次に添付図面を参照して本発明によるゲートウェイ装置の実施例を詳細に説明する。図1を参照すると、本発明によるゲートウェイ装置10(GW)の実施例は、所定の通信プロトコル(通信規約)により通信サービスを提供する複数の通信網間の通信を実行すべく、必要に応じて装置10の後述する各部と連動しつつ、通信プロトコルの変換などゲートウェイ装置10の全体的な制御を行う制御部12を有している。
またゲートウェイ装置10は、通信網間通信を実行するために制御部12から必要な制御信号を受け取ることができるよう任意に接続された、装置10および通信網間においてデータ情報などを含む信号を入出力するためのインタフェースたるポート14a〜14cを有する。制御部12とポート14の詳細な接続態様については、制御部12および装置10内の各部の接続態様と併せて後述する。
さらに、各ポート14a〜14cはシリアルやパラレルの伝送方式を用いた通信回線16a〜16cのような任意の通信線を介して通信網20a〜20cと接続されている。本図では通信網20およびポート14はそれぞれ3つずつ示されているが、これは単に説明の便宜上の問題であり、ゲートウェイ装置10と接続される通信網20およびそのために必要なポート14の数は任意でよい。
ゲートウェイ装置10はかかる構成により、通信情報の送信元が属する通信網(例えば通信網20a)から情報を受け取り、制御部12などの働きにより必要なプロトコルの変換を行って、送信先が属する通信網(例えば通信網20b)へ情報を受け渡すことにより、異なる通信網間での通信を成立させる。
通信網20a〜20cをゲートウェイ装置10で接続することによって構築されたネットワークは図2で示されている。ここで通信網20a〜20cは、ISDN(Integrated Services Digital Network)、イーサネット、FDDI(Fiber Distributed Data Interface)(登録商標)、トークンリングなど任意の、通信網ごとに所定の通信プロトコルを有する通信網である。すなわち、本発明は、公知のいかなる通信プロトコルを有する通信網と接続しても使用することが可能である。
通信網20a〜20cは複数のゲートウェイ装置10a、10bを介して相互に接続されている。ここでは、通常時の網間通信に用いられるゲートウェイ装置を装置10aとおき、他方、装置10aを経由するルートに何らかの異常が発生して円滑な通信が行えなくなった場合に装置10aに代わって情報の送受信やプロトコル変換などを実行する待機系のゲートウェイ装置を装置10bとおいている。通信網20a〜20cは、通信回線16a〜16cを用いてゲートウェイ装置10aと接続されているのと同様に、待機系の装置10bとも通信回線16d〜16fを用いて接続されている。
また、通信網20a〜20cはそれぞれ、回線22a〜22cを介して接続された、利用者が通信データを送受信するための操作の用に供する端末24a〜24cを有する。かかるネットワークの構成により、例えば端末24aの利用者が端末24bの利用者への通信を企図した場合、通常時には端末24aから入力されたデータは回線22a、通信網20aおよび通信回線14aを経てゲートウェイ装置10aに供給され、装置10aで必要なプロトコル変換を行い、変換されたデータは通信回線14b、通信網20bおよび回線22bを経て端末24bへ送信されることとなる。
さらに、本ネットワークを構成する通信網20a〜20cはそれぞれ、網間通信に使用中のゲートウェイ装置10aの障害発生を検出する検出部26a〜26c、および検出部26a〜26cによりゲートウェイ装置10aに障害が検出された場合には、予備的に設けられているゲートウェイ装置10bを経由する通信ルートに切り替える切替部28a〜28cを有するものとする。すなわち、本ネットワークを構成する通信網20a〜20cはいわゆる迂回機能を有する通信網であるとする。
本実施例の説明では、ゲートウェイ装置10aおよび10bに接続されている通信網は説明の便宜上通信網20a〜20cの3つであるが、ゲートウェイ装置10に接続される通信網20の数はもちろん任意である。
かかるネットワーク構成により、例えば通常時には通信網20aから20bへの通信に装置10aが用いられているとして、装置10aと通信網20bとの間に障害が発生した場合でも、通信網20aは装置10bを介して通信網22bへの通信を実行することができる。
