JP5557165B2 - 入力信号処理装置 - Google Patents

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Description

本発明は、特に、静電容量の変化を監視して、被検物の接近または接触を検出する静電容量スイッチを含む入力信号処理装置に関する。
静電容量検出電極と人体間の静電容量を利用して、スイッチやダイヤルなどのHMI(Human-Machine Interface)の操作を推定する方法がある。代表的な方法は次の通りである。
・静電容量に電荷を充電した後、放電に要する時間差から充電された静電容量を測定し、ユーザの操作を推定する。
・静電容量に電荷を充電した後の電圧差を測定し、ユーザの操作を推定する(チャージ・トランスファ方式等、非特許文献1参照)。
(充電した電荷はスイッチを介して別のコンデンサに蓄える場合がある)
・静電容量で発振回路を構成したときの周波数差を測定し、ユーザの操作を推定する。
・送受信電極の間に流れる電流を、人体間との静電容量を介してGND(グランド)接地することによって変化した電流差を測定し、ユーザの操作を推定する。
上述の、いずれの方法も、人体を介した静電容量検出電極とGND間の静電容量を利用し、その静電容量によって決まる時間、電圧、周波数、電流を測定するものである。例えば、チャージ・トランスファ方式では、静電容量検出電極に、一定振幅の連続したパルスなどの駆動電圧を印加し、測定対象に蓄積された電荷を別のコンデンサに移動し、そのコンデンサの充電電圧を測定することで、静電容量を測定している。
上述のような静電容量スイッチを含む静電容量スイッチ装置では、コストを低減するため、半導体などで作られた切替器を用い、時分割で各スイッチを切り替えて(スキャンして)、ユーザのスイッチの操作を推定する構成として、操作入力推定に関する回路は複数のスイッチで共用することが多い。この場合、スイッチのスキャンの周期あるいは順序は、固定されている(特許文献1参照)。
近年、車載機器においても、静電容量方式のスイッチなどのHMIが普及している。車載機器の静電容量方式スイッチにおいては次のような問題がある。
・寒冷時に厚手の手袋を着用して操作することがあるが、厚手の手袋着用時の静電容量検出電極と人体間の静電容量は少なくなるため、わずかな静電容量の変化を測定できる必要がある。
・スイッチによっては高い信頼性を要求される場合もあり、誤動作・非動作をなくす必要がある。これは、静電容量検出電極の面積を大きくすることで、スイッチの感度や信頼性を向上することができるが、車載機器は限られた面積に多数のスイッチを配置する必要があり、静電容量検出電極の面積を大きくできない。また、キーレスシステムの操作キー、GPSなど電波を扱う車載機器が増大しており、搭載機器の発生ノイズに対する要求がより厳しくなっている。
特許第3798428号公報
「トランジスタ技術」2009年8月号(CQ出版社)の特集記事「タッチ・パネルのしくみと使い方」の第2章「タッチ・パネル方式事典」
従来のメカニカル方式のボタンでは、スキャンにかかる時間は、静電容量スイッチ方式と比較して大変短く、ハードウェアの構成が簡単なため、それぞれのボタンにハードウェア(スイッチ等)を用意することが一般的であり、複数のボタンを同時にスキャンできるため、スキャン時間は問題になることは少なかった。
しかし、静電容量検出電極と人の間の静電容量はせいぜい数pFであるため、特許文献1の方法あるいは非特許文献1の方法による測定では、回路内のコンデンサに電荷を蓄積するためには、数万回のスイッチングと電荷転送を行う必要があり、1個の静電容量検出電極のスキャンに数ms程度の時間を要している。このため、測定(すなわち操作の検出)感度を向上させるためには、コンデンサに電荷を蓄積する回数を増大する必要があり、静電容量測定に要する時間が増大してしまう。
また、多数の静電容量スイッチを搭載したシステムで、1つの操作入力推定に関する回路を共用して、時分割で複数のスイッチを1つずつスキャンする場合は、1回あたりのスキャン(走査)時間がさらに増大して応答性が悪化するため、HMIとして問題となる場合があった。
