JP5553171B2 - 析出強化型合金の析出強化量推定方法 - Google Patents
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したがって、目的の金属材料の強化量の測定はできても、その強化要因が前記のように多岐に渡っている場合には、析出強化量単独の測定はできない。このように、析出強化のために添加した合金元素がどれほど効率的に活用されているのかを推測することは困難であった。例えば特許文献1では、材料の初期状態、熱間加工、析出、変態、組織、材質をそれぞれモデル化し、このモデルに基づいて、目標とする材質を得るための製造条件を材質との関係で制御し、材質を予測する鋼板の材質予測制御方法を提案している。しかし、特許文献1では、ある析出状態に対する析出強化量が判っている前提での製造条件の制御を目的としており、析出粒子の種類、サイズ、個数密度による析出強化量の変化そのものについては述べられていない。
このように、従来は、与えられた析出粒子のサイズ及び個数密度とその析出強化量との定量的関係は明らかになっていなかった。この理由は、析出粒子1個あたりの抵抗力の粒子サイズ依存性を調べることができなかったことに由来する。
(1)析出強化型合金の析出強化量を推定する析出強化量推定方法であって、前記析出強化型合金と同じ母相及び析出物種を持ち、且つ、熱処理条件によって析出強化量が変化するモデル合金材料であって、熱処理条件が異なる複数のモデル合金材料を作製する工程と、前記モデル合金材料中の析出粒子のサイズ及び個数密度と、当該析出粒子を構成する元素の固溶濃度と、を測定する工程と、前記モデル合金材料の引張試験を行い、当該モデル合金材料の降伏強度を測定する工程と、前記モデル合金材料の降伏強度と、前記モデル合金材料中の析出粒子を構成する元素の固溶濃度と、に基づいて、前記モデル合金材料の析出強化量を算出する工程と、前記析出強化量と、前記モデル合金材料中の析出粒子のサイズと、前記モデル合金材料中の析出粒子の個数密度と、に基づいて、前記モデル合金材料の析出粒子1個あたりの抵抗力を算出する工程と、前記モデル合金材料中の析出粒子のサイズと、前記モデル合金材料中の析出粒子1個あたりの抵抗力との相関を算出する工程と、前記相関を記憶媒体に格納する工程と、前記析出強化型合金中の析出粒子のサイズ及び個数密度を測定する工程と、前記相関に前記析出強化型合金中の析出粒子のサイズを当てはめ、前記析出強化型合金材の析出粒子1個あたりの抵抗力を求める工程と、前記析出強化型合金の析出粒子1個あたりの抵抗力と、当該析出粒子のサイズ及び個数密度と、に基づいて、前記析出強化型合金の析出強化量を算出する工程と、を有することを特徴とする析出強化型合金の析出強化量推定方法。
(2)前記モデル合金材料は、常温から該モデル合金材料の溶体化温度に至るまで、変態を起こさない成分系である鋼であることを特徴とする(1)に記載の析出強化型合金の析出強化量推定方法。
(3)前記析出粒子のサイズ及び個数密度と、当該析出粒子を構成する元素の固溶濃度とを、三次元アトムプローブ法を用いて測定することを特徴とする(1)又は(2)に記載の析出強化型合金の析出強化量推定方法。
図1は、析出強化型合金の析出強化量の推定方法の流れの一例を示すフローチャートである。
まず、図1の各工程の概要を説明する。
ステップS1のモデル合金材料作製工程では、熱処理条件を違えて析出粒子のサイズと個数密度とを変化させ、その結果、析出強化量が異なるモデル合金材料を作製する。
次に、ステップS2の析出粒子のアトムプローブ測定工程では、三次元アトムプローブを用いて析出粒子のサイズと個数密度を測定すると共に、析出粒子を構成する元素の固溶濃度を測定する。
一方で、ステップS3の引張試験による降伏強度測定工程では、引張試験により、モデル合金材料の降伏強度を測定する。
次に、ステップS5のメモリー格納工程では、ステップS2で測定された析出粒子のサイズ、析出粒子の個数密度、及びステップS4で求められた析出強化量をメモリーに格納しておく。