図1に戻り、ゲートウェイ装置10のその他の構成要素についてもさらに詳しく説明する。本実施例においては、図1に示す通り、装置10内の構成要素および装置10外の間におけるデータおよび信号などの授受は、装置10内に設けられデータや信号の経路となる通信バス30を介して行われるものとしている。例えば、制御部12は信号線32を介して通信バス30と接続され、さらに通信バス30は信号線34a〜34cを介してそれぞれポート14a〜14cと接続されている。このように通信バス30を設ける構成によって、制御部12からポート14a〜14cへの制御信号の送信または受信、さらには制御部12や後述する各部のような装置10内の構成要素相互間における信号やデータの送受信などが可能となる。もっとも、通信バス30を設置したこの接続態様は、あくまで本発明の説明が平易なものとなるように、便宜上一例として配線されたにすぎず、信号処理効率や製造費等の諸条件を考慮したうえで最適の接続構成を適宜採用してよい。
ゲートウェイ装置10は、信号線38、通信バス30を介してポート14a〜14c、および制御部12と接続され、制御部12からの監視命令に応じて常時もしくは定期的に通信網20a〜20cの状態を監視する監視部40を有する。監視部40は、ポート14a〜14cを介して通信網20a〜20cから受け取る情報を元に、または自ら発信する信号に対する通信網側からの応答の有無など適宜の方法で通信網20a〜20cの障害の有無を監視し、通信網20a〜20cのいずれかが障害状態にあると判断した場合には、障害検出信号を制御部12へ送信する。
また、ゲートウェイ装置10は、信号線44、通信バス30を介してポート14a〜14cおよび制御部12と接続され、監視部40によって装置10およびいずれかの通信網20の間に障害発生が検出された場合には、制御部12からの命令信号の受信に応じて障害発生が検出された通信網20に対向する通信網と接続するポート14a〜14cに擬似的な障害を生成させる擬似障害生成部46を有する。すなわち、例えばゲートウェイ装置10から見て通信網20b側に障害の発生を検出した場合には、通信網20bに対向する通信網20a、20cと接続するポート14aおよび14cに擬似的な障害を生成させる。また擬似障害生成部46は、通信網20a〜20cの障害を検出した監視部40が当該障害の消滅をその後検出した場合には、制御部12からの命令に応じてポート14a〜14cに生成させた擬似的な障害を解消させることもできる。
さらに、ゲートウェイ装置10は、信号線48および通信バス30を介して制御部12や監視部40、擬似障害生成部46などの各部と接続され、通信を実現するためのプロトコルスタック等が実装される記憶部50を有する。さらに記憶部50には、どのポートにどのような擬似障害を生成させるかについて設定された擬似障害状態データ52が保持されている。また、記憶部50は制御部12から記憶命令信号を受け取ることにより、擬似障害状態の有無など、その時点におけるゲートウェイ装置10の状態を記憶することができる。
図3には、記憶部50で設定保持されている擬似障害状態データ52の一例が示されている。擬似障害状態データ52としては、例えば方路54、通信層56、擬似障害処理58および対向装置の障害検出60のようなデータを含む様々なタイプのデータD1〜D4が記憶されている。
方路54では、通信回線16a〜16cと接続され通信網20a〜20cとの間で信号の入出力を行うポート14a〜14cを示している。
通信層56では、OSI参照モデル(Open Systems Interconnection Reference Model)によって定義された7つの通信機能層のことを示している。例えばポート14aがISDN通信網に接続される場合、レイヤ1(物理層)の通信機能としては、ビットストリームでBch(Bチャネル)やDch(Dチャネル)による伝送機能や同期機能などが挙げられる。本図の通信層56ではレイヤ1のほかレイヤ2(データリンク層)、レイヤ3(ネットワーク層)およびレイヤ7(アプリケーション層)のみが示されているが、これはあくまで例示的なものであり、本図で挙げられていないレイヤが通信層56の内容として記憶されることを妨げるものではない。
