥して、連続マクロポア構造を有するモノリス中間体を製造した。このようにして得られたモノリス中間体(乾燥体)の内部構造をSEM画像(図7)により観察したところ、隣接する2つのマクロポアを区画する壁部は極めて細く棒状であるものの、連続気泡構造を有しており、水銀圧入法により測定したマクロポアとマクロポアが重なる部分の開口(メソポア)の平均直径は70μm、全細孔容積は21.0ml/gであった。
(共連続構造モノリスの製造)
次いで、スチレン76.0g、ジビニルベンゼン4.0g、1-デカノール120g、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)0.8gを混合し、均一に溶解させた(II工程)。次に上記モノリス中間体を直径70mm、厚さ約40mmの円盤状に切断して4.1gを分取した。分取したモノリス中間体を内径75mmの反応容器に入れ、当該スチレン/ジビニルベンゼン/1-デカノール/2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)混合物に浸漬させ、減圧チャンバー中で脱泡した後、反応容器を密封し、静置下60℃で24時間重合させた。重合終了後、厚さ約60mmのモノリス状の内容物を取り出し、アセトンでソックスレー抽出した後、85℃で一夜減圧乾燥した(III工程)。
このようにして得られたスチレン/ジビニルベンゼン共重合体よりなる架橋成分を3.2モル%含有したモノリス(乾燥体)の内部構造をSEMにより観察したところ、当該モノリスは骨格及び空孔はそれぞれ3次元的に連続し、両相が絡み合った共連続構造であった。また、SEM画像から測定した骨格の太さは10μmであった。また、水銀圧入法により測定した当該モノリスの三次元的に連続した空孔の大きさは17μm、全細孔容積は2.9ml/gであった。その結果を表3及び4にまとめて示す。表4中、骨格の太さは骨格の直径で表した。
(共連続構造モノリス状カチオン交換体の製造)
上記の方法で製造したモノリスを、直径75mm、厚み約15mmの円盤状に切断した。モノリスの重量は18gであった。これにジクロロメタン1500mlを加え、35℃で1時間加熱した後、10℃以下まで冷却し、クロロ硫酸99gを徐々に加え、昇温して35℃で24時間反応させた。その後、メタノールを加え、残存するクロロ硫酸をクエンチした後、メタノールで洗浄してジクロロメタンを除き、更に純水で洗浄して共連続構造を有するモノリスカチオン交換体を得た。
得られたカチオン交換体を一部切り出し、乾燥させた後、その内部構造をSEMにより観察したところ、当該モノリスカチオン体は共連続構造を維持していることを確認した。そのSEM画像を図8に示す。また、該カチオン交換体の反応前後の膨潤率は1.4倍であり、体積当りのイオン交換容量は水湿潤状態で0.74mg当量/mlであった。水湿潤状態でのモノリスの連続空孔の大きさを、モノリスの値と水湿潤状態のカチオン交換体の膨潤率から見積もったところ24μmであり、骨格の直径は14μm、全細孔容積は2.9ml/gであった。
また、水を透過させた際の圧力損失の指標である差圧係数は、0.052MPa/m・LVであった。更に、該モノリスカチオン交換体のナトリウムイオンに関するイオン交換帯長さを測定したところ、LV=20m/hにおけるイオン交換帯長さは16mmであり、市販の強酸性カチオン交換樹脂であるアンバーライトIR120B(ロームアンドハース社製)の値(320mm)に比べて圧倒的に短いばかりでなく、従来の連続気泡構造を有するモノリス状多孔質カチオン交換体の値に比べても短かった。その結果を表4にまとめて示す。
次に、モノリスカチオン交換体中のスルホン酸基の分布状態を確認するため、EPMAにより硫黄原子の分布状態を観察した。その結果を図9及び図10に示す。図9及び図10共に、左右の写真はそれぞれ対応している。図9は硫黄原子のカチオン交換体の表面における分布状態を示したものであり、図10は硫黄原子のカチオン交換体の断面(厚み)方向における分布状態を示したものである。図9左側の写真中、左右傾斜して延びるものが骨格部であり、図10左側の写真中、2つの円形状は骨格の断面である。図9及び図10より、スルホン酸基はカチオン交換体の骨格表面及び骨格内部(断面方向)にそれぞれ均一に導入されていることがわかる。