次に、ステップS7の相関算出工程では、ステップS5で格納された析出粒子のサイズと、ステップS6で計算された析出粒子1個あたりの抵抗力との相関を最も良く表す適当な関数を求める。以上の結果から、あらゆる析出粒子のあらゆるサイズにおける1個あたりの抵抗力が求めることができるようになった。ステップS7で得られた相関(関数)は、ステップS8のメモリー格納工程でメモリーに格納される。
次に、ステップS10の析出粒子1個あたりの抵抗力算出工程では、ステップS9で測定された析出粒子のサイズを、ステップS8で格納された関数に代入することで、析出強化量を求めたい合金に含まれる析出粒子1個あたりの抵抗力を求める。
次に、ステップS11の析出強化量算出工程では、ステップS10で求められた析出粒子1個あたりの抵抗力と、ステップS9で測定された析出粒子のサイズ及び個数密度とを、析出強化の理論式に代入し、合金の析出強化量を算出し推定する。
最後に、ステップS12の出力・表示工程では、ステップS11で算出された析出強化量を出力・表示する。具体的に出力・表示工程では、ステップS11で算出された析出強化量を、例えば、記憶メディアに記憶したり、外部装置に送信したり、液晶ディスプレイ等に表示したりする。
<モデル合金材料作製工程:ステップS1>
本工程は、熱処理条件によって析出強化量のみの強化量が変化するモデル合金材料を作製する工程である。
本実施形態では、析出強化型合金の析出強化量の推定のために、析出強化量を推定する析出強化型合金と同じ母相及び析出物種を持ち、且つ、強化量のうち、熱処理条件によって析出強化量のみの強化量が変化するモデル合金材料を作製しなければならない。ここで、析出強化量のみの強化量が変化するとは、熱処理することによって、析出状態(すなわち、析出粒子のサイズ及び個数密度)が変化することに伴って析出強化量が変化し、その他の強化量(すなわち、結晶粒径の変化や転位密度の変化による強化量)の変化がないことを意味する。しかしながら、析出物が形成されることによって、析出物を形成する元素の固溶濃度は低下する。このため、モデル合金材料において析出物を形成する元素による固溶強化量は例外的に変化しても良いとする。ただし、モデル合金材料において析出物を構成する元素以外の元素による固溶強化量は、変化してはならない。
鉄鋼材料のオーステナイト母相中の析出強化量を推定する場合には、常温から溶体化温度に至るまでオーステナイト単相となるモデル合金材料を利用することが好ましい。例として、Ni、Mn、Co等をモデル合金材料に添加すると効果がある。
本工程は、モデル合金材料中の析出粒子のサイズ及び個数密度と、析出粒子を構成する元素の固溶濃度とを三次元アトムプローブ法により測定する工程である。
モデル合金材料中の析出粒子のサイズ及び個数密度を測定するために、三次元アトムプローブ法を利用することで、直径1nm未満の微細析出粒子から数10nmに至る析出粒子までの析出粒子のサイズと、実質的に析出強化に寄与する範囲の個数密度とを正確に測定することができる。そのために、切断及び電解研磨法(必要に応じて電解研磨法と併せて集束イオンビーム加工法)を活用し、熱処理後の試料から針状の試料を作製する。三次元アトムプローブ法による測定では、積算されたデータを再構築して実空間での実際の原子の立体分布像を求めることができる。原子の立体分布像の体積と、その立体分布像に含まれる析出粒子の数とに基づき、析出粒子の個数密度が求まる。また、析出粒子のサイズは、観察された析出粒子の構成原子数と析出粒子の格子定数とに基づき、析出粒子を球状と仮定して算出した直径である。任意に30個以上の析出粒子の直径を測定し、その平均値を析出粒子のサイズとして求める。
また、以上のような三次元アトムプローブ法による測定により得られた原子の立体分布像において、析出物以外の部分に存在する原子は固溶原子と見なせる。析出物を構成する元素の、析出物以外の部分での原子数濃度から、元素の固溶濃度を見積もる。
なお、三次元アトムプローブ法自体は、公知の技術で実現できるので、ここでは、その詳細な説明を省略する。また、析出粒子のサイズ及び個数密度と、析出粒子を構成する元素の固溶濃度とを測定するには、三次元アトムプローブ法を用いるのが好ましいが、これらの測定は、必ずしも三次元アトムプローブ法に限定されるものではない。