擬似障害状態データ52における擬似障害処理58とは、障害が発生した通信網と対向する通信網と接続しているポートに対し、擬似障害生成部46が具体的に生成させる擬似的な障害状態の処理内容である。例えばポート14aがISDN通信網に接続される場合、擬似障害生成部46はポート14aに対して送出フレームを遅延送出させる処理を行うことによって、通信網20aの検出部26aに対して同期はずれの障害が発生したと識別させる。記憶部50にデータ52の一部として記憶される擬似障害処理58には、例えばISDN網、イーサネット網などのように、本実施例に係る装置10と接続し得るあらゆる通信網に対して装置10に障害が発生したとして認識させる擬似障害を設定可能である。
対向装置の障害検出60とは、装置10の擬似障害生成部46により記憶部50に記憶されたいずれかの擬似障害処理58がなされ、そしてこの擬似異常状態58をゲートウェイ装置10と対向する通信網20の検出部26が検出したときにその通信網20が識別する具体的な障害状態のことを指す。
したがって、記憶部50に保持された擬似障害状態データ52に基づき、制御部12により例えば方路54を「ポート14a」、通信層56を「レイヤ1」、擬似障害処理58を「送出フレーム遅延送出」、対向装置の障害検出60を「同期はずれ」とのデータタイプD1の設定実行が擬似障害生成部46に指令された場合、擬似障害生成部46はかかる指令を実行することによって、ポート14aのレイヤ1において送出フレームを遅延送出する処理を行うことで、ポート14aと接続する通信網20aに「同期はずれ」の障害状態を識別させる。
もちろんのこと、図3に示された擬似障害処理58は例示的なものであり、通信層56の通信プロトコルに対応する擬似障害処理58を適宜に設定することが可能である。
図3によると、ひとつのポートに対して複数の擬似障害処理58が用意されている。これによって、生成する擬似障害処理58を所定の時間ごとに変更することができる。その結果、たとえゲートウェイ装置10に接続される通信網20が例えば同期はずれ状態から自動に回復する機能を有する通信網であったとしても、所定の時間後には装置10にB&Dchフレーム非送出のような別の擬似障害処理58が実行されるので、通信網20に装置10には障害が発生していると識別させる確率を高めることができる。
制御部12はゲートウェイ装置10の全体的な制御を行うものであることは既に述べた通りであるが、本発明の理解を助けるため、ここで制御部12内に設けられている様々な機能を実現するいくつかの要素について図4を参照しながら説明する。
制御部12は、複数の擬似障害状態データ52が記憶部50に保持されている場合において、ポート14に生成させる擬似障害処理58を、例えば5秒ごとなど所定の時間ごとに変化させるべく擬似障害生成部46を制御する変化部62を有していてもよい。
また制御部12は、監視部40によって通信網20のいずれかに検出された障害がその後解消したことがさらに検出された場合に、擬似障害処理58の実行によりポート14に生成された擬似的な障害を解消させる用に供する擬似障害生成部46を制御する復旧部64を有していてもよい。
さらに制御部12は、どの程度の時間ごとに障害の有無を検出するかという監視部40の監視周期、異常なデータが連続もしくは通算で何度検出されたときにそれを障害と判断するかという監視部40の検出回数などを調整する調整部66を有していてもよい。かかる調整部66を設けて、想定され得る異常に応じて監視条件を調整することによって、通信の続行に支障のない軽微な異常や瞬間的に回復し得る異常までもが即座に通信障害と判断されてしまうことを防ぐことができる。
ところで本実施例においては、ゲートウェイ装置10内に設けられた制御部12と、制御部12による制御を受けて通信網20の監視をする監視部40、擬似障害状態の生成をする擬似障害生成部46とは、装置10内に設けられる構成要素の作用を明確にするために別々に示した。しかしながら、これらの構成要素の一部または全部はハードウェア的あるいはソフトウェア的に一体と構成されていたとしても構わない。例えば制御部12が監視部40および擬似障害生成部46の役割を兼ねるよう一体的に構成されてもよい。
本実施例においては制御部12の内部要素として説明した変化部62、復旧部64および調整部66についても同様に、たとえば変化部62や復旧部64を擬似障害生成部46の内部要素として設けるなどゲートウェイ装置10内において任意の構成を採りうることはもちろんである。