<第2のモノリスイオン交換体の製造(参考例15〜17)>
(共連続構造を有するモノリスの製造)
スチレンの使用量、架橋剤の使用量、有機溶媒の使用量、スチレン及びジビニルベンゼン含浸重合時に共存させるモノリス中間体の多孔構造、架橋密度及び使用量を表3に示す配合量に変更した以外は、参考例14と同様の方法で共連続構造を有するモノリスを製造した。なお、参考例17は内径75mmの反応容器に代えて、内径110mmの反応容器を用いた以外は、参考例14と同様の方法で行ったものである。その結果を表3及び表4に示す。
(共連続構造を有するモノリスカチオン交換体の製造)
上記の方法で製造したモノリスを、それぞれ参考例14と同様の方法でクロロ硫酸と反応させ、共連続構造を有するモノリスカチオン交換体を製造した。その結果を表4に示す。また、得られた共連続構造を有するモノリスカチオン交換体の内部構造は、不図示のSEM画像及び表4から参考例15〜17で得られたモノリスカチオン交換体はイオン交換体長さは従来のものよりも短く、差圧係数も小さい値を示した。また、参考例15のモノリスカチオン交換体については、機械的特性の評価も行なった。
(モノリスカチオン交換体の機械的特性評価)
参考例15で得られたモノリスカチオン交換体を、水湿潤状態で4mm×5mm×10mmの短冊状に切り出し、引張強度試験の試験片とした。この試験片を引張試験機に取り付け、ヘッドスピードを0.5mm/分に設定し、水中、25℃にて試験を行った。その結果、引張強度、引張弾性率はそれぞれ23kPa、15kPaであり、従来のモノリスカチオン交換体に比べて格段に大きな値を示した。また、引張破断伸びは50%であり、従来のモノリスカチオン交換体よりも大きな値であった。
参考例18及び19
(共連続構造を有するモノリスの製造)
スチレンの使用量、架橋剤の使用量、有機溶媒の使用量、スチレン及びジビニルベンゼン含浸重合時に共存させるモノリス中間体の多孔構造、架橋密度及び使用量を表3に示す配合量に変更した以外は、参考例14と同様の方法で共連続構造を有するモノリスを製造した。なお、参考例19は内径75mmの反応容器に代えて、内径110mmの反応容器を用いた以外は、参考例18と同様の方法で行ったものである。その結果を表3及び表4に示す。
(共連続気泡構造を有するモノリスアニオン交換体の製造)
上記の方法で製造したモノリスを、直径70mm、厚み約15mmの円盤状に切断した。これにジメトキシメタン1400ml、四塩化スズ20mlを加え、氷冷下クロロ硫酸560mlを滴下した。滴下終了後、昇温して35℃で5時間反応させ、クロロメチル基を導入した。反応終了後、母液をサイフォンで抜き出し、THF/水=2/1の混合溶媒で洗浄した後、更にTHFで洗浄した。このクロロメチル化モノリス状有機多孔質体にTHF1000mlとトリメチルアミン30%水溶液600mlを加え、60℃、6時間反応させた。反応終了後、生成物をメタノール/水混合溶媒で洗浄し、次いで純水で洗浄して単離した。
参考例18及び参考例19のアニオン交換体の体積当りのイオン交換容量、水湿潤状態での有機多孔質イオン交換体の連続空孔の平均直径、モノリスと同様の方法で求めた骨格の太さ、全細孔容積、イオン交換帯長さ及び差圧係数などを表4にまとめて示した。また、得られた共連続構造を有するモノリスアニオン交換体の内部構造はSEM画像(不図示)により観察した。
次に、モノリスアニオン交換体中の四級アンモニウム基の分布状態を確認するため、アニオン交換体を塩酸水溶液で処理して塩化物型とした後、EPMAにより塩素原子の分布状態を観察した。その結果、塩素原子はアニオン交換体の表面のみならず、内部にも均一に分布しており、四級アンモニウム基がアニオン交換体中に均一に導入されていることが確認できた。
参考例20
(連続マクロポア構造を有するモノリス状有機多孔質体(公知品)の製造)
