無接点電力伝送システムの受電装置においては、給電対象の負荷への電力供給ラインと、受電装置の動作を制御する受電制御装置(例えばIC)に対する電力供給ラインとは共通である。例えば、2次コイルの両端ノードから得られる交流電圧を、整流部によって整流して得られる直流電圧が、例えばレギュレーター(過電圧保護回路としての機能をもつ)を介して負荷に供給される。一方、例えば、レギュレーターの出力電圧は、電源電圧として、受電制御装置(例えばIC)に供給される。
給電対象の負荷への電力供給ラインと、受電制御装置(例えばIC)の電力供給ラインとが共通であると、回路設計に際しては、常に、給電対象の負荷および受電制御装置の双方を考慮する必要があり、各々を分離して、個別に最適な回路設計をすることが困難である。
例えば、受電装置の負荷状態に応じて給電ノードの電圧が変化するため、受電制御装置(例えばIC)の電源電圧を安定化させるためにレギュレーターが必ず必要であり、かつ、そのレギュレーターの出力電圧のレベルは、負荷および受電装置の双方の特性を考慮して決定する必要ある。これらの点は、回路設計上の制約となる。
例えば、給電対象の負荷に供給すべき電圧レベルよりも、受電制御装置(例えばIC)の電源電圧の方が大きい場合には、受電制御装置(例えばIC)の電源電圧を確保するために、昇圧型のレギュレーターを用いて(あるいは、レギュレーターとは別の昇圧回路を用いて)整流電圧を昇圧する必要が生じる。この昇圧動作は、受電制御装置(例えばIC)の電源電圧レベルの調整のためにだけ必要であり、負荷に対する給電には必要ないものであり、回路設計上、不便である。
上述した回路上の制約を軽減するために、給電対象の負荷の電源を、受電制御装置(例えばIC)の電源としても利用する(電源の共用)も考えられるが、受電制御装置(例えばIC)の電源電圧レベルが、負荷の電源電圧の仕様に依存することになる。また、負荷への給電を制御する受電制御装置(例えばIC)が、被制御対象である負荷の電源に依存すると、受電制御装置(例えばIC)は、電源自体の制御ができないという矛盾が生じ、この問題に対処するためには、電力制御用のスイッチを新たに設ける等の工夫が必要となり、このことによって回路の大型化やコスト上昇を招く。
本発明のいくつかの態様によれば、例えば、給電対象の負荷への電力供給ラインと、受電制御装置(IC)に対する電力供給ラインとを分離して、回路設計を容易化することができる。
(1)本発明の受電装置の一態様は、第1の2次コイルによって受電した電力を、給電対象の負荷に供給する負荷電力供給部と、第2の2次コイルによって受電した電力が供給されて動作し、前記負荷電力供給部を制御する受電制御装置と、含む。
本態様では、2次コイルを第1の2次コイルと第2の2次コイルとに分離する。第1の2次コイルは、給電対象の負荷への電力供給用コイルであり、第2の2次コイルは、受電制御装置(例えばIC)への電力供給用コイルである。したがって、給電対象の負荷への電力供給ラインと、受電制御装置(例えばIC)に対する電力供給ラインとを分離することができる。つまり、受電制御装置(例えばIC)の電源電圧に対する、給電対象の負荷の影響を極小化することができる。よって、給電対象の負荷に電力を供給する負荷電力供給部と、受電制御装置(例えばIC)に電力を供給する受電制御装置用の回路部とを分離して、各々独立に回路設計が可能となり、回路設計が容易化され、また、各部毎の回路の最適化も行い易くなる。
例えば、給電対象の負荷の電力定格が変更されたときには、第1の2次コイルにおけるコイル条件の変更(例えば、巻線数を増減する、1次コイルとの距離を変更する)により対応でき、第2の2次コイルについての変更は不要である。一方、第2の2次コイルに関する受電条件を、受電制御装置の電源電圧に適合させて最適化しておけば、常に、最適な電源電圧を、受電制御装置に供給することができる。第2の2次コイルから得られる電圧の電圧変動を許容範囲に収めることができるのであれば、受電制御装置の電源電圧のためのレギュレーターは不要となる。
また、受電制御装置は、例えば、1チップのICで構成することができ、消費電力も少ない場合がある。したがって、整流部を構成するダイオード等の整流素子の耐圧もそれほど必要ない場合があり、よって、この場合には、整流部を1チップのICに集積化することも可能である。この場合、回路規模の増大の影響を最小化することができる。
(2)本発明の受電装置の他の態様は、前記第1の2次コイルの一端ノードおよび他端ノードに接続され、前記第1の2次コイルの誘起電圧を整流する第1整流部と、前記第1整流部の出力ノードに接続される第1平滑コンデンサーと、前記第1の2次コイルの一端ノードまたは他端ノードに接続され、前記受電制御装置によって動作が制御される、前記受電装置の負荷を変調するための負荷変調部と、を有する。
本態様では、負荷変調部を第1の2次コイルの両端ノードのいずれか一方に接続する。第1整流部の後段には第1平滑コンデンサーが設けられている。負荷変調部が第1整流部の出力ノードに接続されたとすると、負荷変調素子および第1の2次コイルのインピーダンス(1次コイルとの間の結合度にも依存する)と第1の平滑コンデンサーとによって決まる時定数によって、負荷変調された送信信号の波形が鈍る。そこで、本態様では、第1の2次コイルの一端ノードまたは他端ノードのいずれかに負荷変調部を接続する。この場合、負荷変調部と第1の平滑コンデンサーとの間には、第1整流部を構成する非線形素子(ダイオードやMOSトランジスター等)が存在し、したがって、負荷変調部は、非線形素子によって第1平滑コンデンサーから分離されることになる。よって。第1平滑コンデンサーによる時定数の影響を受けづらくなり、負荷変調後の信号の波形の鈍りが少なくなり、1次側における負荷変調信号の検出が容易となる。
(3)本発明の受電装置の他の態様は、前記第2の2次コイルの一端ノードおよび他端ノードに接続され、前記第2の2次コイルの誘起電圧を整流する第2整流部と、前記第2整流部の出力ノードに接続される第2平滑コンデンサーと、前記第2の2次コイルの一端ノードまたは他端ノードに接続され、前記受電制御装置によって動作が制御される、前記受電装置の負荷を変調するための負荷変調部と、を有する。