続いて、図5および図6を参照しつつ、ゲートウェイ装置10と接続されている通信網20のいずれかに通信障害が発生した場合における、装置10の基本的動作および装置10の動作に対応する通信網20の動作の説明を行う。
通信網20a、20b間の通常時の通信に処理されているゲートウェイ装置10が装置10aである場合、装置10aの監視部40は、装置10aと接続されている通信網20a、20bの状態を監視している。そのため、例えば装置10aと通信網20bの間に正常な通信を妨げる何らかの障害が発生した場合には、ゲートウェイ装置10aは監視部40による障害発生の検出を通じて障害の発生を認識する(ステップS10)。
ゲートウェイ装置10aから見て通信網20b側での障害の発生が検出された場合、装置10aの制御部12は、擬似障害生成部46に指令を送り、記憶部50に保持されている擬似障害状態データ52に基づいて、障害が発生した通信網20bに対向する通信網20aと接続されているポート14aを擬似障害状態に移行させる(ステップS20)。
具体的に生成される擬似障害状態は、各ポートと接続されている通信網の通信プロトコルに応じて擬似障害状態データ52のデータタイプD1〜D4の中から選択される。例えば通信網20aがISDN網である場合には、制御部12の命令により擬似障害生成部46で生成されるポート14aの擬似障害は、例えばデータタイプD1の、レイヤ1の送出フレーム遅延送出である。
さらに、ゲートウェイ装置10は、制御部12から記憶部50を制御して、装置10自身がどのような擬似障害状態になったことを示す情報を記憶させる(ステップS30)。
擬似障害が生成されたポート14aと接続されている通信網20aは、その検出部26aによりゲートウェイ装置10に障害が発生していることを検出する(ステップS40)。ゲートウェイ装置10内での障害の発生を検出した通信網20aは、切替部28aによって、通常時の網間通信に使用してきた装置10aに代わって、待機系のゲートウェイ装置10bを経由する、いわゆる迂回ルートによって通信網20bとの通信を実行できるように設定を切り替える(ステップS50)。その結果、通信網20aおよび20bの間の正常な通信は回復する。
このように、ゲートウェイ装置10は一方の通信網20bの障害検出を契機に対向する通信網20aと接続されているポート14aを自動的に擬似障害状態に移行させることによって、他方の通信網20aの迂回通信を積極的に促すことが可能となる。
この説明では、通信網20bに障害が発生した場合における、通信網20aおよび20b間の正常な通信を担保するためのゲートウェイ装置10の動作を例に挙げて説明した。しかしながら、もちろんのこと通信網20cおよび20b間の通信の正常な通信を担保するために装置10が通信網20cに接続されたポート14cに対して実行する動作も同様である。そのため、それぞれの通信網20a〜20cに設置されている端末24a〜24cの利用者は、たとえいずれかの通信網20に障害が発生しようとも障害不発生時と何ら変わらず他の端末24の利用者と通信を行うことが可能である。
同様の原理により、通信網20b側での障害の発生によりゲートウェイ装置10bを介した迂回ルートが選択されている場合において、その後通信網20b側の障害が解消し、装置10aの監視部40が障害の解消を検出したときには、復旧部64の指令により、通信網20bと対向する通信網20aや20cに通信網間のルートを速やかに通常時のルートに復旧させるよう促すことも可能である。
迂回ルートから通常ルートへの復旧を促す装置10の基本的動作および装置10の動作に対する通信網20の動作の一例を、図7を用いて説明する。
通常時の通信網間通信の中継に用いられるゲートウェイ装置10aは、装置10aからみて通信網20b側の障害発生により通信情報の送受信およびプロトコル変換装置としての働きを休止しているときでも、監視部40によって通信網20b側の障害状態の監視を続ける。これにより、やがて装置10aと通信網20bの間に発生した障害が解消された場合には、障害解消の事実を検出することができる(ステップS60)。
