JP5557285B2 - 車体前部構造 - Google Patents

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Description

本発明は、車両の前後方向にそれぞれ延びる左右一対のサイドメンバと、これら左右サイドメンバの各前端部に架設されて締結されるフロントクロスメンバとを備えた車体前部構造に関するものである。
上記車体前部構造には、従来、下記特許文献1に示されるものがある。この公報のものによれば、車体前部は、車両の前後方向に延びる左右一対のサイドメンバと、車両の幅方向に延び、上記左右サイドメンバの各前端部の端面に架設されるフロントクロスメンバと、軸心が前後方向に延び、上記クロスメンバの長手方向の各端部の後面が上記左右サイドメンバの各前端部の端面に圧接するよう上記クロスメンバの各端部を左右サイドメンバの各前端部に締結する締結具と、上記左右サイドメンバの各前端部の長手方向の中途部に架設されて締結されるラジエータサポートとを備えている。
また、通常、上記左右サイドメンバ前部の基部側には、車両の走行駆動用のエンジンが左右エンジンマウントを介して支持されている。これらエンジンマウントは弾性を有し、エンジン駆動時に生じる振動が上記エンジンマウントの弾性変形により吸収され、上記振動が車体側に伝達されることが防止される。
上記車体前部の各構成部品の組立作業には、その第1例として、従来、次のようなものが提案されている。
即ち、まず、上記左右サイドメンバの各前端部に上記ラジエータサポートが架設されて固着されると共に、上記クロスメンバが架設されて上記締結具により締結される。このように組み立てられた組立体は、車両の平面視で枠形状となるため、十分の剛性を有し、かつ、所望の寸法精度が確保される。そして、次に、この組立体の左右サイドメンバ前部の基部側に上記エンジンを組み付ければ、上記組立作業が終る。
しかし、上記第1例の組立作業の場合には、組立体を形成した後に、この組立体の左右サイドメンバ前部の基部に上記エンジンを組み付けるが、上記組立体におけるラジエータサポートは、通常、上記左右サイドメンバから上方に突出するよう設けられる。このため、上記組立体へのエンジンの組み付け時には、上記ラジエータサポートを回避しながら上記左右サイドメンバ前部の基部側上にエンジンを運ぶ必要がある。しかし、エンジンは質量が大きいものであることから、上記のように、ラジエータサポートを回避しながらエンジンを運ぶということは煩雑であり、このため、上記第1例の組立作業は煩雑になりがちである。
そこで、組立作業の第2例として、従来、次のようなものも提案されている。
即ち、まず、上記左右サイドメンバ前部の基部側にエンジンが組み付けられる。その後、上記左右サイドメンバの各前端部に上記ラジエータサポートが架設されて固着されると共に、上記クロスメンバが架設されて上記締結具により締結される。すると、上記組立作業が終る。
そして、上記第2例の組立作業によれば、左右サイドメンバ前部の基部に対するエンジンの組み付け時に、上記ラジエータサポートが邪魔になることは防止される。よって、その分、上記組立作業は容易にできることとされる。
特開平11−43072号公報
ところで、近時、車両の低燃費、低コスト、軽量化を目的として、車体構成部材の板厚が下げられる傾向にある。このため、これに伴い、上記左右サイドメンバの強度と剛性とが低下しがちとなっている。
このため、前記第2例の組立作業として、左右サイドメンバ前部の基部側に対し前記エンジンマウントを介しエンジンを組み付けた場合には、このエンジンの大きい質量により上記左右サイドメンバの各前端部が下方に撓みがちとなる。また、このように、上記左右サイドメンバの各前端部が上記したエンジンの質量で下方に撓む際には、上記エンジンマウントのわずかな弾性変形を伴いながら、上記左右サイドメンバは、その各前端部が車両の幅方向で互いに離反するよう撓みがちとなる。つまり、上記左右サイドメンバの各前端部につき、車両の幅方向における離間寸法が所定寸法よりも過大である、という寸法誤差が生じがちとなる。