本態様では、負荷変調部を第2の2次コイルの両端ノードのいずれか一方に接続する。上述のとおり、負荷変調部は、非線形素子によって第2平滑コンデンサーから分離されることになる。よって。第2平滑コンデンサーによる時定数の影響を受けづらくなり、負荷変調後の信号の波形の鈍りが少なくなり、1次側における負荷変調信号の検出が容易となる。
また、本態様では、第2の2次コイルから得られる電圧レベルが、給電対象の負荷にほとんど影響されないことから、常に、負荷変調素子(例えば抵抗)のインピーダンス値を、給電対象の負荷の大小に応じて変化させる必要がなくなり、この点で、回路設計が容易化される。
(4)本発明の受電装置の他の態様は、前記負荷変調部は、負荷変調素子としての抵抗と、スイッチング素子と、を含み、前記スイッチング素子のスイッチングは、前記受電装置から、前記第2の2次コイルおよび1次コイルを経由して送電装置に送信されるデータに基づいて生成される負荷変調信号によって制御される。
本態様では、負荷変調部の構成と動作を明らかとした。すなわち、負荷変調部は、負荷変調素子(抵抗やコンデンサー)と、スイッチング素子とを含み、スイッチング素子のオン/オフは、1次側への送信データに応じて生成される負荷変調信号によって制御される。
(5)本発明の受電装置の他の態様では、前記第1整流部または前記第2整流部は、複数の同期整流素子を含み、全波整流を行う同期整流部である。
本態様では、第1および第2の整流部の少なくとも一方において、全波整流を行う同期整流部を使用する点を明確化した。同期整流素子は低損失の能動素子であり、同期整流素子のオン/オフを適切なタイミングで制御することによって、整流部における損失の低減を図ることができる。
(6)本発明の受電装置の他の態様では、前記第2整流部は、複数の同期整流素子を含み、全波整流を行う同期整流部であり、前記第2整流部における前記複数の同期整流素子のうちの少なくとも1つの同期整流素子は、前記同期整流部のタイミング制御信号と、前記受電装置から、前記第2の2次コイルおよび1次コイルを経由して送電装置に送信されるデータに基づいて生成される負荷変調信号とに基づいて制御される。
本態様では、上記(3)の態様をさらに発展させ、負荷変調素子をなくし、かつ同期整流素子自体を負荷変調用のスイッチング素子として使用する。例えば、一つの同期整流素子がオフ状態であるときに(つまり、同期整流用のタイミング信号が非アクティブレベルのときに)、負荷変調信号をアクティブレベルにすると、第2の2次コイルの両端の電圧波形が急激に変化し、その電圧変化が1次側に伝達される。1次側は、例えば、1次コイルのコイル端電圧における、しきい値を越える電圧変化を検出して、“1”または“0”のデータを検出することが可能である。例えば、1次コイルと第2の2次コイルとの結合度(K2)を、1次コイルと第1の2次コイルとの結合度(K1)に比べて十分に小さく設定しておけば、第2の2次コイルに接続される整流部の整流動作の途中において負荷変調をして瞬時的な電圧変動が生じたとしても、1次側で検出される電圧変化は、許容範囲内に十分に収まり、よって、1次側では、適正なデータ受信が可能である。
また、負荷変調期間を短く設定すれば、整流部の整流波形の乱れを最小限に抑えることができ、第2平滑コンデンサーによってその電圧変動を吸収できれば、受電制御装置用の電源電圧の微小な変動は特に問題とならない。また、その電源電圧変動を完全に抑制したいような場合には、必要ならば第2の2次コイルと受電制御装置との間に、受電制御装置の電源電圧調整用のレギュレーターを設けることができる。
また、例えば、第2の2次コイルと1次コイルとの結合度が、第1の2次コイルと1次コイルとの結合度よりも小さければ(好ましくは十分に小さければ)、第2の2次コイルから1次側に送信される負荷変調信号による影響は、給電対象の負荷への電力供給動作にはほとんど影響を及ぼさない。
本態様によれば、負荷変調素子が不要であり、負荷変調のためだけのスイッチング素子も不要であり、回路構成が簡素化され、回路の省スペース化に有利である。
(7)本発明の受電装置の他の態様では、前記タイミング制御信号が非アクティブレベルのときに、前記負荷変調信号がアクティブレベルとなる。
上述のとおり、一つの同期整流素子がオフ状態であるときに(つまり、同期整流用のタイミング信号が非アクティブレベルのときに)、負荷変調信号をアクティブレベルにすると、第2の2次コイルの両端の電圧波形が急激に変化し、その電圧変化が1次側に伝達される。1次側は、例えば、1次コイルのコイル端電圧における、しきい値を越える電圧変化を検出して、“1”または“0”のデータを検出することが可能である。
(8)本発明の受電装置の他の態様では、前記第2整流部は、前記第2整流部の出力ノードから出力される高電位電源電圧と低電位電源電圧との間に直列に接続された、高電位電源電圧側の第1整流素子および低電位電源電圧側の第2整流素子と、高電位電源電圧側の第3整流素子および低電位電源電圧側の第4整流素子と、を含むブリッジ回路であり、少なくとも前記第2整流素子および前記第4整流素子は同期整流素子で構成され、前記第2整流素子または前記第4整流素子のオン/オフが、前記タイミング制御信号と前記負荷変調信号とによって制御される。
本態様では、同期整流部が、4つの整流素子(第1整流素子〜第4整流素子)によって構成され、少なくとも、ローサイドの2つの整流素子の各々が同期整流素子であり、そして、いずれかの同期整流素子が、負荷変調用のスイッチング素子を兼ねる点を明らかとした。
(9)本発明の受電装置の他の態様では、前記負荷電力供給部は、通常送電期間において、前記第1の2次コイルによって受電した電力を給電対象の負荷に供給し、かつ、前記受電装置は、前記通常送電期間において負荷変調を実行する場合には、前記給電対象の負荷への給電を停止することなく前記負荷変調を実行する。
本態様によれば、受電装置から送電装置への通信に関して、常時通信を実現することができる。「常時通信」とは、「通常送電期間(給電対象の負荷に供給する電力を連続的に送電する期間)において、給電対象の負荷への電力の供給を止めることなく負荷変調によるデータ通信を行うこと」であり、これによって、通常送電期間において、自由かつ連続的に(つまり、時期を選ばず、かつ中断することなく常時)データを2次側から1次側に送信することができる(つまり、通常送電期間中に常に負荷変調を行うという意味ではなく、給電対象の負荷への給電を止める必要がないことから、負荷変調動作に関して、給電対象の負荷に関係する制限が生じず、時間を選ばずに自由な期間において連続的な通信が可能であるという意味であり、もちろん必要ならば、通常送電期間の全期間にわたって常時、負荷変調処理を実行することも可能である)。「常時通信」は、例えば、「給電対象の負荷への連続給電を止めることのないデータ通信」と言い換えることができる。