上記問題点を背景として、本発明の課題は、複数のスイッチを順次スキャンする場合でも、応答性を向上できる入力信号処理装置を提供することにある。
課題を解決するための手段および発明の効果
上記課題を解決するための入力信号処理装置は、複数の検出電極への被検物の接近または接触によって、複数の検出電極のそれぞれと被検物との間に生ずる静電容量に基づく複数の入力信号が入力され、予め定められた選択順序に基づいて、複数の入力信号から1つを選択し、選択した入力信号を出力する入力信号選択部と、入力信号選択部が出力した入力信号の状態をサンプリングするサンプリング部と、サンプリングの結果に基づいて、入力信号の変化量を算出する変化量算出部と、を備え、入力信号選択部は、変化量算出部が算出した入力信号の変化量が予め定められた変化量閾値を超えるとき、変化量閾値を超えた入力信号の出力を継続することを前提とする。
前述のように、特に車載機器の静電容量スイッチにおいては、スイッチの感度、信頼性、応答性を両立する必要がある。操作するスイッチが1つの場合(すなわち、複数のスイッチの同時押しをしない場合)、静電容量測定値が変化するスイッチは1つになる。また、ノイズなどによって複数のスイッチの静電容量測定値が変化した場合は、そもそもユーザは操作していないので、応答性の問題は生じない。本発明は、これらのことに着目して、静電容量検出値の変化があった静電スイッチのスキャンを優先して行い(連続してスキャンを行う、あるいはスキャンの頻度を上げる)、電荷の蓄積・移動を高速で行うことで、スイッチ操作の応答性を向上するものである。
この場合スイッチのスキャン周期が十分短く、ノイズ除去のための平滑化処理、閾値判定処理などの所要時間が、スキャン周期よりも小さいものであれば、ユーザの操作に対する応答遅れは生じない。しかし、スイッチの個数が多くなると、スキャン周期は増大し、応答性を維持するのは難しい問題がある。そこで、本発明のスキャンは、必要に応じてスイッチのスキャン頻度をダイナミックに変化する方法を用いている。すなわち、スイッチ操作を速やかに検出したいときは、静電容量のサンプリング値のプラス変化が設定した閾値を越えた場合、優先的に同じスイッチのスキャンを再び行う。
例えば、引き続いて同じスイッチのスキャンを行い、このスイッチのプラス変化がさらに引き続き設定した閾値を越えた場合、設定した許容回数までスキャンを優先的に行う。これにより、サンプリング値にプラス変化があったスイッチの応答性を向上することができる。
また、スライダあるいはタッチパネル上をなぞるなど複数のスイッチ入力(電極)のスキャンが必要な場合は、変化のあった電極の周辺の電極も合わせてスキャンの頻度を上げることで、精度をバランスよく上げることができる。
また、本発明の入力信号処理装置における入力信号選択部は、変化量閾値を超えた入力信号の出力を継続中に、予め定められた優先出力停止条件が成立したとき、現在出力している入力信号の次の選択順序の入力信号を出力する。
上記構成によって、サンプリング値に変化があったスイッチ以外のスイッチの応答性の低下を抑えることができる。
また、本発明の入力信号処理装置は、入力信号の変化量が予め定められた変化量閾値を下回ったときを、優先出力停止条件が成立したとする。
変化量が変化量閾値を下回るということは、ユーザの操作ではないか、サンプリング値がゼロまたは最大値となったか、あるいはユーザの操作が確定したかのいずれかである。上記構成によって、速やかに他のスイッチのスキャンに戻ることができる。
また、本発明の入力信号処理装置は、サンプリングの回数を計測するサンプリング回数計測部を備え、サンプリング回数計測部による計測回数が予め定められた回数に達したとき、優先出力停止条件が成立したとする。
上記構成によって、特定のスイッチのスキャンのみを過度に繰り返し、他のスイッチの応答性が低下することを防止できる。
また、本発明の入力信号処理装置は、サンプリングの結果に基づいて、入力信号を平滑化して平滑出力値を演算する平滑出力値演算部と、平滑出力値演算部の演算回数を計測する演算回数計測部と、を備え、平滑出力値演算部による演算回数が予め定められた回数に達したとき、優先出力停止条件が成立したとする。