監視部40は、通信網20b側に生じていた障害状態の解消を検出したときには、制御部12に障害の解消を通知する。この通知を受けた制御部12内の復旧部64は、擬似障害生成部46に対して擬似障害状態の生成終了を命じる。この命令を受けて擬似障害生成部46は、ポート14a、14cに作っていた擬似障害処理58による状態を正常状態に戻す(ステップS70)。ゲートウェイ装置10は、装置10が擬似障害状態から回復したことを示す情報を記憶すべく、制御部12から記憶部50を制御して回復後の装置10の状態を記憶させる。(ステップS80)
擬似的な障害から回復したポート14aと接続されている通信網20aは、その検出部26aによりゲートウェイ装置10の障害状態が回復したことを検出し(ステップS90)、切替部28aによって、障害発生時の網間通信用に使用してきた装置10bに代わって、通常時に用いるルートであるゲートウェイ装置10aを用いての通信網20bとの通信を実行するように設定を戻す(ステップS100)。
このように、一方の通信網の障害状態が解消した場合には速やかに通信網間の通信ルートを通常時のルートに復旧させるよう促す構成をゲートウェイ装置10に設けることによって、網間通信に使用するゲートウェイ装置10の切替えおよびその復旧のいずれの実行にあたっても、端末24の利用者に悪影響を与えることなく円滑にネットワーク処理することが可能となる。
ところで、通信網20によっては、接続するゲートウェイ装置10に何らかの障害が発生していることを検知した場合、自動的に障害状態を克服して通信を続行しようと試みる障害回復機能を有している場合がある。その場合、ゲートウェイ装置10内に擬似障害を作り出したとしても、通信網20の障害回復機能が働いてあくまで迂回ルートに切り替えずに網間通信を続行しようとすることになる。しかしながら、ゲートウェイ装置10および他方の通信網間に存在する障害が回復したわけではないため、依然として正常な通信は不可能である。
このような事態を防ぎ、障害が発生した側とは他方の側の通信網に使用中の通信経路が障害状態にあることを識別してもらう確率を高めるため、記憶部50には1のポートに対して複数の擬似障害処理58、そして擬似障害状態の変化を制御する変化部62を用意しておき、擬似障害処理58を所定の時間ごとに変更可能な構成をとってもいいことは先に述べたとおりである。ここでは、時間に応じて異なる擬似障害状態を生成可能な構成をとった場合のゲートウェイ装置10の動作を説明する。
本説明における図2のネットワークにおいては、通信網20aはISDN網であり、通信網20cはイーサネットであるものとする。また、ISDN通信網20aと接続されているポート14aはISDN対応のポート、イーサネット通信網20cと接続されているポート14cはLAN(Local Area Network)規格IEEE802.3(the Institute of Electrical and Electronic Engineers 802.3)対応のポートであるものとする。もちろん、この設定条件は単なる実施例の一態様にすぎず、ゲートウェイ装置10はいかなる通信プロトコルの通信網と接続していたとしてもよい。
ゲートウェイ装置10が時間ごとに異なる擬似障害状態を生成する場合には、図5および図6で示した装置10aの動作のうち、ステップS20およびステップS30に相当する動作が複数回繰り返されることとなる。この場合にゲートウェイ装置10aのとる動作の説明を、添付された図8を参照しながら説明する。
通信網20a〜20cと接続され情報の送受信やプロトコル変換を実行中であるゲートウェイ装置10aは、監視部40によって各通信網20の通信障害発生の有無を監視する。例えば通信網20b側から正常な通信を妨げる障害を検出した場合(ステップS110)には、監視部40は制御部12に検出信号を送信して障害発生を知らせる(ステップS120)。
通信網20bにおける通信障害発生を識別した制御部12は、ゲートウェイ装置10aを自動的に擬似障害状態に移行させるための処理として、記憶部50で保持する擬似障害状態データ52を参照し(ステップS130)、例えば最上段に記載されたデータタイプD1の設定を実現するよう擬似障害生成部46に指令を送る(ステップS140)。指令を受けた擬似障害生成部46はデータタイプD1の擬似状態を生成する処理を行う(ステップS150)。具体的には、擬似障害生成部46はポート14aのレイヤ1において、記憶部等に実装されたプロトコルスタックで規定されている送出タイミングを超える間隔でフレーム送出を行うようにさせる。例えば、プロトコルスタックで1秒間隔の場合には1.3秒などの1秒を超える間隔で送出する。また、ゲートウェイ装置10aと通信網20aの間において通信タイミングを同期している場合には、故意に同期を逸脱するタイミングでフレーム送出するようにする。このようにして対向装置である通信網20aに「同期はずれ」の障害状態を識別させる。