この結果、その後、上記左右サイドメンバの各前端部に上記クロスメンバを組み付けようとしても、上記した寸法誤差により、この組み付けは容易にはできないおそれがある。一方、上記クロスメンバの組み付け時に、左右サイドメンバの各前端部に外力を与えて、車両の幅方向における左右サイドメンバの各前端部の離間寸法を所定寸法に修正し、この所定寸法を維持したままで上記クロスメンバを組み付けることが考えられる。しかし、このような作業は煩雑である。つまり、上記した第2例の組立作業についても煩雑である。
本発明は、上記のような事情に注目してなされたもので、本発明の目的は、車体前部が、車両の前後方向に延びる左右一対のサイドメンバと、これら左右サイドメンバの各前端部に架設されて締結されるフロントクロスメンバとを備えた場合において、この車体前部の組立作業が容易にできるようにすることである。
請求項1の発明は、車両1の前後方向に延びる左右一対のサイドメンバ3,3と、車両1の幅方向に延び、上記左右サイドメンバ3,3の各前端部11の端面11aに架設されるフロントクロスメンバ13と、軸心14が前後方向に延び、上記クロスメンバ13の長手方向の各端部の後面13aが上記左右サイドメンバ3,3の各前端部11の端面11aに圧接するよう上記クロスメンバ13の各端部を左右サイドメンバ3,3の各前端部11に締結する締結具15とを備えた車体前部構造において、
上記左右サイドメンバ3,3の各前端部11の端面11aの外側部と、上記クロスメンバ13の各端部の後面13aの外側部とに、それぞれ車両1の幅方向の外方に向かうに従い後方に向かって傾斜するガイド面31,32を形成し、上記左右サイドメンバ3,3の各前端部11とクロスメンバ13とが前後方向で離間した位置(図1,2中一点鎖線、図3)から、これら左右サイドメンバ3,3の各前端部11とクロスメンバ13とを前後方向で相対的に接近Aさせるとき、上記両ガイド面31,32の互いの摺接により(図1中実線)、上記左右サイドメンバ3,3の各前端部11が車両1の幅方向で互いに接近Bするようにしたことを特徴とする車体前部構造である。
なお、この項において、上記各用語に付記した符号や図面番号は、本発明の技術的範囲を後述の「実施例」の項や図面の内容に限定解釈するものではない。
本発明による効果は、次の如くである。
請求項1の発明は、車両の前後方向に延びる左右一対のサイドメンバと、車両の幅方向に延び、上記左右サイドメンバの各前端部の端面に架設されるフロントクロスメンバと、軸心が前後方向に延び、上記クロスメンバの長手方向の各端部の後面が上記左右サイドメンバの各前端部の端面に圧接するよう上記クロスメンバの各端部を左右サイドメンバの各前端部に締結する締結具とを備えた車体前部構造において、
上記左右サイドメンバの各前端部の端面の外側部と、上記クロスメンバの各端部の後面の外側部とに、それぞれ車両の幅方向の外方に向かうに従い後方に向かって傾斜するガイド面を形成し、上記左右サイドメンバの各前端部とクロスメンバとが前後方向で離間した位置から、これら左右サイドメンバの各前端部とクロスメンバとを前後方向で相対的に接近させるとき、上記両ガイド面の互いの摺接により、上記左右サイドメンバの各前端部が車両の幅方向で互いに接近するようにしている。
ここで、車体前部の組立作業として、上記左右サイドメンバの各前端部に対し上記クロスメンバを組み付ける場合に、仮に、上記左右サイドメンバの各前端部につき、車両の幅方向における離間寸法が所定寸法よりも過大である、という寸法誤差が生じているとする。すると、この場合には、上記左右サイドメンバの各前端部へのクロスメンバの組み付けは煩雑になると考えられる。
しかし、上記発明によれば、左右サイドメンバの各前端部とクロスメンバとが前後方向で離間した位置から、これら左右サイドメンバの各前端部とクロスメンバとを前後方向で相対的に接近させるとき、上記両ガイド面の互いの摺接により、上記左右サイドメンバの各前端部が車両の幅方向で互いに接近するようにしたのであり、このため、上記左右サイドメンバの各前端部とクロスメンバとを前後方向で接近させると共に上記各前端部を車両の幅方向で互いに接近させ、この接近により、上記左右サイドメンバの各前端部の端面とクロスメンバの各端部の後面とが互いに当接したとき、上記左右サイドメンバの各前端部についての離間寸法が所定寸法となるよう予め設定しておけばよい。