上記構成によって、入力信号に対するノイズの影響を除去することができる。ただし、平滑化による応答性低下が発生する。しかし、本発明は、このような応答性低下の改善にも有効である。すなわち、変化が発生した電極は、サンプリングの頻度が増加するので、平滑出力への反映も早く行うことができる。また、速やかに他のスイッチのスキャンに戻ることができる。
また、本発明の入力信号処理装置における入力信号は、アナログ信号である。
上記構成によって、デジタル信号に比べてサンプリング値の変化量が時間に対して緩やかなアナログ信号を入力信号とすることで、より一層本発明の作用効果を得ることが可能となる。
また、本発明の入力信号処理装置における入力信号は、検出電極への被検物の接近または接触によって、検出電極と被検物との間に生ずる静電容量に基づいて生ずるものである。
上記構成によって、上述のような1個の静電容量検出電極のスキャンに数ms程度の時間を要する静電容量スイッチにおいて、より一層本発明の作用効果を得ることが可能となる。
入力信号処理装置の全体構成を示すブロック図。 各スイッチの動作タイミングと、検出電極への印加電圧およびコンデンサの電圧との関係を示す図。 真値、サンプリング値、平滑出力値の関係を示す図。 従来技術によるスイッチ入力処理タイミングを示す図。 本発明のスイッチ入力処理タイミングを示す図。 従来技術によるスイッチ入力処理を説明するフロー図。 本発明のスイッチ入力処理を説明するフロー図。 本発明のスイッチ入力処理の別例を説明するフロー図。
以下、本発明の入力信号処理装置について、図面を用いて説明する。図1に、入力信号処理装置の一つである、上述のチャージ・トランスファ方式による回路構成の一例を示す。入力信号処理装置100は、静電容量検出電極を含んで構成される複数のボタン1〜4、切替スイッチ5、例えば周知のオペアンプ等を含んで構成される増幅器8、周知のADコンバータであるADC9、CPU10、回路全体に電源を供給する電源11、電源11〜切替スイッチ5の出力側の間に設けられた電荷移動用スイッチSW1、切替スイッチ5の出力側〜増幅器8の間に設けられた電荷移動用スイッチSW2、一方が電荷移動用スイッチSW2〜増幅器8の間に接続され他方がGNDに接続された電荷積分用コンデンサ(以下、「コンデンサ」と略称)Ci、コンデンサCiに並列接続された放電抵抗Rb、放電抵抗Rb〜GNDの間に設けられた放電用スイッチSW3を含んで構成される。
切替スイッチ5は、CPU10の制御指令に基づいて、ボタン1〜4のうちの1つを選択してその状態を出力する。なお、切替スイッチ5が本発明の入力信号選択部に相当する。
CPU10は、中央演算処理部ともいわれ、内部にはマイコン、ROM、RAM等を含み、マイコンがROMに記憶された制御プログラムを実行することで、入力信号処理装置100としての各種動作を行う。また、CPU10は、フラッシュメモリ等の不揮発性記憶媒体で構成されるメモリ10aを含んでいる。メモリ10aは入力信号処理装置100の動作に必要な情報を記憶している。なお、CPU10が本発明のサンプリング部,変化量算出部,サンプリング回数計測部,平滑出力値演算部,演算回数計測部に相当する。
電源11から、例えばCPU10からのクロック制御によって、電荷移動用スイッチSW1のON/OFF状態を切り替え、CPU10の制御指示により切替スイッチ5でボタン1を選択し、ボタン1に電圧Vcを印加すると、ボタン1とユーザ(人)14との間の静電容量Csおよびとユーザ14とGNDの間の静電容量Cbに応じた電荷がボタン1に蓄積され、次に、電荷移動用スイッチSW1がOFF状態のときに電荷移動用スイッチSW2をON状態とし、ボタン1に蓄積されている電荷をコンデンサCiに転送する。そして、これらの、電荷の蓄積、転送を繰り返した後に、電荷量に応じて発生するCiの電圧を測定した後に、放電用スイッチSW3をON状態としてCiの電荷を放電抵抗Rbで消費することで放電する(図2参照)。
静電容量Csおよび静電容量Cbに蓄積された電荷に応じて発生するCiの電圧は、増幅器8において所定の増幅率によって増幅され、ADC9でAD変換が行われ、CPU10において、電圧値あるいは電圧値の変化が、ユーザの手指等の、被検物の接近あるいは接触によるものかどうかを判定する。