ゲートウェイ装置10a内でデータタイプD1に設定された擬似障害状態が実行された後には、制御部12は装置10自身がデータタイプD1の擬似障害状態になったことを示す情報を記憶部50に記憶させる制御を行う(ステップS160)。
その後、例えば5秒などの所定時間が経過した後、変化部62を含む制御部12は、ポート14aに生成される擬似障害処理58を変更するための制御を開始する。まず、制御部12は記憶部50で保持する擬似障害状態データ52を参照し(ステップS170)、今度はポート14aに係わる次のデータとして、データタイプD2の設定を実現するよう擬似障害生成部46に命じる(ステップS180)。命令を受けた擬似障害生成部46はデータタイプD2の擬似状態を生成する処理を行う(ステップS190)。具体的には、擬似障害生成部46はポート14aのレイヤ2において、B&Dchフレームを非送出する処理を行う。ここで、B&Dchフレームを非送出するとき、制御部12はゲートウェイ装置10に実装されているプロトコルスタックで規定されている呼制御メッセージに基づき、呼制御メッセージやパケット情報を非送出するよう各部を制御する。このようにして対向装置である通信網20aに「通信失敗」の障害状態を識別させる。
ゲートウェイ装置10a内でデータタイプD2に設定された擬似障害状態が実行された後には、制御部12は装置10自身がデータタイプD2の擬似障害状態になったことを示す情報を記憶部50に記憶させる制御を行う(ステップS200)。
その後、例えば5秒などの所定時間が経過した後、制御部12は再度記憶部50で保持する擬似障害状態データ52を参照する(ステップS210)。ポート14aに係わる次のデータはすべて実行済みなので、変化部62を含む制御部12は、続いてポート14cに係るデータであるデータタイプD3の設定を実現するよう擬似障害生成部46に指令を送る(ステップS220)。指令を受けた擬似障害生成部46はデータタイプD3の擬似状態を生成する処理を行う(ステップS230)。具体的には、擬似障害生成部46はポート14cのレイヤ3において、ICMP Replay(Internet Control Message Protocol Replay)を非送出する処理を行う。ここで、ICMP Replay を非送出するとき、制御部12はゲートウェイ装置10に実装されているプロトコルスタックで規定されているICMPメッセージに基づき、ICMP Replay を非送出する処理を行う。したがって、ゲートウェイ装置10が通信網20cからping(Echo Request)を受けたとしても、装置10の側からはping応答を返送しない。このようにして対向装置である通信網20cに「ハートビートはずれ」の障害状態を識別させる。
ゲートウェイ装置10a内でデータタイプD3に設定された擬似障害処理58が実行された後には、制御部12は装置10自身がデータタイプD3の擬似障害状態になったことを示す情報を記憶部50に記憶させる制御を行う(ステップS240)。
その後、例えば5秒などの所定時間が経過した後、変化部62を含む制御部12は再度記憶部50で保持する擬似障害状態データ52を参照し(ステップS250)、今度はポート14cに係わる次のデータとして、データタイプD4の設定を実現するよう擬似障害生成部46に指令を送る(ステップS260)。指令を受けた擬似障害生成部46はデータタイプD4の擬似状態を生成する処理を行う(ステップS270)。具体的には、擬似障害生成部46はポート14cのレイヤ7において、SNMP Trap(Simple Network Management Program Trap)を非送出する処理を行う。ここで、SNMP Trapを非送出するとき、制御部12はゲートウェイ装置10に実装されているプロトコルスタックで規定されているSNMPメッセージに基づき、SNMP Trap を非送出する処理を行う。したがって、ゲートウェイ装置10が通信網20cに定規定に送信するSNMP Trap の送信を中止する。このようにして対向装置である通信網20cに「監視はずれ」の障害状態を識別させる。