そして、上記のように予め設定をしておけば、上記左右サイドメンバの各前端部へのクロスメンバの組み付け以前に、仮に、上記各前端部についての離間寸法が所定寸法よりも過大である、という寸法誤差が生じているとしても、上記左右サイドメンバの各前端部への上記クロスメンバの組み付けが終了すれば、上記各前端部についての離間寸法が自動的に所定寸法となって、寸法精度のよい車体前部が得られる。よって、この車体前部の組立作業は容易かつ円滑にできる。
また、上記したように左右サイドメンバの各前端部へのクロスメンバの組み付け以前に、上記各前端部の間に多少の寸法誤差が生じているとしても、上記組み付けの終了に伴い、寸法精度のよい車体前部が得られる。よって、このように、上記組み付け以前でのある程度の誤差が許容される分、上記各サイドメンバの板厚を多少薄くすることができ、これにより、車体の軽量化、低コスト化ができて有益である。
また、車両の走行中に、その前方の何らかの物体に衝突(前突)したとき、上記クロスメンバに衝撃力が与えられたとする。この際、この衝撃力が車両の幅方向の中央であるか、この中央よりも一側部に偏位しているかにかかわらず、上記衝撃力を与えられたクロスメンバを介し、上記締結具は、その軸心にほぼ直交する方向に剪断力を与えられ、容易に破断するおそれを生じる。
しかし、上記左右サイドメンバの各前端部のガイド面と、上記クロスメンバのガイド面とは、車両の幅方向で互いに当接している。このため、上記剪断力の少なくとも一部は、上記サイドメンバの前端部により担時され、その分、上記締結具への剪断力の負荷が軽減される。よって、上記衝撃力により、上記締結具が容易に破断することは防止され、上記各サイドメンバの各前端部とクロスメンバとの締結状態は強固に維持される。この結果、上記衝撃力は、上記クロスメンバを介し、より確実に上記各サイドメンバ伝達されて、これらが積極的に座屈させられることにより、上記衝撃力が効果的に緩和される。
また、上記した衝撃力の緩和は、上記締結具への剪断力の負荷を軽減して達成されるため、この締結具のボルトの本数を増やしたり、ボルトの直径を大きくすることなく達成できることから、この点でも、車体の軽量化、低コスト化ができて有益である。
図5に相当する図で、左右サイドメンバが撓んだ状態での作用説明図である。 車体前部の斜視図である。 図2の部分拡大展開図である。 車体前部の平面図である。 図4の部分拡大部分断面図である。 図5で示したものの正面図である。 図5で示したものの側面部分断面図である。
本発明の車体前部構造に関し、車体前部が、車両の前後方向に延びる左右一対のサイドメンバと、これら左右サイドメンバの各前端部に架設されて締結されるフロントクロスメンバとを備えた場合において、この車体前部の組立作業が容易にできるようにする、という目的を実現するため、本発明を実施するための形態は、次の如くである。
即ち、車体前部構造は、車両の前後方向に延びる左右一対のサイドメンバと、車両の幅方向に延び、上記左右サイドメンバの各前端部の端面に架設されるフロントクロスメンバと、軸心が前後方向に延び、上記クロスメンバの長手方向の各端部の後面が上記左右サイドメンバの各前端部の端面に圧接するよう上記クロスメンバの各端部を左右サイドメンバの各前端部に締結する締結具とを備える。
上記左右サイドメンバの各前端部の端面の外側部と、上記クロスメンバの各端部の後面の外側部とに、それぞれ車両の幅方向の外方に向かうに従い後方に向かって傾斜するガイド面が形成される。上記左右サイドメンバの各前端部とクロスメンバとが前後方向で離間した位置から、これら左右サイドメンバの各前端部とクロスメンバとを前後方向で相対的に接近させるとき、上記両ガイド面の互いの摺接により、上記左右サイドメンバの各前端部が車両の幅方向で互いに接近するようにしている。
本発明をより詳細に説明するために、その実施例を添付の図に従って説明する。
図2〜7において、符号1は、自動車で例示される車両であり、矢印Frは、この車両1の進行方向の前方を示している。また、下記する左右とは、上記前方に向かっての車両1の幅方向をいうものとする。
上記車両1の車体2前部は板金製で、この車体2前部は、車両1の前後方向にそれぞれ延びる左右一対のサイドメンバ3,3前部と、上記車体2前部の側壁の一部を構成して上下方向に延びる左右一対のフロントピラー4,4と、車両1の幅方向に延び、上記左右フロントピラー4,4のそれぞれ上下方向の中途部同士を結合するフロントカウル5と、車両1の幅方向に延びると共に上記フロントカウル5から下方に延びるダッシュパネル6とを備えている。これらフロントカウル5およびダッシュパネル6の後方における車体2内部が車室7とされる。