特に、負荷変調部と平滑コンデンサーとの間に整流部を構成する非線形素子(ダイオードやトランジスター)を介在させる構成を採用すれば、負荷変調部は平滑コンデンサーの影響をほとんど受けず、変調後の信号の波形鈍りが少ないことなら、負荷への給電を止めることなく、実用に耐える通信品質をもつデータ通信が可能である。つまり、通常送電期間において、自由かつ連続的に(つまり、時期を選ばず、かつ中断することなく常時)データを2次側から1次側に送信することができる。
(10)本発明の受電装置の他の態様では、1次コイルと前記第1の2次コイルとの結合度をK1とし、前記1次コイルと前記第2の2次コイルとの結合度をK2とした場合に、K1>K2である。
これによって、受電制御装置(例えばIC)の電源電圧に対する、給電対象の負荷の影響を、確実に極小化することができる。よって、給電対象の負荷に電力を供給する負荷電力供給部と、受電制御装置(例えばIC)に電力を供給する受電制御装置用の電源回路部とを分離して、各々独立に回路設計が可能となり、回路設計が容易化され、また、各部毎の回路の最適化も行い易くなる。
(11)本発明の受電装置の他の態様では、前記第1の2次コイルの巻線数をn1とし、前記第2の2次コイルの巻線数をn2とした場合、n1>n2に設定される。
本態様では、K1>K2を実現するために、コイルの巻線数(巻数)を、n1>n2の関係に設定する。
(12)本発明の受電装置の他の態様では、1次コイルと前記第1の2次コイルとの距離をd1とし、前記1次コイルと前記第2の2次コイルとの距離をd2とした場合に、d1<d2に設定される。
本態様では、K1>K2を実現するために、1次コイルと第1および第2の2次コイルとの間の距離を、d1<d2の関係に設定する。
(13)本発明の受電装置の他の態様では、前記2次コイルは、前記第1の2次コイルおよび第2の2次コイルのいずれか一方のコイルパターンと、前記一方の配線パターンに接続される第1の引き出し配線パターンと、前記第1の引き出し配線パターンに接続される少なくとも一つの第1のパッドと、前記第1の2次コイルおよび第2の2次コイルのいずれか他方に接続される第2の引き出し配線パターンと、前記第2の引き出し配線パターンに接続される少なくとも一つの第2のパッドと、が形成された配線基板と、前記配線基板に配置され、前記第2の引き出し配線パターンに接続される、前記第1の2次コイルおよび第2の2次コイルのいずれか他方と、を有する。
本態様によれば、2次コイルの組み立てやハンドリングを容易化することができ、また、2次コイルが配線基板(例えば、フレキシブルプリント配線基板)によって保護されることから、2次コイルの安全性や信頼性も向上する。
すなわち、本態様の2次コイルユニットにおいては、配線基板には、第1の2次コイルおよび第2の2次コイルのいずれか一方のコイルのパターン、引き出し配線パターンならびにパッドが設けられている。したがって、その配線基板に、他方のコイルを載置して、例えばパッドと半田付け等するだけで2次コイルが完成する。パッドが設けられていることから、整流部を含む回路との接続も容易である。また、2次コイル(引き出し線を含む)が配線基板に収まっているため、ハンドリングが容易であり、また、2次コイルの本体は、配線基板の外周部から少し離れた内部領域に配置されることから、2次コイルが、外部の物品等と接触する機会が少なくなる。また、配線基板の最上層に、パッド部を除いて最終保護膜を設ければ、2次コイルの安全性や信頼性はさらに向上する。
また、従来の2次コイルも、2次コイルの中心から外周部に延在する引き出し線を設ける必要があり、この引き出し線は所定の厚みがあり、この引き出し線は、2次コイル本体の上に設けられるため、2次コイルの厚みは、2次コイル本体の厚みに、その引き出し線の厚み分を加算した厚みとなっていた。本態様では、その引き出し線の厚みが、配線基板の厚みに代わるだけである。例えば、絶縁性のプラスチックフィルム材をベースフィルムとしたフレキシブルプリント配線基板(FPC)を用いると、ベースフィルムの厚みは、例えば10μm〜50μm程度とかなり薄くすることができる。よって、配線基板による2次コイルの厚みの増大の影響を最小に抑えることができる。
また、例えば、配線基板の表面の配線パターン等と裏面の配線パターン等とを、貫通ビア等によって接続する技術を用いれば、複数の導電パターンを、ショートさせることなく配設することが可能である。
また、例えば、多層配線基板(絶縁体に埋め込まれたコイルを重ね合わせる場合を含む)を用いることによって、1次コイルと第1の2次コイルの距離と、1次コイルと第2の2次コイルの距離とを独立に制御することも容易にできる(より上層のコイルほど、1次コイルとの距離が近くなり、絶縁層の厚み等を適宜調整することによって、1次コイルとの距離を微調整することもできる)。
また、コイル配置についても、第1の1次コイルと、第2の2次コイルとが(電磁的に)干渉しても問題ない(これに対して、スイッチングレギュレータ等で補助巻線による通信を行う場合には、電力伝送用コイルと直交するなど、双方の信号が干渉しないように、通信用コイルを配置する必要がある)。よって、平面コイルを使用する場合には、第1の1次コイルと第2の2次コイルとを同心円状に配置するだけでよく、コイル配置は極めて簡単であり、スペース増大の問題もほとんど問題とならない程度に抑えることができる。
(14)本発明の受電装置の他の態様では、前記配線基板における前記第1の2次コイルおよび第2の2次コイルのいずれか一方のコイルパターンは、前記第2の2次コイルのコイルパターンである。
本態様によれば、第2の2次コイルパターン(つまり、受電制御装置用のコイル)を、配線基板上に予め設けることができる。負荷の定格が変更された場合には、第1の2次コイル(負荷給電用のコイル)の巻線数や1次コイルとの距離を変化させて対応するだけでよい。よって、本態様の2次コイルユニットを用いれば、異なる定格の負荷に対応した受電装置を製造する場合にも、容易に対応することができる。