ゲートウェイ装置10a内でデータタイプD4に設定された擬似障害処理58が実行された後には、制御部12は装置10自身がデータタイプD4の擬似障害状態になったことを示す情報を記憶部50に記憶させる制御を行う(ステップS280)。
以上のように、ゲートウェイ装置10は所定の時間ごとに装置内に生成する擬似障害の内容を変化させることによって、たとえ装置10と接続された通信網20が障害の自動回復機能を有する通信網であったとしても、装置10の擬似障害状態に基づき通信網20に障害の発生を識別させる確率を高めることが可能となる。ひいては、迂回通信ルートへの切替えをより迅速に促すことができる。
実際に生成される擬似障害状態データ52の選択の順番は任意である。また、ポートごとに順々に擬似障害状態を作り出すのみならず、複数のポートに対して同時に擬似障害状態を作り出す処理を行っても構わない。
本発明の実施例に係るここまでの説明では、最初に障害が発生した通信網はポート14bと接続された通信網20bであるものとして説明してきたが、障害が発生した通信網がどの通信網であったとしても、ゲートウェイ装置10は他のポートに対して上記の動作をとることにより対向する通信網群に擬似障害の発生を識別させることができることはもちろんである。
次に、本発明に係るゲートウェイ装置10の別の実施例について説明する。この実施例に係るゲートウェイ装置10は、例えば稼働中のゲートウェイ装置10に新たな通信網20dが接続された場合において、通信網20dがいかなる方法を用いて装置10の障害発生を検出しようとしているのかを解析することが可能である。
今回説明する実施例によるゲートウェイ装置10の構成は、図9で示すとおりである。先の実施例の構成要素と同一の部分は、同一の参照符号を用いて表している。なお、本発明に係るゲートウェイ装置10はポート14a〜14dを有するものとし、ポート14dに新たな通信網20dが接続されたものとする。
この通信網20dは図2で示す通信網20a〜20dと同様に、ゲートウェイ装置10の障害発生を検出する検出部26dおよび通信ルートを切り替える切替部28dを有するものとする。しかしながら、新規接続の段階では、ゲートウェイ装置10は検出部26dがいかなる障害検出手段あるいは方法であるかは認識していないものとする。
本実施例に係るゲートウェイ装置10は、通信バス30と信号線68を介して接続されている学習部70を有する。学習部70は、制御部12の制御の下で各通信網20からの所定の単位時間あたりの通信のうち周期的な通信を検出し、プロトコルスタックを用いて通信プロトコルを翻訳し、翻訳した情報を記憶部50に保存する処理を行う装置である。さらに学習部70は、単位時間ごとの周期的通信の検出、照合および保存処理を任意の回数行い、各回の保存履歴を比較することで、新たに接続されたゲートウェイ装置10に対して通信網20dが採る障害検出方法を推測し解析する装置である。
検出時における単位時間とは、例えばゲートウェイ装置10の起動から10分間など、任意の時間で構わない。ここで単位時間の起算点が装置10の起動時点である場合には、周期的通信の検出を始めるごとに、例えばゲートウェイ装置10を一旦再起動させるよう、制御部12は制御を行う。
図10を参照しつつ、さらに具体的に学習部70の構成の一例を述べる。まず、学習部70は、新たにポート14dと接続された通信網20dから送出される信号を監視し、そのうち周期的に受信する信号を検出する周期信号検出部72を有していてもよい。また学習部70は、周期信号検出部72によって検出された周期的な信号について、記憶部50に記憶されたプロトコルスタックに基づいて通信プロトコルを翻訳する翻訳部74を有することができる。さらに学習部70は、記憶部50に記憶された所定の回数分の翻訳結果を比較し、例えば共通点を導き出すなどの手段により通信網20dが実施する障害検出方法を推測し解析する解析部76を有していてもよい。
例えば、各回の保存履歴とも、記憶部50には新規に接続した通信網20dからは定期的にpingがゲートウェイ装置10に送信されているという検出および翻訳結果が保存されている場合、pingはレイヤ3に位置するプロトコルで規定されたICMPを利用した疎通確認を行うものなので、解析部76は通信網20dの採る具体的な異常検出方法はpingによる疎通確認であると解析する。