上記左右サイドメンバ3,3前部の基部と左右フロントピラー4,4の下端部とは、上記ダッシュパネル6などにより互いに強固に結合されている。上記各サイドメンバ3前部はそれぞれ中空閉断面構造とされ、これら各サイドメンバ3前部、各フロントピラー4、およびフロントカウル5は、車体2前部の骨格部材を構成して、十分の強度と剛性とを備えている。
また、車体2前部は、上記各フロントピラー4の上下方向の中途部と各フロントカウル5の端部との結合部からそれぞれ前方に突出する左右一対のエプロンメンバ9と、上記各サイドメンバ3前部と各エプロンメンバ9とにそれぞれ架設されて強固に支持される左右一対のサスペンションタワー10,10とを備えている。上記各エプロンメンバ9は、車体2前部の骨格部材を構成して、十分の強度と剛性とを備えている。
また、車体2前部は、車両1の幅方向に延び、上記左右サイドメンバ3,3の各前端部11の端面11aに架設されるフロントクロスメンバ13と、軸心14が前後方向に延び、上記クロスメンバ13の各端部の後面13aが左右サイドメンバ3,3の各前端部11の端面11aに圧接するよう上記クロスメンバ13の各端部を上記左右サイドメンバ3,3の各前端部11に締結するそれぞれ複数(2本)の締結具15,15と、上記左右サイドメンバ3,3の各前端部11の長手方向の中途部11bに架設されて締結されるラジエータサポート16とを備えている。
上記各締結具15は、上記各サイドメンバ3の前端部11に固着されるナット19と、上記クロスメンバ13の端部に形成されたボルト挿通孔20を貫通して上記ナット19に螺合されるボルト21とを備えている。上記ボルト挿通孔20は、車体2の幅方向に長い長孔形状とされている。
また、上記左右サイドメンバ3,3のうち、右側のサイドメンバ3の前端部11には、前方に向かってボス部23が突設されている。このボス部23には、車両1の牽引用フックを螺合させる雌ねじ24が形成されている。上記クロスメンバ13の右側端部には、上記ボス部23の前端部を前方に向かって挿通させる孔25が形成されている。
上記左右サイドメンバ3,3の前部、ダッシュパネル6、およびラジエータサポート16で囲まれた空間がエンジンルーム26とされている。このエンジンルーム26において、上記左右サイドメンバ3,3前部の基部側に、車両1の走行駆動用のエンジン27が左右エンジンマウント28,28を介して支持されている。これらエンジンマウント28は弾性を有し、エンジン27駆動時に生じる振動が上記エンジンマウント28の弾性変形により吸収され、上記振動が車体2側に伝達されることが防止される。
上記左右サイドメンバ3,3の各前端部11の端面11aの外側部には、車両1の幅方向の外方に向かうに従い後方に向かって直線的に傾斜するガイド面31が形成されている。一方、上記クロスメンバ13の各端部の後面13aの外側部には、車両1の幅方向の外方に向かうに従い後方に向かって直線的に傾斜する他のガイド面32が形成されている。上記両ガイド面31,32は互いに面接触している。
図1〜3において、上記左右サイドメンバ3,3の各前端部11とクロスメンバ13とが前後方向で離間した位置(図1中一点鎖線)から、これら左右サイドメンバ3,3の各前端部11とクロスメンバ13とを前後方向で相対的に接近Aさせるとき、上記両ガイド面31,32が互いに摺接する場合には(図1中実線)、この摺接の進行により、上記左右サイドメンバ3,3の各前端部11が車両1の幅方向で互いに接近Bさせられるようになっている。
上記車体2前部の組立作業につき、説明する。
まず、上記左右サイドメンバ3,3前部の基部側に上記各エンジンマウント28を介しエンジン27が組み付けられる。ここで、仮に、このエンジン27の大きい質量に基づき、上記各エンジンマウント28が弾性変形して、上記左右サイドメンバ3,3の各前端部11が車両1の幅方向で互いに離反するよう上記左右サイドメンバ3,3が撓んだとする(図1実線、および図4中一点鎖線)。
上記状態において、上記左右サイドメンバ3,3の各前端部11とクロスメンバ13とが前後方向で離間した位置(図1中一点鎖線)から、これら左右サイドメンバ3,3の各前端部11とクロスメンバ13とを前後方向で互いに接近Aさせる。すると、上記左右サイドメンバ3,3の各前端部11のガイド面31と上記クロスメンバ13の各ガイド面32とがそれぞれ互いに当接する。