(15)本発明の受電装置の他の態様は、前記第1の2次コイルおよび前記第2の2次コイルを含む2次コイルを、さらに有する。
本態様では、第1の2次コイルおよび第2の2次コイルは、受電装置(受電モジュール)の構成要素の一つである。
(16)本発明の電子機器の一態様は、上記いずれかに記載の受電装置を含む。
本発明の受電装置は、例えば、負荷への給電と受電制御装置の電源電圧とを最適化でき、無駄がなく小型であり、また、常時通信にも対応可能である、といった優れた特性を有する。よって、その受電装置を備える電子機器も同様の効果を享受する。
(17)本発明の無接点電力伝送システムの一態様は、送電装置と、上記いずれかの受電装置と、を含む。
本態様によれば、高性能で小型であり、常時通信にも対応可能な、無接点電力伝送システムを実現することができる。
次に、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下に説明する本実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではなく、本実施形態で説明される構成のすべてが、本発明の解決手段として必須であるとは限らない。
(第1の実施形態)
図1は、本発明の受電装置の構成の一例を示す図である。図2は、対比例としての従来の受電装置の構成例を示す図である。図2において、受電装置41は、1次コイルL1,2次コイルL2を経由して伝送される電力を給電対象の負荷90に供給する。
図2において、給電対象の負荷90に電力を供給する負荷電力供給部42は、第1の整流部43と、第1の平滑コンデンサーCB1と、レギュレーターREGと、電圧安定化用コンデンサーCX1およびCX2と、給電制御スイッチPSWと、を有している。また、負荷変調部46が、第1の整流部43の出力ノードNA30に接続されている。負荷変調部46は、負荷変調素子としての抵抗RB2と、スイッチング素子(NMOSトランジスター)M5と、を有する。スイッチング素子M5および給電制御スイッチPSWのオン/オフは、受電制御装置50によって制御される。
図2においては、負荷90への電力(電圧)供給ラインLP1は、受電制御装置50への電力(電源電圧)供給ラインでもある。
これに対して、図1では、2次コイルL2は、第1の2次コイルL21と第2の2次コイルL22とに分離されている。第1の2次コイルL21は、給電対象の負荷90への電力供給用コイルであり、第2の2次コイルL22は、受電制御装置(例えばIC)への電力供給用コイルである。なお、参照符号200は磁性体からなるコアを示している。
図1の場合、給電対象の負荷90への電力供給ラインLP1と、受電制御装置50(例えばICで構成される)に対する電力供給ラインLP2とを分離することができる。これに伴って、図1では、第2の2次コイルL22に対応して、第2の整流部53と、第2の平滑コンデンサーCB2とが設けられている。この構成によって、受電制御装置50の電源電圧に対する、給電対象の負荷90の影響を極小化することができる。
よって、給電対象の負荷90に電力を供給する負荷電力供給部42と、受電制御装置50に電力を供給する受電制御装置用の回路部57とを分離して、各々独立に回路設計が可能となり、回路設計が容易化され、また、各部毎の回路の最適化も行い易くなる。
例えば、負荷90の電力定格が変更されたときには、第1の2次コイルL21におけるコイル条件の変更(例えば、巻線数を増減する、1次コイルとの距離を変更する)により対応でき、第2の2次コイルL22についての変更は不要である。
一方、第2の2次コイルL22に関する受電条件を、受電制御装置50の電源電圧に適合させて最適化しておけば、常に、最適な電源電圧を、受電制御装置に与えることができる。第2の2次コイルL22から得られる電圧の電圧変動を許容範囲に収めることができるのであれば、受電制御装置50の電源電圧のためのレギュレーターは不要となる。
また、受電制御装置50は、1チップのICで構成することができ、消費電力も少ない。したがって、第2の整流部53を構成するダイオード等の整流素子の耐圧もそれほど必要ない場合があり、よって、この場合には、第2の整流部を含む回路部57を、1チップのICに集積化することも可能となる。この場合、回路規模の増大の影響を最小化することができる。
また、図1では、1次コイルL1と第1の2次コイルL21との結合度をK1とし、1次コイルとL1第2の2次コイルL22との結合度をK2とした場合に、K1>K2に設定されるのが好ましい。これによって、受電制御装置(例えばIC)の電源電圧に対する、給電対象の負荷の影響を、確実に極小化することができる。
また、図1では、負荷変調部46を第1の2次コイルL21の一端ノードNA20に接続している(NA10に接続してもよい)。第1の整流部43の後段には第1平滑コンデンサーCB1が設けられている。負荷変調部46が第1の整流部43の出力ノードに接続されたとすると、負荷変調素子および第1の2次コイルL21のインピーダンス(1次コイルとの間の結合度にも依存する)と第1の平滑コンデンサーCB1とによって決まる時定数によって、負荷変調された送信信号の波形が鈍る。そこで、図1では、第1の2次コイルL21の一端ノードNA20に負荷変調部46を接続する。この場合、負荷変調部46と第1の平滑コンデンサーCB1との間には、第1の整流部43を構成する非線形素子(ダイオード)が存在し、したがって、負荷変調部46は、非線形素子によって第1の平滑コンデンサーCB1から分離されることになる。よって。第1の平滑コンデンサーCB1による時定数の影響を受けづらくなり、負荷変調後の信号の波形の鈍りが少なくなり、1次側における負荷変調信号の検出が容易となる。
(第2の実施形態)
図3は、本発明の受電装置の他の構成を示す図である。図3では、負荷変調部46が、第2の整流部53の一端ノードNA2に接続されている(他端ノードであるNA1に接続されてもよい)。
上述のとおり、負荷変調部46は、非線形素子によって第2の平滑コンデンサーCB2から分離されることになる。よって。第2の平滑コンデンサーCB2による時定数の影響を受けづらくなり、負荷変調後の信号の波形の鈍りが少なくなり、1次側における負荷変調信号の検出が容易となる。