また、記憶部50には、装置10を再起動する度に通信網20dからTCP 80(Transmission Control Protocol 80)などの所定ポートによるセッションが改めて確立されているという検出および翻訳結果が保存されている場合には、学習部70は検出期間中の継続的なセッションの維持を一種の周期的な通信として判断し、通信網20dの採る検出方法はTCPセッションの切断により装置10の異常を検出しているものと解析する。
記憶部50には、図11で一例が示されているような擬似障害状態データ152が設定保持されている。擬似障害状態データ152としては、例えば通信層56、擬似障害処理58および対向装置の障害検出60のようなデータを含む様々なタイプのデータD5〜D10が記憶されているものとする。本実施例の擬似障害状態データ152では、擬似障害処理58として、先の実施例の擬似障害状態としても記憶されていたICMP 非送出(データD5)の他に、データD6にRIP Routing Information Protocol) Response 非送出、データD7にTCP FIN (Transmission Control Protocol Finish)、データD8にIGMP (Internet Group Management Protocol) query&report 非送出、データD9にHTTP (HyperText Transfer Protocol) ステータスコード500返送、そしてデータD10にHTTP ステータスコード201非送出が併せて記憶されている。
また、本実施例の場合、記憶部50は、制御部12の指示により解析結果を記憶する。これによって、将来的に通信網20dに対する擬似障害状態を生成する必要が生じた場合に、記憶された解析結果および擬似障害状態データ152を利用して適切なレイヤの擬似障害を生成することが可能となる。
次に、図12を参照しながら、本実施例に係るゲートウェイ装置10に新たな通信網20dが接続された場合の解析動作について述べる。ゲートウェイ装置10のポート14dに新たに通信網20dが接続されると、所定の単位時間の間、周期信号検出部72は行われた通信網20dと装置10の間で行われた通信のうち周期的な通信を検出する(ステップS310)。単位時間の経過後、翻訳部74は検出された周期的な通信について、プロトコルスタックを用いて通信プロトコルを翻訳する(ステップS320)。学習部70が翻訳した通信情報の結果を、制御部12の制御を受けて解析用の履歴として記憶部50に保存する(ステップS330)。
ここで学習部70は、予め設定された所定の数だけ履歴が保存されたか否かを判断する(ステップS340)。保存された履歴が所定の数に満たなければ、ステップS310に戻って通信の検出、翻訳および保存を続ける。他方、所定の数だけ履歴が保存されている場合、解析部76はそれまで保存されてきた履歴をもとに新たに接続された通信網20dの障害検出方法を解析する(ステップS350)。通信網の障害検出方法を解析したら、記憶部50はその解析結果を記憶する(ステップS360)。
このように、本実施例に係るゲートウェイ装置10を用いれば、新規に接続された通信網20dの障害検出方法を自動的に解析することが可能である。したがって、管理者による特別の管理作業を必要とすることなく、のちに別の通信網に通信障害が発生した場合であっても、ゲートウェイ装置10は記憶した解析結果をもとに通信網20dに適したレイヤの擬似障害状態を発生させ、通信網20dへ通信ルートの迂回切替えを促すことができる。
また、図11で示したようにレイヤごとに複数の擬似障害状態データ152を用意しておけば、データ152に基づいた変化部62の制御により、図8で示したような手法で所定の時間ごとに生成する擬似障害の内容を変化させることが可能となる。これによって、たとえ通信網20dが障害の自動回復機能を有する通信網であったとしても、ゲートウェイ装置10の擬似障害状態に基づき通信網20dに障害の発生を識別させる確率を高めることが可能となる。もちろん、生成する擬似状態の変化順は任意に設定し得る。
以上、ここまで本発明のいくつかの実施例を述べてきたが、実施の形態は上述の実施例に制限されるものではなく、本発明の実施が可能である限りにおいて適宜に設計や動作手順の変更をなし得る。