ここで、上記各締結具15のボルト挿通孔20にそれぞれボルト21を貫通させて、これらボルト21の先端を上記ナット19に螺合させる。そして、上記各ボルト21を捻回すれば、これらボルト21に押動されて上記クロスメンバ13が左右サイドメンバ3,3の各前端部11に、より接近Aし、この際、上記両ガイド面31,32が摺接する(図1中実線)。この摺接により、上記左右サイドメンバ3,3の各前端部11が車両1の幅方向で互いに接近Bさせられる。この場合、上記各ボルト21は、上記左右サイドメンバ3,3の各前端部11と共に車両1の幅方向の内側方に移動する。そこで、上記各ボルト挿通孔20は、車両1の幅方向における上記各ボルト21の移動を許容するよう予め前記したように長孔形状に形成されている。
そして、上記各ボルト21を更に捻回すれば、上記クロスメンバ13は左右サイドメンバ3,3の各前端部11に更に接近Aする。そして、上記クロスメンバ13の各端部の後面13aが左右サイドメンバ3,3の各前端部11の端面11aに圧接すれば、これら左右サイドメンバ3,3へのクロスメンバ13の組み付けが終る。
その後、上記左右サイドメンバ3,3前部の基部側に対しエンジンマウント28を介しエンジン27を組み付けると共に、上記左右サイドメンバ3,3の各前端部11の中途部11bに対しラジエータサポート16を組み付ければ、上記組立作業が終了する。
なお、上記した左右サイドメンバ3,3の各前端部11へのクロスメンバ13の組み付けにおいて、上記左右サイドメンバ3,3の各前端部11の端面11aに、クロスメンバ13の各端部の後面13aを圧接させるまでのことを上記締結具15に依らないで、他の外力で行なってもよい。そして、この場合には、上記外力により上記各前端部11の端面11aに上記クロスメンバ13の後面13aを当接させ、この状態で、上記ナット19に対しボルト21を螺合させるが、この場合には、上記ボルト挿通孔20は、長孔形状に代えて単なる円形孔で足りる。
上記構成によれば、左右サイドメンバ3,3の各前端部11の端面11aの外側部と、クロスメンバ13の各端部の後面13aの外側部とに、それぞれ車両1の幅方向の外方に向かうに従い後方に向かって傾斜するガイド面31,32を形成し、上記左右サイドメンバ3,3の各前端部11とクロスメンバ13とが前後方向で離間した位置(図1,2中一点鎖線、図3)から、これら左右サイドメンバ3,3の各前端部11とクロスメンバ13とを前後方向で相対的に接近Aさせるとき、上記両ガイド面31,32の互いの摺接により(図1中実線)、上記左右サイドメンバ3,3の各前端部11が車両1の幅方向で互いに接近Bするようにしている。
ここで、車体2前部の組立作業として、上記左右サイドメンバ3,3の各前端部11に対し上記クロスメンバ13を組み付ける場合に、仮に、上記左右サイドメンバ3,3の各前端部11につき、車両1の幅方向における離間寸法が所定寸法よりも過大である、という寸法誤差が生じているとする。すると、この場合には、上記左右サイドメンバ3,3の各前端部11へのクロスメンバ13の組み付けは煩雑になると考えられる。
しかし、上記構成によれば、左右サイドメンバ3,3の各前端部11とクロスメンバ13とが前後方向で離間した位置(図1,2中一点鎖線、図3)から、これら左右サイドメンバ3,3の各前端部11とクロスメンバ13とを前後方向で相対的に接近Aさせるとき、上記両ガイド面31,32の互いの摺接により(図1中実線)、上記左右サイドメンバ3,3の各前端部11が車両1の幅方向で互いに接近Bするようにしたのであり、このため、上記左右サイドメンバ3,3の各前端部11とクロスメンバ13とを前後方向で接近Aさせると共に上記各前端部11を車両1の幅方向で互いに接近Bさせ、この接近Bにより、上記左右サイドメンバ3,3の各前端部11の端面11aとクロスメンバ13の各端部の後面13aとが互いに当接したとき、上記左右サイドメンバ3,3の各前端部11についての離間寸法が所定寸法となるよう予め設定しておけばよい。