また、図3では、第2の2次コイルL22から得られる電圧レベルが、給電対象の負荷90にほとんど影響されないことから、常に、負荷変調素子である抵抗RB3の抵抗値(インピーダンス値)を、給電対象の負荷90の大小に応じて変化させる必要がなくなり、この点で、回路設計が容易化される。
(第3の実施形態)
図4(A),図4(B)は、2次コイルユニットの構成例を説明するための図である。図4(A)に示される2次コイルユニットを用いると、2次コイル(L21およびL22)の組み立てやハンドリングを容易化することができ、また、2次コイルが配線基板(例えば、フレキシブルプリント配線基板)によって保護されることから、2次コイルの安全性や信頼性も向上する。
以下、具体的に説明する。なお、以下の説明において、第1の2次コイルL21と第2の2次コイルL22とを入れ替えることも可能である。
すなわち、図4(A)に示される2次コイルユニット(L21,L22を含む)においては、配線基板(ここではフレキシブルプリント基板FPCとする)には、第2の2次コイルL22のコイルパターン(L22)と、裏面の引き出し配線パターンPIN1(L22用)およびPIN2(L21用)と、パッドY1〜Y4と、貫通ビアVIA1,VIA2が設けられている。パッドY1およびY2は、第2の2次コイルL22用の外部接続用パッドであり、パッドY3およびY4は、第1の2次コイルL21用の外部接続用パッドである。
また、配線基板は、例えば、絶縁性のプラスチックフィルム材をベースフィルム210としたフレキシブルプリント配線基板(FPC)であり、このFPCは、層間絶縁層220を有する多層配線基板でもある。第2の2次コイルL22は、第1の2次コイルL21よりも下層に配置される。また、配線基板FPCの裏面には、例えば、両面テープによって磁性体200が接着固定される。
したがって、配線基板FPCに、第1の2次コイルL2を載置して、例えばパッドと半田付け等するだけで2次コイルL2が完成する。パッドY1〜Y4が設けられていることから、整流部を含む回路との接続も容易である。また、2次コイル(引き出し線を含む)が配線基板FPCに収まっているため、ハンドリングが容易であり、また、2次コイルの本体は、配線基板の外周部から少し離れた内部領域に配置されることから、2次コイルが、外部の物品等と接触する機会が少なくなる。また、配線基板FPCの最上層に、パッド部を除いて最終保護膜(不図示)を設ければ、2次コイルの安全性や信頼性はさらに向上する。
また、従来の2次コイルも、2次コイルの中心から外周部に延在する引き出し線を設ける必要があり、この引き出し線は所定の厚みがあり、この引き出し線は、2次コイル本体の上に設けられるため、2次コイルの厚みは、2次コイル本体の厚みに、その引き出し線の厚み分を加算した厚みとなっていた。図4(A)の場合、その引き出し線の厚みが、配線基板FPCのベースフィルム210(厳密にいえば、さらに絶縁層220)の厚みに代わるだけである。
例えば、絶縁性のプラスチックフィルム材をベースフィルムとしたフレキシブルプリント配線基板(FPC)を用いると、ベースフィルム210の厚みは、例えば10μ〜50μ程度とかなり薄くすることができる。よって、配線基板FPCによる2次コイルの厚みの増大の影響を最小に抑えることができる。
また、例えば、配線基板FPCの表面の配線パターン(L21等)と裏面の配線パターン(引き出し線PIN1,PIN2等)とを、貫通ビアVIA1,VIA2等によって接続する技術を用いれば、複数の導電パターンを、ショートさせることなく、効率的に配設することが可能である。
また、上述のとおり、多層配線基板(絶縁体に埋め込まれたコイルを重ね合わせる場合を含む)を用いることによって、1次コイルL1と第1の2次コイルL21の距離と、1次コイルL1と第2の2次コイルL22の距離とを独立に制御することも容易にできる。つまり、より上層のコイルほど、1次コイルとの距離が近くなり、例えば、絶縁層220の厚み等を適宜調整することによって、1次コイルとの距離を微調整することもできる。
また、コイル配置についても、第1の1次コイルL21と、第2の2次コイルL22とが(電磁的に)干渉しても問題ない(これに対して、スイッチングレギュレータ等で補助巻線による通信を行う場合には、例えば、電力伝送用コイルと直交するなど、双方の信号が干渉しないように、通信用コイルを配置する必要がある)。よって、図4(A)のように、平面コイルを使用する場合には、第1の1次コイルL21と第2の2次コイルL22とを同心円状に配置するだけでよく、コイル配置は極めて簡単であり、スペース増大の問題もほとんど問題とならない程度に抑えることができる。
図4(B)に示すように、K1>K2を実現するために、第1および第2の2次コイルL21,L22の各々の巻線数を異ならせることができる。つまり、第1の2次コイルL21の巻線数をn1とし、第2の2次コイルL22の巻線数をn2とした場合、n1>n2に設定することができる。
同様に、図4(B)に示すように、K1>K2を実現するために、第1および第2の2次コイルL21,L22の各々の、1次コイルL1との距離を異ならせることができる。つまり、第1の2次コイルL21と1次コイルL1との距離をd1とし、第2の2次コイルL22と1次コイルL1との距離をd2とした場合に、d1<d2に設定することができる。図4(A)の断面図から明らかなように、第1の2次コイルL21は、絶縁層220の上側に設けられ、第2の2次コイルL22は、絶縁層22の下側に設けられることから、1次コイルL1が設置された場合にはd1<d2の関係が実現される。例えば、絶縁層22の厚みを調整することによって、d1とd2との差を調整することができる。
図5(A)〜図5(D)は、2次コイルユニットの組み立てについて説明するための図である。図5(A)〜図5(C)の各々は、第1の2次コイルL21(引き出し線320を含む)と、磁性体200と、配線基板FPCの各々の平面図を示す。図5(D)に示すように、配線基板FPC上に、第1の2次コイルL21を載置して、コイルの中心部や引き出し線310の各々を、貫通ビアVIA1およびパッドY4の各々に、半田付け等によって接続するだけで、2次コイルユニットが完成する。2次コイルユニットの組み立ては簡単である。また、2次コイルユニットのハンドリングも容易化される。