特開2002−306976号記載の製造方法に準拠して連続マクロポア構造を有するモノリス状有機多孔質体を製造した。すなわち、スチレン19.2g、ジビニルベンゼン1.0g、SMO1.0gおよび2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)0.26gを混合し、均一に溶解させた。次に,当該スチレン/ジビニルベンゼン/SMO/2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)混合物を180gの純水に添加し、遊星式撹拌装置である真空撹拌脱泡ミキサー(イーエムイー社製)を用いて5〜20℃の温度範囲において減圧下撹拌して、油中水滴型エマルションを得た。このエマルションを反応容器に速やかに移し、密封後静置下で60℃、24時間重合させた。重合終了後、内容物を取り出し、イソプロパノールで抽出した後、減圧乾燥して、連続マクロポア構造を有するモノリス状有機多孔質体を製造した。
このようにして得られたスチレン/ジビニルベンゼン共重合体よりなる架橋成分を3.3モル%含有した有機多孔質体の内部構造を表すSEMは、図12と同様の構造であった。図12から明らかなように、当該有機多孔質体は連続マクロポア構造を有しているが、連続マクロポア構造体の骨格を構成する壁部の厚みは実施例に比べて薄く、また、SEM画像から測定した壁部の平均厚みは5μm、骨格部面積はSEM画像領域中10%であった。また、水銀圧入法により測定した当該有機多孔質体の開口の平均直径は29μm、全細孔容積は、8.6ml/gであった。その結果を表5にまとめて示す。表1、2及び5中、メソポア直径は開口の平均直径を意味する。また、表1〜5中、厚み、骨格直径、空孔の値はそれぞれ平均を示す。
(連続マクロポア構造を有するモノリス状有機多孔質カチオン交換体(公知品)の製造)
上記の方法で製造した有機多孔質体を、外径70mm、厚み約15mmの円盤状に切断した。有機多孔質体の重量は6gであった。これにジクロロメタン1000mlを加え、35℃で1時間加熱した後、10℃以下まで冷却し、クロロ硫酸30gを徐々に加え、昇温して35℃で24時間反応させた。その後、メタノールを加え、残存するクロロ硫酸をクエンチした後、メタノールで洗浄してジクロロメタンを除き、更に純水で洗浄して連続マクロポア構造を有するモノリス状多孔質カチオン交換体を得た。得られたカチオン交換体の反応前後の膨潤率は1.6倍であり、体積当りのイオン交換容量は、水湿潤状態で0.22mg当量/mlと参考例1〜19に比べて小さな値を示した。水湿潤状態での有機多孔質イオン交換体のメソポアの平均直径を、有機多孔質体の値と水湿潤状態のカチオン交換体の膨潤率から見積もったところ46μmであり、骨格を構成する壁部の平均厚み8μm、骨格部面積はSEM画像領域中10%、全細孔容積は、8.6ml/gであった。また、水を透過させた際の圧力損失の指標である差圧係数は、0.013MPa/m・LVであった。結果を表5にまとめて示す。また、参考例17で得られたモノリスカチオン交換体については、機械的特性の評価も行なった。
(従来のモノリスカチオン交換体の機械的特性評価)
参考例17で得られたモノリスカチオン交換体について、参考例8の評価方法と同様の方法で引張試験を行った。その結果、引張強度、引張弾性率はそれぞれ28kPa、12kPaであり、参考例8のモノリスカチオン交換体に比べて低い値であった。また、引張破断伸びも17%であり、本発明のモノリスカチオン交換体よりも小さかった。
参考例21〜23
(連続マクロポア構造を有するモノリス状有機多孔質体の製造)
スチレンの使用量、ジビニルベンゼンの使用量、SMOの使用量を表5に示す配合量に変更した以外は、参考例20と同様の方法で、従来技術により連続マクロポア構造を有するモノリス状有機多孔質体を製造した。結果を表5に示す。また、参考例23のモノリスの内部構造は不図示のSEMにより観察した。なお、参考例23は全細孔容積を最小とする条件であり、油相部に対してこれ以下の水の配合では、開口が形成できない。参考例21〜23のモノリスはいずれも、開口径が9〜18μmと小さく、骨格を構成する壁部の平均厚みも15μmと薄く、また、骨格部面積はSEM画像領域中最大でも22%と少なかった。