本工程は、モデル合金材料の引張試験を行い、モデル合金材料の降伏強度を測定する工程である。
前記モデル合金材料においては、熱処理により変化した強度差が、析出強化量と固溶強化量とを足し合わせたものの変化に対応する。ステップS1で作製されたモデル合金材料を切り出し、引張試験に供することで、熱処理をしていない試料の降伏強度と、各熱処理温度で熱処理した試料の降伏強度とを測定する。
なお、降伏強度の測定は、公知の技術で実現できるので、ここでは、その詳細な説明を省略する。
本工程は、ステップS3で得られた降伏強度と、ステップS2で得られた元素の固溶濃度とを入力し、それら降伏強度と固溶濃度とに基づいて、モデル合金材料の析出強化量を算出する工程である。
析出物を構成する元素の固溶濃度が変化することによって固溶強化量が変化する場合には、前記三次元アトムプローブ法により測定した固溶濃度から、各試料の固溶強化量を計算する。固溶強化量の計算にあたっては、固溶元素の添加量と固溶強化量との関係を、文献値(例えば、非特許文献1(「鉄鋼材料」(日本金属学会、1985年発行、丸善、第87頁))、あるいは非特許文献2(「非鉄材料」(日本金属学会、1987年発行、丸善、第85頁)))から直接読み取れば、求めることができる。全く析出の起きていない試料(すなわち、溶体化処理後、熱処理を施していない試料)と、析出を狙い熱処理を施した各試料とについて、それぞれステップS3で測定された降伏強度から固溶強化量を差し引いた値を求める。そして、熱処理を施した各試料の値の、熱処理を施していない試料の値からの増分を各試料の析出強化量とする。
本工程は、モデル合金材料中の析出粒子のサイズ、個数密度、及び析出強化量を入力しメモリーに格納する工程である。
モデル合金材料の各熱処理試料について測定された、析出粒子のサイズ、個数密度、及び析出強化量は、一対一で対応付けられてメモリーに格納される。
本工程は、析出強化量から析出粒子1個あたりの抵抗力を算出する工程である。
例えば、非特許文献3(「改訂材料強度の考え方」(木村宏著、2002年発行、アグネ技術センター、第322頁))に、析出強化量は、析出粒子1個あたりの抵抗力と、析出粒子の隙間間隔とから記述されることが述べられている。すなわち、析出粒子1個あたりの抵抗力は、析出粒子の隙間間隔と析出強化量とを用いて、以下の(1)式のように記述される。
F=G×b2×cos(φc/2) ・・・(3)
また、析出粒子1個あたりの抵抗力Fが大きく、転位の離脱角φcが100°未満(又は以下)の場合には、析出強化量σcは、以下の(4)式で表される。
以上の(1)式、(4)式の関係式を用いて、それぞれの析出粒子のサイズにおける、析出粒子1個あたりの抵抗力Fが求められる。
本工程は、モデル合金材料中の析出粒子1個あたりの抵抗力と粒子サイズとの相関を算出する工程である。
まず、前述のステップS5でメモリーに格納された析出粒子のサイズを横軸とし、ステップS6で求められた析出粒子1個あたりの抵抗力を縦軸として値をプロットする。次に、これらの相関を最も良く表す適当な関数を求める。最も単純な場合は一次関数であり、その他、平方根、指数関数、対数関数、双曲線関数、またはこれらの和として表されるよう、回帰計算を行う。
本工程は、モデル合金材料中の析出粒子のサイズと、析出粒子1個あたりの抵抗力との相関をメモリーに格納する工程である。
<析出粒子のアトムプローブ測定工程:ステップS9>
本工程は、析出強化型合金中の析出粒子のサイズおよび個数密度を、三次元アトムプローブ法により測定する工程である。
析出強化量の推定対象試料である析出強化型合金の観察により、析出強化型合金中の析出粒子のサイズおよび個数密度を求める。析出粒子のサイズ及び個数密度の測定は、例えば、ステップS2の析出粒子のアトムプローブ測定工程でモデル合金材料を測定したのと同じ方法で行い、三次元アトムプローブ法を利用することが好ましい。
本工程は、モデル合金材料中の析出粒子のサイズと、析出粒子1個あたりの抵抗力との相関に、析出強化型合金中の析出粒子のサイズを当てはめ、析出強化型合金材の析出粒子1個あたりの抵抗力を算出する工程である。