図2に、CPU10の制御指示により開閉動作が行われる電荷移動用スイッチSW1およびSW2、放電用スイッチSW3の動作タイミングと、静電容量検出電極であるボタン1(他のボタン2〜4も同様)への印加電圧VcおよびコンデンサCiの電圧(Ci電圧)との関係を示す。周知のとおり、コンデンサの静電容量Caと、コンデンサに蓄積される電荷Qとコンデンサの電圧Vとの関係は、Q=Ca×Vで表されるため、これらスイッチSW1、SW2、SW3の動作タイミングと、コンデンサCiに蓄積される電荷との関係も、図2と同様のものとなる。
電荷移動用スイッチSW1がON状態となり、電源11からの出力電圧Vcがボタン1に印加されているときには、電荷移動用スイッチSW2はOFF状態とし、静電容量Csおよび静電容量Cbに応じた電荷がボタン1に蓄積される。次に、電荷移動用スイッチSW1がOFF状態のときに電荷移動用スイッチSW2をON状態とし、ボタン1に蓄積された電荷をコンデンサCiに転送する。Ci電圧は、CsおよびCbの直列回路に蓄積された電荷に相当する値となる。これらの、電荷の蓄積、転送を繰り返した後に、電荷量に応じて発生するCiの電圧を測定し、最後に、電荷移動用スイッチSW1およびSW2をOFF状態とし、放電用スイッチSW3をON状態とすることで、コンデンサCiに蓄積された電荷を放電する。
上述のような構成により、入力信号処理装置100では、CPU10の制御指示により切替スイッチ5で、ボタンを、例えば1→2→3→4→1→2…のように、予め定められた選択順序に基づいて入力信号を選択し、そのボタンの状態(つまり、Cb,Csの静電容量)に応じた電圧(すなわち、サンプリング値)を算出し、そのサンプリング値を基にノイズを除去するため、以下のような平滑処理を行って平滑出力値を算出する。
・平滑出力値=(前回のサンプリング値+今回のサンプリング値)/2
3つ以上のサンプリング値の平均値を平滑出力値としてもよい。
・平滑出力値=前回の平滑出力値×(1−α)+今回のサンプリング値×α
ただし、0<α<1。
図3に、上述の、真値、サンプリング値、および平滑出力値の関係を示す。真値Aが略台形形状(あるいは略矩形状)に変化する場合、真値Aが一定値を維持しているときも、例えばノイズの影響によりサンプリング値Bは一定値とはならない。そこで、サンプリング値Bから平滑出力値Cを算出することで、ノイズの影響を除去し、真値Aの状態に近いものとして、入力の変化を正確に検出できるようになっている。
図4,図6を用いて、従来技術によるスイッチ入力処理について説明する。なお、本処理は、CPU10において予め定められたタイミングで繰り返し実行される。図6において、ボタン1→ボタン2→ボタン3→ボタン4の順に、ボタンスキャン処理およびボタン入力判定処理を実行する。なお、各ボタンスキャン処理を全て実行した後に、全てのボタンについて入力判定処理を実行してもよい。
ボタンスキャン処理およびボタン入力判定処理は、全てのボタンで同様であるため、ボタン1を例に挙げて、ボタン1スキャン処理(S100)およびボタン1入力判定処理(S150)について説明する。
ステップS100のボタン1スキャン処理では、まず、サンプリングタイミングが到来したか否かを判定する。サンプリングタイミングは、例えば1msecのような一定周期であり、CPU10にて生成される。また、この周期は、ボタンのスキャン処理の所要時間よりも長く設定される。つまり、図4のように、例えば1msec周期で、ボタン1→ボタン2→ボタン3→ボタン4の順に、各ボタンのスキャン処理を実行しているときには、各ボタンは実質的に4msec周期でスキャン処理を実行している。
上述のように、切替スイッチ5でボタン1を選択し(S101)、ボタン1に電圧Vcを印加して、サンプリングタイミングが到来したとき(S102:Yes)、ボタン1の状態すなわちコンデンサCiに蓄積された静電容量により発生する電圧をサンプリングして、今回のサンプリング値を取得する(S103)。今回のサンプリング値を用いて、上述のいずれかの方法で平滑出力値を算出する(S104)。