(連続マクロポア構造を有するモノリス状有機多孔質カチオン交換体の製造)
上記の方法で製造した有機多孔質体を、参考例20と同様の方法でクロロ硫酸と反応させ、連続マクロポア構造を有するモノリス状多孔質カチオン交換体を製造した。結果を表5に示す。開口直径を大きくしようとすると壁部の厚みが小さくなったり、骨格が細くなったりする。一方、壁部を厚くしたり、骨格を太くしようとすると開口の直径が減少する傾向が認められた。その結果、差圧係数を低く押さえると体積当りのイオン交換容量が減少し、イオン交換容量を大きくすると差圧係数が増大した。
参考例24
II工程で用いる有機溶媒の種類をポリスチレンの良溶媒であるジオキサンに変更したことを除いて、参考例1と同様の方法でモノリスの製造を試みた。しかし、単離した生成物は透明であり、多孔構造の崩壊・消失が示唆された。確認のためSEM観察を行ったが、緻密構造しか観察されず、連続マクロポア構造は消失していた。
参考例25
(多孔質カチオン交換体(公知)の製造)
スチレン27.7g、ジビニルベンゼン6.9g、アゾビスイソブチロニトリル0.14g及びソルビタンモノオレエート3.8gを混合し、均一に溶解させた。次に、当該スチレン/ジビニルベンゼン/アゾビスイソブチロニトリル/ソルビタンモノオレエート混合物を450mlの純水に添加し、ホモジナイザーを用いて2万回転/分で2分間攪拌し、油中水滴型エマルジョンを得た。乳化終了後、油中水滴型エマルジョンをステンレス製のオートクレーブに移し、窒素で十分置換した後密封し、静置下60℃で24時間重合させた。重合終了後、内容物を取り出し、イソプロパノールで18時間ソックスレー抽出し、未反応モノマーとソルビタンモノオレエートを除去した後、40℃で一昼夜減圧乾燥した。このようにして得られたスチレン/ジビニルベンゼン共重合体よりなる架橋成分を14モル%含有した多孔質体5gを分取し、テトラクロロエタン500gを加え、60℃で30分加熱した後、室温まで冷却し、クロロ硫酸25gを徐々に加え、室温で24時間反応させた。その後、酢酸を加え、多量の水中に反応物を投入し、水洗、乾燥して多孔質カチオン交換体を得た。この多孔質体のイオン交換容量は、乾燥多孔質体換算で4.0mg当量/gであり、EPMAを用いた硫黄原子のマッピングにより、スルホン酸基が多孔質体に均一に導入されていることを確認した。また、不図示のSEM観察の結果、この多孔質体の内部構造は、連続気泡構造を有しており、平均径30μmのマクロポアの大部分が重なり合い、マクロポアとマクロポアの重なりで形成されるメソポアの直径の平均値は5μm、全細孔容積は、10.1ml/gであった。また、上記多孔質体を10mmの厚みに切り出し、水透過速度を測定したところ、14,000l/分・m2・MPaであった。
参考例26
(多孔質アニオン交換体(公知)の製造)
スチレン27.7gの代わりに、p- クロロメチルスチレン18.0gを用い、ジビニルベンゼン17.3g、アゾビスイソブチロニトリル0.26gとした以外、実施例1と同様の油中水滴型エマルジョンの重合を行い、p−クロロメチルスチレン/ジビニルベンゼン共重合体よりなる架橋成分を50モル%含有した多孔質体を製造した。この多孔質体5gを分取し、ジオキサン500gを加え80℃で30分加熱した後、室温まで冷却し、トリメチルアミン(30%)水溶液65gを徐々に加え、50℃で3時間反応させた後、室温で一昼夜放置した。反応終了後、多孔質体を取り出し、アセトンで洗浄後水洗し、乾燥して多孔質アニオン交換体を得た。この多孔質体のイオン交換容量は、乾燥多孔質体換算で2.5mg当量/gであり、SIMSにより、トリメチルアンモニウム基が多孔質体に均一に導入されていることを確認した。また、SEM観察の結果、この多孔質体の内部構造は、連続気泡構造を有しており、平均径30μmのマクロポアの大部分が重なり合い、マクロポアとマクロポアの重なりで形成されるメソポアの直径の平均値は4μm、全細孔容積は9.9ml/gであった。また、上記多孔質体を10mmの厚みに切り出し、水透過速度を測定したところ、12,000l/分・m2・MPaであった。