モデル合金材料中の析出粒子のサイズと、析出粒子1個あたりの抵抗力との相関と、ステップS9で測定された析出強化型合金の析出粒子のサイズとから、析出強化型合金中の析出粒子1個あたりの抵抗力を算出する。
本工程は、析出強化型合金材中の析出粒子1個あたりの抵抗力と、析出強化型合金材中の析出粒子のサイズと、析出強化型合金材中の析出粒子の個数密度とを用いて、析出強化型合金材の析出強化量を算出する工程である。
「析出強化量と、析出粒子1個あたりの抵抗力と、析出粒子の隙間間隔との関係」及び「析出粒子の隙間間隔と、析出粒子のサイズと、析出粒子の個数密度との関係」を利用し、ステップS10で算出された析出強化型合金中の析出粒子1個あたりの抵抗力と、ステップS9で測定された析出粒子のサイズ及び個数密度と、を用いて、析出強化型合金の析出強化量を算出する。
本工程は、析出強化型合金材の析出強化量を出力し表示する工程である。ステップS11で算出された析出強化型合金の析出強化量を出力し、表示する。
(実施例1)
本実施例では、Al−Mg−Si合金中のMgSiクラスタ粒子による析出強化量を推定した例を示す。MgSiクラスタ粒子と表記したのは、安定な析出相であるMg2Si析出物になる以前であったためである。強化量の推定に際してはクラスタ粒子であっても析出粒子と全く同様に、粒子1個あたりの抵抗力の見積もりや強化量の推測ができる。したがって、以降、クラスタ粒子を析出粒子として扱い、表記もMgSi析出粒子とする。
続いて試料A〜Dについて析出粒子1個あたりの抵抗力と析出粒子サイズとの関係をプロットし、これらの相関を回帰計算により算出した。図2は、MgSi析出粒子1個あたりの抵抗力と粒子サイズとの関係の一例を示す。図2に示されるように、析出粒子1個あたりの抵抗力は、析出粒子のサイズに依存し、これらの関係は線形近似できる。
Al−0.7Mg−0.4Si(ただし数値は質量%)合金を用い、550℃で溶体化処理をした後、水冷し、150℃においてそれぞれ熱処理した試料E、Fを作製した。それぞれの試料E、Fについて三次元アトムプローブ法により、MgSi析出粒子のサイズ及び個数密度と、Mg及びSiの固溶濃度とを測定した。続いて、析出強化量の推定のために、前記算出されたMgSi析出粒子1個あたりの抵抗力と析出粒子のサイズとの相関に、各試料における析出粒子のサイズを当てはめ、各試料E、Fにおける析出粒子1個あたりの抵抗力を算出する。さらに、各試料E、Fにおける析出粒子のサイズと、各試料E、Fにおける析出粒子の個数密度と、を用いて、析出強化型合金材の析出強化量(推定値)を算出した。一方で、試料E、Fの引張試験により測定した降伏強度と、Mg及びSiの固溶強化量から見積もった固溶濃度とを用いて、析出強化量を求めた。表2に示すように、推定値と実測値は良い一致を示した。
比較例として、本実施形態の工程と異なる工程を利用した場合を示す。モデル合金として作製した前記試料A〜Dを用い、走査電子顕微鏡により析出粒子のサイズ及び個数密度の測定を試みた。しかし、試料A〜Dの全てにおいてMgSi析出粒子を観察することができなかった。また、引張試験を行ったところ、試料A〜Dの析出強化量は変化しているため、析出粒子1個あたりの抵抗力と析出粒子のサイズとの相関を算出することができなかった。
本実施例では、フェライト鋼中のTiC析出粒子による析出強化量を推定した例を示す。モデル合金としてフェライト鋼であるFe−0.03C−0.12Ti−4Al(ただし数値は質量%)を有する鋼を溶解、鋳造後、試料として切り出した。このフェライト鋼は、常温から溶体化温度に至るまで、変態を起こさない成分系である鋼である。次に、試料を1200℃において溶体化処理した後、水冷し、580℃において熱処理時間を違えてTiC析出物を生成させた試料G〜Jをそれぞれ作製した。試料G〜J、及び溶体化処理後熱処理を施していない試料について、三次元アトムプローブ法により、TiC析出粒子のサイズ及び個数密度と、Ti及びCの固溶濃度とを測定した。
続いて試料G〜Jについて析出粒子1個あたりの抵抗力と析出粒子サイズとの関係をプロットし、これらの相関を回帰計算により算出した。図3は、TiC析出粒子1個あたりの抵抗力と粒子サイズとの関係の一例を示す。図3に示されるように、析出粒子1個あたりの抵抗力は、析出粒子のサイズに依存し、これらの関係は線形近似できる。