そして、上記のように予め設定をしておけば、上記左右サイドメンバ3,3の各前端部11へのクロスメンバ13の組み付け以前に、仮に、上記各前端部11についての離間寸法が所定寸法よりも過大である、という寸法誤差が生じているとしても、上記左右サイドメンバ3,3の各前端部11への上記クロスメンバ13の組み付けが終了すれば、上記各前端部11についての離間寸法が自動的に所定寸法となって、寸法精度のよい車体2前部が得られる。よって、この車体2前部の組立作業は容易かつ円滑にできる。
また、上記したように左右サイドメンバ3,3の各前端部11へのクロスメンバ13の組み付け以前に、上記各前端部11の間に多少の寸法誤差が生じているとしても、上記組み付けの終了に伴い、寸法精度のよい車体2前部が得られる。よって、このように、上記組み付け以前でのある程度の誤差が許容される分、上記各サイドメンバ3の板厚を多少薄くすることができ、これにより、車体2の軽量化、低コスト化ができて有益である。
また、上記組立作業において、左右サイドメンバ3,3の各前端部11にクロスメンバ13を接近Aさせる場合、これに連動して上記各前端部11がその内部応力に対抗しながら互いに接近Bさせられるが、このため、上記左右サイドメンバ3,3の各前端部11にクロスメンバ13を接近Aさせる作業は重くなるおそれがある。
しかし、前記構成によれば、左右サイドメンバ3,3の各前端部11へのクロスメンバ13の接近Aは、上記各締結具15のボルト21の捻回という軽作業により達成される。よって、上記組立作業は、より容易かつ円滑にできる。
また、車両1の走行中に、その前方の何らかの物体に衝突(前突)したとき、上記クロスメンバ13に衝撃力Fが与えられたとする。この際、この衝撃力Fが車両1の幅方向の中央であるか、この中央よりも一側部に偏位しているかにかかわらず、上記衝撃力Fを与えられたクロスメンバ13を介し、上記締結具15は、その軸心14にほぼ直交する方向に剪断力を与えられ、容易に破断するおそれを生じる。
しかし、上記左右サイドメンバ3,3の各前端部11のガイド面31と、上記クロスメンバ13のガイド面32とは、車両1の幅方向で互いに当接している。このため、上記剪断力の少なくとも一部は、上記サイドメンバ3,3の前端部11により担時され、その分、上記締結具15への剪断力の負荷が軽減される。よって、上記衝撃力Fにより、上記締結具15が容易に破断することは防止され、上記各サイドメンバ3,3の各前端部11とクロスメンバ13との締結状態は強固に維持される。この結果、上記衝撃力Fは、上記クロスメンバ13を介し、より確実に上記各サイドメンバ3,3伝達されて、これらが積極的に座屈させられることにより、上記衝撃力Fが効果的に緩和される。
また、上記した衝撃力Fの緩和は、上記締結具15への剪断力の負荷を軽減して達成されるため、この締結具15のボルト21の本数を増やしたり、ボルト21の直径を大きくすることなく達成できることから、この点でも、車体2の軽量化、低コスト化ができて有益である。
1 車両
2 車体
3 サイドメンバ
4 フロントピラー
5 フロントカウル
6 ダッシュパネル
7 車室
11 前端部
11a 端面
11b 中途部
13 クロスメンバ
13a 後面
14 軸心
15 締結具
16 ラジエータサポート
26 エンジンルーム
27 エンジン
31 ガイド面
32 ガイド面
A 接近
B 接近
F 衝撃力

Claims (1)

  1. 車両の前後方向に延びる左右一対のサイドメンバと、車両の幅方向に延び、上記左右サイドメンバの各前端部の端面に架設されるフロントクロスメンバと、軸心が前後方向に延び、上記クロスメンバの長手方向の各端部の後面が上記左右サイドメンバの各前端部の端面に圧接するよう上記クロスメンバの各端部を左右サイドメンバの各前端部に締結する締結具とを備えた車体前部構造において、
    上記左右サイドメンバの各前端部の端面の外側部と、上記クロスメンバの各端部の後面の外側部とに、それぞれ車両の幅方向の外方に向かうに従い後方に向かって傾斜するガイド面を形成し、上記左右サイドメンバの各前端部とクロスメンバとが前後方向で離間した位置から、これら左右サイドメンバの各前端部とクロスメンバとを前後方向で相対的に接近させるとき、上記両ガイド面の互いの摺接により、上記左右サイドメンバの各前端部が車両の幅方向で互いに接近するようにしたことを特徴とする車体前部構造。
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