(第4の実施形態)
図6は、無接点電力伝送システムの構成(受電装置において同期整流を採用した構成)の一例を示す図である。図6の受電装置では、第1の整流部および第2の整流部の各々において同期整流が実行される。
図6に示すように、送電装置11は、送電側制御回路22を内蔵する送電制御装置20と、ドライバー制御回路26と、送電部(送電ドライバー)12と、波形モニター回路14と、1次コイルL1と、1次コイルL1に直列に接続される共振コンデンサーC1と、を有する。送電制御装置20は、送電装置の動作を統括的に制御する。送電制御装置20に含まれる送電側制御回路22は、各種の判断処理を実行し、その結果に基づき、ドライバー制御回路26の動作を制御し、また、受電装置から送られてくるデータの判定処理を実行する。送電部(送電ドライバー)12は、1次コイルの駆動クロック(以下、駆動クロックという)DRCKに基づいて、1次コイルL1を交流駆動する。送電装置から受電装置への通信は、周波数変調(駆動クロックの周波数をf1とf2の間で切り換えること)によって行われる。
一方、図6の受電装置41は、図3における第1の整流部43を、同期整流部(第1の同期整流部)45に置き換え、図3における第2の整流部53を、同期整流部(第2の同期整流部)100に置き換えた構成が採用される。同期整流方式の場合、整流素子として、ダイオードの代わりに、低損失の能動素子(例えばパワーMOSFET)を使用し、受電制御装置50に含まれるタイミング制御回路51が、各能動素子(同期整流素子)のオン/オフを適切なタイミングで切り換える。
まず、第1の同期整流部45について説明する。第1の同期整流部45では、同期整流素子として、4つのパワーMOSトランジスター(NMOSトランジスター)M10〜M40が使用されている。また、4つのパワーMOSトランジスターM10〜M40の各々のソース・ドレイン間には、寄生ダイオード(ボディダイオード)DP10〜DP40の各々が接続されている。第1の同期整流部45における同期整流素子M10〜M40の各々のオン/オフは、タイミング制御回路51から出力されるオン/オフ制御信号(タイミング制御信号)TG10〜TG40の各々によって個別に制御される。
図6のタイミング制御回路51は、第1の同期整流部45に設けられている電流方向検出抵抗RC1の両端の電圧Vsp1およびVsn1に基づいて、同期整流素子M10〜M40の各々のオン/オフのタイミングを制御する。同期整流素子M10およびM40と、同期整流素子M20およびM30とは相補的にオンする。すなわち、同期整流素子M10およびM40がオン状態のときは、同期整流素子M20およびM30はオフ状態を維持し、逆に、同期整流素子M20およびM30がオン状態のときは、同期整流素子M10およびM40がオフ状態を維持する。
タイミング制御回路51は、例えば、電流方向検出抵抗RC1を流れる電流の向きの逆転が検出されたタイミング(すなわち、第1の平滑コンデンサーCB1に蓄積されている電荷の逆流が検出されたタイミング)で、例えば、同期整流素子M10およびM40をオン状態からオフ状態に切り換え、これと同期して、同期整流素子M20およびM30をオフ状態からオン状態に切り換える。第1の平滑コンデンサーCB1の近くに設けられている電流方向検出抵抗RC1によって、実際の逆流を検出して、迅速に整流ブリッジの切り換え動作を実行するため、効率の高い同期整流が可能である。
同期整流方式を採用し、同期整流素子のスイッチングを適切なタイミングで制御することによって、整流部における損失を低減することができる。受電装置41における負荷電力供給部42は、負荷90に必要な電力を効率的に供給しなければならないため、負荷電力供給部42に同期整流部45を設けることは有効であり、特に、負荷90に比較的大きな電力を供給する場合において有効である。
なお、本明細書では、同期整流方式を実現するために使用される能動素子を、「同期整流素子」という。低損失であり、かつ、制御信号を制御ノードに入力することによってオン/オフを制御することが可能な能動素子であれば、その種類は問わない。MOSトランジスターは、省電力性に優れ、耐圧も高いため、同期整流素子として適している。全波同期整流部の構成としては、例えば、整流ブリッジを構成する4つの素子をすべて同期整流素子とすることができ、また、例えば、ハイサイドスイッチとしてダイオードを用い、ローサイドスイッチのみを同期整流素子とすることができる。また、第1の平滑コンデンサーCB1の両端のノードNA30とNA40との間には、2つの分圧抵抗RB40およびRB50が直列に接続されており、分圧抵抗RB40およびRB50の共通接続点から得られる電圧(つまり、同期整流部45の出力モニター電圧)が、タイミング制御回路51に供給される。
次に、第2の同期整流部100について説明する。第2の同期整流部100では、同期整流素子として、4つのパワーMOSトランジスター(NMOSトランジスター)M1〜M4が使用される。また、4つのパワーMOSトランジスターM1〜M4の各々のソース・ドレイン間には、寄生ダイオード(ボディダイオード)DP1〜DP4の各々が接続されている。また、第2の同期整流部100における同期整流素子M1〜M4の各々のオン/オフは、タイミング制御回路51から出力されるオン/オフ制御信号(タイミング制御信号)TG1〜TG4の各々によって個別に制御される。タイミング制御回路51は、同期整流部100に設けられている電流方向検出抵抗RC2の両端の電圧Vsp2およびVsn2に基づいて、同期整流素子M1〜M4の各々のオン/オフのタイミングを制御する。同期整流素子M1およびM4と、同期整流素子M2およびM3とは相補的にオンする。すなわち、同期整流素子M1およびM4がオン状態のときは、同期整流素子M2およびM3はオフ状態を維持し、逆に、同期整流素子M2およびM3がオン状態のときは、同期整流素子M1およびM4がオフ状態を維持する。