Fe−0.05C−0.20Ti−3Al(ただし数値は質量%)を有する鋼を用い、1200℃で溶体化処理後をした後、水冷し、560℃、580℃及び650℃においてそれぞれ熱処理した試料K、L、Mを作製した。それぞれについて三次元アトムプローブ法により、TiC析出粒子のサイズ及び個数密度と、Ti及びCの固溶濃度とを測定した。続いて、析出強化量の推定のために、前記算出されたTiC析出粒子1個あたりの抵抗力と析出粒子サイズとの相関に、各試料K、L、Mにおける析出粒子のサイズを当てはめ、各試料K、L、Mにおける析出粒子1個あたりの抵抗力を算出する。さらに、各試料K、L、Mにおける析出粒子のサイズと、各試料K、L、Mにおける析出粒子の個数密度と、を用いて、析出強化型合金材の析出強化量(推定値)を算出した。一方で、試料K、L、Mの引張試験により測定した降伏強度と、Ti及びCの固溶強化量から見積もった固溶濃度とを用いて、析出強化量を求めた。表4に示すように、推定値と実測値は良い一致を示した。
比較例として、常温から溶体化温度の間に変態を伴うために、前述したモデル合金に当てはまらないFe−0.03C−0.1Ti(ただし数値は質量%)を有する鋼を溶解、鋳造後、試料として切り出した。次に、試料を、溶体化処理した後、水冷し、580℃において熱処理時間を違えてTiC析出物を生成させた試料N〜Pをそれぞれ作製した。しかし、引張試験を行ったところ、試料N〜Pはいずれも、溶体化処理後、熱処理を施していない試料よりも強度が低下しており、いずれも正しい析出強化量を評価することができなかった。したがって、析出粒子1個あたりの抵抗力と、析出粒子のサイズとの相関を求めることができなかった。
また、以上説明した本発明の実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその技術思想、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
Claims (3)
- 析出強化型合金の析出強化量を推定する析出強化量推定方法であって、
前記析出強化型合金と同じ母相及び析出物種を持ち、且つ、熱処理条件によって析出強化量が変化するモデル合金材料であって、熱処理条件が異なる複数のモデル合金材料を作製する工程と、
前記モデル合金材料中の析出粒子のサイズ及び個数密度と、当該析出粒子を構成する元素の固溶濃度と、を測定する工程と、
前記モデル合金材料の引張試験を行い、当該モデル合金材料の降伏強度を測定する工程と、
前記モデル合金材料の降伏強度と、前記モデル合金材料中の析出粒子を構成する元素の固溶濃度と、に基づいて、前記モデル合金材料の析出強化量を算出する工程と、
前記析出強化量と、前記モデル合金材料中の析出粒子のサイズと、前記モデル合金材料中の析出粒子の個数密度と、に基づいて、前記モデル合金材料の析出粒子1個あたりの抵抗力を算出する工程と、
前記モデル合金材料中の析出粒子のサイズと、前記モデル合金材料中の析出粒子1個あたりの抵抗力との相関を算出する工程と、
前記相関を記憶媒体に格納する工程と、
前記析出強化型合金中の析出粒子のサイズ及び個数密度を測定する工程と、
前記相関に前記析出強化型合金中の析出粒子のサイズを当てはめ、前記析出強化型合金材の析出粒子1個あたりの抵抗力を求める工程と、
前記析出強化型合金の析出粒子1個あたりの抵抗力と、当該析出粒子のサイズ及び個数密度と、に基づいて、前記析出強化型合金の析出強化量を算出する工程と、
を有することを特徴とする析出強化型合金の析出強化量推定方法。 - 前記モデル合金材料は、常温から該モデル合金材料の溶体化温度に至るまで、変態を起こさない成分系である鋼であることを特徴とする請求項1に記載の析出強化型合金の析出強化量推定方法。
- 前記析出粒子のサイズ及び個数密度と、当該析出粒子を構成する元素の固溶濃度とを、三次元アトムプローブ法を用いて測定することを特徴とする請求項1又は2に記載の析出強化型合金の析出強化量推定方法。
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