ステップS150のボタン1入力判定処理では、上述のボタン1スキャン処理において算出した平滑出力値と、図4のボタンON判定閾値TH1あるいはボタンOFF判定閾値TH2とにより、以下のように判定する。
・平滑出力値がボタンON判定閾値TH1を上回るとき、あるいは平滑出力値がボタンON判定閾値TH1を下回る状態から上回る状態に変化したとき(S151:Yes)、ユーザ14がボタンを押下した(あるいはユーザ14の手指がボタンに接近した,ボタンON)と判定する(S152)。
・平滑出力値がボタンOFF判定閾値TH2を下回るとき、あるいは平滑出力値がボタンOFF判定閾値TH2を上回る状態から下回る状態に変化したとき(S153:Yes)、ユーザ14がボタンから手指を離した(ボタンOFF)と判定する(S154)。
以降、上述のボタン1の各処理と同様に、順次ボタン2スキャン処理(S200)およびボタン2入力判定処理(S250)、ボタン3スキャン処理(S300)およびボタン3入力判定処理(S350)、ボタン4スキャン処理(S400)およびボタン4入力判定処理(S450)を実行する。
図4では、各ボタンのサンプリングタイミング(すなわち、ボタンのスキャン処理)における平滑出力値を、ボタン1:○、ボタン2:□、ボタン3:△、ボタン4:×で表している。つまり、ボタン1のみ操作され、他のボタンは操作されていないことを示している。サンプリングタイミング毎の平滑出力値を示している。
図4のように、従来のスキャン方法では、ボタンのスキャン順序が固定されている。このため、時刻6でボタン1の真値が変化を始め(すなわち、ユーザ14の手指が接近してきた)、時刻8で真値がボタンON判定閾値TH1を上回っても、平滑出力値がボタンON判定閾値TH1を上回るのは時刻12であるため、迅速にボタン押下(すなわち、ユーザ14の手指の接近)の検出を行うことができないという問題がある。
図5,図7を用いて、本発明の構成によるスイッチ入力処理について説明する。なお、図7の処理は、図6の構成に処理の追加を行ったものであるため、図6と同様の処理ステップについては同一のステップ番号を付与してある。また、本処理は、CPU10において予め定められたタイミングで繰り返し実行される。図7においても、図6と同様に、ボタン1→ボタン2→ボタン3→ボタン4の順に、ボタンスキャンおよびボタン入力判定を実行(「ボタンスキャン・入力判定処理」と称する)する。
ボタンスキャン・入力判定処理は、全てのボタンで同様であるため、ボタン1スキャン・入力判定処理(S100)を例に挙げて説明する。まず、上述のように、切替スイッチ5でボタン1を選択し(S101)、ボタン1に電圧Vcを印加して、サンプリングタイミングが到来したとき(S102:Yes)、ボタン1の状態すなわちコンデンサCiに蓄積された静電容量により発生する電圧をサンプリングして、今回のサンプリング値を取得する(S103)。次に、今回のサンプリング値を用いて、上述のいずれかの方法で平滑出力値を算出する(S104)。ここまでは、図6と同様である。
次に、図6のステップS150のボタン1入力判定処理と同様のボタン1入力判定を行う(S105)。
さらに、今回のサンプリング値と前回のサンプリング値との差である変化量を算出する(S106)。
次に、算出した変化量が予め定められた変化量閾値(変化量を絶対値で算出しているときは正の数となる)を上回るか否かを判定し、変化量が変化量閾値を上回るとき(S107:Yes)、メモリ10aあるいはRAM(図示せず)に記憶されたカウンタ値を参照し、このカウンタ値が予め定められたカウンタ閾値を下回るか否か、すなわち、優先出力停止条件が成立したか否かを判定する(S108)。
なお、カウンタ値は、次のうちの少なくとも一方を用いる。また、カウンタ閾値は、それぞれについて定められる。
・サンプリング回数をカウンタ値とする。
・平滑出力値演算部の演算回数をカウンタ値とする。
なお、図7の例では、サンプリング回数をカウンタ値として用いている。また、サンプリング回数あるいは平滑出力値演算部の演算回数の両方をカウンタ値とし、カウンタ値のいずれか一方がカウンタ閾値を下回るときに、優先出力停止条件が成立したと判定してもよい。