タイミング制御回路51は、例えば、電流方向検出抵抗RC2を流れる電流の向きの逆転が検出されたタイミング(すなわち、第2の平滑コンデンサーCB2に蓄積されている電荷の逆流が検出されたタイミング)で、例えば、同期整流素子M1およびM4をオン状態からオフ状態に切り換え、これと同期して、同期整流素子M2およびM3をオフ状態からオン状態に切り換える。第2の平滑コンデンサーCB2の近くに設けられている電流方向検出抵抗RC2によって、実際の逆流を検出して、迅速に整流ブリッジの切り換え動作を実行するため、効率の高い同期整流が可能である。全波同期整流部の構成としては、例えば、整流ブリッジを構成する4つの素子をすべて同期整流素子とすることができ、また、例えば、ハイサイドスイッチとしてダイオードを用い、ローサイドスイッチのみを同期整流素子とすることができる。また、第2の平滑コンデンサーCB2の両端のノードNA3とNA4との間には、2つの分圧抵抗RB4およびRB5が直列に接続されており、分圧抵抗RB4およびRB5の共通接続点から得られる電圧(つまり、同期整流部100の出力モニター電圧)が、タイミング制御回路51に供給される。また、同期整流部100の整流出力電圧は、電源電圧VDDとして受電制御装置50に供給される。
受電装置41から送電装置11への通信は、上述のとおり、負荷変調(受電装置の負荷を強制的に変化させること)によって実行される。第2の2次コイルL22の両端のノードNA1およびNA2間には、2つの分圧抵抗RB1およびRB2が直列に接続されている。分圧抵抗RB1,RB2は、第2の2次コイルL22の両端電圧を抵抗分圧する。分圧抵抗RB1,RB2の共通接続点からは、駆動クロックDRCKの周波数と同じ周波数をもつ正弦波が得られ、その正弦波は、受電制御装置50に設けられているタイミング制御回路51に供給される。タイミング制御回路51は、DRCK再生部(不図示)によって、正弦波を波形整形して駆動クロックDRCKを再生する。そして、タイミング制御回路51は、その再生された駆動クロックに基づいて、同期整流部100の動作および負荷変調部46の動作を制御する。また、タイミング制御回路51は、制御信号RG10によって、レギュレーター(REG)48の動作を制御する。
また、図6では、負荷変調部46におけるスイッチング素子M5として、同期整流素子としてのNMOSトランジスターM1〜M4と同じ製造方法で製造された、逆回復特性等が揃ったNMOSトランジスターM5を用いている。これによって、負荷変調が同期整流動作に与える影響を小さくすることができる。
また、図6の無接点電力伝送システムでは、受電装置41から送電装置11への通信に関して、常時通信を実現することができる。「常時通信」とは、「通常送電期間(給電対象の負荷に供給する電力を連続的に送電する期間)において、給電対象の負荷への電力の供給を止めることなく負荷変調によるデータ通信を行うこと」であり、これによって、通常送電期間において、自由かつ連続的に(つまり、時期を選ばず、かつ中断することなく常時)データを2次側から1次側に送信することができる(つまり、通常送電期間中に常に負荷変調を行うという意味ではなく、給電対象の負荷への給電を止める必要がないことから、負荷変調動作に関して、給電対象の負荷に関係する制限が生じず、時間を選ばずに自由な期間において連続的な通信が可能であるという意味であり、もちろん必要ならば、通常送電期間の全期間にわたって常時、負荷変調処理を実行することも可能である)。「常時通信」は、例えば、「給電対象の負荷への連続給電を止めることのないデータ通信」と言い換えることができる。
図6の受電装置41では、上述のとおり、負荷変調部46は、整流部を構成するダイオードやトランジスターといった非線形素子(電流が入力電圧に比例しない素子,一般的には出力が入力の1次関数とならない素子)によって分離されていることから、負荷変調部46は、第2の平滑コンデンサーCB2の影響をほとんど受けず、変調後の信号の波形鈍りが少ないことなら、負荷への給電を止めることなく、実用に耐える通信品質をもつデータ通信が可能である。つまり、通常送電期間において、自由かつ連続的に(つまり、時期を選ばず、かつ中断することなく常時)データを2次側から1次側に送信することができる。また、図6の受電装置41では、第2の同期整流部100においても同期整流方式が採用されており、同期整流素子としてMOSトランジスターM1〜M4が採用されており、MOSトランジスターの耐圧は高いことから、図6の受電装置41では、整流部の素子耐圧が不足する事態が生じにくいという利点がある。
(第5の実施形態)
図7は、無接点電力伝送システムの構成(受電装置において同期整流を採用した構成)の他の例を示す図である。図7では、図6における第2の同期整流部100が、ダイオード整流部101(4つのダイオードDB1〜DB4を有する)に置き換えられている。その他の構成は、図6に示される回路構成と同じである。第2の整流部(つまり、ダイオード整流部101)は、受電制御装置50の電源電圧を出力できればよく、また、負荷90への給電に関与する第1の整流部(つまり、第1の同期整流部45)に比べて、素子耐圧が問題とならない場合もあると考えられる。このような場合には、第2の整流部において同期整流方式を採用しないで、ダイオード整流方式を採用することによって、タイミング制御回路51の負担が軽減され、回路の専有面積の削減効果を得ることもできる。上述のとおり、ダイオード整流部101をICチップに含めることができれば、回路の占有面積のさらなる削減が可能である。例えば、整流出力電圧が小さい場合には、同期整流方式を用いると、例えば、MOSトランジスターのスイッチングロスが顕在化する場合があり、このような場合には、本実施形態の回路構成を用いることが好ましい。
(第6の実施形態)
本実施形態では、第4の実施形態における受電装置(第1の同期整流部45および第2の同期整流部100を有し、かつ、第2の2次コイルL22に接続した負荷変調部46によって負荷変調を行う回路構成)をさらに発展させ、図6における負荷変調素子RB3をなくし、かつ第2の同期整流部100を構成する同期整流素子(M1〜M4)の少なくとも一つを負荷変調用のスイッチング素子としても使用する。
図8は、負荷変調素子をなくした受電装置の回路構成の一例を示す図である。図8に示される第2の同期整流部100における、同期整流素子M2の駆動信号TGXを得るために、2入力のオア回路ORが設けられている。このオア回路ORには、タイミング制御回路51から、タイミング制御信号TG2と、負荷変調信号MOとが入力される。