なお、参考例1〜11及び参考例20〜23で製造したモノリスイオン交換体について、差圧係数と体積当りのイオン交換容量の関係を図4に示した。図4から明らかなように、参考例1〜11に対して公知の参考例20〜23は差圧係数とイオン交換容量のバランスが悪いことがわかる。一方、参考例1〜11は体積当りのイオン交換容量が大きく、更に差圧係数も低いことがわかる。
下記装置仕様及び運転条件において、図19と同様の構成で6個の脱イオンモジュールを並設して構成される電気式脱イオン水製造装置を使用した。被処理水は、工業用水の逆浸透膜透過水を用い、その硬度は200μgCaCO3/lであった。また、被処理水の一部を濃縮水及び電極水として使用した。運転時間は4000時間であり、同時間における抵抗率17.9MΩ-cmの処理水を得るための運転条件及び濃縮水の通水差圧(kPa)を表6に示す。
<運転の条件>
・ 電気式脱イオン水製造装置;試作EDI
・ 脱塩室;幅300mm、高さ300mm、厚さ3mm
・ 脱塩室に充填したイオン交換樹脂;アニオン交換樹脂(A)とカチオン交換樹脂(C)の混合イオン交換樹脂(混合比は体積比でA:C=1:1)
・ 濃縮室;幅300mm、高さ300mm、厚さ5mm
・ 濃縮室充填イオン交換体;参考例13の有機多孔質陰イオン交換体単床と参考例 8の有機多孔質陽イオン交換体単床を濃縮水の流出入方向に沿って交互に積層した4床
・ 装置全体の流量;0.5m3/h
・ 濃縮室全体の流量:50L/h
参考例13の有機多孔質陰イオン交換体に代えて、参考例19の有機多孔質陰イオン交換体としたこと、参考例8の有機多孔質陽イオン交換体単床に代えて、参考例17の有機多孔質陽イオン交換体としたこと以外は、実施例1と同様の方法で行った。その結果を表6に示す。
記装置仕様及び運転条件において、図13と同様の構成で3個の脱イオンモジュール(6個の小脱塩室)を並設して構成される電気式脱イオン水製造装置を使用した。被処理水は、工業用水の逆浸透膜透過水を用い、その硬度は200μgCaCO3/lであった。また、被処理水の一部を濃縮水及び電極水として使用した。運転時間は4000時間であり、4000時間後の濃縮室内のスケール発生の有無を観察した。また、同時間における抵抗率17.9MΩ-cmの処理水を得るための運転条件を表6に示す。
<運転の条件>
・ 電気式脱イオン水製造装置;試作EDI
・ 中間イオン交換膜;アニオン交換膜
・ 第1小脱塩室;幅300mm、高さ300mm、厚さ3mm
・ 第1小脱塩室に充填したイオン交換樹脂;アニオン交換樹脂(A)とカチオン交換樹脂(C)の混合イオン交換樹脂(混合比は体積比でA:C=1:1)
・ 第2小脱塩室;幅300mm、高さ300mm、厚さ8mm
・ 第2小脱塩室充填イオン交換樹脂;アニオン交換樹脂
・ 濃縮室;幅300mm、高さ300mm、厚さ5mm
・ 濃縮室充填イオン交換体;参考例13の有機多孔質陰イオン交換体単床と参考例8の有機多孔質陽イオン交換体単床を濃縮水の流出入方向に沿って交互に積層した4床
・ 装置全体の流量;0.5m3/h
・ 濃縮室全体の流量:50L/h
参考例13の有機多孔質陰イオン交換体に代えて、参考例19の有機多孔質陰イオン交換体としたこと、参考例8の有機多孔質陽イオン交換体単床に代えて、参考例17の有機多孔質陽イオン交換体としたこと以外は、実施例3と同様の方法で行った。その結果を表6に示す。
比較例1
参考例13の有機多孔質陰イオン交換体に代えて、参考例26の有機多孔質陰イオン交換体としたこと、参考例8の有機多孔質陽イオン交換体単床に代えて、参考例25の有機多孔質陽イオン交換体としたこと以外は、実施例1と同様の方法で行った。その結果を表6に示す。
比較例2
参考例13の有機多孔質陰イオン交換体に代えて、参考例26の有機多孔質陰イオン交換体としたこと、参考例8の有機多孔質陽イオン交換体単床に代えて、参考例25の有機多孔質陽イオン交換体としたこと以外は、実施例3と同様の方法で行った。その結果を表6に示す。