そして、カウンタ値がカウンタ閾値を下回るとき(S109:Yes)、該当するカウンタ値を更新(インクリメント)し(S110)、ステップS101へ戻り、次のサンプリングタイミングの到来を待つ。
一方、変化量が変化量閾値を下回るとき(S107:No)、あるいは、カウンタ値がカウンタ閾値を上回るとき(S109:No)、つまり、優先出力停止条件が成立したとき、ボタン1に対応するカウンタ値をクリアする(S111)。
図5では、図4と同様に、各ボタンのサンプリングタイミングにおける平滑出力値を、ボタン1:○、ボタン2:□、ボタン3:△、ボタン4:×で表している。図5のように、本発明のスキャン方法では、時刻6でボタン1の真値が変化を始めたとき、次のサンプリングタイミング(時刻8)でサンプリング値の変化量が変化量閾値を超えたことを検知でき、ボタン1の次のサンプリングタイミングは、図4のような時刻12ではなく、本来はボタン2のサンプリングタイミングである時刻9となる。時刻9で算出した平滑出力値がボタンON判定閾値を上回ったので、従来のスキャン方法の時刻12よりも早い時点で、ユーザ14がボタン1を押下したこと(すなわち、ユーザ14の手指の接近,ボタンON)を検出できる。
さらに、時刻9でサンプリング値の変化量が変化量閾値を超えると、さらに、本来はボタン3のサンプリングタイミングである時刻10でも、ボタン1のサンプリングを実行する。そして、サンプリング回数カウンタ値がカウンタ閾値(図5の例では2)を上回ると、次のサンプリングタイミングである時刻11では、ボタン2のサンプリングを実施する。以降は、上述した通常のサンプリング順に、各ボタンのサンプリングを実行する。
また、ユーザ14がボタンから手指を離したこと(ボタンOFF)も、従来技術の方法に比べて早く検出できる。すなわち、静電容量のサンプリング値のマイナス変化量(これを絶対値で算出)について、変化量閾値を越えた場合、前述のボタンONの場合と同様な方法でスキャンを行えばよい。真値が時刻18で変化を開始したとき、図4のように、従来技術の方法では、時刻24でボタンOFFを検出している。一方、本発明の方法(図5)では、それよりも早い時刻20でボタンOFFを検出することができる。
上述の構成では、変化があったボタンを連続してスキャンするものであるが、他のボタン1個をスキャンした次に変化があったボタンを1回スキャンして、スキャン優先度を上げる方法がある。すなわち、ボタン1→ボタン2→ボタン1→ボタン3→ボタン1→ボタン4のようにスキャンする。以下、図8を用いて、本構成におけるスイッチ入力処理について説明する。なお、本処理は、図7の構成に処理の追加を行ったものであるため、ボタン1を例に挙げ、追加分のみを説明し、図7と同様の処理ステップについては説明を割愛する。
まず、切替スイッチ5でボタン1を選択し(S101)、ボタン1に電圧Vcを印加して、サンプリングタイミングが到来したとき(S102:Yes)、ボタン1の状態をサンプリングして、今回のサンプリング値を取得する。次に、今回のサンプリング値を用いて平滑出力値を算出する(S104)。さらに、ボタン1入力判定を行い(S105)、今回のサンプリング値と前回のサンプリング値との差である変化量を算出する(S106)。
次に、算出した変化量が変化量閾値を上回るか否かを判定し、変化量が変化量閾値を上回るとき(S107:Yes)、ボタン1に対応する平滑出力値算出用カウンタ値あるいはサンプリング回数カウンタ値を参照し、このカウンタ値がカウンタ閾値を下回るか否かを判定する(S108)。カウンタ値がカウンタ閾値を下回るとき(S109:Yes)、カウンタ値を更新(インクリメント)し(S110)、メモリ10aあるいはRAM(図示せず)に記憶された、ボタン1に対応する優先スキャンフラグをセットする(S112)。
一方、変化量が変化量閾値を下回るとき(S107:No)、あるいは、カウンタ値がカウンタ閾値を上回るとき(S109:No)、カウンタ値をクリアし(S111)、ボタン1に対応する優先スキャンフラグをクリアする(S113)。