例えば、一つの同期整流素子(図8の場合、同期整流素子M2)がオフ状態であるときに(つまり、同期整流用のタイミング信号TG2が非アクティブレベル(L)のときに)、負荷変調信号(負荷変調指示信号)MOをアクティブレベル(H)にすると、同期整流素子が瞬時的にオンして、第2の2次コイルL22の両端の電圧波形が急激に変化し、その電圧変化が1次側に伝達される。1次側は、例えば、1次コイルL1のコイル端電圧における、しきい値Vthを越える電圧変化を検出して、“1”または“0”のデータを検出することが可能である。例えば、1次コイルL1と第2の2次コイルL22との結合度K2を、1次コイルL1と第1の2次コイルL21との結合度K1に比べて十分に小さく設定しておけば、第2の2次コイルL22に接続される同期整流部(第2の同期整流部)100の整流動作の途中において負荷変調をして瞬時的な電圧変動が生じたとしても、1次側の送電制御装置20で検出される電圧変化は、許容範囲内に十分に収まり、よって、1次側では、適正なデータ受信が可能である。
図9(A)〜図9(C)は、図8の受電装置における同期整流部の、同期整流動作および負荷変調動作を説明するための図である。図9(A),図9(B)は、第2の2次コイルL22における両端電圧の正極性期間、負極性期間における電流の流れを示している。図9(B)の状態の途中で、負荷変調信号MOをアクティブレベルにして同期整流素子(兼負荷変調素子)M2をオンさせると、同期整流素子(兼負荷変調素子)M2のソース・ドレインが共にVSS電位(VSS:低電位電源電圧であり、接地電位等である)となる。したがって、図9(C)に示すように、電流の流れが変化し、第2の2次コイルL22のコイル端電位は急激に変化する。
図10(A)〜図10(C)は、同期整流部の入力電圧波形または出力電圧波形を示す図である。図10(A)のような交流電圧VNA1とVNA2とが入力されると、通常の全波整流によって、図10(B)のような出力電圧VNA3が得られる。このとき、図9(C)に示すような負荷変調が実行されると、第2の2次コイルL22のコイル端電圧VNA1は、例えば図10(C)のようになり、電圧波形は瞬時的には大きく変化する。
ここで、負荷変調期間Tmod(時刻t1〜時刻t2)を短く設定すれば、整流部の整流波形の乱れを最小限に抑えることができ、第2の平滑コンデンサーCB2によってその電圧変動を吸収できれば、受電制御装置用の電源電圧の微小な変動は、特に問題とならない。また、その電源電圧変動を完全に抑制したいような場合には、必要ならば第2の2次コイルL22と受電制御装置50との間に、受電制御装置の電源電圧調整用のレギュレーターを設ければよい。
また、上述のとおり、第2の2次コイルL22と1次コイルL1との結合度K2が、第1の2次コイルL21と1次コイルL1との結合度よりも小さければ(好ましくは十分に小さければ)、第2の2次コイルL22から1次側に送信される負荷変調信号による影響は、給電対象の負荷90への電力供給動作にはほとんど影響を及ぼさない。
本実施形態によれば、負荷変調素子が不要であり、負荷変調のためだけのスイッチング素子も不要であり、回路構成が簡素化され、回路の省スペース化に有利である。
(第7の実施形態)
本実施形態では、無接点電力伝送システムおよび電子機器の構成と動作の一例について説明する。
図11は、無接点電力伝送システムの動作の一例(携帯端末に備わる給電対象の負荷を、クレードルからの送電によって充電する例)を示す図である。
図示されるように、待機状態においては、送電側機器(クレードル)500に内蔵される送電制御装置は、受電側機器(携帯電話機)510の着地(セッティング)を、例えば、0.3秒に1回、検出し(ステップS1)、これによって、受電側機器の着地(セッティング)が検出される(ステップS2)。
次に、送電装置11と受電装置41との間で、種々の情報の交換(ネゴシエーション)が実行される(ステップS3)。ID認証によって、受電装置が適切な送電対象であることが確認された後に、通常送電(充電)が開始される。通常送電が開始されると、受電側機器(携帯電話機)510に設けられているLEDが点灯する。
通常送電中において、満充電が検出されると、満充電通知が受電装置から送電装置に送信され、これを受信した送電装置は、通常送電を停止する(ステップS4)。通常送電が停止されると、受電側機器(携帯電話機)510に設けられているLEDが消灯する。そして、満充電検出後の待機フェーズに移行する(ステップS5)。
満充電検出後の待機状態では、例えば、5秒に1回の取り去り検出が実行され、また、10分に1回、再充電の要否の確認が実行される。満充電後に受電側機器(携帯電話機)510が取り去られると、初期の待機フェーズに戻る(ステップS6)。また、満充電後に再充電が必要と判定されると、ステップS3に復帰する(ステップS7)。また、ステップ3の状態において、受電側機器(携帯電話機)510の取り去りが検出された場合には、初期の待機状態に復帰する(ステップS8)。
本発明の受電装置は、例えば、負荷への給電と受電制御装置の電源電圧とを最適化でき、無駄がなく小型であり、また、常時通信にも対応可能である、といった優れた特性を有する。よって、その受電装置を備える電子機器も同様の効果を享受する。また、上述のとおり、高性能で小型であり、常時通信にも対応可能な、無接点電力伝送システムが実現される。
なお、本発明の実施形態について詳述したが、本発明の新規事項および効果から逸脱しない範囲で、多くの変形が可能であることは、当業者には容易に理解できるであろう。したがって、このような変形例は、すべて本発明に含まれるものとする。
例えば、同期整流素子としては、種々のスイッチング素子を使用することができる。また、例えば、負荷変調部の構成は、上述の実施例に限定されるものではなく、種々の回路構成を採用することができる。本発明は、整流回路として半波整流回路を用いる場合にも適用可能である。本発明の実施形態にかかる受電装置は、例えば、小型であり、無駄な電力消費が少なく、常時通信にも対応できるという効果を奏するため、種々の電子機器に搭載することができる。
本発明は、例えば、受電装置、電子機器(携帯端末等)および無接点電力伝送システム(例えば携帯端末の無接点充電システム)等として有用である。