次に、優先ボタン処理(S160)を実行する。まず、他のボタン(ボタン2〜4)に対応する優先スキャンフラグを参照し、いずれかの優先スキャンフラグがセットされているとき(S161:Yes)、その優先スキャンフラグに対応するボタンのスキャン処理を行う(S162)。この処理は、本処理のボタンスキャン処理(すなわち、ステップS101〜S113)に相当する。続いて、該当するボタンのボタン入力判定処理(S163,内容はS105と同様)を実行する。その後、ボタン2スキャン・入力判定処理(S200),および優先ボタン処理(S260,内容はステップS160と同様)を実行する。ステップS260の優先ボタン処理では、ボタン1に対応する優先スキャンフラグがセットされているときには、ボタン1のスキャンおよび入力判定を行う。
以降、同様に、ボタン3,4についても、ボタンスキャン・入力判定処理,および優先ボタン処理を実行する。
静電スイッチ、静電タッチパネルなど、静電容量を利用したHMIに用いるスイッチやダイヤル(人体と電極間の静電容量、電極間の静電容量を利用したもの)以外にも、周知のメカニカルスイッチ、画面上に縦横に微細に赤外線センサを配置しておき、指やタッチペンなどでその赤外線を遮断すると、その遮断した位置を2次元座標値(X,Y)として検出する赤外線方式タッチパネル、あるいは抵抗膜方式のタッチパネル等、入力を順次スキャンする方式でスキャンに時間を要するものにも適用可能である。
以上、本発明の実施の形態を説明したが、これらはあくまで例示にすぎず、本発明はこれらに限定されるものではなく、特許請求の範囲の趣旨を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づく種々の変更が可能である。
1〜4 ボタン(スイッチ,静電容量検出電極,検出電極)
5 切替スイッチ(入力信号選択部)
10 CPU(サンプリング部,変化量算出部,平滑出力値演算部,サンプリング回数計測部,演算回数計測部)
11 電源
100 入力信号処理装置
SW1、SW2 電荷移動用スイッチ
Ci 電荷積分用コンデンサ(コンデンサ)
Rb 放電抵抗
SW3 放電用スイッチ

Claims (6)

  1. 複数の検出電極への被検物の接近または接触によって、前記複数の検出電極のそれぞれと前記被検物との間に生ずる静電容量に基づく複数の入力信号が入力され、予め定められた選択順序に基づいて、前記複数の入力信号から1つを選択し、選択した入力信号を出力する入力信号選択部と、
    前記入力信号選択部が出力した入力信号の状態をサンプリングするサンプリング部と、
    前記サンプリングの結果に基づいて、前記入力信号の変化量を算出する変化量算出部と、
    を備え、
    前記入力信号選択部は、前記変化量算出部が算出した前記入力信号の変化量が予め定められた変化量閾値を超えるとき、前記変化量閾値を超えた入力信号の出力を継続することを特徴とする入力信号処理装置。
  2. 前記入力信号選択部は、前記変化量閾値を超えた入力信号の出力を継続中に、予め定められた優先出力停止条件が成立したとき、現在出力している入力信号の次の選択順序の入力信号を出力する請求項1に記載の入力信号処理装置。
  3. 前記入力信号の変化量が予め定められた変化量閾値を下回ったときを、前記優先出力停止条件が成立したとする請求項2に記載の入力信号処理装置。
  4. 前記サンプリングの回数を計測するサンプリング回数計測部を備え、
    前記サンプリング回数計測部による計測回数が予め定められた回数に達したとき、前記優先出力停止条件が成立したとする請求項2に記載の入力信号処理装置。
  5. 前記サンプリングの結果に基づいて、前記入力信号を平滑化して平滑出力値を演算する平滑出力値演算部と、
    前記平滑出力値演算部の演算回数を計測する演算回数計測部と、
    を備え、
    前記平滑出力値演算部による演算回数が予め定められた回数に達したとき、前記優先出力停止条件が成立したとする請求項2に記載の入力信号処理装置。
  6. 前記入力信号は、アナログ信号である請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の入力信号処理装置。
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